説明

音響帰還量抑制装置

【課題】マイクの配置により各マイク入力に生じるレベル差を用いて音響帰還量を低減する音響帰還量抑制装置を提供する。
【解決手段】拡声スピーカと、拡声スピーカとの距離に対応して拡声スピーカから出力される音響信号の入力レベルが異なる第1、第2のマイク23a、23bとが同一筐体に設けられており、第1、第2のマイク出力信号をデジタル変換するA/D変換部210と、第1、第2の離散時間信号の振幅を調整する振幅制御部220と、第1、第2の離散時間信号を周波数信号に変換する離散フーリエ変換部230と、第1、第2の周波数変換信号の振幅特性を算出する振幅特性算出部240と、第1、第2の周波数変換信号のうち何れか1の位相特性を算出する位相特性算出部250と、第1、第2の周波数変換信号について減算処理を行う演算部270と、位相特性をもとに演算部の出力信号を時間帯域信号に変換する逆離散フーリエ変換部280とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響帰還量抑制装置に係り、特に、拡声通話で発生する音響帰還(エコー)を抑制する音響帰還量抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、拡声通話を実現するに際しては、拡声スピーカから出力する音声信号がマイクに回り込むことで生じる音響帰還(エコー)の影響を受けないように制御することが必須である。
【0003】
従来から、この種の音響帰還量抑制装置として、(イ)送話入力と受話入力を監視して少なくともどちらか一方向の出力を抑圧する音声スイッチによる制御(交互通話)や(ロ)拡声スピーカの出力から音響帰還を推定しマイクへの入力から減算することで抑圧するエコーキャンセラによる制御が知られている(例えば、特許文献1等)。
【0004】
しかしながら、これらの(イ)、(ロ)の音響帰還量抑制装置においては、使用する筐体や筐体の設置環境の特性の音響帰還量が大きくなると通話性能が低下するという難点があった。また、(イ)の音声スイッチによる制御(交互通話)においては、切替り性能の低下や出力音圧の制限が生じるという難点があり、(ロ)のエコーキャンセラによる制御においては、一般的に、音響帰還量が0dB以下の環境で動作することを想定して設計されているところ、同時通話性能の低下や出力音圧の制限が生じるという難点があった。
【0005】
このような通話性能の低下を防ぐためには、筐体の機構設計を最適化することや複数個のマイクと信号処理を用いて指向性制御を実施するなどの音響帰還量を低減する手法の導入が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−94674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の難点を解消するためになされたもので、拡声スピーカと複数個のマイクの配置により、拡声スピーカから出力するアナログ音響信号の各マイクへの入力により生じるレベル差を用いることで音響帰還量を低減することが可能な音響帰還量抑制装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様である音響帰還量抑制装置は、拡声スピーカから出力されるアナログ音響信号の入力レベルが異なる第1、第2のマイクとが同一筐体に設けられる音響帰還量抑圧装置であって、第1、第2のマイクにそれぞれ入力されたアナログ音響信号をデジタル変換し、第1、第2の離散時間信号を生成するためのA/D変換部と、A/D変換部から出力される第1、第2の離散時間信号のそれぞれの振幅を調整するための振幅制御部と、振幅制御部から出力される振幅が調整された第1、第2の離散時間信号を所定の周波数帯域の第1、第2の周波数信号に変換するための離散フーリエ変換部と、離散フーリエ変換部から出力される第1、第2の周波数変換信号のそれぞれの振幅特性を算出するための振幅特性算出部と、離散フーリエ変換部から出力される第1、第2の周波数変換信号のうち何れか1の当該信号の位相特性を算出するための位相特性算出部と、振幅特性算出部から出力される第1、第2の周波数変換信号について減算処理を行うための演算部と、位相特性算出部にて算出された位相特性をもとに演算部の出力信号を時間帯域信号に変換するための逆離散フーリエ変換部とを有するものである。
【0009】
第1の態様である音響帰還量抑制装置によれば、第1、第2のマイクに入力される送話信号の振幅比が1:2になることを考慮しレベルダイアを設計することで、音響帰還量を抑圧し、ひいては音響帰還の影響を受けない話者発話を通すことができ、また出力信号を音声スイッチやエコーキャンセラの入力信号とすることで通話性能の劣化を抑えた拡声通話を実現することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様である音響帰還量抑圧装置において、振幅制御部は、演算部の出力信号によりフィードバック制御されるものである。
【0011】
第2の態様である音響帰還量抑制装置によれば、第1の態様である音響帰還量抑制装置の作用・効果に加え、演算部における減算結果より過剰減算を検出しボリューム調整部(振幅制御部)にフィードバックすることで、ノイズの発生を低減することができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1の態様または第2の態様である音響帰還量抑圧装置において、振幅特性算出部にて算出された振幅特性を平滑化し、第1、第2の振幅特性平滑化信号を生成して演算部に送出するための移動平均処理部を備え、演算部は、移動平均処理部から出力される第1、第2の振幅特性平滑化信号について減算処理を行うものである。
【0013】
本発明の第3の態様である音響帰還量抑圧装置によれば、第1の態様または第2の態様である音響帰還量抑圧装置の作用に加え、平滑化により(振幅)周波数特性を鈍らせてから減算することで、過剰減算を緩和することができ、ひいては過剰減算によるノイズの発生を低減することができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1の態様乃至第3の態様のうち何れかの態様である音響帰還量抑圧装置において、第1、第2のマイクは、同一平面上に設けられるものである。
【0015】
本発明の第4の態様である音響帰還量抑圧装置によれば、第1の態様乃至第3の態様の何れかの態様である音響帰還量抑圧装置の作用に加え、第1、第2のマイクを同一平面上に設けることで、筐体設計の自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の音響帰還量抑制装置によれば、第1、第2のマイクに入力される送話信号の振幅比が1:2になることを考慮しレベルダイアを設計することで、音響帰還量を抑圧し、ひいては音響帰還の影響を受けない話者発話を通すことができ、また出力信号を音声スイッチやエコーキャンセラの入力信号とすることで通話性能の劣化を抑えた拡声通話を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例に係る音響帰還量抑制装置を搭載したハンズフリーインターホンのシステム構成図。
【図2】本発明の一実施例に係る音響帰還量抑制装置の構成を示すブロック図。
【図3】本発明の一実施例に係る音響帰還量抑圧の概念図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の音響帰還量抑制装置をハンズフリーインターホンに適用した好ましい実施の形態例について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施例における音響帰還量抑制装置を搭載したハンズフリーインターホンのシステム構成図を示している。
【0020】
同図において、本発明の音響帰還量抑制装置を搭載したハンズフリーインターホンは、通常、住戸の玄関に設置される玄関子機1と、住戸内に設置されるインターホン親機2とを備えており、玄関子機1とインターホン親機2とは、ペア線で構成される伝送路Lを介して接続されている。
【0021】
玄関子機1は、例えば来訪者を撮像するカメラ11、呼出ボタン12、子機スピーカ13および子機マイク14を備えている。
【0022】
インターホン親機2は、例えば来訪者の映像を表示する表示部21、拡声スピーカ22、第1、第2のマイク23a、23bおよび親機操作部24を備えている。
【0023】
ここで、本発明における第1、第2のマイク23a、23bと拡声スピーカ22の配置条件について説明する。
【0024】
先ず、第1、第2のマイク23a、23bとして信号検出感度の等しいものを使用する。また、これらの第1、第2のマイク23a、23bのうち、第1マイク23aは、インターホン親機2を構成する上筐体(後述)の上縁部側に配置され、第2のマイク23bは、表示部21と拡声スピーカ22との間に配置されている。すなわち、第1のマイク23aは、拡声スピーカ22から見て遠くに配置され、第2のマイク23bは拡声スピーカ22の近くに配置されている。さらに、拡声スピーカ22の鳴動時に当該拡声スピーカ22の近くに配置された第2のマイク23bの信号検出レベルが、拡声スピーカ22の遠くに配置された第1のマイク23aの信号検出レベルの2倍となるように、拡声スピーカ22と第1のマイク23a間の距離L1、拡声スピーカ22と第2のマイク23b間の距離L2を調整する。この実施例では、拡声スピーカ22と第1のマイク23a間の距離L1は例えば15.8cm程度とされ、拡声スピーカ22と第2のマイク23b間の距離L2は例えば6cm程度とされている。
【0025】
さらに、第1のマイク23aに接続される第1のアンプ290a(図2参照)のゲインは、第2のマイク23bに接続される第2のアンプ290b(図2参照)のゲインに対して所定の差(例えば6dBの差)が生じるように設定される。
【0026】
このように調整・設定される第1、第2のマイク23a、23bおよび拡声スピーカ22はインターホン親機の同一筐体に設けられている。具体的には、インターホン親機2は、例えば前面開放の四角形状の下筐体(不図示)と、この下筐体の前面に被蓋される上筐体(不図示)と、この上筐体の開口部(不図示)に被蓋されるパネル(不図示)とを備えているところ、当該第1、第2のマイク23a、23bおよび拡声スピーカ22は、上記の上筐体の背面側に配置されている。これにより第1、第2のマイク23a、23bは、同一平面上に設けられることになる。なお、第1、第2のマイク23a、23bは同一の沿直線上に位置する如く配置されている。このように、第1、第2のマイク23a、23bを同一平面上に設けることで、筐体設計の自由度を高めることができる。
【0027】
図2は、本発明における音響帰還量抑圧装置のブロック図を示している。同図において、本発明における音響帰還量抑圧装置は、第1、第2のマイク23a、23bにそれぞれ入力されたアナログ音響信号をデジタル変換し、第1、第2の離散時間信号x1(n)、x2(n)を生成するためのA/D変換部210と、A/D変換部210から出力される第1、第2の離散時間信号x1(n)、x2(n)のそれぞれの振幅を調整するための振幅制御部220と、振幅制御部220から出力される振幅が調整された第1、第2の離散時間信号x1(n)、x2(n)を所定の周波数帯域の第1、第2の周波数信号X1(k)、X2(k)に変換するための離散フーリエ変換部230と、離散フーリエ変換部230から出力される第1、第2の周波数変換信号のそれぞれの振幅特性Mag1(k)、Mag2(k)を算出するための振幅特性算出部240と、離散フーリエ変換部230から出力される第1、第2の周波数変換信号のうち何れか1の当該信号の位相特性Φ1(k)を算出するための位相特性算出部250と、振幅特性算出部240にて算出された振幅特性を平滑化し、第1、第2の振幅特性平滑化信号aveMag1(k)、aveMag2(k)を生成して演算部270に送出するための移動平均処理部260と、移動平均処理部260から出力される第1、第2の振幅特性平滑化信号aveMag1(k)、aveMag2(k)について減算処理を行うための演算部270と、位相特性算出部250にて算出された位相特性Φ1(k)をもとに演算部270の出力信号subMag(k)を時間帯域信号y(n)に変換するための逆離散フーリエ変換部280とを備えており、振幅制御部220は、演算部270の出力信号によりフィードバック制御されるように構成されている。
【0028】
ここで、A/D変換部210は振幅制御部220および第1、第2のアンプ290a、290bに接続され、振幅制御部220には離散フーリエ変換部230が、第1のアンプ290aには第1のマイク23aが、第2のアンプ290bには第2のマイク23bがそれぞれ接続されている。また、離散フーリエ変換部230は振幅特性算出部240および位相特性算出部250に接続され、振幅特性算出部240には移動平均処理部260が接続され、位相特性算出部250には逆離散フーリエ変換部280が接続されている。さらに、演算部270は振幅制御部220、移動平均処理部260および逆離散フーリエ変換部280に接続されている。
【0029】
次に、このように構成された本発明の一実施例における音響帰還量抑圧装置の動作について説明する。なお、来訪者が玄関子機1の呼出ボタン12を押下すると伝送路Lを経由して親機CPU(不図示)に呼出信号が送信され、呼出信号を受信した親機CPUが親機送受話部(不図示)を経由して拡声スピーカ22から呼出音を放音させる点、および呼出音を聞いた居住者が親機操作部24としての通話ボタンを押下すると、親機CPUが通話路切替部(不図示)の切替制御を行い、玄関子機1とハンズフリーインターホン親機2間で通話が可能となる点は、従来のハンズフリーインターホンシステムにおける呼出及び通話動作と同様であることから詳細な説明は省略する。
【0030】
上記のように伝送路Lを介して玄関子機1およびインターホン親機2との間で通話路が形成されると、すなわち、来訪者と居住者との間で通話が成立している状態において、拡声スピーカ22から出力される音声信号が、アナログ音響信号の入力レベルが異なる第1、第2のマイク23a、23bに入力されると、第1、第2のマイク23a、23bで検出されたアナログ信号は、A/D変換部210によりデジタル信号に変換され第1、第2の離散時間信号x1(n)、x2(n)が得られる。
【0031】
当該離散時間信号x1(n)、x2(n)は、必要に応じて振幅制御部220でゲイン調整され離散フーリェ変換部230にて所定の周波数領域(例えば16kHz程度)の信号x1(n)、x2(n)に変換される。
【0032】
このようにして、所定の周波数領域(例えば16kHz程度)に変換された第1、第2の周波数変換信号から、例えば、式1、式2により振幅特性算出部240と位相特性算出部250にて第1、第2の振幅特性Mag1(k)、Mag2(k)、Φ1(k)が算出される。
【0033】
【数1】

【0034】
【数2】

【0035】
振幅特性算出部240で算出された第1、第2の振幅特性Mag1(k)、Mag2(k)は必要に応じて移動平均処理部260で平滑化され第1、第2の振幅特性平滑化信号aveMag1(k)、aveMag2(k)となる。
【0036】
【数3】

【0037】
平滑化処理されたaveMag1(k)、aveMag2(k)は、演算部270で減算処理され出力信号subMag(k)が算出され位相特性算出部250の算出結果Φ(k)と共に逆離散フーリエ変換部280にて式4により時間帯域信号y(n)に変換される。
【0038】
【数4】

【0039】
このような移動平均処理部260における平滑化により(振幅)周波数特性を鈍らせてから減算することで、過剰減算を緩和することができ、ひいては過剰減算によるノイズの発生を低減することができる。
【0040】
ここで、この実施例では、演算部270の出力信号が振幅制御部220によりフィードバック制御されるように構成されているが、これは、後述するように、演算部270での減算結果より過剰減算を検出し、ボリューム調整部(振幅制御部220)にフィードバックすることで、ノイズ発生を低減させるためである。すなわち、周波数領域で第1のマイクの成分から第2のマイクの成分を減算することでエコーを抑圧することができるところ、第1のマイクの成分に対して第2のマイクの成分が大きい状態において、第2のマイクの成分から第1のマイクの成分を過剰に減算するとノイズ発生の原因となる。従って、このような状態においては、減算結果より過剰減算を検出しボリューム調整部(振幅制御部)にフィードバックすることで、移動平均処理部260における平滑化に加えて、さらにノイズの発生を低減することができる。
【0041】
次に、第1、第2のマイク23a、23bと拡声スピーカ22の配置条件を示す図1と音響帰還量抑圧の概念図を示す図3を用いて音響帰還量抑圧の仕組みについて説明する。
【0042】
先ず、前述のように、信号検出感度の等しい第1、第2のマイク23a、23bを拡声スピーカ22の鳴動時に拡声スピーカ22に近く配置された第2のマイク23bの信号検出レベルが遠くに配置された第1のマイク23aの信号検出レベルの2倍となるように距離L1、距離L2が調整され、また第1のアンプ290aのゲインが第2のアンプ290bのゲインに対して6dBの差が生じるように調整・設定された状態においては、図3(a)に示すように、拡声スピーカ22の鳴動時には、すなわち音響帰還発生時には、第1、第2のマイク23a、23bへの信号入力レベルが等しくなるため、移動平均処理部260の処理結果は各帯域でほぼ等しくなり、演算部270の減算結果subMag(k)は0に近い値となる。このため時間領域に変換された時間帯域信号y(n)も0に近い信号となり、ひいては音響帰還(エコー)が抑圧される。
【0043】
一方、図3(b)に示すように、話者(居住者)が発話すると、すなわち話者(居住者)が、第1、第2のマイク23a、23bまでの距離が等距離であると想定される位置において発話すると、第1、第2のマイク23a、23bへの信号入力レベルに6dBの差が生じるため、移動平均処理部260から出力する第1、第2の振幅特性平滑化信号aveMag1(k)、aveMag2(k)の演算部270での減算結果と位相特性算出部250における位相特性の算出結果より、逆離散フーリェ変換部280で時間領域に変換された時間帯域信号y(n)は、第1のマイク23aに入力された信号レベルが半分となった信号となる。つまり逆離散フーリェ変換部280からレベルが−6dBとなった時間帯域信号(送話信号)y(n)が出力されることになる。
【0044】
また、図3(c)に示すように、話者(居住者)が発話しかつ音響帰還(エコー)の発生時には、図3(b)と同様に、第1、第2のマイク23a、23bへの信号入力レベルに6dBの差が生じるため、移動平均処理部260から出力する第1、第2の振幅特性平滑化信号aveMag1(k)、aveMag2(k)の演算部270での減算結果と位相特性算出部250における位相特性の算出結果より、逆離散フーリェ変換部280で時間領域に変換された時間帯域信号y(n)は、第1のマイク23aに入力された信号レベルが半分となった信号となる。
【0045】
以上のように、本発明の音響帰還量抑圧装置によれば、送話信号(時間帯域信号)y(n)が1/2になることを考慮し、レベルダイアを設計することで、音響帰還量を抑圧し、ひいては音響帰還の影響を受けない話者発話を通すことができ、また出力信号(時間帯域信号y(n))を音声スイッチやエコーキャンセラの入力信号とすることで通話性能の劣化を抑えた拡声通話を実現することができる。
【0046】
なお、以上の本発明のテレビドアホンシステムにおいては、特定の実施の形態をもって説明しているが、この形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られた如何なる構成の当該システムであっても採用できることはいうまでもないことである。
【0047】
たとえば、前述の実施例においては、インターホン親機に本発明の音響帰還量抑圧装置を搭載しているが、玄関子機に当該音響帰還量抑圧装置を搭載してもよい。
【0048】
また、前述の実施例においては、第1のマイクをインターホン親機(上筐体)の上縁部に配置しているが、当該第1のマイクはインターホン親機(上筐体)の下縁部に配置してもよい。
【0049】
また、前述の実施例においては、第1のマイクと第2のマイクを同一の鉛直線上に配置しているが、送話信号(時間帯域信号)y(n)が1/2になる等、明らかな差異が発生するような関係が満たされれば第1、第2のマイクは同一の鉛直線上に配置しなくてもよい。
【0050】
また、前述の実施例においては、2個のマイクを配置した場合について述べているが、送話信号(時間帯域信号)y(n)が1/2になる等、明らかな差異が発生するような関係が満たされれば、例えば4個のマイクを配置してもよい。
【0051】
また、前述の実施例においては、振幅特性算出部240にて算出された振幅特性を移動平均処理部260にて平滑化し、第1、第2の振幅特性平滑化信号aveMag1(k)、aveMag2(k)を生成して演算部270に送出する場合について述べているが、移動平均処理部260と搭載せずに、振幅特性算出部240から出力される第1、第2の周波数変換信号を直接演算部270に送出してもよい。
【符号の説明】
【0052】
22・・・拡声スピーカ
23a・・・第1のマイク
23b・・・第2のマイク
X1(n)・・・第1の離散時間信号
X2(n)・・・第2の離散時間信号
210・・・A/D変換部
220・・振幅制御部、
230・・・離散フーリエ変換部
240・・・振幅特性算出部
250・・・位相特性算出部
260・・・移動平均処理部
270・・・演算部
280・・・逆離散フーリエ変換部
aveMag1(k)・・・第1の振幅特性平滑化信号
aveMag2(k)・・・第2の振幅特性平滑化信号
Mag1(k)・・・第1の振幅特性
Mag2(k)・・・第2の振幅特性
subMag(k)・・・出力信号
y(n)・・・時間帯域信号
X1(k)・・・第1の周波数信号
X2(k)・・・第2の周波数信号
Φ1(k)・・・位相特性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡声スピーカ(22)と、前記拡声スピーカとの間の距離に対応して前記拡声スピーカから出力されるアナログ音響信号の入力レベルが異なる第1、第2のマイク(23a、23b)とが同一筐体に設けられる音響帰還量抑圧装置であって、
前記第1、第2のマイクにそれぞれ入力された前記アナログ音響信号をデジタル変換し、第1、第2の離散時間信号(X1(n)、X2(n))を生成するためのA/D変換部(210)と、
前記A/D変換部から出力される前記第1、第2の離散時間信号のそれぞれの振幅を調整するための振幅制御部(220)と、
前記振幅制御部から出力される前記振幅が調整された第1、第2の離散時間信号を所定の周波数帯域の第1、第2の周波数信号(X1(k)、X2(k))に変換するための離散フーリエ変換部(230)と、
前記離散フーリエ変換部から出力される前記第1、第2の周波数変換信号のそれぞれの振幅特性(Mag1(k)、Mag2(k))を算出するための振幅特性算出部(240)と、
前記離散フーリエ変換部から出力される前記第1、第2の周波数変換信号のうち何れか1の当該信号の位相特性(Φ1(k))を算出するための位相特性算出部(250)と、
前記振幅特性算出部から出力される前記第1、第2の周波数変換信号について減算処理を行うための演算部(270)と、
前記位相特性算出部にて算出された前記位相特性をもとに前記演算部の出力信号(subMag(k))を時間帯域信号(y(n))に変換するための逆離散フーリエ変換部(280)とを有することを特徴とする音響帰還量抑圧装置。
【請求項2】
前記振幅制御部は、前記演算部の前記出力信号によりフィードバック制御されることを特徴とする請求項1記載の音響帰還量抑圧装置。
【請求項3】
前記振幅特性算出部にて算出された前記振幅特性を平滑化し、第1、第2の振幅特性平滑化信号(aveMag1(k)、aveMag2(k))を生成して前記演算部に送出するための移動平均処理部(260)を備え、
前記演算部は、前記移動平均処理部から出力される前記第1、第2の振幅特性平滑化信号について減算処理を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の音響帰還量抑圧装置。
【請求項4】
前記第1、第2のマイクは、同一平面上に設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項記載の音響帰還量抑圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−98705(P2013−98705A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238856(P2011−238856)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】