説明

音響道路の構築方法

【課題】優れた音響特性を長期間維持することを可能にする耐久性に優れた音響道路の構築方法を提供することにある。
【解決手段】ポーラスアスファルト混合物からなる舗装道路の路面に、車両の走行により所定のメロディとして聴取される振動音を発生する複数条の溝を車両走行方向と交差する方向に形成する方法において、溝を形成する前または後に、充填材または樹脂を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両の走行により所定のメロディとして聴取される振動音を発生させる音響道路の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路舗装面に所定の間隔で所定の形状および内容積の溝を設けることにより、車両が所定速度で通過したときに音楽を奏する音響道路が知られており(特許文献1)観光地などの道路で実用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5−9561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の音響道路をポーラスアスファルト混合物からなる舗装道路に適用した場合には、溝周辺の舗装を構成する骨材が飛散して耐久性が劣るという問題があることを知見した。
本発明の目的は、ポーラスアスファルト混合物からなる舗装道路に溝を設けて音響道路を構築するに際し、優れた音響特性を長期間維持することを可能にする耐久性に優れた音響道路の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1に、ポーラスアスファルト混合物からなる舗装道路の路面に、車両の走行により所定のメロディとして聴取される振動音を発生する複数条の溝を車両走行方向と交差する方向に形成する方法において、前記路面の空隙に充填材を充填して硬化させたのち、前記路面を切削して溝を設けることを特徴とする音響道路の構築方法である。
【0006】
本発明は、第2に、ポーラスアスファルト混合物からなる舗装道路の路面に、車両の走行により所定のメロディとして聴取される振動音を発生する複数条の溝を車両走行方向と交差する方向に形成する方法において、前記路面を切削して溝を設けたのち、その上から樹脂を散布して前記路面および前記溝の内面を被覆することを特徴とする音響道路の構築方法である。樹脂としては着色塗料または遮熱塗料が特に好ましく用いられる。
【0007】
本発明は、第3に、ポーラスアスファルト混合物からなる舗装道路の路面に、車両の走行により所定のメロディとして聴取される振動音を発生する複数条の溝を車両走行方向と交差する方向に形成する方法において、前記路面に樹脂を散布して硬化させたのち、前記路面を切削して溝を設けることを特徴とする音響道路の構築方法である。
本発明は、第4に、ポーラスアスファルト混合物からなる舗装道路の路面に、車両の走行により所定のメロディとして聴取される振動音を発生させるために、前記路面の空隙に充填材を縞状に充填して、車両走行方向と交差する方向に、充填材が充填されている部分と充填材が充填されていない部分とを交互に縞状に形成することを特徴とする音響道路の構築方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により音響道路に音響効果を損なうことなく効果的な補強がなされ、長期間安定に所定の音楽を奏することが可能となる。
第1の発明によれば、充填した浸透用セメントミルクや樹脂モルタルなどの充填材で骨材が固着されるので、骨材の飛散が少なく耐久性が高い。
【0009】
第2または第3の発明によれば、形成した溝が樹脂で補強されるので、溝の角欠けが起こりにくく耐久性が高い。
また樹脂として着色塗料または遮熱性塗料を用いた場合は、運転者が音響道路の位置を認識しやすくなるとともに、溝周辺の路面温度の上昇を抑制できるので、溝の変形が少なく耐久性が高い。
【0010】
第4の発明によれば、路面の空隙にアスファルト系充填材などの充填材を充填して、密度が大きい部分と密度が小さい部分を道路横断方向に縞状に形成する方法なので、施工が1工程ですみ容易で骨材の飛散も少なく耐久性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の音響道路の構築方法は、ポーラスアスファルト混合物からなる舗装道路の路面に、車両の走行により所定のメロディとして聴取される振動音を発生する複数条の溝を形成するに際し、溝を形成する前または後に所定の処理を行うものである。
【0012】
第1の態様は、上記の舗装路面(新設路面でも既設路面でもよい)に充填材を充填し、次いで溝を設ける方法である。
充填材としては、浸透用セメントミルク、樹脂モルタル、保水性材料などが好ましく用いられる。
【0013】
浸透用セメントミルクは、セメント、珪砂、添加剤、水などからなる混合物であり、フロー値10〜14秒、圧縮強度9.8〜29.4MPa、曲げ強度2.0MPa以上のものが特に好ましく用いられる。
樹脂モルタルは、セラミック系人工骨材と特殊エポキシ樹脂の混合物であり、骨材:樹脂の重量比が100:14〜100:18の範囲のものがより好ましく用いられる。
【0014】
この方法では、通常、既設路面の空隙部を清掃したのち、該空隙部に充填材を充填し、充填材が硬化したのち、路面を切削して溝を形成する。空隙部の清掃は、機能回復車やコンプレッサなどを用いて行うことが好ましい。
路面の切削は、車体下部に舗装道路の横断方向に移動しながら溝を形成する溝形成ヘッドを備えた専用機、または舗装用カッタを用いて行うことが好ましい。
溝の間隔などの条件は、特許文献1などの従来技術に従って決定される。
【0015】
車両走行音が「ドレミファ・・・」の各音に対応するように、車両の走行速度に対応させて溝間隔を設定する。一例として、車両の走行速度をv(km/h)、溝どうしの間隔をd(mm)としたときに、下式の関係を有する8種類の溝を音符に合わせて特定する(αは1〜2程度)。
(a)d=2500v/2355±α (b)d=2500v/2643±α
(c)d=2500v/2967±α (d)d=2500v/3143±α
(e)d=2500v/3528±α (f)d=2500v/3960±α
(g)d=2500v/4445±α (h)d=2500v/4709±α
【0016】
上記の例において、走行速度v=60(km/h)の場合の溝間の間隔は次のように設定される。
(a)d=63mm(ド音) (b)d=56mm(レ音)
(c)d=50mm(ミ音) (d)d=47mm(ファ音)
(e)d=42mm(ソ音) (f)d=37mm(ラ音)
(g)d=33mm(シ音) (h)d=31mm(ド音)
【0017】
第2の態様は、溝を形成した後に樹脂を散布する方法である。
樹脂としては、道路の被覆などに用いられているMMA(メチルメタクリレート)樹脂やエポキシ樹脂などの適宜の樹脂を用いることができる。また遮熱性顔料や着色顔料などを混入した樹脂を用いて遮熱機能などの機能性をもたせた路面にすることも好ましい。通常、既設路面を切削して溝を形成し、次いで樹脂液をスプレーなどにより塗布して溝を保持した状態で溝の内面に樹脂層を形成する。
【0018】
第3の態様は、樹脂散布後に溝を形成する方法である。この方法では、既設路面に樹脂を散布して硬化させたのち、その路面を切削して溝を設ける。
樹脂としては、第2の態様と同様のものが用いられる。
【0019】
第4の態様は充填材を縞状に充填する方法である。この方法では、通常、既設路面に所定の幅と間隔で養生テープを貼り、その上から充填材を散布し、充填材が硬化したのち、マスキングテープを取り除く。
充填材としては、透水性レジンモルタルなどの樹脂モルタル、浸透用セメントミルクなどのセメント系材料、ストレートアスファルトなどのアスファルト系材料などが用いられる。また、変形例として、表面に凹凸を設けて溝の形状とした透水性シート部材を路面に接着することもできる。
【実施例】
【0020】
本発明の効果を確認するために、本発明の方法(実施例)と比較例により試験施工を行った。試験ヤードとして幅2.5m×延長12m×厚さ4cmでポーラスアスファルト混合物(バインダとしてポリマー改質アスファルトH型を使用)を舗設して、これを3m間隔、2.5m幅(但し実施例3と比較例はこの幅を2分割した)に工区割りして実施例1〜4および比較例とした。アスファルト混合物の敷きならしには小型アスファルトフィニッシャを使用し、4tコンバインドローラで締め固めた。なお、プライムコートには、ゴム入り乳剤(PKR−T)を用いた。
【0021】
実施例1:路面空隙に浸透用セメントミルクを充填し、半たわみ性舗装とした。
実施例2:路面空隙に樹脂モルタルを充填し、透水性レジンモルタル舗装とした。
実施例3:処理なし。
実施例4:路面にMMA樹脂を散布し、排水性トップコート舗装とした。
比較例 :処理なし。
【0022】
上記処理後、実施例1〜4および比較例の路面を切削して、幅9mm、深さ5mmの溝を溝どうしの間隔を100mmとして全幅にわたり形成した。切削後、実施例3の工区については路面にMMA樹脂を散布し、排水性トップコート舗装とした。その後、耐久性および音を確認するために、路面に車両を走行させた。
【0023】
試験施工の結果は、次のとおりである。
〔施工時〕
いずれの工区とも、施工性は良好で施工時の溝状態も角欠けや骨材の飛散がなく、良好な結果が得られた。
実施例1、2は、路面の空隙に充填材が充填されているため切削粉による目詰まりはほとんどなく、実施例4も目詰まりは少なかった。
実施例3と比較例は、路面の空隙に切削粉が目詰まりしたため、掃除機などによる清掃に手間がかかり不良の状態であった。
【0024】
〔施工後〕
実施例3、4は、溝の角欠けや骨材の飛散がほとんどなく、排水性も良好で、メロディもよく聞き取ることができ良好な結果が得られた。
実施例1は、排水性が多少劣るものの、溝の角欠けや骨材の飛散はほとんどなく、メロディもよく聞き取ることができ良好な結果が得られた。
実施例2は、溝の角欠けや骨材の飛散が多少見られたものの、排水性は良好で、メロディもよく聞き取ることができ良好な結果が得られた。
比較例は、排水性は良好であったが、溝の角欠けや骨材の飛散がはげしく、メロディもほとんど聞き取ることができなかった。
【0025】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポーラスアスファルト混合物からなる舗装道路の路面に、車両の走行により所定のメロディとして聴取される振動音を発生する複数条の溝を車両走行方向と交差する方向に形成する方法において、前記路面の空隙に充填材を充填して硬化させたのち、前記路面を切削して溝を設けることを特徴とする音響道路の構築方法。
【請求項2】
前記充填材は、浸透用セメントミルクまたは樹脂モルタルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポーラスアスファルト混合物からなる舗装道路の路面に、車両の走行により所定のメロディとして聴取される振動音を発生する複数条の溝を車両走行方向と交差する方向に形成する方法において、前記路面を切削して溝を設けたのち、その上から樹脂を散布して前記路面および前記溝の内面を被覆することを特徴とする音響道路の構築方法。
【請求項4】
ポーラスアスファルト混合物からなる舗装道路の路面に、車両の走行により所定のメロディとして聴取される振動音を発生する複数条の溝を車両走行方向と交差する方向に形成する方法において、前記路面に樹脂を散布して硬化させたのち、前記路面を切削して溝を設けることを特徴とする音響道路の構築方法。
【請求項5】
前記樹脂は、着色塗料または遮熱性塗料であることを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
ポーラスアスファルト混合物からなる舗装道路の路面に、車両の走行により所定のメロディとして聴取される振動音を発生させるために、前記路面の空隙に充填材を縞状に充填して、車両走行方向と交差する方向に、充填材が充填されている部分と充填材が充填されていない部分とを交互に縞状に形成することを特徴とする音響道路の構築方法。
【請求項7】
前記充填材は、樹脂モルタル、セメント系材料またはアスファルト系材料であることを特徴とする請求項6に記載の方法。

【公開番号】特開2010−248797(P2010−248797A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99571(P2009−99571)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(390030384)末広産業株式会社 (7)
【出願人】(590002482)株式会社NIPPO (130)
【Fターム(参考)】