説明

頭部装着型赤外画像視認装置

【課題】操作性、装着性および安全性に優れた頭部装着型赤外画像撮像視認装置の提供。
【解決手段】赤外線カメラ、アンテナ、所定の温度域を着色した赤外画像データを作成する画像処理部、画像処理部からのデータをアンテナから送信する無線送信機、ヘルメット用電源およびヘルメット用電源のON/OFFを制御するスイッチを備えたヘルメットと、赤外画像データを表示する画像表示素子、および画像表示素子からの射出光を装着者の瞳に導く光学系を備えたゴーグルと、無線送信機からのデータを受信する無線受信機、並びにゴーグル用電源およびゴーグル用電源のON/OFFを制御するスイッチを備えたスイッチボックスと、スイッチボックスおよびゴーグルを接続するケーブルとから構成される頭部装着型赤外画像視認装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時の救助活動や漏電箇所の検知並びにプラント等の保守現場において、夜間や煙などにより視認性が悪い状況下においても、人体を検知しての救助活動等を円滑に行うための頭部装着型赤外画像視認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行機のコックピットで使用される夜間飛行用の視認装置としては、赤外線で感知される外界情報を合成表示するゴーグル型の視認装置がある(特許文献1,2)。しかしながら、これらのゴーグル型の視認装置では光伝送に何枚ものレンズが使用されているので重量があり、救助活動のような動きのある作業には適さなかった。
防災のために撮影した画像を無線で飛ばす技術としては、ヘルメットに取り付けた小型ビデオカメラで撮影した画像信号を無線送信機で送信する、火災現場の状況把握装置が提言されている(特許文献3,4)。
【0003】
また、赤外線像と可視光線像を表示することができる頭部装着ディスプレイ装置としては、赤外線カメラで撮像した映像を再生するディスプレイをヘルメットに設け、ヘルメットが装着された際の正面視の輪郭内に、赤外線カメラおよびディスプレイが配置されることを特徴とする異常探査支援装置(特許文献4,5)、赤外線を受光するためのセンサーと、可視光線像を撮像するビデオカメラと、それらを表示するディスプレーとを具備した頭部装着ディスプレイ装置が提言されている(特許文献6)。
また、発明者等が提言した視認装置としては、ハーフミラーが形成された自由曲面プリズムを用いて、赤外と可視映像の同時視認が可能な顔面装着型の装置がある(特許文献7)。
【0004】
【特許文献1】特開平2−274249号公報
【特許文献2】特開平7−13084号公報
【特許文献3】特開2000−333160号公報
【特許文献4】実開平05−075892号公報
【特許文献5】特開2004−244745号公報
【特許文献6】特開平8−54282号公報
【特許文献7】特開2002−23098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
救助活動のように動きのある作業において視認装置は、両手の自由度を確保しながら、装着性を確保しなくてはならない。また、過酷な環境下での使用を想定すると、装置の操作性がよいことも解決すべき課題である。
上記従来の装置は、これらの課題を一定程度解消するものであるが、装着性の点で問題があった。すなわち、ヘルメットタイプのものにおいては、個人の頭部の大きさにあわせてバンドの締め付け等を調整する必要があるが、カメラ等重量のある部品が取り付けられていることからずれの問題が生じ、ゴーグルタイプのものにおいては、保安用ヘルメットを同時に装着することが難しかった。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、操作性、装着性および安全性に優れた頭部装着型赤外画像撮像視認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、発明者は、次の点を考慮して、頭部装着型赤外画像視認装置を開発した。
(1)赤外線カメラ、電源等の重量のある付加物をヘルメットの略中心線上にレイアウトし、バランスをよくすること。
(2)熱画像と直視像との重なり合う距離を予め光学系で設定すること。
(3)赤外線カメラの画角を装着者の直視視野角と同程度にすること。
(4)手袋装着時の操作性を考慮してON/OFFスイッチを構成すること。
(5)ゴーグルのレンズ色と熱画像色との関係を工夫して視認性をよくすること。
(6)所定の温度域(例えば、人間の体温域)のみを着色表示すること。
【0008】
すなわち、本発明の第一の態様は、ヘルメットの頂上部近傍に赤外線カメラ、電源、無線送信機および所定の温度域を着色した赤外画像データを作成する画像処理部を埋設し、アンテナを固設し、赤外画像データをアンテナから送信する頭部装着型赤外画像視認装置を要旨とする。
第一の態様において、好ましくは、前記ヘルメットの前方部に電源のスイッチを設け、当該スイッチを押し込み/引き出し自在に取り付けられたパネルないしは所定回数押下することで電源のON/OFFを制御するボタンで構成したこと、前記ヘルメットの頂上部にとさか形状の凸部を形成し、該凸部に赤外線カメラ、電源、無線送信機および画像処理部を埋設し、アンテナを固設したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の第二の態様は、赤外線カメラ、アンテナ、所定の温度域を着色した赤外画像データを作成する画像処理部、画像処理部からのデータをアンテナから送信する無線送信機、ヘルメット用電源およびヘルメット用電源のON/OFFを制御するスイッチを備えたヘルメットと、赤外画像データを表示する画像表示素子、および画像表示素子からの射出光を装着者の瞳に導く光学系を備えたゴーグルと、無線送信機からのデータを受信する無線受信機、並びにゴーグル用電源およびゴーグル用電源のON/OFFを制御するスイッチを備えたスイッチボックスと、スイッチボックスおよびゴーグルを接続するケーブルとから構成される頭部装着型赤外画像視認装置を要旨とする。
【0010】
また、本発明の第三の態様は、赤外線カメラ、アンテナ、所定の温度域を着色した赤外画像データを作成する画像処理部、画像処理部からのデータをアンテナから送信する無線送信機、ヘルメット用電源およびヘルメット用電源のON/OFFを制御するスイッチを備えたヘルメットと、無線送信機からのデータを受信する無線受信機、赤外画像データを表示する画像表示素子、画像表示素子からの射出光を装着者の瞳に導く光学系、ゴーグル用電源およびゴーグル用電源のON/OFFを制御するスイッチを備えたゴーグルとから構成される頭部装着型赤外画像視認装置を要旨とする。
第二または三の態様において、好ましくは、前記ヘルメットは、頂上部にとさか形状の凸部が形成され、該凸部に赤外線カメラ、画像処理部、無線送信機およびヘルメット用電源が埋設され、凸部にアンテナが固設されること、前記スイッチは、ヘルメットの前方部に設けられた押し込み/引き出し自在に取り付けられたパネルないしは所定回数押下することでヘルメット用電源をON/OFFを制御するボタンで構成することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第四の態様は、ヘルメットの前方位置に埋設された赤外線カメラ、ヘルメットの後方位置に配設され、所定の温度域を着色した赤外画像データを作成する画像処理部、および電源を備えたヘルメットと、赤外画像を表示する画像表示素子、および画像表示素子からの射出光を装着者の瞳に導く光学系を備え、降下位置において装着者の視野を覆うようヘルメットに傾動自在に取り付けられたゴーグルとから構成される頭部装着型赤外画像視認装置であって、前記ゴーグルが降下位置にあるときは赤外線カメラが作動状態となり、前記ゴーグルが上昇位置にあるときは赤外線カメラが停止状態となることを特徴とする装置を要旨とする。
また、本発明の第五の態様は、ヘルメットの前方位置に埋設された赤外線カメラ、ヘルメットの後方位置に配設され、所定の温度域を着色した赤外画像データを作成する画像処理部、赤外画像データを表示する画像表示素子、電源、および装着者の視野を覆うシールドを備えたヘルメットからなる頭部装着型赤外画像視認装置であって、前記シールドの一部はハーフミラーとなっており、画像表示素子からの射出光を反射して装着者の瞳に導くことを特徴とする装置を要旨とする。
第二ないし五の態様において、好ましくは、前記ゴーグルの光学系は、画像表示素子射出光を装着者の視野と重畳しないウィンドウ枠に表示すること、前記画像表示素子の視野が、赤外線カメラの視野と重なるよう構成されることこと、前記ゴーグルの光学系は、画像表示素子において赤外画像を表示する際の高温色調と同系色可視光を遮断することを特徴とする。
なお、ゴーグルの光学系をハーフミラーで構成することにより、該ハーフミラーの外側に虚像を作り出すことができることは周知の事実である。
【0012】
また、第一ないし五の態様において、好ましくは、前記ヘルメットは、音声データを受信する音声受信機とスピーカー、および/または、マイクロフォンおよびマイクロフォンにより収集した音声を送信する音声送信機を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保安用ヘルメットとしての機能を提供すると共に、必要が生じた際のみ赤外画像を視認することができる。
また、各機器を接続するケーブルを最小限とすることで、装着者の作業性を向上させている。
また、ヘルメットとゴーグルが分離されているため、個人のサイズに合致する装置を選択して組み合わせることが可能となり、コスト性および汎用性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態は、(一)赤外線カメラ付きヘルメットと(二)視認装置から構成される。各要素の具体的構成を以下に説明する。
(一)赤外線カメラ付きヘルメット
本発明の赤外線カメラ付きヘルメットは、ヘルメット1と、ヘルメット1の頂上部に固設された無線アンテナ3と、ヘルメット1に埋設された赤外線カメラ7と、スイッチ8を主たる要素とする。
ヘルメット1には、無線送信機4、赤外線カメラ7、その隣接位置に画像処理部6が中央線A−A’に沿って埋設されているため、重心が安定しており、装着時の固定性は良好である。また、ヘルメット1の側部にはストラップを取り付けることができ、これにより装着者の頭部への固定を確実にしている。
無線アンテナ3の高さは、突起物等と衝突頻度を少なくするため、高さ5cm以下とするのが好ましい。なお、ヘルメット1とゴーグル21を物理的に連結する場合には、無線アンテナ3および無線送信機4は不要となる。
【0015】
赤外線カメラ7は、2次元に配列したボロメ−タ等の熱型赤外線検出素子であり、消費電力の少ないタイプのものを採用するのが好ましい。遠赤外線、中赤外線、近赤外線のいずれを使用するものでもよく、用途に応じて適宜最適なものを選択することができる。赤外線カメラ7は、画角が49゜程度若しくはそれ以上を備えるのがよい。これにより装着者の視野角と同程度若しくはそれ以上の周囲の映像を液晶表示部に表示させることができる。赤外線カメラ7は、ヘルメット1に埋設されているため、むき出しの場合と比較して耐熱性および防水性が確保できる。
なお、赤外線を可視光に変える赤外線変換装置(イメージコンバータ)または赤外線増強装置(イメージインテンシファイア)をヘルメット1に内蔵させてもよい。
【0016】
スイッチ8は赤外線カメラ7による撮像をON/OFF制御するものである。手袋装着時でも容易に操作できるように、押し込み/引き出し構成とすること、或いは、奇数回(偶数回)押すことでONとなり、偶数回(奇数回)押すことでOFFとなるように構成することが好ましい。
なお、ヘルメット1の内側にスピーカーを内蔵させることにより、司令部(消防車や情報センター等)からの指示を受信したり、マイクロフォンを設けることで、司令部と双方向通信を行えるようにしてもよい。
【0017】
(二)視認装置
視認装置はゴーグル21とスイッチボックス23とそれらを接続するケーブル22とから構成される。
ゴーグル21は、一対のレンズ26を有する両眼光学シースルーであり、赤外画像を非表示とする際は、両眼で直接現場を視認することができる。一対のレンズ26の上方には、各レンズと対向するように設けられた液晶パネル24,24からなる液晶表示部があり、赤外線カメラ7で撮像した赤外画像が電気的に分割されて表示される。ここで、液晶パネル24を1枚とし、赤外画像を片目で確認する構成としてもよい。なお、特開2002−23098に開示されるような凹面鏡状のハーフミラーが形成された自由曲面プリズムとその透過光のパワーおよび光軸を補正するプリズムとから構成される光学系を用いてもよい。
【0018】
赤外画像は、可視光の視野と重畳させる表示させてもよいし、図5に示すように、別途の画像ウィンドウで表示するようにしてもよい。重畳表示させる場合には、予め設定した赤外線カメラ7の測定距離に熱線を発する物または人を置き、ゴーグル21の掛け具合を調整することで、重畳表示のずれを修正する。ただし、ゴーグル21がヘルメットと連結されている構成では、この作業は不要である。また、画像処理部6では、赤外画像中、特定の温度域を着色する等の画像処理が施される。
【0019】
スイッチボックス23には、無線受信機10が内蔵されており、無線送信機4から送信された赤外画像を受信し、ゴーグル21へ送信する。すなわち、無線受信機10は、受信した赤外画像を液晶パネル24に表示し、その反射光が装着者に導かれることで、装着者は周囲の赤外画像を視認することができる。なお、ヘルメット1とゴーグル21を物理的に連結する場合には、無線受信機10は不要となる。
【0020】
スイッチボックス23には、受光情報を増幅するとともに液晶表示部へ増幅された信号を送出する増幅部を設けてもよい。これにより、信号の増幅を行う場合に、顔面に装着されるゴーグルの重量を軽減することができる。
また、スイッチボックス23には、赤外線に基づく画像のコントラストなどの調整回路を内蔵させ、別個にボリューム調整つまみなどを備えていてもよい。これにより、装着者は、透過光の強度に応じて、ボリューム調整つまみを操作させることにより赤外線に基づく画像を調整することができ、周囲の光量に応じて赤外線に基づく入射光と可視光に基づく入射光とのバランスを取ることができる。
【0021】
一方で、赤外画像の表示機能をシンプルなものとすることにより、スイッチボックス23を無くすことも可能である。すなわち、増幅部やコントラストの調整はもちろん、着色機能も特定の温度帯のみ着色するように構成することで、スイッチボックス23およびケーブル22を無くし、ゴーグル21に単純なスイッチを設けた構成とすることもできる。
【0022】
なお、一の視認装置装着者の無線送信機4による送信を他の視認装置装着者が受信し、現場の状況を共有できるように構成してもよいし、司令部に設けた無線受信機により、遠隔地から作業者の視認する赤外画像を把握できるように構成してもよい。この際、可視光画像撮像用カメラを備える構成とし、可視光画像も共有するようにしてもよい。
逆に、無線受信機10により、司令部からの情報を受信させる構成としてもよく、例えば、救助活動を支援するために、建物の間取り図を無線で受信する機能を付加してもよい。
【0023】
以下では、本発明を実施例により説明するが、本発明が実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0024】
ヘルメット1は、公知の自己消火素材で構成されたヘルメットであり、次に述べる各構成要素を付加した総重量(電源2含む)は、1.0kgである。
本実施例では、ヘルメットの頂上部にとさか形状の凸部が形成されており、無線送信機4、赤外線カメラ7、電源2等の重量のある機器類がヘルメット1の凸部に集約しているため、装着時の安定性に優れている。内部を覆う緩衝材9には蓋11,12が設けられており、無線送信機4と画像処理部6のメンテナンスを容易にしている。
電源2は、無線送信機4と赤外線カメラ7に電力を供給するものである。本実施例では、前者が1W、後者が1.2Wの電力を消費するが、連続3時間程度の作動を可能としている。
無線アンテナ3は、ヘルメット1の頂部に固設され、約100mの伝送距離がある。
【0025】
無線送信機4は、アイデンビデオトロニクス社のTRX24T66miniを採用した。無線電波数 2.4GHz帯域であり、入出力信号はNTSC標準信号である。外形寸法は26×23×10mmとコンパクトで、重量も8gと軽量である。入力電源電圧は、4.5V〜5.5V/DCであり、消費電流は0.3A以下である。本実施例の無線送信機4によれば、無線受信機に30フレーム/秒の伝送をすることが可能であり、いわゆる完全リアルタイム画像を実現することができる。また、図示しない受信機の外形寸法は96×60×17mmであり、重量は53gであり、消費電力0.2A以下である。
なお、電波法の規定される(特定小電力)をクリアしており、無許可で自由な使用が可
能である。
【0026】
ケーブル5は、無線送信機4、赤外線カメラ7および電源2とを接続するものであり、被覆された銅線である。
赤外線カメラ7は、対象物から放射される赤外線を捕らえる赤外線センサであり、対象物の放射する赤外線エネルギーを画像処理部6で対象物の温度分布として無線送信機4へ伝送する。赤外線カメラ7は、非冷却タイプのものであり、重量は200g程度、解像度は160×120ピクセルである。表面温度が−10℃〜400℃の物体を検知することが可能であり、温度域毎に異なる着色を施して表示することも可能である。
なお、赤外線カメラ7のレンズに赤外エネルギーを減衰させるフィルターを装着することにより、さらなる高温域(約1000℃)まで表示させることも可能である。
【0027】
スイッチ8は、ヘルメット1の前方部に設けられた特定のマークを形取ったパネルであり、押し込み/引き出し自在に取り付けられている。通常はスイッチ8を引き出した状態にあり、これを手のひら等で押下すると、赤外線カメラによる撮像が開始される。会社のエンブレム等を用いることによりデザイン性を高めることもできる。本実施例では、消防のマークをスイッチとし、現場で赤外画像が必要な際には消防のマークを手のひらで押すことで、赤外画像を視認可能としている。スイッチ8により電源をONとすると、その3秒後には赤外画像がゴーグル21に映し出される。このように、本実施例の装置によれば、火災発生による煙等によって現場作業者の視界を妨げるような状況下でも、ヘルメットを装着した現場作業者が直接赤外画像を見ながら活動することができる。
【0028】
ゴーグル21は、両眼光学シースルーのものであり、実写視野角は30°(H)×18°(V)であり、液晶表示視野は20°(H)×15°(V)であり、重量は約250gである。光学系は、図3に示すようなハーフミラー(半透過鏡)を採用した構成であり、可視光に基づく周囲の情報は、ハーフミラー25を通過して装着者に直接視認可能である。液晶表示部は、一対のレンズ26の上方に各レンズと対向するように設けられた2次元画像表示素子である液晶パネル24,24からなる。液晶パネル24,24には赤外線カメラ7で撮像した赤外画像が電気的に分割されて表示され、液晶パネル24,24から射出された光束は、ハーフミラーにより反射されて拡大されて装着者の瞳に導かれる。これにより、ハーフミラーの外側に拡大された虚像が表示される。
【0029】
本実施例では、実施の形態におけるレンズ26を青色とするとともに、液晶パネル24に赤外線に基づく映像の温度の高い部分の画像を赤系色として表示させている。このように構成すれば、透過光のバックグランドが青色色彩とされることにより、被写体から発せられた透過光の赤または橙などの赤系色が吸収されて、装着者は可視光における赤系色を認識することができなくなる。一方、液晶パネル24では温度の高い部分を赤系色で表示しているので、装着者が赤系色を認識すれば、その部分は温度の高い部分であると判断できる。すなわち、火災現場やその他の高温度になるおそれのある作業現場において、昼間、夜間を問わずに温度の高い部分を視覚にて認識でき、温度の高い部分に触れることなく作業を行うことができ、これにより危険を回避することができる。また、550〜780nmの光をカットするフィルターをレンズ内外の適宜の位置に装着することで、高温色調を遮断するようにしてもよい。
なお、レンズ26に紫外線、放射線などの有害光が遮断できるもの採用して、有害光を遮断する機能をもたせてもよい。
【0030】
スイッチ8を押すことで、赤外線カメラ7および無線送信機4を作動状態にし、またスイッチボックス23のスイッチをONにすることで、ゴーグル23の液晶パネル24,24が作動状態となり、ゴーグル越しにみえる外視野に赤外線カメラ8で受信した赤外画像が重ね合わせてみることが可能である。本実施例では赤外画像と可視像が重なって見えるように赤外線カメラの画角等を調整している。具体的には、赤外線カメラ7の視野角を液晶表示部の視野と同じ20°(H)×15°(V)としている。このように赤外画像と可視像を重ね合わせる距離を予め光学系で設定しているため、スイッチを入れ、赤外画像で温度情報を判断する際の処理時間を高速化することを可能としている。重ね合わせ距離の設定は用途に応じて調整可能であり、本実施例では液晶パネル24を上下すること等で好ましい測定距離に調整できるよう設計している。例えば、火災現場における好ましい測定距離は、経験則上5〜30mであるが、1km程度までの距離内において、用途に応じて所定の測定距離に適した光学系を適宜設計するのが好ましい。
【0031】
以上のとおり、本実施例の装置によれば、撮像した赤外画像を無線により送信することができるため、データ通信を行うためのケーブルが不要となり、装着者が作業をする際にケーブルが邪魔となることが無い。また、個人差が大きいヘルメットはサイズを多数用意し、ゴーグルはフリーサイズで共用とするといった構成も可能である。図6に本実施例の装置装着時の外観斜視図を示す。
【実施例2】
【0032】
本実施例は、図7に示すように、実施例1の構成から、スイッチボックス23を無くし、代わりにゴーグル21にスイッチパネル34を設けた視認装置の構成例である。本実施例では、赤外線カメラ7にモノクロカメラを採用し、体温の温度域のみを着色表示する構成とし、画像処理の負荷を下げることで、スイッチボックス23を無くし、ケーブルフリーを実現している。スイッチパネル34には、小型プロセッサとゴーグル用電源が内蔵されており、表面にはON/OFFボタンが一つと、ボリューム調整用つまみが一つ設けられている。
なお、本実施例ではスイッチパネル34内にゴーグル用電源を内蔵しているが、電源非内蔵型のスイッチパネルとし、ゴーグル21の他端に電源を固設することで、左右の重量バランスをとることが好ましい。
【実施例3】
【0033】
本実施例は、跳ね上げ式のゴーグルであるバイザー27を、ヒンジ28によりヘルメット1のつばに連結している。バイザー27は、ヒンジ28により傾動自在に固定され、バイザー27を跳ね上げたときには赤外線カメラ7がOFFとなり(図8B)、バイザー27を降ろしたときには赤外線カメラ7がONとなり、バイザー27に赤外画像が表示される(図8A)。赤外線カメラ7による撮像データは、処理ユニット29により、処理されたバイザー27の液晶パネル24に送信される。
ヘルメット1には中央線に沿って赤外線カメラ7と処理ユニット29が設けられており、これらが頂上部を挟んで略対向位置に配置されることで、装着時の安定性を高めている。
本実施例では、赤外線カメラ7にモノクロカメラを採用し、特定の温度域(例えば、人間の体温の温度域)のみを着色表示する構成とし、画像処理の負荷を下げることで、処理ユニット29を小型化することを可能としている。すなわち、本実施例の構成によれば、装着者は機器類を接続するケーブル5は全てヘルメット1に内蔵されることとなる。
ヘルメット1の両側部には、電源2がそれぞれ2つ設けられており、左右の重量バランスを取っている。すなわち、偶数の電源を個左右対象に配置することが好ましい。
本実施例のバイザー27の光学系は、実施例1と同様にシースルー式を採用しているが、非透過式として赤外画像のみを表示する構成としてもよいし、単眼タイプのものでもよい。
【実施例4】
【0034】
本実施例は、図9に示すように、頭部を全体的に覆うヘルメット1を採用し、顔面前部を覆うシールド31が赤外画像を表示するディスプレイとなる構成例である。シールド31は、透明な樹脂板であり、液晶パネル24からの入射光を反射するためのコーティング部32が設けられている。コーティング部32は、ハーフミラー構成となっており、図10に示すように、可視光を視認するとともに、液晶パネル24からの入射光を反射して、瞳に導く構成となっている。他の構成は、実施例3と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、消防用活動における人命救助や残火の発見に活用できるのみならず、防災、保守点検(電力、プラント等)、警備(海上保安等)、検疫及び医療等の現場でも活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1の赤外線カメラ付きヘルメットおよび視認装置の外観斜視図である。
【図2】図1のA−A’断面図である。
【図3】実施例1の赤外線カメラ付きヘルメットの外観斜視図である。
【図4】実施例1の光学系の説明図である。
【図5】赤外画像の表示方法の説明図である。
【図6】実施例1の装置装着時の外観斜視図である。
【図7】実施例2の装置装着時の外観斜視図である。
【図8】実施例3の装置装着時の外観斜視図である。
【図9】実施例4の装置装着時の外観斜視図である。
【図10】実施例4の光学系の説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ヘルメット
2 電源
3 無線アンテナ
4 無線送信機
5 ケーブル
6 画像処理部
7 赤外線カメラ
8 スイッチ
9 緩衝材
10 無線受信機
11,12 蓋
21 ゴーグル
22 ケーブル
23 スイッチボックス
27 バイザー
28 ヒンジ
33 ストラップ
34 スイッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットの頂上部近傍に赤外線カメラ、電源、無線送信機および所定の温度域を着色した赤外画像データを作成する画像処理部を埋設し、アンテナを固設し、赤外画像データをアンテナから送信する頭部装着型赤外画像視認装置。
【請求項2】
前記ヘルメットの前方部に電源のスイッチを設け、当該スイッチを押し込み/引き出し自在に取り付けられたパネルないしは所定回数押下することで電源のON/OFFを制御するボタンで構成したことを特徴とする請求項1の頭部装着型赤外画像視認装置。
【請求項3】
前記ヘルメットの頂上部にとさか形状の凸部を形成し、該凸部に赤外線カメラ、電源、無線送信機および画像処理部を埋設し、アンテナを固設したことを特徴とする請求項1または2の頭部装着型赤外画像視認装置。
【請求項4】
赤外線カメラ、アンテナ、所定の温度域を着色した赤外画像データを作成する画像処理部、画像処理部からのデータをアンテナから送信する無線送信機、ヘルメット用電源およびヘルメット用電源のON/OFFを制御するスイッチを備えたヘルメットと、
赤外画像データを表示する画像表示素子、および画像表示素子からの射出光を装着者の瞳に導く光学系を備えたゴーグルと、
無線送信機からのデータを受信する無線受信機、並びにゴーグル用電源およびゴーグル用電源のON/OFFを制御するスイッチを備えたスイッチボックスと、
スイッチボックスおよびゴーグルを接続するケーブルとから構成される頭部装着型赤外画像視認装置。
【請求項5】
赤外線カメラ、アンテナ、所定の温度域を着色した赤外画像データを作成する画像処理部、画像処理部からのデータをアンテナから送信する無線送信機、ヘルメット用電源およびヘルメット用電源のON/OFFを制御するスイッチを備えたヘルメットと、
無線送信機からのデータを受信する無線受信機、赤外画像データを表示する画像表示素子、画像表示素子からの射出光を装着者の瞳に導く光学系、ゴーグル用電源およびゴーグル用電源のON/OFFを制御するスイッチを備えたゴーグルとから構成される頭部装着型赤外画像視認装置。
【請求項6】
前記ヘルメットは、頂上部にとさか形状の凸部が形成され、該凸部に赤外線カメラ、画像処理部、無線送信機およびヘルメット用電源が埋設され、凸部にアンテナが固設されることを特徴とする請求項4または5の頭部装着型赤外画像視認装置。
【請求項7】
前記スイッチは、ヘルメットの前方部に設けられた押し込み/引き出し自在に取り付けられたパネルないしは所定回数押下することでヘルメット用電源のON/OFFを制御するボタンで構成することを特徴とする請求項4、5または6の頭部装着型赤外画像視認装置。
【請求項8】
ヘルメットの前方位置に埋設された赤外線カメラ、ヘルメットの後方位置に配設され、所定の温度域を着色した赤外画像データを作成する画像処理部、および電源を備えたヘルメットと、
赤外画像を表示する画像表示素子、および画像表示素子からの射出光を装着者の瞳に導く光学系を備え、降下位置において装着者の視野を覆うようヘルメットに傾動自在に取り付けられたゴーグルとから構成される頭部装着型赤外画像視認装置であって、
前記ゴーグルが降下位置にあるときは赤外線カメラが作動状態となり、前記ゴーグルが上昇位置にあるときは赤外線カメラが停止状態となることを特徴とする装置。
【請求項9】
ヘルメットの前方位置に埋設された赤外線カメラ、ヘルメットの後方位置に配設され、所定の温度域を着色した赤外画像データを作成する画像処理部、赤外画像データを表示する画像表示素子、電源、および装着者の視野を覆うシールドを備えたヘルメットからなる頭部装着型赤外画像視認装置であって、
前記シールドの一部はハーフミラーとなっており、画像表示素子からの射出光を反射して装着者の瞳に導くことを特徴とする装置。
【請求項10】
前記ゴーグルの光学系は、画像表示素子射出光を装着者の視野と重畳しないウィンドウ枠に表示することを特徴とする請求項4ないし9のいずれかの頭部装着型赤外画像視認装置。
【請求項11】
前記画像表示素子の視野が、赤外線カメラの視野と重なるよう構成されることを特徴とする請求項4ないし10のいずれかの頭部装着型赤外画像視認装置。
【請求項12】
前記ゴーグルの光学系は、画像表示素子において赤外画像を表示する際の高温色調と同系色可視光を遮断することを特徴とする請求項4ないし11のいずれかの頭部装着型赤外画像視認装置。
【請求項13】
前記ヘルメットは、音声データを受信する音声受信機とスピーカー、および/または、マイクロフォンおよびマイクロフォンにより収集した音声を送信する音声送信機を備えることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかの頭部装着型赤外画像視認装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−286269(P2007−286269A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112580(P2006−112580)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【出願人】(000227836)日本アビオニクス株式会社 (197)
【Fターム(参考)】