説明

顔面保護マスク

【課題】緩衝パッドの合理的な改造により、緩衝パッドが顔面の顎部及び額部において前端から左右の後方側に回り込む状態で配置されるマスク形態でも良好な通気性を確保する。
【解決手段】マスクフレーム1の裏面に取付けられた緩衝パッドP1には、パッド長手方向で複数に分割された分割パッド部3と、マスクフレーム1への取付け時に少なくとも分割パッド部3の隣接間の取付け基部側に通気空間Sを現出する状態で隣接分割パッド部同士を間隔を空けて屈曲可能に連結する可撓連結体4とが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球やソフトボール、アイスホッケーなどの競技スポーツ、或いは、格闘技等の各種分野において用いられる顔面保護マスクで、詳しくは、マスクフレームの裏面に緩衝パッドが取付けられている顔面保護マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の顔面保護マスクでは、前記緩衝パッドを、パッド長手方向で連続する単一の緩衝材と、当該緩衝材の全周を被覆する合成皮革等のパッド外皮とから構成し、前記緩衝材のパッド長手方向複数箇所に、顔面側に開口する凹状の溝を形成するとともに、前記パッド外皮の顔面側となる裏面側外皮部における前記緩衝材の凹状溝に対応する部分を、凹状溝の底面におけるパッド長手方向の中央位置にまでV字状に入り込ませ、この裏面側外皮部のV字状入り込み部分の先端と、緩衝材における凹状溝の底面側部位、及びマスクフレームの裏面に取付けられるパッド表皮の表面側外皮部とを縫着していた(特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】実公平2−19170号公報
【特許文献2】特開昭59−57678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の顔面保護マスクでは、前記パッド外皮の裏面側外皮部におけるパッド長手方向複数箇所にV字状の窪みが形成されているため、緩衝パッドが顔面の周囲に沿って縦長の長環形状又はそれに近い形状で配置されるマスク形態では、顔面の前端から左右の後方側に回り込む湾曲量が少ない分だけ、裏面側外皮部のV字状窪みでの開口幅の縮小が少なくなり、このV字状窪みを通気路とする通気性を確保することができる。
【0005】
しかし、前記緩衝パッドが顔面の顎部及び額部において前端から左右の後方側に回り込む状態で配置されるマスク形態では、湾曲配置によるパッド外皮のV字状窪みでの開口幅の縮小が大きくなるため、パッド外皮のV字状窪みに臨む対向面同士が密着して通気性が確保できなくなる可能性がある。
【0006】
また、従来の顔面保護マスクにおいては、前記パッド外皮の裏面側外皮部における顔面への当て付け面が、複数のV字状の窪みによって断続形成されているため、パッド外皮の各当て付け面が顔面の形状や動きに追従し易く、さらに、ボール等との衝突時における各当て付け面の個々の独立した圧縮作動により、前記パッド外皮の顔面への当て付け面全体が連続した平滑面に形成されている場合に比して、装着時のフィット性及び緩衝性を向上することができるものの、前記パッド外皮の各当て付け面の動きが、パッド表皮の表面側外皮部において連続する緩衝材の基部によって制約されるため、フィット性及び緩衝性の向上にも自ずと限界があった。
【0007】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、前記緩衝パッドの合理的な改造により、緩衝パッドが顔面の顎部及び額部において前端から左右の後方側に回り込む状態で配置されるマスク形態でも良好な通気性を確保することができるとともに、装着時のフィット性及び緩衝性も改善することのできる顔面保護マスクを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による第1の特徴構成は、マスクフレームの裏面に緩衝パッドが取付けられている顔面保護マスクであって、
前記緩衝パッドには、パッド長手方向で複数に分割された分割パッド部と、マスクフレームへの取付け時に少なくとも分割パッド部の隣接間の取付け基部側に通気空間を現出する状態で隣接分割パッド部同士を間隔を空けて屈曲可能に連結する可撓連結体とが備えられている点にある。
【0009】
上記構成によれば、前記緩衝パッドが独立した複数の分割パッド部から構成され、且つ、前記可撓連結体によって隣接分割パッド部同士が間隔を空けて屈曲可能に連結されているから、例え、緩衝パッドが顔面の顎部及び額部において前端から左右の後方側に回り込む状態で配置されるマスク形態であっても、マスクフレームへの取付け時には、少なくとも分割パッド部の隣接間の取付け基部側に通気空間を現出することができる。
【0010】
さらに、前記緩衝パッドを構成する複数の分割パッド部が独立して圧縮作動することができるため、各分割パッド部の当て付け面が顔面の形状や動きに追従し易くなり、しかも、隣接分割パッド部同士が屈曲可能な可撓連結体で連結されているため、マスクフレームに衝撃力が作用したとき、前記通気空間に対応する可撓連結体の可撓範囲内で隣接する分割パッド部同士が相対近接移動することが可能となる。
【0011】
従って、緩衝パッドが顔面の顎部及び額部において前端から左右の後方側に回り込む状態で配置されるマスク形態でも、マスクフレームへの取付け時には、少なくとも分割パッド部の隣接間の取付け基部側に通気空間を現出して良好な通気性を確保することができるとともに、複数の分割パッド部での独立した圧縮作動と通気空間に対応する可撓連結体の可撓範囲内での隣接分割パッド部の相対近接移動により、装着時のフィット性を向上することができるばかりでなく、マスクフレームに作用する衝撃力を効率良く緩和することができる。
【0012】
本発明による第2の特徴構成は、前記マスクフレームの裏面に取付けられる顎部用緩衝パッドと額部用緩衝パッドとのうちの少なくとも一方が、前記分割パッド部を備えた緩衝パッドから構成されている点にある。
【0013】
上記構成によれば、マスクフレームへの取付け時には、少なくとも分割パッド部の隣接間の取付け基部側に通気空間を現出して良好な通気性を確保することができるから、マスクフレームの裏面に取付けられる顎部用緩衝パッド又は額部用緩衝パッド若しくは両緩衝パッドとして最適に使用できる。
【0014】
本発明による第3の特徴構成は、前記緩衝パッドを構成する各分割パッド部には、前記マスクフレームに対してパッド長手方向での相対移動を許容する状態で取付け可能な装着具が設けられている点にある。
【0015】
上記構成によれば、前記マスクフレームに衝撃力が作用したとき、前記各分割パッド部に設けた装着具とマスクフレームとの間におけるパッド長手方向での相対移動と、複数の分割パッド部での独立した圧縮作動、及び、前記通気空間に対応する可撓連結体の可撓範囲内での隣接分割パッド部の相対近接移動とにより、マスクフレームに作用する衝撃力をより効率良く緩和することができる。
【0016】
本発明による第4の特徴構成は、前記可撓連結体には、少なくとも前記分割パッド部の隣接間における通気空間形成領域の前方に対応する部位に通気性生地が配設されている点にある。
【0017】
上記構成によれば、前記可撓連結体の一部又は全部を構成する通気性生地を通して、少なくとも分割パッド部の隣接間の取付け基部側に現出される通気空間とマスクの外面側とにわたる通気流が発生するため、通気性の向上を図ることができる。
【0018】
本発明による第5の特徴構成は、前記可撓連結体の通気空間長手方向での幅が、前記分割パッド部の通気空間長手方向での幅よりも小に構成されている点にある。
【0019】
上記構成によれば、前記可撓連結体の通気空間長手方向での幅が小さくなる分だけ、前記分割パッド部の隣接間での前方側への開口面積が大きくなり、通気性能の向上を図ることができる。しかも、前記可撓連結体の通気空間長手方向での幅が分割パッド部と同じ幅に構成されている場合に比して、前記通気空間に対応する可撓連結体の可撓性が高くなり、隣接分割パッド部のスムーズな相対近接移動によって緩衝性能の向上を図ることができる。
【0020】
本発明による第6の特徴構成は、前記緩衝パッドを構成する複数の分割パッド部の横断面視での隣接間隔が、前記マスクフレームへの取付け面を一直線状に揃えた状態で顔面への当て付け面側ほど広幅に構成されている点にある。
【0021】
上記構成によれば、マスクフレームへの取付け時に、分割パッド部の隣接間の取付け基部側のみならず、先端側においても通気空間を現出することが可能となり、通気性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
図1〜図5は顔面保護マスクの一例である野球用のキャッチャーマスクを示し、所定のマスク形状に形成された鋼材製のマスクフレーム1の裏面側の下側部には、顔面の顎部に沿って前面中央位置から左右の後方側に回り込む顎部用緩衝パッドP1が取付けられ、前記マスクフレーム1の裏面側の上側部には、顔面の額部に沿って前面中央位置から左右の後方側に回り込む額部用緩衝パッドP2が取付けられているとともに、前記マスクフレーム1の頂部と左右の耳保護部位とにわたって装着ベルト2が取付けられている。
【0023】
前記顎部用緩衝パッドP1は、パッド長手方向で複数に分割(当該実施形態では3つに分割)された分割パッド部3と、マスクフレーム1への取付け時に少なくとも分割パッド部3の隣接間の取付け基部側に通気空間Sを現出する状態で隣接分割パッド部3同士を間隔Wを空けて屈曲可能に連結する可撓連結体4とから構成されているとともに、前記額部用緩衝パッドP2は、顔面に対する当て付け面10aがパッド長手方向で複数に断続形成された単一のパッドから構成されている。
【0024】
前記顎部用緩衝パッドP1の各分割パッド部3は、図2に示すように、顔面に対する当て付け面5aを備えた合成皮革や天然皮革等で製作される裏面側の外皮5と、マスクフレーム1への取付け面6aを備えた合成皮革や天然皮革等で製作される表面側の外皮6と、前記裏面側外皮5の内面に沿って層状に配設されるクッション性に優れた合成樹脂製の第1発泡体7Aと、前記表面側外皮6の内面に沿って層状に配設されるクッション性に優れた合成樹脂製の第2発泡体7Bと、第1・第2発泡体7A,7B間に囲繞されるブロック状の合成樹脂製の第3発泡体7Cとからなる。
【0025】
前記第1発泡体7Aと第2発泡体7B及び第3発泡体7Cとをもって、前記マスクフレーム1に作用する衝撃力を吸収する緩衝材7が構成されているとともに、前記裏面側外皮5と表面側外皮6及び第1・第2発泡体7A,7Bとが重合する4層構造の周縁部が繊維製の縁巻きテープ8を巻き付けた状態で縫着されている。
【0026】
前記緩衝材7の第1発泡体7Aと第2発泡体7B及び第3発泡体7Cとしては、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体等が存在する。
【0027】
前記可撓連結体4は、図2、図3に示すように、各分割パッド部3の縁巻きテープ8を含む5層構造の周縁部3aのうち、分割パッド部3の隣接間に位置する側辺縁部分にわたって縫着される通気性生地の一例であるメッシュ生地から構成され、このメッシュ生地4が縫着された状態では、隣接する分割パッド部3の対向面間の隣接間隔Wが、マスクフレーム1への取付け時に分割パッド部3の隣接間の少なくとも取付け基部側に通気空間Sを現出可能な間隔に構成されている。
【0028】
そして、上述の如く、前記顎部用緩衝パッドP1が独立した複数の分割パッド部3から構成され、且つ、前記メッシュ生地4の可撓性によって隣接分割パッド部3同士が間隔Wを空けて屈曲可能に連結されているので、マスクフレーム1の裏面側の下側部に対して顎部用緩衝パッドP1が顔面の顎部において前端から左右の後方側に湾曲しながら回り込む状態で取付けられていても、分割パッド部3の隣接間の少なくとも取付け基部側に通気空間Sを確実に現出することができる。
【0029】
さらに、前記顎部用緩衝パッドP1を構成する複数の分割パッド部3が独立して圧縮作動することができるため、各分割パッド部3の裏面側外皮5の当て付け面5aが顔面の形状や動きに追従し易くなり、しかも、隣接分割パッド部3同士が柔軟性と通気性に優れたメッシュ生地4で連結されているため、マスクフレーム1に衝撃力が作用したとき、前記間隔W及び通気空間Sに対応するメッシュ生地4の可撓範囲内で隣接する分割パッド部3同士が相対近接移動することが可能となり、マスクフレーム1に作用する衝撃力を効率良く緩和することができる。
【0030】
また、前記メッシュ生地4の通気空間S長手方向での幅D1が、前記分割パッド部の通気空間長手方向での幅D2よりも小に構成されているとともに、前記顎部用緩衝パッドP1を構成する複数の分割パッド部3の横断面視での隣接間隔Wが、前記マスクフレーム1への取付け面6aを一直線状に揃えた状態で表裏(前後)方向で略一定又はそれに近い間隔に構成されている。
【0031】
そして、前記メッシュ生地4の通気空間S長手方向での幅D1が、前記分割パッド部3の通気空間S長手方向での幅D2よりも小さくなる分だけ、前記分割パッド部3の隣接間での前方側への開口面積が大きくなり、通気性能の向上を図ることができる。しかも、前記メッシュ生地4の通気空間S長手方向での幅D1が分割パッド部3と同じ幅に構成されている場合に比して、前記通気空間Sに対応するメッシュ生地4の可撓性が高くなり、隣接分割パッド部3同士のスムーズな相対近接移動によって緩衝性能の向上を図ることができる。
【0032】
前記額部用緩衝パッドP2は、図6に示すように、顔面に対する当て付け面10aを備えた合成皮革や天然皮革等で製作される裏面側の外皮10と、マスクフレーム1への取付け面11aを備えた合成皮革や天然皮革等で製作される表面側の外皮11と、前記裏面側外皮10の内面に沿って層状に配設されるクッション性に優れた合成樹脂製の第1発泡体12Aと、前記表面側外皮11の内面に沿って層状に配設されるクッション性に優れた合成樹脂製の第2発泡体12Bと、第1・第2発泡体12A,12B間に囲繞されるパッド長手方向で複数に分割(当該実施形態では3つに分割)されたブロック状の合成樹脂製の第3発泡体12Cとからなり、前記第1発泡体12Aと第2発泡体12B及び第3発泡体12Cとをもってマスクフレーム1に作用する衝撃力を吸収する緩衝材12が構成されている。
【0033】
前記緩衝材12の第1発泡体12Aと第2発泡体12B及び第3発泡体12Cとしては、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体等が存在する。
【0034】
さらに、前記裏面側外皮10及び第1発泡体12Aのうち、前記第3発泡体12Cの隣接間に対応する部位が、第3発泡体12Cの隣接間に存在する空間を通して第2発泡体12Bにまで略V字状に入り込み形成され、この裏面側外皮10及び第1発泡体12AにおけるV字状の入り込み部分の先端部が、第2発泡体12B及び表面側外皮11に縫着されているので、前記裏面側外皮10の当て付け面10aが、パッド長手方向で複数(当該実施形態では3つ)に断続形成されると同時に、前記裏面側外皮10の外面側における第3発泡体12Cの隣接間に対応する部位にはV字状の通気溝14が形成され、さらに、前記裏面側外皮10と表面側外皮11及び第1・第2発泡体12A,12Bとが重合する4層構造の周縁部が繊維製の縁巻きテープ13を巻き付けた状態で縫着されている。
【0035】
また、図3、図5に示すように、前記顎部用緩衝パッドP1を構成する複数の分割パッド部3には、前記マスクフレーム1に対してパッド長手方向での相対移動を許容する状態で取付け可能な装着具16が設けられている。
【0036】
この装着具16は、分割パッド部3の表面側外皮6と縁巻きテープ8との間に縫着された帯状繊維製の一対のバンド16A,16Bの重ね合わせ面に、フック状係合素子とループ状係合素子の組み合わせからなる一対の面ファスナー16C,16Dを設けて構成されている。
【0037】
前記装着具16のバンド16A,16Bは、マスクフレーム1の顎部保護フレーム部を構成する縦長長円形状の輪郭線材1Aの下側部とこれに水平方向に掛け渡される下側横架線材1Bとの組み合わせ箇所、又は、これらと輪郭線材1Aの上下中間二箇所に水平方向に掛け渡される中間横架線材1C,1Dとに交差する状態で下方に延出される変形U字状線材1Eを加えた組み合わせ箇所に対して脱着自在に構成されているとともに、装着状態でマスクフレーム1に衝撃力が作用したとき、バンド16A,16Bとマスクフレーム1との間での融通により、マスクフレーム1と分割パッド部3とのパッド長手方向での相対移動を許容するように構成されている。
【0038】
前記額部用緩衝パッドP2の裏面側外皮10における各第3発泡体12Cに対応する三箇所にも、上述の顎部用緩衝パッドP1の装着具16と同一構造の装着具16が設けられていて、マスクフレーム1の額部保護フレーム部を構成する輪郭線材1Aの上側部とこれに水平方向に掛け渡される上側横架線材1Fとの組み合わせ箇所に対して脱着自在に構成されている。
【0039】
〔第2実施形態〕
図7に示すように、前記マスクフレーム1の裏面側の下側部及び上側部に設けられる顎部用緩衝パッドP1及び額部用緩衝パッドP2の各々を、パッド長手方向で複数に分割(当該実施形態では3つに分割)された分割パッド部3と、マスクフレーム1への取付け時に少なくとも分割パッド部3の隣接間の取付け基部側に通気空間Sを現出する状態で隣接分割パッド部3同士を間隔Wを空けて屈曲可能に連結する可撓連結体4とから構成してもよい。
尚、前記分割パッド部3及び可撓連結体4の具体的構成とそれ以外の構成は、上述の第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0040】
〔第3実施形態〕
図8、図9は、前記マスクフレーム1の裏面側の下側部に設けられる顎部用緩衝パッドP1の別実施形態を示し、これは、パッド長手方向で複数に分割(当該実施形態では3つに分割)された分割パッド部3と、マスクフレーム1への取付け時に少なくとも分割パッド部3の隣接間の取付け基部側に通気空間Sを現出する状態で隣接分割パッド部3同士を間隔Wを空けて屈曲可能に連結する可撓連結体4とから構成されている。
【0041】
前記分割パッド部3は、顔面に対する当て付け面5aを備えた合成皮革や天然皮革等で製作される裏面側の外皮5と、マスクフレーム1への取付け面6aを備えた合成皮革や天然皮革等で製作される表面側の外皮6と、前記裏面側外皮5の内面に沿って層状に配設されるクッション性に優れた合成樹脂製の第1発泡体7Aと、前記表面側外皮6の内面に沿って層状に配設されるクッション性に優れた合成樹脂製の第2発泡体7Bと、第1・第2発泡体7A,7B間に囲繞されるブロック状の合成樹脂製の第3発泡体7Cとからなり、前記第1発泡体7Aと第2発泡体7B及び第3発泡体7Cとをもってマスクフレーム1に作用する衝撃力を吸収する緩衝材7が構成されている。
【0042】
前記可撓連結体4は、隣接する両分割パッド部3の前記第1・第3発泡体7A、7Cと第2発泡体7Bとの対向面間に入り込ませた状態で、前記裏面側外皮5と表面側外皮6及び第1・第2発泡体7A,7Bとが重合する4層構造の周縁部において縫着される通気性生地の一例であるメッシュ生地から構成され、このメッシュ生地4が縫着された状態では、隣接する分割パッド部3の対向面間の間隔Wが、マスクフレーム1への取付け時に分割パッド部3の隣接間の取付け基部側に通気空間Sを現出可能な間隔に構成されている。
【0043】
また、前記各分割パッド部3における裏面側外皮5と表面側外皮6及び第1・第2発泡体7A,7Bとが重合する4層構造の周縁部のうち、顎部用緩衝パッドP1の輪郭を構成する周縁部分にわたって繊維製の縁巻きテープ8を巻き付けた状態で縫着されている。
【0044】
前記顎部用緩衝パッドP1を構成する複数の分割パッド部3の横断面視での隣接間隔Wが、前記マスクフレーム1への取付け面6aを一直線状に揃えた状態で顔面への当て付け面5a側ほど広幅に構成されている。
【0045】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
また、当該第3実施形態では、前記マスクフレーム1の裏面側の下側部に設けられる顎部用緩衝パッドP1について述べたが、上側部に設けられる額部用緩衝パッドP2を上述の顎部用緩衝パッドP1と同様に構成してもよい。
【0046】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の各実施形態では、前記マスクフレーム1として、鋼材製の線材を溶接等の適宜手段で結合した形態のものについて説明したが、この構成に限定されるものではなく、合金や硬質合成樹脂などで成形されたマスクフレーム1であってもよい。
【0047】
(2)上述の各実施形態では、前記緩衝パッドをパッド長手方向で3分割したが、パッド長手方向で2分割又は4分割以上に構成してもよい。
【0048】
(3)上述の各実施形態では、前記可撓連結体4全体を、メッシュ生地等の通気性生地から構成したが、前記分割パッド部3の隣接間における通気空間S形成領域の前方に対応する部位にのみ通気性生地を配置してもよい。
前記可撓連結体4としては、マスクフレーム1への取付け時に少なくとも分割パッド部3の隣接間の取付け基部側に通気空間Sを現出する状態で隣接分割パッド部3同士を間隔を空けて屈曲可能に連結することのできるものであれば、如何なる構造のものを用いてもよく、例えば、前記可撓連結体4が、複数本の柔軟な紐状体から構成されている場合には、紐状体の隣接間の空間を通して前記通気空間Sとマスク前面側の外部空間とを連通させることができる。
【0049】
(4)上述の各実施形態では、前記分割パッド部3に内装される緩衝材7を、3層の発泡体7A、7B、7Cから構成したが、2層又は単層の発泡体から構成してもよい。
また、前記外皮5,6及び緩衝材12の材質は適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態を示すキャッチャーマスクの全体の斜視図
【図2】顎部用緩衝パッドの水平拡大断面図
【図3】顎部用緩衝パッドの平面図
【図4】顎部用緩衝パッドの分解背面図
【図5】顎部用緩衝パッドの正面図
【図6】額部用緩衝パッドの水平拡大断面図
【図7】本発明の第2実施形態を示すキャッチャーマスクの全体の斜視図
【図8】本発明の第3実施形態を示す顎部用緩衝パッドの水平分解断面図
【図9】第3実施形態の顎部用緩衝パッドの正面図
【符号の説明】
【0051】
D1 通気空間長手方向の幅
D2 通気空間長手方向の幅
P1 緩衝パッド(顎部用緩衝パッド)
P2 緩衝パッド(額部用緩衝パッド)
S 通気空間
W 間隔
1 マスクフレーム
3 分割パッド部
4 可撓連結体(通気性生地)
5a 当て付け面
16 装着具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクフレームの裏面に緩衝パッドが取付けられている顔面保護マスクであって、
前記緩衝パッドには、パッド長手方向で複数に分割された分割パッド部と、マスクフレームへの取付け時に少なくとも分割パッド部の隣接間の取付け基部側に通気空間を現出する状態で隣接分割パッド部同士を間隔を空けて屈曲可能に連結する可撓連結体とが備えられている顔面保護マスク。
【請求項2】
前記マスクフレームの裏面に取付けられる顎部用緩衝パッドと額部用緩衝パッドとのうちの少なくとも一方が、前記分割パッド部を備えた緩衝パッドから構成されている請求項1記載の顔面保護マスク。
【請求項3】
前記緩衝パッドを構成する各分割パッド部には、前記マスクフレームに対してパッド長手方向での相対移動を許容する状態で取付け可能な装着具が設けられている請求項1又は2記載の顔面保護マスク。
【請求項4】
前記可撓連結体には、少なくとも前記分割パッド部の隣接間における通気空間形成領域の前方に対応する部位に通気性生地が配設されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔面保護マスク。
【請求項5】
前記可撓連結体の通気空間長手方向での幅が、前記分割パッド部の通気空間長手方向での幅よりも小に構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の顔面保護マスク。
【請求項6】
前記緩衝パッドを構成する複数の分割パッド部の横断面視での隣接間隔が、前記マスクフレームへの取付け面を一直線状に揃えた状態で顔面への当て付け面側ほど広幅に構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の顔面保護マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−12039(P2010−12039A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174808(P2008−174808)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000108258)ゼット株式会社 (36)