説明

顕微鏡

【課題】結像レンズ以降の光学部材を大型化することなく像面における明るさ分布の偏りを抑制することができる、無限遠補正型の対物レンズと結像レンズの間に光学ユニットを配置する空間を備えた顕微鏡の技術を提供することを課題とする。
【解決手段】無限遠補正型の対物レンズ1と結像レンズ4の間に、光路分岐部材(光路分岐部材3a、光路分岐部材3b)を1つ以上含む光学ユニット(光学ユニット2a、光学ユニット2b)を少なくとも1つ装着する空間を備えた顕微鏡100は、結像レンズ4の光軸TXが対物レンズ1から射出された軸上の平行光束が光学ユニット中の光路分岐部材で平行移動する方向に対物レンズ1の光軸OXに対してずれるように、構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡に関し、特に、無限遠補正型の対物レンズと結像レンズの間に光学ユニットを配置する空間を備えた顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
平行光束が通過する無限遠補正型の対物レンズと結像レンズの間の光路中に、さまざまな機能を実現する光学ユニットを配置する顕微鏡の構成が知られている。また、昨今では、より高い拡張性を有する顕微鏡を提供するといった観点から、対物レンズと結像レンズの間の光路中に複数の光学ユニットを配置することができる顕微鏡も開発されている。このような顕微鏡は、例えば、特許文献1で開示されている。
【0003】
特許文献1に開示される顕微鏡は、ステージの位置とともにレボルバの位置を上下に移動させることによってレボルバの像側に生じた空間に、光学ユニットを配置し得るように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−72715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、対物レンズと結像レンズの間の光路中に配置される光学ユニットには、ダイクロイックミラーなどの光路分岐部材を備えているものがある。そのような光学ユニットとしては、例えば、AFユニットや蛍光ミラーユニットなどがある。
【0006】
光路分岐部材は、通常、対物レンズの光軸に対して傾いて配置された平行平板であることから、光路分岐部材を備えた光学ユニットが対物レンズと結像レンズの間の光路中に配置されると、対物レンズから射出された軸上の平行光束は光路分岐部材で入射方向と直交する方向に平行移動する。このため、対物レンズの光軸と結像レンズの光軸が一致するように構成されている従来の顕微鏡では、対物レンズから射出された軸上の平行光束は、その光束の中心軸が結像レンズの光軸からずれた状態で結像レンズに入射することになる。
【0007】
軸上の平行光束の中心軸が結像レンズの光軸からずれると、それに伴って、結像レンズ及び結像レンズより像面側の光学部材(以降、結像レンズと結像レンズより像面側の光学部材を併せて、結像レンズ以降の光学部材と記す。)でずれた軸外の光束がケラレやすくなるため、像面における明るさの分布に偏りが生じるといった技術的な課題が生じる。この課題に対しては、結像レンズ以降の光学部材の有効径を大きくとることで対処するのが一般的である。
【0008】
しかしながら、光学部材の有効径を大きくすると、光学部材が大型化し、その結果、製造コストの上昇、部品配置の困難さ、顕微鏡全体の大型化といった別の課題が生じることになる。また、例えば、特許文献1に開示される顕微鏡のような、対物レンズと結像レンズの間の光路中に複数の光学ユニットを配置することができる顕微鏡の場合、光路分岐部材も複数存在することがある。光路分岐部材が多くなるほど対物レンズから出射した軸上の平行光束の中心軸が結像レンズの光軸からずれる量も大きくなるため、結像レンズ以降の光学部材の有効径をさらに大きくする必要がある。従って、対物レンズと結像レンズの間の光路中に複数の光学ユニットを配置することができる高い拡張性を有する顕微鏡では、結像レンズ以降の光学部材及び顕微鏡全体の大型化と製造コストの上昇といった課題が顕著に生じてしまう。
【0009】
以上のような実情を踏まえ、本発明では、結像レンズ以降の光学部材を大型化することなく像面における明るさ分布の偏りを抑制することができる、無限遠補正型の対物レンズと結像レンズの間に光学ユニットを配置する空間を備えた顕微鏡の技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、無限遠補正型の対物レンズと結像レンズの間に、光路分岐部材を1つ以上含む光学ユニットを少なくとも1つ装着する空間を備えた顕微鏡であって、前記結像レンズの光軸が、前記対物レンズから射出された軸上の平行光束が前記空間に装着された前記光学ユニット中の前記光路分岐部材で平行移動する方向に、前記対物レンズの光軸に対してずれている顕微鏡を提供する。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の顕微鏡において、前記対物レンズの光軸に対する前記結像レンズの光軸のずれ量は、前記空間に前記光路分岐部材を1つだけ含む前記光学ユニットを1つ装着したときに、前記対物レンズから射出された軸上の平行光束が前記光学ユニット中の前記光路分岐部材で平行移動する距離の半分以上である顕微鏡を提供する。
【0012】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の顕微鏡において、前記対物レンズの光軸に対する前記結像レンズの光軸のずれ量は、前記空間に前記光学ユニットを最大限装着したときに、前記対物レンズから射出された軸上の平行光束が前記光学ユニット中の前記光路分岐部材で平行移動する距離以下である顕微鏡を提供する。
【0013】
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載の顕微鏡において、前記対物レンズの光軸に対する前記結像レンズの光軸のずれ量は、前記空間に前記光学ユニットを最大限装着したときに、前記対物レンズから射出された軸上の平行光束が前記光学ユニット中の前記光路分岐部材で平行移動する距離の半分である顕微鏡を提供する。
【0014】
本発明の第5の態様は、第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つに記載の顕微鏡において、前記空間に装着される複数の前記光学ユニットの各々の取付位置、または複数の前記光学ユニット中の前記光路分岐部材の各々の取付位置が、前記対物レンズの光軸と直交する方向に異なる顕微鏡を提供する。
【0015】
本発明の第6の態様は、第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つに記載の顕微鏡において、前記空間に装着される前記光学ユニットのうち隣接する2つの前記光学ユニットは、前記対物レンズ側の光学ユニットから射出される軸上の平行光束の中心軸が前記結像レンズ側の光学ユニットに含まれる光路分岐部材の光学的有効範囲中心近傍を通過するように配置される顕微鏡を提供する。
【0016】
本発明の第7の態様は、第1の態様乃至第6の態様のいずれか1つに記載の顕微鏡において、前記対物レンズの胴付位置から前記結像レンズに含まれる最も前記対物レンズ側のレンズの面頂までの距離をLとし、前記結像レンズに含まれる最も前記対物レンズ側のレンズの光学的有効径をDとし、前記結像レンズの焦点距離をfとするとき、以下の条件式を満たす顕微鏡を提供する。
0.018(1/mm) < L/(D*f) < 0.045(1/mm)
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、結像レンズ以降の光学部材を大型化することなく像面における明るさ分布の偏りを抑制することができる、無限遠補正型の対物レンズと結像レンズの間に光学ユニットを配置する空間を備えた顕微鏡の技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1に係る顕微鏡の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例2に係る顕微鏡に含まれる対物レンズと結像レンズの間の構成を示す概略図である。
【図3】対物レンズから射出された軸上の平行光束の最大平行移動量と対物レンズの光軸に対する結像レンズの光軸のずれ量との関係を図示した図である。
【図4】対物レンズから射出された軸上の平行光束の最大平行移動量と対物レンズの光軸に対する結像レンズの光軸のずれ量との関係を図示した他の図である。
【図5】本発明の実施例3に係る顕微鏡に含まれる対物レンズと結像レンズの間の構成を示す概略図である。
【図6】光学ユニットの取付位置を光軸と直交する方向で一定にした顕微鏡の構成を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
図1は、本実施例に係る顕微鏡の構成を示した概略図である。図1のXYZ座標系は、方向参照の便宜のために設けた左手直交座標系である。
【0020】
図1に例示される顕微鏡100は、無限遠補正型の対物レンズ1と結像レンズ4の間に、3つの光学ユニット2を装着する空間を備えた倒立顕微鏡である。さらに、結像レンズ4の像側には、光路を切換えるための光路切換えプリズム5や、接眼部7に向けて光を反射するミラー6などを含んでいる。なお、図1では、対物レンズ1と結像レンズ4の間に、光路分岐部材を含む光学ユニットが2つと光路分岐部材を含まない光学ユニットが1つ装着されている様子が示されている。
【0021】
顕微鏡100では、図1に例示されるように、結像レンズ4の光軸TXは、対物レンズ1から射出された平行光束が対物レンズ1と結像レンズ4の間の空間に装着された光学ユニット2で平行移動する方向(ここでは、−X方向)に、対物レンズ1の光軸OXに対してずれている。より具体的には、光学ユニット2a(光路分岐部材3a)で生じる−X方向への平行移動量と光学ユニット2b(光路分岐部材3b)で生じる−X方向への平行移動量の合計δだけ、結像レンズ4の光軸TXが対物レンズ1の光軸OXから−X方向にずれている。このため、対物レンズ1から出射した軸上の平行光束は、平行光束の中心軸が結像レンズ4の光軸TXと一致した状態で結像レンズ4に入射することになる。なお、光路分岐部材での平行移動量は、光路分岐部材の厚さ、屈折率、傾きによって算出することができる。
【0022】
従って、本実施例に係る顕微鏡100では、結像レンズ4以降の光学部材を大型化することなく、結像レンズ4以降の光学部材でのケラレを抑制することが可能であり、その結果、像面における明るさ分布の偏りを抑制することができる。
【0023】
また、顕微鏡100では、図1に例示されるように、対物レンズ1と結像レンズ4の間の空間に装着される複数の光学ユニット2の各々の取付位置が対物レンズ1の光軸OXと直交する方向(ここでは、−X方向)に、即ち、結像レンズ4の光軸TXと同じ方向に、対物レンズ1の光軸OXに対してずれている。より具体的には、複数の光学ユニット2のうち隣接する2つの光学ユニットは、対物レンズ1側の光学ユニットから射出される軸上の平行光束の中心軸が結像レンズ4側の光学ユニットに含まれる光路分岐部材の対物レンズ1側面の光学的有効範囲の中心近傍を通過するように配置されている。例えば、隣接する光学ユニット2aと光学ユニット2bは、光学ユニット2aから射出される軸上の平行光束の中心軸が光学ユニット2bに含まれる光路分岐部材3bの対物レンズ1側面の光学的有効範囲の中心近傍を通過するように、X方向に異なる取付位置で、配置されている。
【0024】
従って、本実施例に係る顕微鏡100では、対物レンズ1と結像レンズ4の間の光学ユニットに含まれる光路分岐部材を大型化することなく、光路分岐部材でのケラレを抑制することが可能であり、その結果、像面での周辺光量の低下を抑制することができる。
【0025】
また、顕微鏡100は、以下の条件式(1)を満たすことが望ましい。ここで、対物レンズ1の胴付位置から結像レンズ4に含まれる最も対物レンズ1側のレンズの面頂までの距離はLであり、結像レンズ4に含まれる最も対物レンズ1側のレンズの光学的有効径はDであり、結像レンズ4の焦点距離はfである。
0.018(1/mm) < L/(D*f) < 0.045(1/mm) ・・・(1)
【0026】
条件式(1)の下限を下回ると、光学ユニット2を複数配置し得る程度の距離Lを確保すると、結像レンズ4の光学的有効径Dが大きくなりすぎてしまう。一方、条件式(1)の上限を上回ると、距離Lが長くなりすぎるため、対物レンズ1の光軸OXと平行でない軸外の平行光束が光路分岐部材や結像レンズ4でケラレ易くなってしまう。このため、光路分岐部材や結像レンズ4を大型化することなく、さらに周辺光量の低下を抑制するためには、条件式(1)を満たすことが望ましい。
【0027】
なお、図1では、本実施例に係る顕微鏡100として倒立顕微鏡を例示したが、顕微鏡の種類は倒立顕微鏡に限らない。顕微鏡100は、正立顕微鏡として構成されてもよい。また、図1では、本実施例に係る顕微鏡100の照明系の構成についての記載が省略されているが、顕微鏡100の照明系は、透過照明を実現する照明系であってもよく、また、落射照明を実現する照明系であってもよい。
【0028】
また、顕微鏡100の光学ユニット2は、必要に応じて他の光学ユニットと交換され得る。従って、軸上の平行光束の平行移動量δは一定ではなく、対物レンズ1と結像レンズ4の間に装着される光学ユニットによって変化する。このため、顕微鏡100は、対物レンズ1の光軸OXに対する結像レンズ4の光軸TXの相対ずれ量(以降、光軸間のずれ量と記す。)やずれる方向を調整し得るように構成されていてもよい。例えば、結像レンズ4以降の光学部材が軸上の平行光束の平行移動量δに応じて移動し得るように構成されていてもよく、対物レンズ1と対物レンズ1よりも物体側の光学部材(例えば、透過照明構成ではあれば、透過照明系など)が軸上の平行光束の平行移動量δに応じて移動し得るように構成されてもよい。
【実施例2】
【0029】
図2は、本実施例に係る顕微鏡に含まれる対物レンズと結像レンズの間の構成を示す概略図である。図2のXYZ座標系は、方向参照の便宜のために設けた左手直交座標系である。
【0030】
図2に例示される顕微鏡101は、無限遠補正型の対物レンズ1と結像レンズ4の間に、最大で2つの光学ユニットを装着する空間を備えた倒立顕微鏡である点が、実施例1に係る顕微鏡100と異なっている。その他の構成は、顕微鏡100と同様である。図2(a)、図2(b)、図2(c)は、対物レンズ1と結像レンズ4の間に、それぞれ、2つの光学ユニットを装着した状態、1つの光学ユニットを装着した状態、光学ユニットを装着しない状態を示している。
【0031】
顕微鏡101では、図2に例示されるように、結像レンズ4の光軸TXは、対物レンズ1から射出された軸上の平行光束が対物レンズ1と結像レンズ4の間の空間に装着された光学ユニット中の光路分岐部材で平行移動する方向(ここでは、−X方向)に、対物レンズ1の光軸OXに対してずれている。より具体的には、図2(b)に例示されるように、光路分岐部材3eでの−X方向への平行移動量だけ、結像レンズ4の光軸TXが対物レンズ1の光軸OXから−X方向にずれている。換言すると、顕微鏡101では、光軸間のずれ量は、図2(a)に例示される2つの光学ユニットを装着したとき、即ち、対物レンズ1と結像レンズ4の間の空間に光学ユニットを最大限装着したとき、に対物レンズ1から射出された軸上の平行光束がその光学ユニット中の光路分岐部材で平行移動する距離(以降、最大平行移動量と記す。)の半分に設定されている。なお、図3は、対物レンズ1から射出された軸上の平行光束の最大平行移動量A1と、対物レンズ1の光軸OXに対する結像レンズ4の光軸TXのずれ量A2との関係を図示した図である。
【0032】
このため、図2(b)に例示されるように、対物レンズ1と結像レンズ4の間の空間に光路分岐部材を1つだけ含む光学ユニット2eが1つだけ装着された状態で、結像レンズ4に入射する軸上の平行光束の中心軸が結像レンズ4の光軸TXと一致することになる。一方、図2(a)、図2(c)に例示されるように、対物レンズ1と結像レンズ4の間の空間に光学ユニット2eに加えて光学ユニット2dが装着された状態や、光学ユニットが装着されない状態では、結像レンズ4に入射する軸上の平行光束の中心軸は結像レンズ4の光軸TXと厳密には一致しない。しかし、その光軸TXに対する光束の中心軸のずれ量は、それぞれ光路分岐部材1つ分に抑えられている。つまり、顕微鏡101では、光学ユニットを最大限装着した平行移動量が最も大きい状態であっても、平行光束の中心軸は結像レンズ4の光軸TXに対して従来の半分しかずれない。また、平行移動が全く生じない光学ユニットを装着しない状態であっても、ずれ量は、光路分岐部材1つ分に抑えられている。
【0033】
従って、顕微鏡101によれば、対物レンズ1と結像レンズ4の間の空間に光学ユニットがいくつ装着されている場合であっても、結像レンズ4以降の光学部材を大型化することなく、結像レンズ4以降の光学部材でのケラレを抑制することが可能であり、その結果、像面における明るさ分布の偏りを抑制することができる。
【0034】
なお、図2では、光軸間のずれ量を最大平行移動量の半分に設定した例を示したが、光軸間のずれ量の設定は必ずしもこれに限定されない。光軸間のずれ量は、光学ユニット(光路分岐部材)の使用頻度を考慮して設定してもよい。例えば、光路分岐部材を含む光学ユニットの使用頻度が低く、光学ユニットの装着数が1つ以下の状態で使用されることが多い場合であれば、光軸間のずれ量は、光学ユニットを1つ装着したときに軸上の平行光束がその光学ユニット中の光路分岐部材で平行移動する距離の半分に設定することが望ましい。また、例えば、光路分岐部材を含む光学ユニットの使用頻度が高く、ほとんどが光学ユニットを最大限装着した状態で使用される場合であれば、光軸間のずれ量は、最大平行移動量に設定することが望ましい。このように、光軸間のずれ量は、光学ユニットの使用頻度を考慮して、光路分岐部材を1つだけ含む光学ユニットを1つ装着したときの平行移動量の半分以上で、且つ、最大平行移動量以下に設定されればよい。
【0035】
また、図2及び図3では、複数の光学ユニット中の光路分岐部材で平行光束が平行移動する方向が一致している場合について例示したが、各光学ユニット中の光路分岐部材で軸上の平行光束が平行移動する方向は常に一定であるとは限らない。例えば、図2(a)に例示される光学ユニット2dがZ方向を回転軸として90度回転した状態で装着されている場合であれば、光路分岐部材3dで平行光束が平行移動する方向は−Y方向となる。この場合、図4に例示されるように、光学ユニット2e中の光路分岐部材3eでの−X方向への平行移動量δ/2と光学ユニット2d中の光路分岐部材3dでの−Y方向への平行移動量γ/2とを合計して平行移動量A3を算出して、算出された最大平行移動量から光軸間のずれ量A4を決定してもよい。
【実施例3】
【0036】
図5は、本実施例に係る顕微鏡に含まれる対物レンズと結像レンズの間の構成を示す概略図である。図5のXYZ座標系は、方向参照の便宜のために設けた左手直交座標系である。
【0037】
図5に例示される顕微鏡102は、無限遠補正型の対物レンズ1と結像レンズ4の間に、最大で3つの光学ユニットを装着する空間を備えた倒立顕微鏡である点と、光学ユニットに含まれる光路分岐部材の厚さが一定でない点が、実施例1に係る顕微鏡100と異なっている。その他の構成は、顕微鏡100と同様である。
【0038】
図5に例示されるように、顕微鏡102では、対物レンズ1と結像レンズ4の間に、それぞれ光路分岐部材を含む3つの光学ユニットが装着されていて、最も対物レンズ1側に装着された光学ユニット2fには、他の2つの光学ユニット(光学ユニット2g、光学ユニット2h)に含まれる光路分岐部材(光路分岐部材3g、光路分岐部材3h)の2倍の厚さを有する光路分岐部材3fが含まれている。
【0039】
このように、光学ユニットに異なる厚さの光路分岐部材が含まれる場合であっても、結像レンズ4の光軸TXの設定方法に何ら違いはない。即ち、結像レンズ4の光軸TXは、対物レンズ1から射出された軸上の平行光束が対物レンズ1と結像レンズ4の間の空間に装着された光学ユニットで平行移動する方向(ここでは、−X方向)に、対物レンズ1の光軸OXに対してずらして配置すればよい。また、対物レンズ1と結像レンズ4の光軸間のずれ量は、光学ユニットの使用頻度を考慮して、光路分岐部材を1つだけ含む光学ユニットを1つ装着したときにおける平行移動量の半分以上で、且つ、最大平行移動量以下に設定されればよい。なお、図5では、光軸間のずれ量は、光学ユニット2fを装着したときにおける平行移動量の半分に設定されている例が示されている。
【0040】
以上、本実施例に係る顕微鏡102によれば、実施例1に係る顕微鏡100及び実施例2に係る顕微鏡101と同様に、結像レンズ4以降の光学部材を大型化することなく、結像レンズ4以降の光学部材でのケラレを抑制することが可能であり、その結果、像面における明るさ分布の偏りを抑制することができる。
【0041】
また、複数の光学ユニットの各々の取付位置を対物レンズ1の光軸OXと直交する方向にずらすことにより、光路分岐部材を大型化することなく、光路分岐部材でのケラレを抑制することができる点も、実施例1に係る顕微鏡100及び実施例2に係る顕微鏡101と同様であるが、本実施例に係る顕微鏡102のように、光学ユニットが多数装着される場合には、特に有効である。
【0042】
図6は、光学ユニットの取付位置を光軸と直交する方向で一定にした顕微鏡の構成を例示した図である。図5と図6との比較から明らかなように、取付位置が光軸と直交する方向に一定である場合には、軸上の平行光束は結像レンズ4に近づくにつれて光路分岐部材の中心からずれることになる。その結果、結像レンズ4に近い光路分岐部材ではその端部を通過することになるため、軸外光の一部がケラレてしまい、像面における周辺光量の低下が生じやすい。従って、光学ユニットが多数装着される場合には、複数の光学ユニットの各々の取付位置を対物レンズ1の光軸OXと直交する方向にずらす構成が特に効果的である。ただし、図6の各光学ユニットの光路分岐部材13f、13g、13hが入射する軸外光に対して十分に大きく明るさの分布の偏りが許容できる場合は、このような光学ユニットの取付位置を変更しない構成も可能である。その際は、−X方向の分岐した光軸の高さが光学ユニットの位置により異なるのでそれぞれの専用の光学ユニットとすればよい。
また、光学ユニットの取付位置を光軸と直交する方向で一定とし、複数の光学ユニット中の光路分岐部材の各々の取付位置を光軸と直交する方向に異なる顕微鏡の構成としてもよい。その際、各光路分岐部材による光軸のずれに合わせて取付位置を光軸と直交する方向に異ならせることが望ましい。特に各光路分岐部材の中心位置または各光路分岐部材の有効径の中心位置と光軸が一致するよう構成することが望ましい。
【符号の説明】
【0043】
100、101、102、103・・・顕微鏡、1・・・対物レンズ、2、2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h・・・光学ユニット、3a、3b、3d、3e、3f、3g、3h・・・光路分岐部材、4・・・結像レンズ、5・・・光路切換えプリズム、6・・・ミラー、7・・・接眼部、OX、TX・・・光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無限遠補正型の対物レンズと結像レンズの間に、光路分岐部材を1つ以上含む光学ユニットを少なくとも1つ装着する空間を備えた顕微鏡であって、
前記結像レンズの光軸が、前記対物レンズから射出された軸上の平行光束が前記空間に装着された前記光学ユニット中の前記光路分岐部材で平行移動する方向に、前記対物レンズの光軸に対してずれていることを特徴とする顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に記載の顕微鏡において、
前記対物レンズの光軸に対する前記結像レンズの光軸のずれ量は、前記空間に前記光路分岐部材を1つだけ含む前記光学ユニットを1つ装着したときに、前記対物レンズから射出された軸上の平行光束が前記光学ユニット中の前記光路分岐部材で平行移動する距離の半分以上である
ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項3】
請求項2に記載の顕微鏡において、
前記対物レンズの光軸に対する前記結像レンズの光軸のずれ量は、前記空間に前記光学ユニットを最大限装着したときに、前記対物レンズから射出された軸上の平行光束が前記光学ユニット中の前記光路分岐部材で平行移動する距離以下である
ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項4】
請求項3に記載の顕微鏡において、
前記対物レンズの光軸に対する前記結像レンズの光軸のずれ量は、前記空間に前記光学ユニットを最大限装着したときに、前記対物レンズから射出された軸上の平行光束が前記光学ユニット中の前記光路分岐部材で平行移動する距離の半分である
ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の顕微鏡において、
前記空間に装着される複数の前記光学ユニットの各々の取付位置、または複数の前記光学ユニット中の前記光路分岐部材の各々の取付位置が、前記対物レンズの光軸と直交する方向に異なる
ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の顕微鏡において、
前記空間に装着される前記光学ユニットのうち隣接する2つの前記光学ユニットは、前記対物レンズ側の光学ユニットから射出される軸上の平行光束の中心軸が前記結像レンズ側の光学ユニットに含まれる光路分岐部材の光学的有効範囲中心近傍を通過するように配置される
ことを特徴とする顕微鏡。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の顕微鏡において、
前記対物レンズの胴付位置から前記結像レンズに含まれる最も前記対物レンズ側のレンズの面頂までの距離をLとし、前記結像レンズに含まれる最も前記対物レンズ側のレンズの光学的有効径をDとし、前記結像レンズの焦点距離をfとするとき、以下の条件式
0.018(1/mm) < L/(D*f) < 0.045(1/mm)
を満たすことを特徴とする顕微鏡。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−114004(P2013−114004A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259570(P2011−259570)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】