説明

風冷式変圧器

【課題】風冷式変圧器において変圧器の背面側を冷却するために背面ファンを設けると、フロントメンテナンスや小型化が困難になる。
【解決手段】風冷式変圧器1は、変圧器2a〜2cを収納した盤本体3の前面側に前面吸気ファン4a〜4cを備え、底面側に底面吸気ファン5と背面ダクト6を備え、天井に排気ファン7を備えていて、前記前面吸気ファンと底面吸気ファンにより盤本体3内に吸入した外気で前記変圧器を冷却したのち排気ファンにより盤本体外に放出する。前記前面吸気ファンおよび前記底面吸気ファンは、前記変圧器の台座上に取外し可能に取付けられている。底面吸気ファンは、前面吸気ファンの背面側に配置されていて、前面吸気ファンを取り外した跡の空スペースを利用して前記盤本体の前面側に取り出し可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器を収納した盤本体に吸気ファンと排気ファンを設け、前記吸気ファンにより前記盤本体内に吸入した外気で前記変圧器を冷却したのち前記排気ファンにより前記盤本体外に放出する風冷式変圧器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風冷式変圧器として、図4に示すように、変圧器102を収納した盤本体103の前面に吸気ファン(以下、前面ファン)104を設けるとともに、天井に排気ファン105を設け、前面ファン104により盤本体103内に吸入した外気で変圧器102を冷却した後に外気を排気ファン105により盤本体103外に放出する風冷式変圧器101が知られている。106は、前面ファン104により盤本体103内に吸入した外気を効果的に変圧器2に当てるための風ガイドである。
【0003】
上記風冷式変圧器101は、変圧器102の前面側を効果的に冷却することができるが変圧器102の背面側を効果的に冷却することが困難である。
【0004】
そこで、図5(A),(B)に示すように、盤本体103の背面にも吸気ファン(以下、背面ファン)107を設け、変圧器102の前面及び背面の両面から変圧器102を効果的に冷却できるようにした風冷式変圧器も開発されている。(盤本体の前面と背面に吸気ファンを設けたものとして、例えば、特許文献1)。
【0005】
また、風冷式変圧器として、図6に示すように、変圧器102の床108の下部に冷却ファン109を取付け、吸気口110から吸入した冷却風を床上に吹き上げ、吹き上げた冷却風をダクト111で変圧器102に当てて冷却する風冷式変圧器も開発されている。(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−57940号公報
【特許文献2】特開平09−84225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図5に示した、盤本体103の前面に前面ファン104を設け、背面に背面ファン106を設け、天井に排気ファン105を設けた風冷式変圧器には次に述べるような問題点があった。
(1)前面ファン104や排気ファン105は、フロント側からのメンテナンス(以下、フロントメンテナンス)を行うことが容易であるが、背面ファン106は、フロントメンテナンスを行うことが容易でない。
(2)変圧器102を盤本体103から引き出して、背面ファン106をフロントメンテナンスすることも可能であるが、変圧器102は重量が重いために、変圧器102を引き出す作業は容易でない。
(3)変圧器102を盤本体103から引き出さずに、背面ファン106のフロントメンテナンスを行なうために、図5に示す変圧器102と盤本体103の間の隙間Gを大きくとり、この隙間Gから作業員が変圧器102の背面側に回りこんで、背面ファン106のメンテナンスを行なうことも考えられるが、そのためには盤本体103の横幅Wを大きくしなければならず、風冷式変圧器を小型化する上での障害になる。
【0008】
また、図6に示した、変圧器102の床下部108に冷却ファン109を取付けて床下から冷却風を吹き上げて変圧器102を冷却する方式の風冷式変圧器は、冷却ファン109が変圧器102の床108の下部の狭い空間に配置されているために冷却ファン109のメンテナンスや取り付けや取外しが面倒であるという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、小型化が容易で、かつフロントメンテナンスも容易に行うことのできる風冷式変圧器を提供することを目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、変圧器を収納した盤本体の前面と底面に前面吸気ファンと底面吸気ファンを設けるとともに、天井に排気ファンを設け、前記前面吸気ファンと底面吸気ファンにより前記盤本体内に吸入した外気で前記変圧器を冷却したのち前記排気ファンにより前記盤本体外に放出する風冷式変圧器において、
前記前面吸気ファンおよび前記底面吸気ファンを、前記変圧器の台座上に取外し可能に取付けるとともに、前記底面吸気ファンを、前記前面吸気ファンの背面側に配置し、前記前面吸気ファンを取り外した跡の空スペースを利用して盤本体の前面側に取り出し可能にした。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の風冷式変圧器において、前記前面吸気ファンを、前記盤本体内に配置された前面ダクトの前面位置に揃えて配置するとともに、前記盤本体内に前記底面吸気ファンにより吸入した外気を前記変圧器の背面に導く背面ダクトを設けた。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の風冷式変圧器において、前記前面吸気ファンおよび前記底面吸気ファンを、それぞれ据付プレート上に取り付け、該据付プレートを、ネジによって支持フレームに取り付け、該支持フレームを、ネジによって前記台座上に取り付けた。
【0013】
請求項4の発明は、請求項3に記載の風冷式変圧器において、前記支持フレームに、複数の前面吸気ファンを取り付けた。
【発明の効果】
【0014】
(1)請求項1の風冷式変圧器は、前面吸気ファンについてはフロントメンテナンスを行なうことが可能なことは勿論のこと、底面吸気ファンのフロントメンテナンスも、前面吸気ファンを取り外して、その跡の空スペースを利用して、底面吸気ファンを盤本体の前面側に引き出すことにより容易に行うことができる。
(2)請求項2の風冷式変圧器は、前記前面吸気ファンを、前記盤本体内に配置された前面ダクトの前面位置に揃えて配置したので、底面吸気ファンは、特許文献1のように、盤本体外に突出させずにすむ。また、底面吸気ファンにより吸入した外気を背面ダクトで変圧器の背面側に導くので、変圧器を背面側からも効果的に冷却することができる。
(3)請求項3の風冷式変圧器は、前面吸気ファンの支持フレームへの取り付け、取り外し及び支持フレームの台座への取り付け、取り外しをネジによって容易に行うことができる。同様に、底面吸気ファンの支持フレームへの取り付け、取り外し及び支持フレームの台座への取り付け、取り外しをネジによって容易に行うことができる。
(4)請求項4の風冷式変圧器は、複数の前面吸気ファンを全て支持フレームに取り付けたので、全ての前面吸気ファンを支持フレームと共に一挙に台座部から取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の風冷式変圧器の略示的斜視図。
【図2】図1の略示的側面図。
【図3】図1のA−A断面図。
【図4】従来例の略示的正面図。
【図5】他の従来例を示し、(A)は略示的正面図、(B)は略示的側面図。
【図6】他の従来例の略示的正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は風冷式変圧器1の略示的斜視図、図2は図1の略示的側面図、図3は図1のA−A断面図である。
【0017】
風冷式変圧器1は、複数の変圧器2a,2b,2cを収納した盤本体3の前面側の前記各変圧器2a,2b,2cに対応する位置に設けられた複数の吸気ファン(以下、前面ファン)4a,4b,4cと、これら前面ファン4a,4b,4cにより吸入された外気を前記変圧器2a,2b,2cの前面側に導く前面ダクト(図示省略)と、盤本体3の底面側に設けられた吸気ファン(以下、底面ファン)5と、該底面ファン5により吸入された外気を変圧器2a,2b,2cの背面側に導く背面ダクト6と、盤本体3の天井に設けた排気ファン7を備えている。
【0018】
前面ファン4a,4b,4cの前面位置は、前面ダクトの前面位置に揃えられていて、前面ファン4a,4b,4cは、前面ダクトの前面位置よりも盤本体3の前面側に出っ張ることのないようになっている。
【0019】
そして、前面ファン4a,4b,4cおよび底面ファン5により盤本体3内に吸入された外気は、前面ダクトおよび背面ダクト6により変圧器2a,2b,2cの前面側と背面側に導かれて、変圧器2a,2b,2cの前面側および背面側から効果的に冷却した後に、排気ファン7により盤本体3の外部に放出される。
【0020】
変圧器2a,2b,2cの上部には、盤本体3内に吸入された外気をより効果的に変圧器2に当てるための風ガイド8が設けられている。また、変圧器2a,2b,2cの下部は、台座9上に支持されている。
【0021】
台座9は、変圧器2a,2b,2cの下部を支持している台座本体部9aと、該台座本体部9aの両端部に設けられた一対の脚部9b,9bにより略コ字状に形成されている。
【0022】
一対の脚部9b,9bは、ボルト10によって盤本体3の床板に固定可能になっている。また、一対の脚部9b,9bの下部には、ボルト11によって車輪支持体12が取り付けられている。車輪支持体12の前後の端部には車輪13が取り付けられていて、変圧器2a,2b,2cは走行移動可能になっている。
【0023】
車輪支持体12の前面側の端部12a上には前面ファン4a,4b,4cが配置され、車輪支持体12の背面側の端部12b上には背面ダクト6が配置され、前面ファン4a,4b,4cと背面ダクト6の間に底面ファン5が配置されている。
【0024】
一対の脚部9b,9bの間には、前面ファン4a,4b,4cを取り付ける前面ファン支持フレーム(以下、第1フレーム)14および底面ファン5を取り付ける底面ファン支持フレーム(以下、第2フレーム)15が設けられている。
【0025】
図2に示すように、第1フレーム14は、前面ファン4a,4b,4cを載置するファン載置部14aと、該ファン載置部14aの一端部を直角に折り曲げることにより形成されたファン位置決め固定部14bとを備えている。
【0026】
ファン位置決め固定部14bは、後記する前面ファン4a,4b,4cの背面側に設けたボス18を挿入するボス挿入穴14cを備えている。
【0027】
図3に示すように、第1フレーム14は、4本の第1フレーム固定ネジ16により台座9上に取り付けられている。
【0028】
図2に示すように、前面ファン4a,4b,4cは、下端にそれぞれ据付プレート17を有し、背面側に前記ファン位置決め固定部14bのボス挿入穴14cに挿入するボス18を有している。
【0029】
前面ファン4a,4b,4cは、前記ボス18をボス挿入穴14cに挿入することにより位置決めされた状態で据付プレート17を据付プレート固定ネジ19(図3参照)でネジ止めすることによって第1フレーム14上に取り付けられている。
【0030】
また、図2に示すように、第2フレーム15は、底面ファン5を載置するファン載置部15aと、該ファン載置部15aの一端部を直角に折り曲げることにより形成されたファン位置決め固定部15bとを備えている。
【0031】
ファン位置決め固定部15bは、後記する底面ファン5の背面側に設けたボス22を挿入するボス挿入穴15cを備えている。
【0032】
図3に示すように、第2フレーム15は、4本の第2フレーム固定ネジ20により台座9上に取り付けられている。
【0033】
図2に示すように、底面ファン5は、下面側に据付プレート21を有し、背面側に前記ファン位置決め固定部15bのボス挿入穴15cに挿入するボス22を有している。
【0034】
底面ファン5は、ボス22をボス挿入穴15cに挿入することにより位置決めされた状態で据付プレート固定ネジ23によって第2フレーム15上に取り付けられている。
【0035】
次に、風冷式変圧器1の作用について説明する。前面ファン4a,4b,4cおよび底面ファン5を作動させると外気が盤本体3内に吸入され、吸入された外気は、前面ダクトおよび背面ダクト6により変圧器2の前面側と背面側に導かれて、変圧器2の前面側および背面側から効果的に冷却した後に、前記排気ファン7により盤本体3の外部に放出される。
【0036】
そして、前面ファン4a,4b,4cの修理やメンテナンスが必要になった場合には、据付プレート固定ネジ19によるネジ止めを外して、前面ファン4a,4b,4cを手前側に引くと、前記ボス18がボス挿入穴14cから抜け出て、前面ファン4a,4b,4cは、第1フレーム14から取り外されて、前面ファン4a,4b,4cの修理やメンテナンスを容易に行うことが可能になる。なお、前面ファン4a,4cは、第1フレーム固定ネジ16によって据付プレート17が第1フレーム14とともに台座9に共締めされているので、前面ファン4a,4cを取り外す場合には、前記第1フレーム固定ネジ16によるネジ止めを外さなければならないのは勿論のことである。
【0037】
また、底面ファン5の修理や取換え等が必要になった場合には、前面ファン4a,4b,4cを取り付けた侭の状態で、前記4本の第1フレーム固定ネジ16を外して台座9から第1フレーム14を取り外して盤本体3の前面側に引き出す。
【0038】
第1フレーム14を引き出すと、そのあとに底面ファン5を取り外すのに必要な空スペースが発生する。そこで、据付プレート固定ネジ23によるネジ止めを外して底面ファン5を手前側に引くと、前面ファン5の背面側に設けたボス22がボス挿入穴15cから抜け出で、底面ファン5は、第2フレーム15から取り外された状態になる。そこで、前記空スペースを利用して、底面ファン5を盤本体3の外部に引き出して、底面ファン5の修理や取換え等を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0039】
1…風冷式変圧器
2a,2b,2c…変圧器
3…盤本体
4a,4b,4c…前面ファン
5…底面ファン
6…背面ダクト
7…排気ファン
8…風ガイド
9…台座
10,11…ボルト
12…車輪支持体
13…車輪
14…前面ファン支持フレーム(第1フレーム)
15…底面ファン支持フレーム(第2フレーム)
16…第1フレーム固定ネジ
17,21…据付プレート
18,22…ボス
19,23…据付プレート固定ネジ
20…第2フレーム固定ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器を収納した盤本体の前面と底面に前面吸気ファンと底面吸気ファンを設けるとともに、天井に排気ファンを設け、前記前面吸気ファンと底面吸気ファンにより前記盤本体内に吸入した外気で前記変圧器を冷却したのち前記排気ファンにより前記盤本体外に放出する風冷式変圧器において、
前記前面吸気ファンおよび前記底面吸気ファンは、前記変圧器の台座上に取外し可能に取付けられ、
前記底面吸気ファンは、前記前面吸気ファンの背面側に配置されていて、前記前面吸気ファンを取り外した跡の空スペースを利用して前記盤本体の前面側に取り出し可能になっていることを特徴とする風冷式変圧器。
【請求項2】
前記前面吸気ファンは、前記盤本体内に配置された前面ダクトの前面位置に揃えて配置されているとともに、前記盤本体内には、前記底面吸気ファンにより吸入した外気を前記変圧器の背面に導く背面ダクトを設けたことを特徴とする請求項1に記載の風冷式変圧器。
【請求項3】
前記前面吸気ファンおよび前記底面吸気ファンは、それぞれ据付プレート上に取り付けられ、該据付プレートは、ネジによって支持フレームに取り付けられ、該支持フレームは、ネジによって前記台座上に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の風冷式変圧器。
【請求項4】
前記支持フレームは、複数の前面吸気ファンを支持していることを特徴とする請求項3に記載の風冷式変圧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−222058(P2012−222058A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84198(P2011−84198)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】