風力発電施設における基礎構造の施工方法
【課題】洋上で風力発電施設を保持し洋上から海底近傍まで延在する支柱を支持する、風力発電施設における基礎構造の施工方法において、基礎構造の支持力および耐久力を向上させることのできる、風力発電施設における基礎構造の施工方法を提供する。
【解決手段】海底200の状況や海底200の近傍の潮流の状況を予め調査し、フィルターユニット50の数量、およびフィルターユニット50を設置する位置について調べておく。基礎構造の基礎部である杭12bを支持層で支持されるように設ける。海底200と杭12bとの間に複数のフィルターユニット50を密着させて設置する。各杭12bの上端部に、基礎スラブ部12aの型枠12eを設置する。型枠12eにコンクリートを打設して、基礎スラブ部12aを形成する。基礎スラブ部12aの上端部に支柱11を固定する。
【解決手段】海底200の状況や海底200の近傍の潮流の状況を予め調査し、フィルターユニット50の数量、およびフィルターユニット50を設置する位置について調べておく。基礎構造の基礎部である杭12bを支持層で支持されるように設ける。海底200と杭12bとの間に複数のフィルターユニット50を密着させて設置する。各杭12bの上端部に、基礎スラブ部12aの型枠12eを設置する。型枠12eにコンクリートを打設して、基礎スラブ部12aを形成する。基礎スラブ部12aの上端部に支柱11を固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洋上の風力を利用して発電する風力発電施設を空中で保持し、海底近傍まで延在する支柱を支持する風力発電施設における基礎構造の施工方法に関し、特に、杭およびケーソンを基礎とする風力発電施設における基礎構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上の風力発電施設は、一般的に、風車が洋上の風で回転することを利用して発電機で発電する。この風力発電施設は、海底に設けられた基礎構造から海面を貫いて空中まで延在する支柱の上端部で支持されている。すなわち、海底に設けられる基礎構造によって、風力発電施設は支持されている。この風力発電施設および支柱を支持する基礎構造については、たとえば、特許文献1に開示されている。特許文献1によれば、海底に打ち込まれた複数の鋼管杭と、複数の鋼管杭上で固定され、各鋼管杭の配置と同じ位置に孔を有し、孔から各鋼管杭の杭頭が挿通される鋼板製の基礎受けフレームと、基礎受けフレーム上で固定され、基礎受けフレームから突出した各鋼管杭の杭頭を挿通させる孔を有し、支柱の基端部を中心に位置させた鉄筋コンクリート製の基礎ブロックとを有する基礎構造により、風力発電施設および支柱は支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−194792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、風力発電施設および支柱は基礎構造によって支持される。しかしながら、基礎構造における支持力が高くなければ、たとえば、風力発電施設において発生する振動を抑制できずに風力発電施設が破損したり、また、発生した振動が支柱に伝搬して支柱が倒壊したりしてしまう場合がある。
【0005】
従来の風力発電施設および支柱を支持する基礎構造において、基礎として海底に打ち込まれた杭は、海底近傍における潮流にとって抵抗体となるため、杭の周囲で過流が発生する。この過流により、海底に打ち込まれた杭の近傍において、海底が削られたり抉られたりする洗堀という現象が発生する。これにより、海底に堆積している土砂などが流され、杭が徐々に露出してしまい、結果として、基礎構造としての支持力が低下してしまう虞があった。また、支柱において海面より下方の海中部に波が作用して、基礎構造の海底近傍にモーメントを発生させ、海底に打ち込まれた杭と杭の周囲の地盤との間に隙間が形成され、結果として、基礎構造としての支持力を低下させる虞があった。さらに、支柱において海面より上方の空中部と、風力発電施設と、に洋上の風が作用して、基礎構造の海底近傍においてモーメントを発生させ、上記と同様、基礎構造としての支持力をさらに低下させる虞があった。
【0006】
この発明の目的は、洋上で風力発電施設を保持し、洋上から海底近傍まで延在する支柱を支持する、風力発電施設における基礎構造の施工方法において、基礎構造の支持力を向上させるとともに基礎構造の耐久力を向上させることのできる、風力発電施設における基礎構造の施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、洋上で風力発電施設を保持し、洋上から海底近傍まで延在する風力発電施設の支柱を支持する風力発電施設における基礎構造の施工方法に関する。風力発電施設における基礎構造の施工方法は、所定の地盤で支持される基礎部と海底との間に所定の塊状物を含むフィルターユニットを複数設置するステップを含む。
【0008】
この発明の他の局面においては、洋上で風力発電施設を保持し、洋上から海底近傍まで延在する風力発電施設の支柱を支持する風力発電施設における基礎構造の施工方法に関する。風力発電施設における基礎構造の施工方法は、所定の地盤で支持されるように所定の地盤の上に基礎部を設けるステップと、海底と基礎部の間に所定の塊状物を含む袋状のフィルターユニットを複数設置するステップと、基礎部の上端部に基礎スラブ部を設けるステップと、基礎スラブ部の上端部に支柱を設けるステップとを含む。
【0009】
好ましくは、複数のフィルターユニットを設置するステップは、GPSを用いて複数のフィルターユニットを設置する位置を特定するステップを含む。
【発明の効果】
【0010】
この発明によると、所定の地盤で支持される基礎部と海底との間に所定の塊状物を含むフィルターユニットを複数設置することにより、海底の近傍における潮流の影響が低減されるため洗堀の発生を長期的に抑制することができ、また、基礎部の地中部分における周囲からの側圧が向上されるため基礎部と基礎部の地中部分における周囲の地盤との間に隙間を形成しにくくすることができる。その結果、基礎構造における支持力を向上させるとともに基礎構造の耐久力を向上させることができる。さらに、設置される複数のフィルターユニットが基礎構造の一部として作用するため、基礎構造の大きさを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】風力発電施設における基礎構造の施工方法を適用した風力発電施設、支柱、および基礎構造を示す模式図である。
【図2】(a)はFUを示す模式図であり、(b)はFU50が凹凸のある海底に設置された状態を示す模式図である。
【図3】(a)基礎スラブ部が設置される直前の杭の周囲にFUを設置した場合の、杭の周囲を側面から見た模式図であり、(b)は(a)のIIIBで示される位置における矢視図であり、(c)は(a)のIIICで示される位置における矢視図である。
【図4】(a)〜(f)は風力発電施設における基礎構造の施工方法を工程順に示す図である。
【図5】風力発電施設における基礎構造の施工方法を適用した風力発電施設、支柱、および基礎構造を示す模式図である。
【図6】(a)は既設の風力発電施設における基礎構造の周囲に隙間が形成された状態を示す図であり、(b)は風力発電施設における基礎構造の施工方法を適用した場合を示す図である。
【図7】風力発電施設における基礎構造の施工方法を適用した風力発電施設、支柱、および基礎構造を示す模式図である。
【図8】(a)〜(h)は風力発電施設における基礎構造の施工方法を工程順に示す図であり、(i)は(e)のVIII Iで示される位置における矢視図である。また、(j)は既設の風力発電施設における基礎構造の周囲に隙間が形成された状況を示す図であり、(k)は風力発電施設における基礎構造の施工方法を適用した場合を示す図である。
【図9】(a)〜(c)は風力発電施設における海底ケーブルの保護方法を工程順に示す図であり、(d)は(c)のIXDで示される位置における矢視図である。
【図10】FUの設置条件に関する図である。
【図11】(a)は複数のFUを用いて海底ケーブルを保護する例を示す図であり、(b)は(a)のXIBで示される位置における矢視図である。
【図12】(a)は複数のFUを用いて海底ケーブルを保護する例を示す図であり、(b)は(a)のXIIBで示される位置における矢視図である。
【図13】(a)は複数のFUを用いて海底ケーブルを保護する例を示す図であり、(b)は(a)のXIIIBで示される位置における矢視図である。
【図14】(a)〜(c)は海底における凹型の不陸の平坦化方法を工程順に示す図である。
【図15】海底における凸型の不陸を平坦化した場合を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)第1の実施形態
以下、この発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る風力発電施設における基礎構造の施工方法を適用した風力発電施設、支柱、および基礎構造を示す模式図である。なお、この実施形態においては、杭を基礎部とする基礎構造により、風力発電施設および支柱が支持される場合を説明する。図1を参照して、洋上の風力を利用して発電する風力発電施設10と、洋上の風力発電施設10を保持し、海面100を貫くように海底200の近傍まで延在する支柱11と、コンクリート製で、アンカーボルトにより支柱11と固定され、支柱11を支持する基礎スラブ部12aと、鋼管製で、所定の地盤で支持されるように設けられ、上端部において基礎スラブ部12aを固定して支持する杭12bと、海底200と杭12bとの間に設置される複数のフィルターユニット(以下、「FU」という。)50と、支柱11における海底200の近傍から突出し、風力発電施設10で発電された電気を陸地の地上施設(図示せず)に送電する送電ケーブル20とが示されている。なお、支柱11は、風力発電施設10が洋上の風を効率よく受けられる高さまで延在しているものとする。また、ここにおいて、杭12bが固定されている所定の地盤とは、図1において支持層300と呼ばれる地盤の層のことであり、支持層は気象、海象などの諸条件の下で風力発電施設および支柱の荷重に耐え得るだけの強度を有する。すなわち、支持層に達するまで杭12bは打ち込まれて固定される。なお、この実施形態における基礎構造は、基礎スラブ部12aおよび杭12bを含む。
【0013】
次に、この実施形態で使用されるFU50の構成について説明する。図2(a)はFU50が作業船におけるクレーンなどで吊り下げられた状態を示す模式図であり、図2(b)はFU50が凹凸のある海底に設置された状態を示す模式図である。
【0014】
図2(a)および図2(b)を参照して、合成繊維からなる糸で編網された袋体501の中に砕石などの塊状物502を所定の量だけ充填したものをFUという。塊状物502が充填されたFU50は、袋体501がクレーンなどにより吊られるための吊りロープ503と、吊りロープ503の端部には袋体501を吊るクレーンと連結が可能な連結部504とを含む。FU50は、平坦な地面に設置された場合において、直径が略2.5mとなる大きさで、重量は略4tのものを用いる。袋体501に用いられる合成繊維は、たとえば、ポリエステルである。これにより、FU50は海水において錆びることもなく、また、酸性およびアルカリ性の水質に対しても高い耐久性を有し、腐食も発生しない。なお、合成繊維は、ポリエステルに限らず、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどでもよい。また、FU50の網糸は合成繊維であるため、環境ホルモンおよび重金属などの有害物質の溶出などもなく、FU50が海中の環境に悪影響を与えることもない。
【0015】
袋体501において、たとえば、網目の長辺Nは25mmで糸径Mは5mmであるものとする。ここで、網糸の糸径Mおよび網目の長辺Nが、3≦N/M≦20という関係を有するのが好ましい。この関係式の下において、袋体501はFU50の強度を長期的に維持することができ、後に説明する塊状物502であれば網目からこぼれ出すことはない。なお、NおよびMの単位はmmである。また、袋体501における網地の空隙率は45〜90%であるのが好ましい。こうすることにより、FU50は多孔の空隙を確保し、海底200の近傍における潮流が袋体501内を通過する過程で掃流力が軽減される。従って、海底200の表面にかかる流水圧は軽減されるため、洗堀という海底200が削られる現象も軽減される。袋体501の空隙率は、充填する塊状物502の大きさとも関係するが、袋体501の空隙率が45%以下では流水圧が大きいため、袋体501の周辺で洗堀が生じやすくなり、袋体501の空隙率が90%以上では塊状物502の保持性が悪くなるからである。また、袋体501は編まれた網(たとえば、ラッセル網など)により、伸度は30〜80%を有するよう形成されるのが好ましい。こうすることにより、柔軟性が確保でき、FU50が設置される位置において、FU50は任意の形状に追随し、設置後も安定的な状態を長期的に維持することができる。すなわち、FU50を設置する場所が平坦か否かを問わず、FU50は設置された位置に対して長期的に安定することができる。
【0016】
FU50に充填される塊状物502は、粒径が50〜300mmであるのが好ましい。また、塊状物502は、FU50が海底200に設置された場合に流されないだけの十分な比重を有する。この実施形態における塊状物502には、粒径100mmで、比重2.65の砕石を用いる。これにより、FU50は、海中において浮力および潮流の影響に耐えられる十分な重量を有する。なお、塊状物502の粒径が小さいほど、設置される位置への形状におけるFU50の適応性が高くなる。また、塊状物502の粒径は、上記した網目の長辺Nに対して、略2倍程度であるのが好ましい。
【0017】
塊状物502における所定の量とは、図2(a)が示すように、クレーンなどにより塊状物502を充填したFU50が吊り下げられたとき、水平方向から見た袋体501の閉じ部505から袋体501の下端までの高さをH1とし、袋体501の閉じ部505から袋体501に充填される塊状物502の上端までの高さをH2とすると、(H2/H1)×100で算出される値が25〜80(%)となる量である。25%未満の場合、塊状物502の重量により海底に設置された場合のFU50における形状が張りつめた状態になるため、海底の凹凸など不安定な地形に馴染みにくく、安定性も悪くなる。80%以上の場合、設置されたFU50の形状が維持されず、安定性も悪くなり、また、FU50の有する体積に対して重量も軽いため、潮流により流される虞があるからである。
【0018】
なお、FUは上記で説明したような構成を有するため、海底に設置されることにより、海中の植物や魚などにとって生息しやすい環境を提供するという効果も奏する。
【0019】
FUの大きさの種類について説明する。以下の説明においては、重量が4t未満、設置されたときの直径が2m未満、体積が2m3未満のFUを、単に「小さいFU」とし、重量が4〜20t、設置されたときの直径が2〜5m、体積が2〜13m3のFUを、単に「大きいFU」とする。FUにおける網糸の素材、網糸の太さ、網目の長辺などを含む網目の大きさ、塊状物の直径および比重などにおいて、大きいFUおよび小さいFUは同一の構成である。
【0020】
以下の表1は、単体におけるFUの重量(大きさ)と潮流に対して有効な流速との関係の一例を示す。なお、表1において各重量のFUは、直径が50〜300mmで、比重が2.65の塊状物がそれぞれ充填されている。
【表1】
【0021】
表1を参照して、FUの重量は潮流における流速の状況に応じて、適切なFUが適用される。たとえば、FUを設置する場所の潮流の流速が5.0m/sの場合には、重量が4t以上のFUが用いられる。また、適用箇所における施工性により、重量および塊状物の粒径の種類を検討して適用することも可能である。表1が示すように、大きいFUは、小さいFUに比べ、高い流速を有する潮流に対して高い効果を発揮することができることが分かる。また、以下の説明においては、特別な説明を要する場合以外は、上記で説明したFU50を使用するものとする。
【0022】
なお、上記したFU50においては、FU50単体としての大きさ、網糸の素材、網糸の太さ、網目の大きさ、塊状物の粒径および比重などの項目により特定したが、上記以外の項目でFU50が特定されてもよい。
【0023】
なお、ここで使用されるFUとしては、たとえば、日本の特許3696389号で開示される水中構造物の洗堀防止材を適用するのが好ましい。
【0024】
次に、この実施形態におけるFUの設置方法について説明する。図3(a)は基礎スラブ部12aが設置される直前の杭12bの周囲にFU50を設置した場合の、杭12bの周囲を側面から見た模式図である。また、図3(b)は図3(a)のIIIBで示される位置における矢視図であり、図3(c)は図3(a)のIIICで示される位置における矢視図である。まず、図3(a)を参照して、FU50は海底200と基礎スラブ部を上端部で支持する各杭12bとの間に設置される。ここで、図中における二点鎖線Xに示されるように、各杭12bの杭頭のそれぞれに合わせて、複数のFU50で平坦面が形成させるまで隙間なく設置されるのが好ましい。こうすることにより、基礎スラブ部が設置されたとき、基礎スラブ部の底面が各杭12bおよびFU50と密着するため、各杭12b、基礎スラブ部、およびFU50が一体化される。従って、基礎スラブ部と基礎部とを含む基礎構造としての強度が向上するとともに、洗掘を含む潮流からの影響を低減させることができるからである。すなわち、風力発電施設および支柱を支持する基礎構造としての支持力を向上させることができる。図3(b)を参照して、基礎スラブ部を各杭12b上に設置したときに中心となる点Oの位置から最も遠い位置にある杭12bにおける円周の外側までの距離をR(m)とし、点Oを中心とした半径R(m)の円を円P1とし、点Oを中心とした半径R+W(m)の円を円P2とすると、FU50が設置される最下層において、円P2に囲まれる範囲にFUを設置するのが好ましい(図3(c)参照)。Wが約4〜15mである場合、上記した洗堀の防止を含むFUの効果が発揮され、特に、Wは約6mであるのが好ましい。FU50の設置される範囲が広ければ広いほど、上記で説明したようなFU50の効果を望めるが、FU50の設置される範囲が円P2を越えると、FU50の効果はほとんど変わらなくなる。従って、設置されるFU50の数量および施工における作業量など施工の観点や、FU50の有効性など効果の観点を踏まえて、FU50が設置される最下層の範囲は、点Oを中心とした半径約R+6(m)の円P2に囲まれる範囲が好ましい。また、図3(c)を参照して、円P2から円P1を除く範囲Sにおいて、最下層のFU50は、中心である点Oに対して同心円状に2〜5列で設置されるのが好ましい(図3(a)および図3(c)においては、FU50が3列で設置される場合が示されている)。FU50は、範囲Sを大きいFUを用いて1列で設置される場合より、小さいFUを用いて複数の列で設置される場合の方が、設置された複数のFU同士における隙間を少なくすることができ、洗堀の防止において高い効果を得られる。また、設置される複数のFUが群体を形成することによって群体効果と呼ばれる効果が発揮される。群体効果とは、たとえば、潮流の影響を直接受けたFUが周囲の他のFUで支持されることにより、群体を形成する複数のFU全体としての安定的な状態が維持されるという効果である。従って、上記で説明した洗堀の防止などの効果を長期的に発揮することができる。また、FUが1列で設置される場合では、潮流が基礎構造に衝突して発生する乱流を抑制する効果が十分に得られず、また、乱流の影響により海底200で洗堀が発生してしまうからである。一方、6列以上でFU50が設置されたとしても、洗堀を防止する効果はほとんど変わらないからである。
【0025】
FU50の層厚、すなわち、FU50を設置する段数が大きければ大きいほど、FU50の効果を高く望める。層厚が大きいと、複数のFU50同士において噛み合いが生じるからである。これにより、複数のFU50同士が隙間なく密着するとともに固定されるため、海底200の表面から土砂などによる吸出しが発生する可能性が低減され、設置された複数のFU50において安定性が維持されるとともに、洗堀などを含む潮流からの影響を長期的に低減できるからである。一方、3層以上の層厚では、たとえば、洗掘を防止する効果はほとんど変わらない。従って、上記と同様、設置されるFU50の数量および施工における作業量などの施工の観点や、FU50の有効性など効果の観点を踏まえて、FU50の層厚は2〜3層であるのが好ましい。また、この実施形態における風力発電施設における基礎構造の施工方法は、基本的には1種類の大きさのFUを用いて行われるが、大きさの異なるFUを用いて2層以上の層厚でFUを設置する場合、小さいFUから順に設置するのが好ましい。こうすることにより、小さいFUが海底の凹凸に追随し、また、設置された小さいFUと海底200とにおける噛み合わせが良くなるため、さらに長期的に安定的な状態が維持されるからである。また、設置された小さいFUの層の上面は海底の凹凸よりも平坦なため、小さいFUの上方に設置される大きいFUも安定的な状態が維持される。また、潮流における流速を有効的に低減することができる。
【0026】
また、杭12bが打ち込まれている海底200の周囲にFU50が設置されることによって、FU50が設置される位置の海底200にかかる荷重が増加し、杭12bの地中部分における周囲からの側圧が向上されるため、杭12bと杭12bの地中部分における周囲の地盤および支持層との間には隙間が形成されにくくなり、杭12bにおける海底200の近傍において発生するモーメントを抑制することができる。さらに、設置される複数のFU50が基礎構造の一部として作用するため、基礎構造の大きさを小さくすることができる。
【0027】
上記したように、海底200と杭12bとの間に複数のFU50を設置することにより、杭12bと杭12bの地中部分における周囲の地盤および支持層との間には隙間が形成されにくくなり、杭12bにおける海底200の近傍において発生するモーメントを抑制することができ、また、杭12bの周囲に生じる洗掘を防止することができる。その結果、杭12bを基礎部とする基礎構造の支持力および耐久力を向上させることができる。
【0028】
次に、この実施形態の風力発電施設における基礎構造の施工方法について説明する。図4(a)〜図4(f)は、風力発電施設における基礎構造の施工を工程順に示す図である。まず、風力発電施設を設ける位置において、海底200の状況や海底200の近傍の潮流の状況を予め調査し、FU50の大きさ、FU50の数量およびFU50を設置する位置について調べておく(図4(a))。次に、調査に基づき、基礎構造の基礎部である杭12bを支持層で支持されるように設ける(図4(b))。次に、上記で説明したように、海底200と杭12bとの間に複数のFU50を密着させて設置する(図4(c))。このとき、各杭12bの杭頭のそれぞれに合わせて、複数のFU50で平坦面を形成させる。次に、各杭12bの上端部に、基礎スラブ部12aの型枠12eを設置する(図4(d))。このとき、型枠12eの底面と杭12bの上端部とは固定される。次に、型枠12eにコンクリートを打設して、基礎スラブ部12aを形成する(図4(e))。次に、基礎スラブ部12aの上端部に支柱11を固定する(図4(f))。
【0029】
上記によれば、支持層で支持されるように杭12bを設け、海底200と杭12bとの間に複数のFU50を設置し、杭12bの上端部に基礎スラブ部12aを設けることにより、基礎構造における海底200の近傍の潮流における影響を低減させるため洗堀の発生を長期的に抑制し、杭12bの近傍における海底200を防護することができ、また、杭12bの地中部分における周囲からの側圧が向上されるため、杭12bと杭12bの地中部分における周囲の地盤および支持層との間において隙間を形成させにくくさせることができる。その結果、基礎構造における支持力を向上させるとともに基礎構造の耐久力を向上させることができる。さらに、設置された複数のFU50が基礎構造の一部として作用するため、基礎構造の大きさを小さくすることができる。また、合成繊維の糸で編網され、多孔の空隙を有するFU50を適用するため、環境ホルモンおよび重金属などの有害物質の溶出もなく、藻場の着生基質および小魚などに生息空間を提供することができる。
【0030】
次に、この実施形態における変形例を説明する。この変形例では、図5に示すように、図1とは異なり複数のFU50の上部と基礎スラブ部12aとの間に隙間が設けられている。なお、それ以外は、上記の実施形態と同様のため説明を省略する。この変形例によれば、上記の実施形態と同様、基礎構造における海底200の近傍の潮流における影響を低減させるため洗堀の発生を長期的に抑制し、杭12bの近傍における海底を防護することができ、また、杭12bの地中部分における周囲からの側圧が向上されるため、杭12bと杭12bの地中部分における周囲の地盤および支持層との間において隙間を形成させにくくさせることができる。
【0031】
次に、上記の実施形態における他の変形例を説明する。この変形例では、既設の風力発電施設における基礎構造にFUを設置する。図6はこの変形例を示す図である。図6(a)は既設の風力発電施設における基礎構造の周囲に隙間が形成された状況を示す図であり、図6(b)はこの変形例によって杭12bを基礎部とする基礎構造と海底200との間に、複数のFU50を設置した状況を示す。こうすることにより、上記の実施形態と同様、基礎構造における海底200の近傍の潮流における影響を低減させるため洗堀の発生を長期的に抑制し、杭12bの近傍における海底を防護することができ、また、杭12bの地中部分における周囲からの側圧が向上されるため、杭12bと杭12bの地中部分における周囲の地盤および支持層との間において隙間を発生させにくくさせることができる。また、この変形例では、洗堀の発生などが原因で杭の設置されている海底が変形している場合について説明したが、海底が変形していない既設の風力発電施設における基礎構造であってもよい。
【0032】
なお、上記の実施形態において、設置されるFUの大きさの種類が1種類の場合について説明したが、これに限ることなく、たとえば、大きいFUおよび小さいFUの2種類の大きさのFUを用いてもよい。この場合は、たとえば、大きいFUおよび小さいFUを重ねて用いてもよい。なお、FUの設置する層厚を3層とする場合、上記で説明したように、先に小さいFUを最下層に設置し、その上に大きいFUを2層設置する。こうすることにより、図3を用いて説明した効果に加え、上記したように各FU間はさらに安定的な状態が長期的に維持され、また、潮流における流速を有効的に低減することができる。また、その他、FUに充填される塊状物の種類が異なる複数のFUを設置してもよい。たとえば、先に塊状物における粒径の小さいFUを設置して、次に設置されている塊状物における粒径の小さいFUの上に塊状物における粒径の大きいFUを設置する。こうすることにより、海底側に位置する塊状物における粒径の小さいFUにより海底と設置する面からの吸出しを防止でき、海底の凹凸に追随でき、また、各FU間の噛み合わせが良くなり、隙間なく密着するとともに固定されるため、長期的に安定的な状態が維持される。また、潮流に対して表面側に位置する塊状物における粒径の大きいFUにより、各FUにおける安定性を確保し、潮流における流速を有効的に低減することができる。なお、「FUの大きさ」と「FUに充填される塊状物の粒径の大きさ」とは無関係であるため、「粒径の大きい塊状物を充填する大きいFU」は、「粒径の小さい塊状物を充填する大きいFU」、および、「粒径の大きい塊状物を充填する小さいFU」の各々が奏する効果と比較すると、相乗的な効果を奏する。たとえば、粒径の大きい塊状物を充填する大きいFUは、粒径の大きさは同じ塊状物を充填する小さいFUと比較してより安定した状態を維持することができ、かつ、粒径の小さい塊状物を充填する大きさの同じFUと比較して潮流における流速をより低減することができるという効果を奏する。
【0033】
なお、この実施形態において、基礎スラブ部12aは、杭12bの上端部に、基礎スラブ部12aの型枠12eを設けた後、型枠12eにコンクリートを打設することで、基礎スラブ部12aを形成する場合について説明したが、これに限ることなく、予め製作されたコンクリート製の基礎スラブ部12aを杭12bの上端部に設けてもよい。
【0034】
なお、この実施形態において、杭は鋼管製の場合について説明したが、これに限ることなく、コンクリート製でもよい。
【0035】
(2)第2の実施形態
次に、第2の実施形態について説明する。この実施形態においては、ケーソンを基礎部とする基礎構造により、風力発電施設が支持される場合を説明する。図7は、この実施形態の風力発電施設における基礎構造の施工方法を適用した風力発電施設、支柱、および基礎構造を示す模式図である。図7を参照して、洋上の風力発電施設10と、洋上の風力発電施設10を保持し、海面100を貫くように海底200の近傍まで延在する支柱11と、コンクリート製で、アンカーボルトにより支柱11と固定され、支柱11を支持する基礎スラブ部12aと、コンクリート製で、掘削された海底200に固定され、上端部において基礎スラブ部12aを支持するケーソン12cと、海底200とケーソン12cとの間に設置される複数のFU50と、支柱11における海底200の近傍から突出し、風力発電施設10で発電された電気を陸地の地上施設(図示せず)に送電する送電ケーブル20とが示されている。なお、この実施形態における基礎構造は、基礎スラブ部12aおよびケーソン12cを含み、ケーソン12cは、型枠にコンクリートが打設されることによりケーソン12cとなる。また、この実施形態で使用されるFU50は上記の実施形態と同様である。
【0036】
次に、この実施形態の風力発電施設における基礎構造の施工方法について説明する。図8(a)〜図8(h)は、風力発電施設における基礎構造の施工を工程順に示す図である。また、図8(i)は、図8(e)のVIII Iにおける矢視図である。まず、風力発電施設を設ける位置において、海底200の状況や海底200近傍の潮流の状況を予め調査し、FUの大きさ、FU50の数量およびFU50の設置する位置について調べておく(図8(a))。次に、調査に基づいて、基礎構造の基礎部であるケーソン12cが海底200で固定される位置まで海底200を掘削して、ケーソン12cの型枠12dを設置するための穴13を形成する(図8(b))。このとき、オープンカット工法(露天堀)を採用してもよい。また、掘削する穴13は、設けられる風力発電施設10、支柱11、基礎スラブ部12a、およびケーソン12cが支持されるだけの大きさおよび深さである。次に、掘削した穴13の底面に、複数のFU50を平坦になるよう設置する(図8(c))。このとき、小さいFU50を設置するのが好ましい。こうすることにより、掘削した穴13の底における凹凸に対して小さいFU50が追随し、また、各FU50間に生じる隙間が小さくなり、上方にケーソン12cおよび基礎スラブ部12aなどが設置されたとき、複数のFU50、ケーソン12cおよび基礎スラブ部12aは安定した状態を維持することができる。なお、このとき、各FU50間に生じる隙間が大きい場合には、大きいFUを用いて隙間を少なくしてもよい。また、設置されるFU50の層厚は何層でもよく、層厚の大きさが大きければ大きいほど、第1の実施形態で説明したように、海底200の表面から土砂などによる吸出しが発生する可能性が低減され、ケーソン12cおよび基礎スラブ部12aは安定した状態を維持することができる。次に、穴13の底面に設置されたFU50の上に、ケーソン12cを形成するための型枠12dが設置される(図8(d))。なお、型枠12dは、後述するケーソン12cの一部であるものとみなすことができる。次に、海底200と基礎部となるケーソン12cの型枠12dとの間、すなわち、ケーソン12cの型枠12dと掘削された穴13との隙間を埋めるように、複数のFU50を密着させて設置する(図8(e)。なお、掘削された穴13の周囲における端部を幅Lで囲む範囲(図8(i)において、円P4から円P3を除いた部分)において、最下層のFU50は2〜5列で設置されるのが好ましい。また、Lは約6mであるのが好ましい。さらに、3層の層厚でケーソン12cの型枠12dの周囲に密着するように複数のFU50が設置されるのが好ましい。次に、型枠12dにコンクリートを打設して、ケーソン12cを形成する(図8(f))。次に、基礎スラブ部12aの型枠の底面をケーソン12cの上端部に固定し、基礎スラブ部12aの型枠にコンクリートを打設して、基礎スラブ部12aを形成する(図8(g))。次に、基礎スラブ部12aに支柱11を固定する(図8(h))。
【0037】
上記によれば、ケーソン12cが支持されるように海底200を掘削して、掘削した穴13の底面に複数のFU50を平坦に設置して、ケーソン12cの型枠12dを設置して、海底200とケーソン12cの型枠12dとの間に複数のFU50を設置して、型枠12dにコンクリートを打設してケーソン12cを形成し、ケーソン12cの上端部に基礎スラブ部12aを設けることにより、基礎構造における海底200の近傍の潮流における影響を低減させるため洗堀の発生を長期的に抑制し、ケーソン12cの近傍における海底を防護することができるため、基礎構造における支持力を向上させるとともに基礎構造の耐久力を向上させることができる。さらに、設置された複数のFU50が基礎構造の一部として作用するため、基礎構造の大きさを小さくすることができる。また、合成繊維の糸で編網され、多孔の空隙を有するFU50を適用するため、環境ホルモンおよび重金属などの有害物質の溶出もなく、藻場の着生基質および小魚などに生息空間を提供することができる。
【0038】
次に、この実施形態における変形例を説明する。この変形例では、既設の風力発電施設における基礎構造にFUを設置する。図8(j)は既設の風力発電施設における基礎構造の周囲に隙間が形成された状況を示す図であり、図8(k)はこの変形例によってケーソン12cを基礎部とする基礎構造と海底200との間に、複数のFU50を設置した状況を示す。なお、それ以外は、この実施形態と同様のため説明を省略する。また、ここで説明した実施形態は、洗堀の発生などが原因でケーソンの設置されている海底が変形している場合について説明したが、海底が変形していない既設の風力発電施設における基礎構造であってもよい。
【0039】
なお、この実施形態において、コンクリートの打設によりケーソン12cを形成した後、基礎スラブ部を形成するための型枠を設置する場合について説明したが、コンクリートの打設によりケーソンを形成するとともに基礎スラブ部を形成することができる型枠を用いてもよい。
【0040】
なお、この実施形態において、ケーソン12cは、掘削された穴13の底面に設置されるFU50の上方から型枠12dを設置し、コンクリートを打設することで形成される場合について説明したが、予め形成されたケーソン12cが、掘削された穴13の底面に設置されたFU50の上方から設置されてもよい。
【0041】
なお、上記の実施形態において、設置されるFUの大きさが1種類の場合について説明したが、これに限ることなく、大きいFUと小さいFUとを用いてもよい。たとえば、FUに形状の追随が要求される場合、たとえば、海底の形状に凹凸がある場合などにおいては、小さいFUを用いて、FUに潮流の流速の低減が要求される場合、大きいFUを用いる。また、FUに充填される塊状物の種類が異なる複数のFUを設置してもよい。こうすることにより、第1の実施形態で説明した効果と同様の効果を奏する。
【0042】
(3)第3の実施形態
次に、FUの設置方法における他の実施形態として、第3の実施形態について説明する。この実施形態においては、風力発電施設における海底ケーブルの保護方法について説明する。図9(a)〜図9(c)は、風力発電施設における海底ケーブルの保護方法を工程順に示す図であり、図9(d)は、図9(c)のIXDで示される位置における矢視図である。また、図10は図9(c)および図9(d)で示されたFUの設置における条件を示す図である。なお、この実施形態で使用されるFU50は上記の実施形態と同様である。まず、海底ケーブル20を設置する位置において、海底200の状況や海底200の近傍の潮流の状況を予め調査し、FU50の大きさ、FU50の数量およびFU50の設置する位置について調べておく(図9(a))。次に、海底ケーブル20を海底200に設置する(図9(b))。次に、海底200に設置された海底ケーブル20を覆うようにFU50を設置する(図9(c))。このとき、図10を参照して、海底ケーブル20の断面において中心を点Qとし、半径がr(m)とする場合、海底ケーブル20の表面における上端から上方に向かってD1(m)の場所に位置する点を点T1とし、海底ケーブル20の表面における両側面から海底200と平行の方向に向かってD2(m)の場所に位置する点を点T2および点T3とする。また、点T1、点T2、および点T3で形成される二等辺三角形の∠T1T2T3および∠T1T3T2のなす角の大きさをθとする。FU50に充填される複数の塊状物を上方から地面に積載すると自然に形成される山の斜辺と、地面と、を側面から見た場合において、山の斜辺および地面に挟まれる角度をφとする。このとき、海底ケーブル20の延在する方向と直角をなす面において、D1、D2、およびθがそれぞれ、D1≧0.5m、D2≧1.0m、およびθ≦φを満たす、T1、T2、T3で形成される二等辺三角形を含む範囲を占めるようにFU50を設置するのが好ましい。なお、このときφ≦45°であり、θ≦30°がより好ましい。図10においては、上記の条件を満たす二等辺三角形の一例を斜線で示し、条件を満たした二等辺三角形T1、T2、T3を覆うように設置されるFU50の一例を点線で示す。こうすることにより、安定したFU50が海底ケーブル20を覆うため、海底ケーブル20が周囲の潮流の影響を受けて移動しないように固定される(図9(d)参照)。また、たとえば、船舶の錨や潮流によって流されてきた転石などから、海底ケーブル20を保護することができる。
【0043】
上記によれば、海底ケーブル20を覆うようにFU50を設置することにより、海底200とFU50とで海底ケーブル20が固定され、周囲の潮流の影響による海底ケーブル20の移動を防止することができるため、海底200と海底ケーブル20とにおける摩擦の発生を防止でき、また、設置された海底ケーブル20の近傍において発生する洗堀を長期的に防止することができるため、結果として、海底ケーブル20を長期的に保護することができる。
【0044】
なお、この実施形態において、海底ケーブルを新たに設ける場合について説明したが、既に設けられた海底ケーブルを覆うようにしてFU50を設置してもよい。
【0045】
なお、この実施形態において、設置されるFU50は1つの場合で説明したが、複数のFU50を設置するのが好ましい。複数のFU50を用いることで、海底ケーブル20を固定する重量が大きくなるため、強固に海底ケーブル20を固定することができるからである。また、第1の実施形態で説明したように、設置される複数のFU50により、群体効果が発揮され、高い安定性を得ることができるからである。なお、複数のFU50を用いて海底ケーブル20を固定する場合における例の一部を以下に示す。図11(a)は海底ケーブル20の延在する方向に連続的に複数のFU50を1列に並べて設置した場合を示し、図11(b)は図11(a)のXIBで示される位置における矢視図を示す。なお、図11(a)では設置された複数のFUの一部のみを示す。図12(a)は海底ケーブル20を挟むように2列に並べて設置されたFU50により固定される場合を示し、図12(b)は図12(a)のXIIBで示される位置における矢視図を示す。なお、この場合も、海底ケーブル20の延在する方向に連続的にFU50を並べて設置してもよい。また、図13(a)は多数のFU50を用いて海底ケーブル20を固定する場合を示し、図13(b)は図13(a)のXIIIBで示される位置における矢視図を示す。いずれも、海底ケーブル20を覆うようにFU50を設置することにより、海底200とFU50とで海底ケーブル20が固定され、周囲の潮流の影響による海底ケーブル20の移動を防止することができるため、海底200と海底ケーブル20とにおける摩擦の発生を防止できる。また、設置された海底ケーブル20の近傍において発生する洗堀を長期的に防止することができるため、結果として、海底ケーブル20を長期的に保護することができる。また、海底ケーブル20が延在する方向に対して連続的にFU50を設置する場合について説明したが、断続的にFU50を設置するようにしてもよい。たとえば、海底ケーブル20が潮流により移動してしまう虞のある場所において、海底ケーブル20における所定の間隔で断続的にFU50を設置することにより、施工における作業量、および、使用するFU50の数量などを最小限に抑えることができる。
【0046】
なお、この実施形態において、海底ケーブル20を保護するために設けられたFU50の周辺において洗堀が発生したとしても、FU50は変形した海底200に追随するため、たとえば、海底200が沈み込んだ分だけ沈み込んだ部分にFU50を上方から設けるだけで補修を行うことができるため、容易に、かつ、安価なコストで、補修を行うことができる。
【0047】
なお、この実施形態における、風力発電施設における海底ケーブルの保護方法は、海底までの深度が約3m以上の深度において適用されるのが好ましい。
【0048】
なお、この実施形態においては海底ケーブルとして説明したが、海底ケーブルには電話線や光ファイバーなどが含まれる。また、これに限ることなく、ガスや石油などのパイプラインを含む、海底における管などの長尺物でもよい。
【0049】
(4)第4の実施形態
次に、FUの設置方法における他の実施形態として、第4の実施形態について説明する。この実施形態においては、海底における凹型の不陸の平坦化方法について説明する。基本的には、1種類の大きさのFUを用いて不陸を平坦化するが、この実施形態においては、2種類の異なる大きさのFUを用いて説明する。図14(a)〜図14(c)は、海底における凹型の不陸の平坦化方法を工程順に示す図である。第1の実施形態で説明したFUのうち、一方は大きいFU51を使用し、他方は小さいFU52を使用するものとする。また、後述する、予め行う調査に基づき、これら2種類のFUを使用するのが適切であると判断されたものとする。また、大きいFU51および小さいFU52に充填される塊状物についてはともに、直径が50〜300mmで、比重が2.65の塊状物を充填するFUであるものとする。それ以外についても、大きいFU51および小さいFU52における構成の差異はないものとする。まず、不陸1000において、海底200の状況を予め調査し、使用する大きいFU51および小さいFU52における数量および設置する位置についても調べておく(図14(a))。次に、調査に基づき、不陸1000における底に小さいFU52を設置する(図14(b))。このとき、設置される小さいFU52は上方が可能な限り平坦となるよう設置されるのが好ましい。次に、設置された小さいFU52の上面に大きいFU51を設置し、海底200に対して平坦になるように設置された大きいFU51を均す(図14(c))。ここにおいて、上記の実施形態で説明した内容を踏まえると、大きいFU51および小さいFU52のように、異なる複数の種類のFUを用いることにより、種類の異なる複数のFU同士の噛み合いが良くなり、隙間なく密着し合うため、強固に一体化され、不陸1000に設置された大きいFU51および小さいFU52における安定性が向上するため、潮流からの影響を低減できるからである。また、大きいFU51の上面は可能な限り不陸1000の周囲における海底200に対して平坦となるよう均す。
【0050】
ここにおいて、FUは大きさの小さいものから順に設置されるのが好ましい。こうすることにより、小さいFU52の上面に大きいFU51が設けられることで、不陸1000の底の形状に小さいFUが追随し、小さいFU52の上面において平坦面を形成することができる。また、平坦になった小さいFU52の上方に設けられる大きいFU51により、設置されたFU全体における安定性を確保することができる。
【0051】
上記によれば、小さいFU52を不陸1000における底に設置し、設置された小さい
FU52の上面に大きいFU51を設置して、海底200に対して平坦になるように設置された大きいFU51を均すため、大きいFU51および小さいFU52が相互に噛み合い、隙間のない高い一体性を有した実質的に平坦な海底200を形成することができる。その結果、不陸1000を実質的に平坦で、かつ、強固な海底200にすることができる。
【0052】
なお、上記の実施形態において、凹型の不陸について説明したが、凸型の不陸においても同様、不陸における平坦化方法は適用可能である。図15は海底における凸型の不陸を平坦化した場合を示す模式図である。図15を参照して、凸型の不陸1000における平坦化方法については、上記と同様、不陸1000に小さいFU52を設置する。設置した小さいFU52の上面に大きいFU51を設置した後、海底200に対して平坦になるように設置された大きいFU51を均す。これにより、凸部の不陸1000を海底に対して平坦化することができる。
【0053】
なお、この実施形態において、大きさの異なる2つの大きいFU51および小さいFU52を用いる場合について説明したが、これに限ることなく、1種類の大きさのFUを複数用いて、海底200に対して平坦になるようにFUを均して平坦化してもよい。また、充填される塊状物の粒径の異なる複数のFUを用いて平坦化してもよい。たとえば、粒径が100mmの塊状物を充填するFUと、粒径が200mmの塊状物を充填するFUとを用いる。この場合、粒径の小さい塊状物が地面からの砂の流出を防ぎ、不陸の底における凹凸に追随し、また、粒径の異なる2種類のFU同士が相互に噛み合い、隙間なく一体化することができる。また、FUは塊状物における粒径の小さいものから順に設置されるのが好ましい。こうすることにより、不陸1000の底の形状に小さいFUが追随するため、小さいFU52の上面において平坦面を形成することができ、また、平坦になった小さいFU52の上方に設けられる大きいFU51により、設置されたFU全体における安定性を確保することができる。
【0054】
なお、この実施形態における、海底における不陸の平坦化方法は、たとえば、砕石を投入するバージ船とともに適用してもよい。この場合、先に不陸の底にバージ船で砕石を投入し、所定の分だけ投入した後、海底における不陸の平坦化方法を適用して、たとえば、大きいFU51と小さいFU52とを上記の実施形態で説明したように設置して、海底200における不陸1000を平坦化してもよい。こうすることにより、安価なコストで、かつ、効率的に不陸を平坦化することができる。
【0055】
なお、この実施形態において、不陸1000を平坦化する場合について説明したが、不陸を平坦化した後、たとえば、不陸の上を通過するように風力発電施設における海底ケーブルを設置してもよいし、その他、不陸の上に水中構造物を設置してもよい。さらに、上記実施形態で説明したように、FUを用いて海底ケーブルを固定し、保護してもよい。
【0056】
なお、上記した全ての実施形態において、GPSを用いて、FU50の設置する位置を特定するようにしてもよい。たとえば、FU50を海底200に設置する作業船と、作業船からの通信を受けて、潜水して海中の状況を調査する曳航体とを適用する。曳航体は、海底に対して扇状に音波を照射し、海底からの反射波を受信して海底までの深度を測定する測深ソナーと、曳航体の揺れに伴う測深ソナーの傾きを計測して補正する動揺センサと、曳航体の水深の変化を把握するための正確な水圧を計測する水圧センサと、作業船との距離および方位を算出するための音波を発信するトランスポンダとを含む。また、作業船は、曳航体を操作する操作装置と、作業船の位置を把握するGPS測位装置と、作業船が向いている方位を把握するGPS方位センサと、曳航体によるトランスポンダからの音波を受信し、曳航体の位置を計測する海中測位装置と、曳航体の位置および作業船の位置を踏まえ、曳航体からの取得データを解析する専用ソフトと、曳航体とケーブルに接続され曳航体の動きを制御する曳航ウインチとを含む。まず、作業船における操作装置により曳航体を海中に潜水させる。潜水させられた曳航体は、動揺センサ、水圧センサ、トランスポンダにより曳航体自身の位置および状況を作業船に送信しながら、測深ソナーを用いて、海底の状況に関するデータを取得する。取得した海底に関するデータを作業船に送信し、作業船の専用ソフトにて、海底の状況を把握する。曳航体からの取得データ、GPS測位装置およびGPS方位センサによりFUを設置する位置を特定する。こうすることにより、所望の位置に対して正確にFUを設置することができる。また、たとえば、予め行う調査において、GPS測位装置を用いてFUの設置する位置を特定して記録しておき、その記録に基づいてFUを設置するようにしてもよい。
【0057】
なお、上記した全ての実施形態において、クレーンなどでFU50を吊り下げて設置する場合、FU50を設置するために所定の位置までクレーンでFU50を移動させることにより、クレーンとFU50の連結部504との連結が自動で解除され、FU50が設置されるようにしてもよい。こうすることにより、クレーンからFU50の連結を解除する作業において、たとえば、海底にて作業の指示および補助を行う潜水夫にかかる手間や危険を低減させることができる。
【0058】
なお、上記した全ての実施形態において、設置された複数のFU50をロープやチェーンなどの連結部材により連結してもよい。こうすることにより、複数のFU50同士における安定性を長期的に維持することができるため、基礎構造の支持力および耐久力をさらに向上させることができる。
【0059】
なお、上記した全ての実施形態において、FU50の設置は1つずつ設置してもよいし、複数同時に設置してもよい。
【0060】
図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
この発明によると、基礎構造における支持力を向上させるとともに基礎構造の耐久力を向上させることができるため、風力発電施設における基礎構造の施工方法として有利に利用される。
【符号の説明】
【0062】
10 風力発電施設、11 支柱、12a 基礎スラブ部、12b 杭、12c ケーソン、12d,12e 型枠、13 穴、20 送電ケーブル、51,52 海底ケーブルの一部、50 フィルターユニット、51 大きいフィルターユニット、52 小さいフィルターユニット、100 海面、200 海底、501 袋体、502 塊状物、503 吊り下げロープ、504 連結部、505 閉じ部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、洋上の風力を利用して発電する風力発電施設を空中で保持し、海底近傍まで延在する支柱を支持する風力発電施設における基礎構造の施工方法に関し、特に、杭およびケーソンを基礎とする風力発電施設における基礎構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上の風力発電施設は、一般的に、風車が洋上の風で回転することを利用して発電機で発電する。この風力発電施設は、海底に設けられた基礎構造から海面を貫いて空中まで延在する支柱の上端部で支持されている。すなわち、海底に設けられる基礎構造によって、風力発電施設は支持されている。この風力発電施設および支柱を支持する基礎構造については、たとえば、特許文献1に開示されている。特許文献1によれば、海底に打ち込まれた複数の鋼管杭と、複数の鋼管杭上で固定され、各鋼管杭の配置と同じ位置に孔を有し、孔から各鋼管杭の杭頭が挿通される鋼板製の基礎受けフレームと、基礎受けフレーム上で固定され、基礎受けフレームから突出した各鋼管杭の杭頭を挿通させる孔を有し、支柱の基端部を中心に位置させた鉄筋コンクリート製の基礎ブロックとを有する基礎構造により、風力発電施設および支柱は支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−194792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、風力発電施設および支柱は基礎構造によって支持される。しかしながら、基礎構造における支持力が高くなければ、たとえば、風力発電施設において発生する振動を抑制できずに風力発電施設が破損したり、また、発生した振動が支柱に伝搬して支柱が倒壊したりしてしまう場合がある。
【0005】
従来の風力発電施設および支柱を支持する基礎構造において、基礎として海底に打ち込まれた杭は、海底近傍における潮流にとって抵抗体となるため、杭の周囲で過流が発生する。この過流により、海底に打ち込まれた杭の近傍において、海底が削られたり抉られたりする洗堀という現象が発生する。これにより、海底に堆積している土砂などが流され、杭が徐々に露出してしまい、結果として、基礎構造としての支持力が低下してしまう虞があった。また、支柱において海面より下方の海中部に波が作用して、基礎構造の海底近傍にモーメントを発生させ、海底に打ち込まれた杭と杭の周囲の地盤との間に隙間が形成され、結果として、基礎構造としての支持力を低下させる虞があった。さらに、支柱において海面より上方の空中部と、風力発電施設と、に洋上の風が作用して、基礎構造の海底近傍においてモーメントを発生させ、上記と同様、基礎構造としての支持力をさらに低下させる虞があった。
【0006】
この発明の目的は、洋上で風力発電施設を保持し、洋上から海底近傍まで延在する支柱を支持する、風力発電施設における基礎構造の施工方法において、基礎構造の支持力を向上させるとともに基礎構造の耐久力を向上させることのできる、風力発電施設における基礎構造の施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、洋上で風力発電施設を保持し、洋上から海底近傍まで延在する風力発電施設の支柱を支持する風力発電施設における基礎構造の施工方法に関する。風力発電施設における基礎構造の施工方法は、所定の地盤で支持される基礎部と海底との間に所定の塊状物を含むフィルターユニットを複数設置するステップを含む。
【0008】
この発明の他の局面においては、洋上で風力発電施設を保持し、洋上から海底近傍まで延在する風力発電施設の支柱を支持する風力発電施設における基礎構造の施工方法に関する。風力発電施設における基礎構造の施工方法は、所定の地盤で支持されるように所定の地盤の上に基礎部を設けるステップと、海底と基礎部の間に所定の塊状物を含む袋状のフィルターユニットを複数設置するステップと、基礎部の上端部に基礎スラブ部を設けるステップと、基礎スラブ部の上端部に支柱を設けるステップとを含む。
【0009】
好ましくは、複数のフィルターユニットを設置するステップは、GPSを用いて複数のフィルターユニットを設置する位置を特定するステップを含む。
【発明の効果】
【0010】
この発明によると、所定の地盤で支持される基礎部と海底との間に所定の塊状物を含むフィルターユニットを複数設置することにより、海底の近傍における潮流の影響が低減されるため洗堀の発生を長期的に抑制することができ、また、基礎部の地中部分における周囲からの側圧が向上されるため基礎部と基礎部の地中部分における周囲の地盤との間に隙間を形成しにくくすることができる。その結果、基礎構造における支持力を向上させるとともに基礎構造の耐久力を向上させることができる。さらに、設置される複数のフィルターユニットが基礎構造の一部として作用するため、基礎構造の大きさを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】風力発電施設における基礎構造の施工方法を適用した風力発電施設、支柱、および基礎構造を示す模式図である。
【図2】(a)はFUを示す模式図であり、(b)はFU50が凹凸のある海底に設置された状態を示す模式図である。
【図3】(a)基礎スラブ部が設置される直前の杭の周囲にFUを設置した場合の、杭の周囲を側面から見た模式図であり、(b)は(a)のIIIBで示される位置における矢視図であり、(c)は(a)のIIICで示される位置における矢視図である。
【図4】(a)〜(f)は風力発電施設における基礎構造の施工方法を工程順に示す図である。
【図5】風力発電施設における基礎構造の施工方法を適用した風力発電施設、支柱、および基礎構造を示す模式図である。
【図6】(a)は既設の風力発電施設における基礎構造の周囲に隙間が形成された状態を示す図であり、(b)は風力発電施設における基礎構造の施工方法を適用した場合を示す図である。
【図7】風力発電施設における基礎構造の施工方法を適用した風力発電施設、支柱、および基礎構造を示す模式図である。
【図8】(a)〜(h)は風力発電施設における基礎構造の施工方法を工程順に示す図であり、(i)は(e)のVIII Iで示される位置における矢視図である。また、(j)は既設の風力発電施設における基礎構造の周囲に隙間が形成された状況を示す図であり、(k)は風力発電施設における基礎構造の施工方法を適用した場合を示す図である。
【図9】(a)〜(c)は風力発電施設における海底ケーブルの保護方法を工程順に示す図であり、(d)は(c)のIXDで示される位置における矢視図である。
【図10】FUの設置条件に関する図である。
【図11】(a)は複数のFUを用いて海底ケーブルを保護する例を示す図であり、(b)は(a)のXIBで示される位置における矢視図である。
【図12】(a)は複数のFUを用いて海底ケーブルを保護する例を示す図であり、(b)は(a)のXIIBで示される位置における矢視図である。
【図13】(a)は複数のFUを用いて海底ケーブルを保護する例を示す図であり、(b)は(a)のXIIIBで示される位置における矢視図である。
【図14】(a)〜(c)は海底における凹型の不陸の平坦化方法を工程順に示す図である。
【図15】海底における凸型の不陸を平坦化した場合を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)第1の実施形態
以下、この発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る風力発電施設における基礎構造の施工方法を適用した風力発電施設、支柱、および基礎構造を示す模式図である。なお、この実施形態においては、杭を基礎部とする基礎構造により、風力発電施設および支柱が支持される場合を説明する。図1を参照して、洋上の風力を利用して発電する風力発電施設10と、洋上の風力発電施設10を保持し、海面100を貫くように海底200の近傍まで延在する支柱11と、コンクリート製で、アンカーボルトにより支柱11と固定され、支柱11を支持する基礎スラブ部12aと、鋼管製で、所定の地盤で支持されるように設けられ、上端部において基礎スラブ部12aを固定して支持する杭12bと、海底200と杭12bとの間に設置される複数のフィルターユニット(以下、「FU」という。)50と、支柱11における海底200の近傍から突出し、風力発電施設10で発電された電気を陸地の地上施設(図示せず)に送電する送電ケーブル20とが示されている。なお、支柱11は、風力発電施設10が洋上の風を効率よく受けられる高さまで延在しているものとする。また、ここにおいて、杭12bが固定されている所定の地盤とは、図1において支持層300と呼ばれる地盤の層のことであり、支持層は気象、海象などの諸条件の下で風力発電施設および支柱の荷重に耐え得るだけの強度を有する。すなわち、支持層に達するまで杭12bは打ち込まれて固定される。なお、この実施形態における基礎構造は、基礎スラブ部12aおよび杭12bを含む。
【0013】
次に、この実施形態で使用されるFU50の構成について説明する。図2(a)はFU50が作業船におけるクレーンなどで吊り下げられた状態を示す模式図であり、図2(b)はFU50が凹凸のある海底に設置された状態を示す模式図である。
【0014】
図2(a)および図2(b)を参照して、合成繊維からなる糸で編網された袋体501の中に砕石などの塊状物502を所定の量だけ充填したものをFUという。塊状物502が充填されたFU50は、袋体501がクレーンなどにより吊られるための吊りロープ503と、吊りロープ503の端部には袋体501を吊るクレーンと連結が可能な連結部504とを含む。FU50は、平坦な地面に設置された場合において、直径が略2.5mとなる大きさで、重量は略4tのものを用いる。袋体501に用いられる合成繊維は、たとえば、ポリエステルである。これにより、FU50は海水において錆びることもなく、また、酸性およびアルカリ性の水質に対しても高い耐久性を有し、腐食も発生しない。なお、合成繊維は、ポリエステルに限らず、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどでもよい。また、FU50の網糸は合成繊維であるため、環境ホルモンおよび重金属などの有害物質の溶出などもなく、FU50が海中の環境に悪影響を与えることもない。
【0015】
袋体501において、たとえば、網目の長辺Nは25mmで糸径Mは5mmであるものとする。ここで、網糸の糸径Mおよび網目の長辺Nが、3≦N/M≦20という関係を有するのが好ましい。この関係式の下において、袋体501はFU50の強度を長期的に維持することができ、後に説明する塊状物502であれば網目からこぼれ出すことはない。なお、NおよびMの単位はmmである。また、袋体501における網地の空隙率は45〜90%であるのが好ましい。こうすることにより、FU50は多孔の空隙を確保し、海底200の近傍における潮流が袋体501内を通過する過程で掃流力が軽減される。従って、海底200の表面にかかる流水圧は軽減されるため、洗堀という海底200が削られる現象も軽減される。袋体501の空隙率は、充填する塊状物502の大きさとも関係するが、袋体501の空隙率が45%以下では流水圧が大きいため、袋体501の周辺で洗堀が生じやすくなり、袋体501の空隙率が90%以上では塊状物502の保持性が悪くなるからである。また、袋体501は編まれた網(たとえば、ラッセル網など)により、伸度は30〜80%を有するよう形成されるのが好ましい。こうすることにより、柔軟性が確保でき、FU50が設置される位置において、FU50は任意の形状に追随し、設置後も安定的な状態を長期的に維持することができる。すなわち、FU50を設置する場所が平坦か否かを問わず、FU50は設置された位置に対して長期的に安定することができる。
【0016】
FU50に充填される塊状物502は、粒径が50〜300mmであるのが好ましい。また、塊状物502は、FU50が海底200に設置された場合に流されないだけの十分な比重を有する。この実施形態における塊状物502には、粒径100mmで、比重2.65の砕石を用いる。これにより、FU50は、海中において浮力および潮流の影響に耐えられる十分な重量を有する。なお、塊状物502の粒径が小さいほど、設置される位置への形状におけるFU50の適応性が高くなる。また、塊状物502の粒径は、上記した網目の長辺Nに対して、略2倍程度であるのが好ましい。
【0017】
塊状物502における所定の量とは、図2(a)が示すように、クレーンなどにより塊状物502を充填したFU50が吊り下げられたとき、水平方向から見た袋体501の閉じ部505から袋体501の下端までの高さをH1とし、袋体501の閉じ部505から袋体501に充填される塊状物502の上端までの高さをH2とすると、(H2/H1)×100で算出される値が25〜80(%)となる量である。25%未満の場合、塊状物502の重量により海底に設置された場合のFU50における形状が張りつめた状態になるため、海底の凹凸など不安定な地形に馴染みにくく、安定性も悪くなる。80%以上の場合、設置されたFU50の形状が維持されず、安定性も悪くなり、また、FU50の有する体積に対して重量も軽いため、潮流により流される虞があるからである。
【0018】
なお、FUは上記で説明したような構成を有するため、海底に設置されることにより、海中の植物や魚などにとって生息しやすい環境を提供するという効果も奏する。
【0019】
FUの大きさの種類について説明する。以下の説明においては、重量が4t未満、設置されたときの直径が2m未満、体積が2m3未満のFUを、単に「小さいFU」とし、重量が4〜20t、設置されたときの直径が2〜5m、体積が2〜13m3のFUを、単に「大きいFU」とする。FUにおける網糸の素材、網糸の太さ、網目の長辺などを含む網目の大きさ、塊状物の直径および比重などにおいて、大きいFUおよび小さいFUは同一の構成である。
【0020】
以下の表1は、単体におけるFUの重量(大きさ)と潮流に対して有効な流速との関係の一例を示す。なお、表1において各重量のFUは、直径が50〜300mmで、比重が2.65の塊状物がそれぞれ充填されている。
【表1】
【0021】
表1を参照して、FUの重量は潮流における流速の状況に応じて、適切なFUが適用される。たとえば、FUを設置する場所の潮流の流速が5.0m/sの場合には、重量が4t以上のFUが用いられる。また、適用箇所における施工性により、重量および塊状物の粒径の種類を検討して適用することも可能である。表1が示すように、大きいFUは、小さいFUに比べ、高い流速を有する潮流に対して高い効果を発揮することができることが分かる。また、以下の説明においては、特別な説明を要する場合以外は、上記で説明したFU50を使用するものとする。
【0022】
なお、上記したFU50においては、FU50単体としての大きさ、網糸の素材、網糸の太さ、網目の大きさ、塊状物の粒径および比重などの項目により特定したが、上記以外の項目でFU50が特定されてもよい。
【0023】
なお、ここで使用されるFUとしては、たとえば、日本の特許3696389号で開示される水中構造物の洗堀防止材を適用するのが好ましい。
【0024】
次に、この実施形態におけるFUの設置方法について説明する。図3(a)は基礎スラブ部12aが設置される直前の杭12bの周囲にFU50を設置した場合の、杭12bの周囲を側面から見た模式図である。また、図3(b)は図3(a)のIIIBで示される位置における矢視図であり、図3(c)は図3(a)のIIICで示される位置における矢視図である。まず、図3(a)を参照して、FU50は海底200と基礎スラブ部を上端部で支持する各杭12bとの間に設置される。ここで、図中における二点鎖線Xに示されるように、各杭12bの杭頭のそれぞれに合わせて、複数のFU50で平坦面が形成させるまで隙間なく設置されるのが好ましい。こうすることにより、基礎スラブ部が設置されたとき、基礎スラブ部の底面が各杭12bおよびFU50と密着するため、各杭12b、基礎スラブ部、およびFU50が一体化される。従って、基礎スラブ部と基礎部とを含む基礎構造としての強度が向上するとともに、洗掘を含む潮流からの影響を低減させることができるからである。すなわち、風力発電施設および支柱を支持する基礎構造としての支持力を向上させることができる。図3(b)を参照して、基礎スラブ部を各杭12b上に設置したときに中心となる点Oの位置から最も遠い位置にある杭12bにおける円周の外側までの距離をR(m)とし、点Oを中心とした半径R(m)の円を円P1とし、点Oを中心とした半径R+W(m)の円を円P2とすると、FU50が設置される最下層において、円P2に囲まれる範囲にFUを設置するのが好ましい(図3(c)参照)。Wが約4〜15mである場合、上記した洗堀の防止を含むFUの効果が発揮され、特に、Wは約6mであるのが好ましい。FU50の設置される範囲が広ければ広いほど、上記で説明したようなFU50の効果を望めるが、FU50の設置される範囲が円P2を越えると、FU50の効果はほとんど変わらなくなる。従って、設置されるFU50の数量および施工における作業量など施工の観点や、FU50の有効性など効果の観点を踏まえて、FU50が設置される最下層の範囲は、点Oを中心とした半径約R+6(m)の円P2に囲まれる範囲が好ましい。また、図3(c)を参照して、円P2から円P1を除く範囲Sにおいて、最下層のFU50は、中心である点Oに対して同心円状に2〜5列で設置されるのが好ましい(図3(a)および図3(c)においては、FU50が3列で設置される場合が示されている)。FU50は、範囲Sを大きいFUを用いて1列で設置される場合より、小さいFUを用いて複数の列で設置される場合の方が、設置された複数のFU同士における隙間を少なくすることができ、洗堀の防止において高い効果を得られる。また、設置される複数のFUが群体を形成することによって群体効果と呼ばれる効果が発揮される。群体効果とは、たとえば、潮流の影響を直接受けたFUが周囲の他のFUで支持されることにより、群体を形成する複数のFU全体としての安定的な状態が維持されるという効果である。従って、上記で説明した洗堀の防止などの効果を長期的に発揮することができる。また、FUが1列で設置される場合では、潮流が基礎構造に衝突して発生する乱流を抑制する効果が十分に得られず、また、乱流の影響により海底200で洗堀が発生してしまうからである。一方、6列以上でFU50が設置されたとしても、洗堀を防止する効果はほとんど変わらないからである。
【0025】
FU50の層厚、すなわち、FU50を設置する段数が大きければ大きいほど、FU50の効果を高く望める。層厚が大きいと、複数のFU50同士において噛み合いが生じるからである。これにより、複数のFU50同士が隙間なく密着するとともに固定されるため、海底200の表面から土砂などによる吸出しが発生する可能性が低減され、設置された複数のFU50において安定性が維持されるとともに、洗堀などを含む潮流からの影響を長期的に低減できるからである。一方、3層以上の層厚では、たとえば、洗掘を防止する効果はほとんど変わらない。従って、上記と同様、設置されるFU50の数量および施工における作業量などの施工の観点や、FU50の有効性など効果の観点を踏まえて、FU50の層厚は2〜3層であるのが好ましい。また、この実施形態における風力発電施設における基礎構造の施工方法は、基本的には1種類の大きさのFUを用いて行われるが、大きさの異なるFUを用いて2層以上の層厚でFUを設置する場合、小さいFUから順に設置するのが好ましい。こうすることにより、小さいFUが海底の凹凸に追随し、また、設置された小さいFUと海底200とにおける噛み合わせが良くなるため、さらに長期的に安定的な状態が維持されるからである。また、設置された小さいFUの層の上面は海底の凹凸よりも平坦なため、小さいFUの上方に設置される大きいFUも安定的な状態が維持される。また、潮流における流速を有効的に低減することができる。
【0026】
また、杭12bが打ち込まれている海底200の周囲にFU50が設置されることによって、FU50が設置される位置の海底200にかかる荷重が増加し、杭12bの地中部分における周囲からの側圧が向上されるため、杭12bと杭12bの地中部分における周囲の地盤および支持層との間には隙間が形成されにくくなり、杭12bにおける海底200の近傍において発生するモーメントを抑制することができる。さらに、設置される複数のFU50が基礎構造の一部として作用するため、基礎構造の大きさを小さくすることができる。
【0027】
上記したように、海底200と杭12bとの間に複数のFU50を設置することにより、杭12bと杭12bの地中部分における周囲の地盤および支持層との間には隙間が形成されにくくなり、杭12bにおける海底200の近傍において発生するモーメントを抑制することができ、また、杭12bの周囲に生じる洗掘を防止することができる。その結果、杭12bを基礎部とする基礎構造の支持力および耐久力を向上させることができる。
【0028】
次に、この実施形態の風力発電施設における基礎構造の施工方法について説明する。図4(a)〜図4(f)は、風力発電施設における基礎構造の施工を工程順に示す図である。まず、風力発電施設を設ける位置において、海底200の状況や海底200の近傍の潮流の状況を予め調査し、FU50の大きさ、FU50の数量およびFU50を設置する位置について調べておく(図4(a))。次に、調査に基づき、基礎構造の基礎部である杭12bを支持層で支持されるように設ける(図4(b))。次に、上記で説明したように、海底200と杭12bとの間に複数のFU50を密着させて設置する(図4(c))。このとき、各杭12bの杭頭のそれぞれに合わせて、複数のFU50で平坦面を形成させる。次に、各杭12bの上端部に、基礎スラブ部12aの型枠12eを設置する(図4(d))。このとき、型枠12eの底面と杭12bの上端部とは固定される。次に、型枠12eにコンクリートを打設して、基礎スラブ部12aを形成する(図4(e))。次に、基礎スラブ部12aの上端部に支柱11を固定する(図4(f))。
【0029】
上記によれば、支持層で支持されるように杭12bを設け、海底200と杭12bとの間に複数のFU50を設置し、杭12bの上端部に基礎スラブ部12aを設けることにより、基礎構造における海底200の近傍の潮流における影響を低減させるため洗堀の発生を長期的に抑制し、杭12bの近傍における海底200を防護することができ、また、杭12bの地中部分における周囲からの側圧が向上されるため、杭12bと杭12bの地中部分における周囲の地盤および支持層との間において隙間を形成させにくくさせることができる。その結果、基礎構造における支持力を向上させるとともに基礎構造の耐久力を向上させることができる。さらに、設置された複数のFU50が基礎構造の一部として作用するため、基礎構造の大きさを小さくすることができる。また、合成繊維の糸で編網され、多孔の空隙を有するFU50を適用するため、環境ホルモンおよび重金属などの有害物質の溶出もなく、藻場の着生基質および小魚などに生息空間を提供することができる。
【0030】
次に、この実施形態における変形例を説明する。この変形例では、図5に示すように、図1とは異なり複数のFU50の上部と基礎スラブ部12aとの間に隙間が設けられている。なお、それ以外は、上記の実施形態と同様のため説明を省略する。この変形例によれば、上記の実施形態と同様、基礎構造における海底200の近傍の潮流における影響を低減させるため洗堀の発生を長期的に抑制し、杭12bの近傍における海底を防護することができ、また、杭12bの地中部分における周囲からの側圧が向上されるため、杭12bと杭12bの地中部分における周囲の地盤および支持層との間において隙間を形成させにくくさせることができる。
【0031】
次に、上記の実施形態における他の変形例を説明する。この変形例では、既設の風力発電施設における基礎構造にFUを設置する。図6はこの変形例を示す図である。図6(a)は既設の風力発電施設における基礎構造の周囲に隙間が形成された状況を示す図であり、図6(b)はこの変形例によって杭12bを基礎部とする基礎構造と海底200との間に、複数のFU50を設置した状況を示す。こうすることにより、上記の実施形態と同様、基礎構造における海底200の近傍の潮流における影響を低減させるため洗堀の発生を長期的に抑制し、杭12bの近傍における海底を防護することができ、また、杭12bの地中部分における周囲からの側圧が向上されるため、杭12bと杭12bの地中部分における周囲の地盤および支持層との間において隙間を発生させにくくさせることができる。また、この変形例では、洗堀の発生などが原因で杭の設置されている海底が変形している場合について説明したが、海底が変形していない既設の風力発電施設における基礎構造であってもよい。
【0032】
なお、上記の実施形態において、設置されるFUの大きさの種類が1種類の場合について説明したが、これに限ることなく、たとえば、大きいFUおよび小さいFUの2種類の大きさのFUを用いてもよい。この場合は、たとえば、大きいFUおよび小さいFUを重ねて用いてもよい。なお、FUの設置する層厚を3層とする場合、上記で説明したように、先に小さいFUを最下層に設置し、その上に大きいFUを2層設置する。こうすることにより、図3を用いて説明した効果に加え、上記したように各FU間はさらに安定的な状態が長期的に維持され、また、潮流における流速を有効的に低減することができる。また、その他、FUに充填される塊状物の種類が異なる複数のFUを設置してもよい。たとえば、先に塊状物における粒径の小さいFUを設置して、次に設置されている塊状物における粒径の小さいFUの上に塊状物における粒径の大きいFUを設置する。こうすることにより、海底側に位置する塊状物における粒径の小さいFUにより海底と設置する面からの吸出しを防止でき、海底の凹凸に追随でき、また、各FU間の噛み合わせが良くなり、隙間なく密着するとともに固定されるため、長期的に安定的な状態が維持される。また、潮流に対して表面側に位置する塊状物における粒径の大きいFUにより、各FUにおける安定性を確保し、潮流における流速を有効的に低減することができる。なお、「FUの大きさ」と「FUに充填される塊状物の粒径の大きさ」とは無関係であるため、「粒径の大きい塊状物を充填する大きいFU」は、「粒径の小さい塊状物を充填する大きいFU」、および、「粒径の大きい塊状物を充填する小さいFU」の各々が奏する効果と比較すると、相乗的な効果を奏する。たとえば、粒径の大きい塊状物を充填する大きいFUは、粒径の大きさは同じ塊状物を充填する小さいFUと比較してより安定した状態を維持することができ、かつ、粒径の小さい塊状物を充填する大きさの同じFUと比較して潮流における流速をより低減することができるという効果を奏する。
【0033】
なお、この実施形態において、基礎スラブ部12aは、杭12bの上端部に、基礎スラブ部12aの型枠12eを設けた後、型枠12eにコンクリートを打設することで、基礎スラブ部12aを形成する場合について説明したが、これに限ることなく、予め製作されたコンクリート製の基礎スラブ部12aを杭12bの上端部に設けてもよい。
【0034】
なお、この実施形態において、杭は鋼管製の場合について説明したが、これに限ることなく、コンクリート製でもよい。
【0035】
(2)第2の実施形態
次に、第2の実施形態について説明する。この実施形態においては、ケーソンを基礎部とする基礎構造により、風力発電施設が支持される場合を説明する。図7は、この実施形態の風力発電施設における基礎構造の施工方法を適用した風力発電施設、支柱、および基礎構造を示す模式図である。図7を参照して、洋上の風力発電施設10と、洋上の風力発電施設10を保持し、海面100を貫くように海底200の近傍まで延在する支柱11と、コンクリート製で、アンカーボルトにより支柱11と固定され、支柱11を支持する基礎スラブ部12aと、コンクリート製で、掘削された海底200に固定され、上端部において基礎スラブ部12aを支持するケーソン12cと、海底200とケーソン12cとの間に設置される複数のFU50と、支柱11における海底200の近傍から突出し、風力発電施設10で発電された電気を陸地の地上施設(図示せず)に送電する送電ケーブル20とが示されている。なお、この実施形態における基礎構造は、基礎スラブ部12aおよびケーソン12cを含み、ケーソン12cは、型枠にコンクリートが打設されることによりケーソン12cとなる。また、この実施形態で使用されるFU50は上記の実施形態と同様である。
【0036】
次に、この実施形態の風力発電施設における基礎構造の施工方法について説明する。図8(a)〜図8(h)は、風力発電施設における基礎構造の施工を工程順に示す図である。また、図8(i)は、図8(e)のVIII Iにおける矢視図である。まず、風力発電施設を設ける位置において、海底200の状況や海底200近傍の潮流の状況を予め調査し、FUの大きさ、FU50の数量およびFU50の設置する位置について調べておく(図8(a))。次に、調査に基づいて、基礎構造の基礎部であるケーソン12cが海底200で固定される位置まで海底200を掘削して、ケーソン12cの型枠12dを設置するための穴13を形成する(図8(b))。このとき、オープンカット工法(露天堀)を採用してもよい。また、掘削する穴13は、設けられる風力発電施設10、支柱11、基礎スラブ部12a、およびケーソン12cが支持されるだけの大きさおよび深さである。次に、掘削した穴13の底面に、複数のFU50を平坦になるよう設置する(図8(c))。このとき、小さいFU50を設置するのが好ましい。こうすることにより、掘削した穴13の底における凹凸に対して小さいFU50が追随し、また、各FU50間に生じる隙間が小さくなり、上方にケーソン12cおよび基礎スラブ部12aなどが設置されたとき、複数のFU50、ケーソン12cおよび基礎スラブ部12aは安定した状態を維持することができる。なお、このとき、各FU50間に生じる隙間が大きい場合には、大きいFUを用いて隙間を少なくしてもよい。また、設置されるFU50の層厚は何層でもよく、層厚の大きさが大きければ大きいほど、第1の実施形態で説明したように、海底200の表面から土砂などによる吸出しが発生する可能性が低減され、ケーソン12cおよび基礎スラブ部12aは安定した状態を維持することができる。次に、穴13の底面に設置されたFU50の上に、ケーソン12cを形成するための型枠12dが設置される(図8(d))。なお、型枠12dは、後述するケーソン12cの一部であるものとみなすことができる。次に、海底200と基礎部となるケーソン12cの型枠12dとの間、すなわち、ケーソン12cの型枠12dと掘削された穴13との隙間を埋めるように、複数のFU50を密着させて設置する(図8(e)。なお、掘削された穴13の周囲における端部を幅Lで囲む範囲(図8(i)において、円P4から円P3を除いた部分)において、最下層のFU50は2〜5列で設置されるのが好ましい。また、Lは約6mであるのが好ましい。さらに、3層の層厚でケーソン12cの型枠12dの周囲に密着するように複数のFU50が設置されるのが好ましい。次に、型枠12dにコンクリートを打設して、ケーソン12cを形成する(図8(f))。次に、基礎スラブ部12aの型枠の底面をケーソン12cの上端部に固定し、基礎スラブ部12aの型枠にコンクリートを打設して、基礎スラブ部12aを形成する(図8(g))。次に、基礎スラブ部12aに支柱11を固定する(図8(h))。
【0037】
上記によれば、ケーソン12cが支持されるように海底200を掘削して、掘削した穴13の底面に複数のFU50を平坦に設置して、ケーソン12cの型枠12dを設置して、海底200とケーソン12cの型枠12dとの間に複数のFU50を設置して、型枠12dにコンクリートを打設してケーソン12cを形成し、ケーソン12cの上端部に基礎スラブ部12aを設けることにより、基礎構造における海底200の近傍の潮流における影響を低減させるため洗堀の発生を長期的に抑制し、ケーソン12cの近傍における海底を防護することができるため、基礎構造における支持力を向上させるとともに基礎構造の耐久力を向上させることができる。さらに、設置された複数のFU50が基礎構造の一部として作用するため、基礎構造の大きさを小さくすることができる。また、合成繊維の糸で編網され、多孔の空隙を有するFU50を適用するため、環境ホルモンおよび重金属などの有害物質の溶出もなく、藻場の着生基質および小魚などに生息空間を提供することができる。
【0038】
次に、この実施形態における変形例を説明する。この変形例では、既設の風力発電施設における基礎構造にFUを設置する。図8(j)は既設の風力発電施設における基礎構造の周囲に隙間が形成された状況を示す図であり、図8(k)はこの変形例によってケーソン12cを基礎部とする基礎構造と海底200との間に、複数のFU50を設置した状況を示す。なお、それ以外は、この実施形態と同様のため説明を省略する。また、ここで説明した実施形態は、洗堀の発生などが原因でケーソンの設置されている海底が変形している場合について説明したが、海底が変形していない既設の風力発電施設における基礎構造であってもよい。
【0039】
なお、この実施形態において、コンクリートの打設によりケーソン12cを形成した後、基礎スラブ部を形成するための型枠を設置する場合について説明したが、コンクリートの打設によりケーソンを形成するとともに基礎スラブ部を形成することができる型枠を用いてもよい。
【0040】
なお、この実施形態において、ケーソン12cは、掘削された穴13の底面に設置されるFU50の上方から型枠12dを設置し、コンクリートを打設することで形成される場合について説明したが、予め形成されたケーソン12cが、掘削された穴13の底面に設置されたFU50の上方から設置されてもよい。
【0041】
なお、上記の実施形態において、設置されるFUの大きさが1種類の場合について説明したが、これに限ることなく、大きいFUと小さいFUとを用いてもよい。たとえば、FUに形状の追随が要求される場合、たとえば、海底の形状に凹凸がある場合などにおいては、小さいFUを用いて、FUに潮流の流速の低減が要求される場合、大きいFUを用いる。また、FUに充填される塊状物の種類が異なる複数のFUを設置してもよい。こうすることにより、第1の実施形態で説明した効果と同様の効果を奏する。
【0042】
(3)第3の実施形態
次に、FUの設置方法における他の実施形態として、第3の実施形態について説明する。この実施形態においては、風力発電施設における海底ケーブルの保護方法について説明する。図9(a)〜図9(c)は、風力発電施設における海底ケーブルの保護方法を工程順に示す図であり、図9(d)は、図9(c)のIXDで示される位置における矢視図である。また、図10は図9(c)および図9(d)で示されたFUの設置における条件を示す図である。なお、この実施形態で使用されるFU50は上記の実施形態と同様である。まず、海底ケーブル20を設置する位置において、海底200の状況や海底200の近傍の潮流の状況を予め調査し、FU50の大きさ、FU50の数量およびFU50の設置する位置について調べておく(図9(a))。次に、海底ケーブル20を海底200に設置する(図9(b))。次に、海底200に設置された海底ケーブル20を覆うようにFU50を設置する(図9(c))。このとき、図10を参照して、海底ケーブル20の断面において中心を点Qとし、半径がr(m)とする場合、海底ケーブル20の表面における上端から上方に向かってD1(m)の場所に位置する点を点T1とし、海底ケーブル20の表面における両側面から海底200と平行の方向に向かってD2(m)の場所に位置する点を点T2および点T3とする。また、点T1、点T2、および点T3で形成される二等辺三角形の∠T1T2T3および∠T1T3T2のなす角の大きさをθとする。FU50に充填される複数の塊状物を上方から地面に積載すると自然に形成される山の斜辺と、地面と、を側面から見た場合において、山の斜辺および地面に挟まれる角度をφとする。このとき、海底ケーブル20の延在する方向と直角をなす面において、D1、D2、およびθがそれぞれ、D1≧0.5m、D2≧1.0m、およびθ≦φを満たす、T1、T2、T3で形成される二等辺三角形を含む範囲を占めるようにFU50を設置するのが好ましい。なお、このときφ≦45°であり、θ≦30°がより好ましい。図10においては、上記の条件を満たす二等辺三角形の一例を斜線で示し、条件を満たした二等辺三角形T1、T2、T3を覆うように設置されるFU50の一例を点線で示す。こうすることにより、安定したFU50が海底ケーブル20を覆うため、海底ケーブル20が周囲の潮流の影響を受けて移動しないように固定される(図9(d)参照)。また、たとえば、船舶の錨や潮流によって流されてきた転石などから、海底ケーブル20を保護することができる。
【0043】
上記によれば、海底ケーブル20を覆うようにFU50を設置することにより、海底200とFU50とで海底ケーブル20が固定され、周囲の潮流の影響による海底ケーブル20の移動を防止することができるため、海底200と海底ケーブル20とにおける摩擦の発生を防止でき、また、設置された海底ケーブル20の近傍において発生する洗堀を長期的に防止することができるため、結果として、海底ケーブル20を長期的に保護することができる。
【0044】
なお、この実施形態において、海底ケーブルを新たに設ける場合について説明したが、既に設けられた海底ケーブルを覆うようにしてFU50を設置してもよい。
【0045】
なお、この実施形態において、設置されるFU50は1つの場合で説明したが、複数のFU50を設置するのが好ましい。複数のFU50を用いることで、海底ケーブル20を固定する重量が大きくなるため、強固に海底ケーブル20を固定することができるからである。また、第1の実施形態で説明したように、設置される複数のFU50により、群体効果が発揮され、高い安定性を得ることができるからである。なお、複数のFU50を用いて海底ケーブル20を固定する場合における例の一部を以下に示す。図11(a)は海底ケーブル20の延在する方向に連続的に複数のFU50を1列に並べて設置した場合を示し、図11(b)は図11(a)のXIBで示される位置における矢視図を示す。なお、図11(a)では設置された複数のFUの一部のみを示す。図12(a)は海底ケーブル20を挟むように2列に並べて設置されたFU50により固定される場合を示し、図12(b)は図12(a)のXIIBで示される位置における矢視図を示す。なお、この場合も、海底ケーブル20の延在する方向に連続的にFU50を並べて設置してもよい。また、図13(a)は多数のFU50を用いて海底ケーブル20を固定する場合を示し、図13(b)は図13(a)のXIIIBで示される位置における矢視図を示す。いずれも、海底ケーブル20を覆うようにFU50を設置することにより、海底200とFU50とで海底ケーブル20が固定され、周囲の潮流の影響による海底ケーブル20の移動を防止することができるため、海底200と海底ケーブル20とにおける摩擦の発生を防止できる。また、設置された海底ケーブル20の近傍において発生する洗堀を長期的に防止することができるため、結果として、海底ケーブル20を長期的に保護することができる。また、海底ケーブル20が延在する方向に対して連続的にFU50を設置する場合について説明したが、断続的にFU50を設置するようにしてもよい。たとえば、海底ケーブル20が潮流により移動してしまう虞のある場所において、海底ケーブル20における所定の間隔で断続的にFU50を設置することにより、施工における作業量、および、使用するFU50の数量などを最小限に抑えることができる。
【0046】
なお、この実施形態において、海底ケーブル20を保護するために設けられたFU50の周辺において洗堀が発生したとしても、FU50は変形した海底200に追随するため、たとえば、海底200が沈み込んだ分だけ沈み込んだ部分にFU50を上方から設けるだけで補修を行うことができるため、容易に、かつ、安価なコストで、補修を行うことができる。
【0047】
なお、この実施形態における、風力発電施設における海底ケーブルの保護方法は、海底までの深度が約3m以上の深度において適用されるのが好ましい。
【0048】
なお、この実施形態においては海底ケーブルとして説明したが、海底ケーブルには電話線や光ファイバーなどが含まれる。また、これに限ることなく、ガスや石油などのパイプラインを含む、海底における管などの長尺物でもよい。
【0049】
(4)第4の実施形態
次に、FUの設置方法における他の実施形態として、第4の実施形態について説明する。この実施形態においては、海底における凹型の不陸の平坦化方法について説明する。基本的には、1種類の大きさのFUを用いて不陸を平坦化するが、この実施形態においては、2種類の異なる大きさのFUを用いて説明する。図14(a)〜図14(c)は、海底における凹型の不陸の平坦化方法を工程順に示す図である。第1の実施形態で説明したFUのうち、一方は大きいFU51を使用し、他方は小さいFU52を使用するものとする。また、後述する、予め行う調査に基づき、これら2種類のFUを使用するのが適切であると判断されたものとする。また、大きいFU51および小さいFU52に充填される塊状物についてはともに、直径が50〜300mmで、比重が2.65の塊状物を充填するFUであるものとする。それ以外についても、大きいFU51および小さいFU52における構成の差異はないものとする。まず、不陸1000において、海底200の状況を予め調査し、使用する大きいFU51および小さいFU52における数量および設置する位置についても調べておく(図14(a))。次に、調査に基づき、不陸1000における底に小さいFU52を設置する(図14(b))。このとき、設置される小さいFU52は上方が可能な限り平坦となるよう設置されるのが好ましい。次に、設置された小さいFU52の上面に大きいFU51を設置し、海底200に対して平坦になるように設置された大きいFU51を均す(図14(c))。ここにおいて、上記の実施形態で説明した内容を踏まえると、大きいFU51および小さいFU52のように、異なる複数の種類のFUを用いることにより、種類の異なる複数のFU同士の噛み合いが良くなり、隙間なく密着し合うため、強固に一体化され、不陸1000に設置された大きいFU51および小さいFU52における安定性が向上するため、潮流からの影響を低減できるからである。また、大きいFU51の上面は可能な限り不陸1000の周囲における海底200に対して平坦となるよう均す。
【0050】
ここにおいて、FUは大きさの小さいものから順に設置されるのが好ましい。こうすることにより、小さいFU52の上面に大きいFU51が設けられることで、不陸1000の底の形状に小さいFUが追随し、小さいFU52の上面において平坦面を形成することができる。また、平坦になった小さいFU52の上方に設けられる大きいFU51により、設置されたFU全体における安定性を確保することができる。
【0051】
上記によれば、小さいFU52を不陸1000における底に設置し、設置された小さい
FU52の上面に大きいFU51を設置して、海底200に対して平坦になるように設置された大きいFU51を均すため、大きいFU51および小さいFU52が相互に噛み合い、隙間のない高い一体性を有した実質的に平坦な海底200を形成することができる。その結果、不陸1000を実質的に平坦で、かつ、強固な海底200にすることができる。
【0052】
なお、上記の実施形態において、凹型の不陸について説明したが、凸型の不陸においても同様、不陸における平坦化方法は適用可能である。図15は海底における凸型の不陸を平坦化した場合を示す模式図である。図15を参照して、凸型の不陸1000における平坦化方法については、上記と同様、不陸1000に小さいFU52を設置する。設置した小さいFU52の上面に大きいFU51を設置した後、海底200に対して平坦になるように設置された大きいFU51を均す。これにより、凸部の不陸1000を海底に対して平坦化することができる。
【0053】
なお、この実施形態において、大きさの異なる2つの大きいFU51および小さいFU52を用いる場合について説明したが、これに限ることなく、1種類の大きさのFUを複数用いて、海底200に対して平坦になるようにFUを均して平坦化してもよい。また、充填される塊状物の粒径の異なる複数のFUを用いて平坦化してもよい。たとえば、粒径が100mmの塊状物を充填するFUと、粒径が200mmの塊状物を充填するFUとを用いる。この場合、粒径の小さい塊状物が地面からの砂の流出を防ぎ、不陸の底における凹凸に追随し、また、粒径の異なる2種類のFU同士が相互に噛み合い、隙間なく一体化することができる。また、FUは塊状物における粒径の小さいものから順に設置されるのが好ましい。こうすることにより、不陸1000の底の形状に小さいFUが追随するため、小さいFU52の上面において平坦面を形成することができ、また、平坦になった小さいFU52の上方に設けられる大きいFU51により、設置されたFU全体における安定性を確保することができる。
【0054】
なお、この実施形態における、海底における不陸の平坦化方法は、たとえば、砕石を投入するバージ船とともに適用してもよい。この場合、先に不陸の底にバージ船で砕石を投入し、所定の分だけ投入した後、海底における不陸の平坦化方法を適用して、たとえば、大きいFU51と小さいFU52とを上記の実施形態で説明したように設置して、海底200における不陸1000を平坦化してもよい。こうすることにより、安価なコストで、かつ、効率的に不陸を平坦化することができる。
【0055】
なお、この実施形態において、不陸1000を平坦化する場合について説明したが、不陸を平坦化した後、たとえば、不陸の上を通過するように風力発電施設における海底ケーブルを設置してもよいし、その他、不陸の上に水中構造物を設置してもよい。さらに、上記実施形態で説明したように、FUを用いて海底ケーブルを固定し、保護してもよい。
【0056】
なお、上記した全ての実施形態において、GPSを用いて、FU50の設置する位置を特定するようにしてもよい。たとえば、FU50を海底200に設置する作業船と、作業船からの通信を受けて、潜水して海中の状況を調査する曳航体とを適用する。曳航体は、海底に対して扇状に音波を照射し、海底からの反射波を受信して海底までの深度を測定する測深ソナーと、曳航体の揺れに伴う測深ソナーの傾きを計測して補正する動揺センサと、曳航体の水深の変化を把握するための正確な水圧を計測する水圧センサと、作業船との距離および方位を算出するための音波を発信するトランスポンダとを含む。また、作業船は、曳航体を操作する操作装置と、作業船の位置を把握するGPS測位装置と、作業船が向いている方位を把握するGPS方位センサと、曳航体によるトランスポンダからの音波を受信し、曳航体の位置を計測する海中測位装置と、曳航体の位置および作業船の位置を踏まえ、曳航体からの取得データを解析する専用ソフトと、曳航体とケーブルに接続され曳航体の動きを制御する曳航ウインチとを含む。まず、作業船における操作装置により曳航体を海中に潜水させる。潜水させられた曳航体は、動揺センサ、水圧センサ、トランスポンダにより曳航体自身の位置および状況を作業船に送信しながら、測深ソナーを用いて、海底の状況に関するデータを取得する。取得した海底に関するデータを作業船に送信し、作業船の専用ソフトにて、海底の状況を把握する。曳航体からの取得データ、GPS測位装置およびGPS方位センサによりFUを設置する位置を特定する。こうすることにより、所望の位置に対して正確にFUを設置することができる。また、たとえば、予め行う調査において、GPS測位装置を用いてFUの設置する位置を特定して記録しておき、その記録に基づいてFUを設置するようにしてもよい。
【0057】
なお、上記した全ての実施形態において、クレーンなどでFU50を吊り下げて設置する場合、FU50を設置するために所定の位置までクレーンでFU50を移動させることにより、クレーンとFU50の連結部504との連結が自動で解除され、FU50が設置されるようにしてもよい。こうすることにより、クレーンからFU50の連結を解除する作業において、たとえば、海底にて作業の指示および補助を行う潜水夫にかかる手間や危険を低減させることができる。
【0058】
なお、上記した全ての実施形態において、設置された複数のFU50をロープやチェーンなどの連結部材により連結してもよい。こうすることにより、複数のFU50同士における安定性を長期的に維持することができるため、基礎構造の支持力および耐久力をさらに向上させることができる。
【0059】
なお、上記した全ての実施形態において、FU50の設置は1つずつ設置してもよいし、複数同時に設置してもよい。
【0060】
図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
この発明によると、基礎構造における支持力を向上させるとともに基礎構造の耐久力を向上させることができるため、風力発電施設における基礎構造の施工方法として有利に利用される。
【符号の説明】
【0062】
10 風力発電施設、11 支柱、12a 基礎スラブ部、12b 杭、12c ケーソン、12d,12e 型枠、13 穴、20 送電ケーブル、51,52 海底ケーブルの一部、50 フィルターユニット、51 大きいフィルターユニット、52 小さいフィルターユニット、100 海面、200 海底、501 袋体、502 塊状物、503 吊り下げロープ、504 連結部、505 閉じ部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上で風力発電施設を保持し、洋上から海底近傍まで延在する風力発電施設の支柱を支持する風力発電施設における基礎構造の施工方法であって、
所定の地盤で支持される基礎部と海底との間に所定の塊状物を含むフィルターユニットを複数設置するステップを含む、
風力発電施設における基礎構造の施工方法。
【請求項2】
洋上で風力発電施設を保持し、洋上から海底近傍まで延在する風力発電施設の支柱を支持する風力発電施設における基礎構造の施工方法であって、
所定の地盤で支持されるように前記所定の地盤の上に基礎部を設けるステップと、
海底と前記基礎部の間に所定の塊状物を含む袋状のフィルターユニットを複数設置するステップと、
前記基礎部の上端部に基礎スラブ部を設けるステップと、
前記基礎スラブ部の上端部に前記支柱を設けるステップとを含む、
風力発電施設における基礎構造の施工方法。
【請求項3】
前記複数のフィルターユニットを設置するステップは、GPSを用いて複数のフィルターユニットを設置する位置を特定するステップを含む、請求項1または2に記載の風力発電施設における基礎構造の施工方法。
【請求項1】
洋上で風力発電施設を保持し、洋上から海底近傍まで延在する風力発電施設の支柱を支持する風力発電施設における基礎構造の施工方法であって、
所定の地盤で支持される基礎部と海底との間に所定の塊状物を含むフィルターユニットを複数設置するステップを含む、
風力発電施設における基礎構造の施工方法。
【請求項2】
洋上で風力発電施設を保持し、洋上から海底近傍まで延在する風力発電施設の支柱を支持する風力発電施設における基礎構造の施工方法であって、
所定の地盤で支持されるように前記所定の地盤の上に基礎部を設けるステップと、
海底と前記基礎部の間に所定の塊状物を含む袋状のフィルターユニットを複数設置するステップと、
前記基礎部の上端部に基礎スラブ部を設けるステップと、
前記基礎スラブ部の上端部に前記支柱を設けるステップとを含む、
風力発電施設における基礎構造の施工方法。
【請求項3】
前記複数のフィルターユニットを設置するステップは、GPSを用いて複数のフィルターユニットを設置する位置を特定するステップを含む、請求項1または2に記載の風力発電施設における基礎構造の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−137365(P2011−137365A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287430(P2010−287430)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(392031572)キョーワ株式会社 (22)
【出願人】(000002129)住友商事株式会社 (42)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(392031572)キョーワ株式会社 (22)
【出願人】(000002129)住友商事株式会社 (42)
【Fターム(参考)】
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