説明

風力発電装置

【課題】ブレードを遮蔽するようにブレード先端に架空地線または導電帯を装備することで、ブレードへの雷撃を防止することができ、避雷鉄塔よりも安価で避雷対策が可能な風力発電用風車の耐雷装置を提供する。
【解決手段】複数のブレード4の先端部により架空地線または導電帯8が接続され、架空地線または導電帯8は接地されており、例えば架空地線または導電帯8とブレード4の幅の中心線のなす遮蔽角θ1、および架空地線または導電帯8の2辺の架空地線または導電帯が交差する点とブレードの先端の突き出しアームのカドからなる直線とブレードの厚さ方向の中心線のなす遮蔽角θ2が、35度以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置に関し、特に風力発電用風車のブレードに落雷するのを防止する風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンエネルギーの利用拡大に伴い、風力発電装置が各地に設置されてきており、特に近年では、600MW、1000MWといった大型の風力発電装置が導入されてきている。大型の風力発電装置は、風が強い地域や、丘陵地や、風の吹き抜ける場所や、洋上など風を妨げる障害物が少ない場所に設置される(特許文献1を参照。)。
【0003】
大型の風力発電装置では、地上からブレード頂部までが100m超の高さとなるため、風力発電装置への落雷の被害が多い。特に、ブレード(羽根)に落雷し、ブレードの損傷、破損などが発生している(非特許文献1を参照。)。従来は、ブレードへの落雷対策として、ブレードに受電部としてのレセプタを取り付けて、落雷をこのレセプタに集中させる方法が採用されてきた。もしくは、風車発電装置への落雷を保護するために、風車を遮蔽する位置に独立避雷鉄塔(避雷鉄塔)を設置している。
【0004】
また、風力発電装置の上空を遮蔽する目的で、風力発電装置の両側に鉄塔を建設し、その間に架空地線を架線し、風力発電装置を遮蔽する方法も提案されている(特許文献2を参照。)。さらに、風力発電装置のブレードの外周に円環状のアースリングを配置する方法が提案されている(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−24681号公報
【特許文献2】特開2009−13892号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「電気評論2008.9 特集 自然災害対策の動向 風力発電設備の災害対策 p.47-49」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述したブレードに対してレセプタを取り付ける方式では、落雷のエネルギーが大きい場合にはレセプタが溶断して、ブレードをも損傷や破壊させる場合がある。また、ブレードのどの位置に落雷するか不確定であるため、ブレードに対して複数のレセプタを配置したり、発生地域別に取り付け数量を選定する作業が必要である。
また、上述した避雷鉄塔によって落雷を遮蔽させる方式では、風力発電装置を完全に遮蔽する高さの鉄塔が必要となるため、避雷鉄塔の建設コストがかかる。特に、大型の風力発電装置の場合は、従来用いられている避雷鉄塔以上の高い避雷鉄塔が必要となり、高額な建設コストがかかる。また、夏季雷では、雷撃の侵入方向に明確な方向性が認められないため、避雷鉄塔による風力発電装置の避雷保護は万全ではない。
【0008】
ウィンドファーム等の場合では、すべての風車発電装置を遮蔽するためには、複数の高構造物の避雷鉄塔を建設する必要があるが、完全に全ての風車発電装置を遮蔽することは不可能であり、また、避雷鉄塔の建設コストがかかってしまう。
風車発電装置の両側に避雷鉄塔を建設して、その鉄塔間を架空地線で接続させて、風車発電装置を遮蔽角度内に配置させる方式の場合では、落雷の遮蔽は可能となるが、避雷鉄塔の建設が必要となり、建設用地の確保、建設コストが掛かる問題がある。
【0009】
ブレードの外周に円環状のアースリングを取り付けて、アース端子を介して地面に放流させる場合では、アースリングは頑丈な材料を使用して作られかつ形状維持のための大きさが必要となるために、アースリングの重量も大きくなり風車の回転負荷に影響する。
そこで、本発明は上記課題を解消するために、ブレードを遮蔽するようにブレード先端に架空地線または導電帯を装備することで、ブレードへの雷撃を防止することができ、避雷鉄塔よりも安価で避雷対策が可能な風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解消するために、本発明の風力発電装置は、複数のブレードの先端部により架空地線または導電帯が接続され、前記架空地線または導電帯は、接地されていることを特徴とする。上記構成によれば、ブレードを遮蔽するようにブレード先端に架空地線または導電帯を装備することで、ブレードへの雷撃を防止することができ、避雷鉄塔よりも安価に避雷対策が可能である。
【0011】
本発明の風力発電装置では、前記架空地線または導電帯とブレードの幅の中心線のなす遮蔽角θ1、および風車側面からみて該遮蔽角θ1をなす角度の頂点とブレードの先端の突き出しアーム先端カドからなる直線とブレードの厚さ方向の中心線のなす遮蔽角θ2が、35度以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明の風力発電装置では、前記架空地線または導電帯とブレードの幅の中心線のなす遮蔽角θ1、および風車側面からみて前記遮蔽角θ1をなす角度の頂点とブレードの先端の突き出しアーム先端カドからなる直線とブレードの厚さ方向の中心線のなす遮蔽角θ2が、10度以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明の風力発電装置では、前記ブレードの先端部間において、前記架空地線または導電帯が、それぞれ2本以上接続されていることを特徴とする。上記構成によれば、同じ突き出しアーム長の場合には、遮蔽角を小さくすることができるため、落雷防止をさらに向上させた構造となる。
【0014】
本発明の風力発電装置では、前記架空地線が、亜鉛めっき鋼より線またはアルミ覆鋼より線、鋼心アルミ合金より線、硬銅より線、または銅合金より線であることを特徴とする。本発明の風力発電装置では、前記硬銅より線または前記銅合金より線の電線サイズが5.5mm2〜100mm2、前記アルミニウム覆鋼より線の電線サイズが6.5mm2〜100mm2、前記鋼心アルミ合金より線の電線サイズが25mm2〜160mm2であることを特徴とする。
【0015】
本発明の風力発電装置では、前記架空地線または導電帯が、前記ブレードの外面全周または一部に配置したことを特徴とする。上記構成によれば、ブレードへの雷撃を防止することができ、避雷鉄塔よりも安価に避雷対策が可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ブレードを遮蔽するようにブレード先端に架空地線または導電帯を装備することで、ブレードへの雷撃を防止することができ、避雷鉄塔よりも安価に避雷対策が可能な風力発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の風力発電装置の実施形態を示しており、図1(A)は、風力発電装置の正面図であり、図1(B)は、風力発電装置の側面図である。
【図2】ブレードの突き出しアームに対する架空地線もしくは導電帯の異なる取り付け構造例を示す正面図である。
【図3】ブレードの突き出しアームに対する架空地線もしくは導電帯の異なる取り付け構造例を示す正面図である。
【図4】ブレードの突き出しアームに対する架空地線もしくは導電帯の異なる取り付け構造例を示す正面図である。
【図5】本発明の風力発電装置のさらに別の実施形態を示しており、図5(A)は、風力発電装置の正面図であり、図5(B)は、風力発電装置の側面図である。
【図6】風力発電装置の近傍に、避雷鉄塔を設置した落雷対策例を示す図である。
【図7】本発明の風力発電装置のさらに別の実施形態を示しており、図7(A)は、風力発電装置の正面図であり、図7(B)は、風力発電装置の側面図である。
【図8】本発明の風力発電装置のさらに別の実施形態を示しており、図8(A)は、風力発電装置の正面図であり、図8(B)は、風力発電装置の側面図である。
【図9】図8に示すクランプの取り付けの具体例を示す図である。
【図10】本発明の風力発電装置の別の実施形態を示しており、図10(A)は、風力発電装置の正面図であり、図10(B)は、風力発電装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の風力発電装置の実施形態を示しており、図1(A)は、風力発電装置の正面図であり、図1(B)は、風力発電装置の側面図である。
図1に示す風力発電装置1は、タワー2と、ナセル3と、3つのブレード4と、耐雷装置10を有している。タワー2は設置面Tに対して垂直に立てて設けられており、下部から上部に至るに従って先細りに形成されている。タワー2の上端部にはナセル3が設けられており、ナセル3内には発電機が配置されている。
【0019】
図1に示すブレードの基部5には、120度毎に、3つのブレード4が半径方向に沿って取り付けられている。3つのブレード4は、風力発電用風車を構成している。これらのブレード4と基部5が回転することで、発電機の出力軸が回転して発電できる。耐雷装置10は、複数本の架空地線または導電帯8と、3つの複数の突き出しアーム7と、避雷線9,11,12を有している。架空地線または導電帯8は、各ブレード4の前側に1条装着されている。
【0020】
図1に示す各ブレード4は、基部5側から先端部6側に向けて先細りになるように形成されている。各ブレード4の先端部6には、突き出しアーム7が取り付けられている。突き出しアーム7は、金属製もしくは非金属製の部材であり、突き出しアーム7には、架空地線または導電帯8を把持または固定できるクランプまたはその他の固定装置が取り付けられている。
【0021】
図1に示す突き出しアーム7が非金属製の部材である場合には、突き出しアーム7の内部もしくは突き出しアーム7の表面に、導電線を取り付ける。架空地線または導電帯8は、隣の突き出しアーム7間において直線的になるように配線して取り付けられている。各ブレード4内には避雷線9が長手方向に沿って貫通するようにして内蔵されており、ナセル3内には避雷線11が内蔵され、タワー2内には避雷線12が貫通するようにして内蔵されている。架空地線または導電帯8は、避雷線9,11,12に電気的に接続されている。例えば避雷線9は、電気ブラシ等の回転接触方式等でナセル3内の避雷線11に電気的に接続されている。
【0022】
図1に示す突き出しアーム7が金属製の部材である場合には、架空地線または導電帯8は、金属製の突き出しアーム7を介してブレード4の表面または避雷線9に電気的に接続させ、しかも電気ブラシ等の回転接触方式等でナセル3内の避雷線11に電気的に接続されている。このナセル3内の避雷線11は、タワー2内の避雷線12を通して設置面Tに接地されている。
【0023】
あるいは、突き出しアーム7が非金属製の部材である場合には、架空地線または導電帯8は、非金属製の突き出しアーム7の導電線を介してブレード4の表面または避雷線9に電気的に接続させ、しかも電気ブラシ等の回転接触方式等でナセル3内の避雷線11に電気的に接続されている。このナセル3内の避雷線11は、タワー2内の避雷線12を通して設置面Tに接地されている。
このように、架空地線または導電帯8は、突き出しアーム7を介して、ブレード4の表面またはブレード4を貫通させた避雷線9と接続され、ナセル3を通過する避雷線11とタワー2を通過する避雷線12を通じて設置面Tに接地されている。これにより、架空地線または導電帯8に落雷した雷撃電流は、避雷線9,11,12を介して設置面Tに流れ込ませるようになっている。
【0024】
架空地線または導電帯8の材質としては、架空地線送電線の架空地線として採用されている亜鉛めっき鋼より線(JIS G 1988)、アルミニウム覆鋼より線(JCS−389−1984)、鋼心アルミニウム合金より線系電線、または硬銅より線(JIS C 3105)または銅合金より線等を使用することができる。導電帯の材質としては、銅、銅合金、鉄、鉄合金を使用することができる。
【0025】
図1に示すように、風力発電装置1では、風車のブレード4の先端部の突き出しアーム7同士を架空地線または導電帯8で直線的に接続させ、風車が回転してどの位置になっても架空地線または導電帯8がブレード4を遮蔽させる構造となるように、架空地線または導電帯8を接続している。従って、風力発電装置1は、ブレード4を遮蔽するようにブレード4の先端部に架空地線または導電帯8を装備することで、ブレード4への雷撃を防止することができ、避雷鉄塔よりも安価で避雷対策が可能である。
ブレード4の先端部から架空地線または導電帯8の固定用の突き出しアーム7を突き出させており、それぞれのブレード4の突き出しアーム7同士を弛み防止治具22(図2、3参照)を介して架空地線または導電帯8で連結する。
【0026】
本発明の実施形態の場合には、各ブレード4間を架空地線または導電帯8をクランプ等によりブレード4に若干の弛みは出るものの直線的に引き留める方式である。架空地線または導電帯8はブレード4を半径方向とする円環状に形状を維持する必要がないため、架空地線または導電帯8のサイズを小さくすることが可能となる。これにより、本発明の実施形態の風力発電装置1の耐雷装置10は、通常の円環状のアースリングを取り付ける方式に比べて軽量にすることができ、風車の回転負荷への影響は小さくなる。
ここで、通常の円環状の場合のシールドアース長と、本発明の実施形態の架空地線または導電帯8の長さを、表1に比較して示す。
【表1】

表1に示すように、本発明の実施形態の架空地線もしくは導電帯8の長さは、通常の円環状の場合のシールドアース長に比べて83%まで短くして軽量化することができる。
【0027】
架空地線8は落雷による溶断特性から、架空地線8が亜鉛めっき鋼より線、硬銅より線または銅合金より線の場合の断面積は、5.5mm2から100mm2、架空地線8がアルミ覆鋼より線の場合の断面積は、6.5mm2から100mm2、架空地線8が鋼心アルミ合金より線の場合の断面積は、25mm2から160mm2とする。架空地線に代えて導電帯を使用する場合には、材質としては銅、銅合金、鋼、鉄製の部材を使用する。導電帯のサイズは架空地線と同等のサイズとし、鉄より線の場合の断面積は架空地線亜鉛めっき鋼より線と同じサイズにする。
【0028】
一般的に高圧架空送電線用の架空地線の断面積は、亜鉛めっき鋼より線の場合には22mm2から100mm2、アルミ覆鋼より線の場合には38mm2から150mm2、鋼心アルミ合金より線の場合には、79mm2から160mm2が使用されている。架空送電線は、こう長が長く山間部を通過している線路が多く、また電力輸送の信頼性を必要とするため、想定される落雷電荷量および短絡時容量に耐える設計の電線サイズが必要とされている。また、架空送電鉄塔などの支持物は強度が強いため、太い電線サイズの架空地線を高張力で架線することが可能である。しかし、風力発電装置1に対しては、風車への回転負荷をできるだけ小さくすることが望ましいため、できる限り細い電線が望まれる。
【0029】
一般的に落雷エネルギー(電荷量)は、夏季雷で大部分が3〜90クーロン(以下、Cと記載)、代表値が25C、冬季雷では、20C以上と言われている(非特許文献2・・「財団法人電力中央研究所 電力中央研究所報告 183517 直流アークによる架空地線の素線溶断特性 p13 ,31」を参照)。
そこで、本発明の風力発電装置1に使用する架空地線8は、25Cの耐雷特性を有する電線とした。各種電線の通電電荷量Q=100Cにおける素線の溶断本数(非特許文献2を参照)からQ=25Cの断線本数を算出しその断面積を求めた。素線溶断試特性および電荷量25C時の最小推奨電線サイズを、表2に示す。
【表2】

計算例 (1)の場合 アルミ合金より線外径3.5mmの断面積は9.6mm2である。100Cで必要な断面積は9.6×4本=38.4mm2
25Cでは38.4mm2×25C÷100C=9.6mm2 の断面積が必要となる。
【0030】
硬銅より線の溶断特性とアルミ複合アルミ合金より線(ACAR)の溶断時間の比率は表3に示す通り、100:57となる(非特許文献3・・「財団法人電力中央研究所 69547 技術研究所依頼報告 架空送電線用アルミ合金より線の溶断特性 p20」を参照。)ことから、アルミ線の耐雷特性の(100÷57)倍の耐雷特性を有していると言える(表3)。
つまり、銅より線の電荷量25Cに対する必要電線サイズは9.6mm2×57÷100 = 5.5mm2となる。
【表3】

表2と表3の結果から、25Cの耐雷特性を有する各電線サイズについて表4に示す。
【表4】

【0031】
図1(A)に示すように、風力発電装置1のブレード4に取り付ける架空地線または導電帯8は,ブレード4との角度(遮蔽角θ1)が,望ましくは片側35度以下になるように配置する。すなわち、図1(A)に示すように、架空地線または導電帯8とブレード4の幅の中心線のなす遮蔽角θ1、および図1(B)に示すように、風車側面からみて遮蔽角θ1をなす角度の頂点とブレードの先端の突き出しアーム先端カドからなる直線とブレードの厚さ方向の中心線のなす角度(遮蔽角θ2)が、35度以下である。
さらには、風力発電装置1のブレード4に取り付ける架空地線または導電帯8は,ブレード4との角度(遮蔽角θ1)が、より望ましくは片側10度以下になるように配置する。すなわち、図7(A)に示すように、架空地線または導電帯8とブレード4の幅の中心線のなす遮蔽角θ1、および図7(B)に示すように、風車側面からみて遮蔽角θ1をなす角度の頂点とブレードの先端の突き出しアーム先端カドからなる直線とブレードの厚さ方向の中心線のなす角度(遮蔽角θ2)が、10度以下である。
【0032】
各ブレード4間に架空地線8を接続する場合には、引き留め方法によっては、架空地線または導電帯8に弛みが生じやすくなる。この弛みがブレード4の回転による遠心力により、ブレード4間の張力の不均一を生じさせ、ブレード4の劣化を進行させる可能性がある。このため、架空地線または導電帯8の取り付け金具には、弛みを調整することが可能な弛み防止治具、もしくは弛みを調整することが可能なクランプを使用する必要がある。
【0033】
夏季の雷は雷雲が高いため、高構造物に直線的に落雷する。したがって、本発明者は、架空地線または導電帯8の遮蔽角θ1、θ2を35度以下にすることで、その遮蔽角以内の構造物には落雷を防ぐことが可能であり、本発明の実施形態における風車における遮蔽角θ1、θ2も、35度以下にすることで、落雷防止効果があることを見出した。
【0034】
通常の雷であれば、ブレード4の先端に取り付けた架空地線または導電帯8で雷撃を捕捉できるが、冬季の雷は雷雲が低いため、落雷対象物の高さによらず、低構造物にも落雷する。この場合、架空地線または導電帯8の遮蔽角が大きいと架空地線または導電帯8で落雷を捕捉できずに、雷は回り込んで、ブレード4に落雷する。そこで、図7(B)に示すように、遮蔽角θ1、θ2を10度以下にすることにより、冬季雷においても架空地線または導電帯8により落雷を捕捉し、ブレード4への落雷防止が可能となることを見出した。
【0035】
遮蔽角とは、架空地線または導電帯8の下部に配置させた遮蔽対象物とのなす角であり、0度とは架空地線または導電帯8の直下に遮蔽対象物が位置していることを意味する。遮蔽角がプラスの場合は遮蔽対象物が架空地線または導電帯8の線下よりも外側に出た状態(例えば図1(B))であり、逆に遮蔽角がマイナスの場合は、遮蔽対象物が架空地線または導電帯8よりも内側に遮へいされた状態(例えば図5(B))である。
【0036】
次に、図2〜図4を参照して本発明の別の実施形態を説明する。
図2〜図4は、ブレード4の突き出しアーム7に対する架空地線もしくは導電帯8の異なる取り付け構造例を示す正面図である。
図2に示す実施形態では、架空地線または導電帯8は、クランプ21と弛み防止治具22により突き出しアーム7の先端部に固定されている。この弛み防止治具22はターンバックル金具である。避雷線9は接地金具26を用いて架空地線または導電帯8に電気的に接続されている。
【0037】
図3に示す実施形態では、架空地線または導電帯8は、クランプ23と弛み防止治具22により突き出しアーム7の先端部に固定されている。避雷線9は、クランプ23を用いて架空地線または導電帯8に電気的に接続され、かつ避雷線9は、接地金具24を用いて突き出しアーム7の先端部に固定されている。
図4の実施形態では、架空地線または導電帯8は、クランプ25により突き出しアーム7の先端部に固定されている。避雷線9はクランプ25を用いて架空地線または導電帯8に電気的に接続され、かつ接地金具24を用いて突き出しアーム7の先端部に固定されている。
【0038】
図5は、本発明の風力発電装置のさらに別の実施形態を示しており、図5(A)は、風力発電装置の正面図であり、図5(B)は、風力発電装置の側面図である。
図5の実施形態では、架空地線もしくは導電帯8が、ブレード4の前側と後側に耐雷装置10を2条配置した実施形態を示している。
この場合には、図1に示す実施形態よりも突き出しアーム7の長さを短くして遮蔽角θ2を小さくすることが可能となる。また、同じアーム長の場合には、図1に示す実施形態よりも遮蔽角θ2を小さくすることができるため、落雷防止をさらに向上させた構造となる。
【0039】
突き出しアーム7に片側2条の架空地線または導電帯8を設置させる。突き出しアーム7は、架空地線または導電帯8を2条取り付け可能な装置とする。ブレード4の先端部には、導電性の突き出しアーム7、または内部に導電線を収納した非導電性の突き出しアーム7を取り付ける。突き出しアーム7には、架空地線または導電材8を装着する構造とする。架空地線または導電帯8の弛みを調整するために治具を使用する場合もある。これにより、風力発電装置1は、ブレード4を遮蔽するようにブレード4の先端部に架空地線または導電帯8を装備することで、ブレード4への雷撃を防止することができ、避雷鉄塔よりも安価で避雷対策が可能である。
【0040】
図6は、風力発電装置1の近傍に、避雷鉄塔30を設置した落雷対策例を示す図である。
図6に示す風力発電装置1の落雷対策方式の場合には、ウィンドファームのように風力発電装置1が多数は設置される場所では、すべての風力発電装置1を落雷から遮蔽するためには、高構造の避雷鉄塔30が必要となる。また、夏季雷の場合では、雷撃の侵入方向に明確な方向性がないため、避雷鉄塔30による風力発電装置1の避雷保護は万全ではない。架空地線または導電帯8は長手方向に1本ものでなくとも、導電性材料を有する接続材料、例えば銅、銅合金、アルミニウム合金、鋼により電気的に接続されていても良い。これにより、風力発電装置1は、ブレードを遮蔽するようにブレードの先端部に架空地線または導電帯を装備することで、ブレードへの雷撃を防止することができ、避雷鉄塔よりも安価で避雷対策が可能である。
【0041】
図7は、本発明のさらに別の実施形態を示しており、図7(A)は、風力発電装置1の正面図であり、図7(B)は、風力発電装置1を示す側面図である。
図7に示す風力発電装置1では、架空地線または導電帯8がブレード4の両側の側面部に沿わせようにして配置されている。各ブレード4の先端部は突き出しアーム7を取り付けて、この突き出しアーム7を用いて架空地線または導電帯8を取り付けている。
【0042】
図7(A)に示す架空地線または導電帯8がブレード4の幅の中心線と成す遮蔽角θ1と、図7(B)に示す風車側面からみて遮蔽角θ1をなす角度の頂点とブレードの先端の突き出しアーム先端カドからなる直線とブレードの厚さ方向の中心線のなす遮蔽角θ2がそれぞれ10度以下となるように、突き出しアーム7の長さを設定して、この突き出しアーム7に対して架空地線または導電帯8が配置されている。
ブレード4の先端部の取り付け方式としては、すでに説明した図2〜図4の実施形態を採用できる。ブレード4の長手方向の中心近傍には架空地線または導電帯8を固定するためのクランプ44が配置されている。このクランプ44は、3つのブレード4の付け根の位置に装着されている。これにより、風力発電装置1は、ブレードを遮蔽するようにブレード先端に架空地線または導電帯を装備することで、ブレードへの雷撃を防止することができ、避雷鉄塔よりも安価に避雷対策が可能である。
【0043】
図8は、本発明のさらに別の実施形態を示しており、図8(A)は、風力発電装置1の正面図であり、図8(B)は、風力発電装置1を示す側面図である。
図8に示す風力発電装置1では、架空地線または導電帯8がブレード4の任意の箇所にクランプ45を取り付けて、各ブレード3間を接続することができる。ただし、この場合でも、図8(A)に示す架空地線または導電帯8がブレード4の幅と成す遮蔽角θ1と、図8(B)に示す風車の側面図において、風車側面からみて遮蔽角θ1をなす角度の頂点とブレードの先端の突き出しアーム7先端カドからなる直線とブレードの厚さ方向の中心線のなす遮蔽角θ2がそれぞれ10度以下となるように、クランプ45の取り付け用のブレード金具46の高さを調整して、この突き出しアーム7に対して架空地線または導電帯8が配置されている。
【0044】
図9は、図8に示すクランプ45とブレード金具46の取り付けの具体例を示している。
図9に示すように、図8(A)に示す架空地線または導電帯8がブレード4の幅と成す遮蔽角θ1と、図8(B)に示す架空地線または導電帯8がブレード4の厚さとなす遮蔽角θ2がそれぞれ10度以下となるように、ブレード4に対するブレード金具46の高さ位置を調整する。図9の例では、ブレード金具46はブレード4の中間位置に取り付けられている。図8と図9に示すクランプ45は、架空地線または導電帯8を懸垂して保持する懸垂型クランプであるが、クランプ45としては引留構造型のクランプであっても良い。
【0045】
ブレード4内もしくはブレード4の表面の避雷線9と、ブレード4の外周に架線させた架空地線または導電帯8とを電気的に接続させて、架空地線または導電帯8は、図1に示す本発明の実施形態と同様にして、ナセル3の内部の避雷線11と、タワー2の避雷線12を通じて、設置面Tに接地されている。これにより、風力発電装置1は、ブレードを遮蔽するようにブレード先端に架空地線または導電帯を装備することで、ブレードへの雷撃を防止することができ、避雷鉄塔よりも安価で避雷対策が可能である。
尚、架空地線または導電帯8は、ブレード4毎に切り離されていてもよいが、その場合には、各架空地線または導電帯8同士は、導電性材料である例えば、銅合金、アルミ合金、鋼材により電気的に接続されていればよい。
図10は、本発明の別の実施形態を示している。図1に示す実施形態では、ブレード4に取り付ける架空地線または導電帯8は,ブレード4との角度(遮蔽角θ1)が30度である。しかし、図10に示す実施形態では、ブレード4に取り付ける架空地線または導電帯8の一端部は,突き出しアーム7の先端部に取り付けられ、架空地線または導電帯8の他端部は,突き出しアーム7の後端部に取り付けられている。これにより、ブレード4に取り付ける架空地線または導電帯8は,ブレード4との角度(遮蔽角θ1)が,30度以上である。また、この場合の遮蔽角θ2は風車側面からみて遮蔽角θ1をなす角度の頂点と突き出しアーム先端カドとの直線とブレード厚さ方向の中心線とのなす角度である。
【0046】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。例えば、ブレード4の先端部間において、架空地線または導電帯8が、それぞれ3本以上接続されていても良い。ブレードの数は4つ以上であっても良い。架空地線または導電帯は、ブレードの外面全周または一部に配置することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 風力発電装置
2 タワー
3 ナセル
4 ブレード
5 基部
7 突き出しアーム
8 架空地線または導電帯
9,11,12 避雷線
10 耐雷装置
T 設置面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブレードの先端部により架空地線または導電帯が接続され、前記架空地線または導電帯は、接地されていることを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
前記架空地線または導電帯とブレードの幅の中心線のなす遮蔽角θ1、および風車側面からみて該遮蔽角θ1をなす角度の頂点とブレード先端の突き出しアーム先端カドからなる直線とブレードの厚さ方向の中心線のなす遮蔽角θ2が、35度以下であることを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記架空地線または導電帯とブレードの幅の中心線のなす遮蔽角θ1、および風車側面からみて前記遮蔽角θ1をなす角度の頂点とブレードの先端の突き出しアーム先端カドからなる直線とブレードの厚さ方向の中心線のなす遮蔽角θ2が、10度以下であることを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項4】
前記ブレードの先端部間において、前記架空地線または導電帯が、それぞれ2本以上接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の風力発電装置。
【請求項5】
前記架空地線が、亜鉛めっき鋼より線、アルミニウム覆鋼より線、鋼心アルミニウム合金より線、硬銅より線、または銅合金より線であることを特徴とする請求項1〜4に記載の風力発電装置。
【請求項6】
前記亜鉛めっき鋼より線、前記硬銅より線または前記銅合金より線の断面積が5.5mm2〜100mm2、前記アルミニウム覆鋼より線の断面積が6.5mm2〜100mm2、前記鋼心アルミ合金より線の断面積が25mm2〜160mm2であることを特徴とする請求項5に記載の風力発電装置。
【請求項7】
前記架空地線または導電帯が、前記ブレードの外面全周または一部に配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の風力発電装置。









【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−80374(P2011−80374A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231346(P2009−231346)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】