説明

風呂給湯装置

【課題】 ウォータハンマーによる衝撃の影響を緩和する風呂給湯装置を提供する。
【解決手段】 浴槽22へ湯張り設定量の湯水を流入する湯張り運転を行う際、湯張り流量センサ30で検出された湯水の流量から浴槽22に流入した湯水の量を湯張り量算出手段49が算出し、湯張り設定量に到達していると判断したら弁開度調節手段48によって風呂混合弁18の出湯管3側の開度を60%以下に調節してから湯張り弁29を閉止する制御にすることで、圧力損失が減少することからウォータハンマーによる衝撃の影響を緩和させ風呂混合弁18の故障を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浴槽に湯水を供給する風呂給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものにおいて、浴槽の湯張りを行う場合、台所リモコンや浴室リモコンで湯張りを指示することで、湯張り弁を開放した後に風呂混合弁を駆動させて出湯管を流動する高温水と給水管を流動する低温水とを所定の比率で混合し、風呂混合弁の開度を調節することで浴槽内に設定温度の湯水を注湯して、湯張り流量センサによって混合した湯水の流量を検出して、設定された湯張り量の湯水が注湯されたと判断したら、湯張り弁を閉止して湯張り運転を終了するものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−243095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来のものでは、設定した湯張り量の湯水が浴槽に注湯完了したと判断して湯張り弁を閉止する際にウォータハンマーが発生し、特に、減圧弁の設定圧力を上げて水圧を大きくすると増加した圧力に比例したより大きなウォータハンマーとなるため装置内の衝撃も大きくなり、他の機能部品と比べて湯張り弁の一次側の近くに設置された風呂混合弁はより強い衝撃の影響を受けるため故障の危険性が高かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、湯水を加熱する加熱手段と、該加熱手段で加熱された高温水が流動する出湯管と、市水を供給する給水管と、前記出湯管と前記給水管とが入口側に接続され湯水を混合する風呂混合弁と、該風呂混合弁の出口側に接続され混合した湯水を浴槽へ注湯する湯張り管と、前記湯張り管に設置され浴槽への湯水の供給を制御する湯張り弁と、浴槽に注湯された湯水の量を算出する湯張り量算出手段と、浴槽の湯張り開始を指示し湯張り量が設定可能な操作部と、該操作部での湯張り開始指示と設定された湯張り量と前記湯張り量算出手段での算出結果とから前記湯張り弁の開閉を制御する制御部とを備えた風呂給湯装置において、前記制御部は、前記風呂混合弁を目標開度にしてから前記湯張り弁を閉止するものである。
【0006】
また、請求項2では、前記制御部は、前記操作部で設定した湯張り量の湯水が浴槽に注湯完了したと判断したら、前記風呂混合弁の開度を目標開度にするものである。
【0007】
また、請求項3では、前記制御部は、前記操作部で設定した湯張り量の湯水が浴槽に注湯完了する所定量前だと判断したら、前記風呂混合弁の開度を目標開度にするものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の請求項1によれば、高温水と低温水とを混合した湯水を浴槽へ注湯する湯張り管に設置された湯張り弁の開閉を制御する制御部により、風呂混合弁を目標開度にしてから湯張り弁を閉止することで、ウォータハンマーによる衝撃を低減して風呂混合弁の故障を防止することができる。
【0009】
また、請求項2によれば、制御部が操作部で設定した湯張り量の湯水が浴槽に注湯完了したと判断したら風呂混合弁の開度を目標開度にすることで、浴槽内に設定された湯張り量を確実に供給してから湯張り弁を閉止することができる。
【0010】
また、請求項3によれば、制御部が操作部で設定した湯張り量の湯水が浴槽に注湯完了する所定量前だと判断したら風呂混合弁の開度を目標開度にすることで、浴槽内に設定された湯張り量を超える湯水を供給することなく湯張り弁を閉止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態を示す風呂給湯装置の概略構成図
【図2】同発明の湯張り運転時の制御構成に関するブロック図
【図3】同発明の湯張り運転を示すフローチャート
【図4】風呂混合弁の開度による湯張り管内の流量と圧力損失の関係を説明する図
【図5】配管内の流量による風呂混合弁の出湯管側開度と圧力損失の関係を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明を適用した一実施形態を図に基づいて説明する。
1は内部に貯湯タンク2を収納した貯湯タンクユニット、3は貯湯タンク2上部の高温水を出湯する出湯管、4は貯湯タンク2に市水を供給する入水管である。
【0013】
5は加熱手段としてのヒートポンプユニットであり、冷媒を高温高圧に圧縮する圧縮機6、凝縮器としての水冷媒熱交換器7、冷媒を減圧する膨張弁8、空気と熱交換することで冷媒を加熱する空気熱交換器9で構成されたヒートポンプ回路10と、貯湯タンク2下部と水冷媒熱交換器7を配管で接続するヒーポン往き管11と、水冷媒熱交換器7と貯湯タンク2上部を配管で接続するヒーポン戻り管12と、ヒーポン往き管11とヒーポン戻り管12から成る加熱循環回路13を介して湯水を搬送する循環ポンプ14と、それらの駆動を制御するヒーポン制御部15とを備えている。
【0014】
16は入水管4から分岐した給水管、17は出湯管3と給水管16を流動する湯水を所定の比率で混合して給湯設定温度に調節する給湯混合弁、18は出湯管3と給水管16を流動する湯水を所定の比率で混合して風呂設定温度に調節する風呂混合弁である。
【0015】
19は給湯管20内を流動する湯水を洗面所等にある給湯口から栓を開栓することで出湯可能な給湯栓である。
【0016】
21は浴槽22の湯水を加熱するステンレス製の蛇管よりなる風呂用熱交換器であり、貯湯タンク2内に備えられている。また、23は浴槽22内の湯水を風呂用熱交換器21に搬送する風呂戻り管、24は風呂用熱交換器21で加熱された湯水を浴槽22内に搬送する風呂往き管、25は風呂戻り管23に設置され湯水を浴槽22、風呂戻り管23、風呂用熱交換器21、風呂往き管24で順次循環させる風呂循環ポンプであり、浴槽22内の湯水が貯湯タンク2内の高温水により加熱されて保温や追い焚きが行われるものである。
なお、26は風呂戻り管23を流動する湯水の温度を検知する風呂温度センサである。
【0017】
27は風呂混合弁18で風呂設定温度に調節された湯水を風呂戻り管23に搬送する湯張り管であり、配管途中には風呂混合弁18で混合された湯水の温度を検知する湯張り温度センサ28、浴槽22への湯張り開始及び停止を行う電磁弁より成る湯張り弁29、浴槽22への湯張り量を検知する湯張り流量センサ30、浴槽22の湯水が逆流するのを防止する逆止弁31が設置されている。
【0018】
32は貯湯タンク2の上下方向に複数配置された貯湯温度センサで、この実施形態では貯湯温度センサ32a、32b、32c、32d、32eの5つが設置されており、この貯湯温度センサ32が検出する温度情報によって貯湯タンク2内の残熱量と、貯湯タンク2内の上下方向の温度分布が確認できる。
【0019】
33は使用者が給湯や風呂等の各種設定を行う操作部としてのリモコンであり、給湯設定温度を設定可能な状態とする給湯温度設定スイッチ34と風呂設定温度を設定可能な状態とする風呂温度設定スイッチ35とがそれぞれ設けられており、いずれか一方のスイッチを操作した後に給湯設定温度もしくは風呂設定温度が調節可能となる温度設定スイッチ36によって各種温度の設定が可能となり、浴槽22への湯張り運転を開始する湯張り開始スイッチ37と、浴槽22へ湯張りする湯水の量である湯張り設定量を設定する湯張り量設定スイッチ38とが設けられ、更に、ドットマトリクス型の蛍光表示管よりなる表示部39が設けられていることで使用者が設定状況を目視可能としている。
【0020】
40は入水管4途中に設置され弁を閉止することで貯湯タンク2への給水流路を遮断可能な電動式の閉止弁、41は貯湯タンク2上部に連通した逃し弁、42は入水管4途中に備えられ管内を流動する給水温度を検出する給水温度センサ、43は入水管4に備えられた減圧弁であり、該減圧弁43より上流には給水栓44が設けられており、45は貯湯タンク2底部に接続され湯水を外部に排水する排水弁である。
【0021】
46はマイコン等からなる制御部であり、リモコン33の風呂温度設定スイッチ35を操作して温度設定スイッチ36で設定した風呂設定温度と湯張り温度センサ28で検出した温度とを比較する温度比較手段47と、浴槽22の湯張り中に湯張り温度センサ28で検出された温度と給水温度センサ42で検出された給水温度から風呂混合弁18の弁開度を補正して設定温度と一致させる弁開度調節手段48と、湯張り流量センサ30での検出値から浴槽22に流入した湯水の量を算出する湯張り量算出手段49と、該湯張り量算出手段49での算出結果と湯張り量設定スイッチ38で設定した湯張り設定量とを比較する湯張り量比較手段50とが備えられており、また、ヒーポン制御部15を制御して貯湯タンク2の側面に設置された貯湯温度サーミスタ32の情報から加熱循環回路13による貯湯タンク2の沸き上げや沸き増し等の制御を行う。
【0022】
次に、風呂の湯張り運転について図3のフローチャートに基づいて説明する。
使用者がリモコン33の湯張り開始スイッチ37を操作して浴槽22への湯張り開始を指示すると、湯張り弁29を開放して湯張り管27内に湯水を流入させ(S101)、湯張り管27を流動する湯水の温度を湯張り温度センサ28で検出する(S102)。
【0023】
S102で検出された温度が温度設定スイッチ36で設定した風呂設定温度と一致するか温度比較手段47で判断し(S103)、風呂設定温度と一致すれば次のステップへ進み、一致しなければ弁開度調節手段48が湯張り温度センサ28と給水温度センサ42での検出温度から風呂混合弁18の弁開度を補正して高温水と低温水の混合比率を変化させ(S104)、再度S102で湯張り温度センサ28での検出温度を確認する。
【0024】
S103で湯張り温度センサ28での検出温度と風呂設定温度が一致したと判断したら、湯張り流量センサ30の検出値から浴槽22に流入した湯水の量を湯張り量算出手段49で算出し(S105)、湯張り量算出手段49での算出結果とリモコン33の湯張り量設定スイッチ38で設定した湯張り設定量とを湯張り量比較手段50で比較して(S106)、湯張り設定量に到達していると判断すれば次のステップに進み、湯張り設定量に到達していないと判断すれば再度102で湯張り温度センサ28での検出温度を確認する。
【0025】
S106で湯張り設定量に到達していると判断したら、弁開度調節手段48が風呂混合弁18の弁開度を変化させ(S107)、目標開度である出湯管3側の開度を60%以下になったか制御部46が判断する(S108)。風呂混合弁18の出湯管3側の開度が60%以下になっていれば湯張り弁29を閉止して風呂の湯張り運転を終了し(S109)、開度が60%以下になっていなければ再度S107で弁開度を変更して補正する。
【0026】
ここで、配管内の圧力損失と風呂混合弁18の関係について説明する。図4は配管内を流動する湯水の流量を横軸、配管内の圧力損失を縦軸に取り、風呂混合弁18の出湯管3側を全開にした場合、及び給水管16側を全開にした場合での各流量における圧力損失の試験結果を表している。このグラフから、配管内を流動する湯水の流量が増加するのに従って圧力損失も増加しているが、出湯管3側を全開にした場合と比較して給水管16側を全開にした場合、約5L/min前後から徐々に差が大きくなり、20L/minという大流量では約30kPaの差が開いていることが分かる。すなわち、風呂混合弁18を給水管16側、すなわち低温水側に向けることで圧力損失が低減する。
【0027】
また、図5は風呂混合弁18の出湯管3側の開度を横軸、配管内の圧力損失を縦軸に取り、配管内を流動する湯水の流量が15L/minの場合、及び20L/minの場合での風呂混合弁18の各弁開度における圧力損失の試験結果を表している。このグラフから、配管内を流動する湯水の流量に関わらず風呂混合弁18の開度が出湯管3側で60%以下であればほぼ同一の圧力損失値を保持しているが、60%を超えると徐々に圧力損失が増加し、出湯管3側を100%開いた状態では流量に関わらず開度が60%以下の状態と比較して10kPa以上の差がある。更に、流量を20L/minにした方が15L/minと比べて開度が60%以下の状態との差が大きくなっていることから、配管内を流動する湯水の流量に比例して風呂混合弁18の開度に応じた圧力損失の差は大きくなる。
【0028】
図4、5のグラフから、風呂混合弁18の出湯管3側の開度を60%以下にしてから湯張り弁29を閉止することで、圧力損失が低減されウォータハンマーによる衝撃の影響を緩和することができるので、風呂混合弁18の故障を防止することができる。
【0029】
なお、本発明は上記内容に限定されるものではなく、例えば、湯張り設定量に到達する所定量前から風呂混合弁18の弁開度の変更を開始して湯張り設定量に到達したら湯張り弁29を閉止する制御にしてもよい。ここでの所定量とは、風呂混合弁18の弁開度の変更を開始してから目標開度になるまでの間に風呂混合弁18の出口側から流出する湯水の量を予め試験等により求められた量であり、浴槽22に風呂設定温度から外れた湯水が流入する量を最小限に抑え、湯張り設定量を超える湯水が浴槽22に流入するのを防止できる。
【0030】
また、風呂戻り管24に浴槽22の水位を検出する水位センサを設置し、浴槽22へ湯張りする設定水位レベルを湯張り量設定スイッチ38で設定可能とし、浴槽22の水位レベルを湯張り量算出手段49で算出可能として、湯張り量算出手段49での算出結果と湯張り量設定スイッチ38で設定した設定水位とを湯張り量比較手段50で比較可能とすることで、水位センサの検出値から浴槽22の水位レベルを湯張り量算出手段49で算出し、湯張り量算出手段49での算出結果と湯張り量設定スイッチ38で設定した設定水位レベルとを湯張り量比較手段50で比較して、浴槽22の水位が設定水位レベルに到達したと判断したら、風呂混合弁18を目標開度にして湯張り弁29を閉止する制御にしてもよい。
【0031】
また、この制御は湯張り運転に限らず、浴槽22内に所定量の湯水を流入して水位を上昇させる足し湯運転や、60℃程度の高温水を所定量だけ浴槽22内に流入する高温差し湯運転時でも可能であり、運転終了の所定時間前に風呂混合弁18の開度を目標開度にしてから湯張り弁29を閉止することで、前記実施例と同様に圧力損失を低減させることができるので、ウォータハンマーによる衝撃を緩和させ風呂混合弁18の故障を防止することができる。
【0032】
また、本発明はヒートポンプユニット5を加熱手段とする貯湯式給湯機を例示したが、これに限らず、貯湯タンク2内に電熱ヒータを備えた電気温水器や、セミ貯湯式の石油給湯機、ガスバーナまたは石油バーナを加熱源とした瞬間式給湯機等でもよい。
【0033】
以上のように、湯張り弁29を閉止する前に風呂混合弁18の出湯管3側の開度を60%以下にすることで、圧力損失が減少することからウォータハンマーの衝撃による影響を緩和させ、風呂混合弁18の故障を効果的に防止することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 貯湯タンクユニット
2 貯湯タンク
3 出湯管
4 入水管
5 ヒートポンプユニット
16 給水管
18 風呂混合弁
22 浴槽
27 湯張り管
29 湯張り弁
33 リモコン
46 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を加熱する加熱手段と、該加熱手段で加熱された高温水が流動する出湯管と、市水を供給する給水管と、前記出湯管と前記給水管とが入口側に接続され湯水を混合する風呂混合弁と、該風呂混合弁の出口側に接続され混合した湯水を浴槽へ注湯する湯張り管と、前記湯張り管に設置され浴槽への湯水の供給を制御する湯張り弁と、浴槽に注湯された湯水の量を算出する湯張り量算出手段と、浴槽の湯張り開始を指示し湯張り量が設定可能な操作部と、該操作部での湯張り開始指示と設定された湯張り量と前記湯張り量算出手段での算出結果とから前記湯張り弁の開閉を制御する制御部とを備えた風呂給湯装置において、前記制御部は、前記風呂混合弁を目標開度にしてから前記湯張り弁を閉止することを特徴とする風呂給湯装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記操作部で設定した湯張り量の湯水が浴槽に注湯完了したと判断したら、前記風呂混合弁の開度を目標開度にすることを特徴とする請求項1記載の風呂給湯装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記操作部で設定した湯張り量の湯水が浴槽に注湯完了する所定量前だと判断したら、前記風呂混合弁の開度を目標開度にすることを特徴とする請求項1記載の風呂給湯装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−172942(P2012−172942A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37766(P2011−37766)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】