説明

飛び出し防止装置

【課題】家具等の引き出しの飛び出しを防止することができ、かつ簡単に解除及びリセットすることができる飛び出し防止装置を提供する。
【解決手段】枠体と引き出しとの間に配置されて引き出しの飛び出しを防止するための飛び出し防止装置は、枠体と引き出しとのいずれか一方に取付けられ、一端部に第1掛止部を有するとともに他端部に第1掛止部をロック可能な位置に突出させる作用部を有してなるシーソー部材を備える第1掛止手段と、枠体と引き出しとのいずれか他方に取付けられ、引き出しが引き出す方向に移動する際にのみ第1掛止部を掛止可能な第2掛止部を有する第2掛止手段とを備えており、シーソー部材は、第1掛止部がロック可能な突出位置に突出するように付勢されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具等の引き出しの飛び出しを防止することができる飛び出し防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家具の引き出しにおいて、地震発生時に引き出しが飛び出すのを防止する方法として、耐震ラッチという飛び出し防止構造を設けることが一般的であった。
【0003】
このような飛び出し防止構造は、引き出しが飛び出すのを防止する引っ掛け部と、地震の揺れを感知することで係止部が突出する感知センサとからなる(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載した引き出し飛び出し防止構造は、引き出しの側壁上面でかつタンス本体の前方付近に陥凹部を設けており、引き出しの陥凹部より前方の引き出しの上縁と対向するタンスの天井壁にストッパを設けており、傾いた状態でストッパと係止する回動自在なシーソー部材を陥凹部内に設けており、該シーソー部材がストッパと係止しない角度にシーソー部材を常時付勢し、シーソー部材をストッパと係止可能位置まで回動させる重りを受ける受部をシーソー部材に設けており、シーソー部材を傾動させる重りを引き出しの陥凹部内に引き出しの傾きでシーソー部材の受部内へ移動可能に収容したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−224765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の引き出し飛び出し防止構造は、地震で揺れたタンスから引き出しの飛び出しを防止することができる。しかし、引き出しが原因となる事故は地震によるものだけではなく、普段の生活において人為的な原因による引き出しの事故、例えば小さい子供が勝手に引き出しを開けて、引き出しが飛び出し、ケガをする等の事故が起こる可能性もあるので、上述したような引き出し飛び出し防止構造では、対応できないという問題点があった。
【0007】
また、特許文献1に記載の引き出し飛び出し防止構造は、ロック動作した後の解除及びリセット作業が煩雑であった。
【0008】
また、特許文献1に記載の引き出し飛び出し防止構造は、側壁がある程度の厚みを有する木製の引き出しに応用できるが、鉄製の側壁の引き出しには応用できないという欠点があった。
【0009】
従って、本発明は従来技術の上述した問題点を解消するものであり、本発明の目的は、地震に起因するものはもちろんのこと人為的な原因による家具等の引き出しの飛び出しを防止することができる飛び出し防止装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、簡単に解除及びリセットすることができる飛び出し防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、枠体と引き出しとの間に配置されて引き出しの飛び出しを防止するための飛び出し防止装置は、枠体と引き出しとのいずれか一方に取付けられ、一端部に第1掛止部を有するとともに他端部に第1掛止部をロック可能な位置に突出させる作用部を有してなるシーソー部材を備える第1掛止手段と、枠体と引き出しとのいずれか他方に取付けられ、引き出しが引き出し方向に移動する際にのみ第1掛止部を掛止可能な第2掛止部を有する第2掛止手段とを備えており、シーソー部材は、第1掛止部がロック可能な突出位置に突出するように付勢されている。
【0012】
枠体と引き出しとのいずれか一方に取付けたシーソー部材は、第1掛止部がロック可能な突出位置に突出するように付勢されているため、ロック解除がなされない限り、引き出しが引き出し方向に移動した際は、第1掛止部が枠体と引き出しとのいずれか他方に設けられた第2掛止手段の第2掛止部と掛止してロックすることが可能となる。
【0013】
引き出しの側面において又は枠体の前側から手でシーソー部材の作用部を回動させ、ロックを解除するための操作部が設けられることが好ましい。このように構成することによって、ロックを簡単に解除することが可能となる。
【0014】
第1掛止手段は、シーソー部材の第1掛止部を強制的に非突出位置に規制するストッパを有し、シーソー部材の第1掛止部が非突出位置にある場合は、第1掛止部が第2掛止部に掛止しないように構成されていることが好ましい。このように構成することによって、引き出しが引き出し方向に移動する際に常にロックしない状態に設定することができる。
【0015】
シーソー部材は、作用部の重心に作用する自重により第1掛止部が突出位置に突出するとなるように構成されていることが好ましい。このように、自重で第1掛止部がロック可能な突出位置に突出するように付勢することで、部品の数を少なく、構成が簡単になる。
【0016】
第1掛止手段は、シーソー部材の第1掛止部が突出位置に突出するように付勢する弾性の付勢部材を備えていることが好ましい。このように構成することによって、付勢部材の特性に応じて付勢力を任意に設定することができる。
【0017】
第2掛止手段は、第1掛止部に掛止する第2掛止部を一端部に有する回動自在のシーソー式掛止部材と、シーソー式掛止部材を回動させ、第2掛止部を第1の突出位置及びこの第1の突出位置より突出した第2の突出位置に選択的に突出させる作動部材とを備え、この作動部材は、地震等による枠体の揺れが生じた場合に転動して、第2掛止部を第2の突出位置に突出させるように構成されていることが好ましい。このように構成することによって、地震等による枠体の揺れが生じた場合は、ストッパの操作により第1の掛止部がロックしない状態に強制的に規制されていたとしても、引き出しの飛び出しを防止することが可能であり、かつ簡単に解除及びリセットすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、引き出しが引き出し方向に移動する際にのみ、第1掛止部が第2掛止部と掛止して引き出しをロックすることで、普段の生活において人為的な引き出し操作、例えば小さい子供が勝手に引き出しを開けて、引き出しが飛び出し、ケガをすることを防止できる。また、鉄製の側壁の引き出しにも取付けることができる。
【0019】
さらに、引き出しの側面において又は枠体の前側から手でシーソー部材の作用部を回動させ、ロックを解除するための操作部が設けられることで、ロックを簡単に解除することができる。
【0020】
さらにまた、第1掛止手段は、シーソー部材の第1掛止部を強制的に非突出位置に規制するストッパを有し、シーソー部材の第1掛止部が非突出位置にある場合は、第1掛止部が第2掛止部に掛止しないように構成されていることで、引き出しが引き出す方向に移動する際に、ロックする状態とロックしない状態にすることができる。
【0021】
また、作用部の重心に作用する自重により第1掛止部が突出位置に突出するように付勢することで、部品の数を少なく、構成が簡単になる。また、弾性の付勢部材を設けることで、付勢部材の特性に応じて付勢力を任意に設定することができる。
【0022】
さらに、地震等による枠体の揺れが生じた場合は、ストッパの操作により第1の掛止部がロックしない状態に強制的に規制されていたとしても、引き出しの飛び出しを防止することが可能であり、かつ簡単に解除及びリセットすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態における飛び出し防止装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1の実施形態における飛び出し防止装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図3】第1掛止機構のシーソー部材及び第2掛止機構のシーソー式掛止部材の回動位置を示す平面図である。
【図4】第1掛止機構のシーソー部材が可動状態にある場合において、引き出しを閉める際の飛び出し防止装置の動作状態を概略的に示す説明図である。
【図5】第1掛止機構のシーソー部材が可動状態にある場合において、引き出しが引き出す方向に移動する際の飛び出し防止装置の動作状態を概略的に示す説明図である。
【図6】第1掛止機構のシーソー部材が固定状態にある場合において、引き出しが引き出す方向に移動する際の飛び出し防止装置の状態を概略的に示す説明図である。
【図7】第1掛止機構のシーソー部材が固定状態にある場合において、揺れを感知し引き出しが引き出す方向に移動する際の飛び出し防止装置の動作状態を概略的に示す説明図である。
【図8】第1掛止機構のシーソー部材が固定状態にある場合において、ロック状態からロック解除状態にする際に飛び出し防止装置の動作状態を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る飛び出し防止装置の実施形態を、図を参照して説明する。
【0025】
図1及び図2は本発明の一実施形態における飛び出し防止装置100の構成を示している。ただし、図1は、引き出し2が引き出し方向に移動する際に飛び出し防止装置100がロックされている状態を示している。
【0026】
図1及び図2に示すように、本実施形態における飛び出し防止装置100は、引き出し2の側板2aに取付けられている第1掛止機構10(本発明の第1掛止手段に対応する)と、キャビネットの枠体1の側板1aに取付けられている第2掛止機構20(本発明の第2掛止手段に対応する)と備えている。この飛び出し防止装置100は、枠体1の側板1aと引き出し2の側板2aとの間に配置されている。枠体1の側板1aと引き出し2の側板2aとの間に、スライドレール2bが設けており、そのため、隙間があり、飛び出し防止装置100を装着可能な空間が存在する。本実施形態において、第1掛止機構10は、引き出し2の側板2aの外面に取付けられており、第2掛止機構20は、枠体1の側板1aの内面に取付けられている。また、第2掛止機構20は、地震等による枠体1の揺れを感知する感知センサとしても機能する。
【0027】
第1掛止機構10は、シーソー部材11と、シーソー部材11と一体に形成された軸12と、ストッパ13と、ケース本体14と、カバー15とを備えている。
【0028】
シーソー部材11は、一端部に第1掛止部11aを有するとともに他端部に第1掛止部11aをロック可能な位置に突出させる作用部11bを有してなる。このシーソー部材11の中央部から先端側(第1掛止部11a側)寄りの位置に下方へ突出する突部11dが形成され、この突部11dの両側面にそれぞれ突出する短円柱状の軸12が設けられ、軸12は、ケース本体14とカバー15の軸穴14c及び15aに係合している。シーソー部材11は、これにより、軸12を中心に回動自由に装着されている。また、第1掛止部11aはロック可能な突出位置方向に付勢されている。本実施形態では、例えば、作用部11bの重心に作用する作用部11bの自重Gに基づく回転モーメントによって、第1掛止部11aが突出位置に突出するように付勢されている。また、第1掛止部11aは、引き出し2が引き出し方向に移動する際に第2掛止機構20側と掛止するための掛止面11a’と、引き出し2が逆方向に移動する際に第2掛止機構20側と掛止しないように働く傾斜面11a”とを有している。シーソー部材11の第1掛止部11aと軸12との間には側面から見て凹形状の首部11eが形成されており、この首部11eは、平坦な上面11fを有している。突部11dにおける軸12近傍の首部11e側の面11d’は、シーソー部材11の回動に影響しないように、首部11eの上面11fとほぼ垂直に形成されている。
【0029】
また、シーソー部材11には、第1掛止部11aのロックを解除するための操作部11cが設けられている。本実施形態において、この操作部11cは、作用部11bの一方の端部からなる。この操作部11cは、図1及び図3に示すように、引き出し2が飛び出して第1掛止部11aが第2掛止機構20にロックされている状態では、枠体1から外部へ飛び出しているため手で操作可能である。この操作部11cを上方へ持ち上げ、シーソー部材11を軸12を中心として回動させることで、ロックが解除される。
【0030】
ストッパ13は、両側に端面が凹凸に形成されたつまみ13aを有し、このつまみ13aをカバー15の長穴15bに係合させてこの長孔15bに沿って摺動させることにより、シーソー部材11の第1掛止部11aを強制的に非突出位置に規制するように構成されている。即ち、第1掛止部11aの作用部11bとこのスライド式のストッパ13との働きにより、シーソー部材11を、第1掛止部11aが突出した位置にある可動状態と第1掛止部11aが突出せず水平位置に固定された固定状態とに切り替えることができる。ストッパ13が作動せず第1掛止部11aが突出位置にある場合は、引き出し2が引き出し方向に移動する際に、この第1掛止部11aは第2掛止機構20の第2掛止部21aに掛止することが可能となる。一方、ストッパ13が作動して第1掛止部11aが非突出位置にある場合は、引き出し2が引き出し方向に移動する際に、この第1掛止部11aは第2掛止機構20の第2掛止部21aに掛止しない。なお、本実施形態において、このストッパ13は、引き出し2の側面が枠体1の外部に現れた際にのみ操作することができる。
【0031】
ケース本体14は、カバー15と協働して上述したシーソー部材11とストッパ13とを内部に収納している。このケース本体14は、シーソー部材11が当接する段差部14a及び14a’と、ストッパ13がスライドするスライド空間14bとを備えている。段差部14aはシーソー部材11の時計回り方向の回転を制限するものであり、段差部14a’ はシーソー部材11の反時計回り方向の回転を制限するものである。ケース本体14の側壁には、シーソー部材11の軸12が係合する軸穴14cが設けられている。さらに、ケース本体14の側壁には、ストッパ13のつまみ13aを露出させると共に摺動させるための長穴14fが設けられている。また、取付けネジ用の貫通孔14dが設けられている。なお、貫通孔14dの数は必要に応じて任意に決められる。スライド空間14bの回りの縁部には切り込み段差14eが設けられている。
【0032】
カバー15は、ケース本体14の片面を覆うものであり、シーソー部材11の軸12が係合する軸穴15aと、ストッパ13のつまみ13aを露出させると共に摺動させるための長穴15bとが設けられている。また、取付けネジ用の貫通孔14dに対応する位置に取付けネジ用の貫通孔15cが設けられている。また、カバー15の内側には、ケース本体14の切り込み段差14eに嵌入する突起(図示せず)が設けられている。なお、第1掛止機構10は、ネジW1によって引き出し2の側板2aの外面上に固着されている。
【0033】
第2掛止機構20は、下方の一端部に第1掛止部11aと掛止するための第2掛止部21aが形成された回動自在のシーソー式掛止部材21と、このシーソー式掛止部材21と一体に形成された軸22と、揺れが生じた際にこのシーソー式掛止部材21を、軸22を中心にして回動させるためのころがり部材23と、ケース本体24と、カバー25とを備えている。
【0034】
シーソー式掛止部材21は、下方の一端部に第1掛止部11aに掛止する第2掛止部21aが形成され、上方の他端部にころがり部材23を常時は支持受けするための円弧面を有する部材受け部21bが形成されている。シーソー式掛止部材21は、さらに、第2掛止部21aと、ころがり部材受け部21bとの間で、このころがり部材受け部21bの近傍位置に、シーソー式掛止部材21の両側面にそれぞれ突出する短円柱状の軸22が設けられている。この軸22は、ケース本体24とカバー25の軸穴24c及び25aに係合している。
【0035】
シーソー式掛止部材21の第2掛止部21aは、第1掛止機構10の第1掛止部11aと掛止しない非掛止面21a’と、第1掛止機構10の第1掛止部11aと掛止するための掛止面21a”とを有している。このシーソー式掛止部材21の第2掛止部21a側は、軸22を中心とする扇型形状を有しており、この扇型形状の外周部の下端側には第2掛止部21aが、上端側にはストッパ部21cが設けられている。ストッパ部21cは下方に面する係止面21c’を有しており、この係止面21c’は、ケース本体24の後述する開口24aの一方の端縁を構成する凸部24eの係止面24e’に当接して第2掛止部21aの突出量を決めるように構成されている(図3参照)。
【0036】
シーソー式掛止部材21において、軸22を基準点とする場合、第2掛止部21a側の重量N1と、部材受け部21b側の重量N2及びころがり部材23の重量N3との関係は、N1≧N2、N1<N2+N3とされている。
【0037】
ころがり部材23は、所定重量N3を有する円柱状の重りである。このころがり部材23は、常時は、シーソー式掛止部材21の部材受け部21b上に支持受けされており、これにより、第2掛止部21aは第1掛止部11aの突出時においてのみロック可能な第1の突出位置に突出する。揺れがあった際は、ころがり部材23は、シーソー式掛止部材21の上面上を転動する。即ち、ころがり部材23は、地震等によって引き出し2に揺れが生じた際に、常時の部材受け部21bの位置からシーソー式掛止部材21の上面上を扇型形状の外周方向へ移動し、その自重によってシーソー式掛止部材21を回動させて、第2掛止部21aを、第1掛止部11aに必ずロック可能な第2の突出位置に突出させる。
【0038】
ケース本体24は、シーソー式掛止部材21の第2掛止部21aが突出するために下部に設けられた開口24aと、シーソー式掛止部材21ところがり部材23とを収納する収納空間24bとを備えている。開口24aの一方の端縁には係止面24e’を下方に有する凸部24eが形成されており、他方の端縁には円弧面a、これに続く垂直面b、これに続く水平面c及びこれに続く傾斜面dを有する凸部24gが形成されている。円弧面aはシーソー式掛止部材21の部材受け部21bと協働してころがり部材23を支持受けしている。垂直面bは、シーソー式掛止部材21の部材受け部21bの端面とほぼ同じ高さを有する。水平面cは、シーソー式掛止部材21の時計回り方向の回転を制限する面であり、このシーソー式掛止部材21の部材受け部21bの下面とほぼ同じ長さを有する。傾斜面dは、シーソー式掛止部材21の反時計回り方向の回転時の逃げ部である。また、ケース本体24の側壁には、軸22が係合する軸穴24cが設けられている。さらに、ケース本体24には取付けネジ用の貫通孔24dが設けられている。なお、貫通孔24dの数は必要に応じて任意に決められる。収納空間24bの回りの縁部の一部には、切り込み段差24fが設けられている。
【0039】
カバー25は、ケース本体24の片面を覆うものであり、シーソー式掛止部材21の軸22が係合する軸穴25aが設けられている。また、取付けネジ用の貫通孔24dに対応する位置に取付けネジ用の貫通孔25bが設けられている。また、カバー25の内側には、ケース本体24の切り込み段差24fに嵌入する突起(図示せず)が設けられている。なお、第2掛止機構20は、ネジW2によって枠体1の側板1aの内面上に固着されている。
【0040】
図3は第1掛止機構10のシーソー部材11と第2掛止機構20のシーソー式掛止部材21とのそれぞれ2つの回動位置(即ち、回動可能な範囲)を示している。ただし、図3においては、第1掛止機構10のカバー15及び第2掛止機構20のカバー25を外した状態で示されている。
【0041】
図3に示すように、第1掛止機構10のシーソー部材11は、通常は自重によってこの位置に付勢されている突出位置(実線)から、非突出位置(2点破線)まで、軸12の回りを回動可能である。一方、第2掛止機構20のシーソー式掛止部材21は、通常の位置である第1の突出位置(実線)から第2の突出位置(2点破線)まで、軸22の回りを回動可能である。
【0042】
シーソー式掛止部材21が第1の突出位置(実線)にある場合に、シーソー部材11の第1掛止部11aが突出位置(実線)にあると、即ち、可動状態にされると、第1掛止部11aと第2掛止部21aが掛止可能になる。掛止する際は、第1掛止部11aの掛止面11a’と第2掛止部21aの掛止面21a”とが互いに当接して掛止する。これにより、人為的に引き出しを引き出す操作による引き出しの飛び出しを防止することができる。一方、地震等により枠体1に揺れが生じた際は、シーソー式掛止部材21の第2掛止部21aが第2の突出位置(2点破線)に突出するので、シーソー部材11がストッパ13によりロックされて第1掛止部11aが非突出位置(2点破線)に規制されていたとしても、即ち固定状態にされていたとしても、第1掛止部11aと第2掛止部21aとは掛止可能になる。地震等の揺れによる引き出しの飛び出しを防止することができる。
【0043】
なお、シーソー部材11が非突出位置(2点破線)に規制されている場合、即ちストッパ13によりロックされて固定状態にされている場合は、地震等による枠体1の揺れがない限り、引き出し2は、ロックされることなく、任意に開閉可能である。
【0044】
次に、図4〜図8を参照して、本実施形態の飛び出し防止装置100の動作状態を具体的に説明する。ただし、これらの図は、概略図であり、第1掛止機構10のカバー15及び第2掛止機構20のカバー25を外した状態で示されている。
【0045】
図4は第1掛止機構10のシーソー部材11が可動状態にある場合の、引き出し2を閉める際の飛び出し防止装置100の動作を示している。即ち、図4においては、ストッパ13が作動しておらず、第1掛止部11aを強制的に非突出位置に規制していないのでシーソー部材11が可動状態にあり第1掛止部11aは自重によって付勢されて突出位置にある。図4(a)は引き出し2が全開状態から閉じる方向へ移動する際の飛び出し防止装置100の状態を示しており、図4(b)は引き出し2が閉められる際の飛び出し防止装置100の状態を示しており、図4(c)は引き出し2が全閉状態にある際の飛び出し防止装置100の状態を示している。
【0046】
図4(a)に示すように、シーソー部材11の自重による付勢作用により、第1掛止部11aは突出位置に突出している。この状態で、引き出し2を全開位置から閉じる方向(矢印方向)へ移動させると、第1掛止部11aの端面及び傾斜面11a”が第2掛止部21aの外周面である非掛止面21a’に当接し、傾斜面11a”が非掛止面21a’上を摺動しながら進む。これにより、第1掛止部11aが下方へ押されるので、シーソー部材11が時計回り方向に回動し、最終的に第1掛止部11aが第2掛止部21aの下を通過することとなる。
【0047】
図4(b)に示すように、第1掛止部11aが第2掛止部21aの下を通過し終えると、シーソー部材11が反時計回り方向に回動し、第1掛止部11aは第2掛止部21aと掛止する位置に進む。この場合、第1掛止部11aの掛止面11a’と、第2掛止部21aの掛止面21a”とが互いに当接する。
【0048】
引き出し2が全閉位置となると、図4(c)に示すように、シーソー部材11の上面が第2掛止部21aに押され、このシーソー部材11は水平状態となる。なお、引き出し2が全閉位置となった際に、シーソー部材11は自重による付勢作用で第1掛止部11aが突出位置に突出するようにしてもよい。
【0049】
図5は第1掛止機構10のシーソー部材11が可動状態にある場合の、引き出し2を開ける際の飛び出し防止装置100の動作状態を示している。即ち、図5においては、ストッパ13が作動しておらず、第1掛止部11aを強制的に非突出位置に規制していないのでシーソー部材11が可動状態にあり第1掛止部11aは自重によって付勢されて突出位置にある。図5(a)は引き出し2がロックされている状態を示しており、図5(b)は手動で引き出し2のロックを解除する際の飛び出し防止装置100の状態を示しており、図5(c)は引き出し2が全開位置にある際の飛び出し防止装置100の状態を示している。
【0050】
このようにストッパ13が作動しておらず、シーソー部材11が可動状態にある場合は、シーソー部材11が自重による付勢作用で回動した状態となっており、人為的な操作、例えば小さい子供が勝手に引き出し2を開けようとすると、図5(a)に示すように、引き出し2が引き出し方向に移動する際に、第1掛止部11aが第2掛止部21aに当接してロックされる。これにより、引き出し2の飛び出しが阻止される。
【0051】
この状態で、引き出し2のロックを解除するには、図5(b)に示すように、引き出し2の側面に又は枠体の前側から手で操作部11cを上方(即ち、矢印Aの方向)へ持ち上げ、シーソー部材11の作用部11bを回動させることで、第1掛止部11aが非突出位置となり、ロックが解除される。
【0052】
この状態で、引き出し2を引き出し方向(矢印方向)にさらに移動させると、図5(c)に示すように、第1掛止部11aが第2掛止部21aの下を通過し、引き出し2が全開状態になる。なお、第1掛止部11aが第2掛止部21aの下を通過した後、操作部11cから手を放すと、シーソー部材11は自重によって回動し、第1掛止部11aは元の突出位置に戻る。また、引き出し2が全開状態にある場合は、ストッパ13のつまみ13aが枠体1の外部に露出するようになっており、引き出し2の側面からつまみ13aを操作し、ストッパ13を作動した状態(第1掛止部11aを強制的に非突出位置に規制する状態、シーソー部材11は固定状態)と、作動していない状態(第1掛止部11aを強制的に非突出位置に規制していない状態、シーソー部材11は可動状態)とにスライドさせることができる。
【0053】
図6は第1掛止機構10のシーソー部材11が固定状態にある場合の、引き出しを引き出し方向に移動する際の飛び出し防止装置100の状態を示している。即ち、図6においては、ストッパ13が作動しており、第1掛止部11aを強制的に非突出位置に規制している状態にある。図6(a)は引き出し2を閉めた状態を示しており、図6(b)は引き出し2を開く際の飛び出し防止装置100の状態を示している。
【0054】
図6(a)に示すように、ストッパ13を左側に摺動させて作動した状態とした場合に、シーソー部材11は作用部11bの下面がストッパ13の上面に当接するので、水平位置に固定された状態になる。この場合は、シーソー部材11の第1掛止部11aとシーソー式掛止部材21の第2掛止部21aとが互いに係合せず、掛止しない状態である。
【0055】
図6(b)に示すように、引き出し2が開かれた場合も、シーソー部材11が水平位置に固定された状態にあるので、シーソー部材11の第1掛止部11aとシーソー式掛止部材21の第2掛止部21aとが互いに係合せず、掛止しない状態にある。そのため、引き出し2を引き出し方向(矢印方向)に移動しても、ロックされず、通常の(飛び出し防止装置100がない)引き出しと同様な引き出し動作が行われる。
【0056】
図7は第1掛止機構10のシーソー部材11が固定状態にある場合の、地震等の揺れによって引き出し2が引き出し方向に移動する際の飛び出し防止装置100の動作状態を示している。即ち、図7においては、ストッパ13が作動しており、第1掛止部11aを強制的に非突出位置に規制している状態にある。図7(a)は引き出し2が閉められている際に地震等の揺れが生じた場合の飛び出し防止装置100の状態を示しており、図7(b)はこの場合に引き出し2がロックされた飛び出し防止装置100の状態を示している。
【0057】
図7(a)に示すように、ストッパ13を左側に摺動させて作動した状態とした場合に、シーソー部材11は作用部11bの下面がストッパ13の上面に当接するので、水平位置に固定された状態になる。この状態で地震等による枠体1の揺れが生じると、ころがり部材23は、常時支持受けされている部材受け部21bからシーソー式掛止部材21の上面上を転動し、ストッパ部21c方向に移動する。
【0058】
これにより、ころがり部材23の自重によってシーソー式掛止部材21が回動し、第2掛止部21aは、第1掛止部11aに必ずロック可能な第2の突出位置に突出する。その結果、図7(b)に示すように、地震等による枠体1の揺れによって引き出し2が飛び出そうとしても、第2掛止部21aの掛止面21a”と第1掛止部11aの掛止面11a’とが互いに当接して掛止し、シーソー部材11の第1掛止部11aはロック状態となり、引き出し2の飛び出しを阻止することができる。
【0059】
即ち、ストッパ13を作動することによってシーソー部材11が水平位置に固定された状態においても、地震等による枠体1の揺れがあった場合は、飛び出し防止装置100の耐震ラッチの機能によりロックが行われて引き出し2の飛び出しを防止することができる。
【0060】
図8は第1掛止機構10のシーソー部材11が固定状態にある場合の、耐震ラッチ機能によるロック状態からロック解除状態となる際の飛び出し防止装置100の動作状態を示している。図8(a)は地震等による枠体1の揺れがあった際に、引き出し2がロックされた場合の飛び出し防止装置100の状態を示しており、図8(b)は引き出し2を閉める方向に移動している場合の飛び出し防止装置100の状態を示しており、図8(c)は引き出し2が完全に閉じてロックが解除された飛び出し防止装置100の状態を示している。
【0061】
図8(a)に示すように、シーソー部材11が水平位置に固定された状態の、地震等による枠体1の揺れがあったことによって耐震ラッチ機能により引き出し2がロックされた状態では、ころがり部材23が部材受け部21bからストッパ部21c方向に移動しており、シーソー式掛止部材21の第2掛止部21aが第1掛止部11aと掛止し、ロック状態になっている。ただしこの場合、引き出し2は一部開いており、全閉状態ではない。
【0062】
このような耐震ラッチ機能によるロック状態から、図8(b)に示すように、引き出し2を閉める方向(矢印方向)に移動させると、第2掛止部21aの非掛止面21a’がシーソー部材11の斜面部に当接してその斜面部上を摺動することにより、シーソー部材11により押し上げる。
【0063】
この状態から、図8(c)に示すように、引き出し2が全閉状態となると、第2掛止部21aがシーソー部材11の上部に位置し、ころがり部材23が元の位置(部材受け部21bの位置)に戻り、第2掛止部21aが非突出位置になり、耐震ラッチ機能によるロックが解除される。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、引き出し2が引き出し方向に移動する際にのみ、第1掛止部10と第2掛止部20とが掛止して引き出し2がロックされる。このため、普段の生活において人為的な引き出し操作、例えば小さい子供が勝手に開けることによって、引き出し2が飛び出してしまい、ケガをするなどを未然に防止することができる。また、鉄製の側板を有する引き出しであっても取付けることができる。
【0065】
さらに、手指でシーソー部材11の作用部11bを回動させて、ロックを解除するための操作部11cが設けられているので、ロックを簡単に解除することができる。
【0066】
さらにまた、第1掛止機構10がシーソー部材11の第1掛止部11aを強制的に非突出位置に規制するストッパ13を有しているため、このストッパ13を作動させて引き出し2の飛び出しのロック及びロック解除を任意にかつ容易に選択することができる。
【0067】
また、自重で第1掛止部11aをロック可能な突出位置に付勢されることで、部品の数を少なく、構成が簡単になる。
【0068】
さらに、ストッパ13を作動することによってシーソー部材11の作動を停止させた状態においても、地震等による枠体1の揺れがあった場合は、飛び出し防止装置100の耐震ラッチの機能によりロックが行われて引き出し2の飛び出しを防止することができる。
【0069】
なお、上述した実施形態においては、第1掛止機構10が引き出し2の側板2aの外面上に取付けられ、第2掛止機構20が枠体1の側板1aの内面上に取付けられている構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1掛止機構10を枠体1の側板1aの内面上に取付け、第2掛止機構20を引き出し2の側板2aの外面上に取付けるようにしてもよい。この場合、ロックを解除する際に、枠体1の側板1aと引き出し2の側板2aとの間に手指を挿入し、シーソー部材11の操作部11cを操作し、シーソー部材11を回動させる。又は操作部11cを枠体1の前面から露出させ、枠体1の前面から操作部11cを操作するようにしてもよい。
【0070】
また、上述した実施形態においては、第1掛止部がロック可能な突出位置となるように自重で付勢する構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、バネ等の付勢部材を設けるようにしてもよい。この場合、付勢部材の特性に応じて付勢力を任意に設定することができる。
【0071】
さらに、上述した実施形態においては、ころがり部材23が円柱状のものを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、球状のころがり部材を用いてもよい。
【0072】
さらにまた、上述した実施形態においては、不動状態のシーソー式掛止部材21に対して、シーソー部材11が回動することで、ロック可能であり、不動状態のシーソー部材11に対してシーソー式掛止部材21が回動することで、ロック可能であることを説明したが、勿論、シーソー部材11とシーソー式掛止部材21が共に回動している状態にも、ロックすることが可能である。
【0073】
さらにまた、上述した実施形態においては、引き出し2の片側に飛び出し防止装置100が取り付けられている例を説明したが、勿論、引き出し2の両側に取り付けるようにしてもよい。この場合、引き出し2の飛び出しをより確実に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、家具等の引き出しの、人為的な操作による飛び出し及び地震等の揺れによる飛び出しの両方を防止し、より安全性を高める目的に利用できる。
【符号の説明】
【0075】
1 枠体
1a、2a 側板
2 引き出し
2b スライドレール
10 第1掛止機構
11 シーソー部材
11a 第1掛止部
11b 作用部
11c 操作部
11d 突部
12、22 軸
13 ストッパ
13a つまみ
14、24 ケース本体
14a、14a’ 段差部
14b スライド空間
14c、15a、24c、25a 軸穴
14d、15c、24d、25b 貫通孔
14e、24f 切り込み段差
14f、15b 長穴
15、25 カバー
20 第2掛止機構
21 シーソー式掛止部材
21a 第2掛止部
21b 部材受け部
21c ストッパ部
23 ころがり部材
24a 開口
24b 収納空間
24e、24g 凸部
100 飛び出し防止装置
W1、W2 ネジ






















【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と引き出しとの間に配置されて引き出しの飛び出しを防止するための飛び出し防止装置において、
前記枠体と前記引き出しとのいずれか一方に取付けられ、一端部に第1掛止部を有するとともに他端部に前記第1掛止部をロック可能な位置に突出させる作用部を有してなるシーソー部材を備える第1掛止手段と、前記枠体と前記引き出しとのいずれか他方に取付けられ、前記引き出しが引き出し方向に移動する際にのみ前記第1掛止部を掛止可能な第2掛止部を有する第2掛止手段とを備えており、
前記シーソー部材は、前記第1掛止部がロック可能な突出位置に突出するよう付勢されていることを特徴とする飛び出し防止装置。
【請求項2】
前記引き出しの側面において又は前記枠体の前側から手で前記シーソー部材の作用部を回動させ、ロックを解除するための操作部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の飛び出し防止装置。
【請求項3】
前記第1掛止手段は、前記シーソー部材の前記第1掛止部を強制的に非突出位置に規制するストッパを有し、
前記シーソー部材の前記第1掛止部が非突出位置にある場合は、前記第1掛止部が前記第2掛止部に掛止しないように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の飛び出し防止装置。
【請求項4】
前記シーソー部材は、前記作用部の重心に作用する自重により前記第1掛止部が突出位置に突出するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の飛び出し防止装置。
【請求項5】
前記第1掛止手段は、前記シーソー部材の前記第1掛止部が突出位置に突出するように付勢する弾性の付勢部材を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の飛び出し防止装置。
【請求項6】
前記第2掛止手段は、前記第1掛止部に掛止する前記第2掛止部を一端部に有する回動自在のシーソー式掛止部材と、前記シーソー式掛止部材を回動させ、前記第2掛止部を第1の突出位置及び該第1の突出位置より突出した第2の突出位置に選択的に突出させる作動部材とを備え、
前記作動部材は、地震等による前記枠体の揺れが生じた場合に転動して、前記第2掛止部を前記第2の突出位置に突出させるように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の飛び出し防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−81632(P2013−81632A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223693(P2011−223693)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【特許番号】特許第4939666号(P4939666)
【特許公報発行日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(000169329)アトムリビンテック株式会社 (81)
【Fターム(参考)】