説明

食品の保存方法

【課題】脱酸素剤包装と抗菌剤を食品に添加する方法を併用することにより、長期にわたって安全に食品を保存することを提供する。
【解決手段】プロタミンの加水分解物を添加した食品を酸素バリアー性の包材に、脱酸素剤と共に封入する。プロタミンを加水分解して得られる分子量が、500〜4000の範囲であることが好ましく、食品に添加する抗菌剤として、プロタミン加水分解物の他に、酢酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、グリシン、リゾチーム、プロタミンからなる物質群より選ばれた1種以上と組み合わせた製剤を用いることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脱酸素剤包装と抗菌剤を食品に添加する方法を併用した食品の保存方法であり、併用することにより菌の増殖を効果的に抑制し、長期にわたって安全に食品を保存する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の保存方法として、脱酸素剤やガス置換により酸素濃度を低下させる方法が広く利用されている(非特許文献1)。特に、脱酸素剤は酸素を化学的に除去するため、ガス置換法や真空パック法のような物理的除去法に比べ、酸素の除去率が高く、長期間低い酸素濃度を維持することが出来る(非特許文献2)。しかし、嫌気性菌や低酸素濃度でも生育可能な微生物(酵母類等)に対する抗菌性は十分ではないのが一般的である。
【0003】
食品の保存方法として、抗菌剤を食品に添加する方法は古くから知られており、プロタミンは天然由来の抗菌剤として広く利用されている(非特許文献3)。プロタミンは他の日持ち向上剤と併用で使用されている(特許文献1(特公平5-29429)、「食品保存料」に関する特許文献2(特公平6-93831)、「食品保存料」に関する特許文献3(特公平5-4064)、「食品用品質保持剤」に関する特許文献4)。
【0004】
プロタミンを添加した食品を酸素不透過性の袋または容器中に、脱酸素剤と共に封入することを特徴とした食品の保存方法は既に知られている(特許文献5)。しかし、一定の保存効果は認められるが、その効果は十分ではなく、食品の日持ちの観点から不十分であった。そのため、長期にわたって安全に食品を保存する方法の開発が望まれていた。また、当該特許文献にはプロタミン加水分解物に関する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】;特許第1843831号明細書
【特許文献2】;特許第2011599号明細書
【特許文献3】;特許第1800205号明細書
【特許文献4】;特許第1603113号明細書
【特許文献5】;特公平8-13260号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】;細川貴央、月刊フードケミカル2005年6月号
【非特許文献2】;星野純ら、食品と微生物, Vol.2, No,2(1985)
【非特許文献3】;庵原啓司,根本えりか:しらこたん白(プロタミン)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
長期に渡って抗菌活性が安定で、長期保存が可能となる食品の開発を目的とし、脱酸素剤包装と抗菌剤を食品に添加する方法を併用した食品の保存方法を開発した。従来技術に鑑みて鋭意検討した結果、抗菌剤としてプロタミンを加水分解して得られるプロタミン加水分解物を用いることで、脱酸素剤包装との併用で食品の保存性が向上した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、プロタミンの加水分解物を添加した食品を酸素バリアー性の包材に、脱酸素剤と共に封入することを特徴とした食品の保存方法である。プロタミンの加水分解物としては、プロタミンを加水分解して得られる分子量が、500〜4000の範囲であるものが好ましい。更に、食品に添加する抗菌剤として、プロタミン加水分解物の他に、酢酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、グリシン、リゾチーム、プロタミンからなる物質群より選ばれた1種以上と組み合わせた製剤を用いることもできる。
【発明の効果】
【0009】
脱酸素剤包装とプロタミン加水分解物を食品に添加する方法を併用することにより、長期にわたって安全に食品を保存することが可能となる。また、食品の水分活性を落として保存性を向上させていた食品などに対して、水分低下処理を省略あるいは緩和して水分低下に伴う食品自体の品質低下を防ぐことができ、安全で且つ高品質の食品を提供することが可能となる。更に、脱酸素剤とプロタミン加水分解物を併用することで、これらを単独で用いる場合よりもこれらの使用量を低減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】練り餡中でのプロタミン分解物と脱酸素剤の併用効果(添加濃度0.3質量%, n=1)(生菌数106cfu/g以上は食品腐敗の目安となる。)を示す図である。
【図2】練り餡中でのプロタミン分解物製剤Bと脱酸素剤の併用効果(添加濃度0.5重量%, n=1)(生菌数106cfu/g以上は食品腐敗の目安となる。)を示す図である。
【図3】生ソバでのプロタミン分解物製剤Aと脱酸素剤の併用効果(添加濃度0.5重量%, n=1)(生菌数106cfu/g以上は食品腐敗の目安となる。)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
プロタミンは、サケ、ニシン、マス等魚類の精子核中にデオキシリボ核酸と結合したヌクレオプロタミンとして存在する強塩基性蛋白質であり、原料の違いによって、例えばサルミン(サケ)、クルペイン(ニシン)等と称され、それぞれ若干構造も異なるが、本発明においては全てのプロタミンが使用可能である。
【0012】
プロタミンの加水分解方法としては、酸、アルカリまたは蛋白質分解酵素を用いる方法を挙げることができ、又それらの組合せによる分解も利用できるが、蛋白質分解酵素を用いることが望ましい。より詳細には次の通りである。プロタミンに脱イオン水を加え、水酸化ナトリウム又は塩酸を加えてpHを酵素の至適pHに調整する。酵素の至適温度に加温した後、酵素を添加して、攪拌しながら酵素反応を行う。反応終了後、反応液を80〜100℃に加温して5〜60分間加熱失活させpHを中性域となるように調整後、反応液を乾燥し、プロタミン分解物を得ることができる。
【0013】
加水分解に用いることのできる蛋白質分解酵素としては、例えばバシラス(Bacillus)属(例えばバシラス・サチリス(Bacillus subtilis), バシラス・サーモプロテオティカス(Bacillus thermoproteolyticus), バシラス・リシェニフォルミス(Bacillus licheniformis)等の産生する酵素、アスペルギルス(Aspergillus)属(例えばアスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae), アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger), アスペルギルス・メレンス(Aspergillus mellens)等)の産生する酵素、リゾパス(Rhizopus)属(例えばリゾパス・ニベウス(Rhizopus niveus), リゾパス・デレマー(Rhizopus delemar)等)の産生する酵素、ペプシン、パンクレアチン、パパイン、ブロメライン等が挙げられる。これらの酵素は単独、又は2種以上を組み合わせても良い。また、蛋白質分解酵素は、蛋白質の内部配列を特異的に認識して切断するエンドペプチダーゼと、末端から1〜2アミノ酸残基ずつ切断するエキソペプチダーゼに分類される。従って、必要に応じて、エンドペプチダーゼとエキソペプチダーゼの組合せにより、様々なペプチド鎖を生成させることが可能である。酵素により加水分解する場合には、基質に対して、酵素0.001〜10質量%を添加し、溶液を使用される酵素の至適pHとして加水分解する。
【0014】
プロタミン加水分解物の分子量は500〜4000の範囲に分布していることが好ましく、重量平均分子量としては2500程度のものが特に好ましい。分子量500以下あるいは4000以上では、脱酸素剤との併用効果が低下する。
【0015】
プロタミン加水分解物の食品への添加量は、食品の種類等によっても異なるが、通常、添加後の濃度で固形物として0.001〜5質量%、特に好ましくは0.01〜1質量%の範囲である。食品への添加は製造工程中で行ってもよく、またプロタミン加水分解物を含有する水溶液中に食品を一定時間浸漬する方法でも良い。
【0016】
対象の食品としては、主食類(餅、パン、炊飯米、そば、うどん、生麺、パン粉等)、洋菓子類(ケーキ、蒸しパン、クッキー、カステラ、ドーナツ等)、和菓子類(饅頭、どら焼き、人形焼き、大福、甘納豆、蒸し羊羹、水羊羹、もなか等)、農産加工品・穀類(米飯、ナッツ類、ドライフルーツ、雑穀類、かんぴょう、干し芋、切干大根等)、水産加工品(珍味類、煮干、佃煮、削り節、かまぼこ、ちくわ等)、畜肉加工品(ハム、ソーセージ、ビーフジャーキー、チキンナゲット等)、乳製品(バター、チーズ等)、調味料(味噌、醤油、液体調味料、粉末調味料等)、惣菜類等が挙げられる。
【0017】
脱酸素剤としては、鉄粉、亜鉛粉、還元処理を施した酸素欠陥を有する無機化合物(二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄)等を使用した無機系の脱酸素剤、グリセリン、アスコルビン酸、カテコールを使用した有機系の脱酸素剤、酸化性樹脂(エチレン系不飽和結合を有する熱可塑性樹脂、メタキシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分とアジピン酸を主成分とするジカルボン酸成分から重縮合により得られるナイロンMXD6等)と遷移金属触媒とを含むことを特徴とする酸素吸収性樹脂組成物、の何れの脱酸素剤も、食品保存のための所定の酸素濃度を達成できれば、利用できる。酸化性樹脂と遷移金属触媒とを含む酸素吸収性樹脂組成物または前記無機化合物もしくは有機化合物を樹脂に混練してなる酸素吸収性樹脂組成物の場合にはフィルム又はシートの形状に加工できるので、これらを短冊状等に切断後、脱酸素剤として利用することができる。さらに前記のフィルム又はシートは、袋やケースなどの容器、あるいは袋やケースなどの食品包装用多層容器の構成成分として使用される。
【0018】
脱酸素剤の使用量としては、酸素バリアー性の包材中の酸素濃度を0.1%(v/v)以下に保つことが出来る量であればよく、包材容量に応じて使用量を調整して使用することが望ましい。
【0019】
食品および脱酸素剤を封入する包装材料としては、酸素バリアー性の高いものであれば特に限定しないが、例えば、バリアナイロンなどの素材を用いることができる。
【0020】
食品に添加する抗菌剤として、プロタミン加水分解物の他に、酢酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、グリシン、リゾチーム、プロタミンからなる物質群より選ばれた1種以上と組み合わせた製剤を用いることもできる。酢酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、グリシン、リゾチーム、プロタミン、何れも通常食品用として市販されているもものを使用することが出来る。
【実施例】
【0021】
(実施例1)プロタミンおよびプロタミン分解物のGPC分析
(a)試料
シロサケ(オンコリンカス ケタ)の白子由来のプロタミン塩酸塩(プロザーブ;(株)マルハニチロ食品製)、上記プロタミン塩酸塩のブロメライン((株)天野エンザイム製)による加水分解物(HAP100;(株)マルハニチロ食品製)を用いた。
(b)GPC分析
評価試料を0.1%(w/v)となるように脱イオン水で調製後、孔径0.45μmセルロースアセテートメンブランフィルター(ADVANTEC社製,DISMIC-13cp)を用いてろ過したものを試料液として用いた。上記調製した試料液を下記の分離条件でHPLC(GPC)システム(Waters alliance 2965)を用いて分析した。
<HPLC分析条件>
System : Waters alliance 2965
Column : TSKgel G3000PWxl(7.8×3000mm)+TSKguardcolumn PWxl (6.0×40mm)
Eluent : 45% Acetonitrile containing 0.1%TFA
Flow rate : 0.3ml/min
Detector : Waters 2414 (RI), 30℃(Cell temp), Waters 2996 (UV220nm)
Column oven : 30℃、 Injection Vol. : 50μl、 Analysis time : 50min
GPC分析の結果、プロタミンの重量平均分子量(Mw)は4342Da、プロタミン分解物の重量平均分子量(Mw)は2482Daであった。
【0022】
【表1】

【0023】
(実施例2)培地系でのプロタミン分解物の脱酸素剤との併用効果
(a)試験方法;寒天平板培地を用いて最小生育阻止濃度の測定
(1)評価試料
脱酸素剤は、酸素検知剤一体型エージレスSAPE−100A(三菱ガス化学(株)製)、包装材はバリアナイロン/LDPE(厚み15/50μm)を使用した。プロタミン塩酸塩のブロメライン((株)天野エンザイム製)による加水分解物(HAP100;(株)マルハニチロ食品製)を用いた。添加濃度として、10, 50, 100, 250, 500, 750, 1000ppmの7試験区で実施した。
(2)試験菌
Candida utilis NBRC0396 (IFO0396)、Pichia anomala NBRC0130 (IFO0130)、Saccharomyces cerevisiae NBRC0305 (IFO0305)を使用した。
(3)培地
C. utilis NBRC0396、およびS. cerevisiae NBRC0305はポテトデキストロース培地(寒天1.5質量%, pH5.5)を、P. anomala NBRC0130はトリプトソイ寒天培地(寒天0.75質量%, pH5.5)を用いた。
(4)培養方法
各評価試料濃度が10〜1000ppmの各寒天平板培地を無菌的に調製し、これに各酵母培養液(105〜107cfu/mL、各n=3)をミクロプランターで平板培地に接種し(スポット量は5〜10μL)、接種したシャーレ1枚をエージレスSAPE-100Aとともにバリアナイロン/LDPE(150×200mm)フィルム袋に入れ、ヒートシール機で密封し、25℃で3日間培養した。培養終了後、菌の生育を目視で評価した。なお、本試験の袋内酸素量は40〜50mL(浸漬法で測定)であり、エージレスは公称酸素吸収量100mLのものを使用した。
(b)結果
最小生育阻止濃度の測定の結果、プロタミン分解物単独よりも、脱酸素剤との併用では低濃度でも効果があった。プロタミン分解物を添加せずに、脱酸素剤のみ使用した試験区では、何れも生育が認められたことから、プロタミン分解物の脱酸素剤との併用効果が示された。
【0024】
【表2】

【0025】
※プロタミン分解物を加えずに脱酸素剤のみでは何れも生育
(実施例3)培地系でのプロタミンとプロタミン分解物の脱酸素剤との併用効果
(a)試験方法;寒天平板培地を用いて最小生育阻止濃度の測定
実施例2の方法に準じて行った。なお、プロタミンは、シロサケ(オンコリンカス ケタ)の白子由来のプロタミン塩酸塩(プロザーブ;(株)マルハニチロ食品製)を用い、試験菌として、Candida utilis NBRC0396 (IFO0396)、Saccharomyces cerevisiae NBRC0305 (IFO0305)を使用した。C. utilis NBRC0396はポテトデキストロース培地(寒天1.5質量%, pH5.5)を、S. cerevisiae NBRC0305はトリプトソイ寒天培地(寒天0.75質量%, pH5.5)を用いた。
【0026】
(b)結果
脱酸素剤との併用において、プロタミン分解物はプロタミンよりも低濃度で効果があった。
【0027】
【表3】

【0028】
※プロタミン・プロタミン分解物を加えずに脱酸素剤のみでは何れも生育

(実施例4)培地系でのプロタミン分解物製剤Aの脱酸素剤との併用効果
(a)試験方法;寒天平板培地を用いて最小生育阻止濃度の測定
実施例2の方法に準じて行った。プロタミン分解物製剤として、グリシン(35質量%), 酢酸ナトリウム(25質量%)、ポリリン酸ナトリウム(5質量%)、プロタミン分解物(4質量%),食品素材(31質量%)からなる、プロタミン分解物製剤Aを使用した。試験菌として、Candida utilis NBRC0396 (IFO0396)を使用し、トリプトソイ寒天培地(寒天0.75質量%)を用いて評価した。
(b)結果
最小生育阻止濃度の測定の結果、プロタミン分解物製剤A単独よりも、脱酸素剤との併用では低濃度でも効果があった。プロタミン分解物製剤Aを添加せずに、脱酸素剤のみ使用した試験区では、何れも生育が認められたことから、プロタミン分解物製剤Aの脱酸素剤との併用効果が示された。
【0029】
【表4】

【0030】
※プロタミン分解物製剤Aを加えずに脱酸素剤のみでは何れも生育
(実施例5)培地系でのプロタミン製剤Aとプロタミン分解物製剤Aの脱酸素剤との併用効果
(a)試験方法;寒天平板培地を用いて最小生育阻止濃度の測定
実施例2の方法に準じて行った。プロタミン製剤として、グリシン(35質量%), 酢酸ナトリウム(25質量%)、ポリリン酸ナトリウム(5質量%)、プロタミン(4質量%),食品素材(31質量%)からなる、プロタミン製剤Aを使用した。試験菌として、Candida utilis NBRC0396 (IFO0396) 、Saccharomyces cerevisiae NBRC0305 (IFO0305)を使用し、トリプトソイ寒天培地(寒天0.75質量%)を用いて評価した。
(b)結果
脱酸素剤との併用において、プロタミン分解物製剤Aはプロタミン製剤Aよりも低濃度で効果があった。
【0031】
【表5】

【0032】
※プロタミン製剤A・プロタミン分解物製剤Aを加えずに脱酸素剤のみでは何れも生育
(実施例6)モデル食品(練り餡)を用いたプロタミン分解物の脱酸素剤との併用効果
(a)試験方法;Saccharomyces cerevisiae NBRC0305 添加試験
(1)モデル食品
練り餡(さらし餡;30g、砂糖;40g、水;130g)を用いた。
(2)評価試料
脱酸素剤は、エージレスSAPE−100A、包装材はバリアナイロン/LDPE(厚み15/50μm)を使用した。プロタミン塩酸塩のブロメライン((株)天野エンザイム製)による加水分解物(HAP100;(株)マルハニチロ食品製)を用いた。添加濃度として、0.3質量%で実施した。
(3)試験菌
Saccharomyces cerevisiae NBRC0305 (IFO0305)を用いた。
(4)指標菌入りモデル食品の調製
300mLビーカーに練り餡の材料を混合し、プロタミン分解物を添加・混合後、アルミホイルでフタをしてオートクレーブにかけて練り餡を試作した。これをフタに錐で7ヵ所空気穴を空けたフタ付きカップに30gずつ入れ、各指標菌の培養液を10cfu/gになるように接種したのち、バリアナイロン(150×200mm)フィルム袋にエージレスSAPE-100A、酸素検知剤エージレスアイと共に入れ、ヒートシール機で密封し、25℃で保存した。なお、本試験の袋内酸素量は90mL(浸漬法で測定)であり、エージレスは公称酸素吸収量100mLのものを使用した。
(5)評価
保存終了後の各サンプルについて、菌数を測定した(一般生菌数;標準寒天培地、酵母数;ポテトデキストロース寒天培地(pH3.0))。
(b)結果
得られた結果を図1に示す。脱酸素剤単独、又はプロタミン分解物単独よりも、プロタミン分解物と脱酸素剤の併用で効果が高かった。
【0033】
また、脱酸素剤存在下でのプロタミンとプロタミン分解物との効果について、表6に示す。その結果、プロタミン分解物はプロタミンよりも菌数を抑制する効果が認められた。
【0034】
【表6】

【0035】
※脱酸素剤存在下
(実施例7)モデル食品(練り餡)を用いたプロタミン分解物製剤Bの脱酸素剤との併用効果
(a)試験方法;Saccharomyces cerevisiae NBRC0305 添加試験
実施例6の方法に準じて行った。プロタミン分解物製剤として、グリシン(93.5質量%), プロタミン分解物(6質量%), 卵白リゾチーム(0.5質量%)からなる、プロタミン分解物製剤Bを使用した。添加濃度として、0.5質量%で実施した。
(b)結果
得られた結果を図2に示す。脱酸素剤単独、又はプロタミン分解物製剤B単独よりも、プロタミン分解物製剤Bと脱酸素剤の併用で効果が高かった。

(実施例8)モデル食品(生ソバ)を用いたプロタミン分解物製剤Aの脱酸素剤との併用効果
(a)試験方法
(1)モデル食品
生ソバ(小麦粉(日清製粉・オーション)750g、蕎麦粉(松屋製粉・2号)750g、グルテン(理研ビタミン・M-1000)60g、塩15g、打ち粉(ハナマサ・片栗粉)50g、水480g(対粉32質量%))を用いた。
(2)評価試料
脱酸素剤は、エージレスSAPE−50A,包装材はバリアナイロン/LDPE(厚み15/50μm)を使用した。プロタミン製剤Aおよびプロタミン分解物製剤Aを用い、添加濃度として0.5質量%で実施した。
(3)モデル食品の調製
材料を混合し、20分間混捏した。その後5寸ロールで3回複合しながら麺帯を成型し、1時間室温で熟成させた。熟成後、5寸ロールで4回圧延し、厚さ1.5mmにした。その後太さ1.0mmに切り出し、エージレスSAPE−50Aとともにバリアナイロン/LDPE(150×200mm)フィルム袋に110gずつ入れ、ヒートシール機で密封し、10℃で保存した。なお、本試験の袋内酸素量は30.5ml(浸漬法で測定)であり、エージレスは公称酸素吸収量50mlのものを使用した。
(4)評価
保存終了後の各サンプルについて、菌数を測定した(一般生菌数;標準寒天培地)。
(b)結果
一般生菌数を測定した結果を図3に示す。脱酸素剤単独、又はプロタミン分解物製剤A単独よりも、プロタミン分解物製剤Aと脱酸素剤の併用で効果が高かった。一方、プロタミン製剤Aと脱酸素剤の併用では効果が認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロタミンの加水分解物を添加した食品を酸素バリアー性の包材に、脱酸素剤と共に封入することを特徴とした食品の保存方法。
【請求項2】
プロタミンの加水分解物を添加した食品を、酸素吸収性樹脂組成物を用いて作製された容器に封入することを特徴とした食品の保存方法。
【請求項3】
プロタミンを加水分解して得られる分子量が、500〜4000の範囲にあるプロタミン分解物からなることを特徴とする請求項1又は2記載の食品の保存方法。
【請求項4】
食品に添加する抗菌剤として、プロタミン加水分解物の他に、酢酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、グリシン、リゾチーム、プロタミンからなる物質群より選ばれた1種以上と組み合わせた製剤を用いることを特徴とした請求項1〜3に記載の食品の保存方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−125314(P2011−125314A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289536(P2009−289536)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000233620)株式会社マルハニチロ食品 (34)
【出願人】(000101215)アサマ化成株式会社 (37)
【出願人】(596049670)菱江化学株式会社 (8)
【Fターム(参考)】