説明

食品の搬送方法、及びこれを用いた容器内充填食品の製造方法、並びに、食品搬送装置、及びこれを用いた容器内充填食品の製造装置

【課題】液体の表面張力を用いた食品の搬送方法、及びこれを用いた容器内充填食品の製造方法、並びに、食品搬送装置、及びこれを用いた容器内充填食品の製造装置を提供する。
【解決手段】固形又は半固形の食品13をピックアップ部20により保持して搬送する食品の搬送方法であって、ピックアップ部20の保持面29に液体を介在させて食品13を吸着させ、保持面29に食品13を前記液体の表面張力により保持させた状態でピックアップ部20を移動させ、食品13を搬送することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、果肉等の固形又は半固形の食品を、容器もしくは容器内に充填された液体又は半液体状のヨーグルト、ゼリー等に投入する際の食品の搬送方法、及びこれを用いた容器内充填食品の製造方法、並びに、食品搬送装置、及びこれを用いた容器内充填食品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、果肉入りヨーグルトやゼリー、その他の具材入りの加工食品としては、投入される固形または半固形の具材を大きめにして存在感を持たせた商品が広く嗜好されており、かかる加工食品の製造においては、品質を確保するために、形状が崩れやすい果肉等であっても具材の形状を極力維持して投入することが求められている。
【0003】
従来より、ヨーグルトやゼリー等の商品の容器に果肉等を投入する手段としては、例えば下記特許文献1に記載された装置が開発されている。
図21に示すように、この果肉搬送装置1は、果肉2を一方向に搬送するコンベア3と、コンベア3を幅方向に分割するガイド4と、ガイド4により分割された複数の分割路5a〜5cと、該分割路5a〜5cのそれぞれに果肉2を振り分ける振り分け位置6と、振り分け位置6において果肉2を複数の分割路5a〜5cのいずれかの入口に振り分ける果肉移動手段としてのエアノズル7と、コンベア3から果肉2を投下する位置において開閉可能に設けられたシャッター8とを備えて構成されている。
【0004】
そして、果肉2を一列で所定の振り分け位置6に向けてコンベア3上を搬送し、振り分け位置6に達した果肉2を、エアノズル7からのエア吹きによって3つの分割路5a〜5cの入口に向けて移動させ、振り分ける。次いで、3つの分割路5a〜5cに振り分けられた果肉2を、それぞれの分割路5a〜5cの果肉2が他の分割路に入り込まないようにガイド4により案内しながらコンベア3の下流端に搬送し、コンベア3の下流端上方に設けられたシャッター8を通して一つ又は複数個の果肉2を容器9に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−60048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の果肉搬送装置1によれば、果肉2の振り分け及び容器9への搬送にそれぞれ時間が掛かるため、充填時間の短縮化において課題があった。
【0007】
また、エアノズル7により果肉2を振り分けるものであるため、果肉2の形状によってはエアが果肉2に適切に当たりにくく、想定した分割路5a〜5cに振り分けられなかった場合には果肉2が予定した分割路5a〜5c上を搬送されないため、果肉2を所望の容器9に予定した数量ずつ充填できないことがあり、確実な充填という点において課題があった。
【0008】
また、果肉2の搬送に際して、果肉2の振り分け時に当該果肉2にエアが吹き付けられることによって果肉2の水分が吹き飛ばされ、味覚が損なわれるおそれがあり、更に果肉2が分割路5a〜5cを移動する際にガイド4、4・・に当接することによって当該果肉2の外観を損なうおそれがあるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するべく、以下の手段を提供している。
すなわち、本願の請求項1に係る発明は、固形又は半固形の食品をピックアップ部により保持して搬送する食品の搬送方法であって、前記ピックアップ部の保持面に液体を介在させて前記食品を吸着させ、前記保持面に前記食品を前記液体の表面張力により保持させた状態で前記ピックアップ部を移動させ、前記食品を搬送することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の食品の搬送方法において、前記液体が前記食品自体に含まれる液体であることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1に記載の食品の搬送方法において、前記液体が前記保持面に結露した結露水であることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の食品の搬送方法を使用した容器内充填食品の製造方法であって、上方が開口部とされた容器内に液体成分を含む飲食用充填物を充填しておき、前記ピックアップ部と前記容器とを相対移動させることにより、前記ピックアップ部に保持された前記食品を前記開口部から前記容器内の飲食用充填物の表面に接触させ、前記ピックアップ部と前記容器とを離間させて前記液体成分の表面張力により前記食品を前記ピックアップ部から解放して前記容器内に投入することを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の食品の搬送方法を使用した容器内充填食品の製造方法であって、上方が開口部とされた容器内に液体成分を含む飲食用充填物を充填しておき、前記ピックアップ部と前記容器とを相対移動させることにより、前記ピックアップ部に保持された前記食品を前記開口部内にて前記容器に当接させることにより、前記食品を前記ピックアップ部から解放して前記容器内に投入することを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、固形又は半固形の食品をピックアップ部により保持して搬送する食品搬送装置であって、前記ピックアップ部は、液体を介在させて該液体の表面張力により食品を保持する保持面を備え、前記ピックアップ部を、前記食品を前記保持面に保持する保持位置と前記保持面から解放する解放位置との間で移動させる駆動機構を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項6に記載の食品搬送装置において、前記ピックアップ部は、前記保持面を冷却して結露水を生じさせるペルチェ素子を備えていることを特徴とする。
【0016】
請求項8の発明は、請求項6又は7に記載の食品搬送装置において、前記保持面に凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項9の発明は、請求項6から8のいずれか1項に記載の食品搬送装置において、前記保持面が複数に分割されていることを特徴とする。
【0018】
請求項10の発明は、請求項6、8、9のいずれか1項に記載の食品搬送装置において、前記ピックアップ部には、その内部を通って前記保持面に開口する流体流路が形成され、前記流体流路に流体を供給する流体供給源が備えられ、前記保持面に保持された食品を前記流体流路に供給する流体により該保持面から解放可能とすることを特徴とする。
【0019】
請求項11の発明は、請求項6から10のいずれか1項に記載の食品搬送装置において、前記解放位置には、前記ピックアップ部の移動時に、前記保持面に保持された食品が当接して該食品を前記保持面から解放する当接部材が配設されていることを特徴とする。
【0020】
請求項12の発明は、請求項6から11のいずれか1項に記載の食品搬送装置を備えた容器内充填食品の製造装置であって、前記解放位置に移動した前記ピックアップ部の下方に位置させて、上方が開口部とされ、その内部に飲食用充填物が充填された容器を載置する載置部が設けられていることを特徴とする。
【0021】
請求項13の発明は、請求項12に記載の容器内充填食品の製造装置において、前記載置部は、複数の前記容器を順次前記ピックアップ部の下方へ間歇的に搬送するベルトコンベアであることを特徴とする。
【0022】
請求項14の発明は、請求項12に記載の容器内充填食品の製造装置において、前記載置部は、前記容器を保持する容器保持部が形成されたリテーナが複数連結され、複数の前記容器を前記ピックアップ部の下方へ順次間歇的に搬送するリテーナコンベアであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の方法又は装置によれば、上記した解決手段によって下記の効果を奏する。
すなわち、本願の請求項1に係る食品の搬送方法によれば、食品を液体の表面張力によりピックアップ部の保持面に吸着させて搬送するものであるため、果肉を適確に保持して素早く搬送することができるという効果を奏する。また、液体の表面張力を利用した保持方法であるため、食品の味覚を損なうことがなく、更には食品の形状を崩したり傷つけたりすることなく確実に搬送することができるという効果を奏する。
【0024】
本願の請求項2に係る食品の搬送方法によれば、食品自体に含まれる液体の表面張力を利用してピックアップ部の保持面に食品を吸着させることができるため、食品に余計な水分を含ませないことにより食品の味覚に変化を生じさせることなく搬送することができるという効果を奏する。
また、ピックアップ部の保持面に液体を付着させるための工程を設ける必要がないため、食品の搬送方法をシンプルに構成することが可能となるという効果を奏する。
【0025】
本願の請求項3に係る食品の搬送方法によれば、食品自体が十分な水分を有していない場合であっても、保持面における結露水の表面張力により保持面に食品を吸着させて確実に保持及び搬送することができるという効果を奏する。
特に、チョコレート等のように油脂の多い食品の場合には、その表面が水を弾きやすく水分を付着させ難いが、保持面において発生させた結露水が均一的な表面張力を有するため、上記のような食品をも確実に保持し搬送することが可能となるという効果を奏する。
【0026】
本願の請求項4に係る容器内充填食品の製造方法によれば、容器内の液体成分の表面張力によりピックアップ部から食品を解放することができるため、ピックアップ部の保持面と食品との間の液体の表面張力を解くための工程を省略して、素早くかつ作業効率良く容器内充填食品を製造することができるという効果を奏する。
【0027】
本願の請求項5に係る容器内充填食品の製造方法によれば、ピックアップ部に保持された食品を開口部内にて容器に当接させて、すなわち食品に外力を加えて該食品をピックアップ部から解放させるため、食品の解放が容易であるとともに、ピックアップ部の保持面と食品との間の液体の表面張力を前記外力を加えれば解除できる程度まで高めることができ、その結果、食品をより強力にピックアップ部に保持させることが可能となり、搬送をより素早く行うことができるという効果を奏する。
【0028】
本願の請求項6に係る食品搬送装置によれば、食品を液体の表面張力によりピックアップ部の保持面に吸着させて搬送するため、果肉を適確に保持して素早く搬送することができるという効果を奏する。また、液体の表面張力を利用した保持方法であるため、食品の味覚を損なうことなく、更には食品の形状を崩したり傷つけたりすることなく搬送することができるという効果を奏する。
【0029】
本願の請求項7に係る食品搬送装置によれば、食品に液体が十分に含まれていない場合であっても、簡易な構成で確実に保持面に結露水を発生させることができるため、食品を確実に搬送することができるという効果を奏する。特に、チョコレート等のように油脂の多い食品の場合には、その表面において水を弾きやすく水分を付着させ難いが、ピックアップ部の保持面において結露水を発生させることができ、該結露水が均一的な表面張力を有するため、上記のような食品をも確実に保持し搬送することが可能となるという効果を奏する。
【0030】
本願の請求項8に係る食品搬送装置によれば、保持面の凹凸形状を適宜選択することにより食品の表面との接触面積を減少させて保持面と食品との間の液体の表面張力が働く面積を調整することができ、保持面の食品に対する保持力を適切に設定することができるという効果を奏する。
【0031】
本願の請求項9に係る食品搬送装置によれば、保持面を分割することにより、保持面と食品との間の液体の表面張力を発揮させる面を調整することができ、保持面の食品に対する保持力を適切に設定できるという効果を奏する。
【0032】
本願の請求項10に係る食品搬送装置によれば、ピックアップ部の保持面に流体を供給し得る構成とされているため、解放位置において食品に外力を加えることなく容易に食品を解放することが可能であるという効果を奏する。
【0033】
本願の請求項11に係る食品搬送装置によれば、解放位置に当接部材が配設されており、当該当接部材をピックアップ部に保持された食品に当接させて該食品をピックアップ部から解放させる構成とされているため、食品の解放が容易であるとともに、ピックアップ部の保持面と食品との液体の間の表面張力を該当接部材を当接させれば解除できる程度まで高めることができ、その結果、食品をより強力にピックアップ部に保持させることが可能となり、搬送動作を速めて搬送をより素早く行うことができるという効果を奏する。
【0034】
本願の請求項12に係る容器内充填食品の製造装置によれば、食品を液体の表面張力によりピックアップ部の保持面に吸着させて搬送するため、果肉を適確に保持して素早く搬送することができるとともに、食品の味覚を損なうことがなく、更には食品の形状を崩したり傷つけたりすることなく搬送することができ、容器内充填食品の製造効率及び品質を高めることができるという効果を奏する。
【0035】
本願の請求項13に係る容器内充填食品の製造装置によれば、ベルトコンベアにより容器が順次搬送される構成とされているため、効率的に容器内充填食品を製造することができるという効果を奏する。
【0036】
本願の請求項14に係る容器内充填食品の製造装置によれば、リテーナコンベアにおける容器の位置決めが確実で、容器の停止位置が常に正確となり、より確実に食品を容器に投入することが可能となるという効果を奏する。
また、リテーナコンベアにより容器が順次搬送される構成とされているため、効率的に容器内充填食品を製造することができるとともに、リテーナの容器保持部により容器を確実に保持することができるため、容器を転倒させたりすることなく確実にピックアップ部の下方へ容器を搬送したり、容器に食品を投入したりすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】は、本発明の一実施形態として示した食品搬送装置の原理的構成を示す図である。
【図2】は、本発明の一実施形態として示した食品搬送装置のピックアップ部を示した斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態として示した食品搬送装置により食品を解放する動作を示した図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態として示した食品搬送装置のピックアップ部における表面張力の原理について示した説明図である。
【図5】は、本発明の一実施形態として示した食品搬送装置のピックアップ部の変形例を示した斜視図である。
【図6】は、本発明の一実施形態として示した食品搬送装置のピックアップ部の変形例を分解して示した斜視図である。
【図7】は、本発明の一実施形態として示した食品搬送装置のピックアップ部に適用可能なペルチェ素子の回路図である。
【図8】は、本発明の一実施形態として示した食品搬送装置のピックアップ部の変形例により食品を保持及び解放する動作を示した説明図である。
【図9】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態として示した食品搬送装置のピックアップ部の変形例を示した斜視図である。
【図10】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態として示した食品搬送装置のピックアップ部から食品を解放する方法の第1の変形例を示した斜視図である。
【図11】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態として示した食品搬送装置のピックアップ部から食品を解放する方法の第2の変形例を示した斜視図である。
【図12】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態として示した食品搬送装置のピックアップ部から食品を解放する方法の第3の変形例を示した斜視図である。
【図13】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態として示した食品搬送装置のピックアップ部から食品を解放する方法の第4の変形例を示した斜視図である。
【図14】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態として示した食品搬送装置のピックアップ部から食品を解放する方法の第5の変形例を示した斜視図である。
【図15】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態として示した食品搬送装置のピックアップ部から食品を解放する方法の第6の変形例を示した斜視図である。
【図16】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態として示した食品搬送装置のピックアップ部から食品を解放する方法の第7の変形例を示した斜視図である。
【図17】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態として示した食品搬送装置のピックアップ部から食品を解放する方法の第8の変形例を示した斜視図である。
【図18】は、本発明の一実施形態として示した容器内充填食品の製造装置を示した斜視図である。
【図19】は、本発明の一実施形態として示した容器内充填食品の製造装置の変形例を示した斜視図である。
【図20】は、本発明の一実施形態として示した容器内充填食品の製造装置の変形例を示した斜視図である。
【図21】は、従来の果肉搬送装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の一実施形態として示された食品搬送装置について、図面を参照して説明する。なお、本発明を適用した食品搬送装置は、キウイ、マンゴー等の果肉、その他、豆腐、蒟蒻、人参等の固形又はゼリー等のような半固形の食品について広く適用可能であるが、本実施形態においては、果肉を搬送する食品搬送装置を一例として説明する。
【0039】
図1は、本発明による食品搬送装置10の原理的構成を示す図であって、この図に示す食品搬送装置10が、例えば後述する図18から図20に示す容器内充填食品の製造装置50、60のような各種装置に適用される。
図1に示すように、本発明による食品搬送装置10は、支持基台11と、支持基台11に支持された搬送機本体12とを備えて構成されており、果肉13を保持位置Aから解放位置Bに搬送するものである。
【0040】
果肉13は、上述したキウイ、マンゴー等の果肉を上下面が略平行となるような小塊(例えば、14.4g〜34.7g)にカットしたものである。
【0041】
支持基台11は、果肉13及び容器14を載置する載置台15と、載置台15から垂直方向に立ち上がった支持壁部16と、支持壁部16を補強して支持する補強壁部17、17とを備えている。また、載置台15の一端側15aには、果肉13を載置させる弾性変形可能なクッション台18が具備され、載置台15の他端側15bには、例えば飲食用充填物19としてヨーグルトが充填された容器14が載置されるように構成されている。
【0042】
搬送機本体12は、果肉13を保持するピックアップ部20と、ピックアップ部20を上下方向に移動自在に支持するZ方向搬送アーム21と、支持壁部16の上部に水平方向に固定され、Z方向搬送アーム21を水平方向に移動自在に支持するX方向搬送アーム22とを備えている。
【0043】
Z方向搬送アーム21は、その前面に上下方向に延在するレール21aを備えており、このレール21aにはスライダ23が上下動自在に支持されている。Z方向搬送アーム21の上端にはサーボモータ24が設けられており、このサーボモータ24、図示しないボールネジ、雌螺子部材等からなる駆動機構Mによってスライダ23が上下方向に移動するようになっている。
【0044】
X方向搬送アーム22は、その前面に左右水平方向に延在するレール22aを備えており、このレール22aにはスライダ25が左右方向移動自在に支持されている。X方向搬送アーム22の一端側にはサーボモータ26が設けられており、このサーボモータ26、図示しないボールネジ、雌螺子部材等からなる駆動機構Mによってスライダ25が左右方向に移動するようになっている。
【0045】
Z方向搬送アーム21は、X方向搬送アーム22に設けられたスライダ25に固定されている。
【0046】
ピックアップ部20は、ブラケット31を介してZ方向搬送アーム21に設けられたスライダ23に取り付けられている。
【0047】
ブラケット31は、断面L字形に形成されたものであって、その上方へ延出する壁部31aが前記スライダ23に固定されている。
このブラケット31の前方へ延出する壁部31bの下面には、ピックアップ部20が固定されている。
【0048】
図1、図2に示すように、ピックアップ部20は、果肉13を保持する部材であって、基板27の下面に略円柱状の保持部28が形成されたものであり、保持部28の下面は、平坦かつ円滑に形成された保持面29とされている。
【0049】
保持面29は、果肉13に当接した際に、保持面29に塗布された果汁(液体)及び果肉13自身が有する果汁の表面張力により該果肉13を吸着させる水平面であり、果肉13の略全体を覆う大きさを有している。
【0050】
上記の構成からなる食品搬送装置10によって、果肉13を容器14に搬送し投入する方法について、図1、図3を用いて説明する。図3において図(a−1)、(b−1)、(c−1)は、同図(a)、(b)、(c)における矢印Kで指した付近の部分拡大図である。
【0051】
まず、載置台15の一端側15aのクッション台18にカット面が略上方を向くように果肉13を載置し、他端側15bにヨーグルト19が充填された容器14を配置しておく。また、X方向搬送アーム22を駆動してZ方向搬送アーム21をクッション台18の位置に設置させておく。
【0052】
果肉13を保持するにあたっては、図1に示すように、Z方向搬送アーム21のサーボモータ24を駆動して、ピックアップ部20を下方へ移動させ、果肉13の上面に保持面29を確実に当接させる。この際、ピックアップ部20は果肉13を若干押圧することになるが、スポンジ等よりなるクッション台18により該ピックアップ部20の圧力を吸収し、果肉13を変形させることなく保持面29に密着させる。
【0053】
保持面29に果肉13を密着させると、保持面29に塗布された果汁30と果肉13が保有する果汁30(図3(a−1)に図示)の表面張力が果肉13の自重(重力)よりも強いため、果肉13が保持面29に吸着する。次いで、Z方向搬送アーム21によりピックアップ部20を上方に移動させ、その後X方向搬送アーム22を駆動してZ方向搬送アーム21を載置台15上の容器14側に移動させる。そして、図3(a)、(a−1)に示すように、ピックアップ部20が容器14の上方に至ったら、同図(b)に示すように、図1に示すZ方向搬送アーム21によりピックアップ部20を下方(矢印D方向)に移動させ、容器14内のヨーグルト19に果肉13を付着させる。
【0054】
この際、果肉13は、ヨーグルト19に含まれた液体成分の表面張力及び粘性、並びに果肉13の自重(重力)により、ヨーグルト19に強力に吸着するため、図1に示すZ方向搬送アーム21を駆動させてピックアップ部20を上方に移動させようとすると、図3(b−1)に示すように、ヨーグルト19が果肉13に吸着して保持し、保持面29と果肉13との間の果汁30の表面張力に打ち勝ってこれらを引き離し、図3(c)、(c−1)に示すように、ピックアップ部20が上方(矢印T方向)に移動して、容器14内への果肉13の投入を完了する。
【0055】
図4(a)〜(c)は、果汁30の表面張力によって果肉13が保持面29に保持される原理を示すものである。図4(a)、(b)に示すように、液体30は、該液体30の分子30p、30p・・相互間で引力nがどの方向からも同じ強さの力で働いているため、分子30p、30p・・間で均衡を保っている。しかし、液体30の表面上にある分子30pは、他の分子30pに触れていない部分だけ分子30pの引力の影響を受けていないため、余ったエネルギーを持つことになり、これが表面張力として矢印方向Fの力が果肉13の自重(重力)よりも大きな力となり、同図(c)に示すように、保持面29に対し果肉13を吸着、保持させる。
【0056】
以上のように、本実施形態による食品搬送装置10によれば、果肉13を果汁30の表面張力によりピックアップ部20の保持面29に吸着させて搬送するものであるため、果肉13を適確に保持して素早く搬送することができる。また、果汁30の表面張力を利用した保持方法であるため、果肉13の味覚を損なうことがなく、更には果肉13の形状を崩したり傷つけたりすることなく確実に搬送することができるという効果を奏する。
【0057】
また、果肉13自体に含まれる果汁30及び保持面29に塗布された果汁30を用い、その表面張力を利用してピックアップ部20の保持面29に果肉13を吸着させることができるため、果肉13に余計な液体を含ませず果肉13を味覚に変化を生じさせることなく搬送することができるという効果が得られる。
【0058】
図5は、食品搬送装置10におけるピックアップ部20の変形例を示す図であり、図6は、ピックアップ部20Aを分解して示した斜視図である。
図5、図6に示すように、本変形例におけるピックアップ部20Aの基板27Aは、底面視、すなわち保持面29から視て略矩形に形成されており、ハンド部70、2枚の熱伝導シート71、71、ペルチェ素子72、保持枠73、及び放熱板74を備えている。
【0059】
ハンド部70は、金属等の熱伝導性の高い材料により底面視略矩形に形成されており、底面側に保持部28を取り付けている。ハンド部70の上面側には熱伝導シート71が配置されている。
【0060】
熱伝導シート71は、ハンド部70とペルチェ素子72との間、及びペルチェ素子72と放熱板74との間にそれぞれ配されるものであり、ハンド部70及び放熱板74と略同寸法の矩形に形成されている。熱伝導シート71の材料には、シリコン、アクリル、グラファイト等、又はこれらにセラミックもしくはアルミ等の金属を配合したものに、ゴム素材等を混合したものが用いられる。この熱伝導シート71は、シリコングリスをペルチェ素子72及びその保持枠73の両面72a、73a、72b、73bに塗布することにより代替することも可能である。
【0061】
ペルチェ素子72は、矩形形状のセラミック基板の片面に薄板状に形成された銅などの電極を接合した基板を2組、電極同士が対向するように配置し、銅などの電極の間に複数組みのP型とN型の熱伝素子を配置し、P型の素子が配された基板とN型の素子が配された基板のそれぞれにリード線75a、75bを配した、一般的なものである。ペルチェ素子72の電子回路は、図7に示すように、同時に切り替わるリレースイッチ85、86により電流の流れを変更させることができるようになっており、吸熱する基板と発熱する基板を切り替えられるようになっている。
【0062】
保持枠73は、底面視した外形がハンド部70及び熱伝導シート71と略同寸法の矩形形状で、ペルチェ素子72と略同寸法の厚さをもって形成されており、厚さ方向に貫通してペルチェ素子72を嵌合配置させる保持孔76が形成されている。保持孔76の内壁には、リード線75a、75bを挿通させ保持枠73の外方に導く挿通孔77a、77bが形成されている。
【0063】
放熱板74は、保持枠73と略同寸法の矩形で、上下方向に一定の厚みを有する略立方体形状に形成されている。放熱板74の側面74aには、上下方向に延在する長孔78、78・・が一方の側面から他方の側面に亘って貫通して形成され、ペルチェ素子72側から伝わった熱を該放熱板74の側壁面74a、74b・・及び各長孔78、78・・の内壁面78a、78a・・から放熱するようになっている。
【0064】
ハンド部70、熱伝導シート71、保持枠73、放熱板74の底面視した際の矩形四隅にはこれら全てにボルトを貫通させるボルト孔H、H・・が形成されている。
【0065】
ピックアップ部20Aの基板27Aは、上記各部材をハンド部70、熱伝導シート71、ペルチェ素子72及びその保持枠73、熱伝導シート71、放熱板74の順に配置し、それぞれの部材に形成されたボルト孔H、H・・に貫通するように図5に示すボルト80、80・・を挿通して、図1に示すブラケット31の壁部31bの下面に固定されている。また、ペルチェ素子72のリード線75a、75bは、保持枠73の挿通孔77a、77bからそれぞれ導出され、不図示の電源に接続されている。
【0066】
この際、ペルチェ素子72は、リード線75a、75bが接続された基板を放熱板74側に配置させるとともに、N型の素子からP型の素子に向かって電流が流れるように設定し、ペルチェ素子72に通電した際に、吸熱する基板がハンド部70側に接合されるように配置されている。
【0067】
上記のようにしてピックアップ部20Aの基板27Aを構成し、ペルチェ素子72に通電すると、ハンド部70及び保持部28の熱がペルチェ素子72により吸熱されて放熱板74側に移動し、放熱板74から放熱され、保持部28が冷却される。保持部28が冷却されると、図8(a)、(b)に示すように、保持面29付近の空気が冷却されて保持面29に結露し、保持面29に付着した結露水81が表面張力に利用される液体となる。
そこで、同図(c)に示すように、ピックアップ部20Aの保持面29を果肉13に当接させて、結露水81により吸着させ、ピックアップ部20Aを容器14に移動させた際に、ペルチェ素子72の電流回路を切り替えてペルチェ素子72のハンド部70側の基板を発熱させ、保持面29に付着した結露水81を蒸発させて、同図(d)に示すように、果肉13を容器14内に投入することができる。
【0068】
ピックアップ部20Aを備えた食品搬送装置10によると、果肉13に液体が十分に含まれていない場合であっても、保持面29に結露水81を発生させることができるため、果肉13を確実に搬送することができるという効果を奏する。特に、チョコレート等のように油脂の多い食品の場合には、その表面において水を弾きやすく水分を付着させ難いが、ピックアップ部20Aの保持面29において結露水81を発生させることができ、該結露水81が均一的な表面張力を有するため、上記のような食品をも確実に保持し搬送することが可能となるという効果を奏する。
【0069】
なお、本変形例においては、ペルチェ素子72により保持面29を冷却して結露水81を発生させることとしたが、保持面29と果肉13との間で表面張力を発生させる結露水81の生成方法はこれに限られるものではなく、表面が濡れていない状態で冷蔵庫に保管されていた食品を冷蔵庫から取り出し載置台15に載置して表面を結露させたり、載置台15上に置かれた常温の食品に冷気を吹きかけて冷却し該食品の表面を結露させたりしてもよい。
【0070】
図9(a)〜(c)は、本発明による食品搬送装置10における保持部28の変形例を示す図である。
【0071】
図9(a)に示すピックアップ部20Bは、基板27の下面に形成された保持部28の保持面29を粗面に形成したものである。このピックアップ部20Bにおいては、保持面29で果肉13を保持した状態において、果肉13との間の液体30の表面張力を図2に示す保持面29が平滑面とされているものに比べて弱く設定することができる。
【0072】
このピックアップ部20Bは、搬送対象である果肉13が例えばキウイ等のように水分量が多いものや、マンゴー等のように粘性を有しているものである場合、保持面29と果肉13との間に介在する液体30の表面張力が過剰に大きくなるのを抑制することができ、保持面29からの果肉13の解放をスムーズに行えるという効果が得られる。
【0073】
図9(b)に示すピックアップ部20Cは、基板27の下面に4つの保持部28、28・・を互いに離間させて形成したものである。
保持部28は、半球状に形成されたものであって、保持面29は下方へ膨出する球面とされている。
このピックアップ部20Cは、例えば、保持部28の保持面29を4つに分割する構成とし、更に保持面29を球面とすることによって、より液体30の表面張力を弱く設定することができる。
【0074】
図9(c)に示すピックアップ部20Dは、基板27の下面に4つの保持部28、28・・を互いに離間させて形成したものである。
保持部28は、円柱状に形成されたものであって、その保持面29は平滑面とされている。
このピックアップ部20Dは、上記の各変形例と同様に、液体30の表面張力を弱く設定することができる。
【0075】
図9(a)〜(c)においては、保持面29の形状によって、該保持面29における液体30の表面張力を弱める場合について例示したが、保持面29における液体30の表面張力を強める場合には、例えば保持面29をより平滑にしたり、鏡面仕上げにしたりすればよい。
【0076】
また更に、保持面29と果肉13との間の表面張力は、保持面29に付着させる果汁30の量を適宜変更することによっても調整することができる。
【0077】
上記のとおり、保持面29における液体30の表面張力は、該保持面29の面積や表面粗さ等を適宜組み合わせて設定したり、液体30の量を設定したりすることで調整することが可能となる。したがって、例えば、保持面29を鏡面仕上げにして表面張力を強力にすることにより、保持面29に果汁等の液体30を塗布することを省くことも可能である。この場合、保持面29に液体30を塗布しないことにより、食品搬送機10をシンプルに構成することができるとともに、果肉13又は容器14内の飲食用充填物19の味に変更を来たすことなく果肉13を投入することができるという効果が得られる。
【0078】
なお、保持面29に塗布する液体30として、上記の実施形態においては果肉13と同じ果汁を用いたが、これに限られるものではなく、果肉13及び容器14内に充填された食品充填物19を追加的に調味し得る液体や、これらの品質を維持させ得る成分を適宜含むものであってもよい。
【0079】
図10〜図17は、本発明による食品搬送装置10のピックアップ部20から果肉13を解放する方法の変形例を示す図である。
図10(a)〜(c)に示す第1の変形例は、前述した図3に示す実施の形態において、果肉13の解放を容器14側を移動させて行うように変更したものである。
【0080】
前述した実施の形態においては、図3に示すように、ピックアップ部20を移動して果肉13を容器14内のヨーグルト19の表面に接触させるものであるが、この変形例においては、図10(a)〜(c)に示すように、上下方向に移動するように構成された移動プレート40上にヨーグルト19が充填された容器14を載置し、果肉13を搬送するピックアップ部20の移動を、容器14の上方位置Sで停止させ、その後移動プレート40を上方(矢印T方向)に移動させて果肉13に対しヨーグルト19の表面を接触させ、その後移動プレート40を下方(矢印D方向)に移動させて容器14をピックアップ部20から離間させるようにしたものである。
このように容器14側を移動させることによっても保持部28の保持面29から果肉13を解放することができる。
【0081】
図11(a)〜(c)及び(a−1)〜(c−1)に示す第2の変形例は、容器14内の飲食用充填物19を例えば果実ジュースのような粘性が低いものとした場合にも好適なものであり、同図(a)、(a−1)に示した状態のピックアップ部20を、同図(b)に示すように下方(矢印D方向)に移動させて保持部28に保持された果肉13を、果実ジュース19の表面から一定寸法下方の位置まで挿入し、同図(c)、(c−1)に示すように、ピックアップ部20を再び上方(矢印T方向)に移動させて保持面29から果肉13を離間させたものである。
【0082】
この変形例においては、果肉13及び保持面29が果実ジュース19中に浸けられるので、同図(b−1)に示すように、保持面29と果肉13との間に果実ジュース19が侵入することにより保持面29からの果肉13の離脱をよりスムーズに行うことができる。
【0083】
また、この変形例は、飲食用充填物19を粘性が高いヨーグルトやゼリー等とした場合にも適用可能であり、この場合、飲食用充填物19内の所望の位置にて果肉13を解放することも可能となるという効果が得られる。
【0084】
図12(a)〜(c)に示す第3の変形例は、前述した図11に示す果肉13の解放の方法において、該果肉13の解放を容器14側を移動させて行うように変更したものである。
【0085】
すなわち、図11で示した果肉13の解放の方法では、ピックアップ部20で保持した果肉13を、ピックアップ部20を移動して容器14内の果実ジュース19内に挿入するものであるが、この変形例においては、図12(a)〜(c)に示すように、上下方向に移動するように構成された移動プレート40上に容器14を載置し、果肉13を搬送するピックアップ部20の移動を、容器14の上方位置Sで停止させ、移動プレート40を上方(矢印T方向)に移動させてピックアップ部20を果実ジュース19内に進入させ、その後移動プレート40を下方(矢印D方向)に移動させて容器14をピックアップ部20から離間させるようにしたものである。
このように容器14側を移動させることによっても保持部28の保持面29から果肉13を解放することができ、上述した変形例と同様の効果が得られる。
【0086】
図13(a)〜(c)及び(b−1)に示す第4の変形例は、ピックアップ部20に保持された果肉13を当接部材41によって解放するようにしたものである。
この例において、食品搬送装置10は、同図(a)に示すように、果肉13の解放位置Bの上方に当接部材41を備えており、果肉13を容器14に投入する際には、果肉13を保持したピックアップ部20を、果肉13が当接部材41の側方に至るまで下降させ、その後、同図(b)、(b−1)に示すように搬送方向を当接部材41方向に切り替え、果肉13を当接部材41に当接させて保持面29から解放し、下方へ落下させて、同図(c)に示すように容器14内に投入するように構成されている。
【0087】
この変形例によれば、解放位置Bの上方に当接部材41が配設されており、当接部材41をピックアップ部20に保持された果肉13に当接させて解放させるため、果肉13の解放が容易であるとともに、ピックアップ部20の保持面29と果肉13との間の果汁30の表面張力を当接部材41を当接させれば解除できる程度まで高めることができ、その結果、果肉13をより強力にピックアップ部20に保持させることが可能となり、搬送動作を速めて搬送をより素早く行うことができるという効果を奏する。
【0088】
なお、上記当接部材41は、ピックアップ部20の側方に具備されたものであってもよく、この場合には、ピックアップ部20を容器14の上方に移動させた後に当接部材41を移動又は回動させて果肉13を保持面29から解放することになる。
【0089】
図14(a)〜(c)及び(b−1)に示す第5の変形例は、ピックアップ部20に保持された果肉13を容器14に当接させて解放するようにしたものである。
すなわち、この変形例においては、同図(a)に示す果肉13を保持したピックアップ部20を、同図(b)に示すように容器14に向けて(矢印D1方向に)下降させ、ピックアップ部20に保持された果肉13を容器14の開口部32内に進入させる。
【0090】
容器14の開口部32内は、ヨーグルト19の表面の上方に空間Rを有しており、ピックアップ部20は、果肉13が空間R内に位置したときに搬送方向を容器14の内壁14aに向かって水平方向(矢印D2方向)に切り替え、同図(b−1)に示すように、空間R内において果肉13を容器14の内壁14aに当接させて保持面29から解放させる。
果肉13は、同図(c)に示すように、保持面29から解放されて下方へ落下し、容器14内のヨーグルト19内に沈静する。
【0091】
この変形例によれば、ピックアップ部20に保持された果肉13を開口部32内にて容器14に当接させて、すなわち果肉13に外力を加えて該果肉13をピックアップ部20から解放させるため、果肉13の解放が容易であるとともに、ピックアップ部20の保持面29と果肉13との間の果汁30の表面張力を前記外力を加えれば解除できる程度まで高めることができ、その結果、果肉13をより強力にピックアップ部20に保持させることが可能となり、搬送をより素早く行うことができるという効果が得られる。
また、果肉13を解放する個別の部材を用いることなく果肉13を容器14内に容易に解放することができ、装置をシンプルに構成すことができるという効果が得られる。
【0092】
図15(a)〜(c)及び(b−1)に示す第6の変形例は、前述した図14に示す果肉13の解放の方法において、該果肉13の解放を容器14側を移動させて行うように変更したものである。
【0093】
すなわち、図14で示した果肉13の解放の方法では、容器14に対してピックアップ部20を移動させるようにしたが、この変形例においては、図15(a)〜(c)に示すように、上下方向に移動するように構成された移動プレート40上に容器14を載置し、果肉13を搬送するピックアップ部20の移動を、同図(a)に示すように、容器14の上方位置Sで停止し、その後、同図(b)、(b−1)に示すように、移動プレート40を上方(矢印T1方向)に移動させてピックアップ部20の果肉13を容器14の空間部R内に進入させ、その後移動プレート40の搬送方向を水平方向(矢印T2方向)に切り替え、容器14の壁部14aを果肉13に当接させて該果肉13を保持面29から解放させ、同図(c)に示すように、移動プレート40を下方(矢印D方向)に移動させて容器14をピックアップ部20から離間させるようにしたものである。
この変形例によっても、上記第5の変形例と同様の効果が得られる。
【0094】
図16(a)〜(c)及び(a−1)〜(c−1)に示す第7の変形例は、ピックアップ部20の保持部28内に複数の流体流路45、45・・を形成するとともに、この流体流路45、45・・を保持面29に開口させておき、この流体流路45、45・・に不図示の流体供給源から流体33として果汁を供給可能にしたものである。このピックアップ部20は、果肉13の吸着時には、同図(a)、(a−1)に示すように、保持面29に果肉13を吸着させる液体を供給し、果肉13の投下時には、同図(b)、(b−1)に示すように、果汁33を保持面29と果肉13との間に更に供給して果肉13を解放するようにしたものである。
【0095】
この変形例によると、果肉13を保持面29に吸着させるための液体の供給が容易となる。また、果肉13に外力を加えることなく、流体33の注入により保持面29と果肉13との間の果汁33の表面張力を弱めて果肉13を解放するため、解放が容易であるとともに、果肉13の外見的又は味覚的な品質をほとんど損なうことなく投入することが可能となるという効果が得られる。
【0096】
この第7の変形例では流体33として果汁を用いたが、容器14内の充填物のヨーグルト19と同一の流体33を使用してもよく、これにより、容器14内に果肉13及び流体33が投入された場合にも、流体33によって味覚の変化が生じにくくなる等の効果が得られる。
【0097】
又は、流体33として気体を使用してもよく、この場合にも上記と同様の効果が得られる上に、流体流路45に液体又は半液体のものを通さないため、ピックアップ部20の該流体流路45の手入れが行いやすくなるという効果が得られる。
【0098】
図17に示す第8の変形例は、ピックアップ部20内に流体流路45を形成する点で上記の第7の変形例と同一であり、流体流路45を単孔とした点において異なる。
この変形例では、流体流路45の流体33の流れる方向に直交する方向の断面積を大とする等、流体流路45の寸法を適宜調整することができる。流体流路45の断面積が大きい場合には、流体33の粘性が大きいであっても流体流路45に流体33を詰まらせずに円滑に注出することが可能となるとともに、該流体流路45の清掃等が行いやすいという効果が得られる。
【0099】
また、この変形例においても、上記第7の変形例と同様に、流体33として気体を使用してもよく、この場合、流体流路45に液体又は半液体のものを通さないため、該流体流路45の手入れが行いやすくなるという効果が得られる。
【0100】
図18は、本発明による食品搬送装置10Aを用いて構成された容器内充填食品の製造装置50の一実施形態を示す図である。
この図に示された容器内充填食品の製造装置50は、前述した食品搬送装置10と基本的な構成を共通にした食品搬送装置10A、並列に設置された2つのベルトコンベア51、52とを備えている。
【0101】
ベルトコンベア51は、小塊にカットされた果肉13を搬送するものである。
このベルトコンベア51は、矢印L1方向に間歇的に移動して、無端ベルト53の幅方向に間隔をおいて2つずつ配置される果肉13、13・・を順次搬送する。
【0102】
ベルトコンベア52は、充填物19として、例えばヨーグルトが充填された容器14を搬送するものである。
このベルトコンベア52は、矢印方向L2に間歇的に移動して無端ベルト54の幅方向に間隔をおいて2つずつ配置される容器14、14・・を順次搬送する。
【0103】
ベルトコンベア51、52間には、これらの間に跨るように食品搬送装置10Aが配設されている。
【0104】
食品搬送装置10Aは、その基本構成が図1に示す食品搬送装置10と略同様であり、Z方向搬送アーム21と、X方向搬送アーム22と、Z方向搬送アーム21のブラケット31に支持されたピックアップ部20a、20bとを備えている。
【0105】
X方向搬送アーム22は、ベルトコンベア51、52に跨って、これらベルトコンベア51、52の幅方向に直交する方向に配設されている。
このX方向搬送アーム22には、Z方向搬送アーム21が移動可能に支持されており、Z方向搬送アーム21は、ベルトコンベア51の上方とベルトコンベア52の上方との間を移動することができる。
【0106】
この食品搬送装置10Aは、図1に示す装置と異なる構成として、ブラケット31の壁部の下面に2つのピックアップ部20a、20bを備えている。
この食品搬送装置10Aは、図1に示す装置と同様に、サーボモータ24を駆動させることによってピックアップ部20a、20bがZ方向搬送アーム21に沿って上下方向に移動し、サーボモータ26を駆動させることによってZ方向搬送アーム21がX方向搬送アーム22に沿って水平方向に移動する。
【0107】
この容器内充填食品の製造装置50においては、ベルトコンベア51に順次果肉13が供給される一方、ベルトコンベア52に順次ヨーグルト19が充填された容器14が供給される。
これら果肉13、13、容器14、14は、食品搬送装置10Aに向かって一方向(L1、L2方向)に搬送される。
【0108】
食品搬送装置10Aにおいて、2つのピックアップ部20a、20bは、ベルトコンベア51上の果肉13、13を吸着し、その後一定寸法上昇する。そして、これらのピックアップ部20a、20bは、Z方向搬送アーム21がX方向搬送アーム22に沿って移動することによりベルトコンベア52上に至り、その後下降して容器14、14内に進入し、果肉13、13を解放して容器14、14内に投入した後上昇し、ベルトコンベア51上に移動して元の位置に戻る。
【0109】
上記の動作において、ピックアップ部20a、20bへの果肉13、13の吸着、ピックアップ部20a、20bからの果肉13、13の解放は、図1〜図4に示す実施の形態と同様に行われる。
【0110】
かくしてこの容器内充填食品の製造装置50においては、ピックアップ部20a、20bで果肉13、13を果汁等の不図示の液体により保持して搬送し、容器14、14内に投入するので、果肉13、13の果汁の減少を来たしたり、果肉13、13の変形、果肉13、13に傷を付けたりすること等が防止され、果肉13、13を適確にヨーグルト19の充填された容器14、14内に投入することができ、高品質の容器内充填食品を製造することができる。
【0111】
上記実施形態においては、ピックアップ部20a、20bを一つだけ並列させた構成としたが、2以上のピックアップ部を一列に並列させたものを前後に複数列設け、一回の搬送によって効率よく容器内充填食品を製造可能にしたものであってもよい。
また、容器用のベルトコンベア52の左右に2台の果肉用ベルトコンベア51、51および2台の食品搬送装置10A、10Aを配置し、この2つを同時に使って果肉13を搬送する態様であってもよい。
さらに、ピックアップ部20a、20bとして、例えば図9(c)に示す形状のものを採用し、図9(c)における4つの保持部28の一つ一つに対して果肉13を1つずつ吸着し、一度に4つの果肉13を搬送する態様とすることもできる。
【0112】
なお、本実施形態においては、容器内充填食品の製造装置50に、図1〜4に示す食品搬送装10と基本的構成を同様とする食品搬送装置10Aを用いたが、食品搬送装置10Aに、図9(a)〜(c)に示したピックアップ部20の保持面29の変形例、その他の保持面の変形例、並びに図10〜図17によって説明した果肉13の解放方法の変形例を適宜組み合わせて適用してもよい。
【0113】
また、図1〜図4に示す実施の形態、及び図18に示す実施の形態においては、食品搬送装置10Aの構成としてピックアップ部20をサーボモータ24、26及び駆動機構により移動させる構成としたが、Z方向搬送アーム21に対するピックアップ部20の移動、及びX方向搬送アーム22に対するZ方向搬送アーム21の移動をリニアモータにより移動させるよう構成してもよい。
さらに、本発明の実施形態においては、X方向搬送アーム22とZ方向搬送アーム21とを同時に動かし、例えば保持面29を円弧状に移動させることによって、搬送時間を短縮することもできる。また、X方向搬送アーム22とZ方向搬送アーム21のほかに、X方向と水平に直交するY方向搬送アームを備えることにより、立体的に搬送することも可能である。この場合、XYZ方向の搬送アームに替えてロボットアームを採用してもよい。
【0114】
次に、食品搬送装置10Aを用いて構成された容器内充填食品の製造装置50の変形例について図19、図20を用いて説明する。
本変形例における容器内充填食品の製造装置60は、上記の容器内充填食品の製造装置50と略同一の構成であるが、ベルトコンベア52に替えて、リテーナコンベア61によって構成されている。
【0115】
図19に示すように、リテーナコンベア61は、平行に設置された2つの周回するチェーン(不図示)に跨ってリテーナ62が複数隣接配置された構成とされ、全体が帯状になるように形成されている。
【0116】
リテーナ62は、長板状に形成され、厚み方向に貫通する2つの容器保持孔(容器保持部)63、63を備えている。該容器保持孔63には、容器14を係止させて保持できる径寸法に形成されている。
【0117】
上記の構成において、リテーナ62は、チェーンの回動に伴って間歇的に移動し、不図示の容器ストッカから供給された容器14を水平方向に間歇的に移動させ、食品搬送装置10Aのピックアップ部20の下方において一時停止した際に、果肉13を投入させ、その後再び移動するように動作する。
【0118】
容器内充填食品の製造装置60において、図10、図15等にて示された変形例ように、ピックアップ部20に容器14を接近させて果肉13を容器14内に投入する場合には、リテーナ62に保持された容器14の下方に昇降台(不図示)を配置し、果肉13を保持したピックアップ部20の下方で昇降台を持ち上げることにより、図20に示すように、容器14を上方に移動させ、果肉13に容器14内の液体19を浸けたり容器14の壁部に果肉13を当接させたりして投入することができる。
【0119】
本変形例において、食品搬送装置10Aは、容器内充填食品の製造装置50の場合と同様に作動し果肉13を搬送するが、本変形例の容器内充填食品の製造装置60によれば、リテーナ62の容器保持孔63に容器14を嵌合させて容器14を搬送することができる。したがって、リテーナコンベア61における容器14の位置決めが確実で、容器14の停止位置が常に正確となり、より確実に果肉13を容器14に投入することが可能となるという効果を奏する。
【0120】
また、図20に示したように、容器14をピックアップ部20側に近接させ、果肉13を容器14内の液体19に接触させて投入したり、果肉13を容器14の壁部に当接させて投入したりする場合においても、容器14がリテーナ62の容器保持孔63内に嵌合配置されているため、容器14がぐらついて転倒したりすることなく、確実に果肉13を投入することが可能となるという効果を奏する。
【0121】
なお、容器内充填食品の製造装置60においては、容器14を搬送するコンベアをリテーナコンベア61とし、果肉13を搬送するコンベアをベルトコンベア51としたが、果肉13を搬送するコンベアについてもリテーナコンベアを用い、リテーナに果肉13を載置する凹部を形成したものとしてもよい。
【0122】
かかる構成とした場合、コンベアに搬入される果肉13がリテーナの凹部に載置されることにより、果肉13のリテーナコンベアにおける位置決めひいては食品搬送装置10Aに対する位置決めが確実となるため、果肉13の食品搬送装置10Aによるピックアップがより確実となるという効果を奏する。
【0123】
なお、本実施形態においても、容器内充填食品の製造装置50と同様に食品搬送装置10Aを適宜変更し、前述した変形例の効果を発揮し得る構成とすることができる。
【符号の説明】
【0124】
10 食品搬送装置
13 果肉(食品)
14 容器
19 ヨーグルト,果実ジュース(飲食用充填物)
20 ピックアップ部
29 保持面
30 果汁(液体)
32 開口部
33 流体
A 保持位置
B 解放位置
41 当接部材
45 流体流路
果汁(流体)
51 ベルトコンベア(載置部)
52 ベルトコンベア(載置部)
72 ペルチェ素子
81 結露水
62 リテーナ
61 リテーナコンベア
63 容器保持孔(容器保持部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形又は半固形の食品をピックアップ部により保持して搬送する食品の搬送方法であって、
前記ピックアップ部の保持面に液体を介在させて前記食品を吸着させ、
前記保持面に前記食品を前記液体の表面張力により保持させた状態で前記ピックアップ部を移動させ、
前記食品を搬送することを特徴とする食品の搬送方法。
【請求項2】
請求項1に記載の食品の搬送方法において、
前記液体が前記食品自体に含まれる液体であることを特徴とする食品の搬送方法。
【請求項3】
請求項1に記載の食品の搬送方法において、
前記液体が前記保持面に結露した結露水であることを特徴とする食品の搬送方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の食品の搬送方法を使用した容器内充填食品の製造方法であって、
上方が開口部とされた容器内に液体成分を含む飲食用充填物を充填しておき、
前記ピックアップ部と前記容器とを相対移動させることにより、
前記ピックアップ部に保持された前記食品を前記開口部から前記容器内の飲食用充填物の表面に接触させ、
前記ピックアップ部と前記容器とを離間させて前記液体成分の表面張力により前記食品を前記ピックアップ部から解放して前記容器内に投入することを特徴とする容器内充填食品の製造方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の食品の搬送方法を使用した容器内充填食品の製造方法であって、
上方が開口部とされた容器内に液体成分を含む飲食用充填物を充填しておき、
前記ピックアップ部と前記容器とを相対移動させることにより、
前記ピックアップ部に保持された前記食品を前記開口部内にて前記容器に当接させることにより、
前記食品を前記ピックアップ部から解放して前記容器内に投入することを特徴とする容器内充填食品の製造方法。
【請求項6】
固形又は半固形の食品をピックアップ部により保持して搬送する食品搬送装置であって、
前記ピックアップ部は、液体を介在させて該液体の表面張力により食品を保持する保持面を備え、
前記ピックアップ部を、前記食品を前記保持面に保持する保持位置と前記保持面から解放する解放位置との間で移動させる駆動機構を備えていることを特徴とする食品搬送装置。
【請求項7】
請求項6に記載の食品搬送装置において、
前記ピックアップ部は、前記保持面を冷却して結露水を生じさせるペルチェ素子を備えていることを特徴とする食品搬送装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の食品搬送装置において、
前記保持面に凹凸が形成されていることを特徴とする食品搬送装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項に記載の食品搬送装置において、
前記保持面が複数に分割されていることを特徴とする食品搬送装置。
【請求項10】
請求項6、8、9のいずれか1項に記載の食品搬送装置において、
前記ピックアップ部には、その内部を通って前記保持面に開口する流体流路が形成され、
前記流体流路に流体を供給する流体供給源が備えられ、
前記保持面に保持された食品を前記流体流路に供給する流体により該保持面から解放可能とすることを特徴とする食品搬送装置。
【請求項11】
請求項6から10のいずれか1項に記載の食品搬送装置において、
前記解放位置には、前記ピックアップ部の移動時に、前記保持面に保持された食品が当接して該食品を前記保持面から解放する当接部材が配設されていることを特徴とする食品搬送装置。
【請求項12】
請求項6から11のいずれか1項に記載の食品搬送装置を備えた容器内充填食品の製造装置であって、
前記解放位置に移動した前記ピックアップ部の下方に位置させて、
上方が開口部とされ、その内部に飲食用充填物が充填された容器を載置する載置部が設けられていることを特徴とする容器内充填食品の製造装置。
【請求項13】
請求項12に記載の容器内充填食品の製造装置において、
前記載置部は、複数の前記容器を順次前記ピックアップ部の下方へ間歇的に搬送するベルトコンベアであることを特徴とする容器内充填食品の製造装置。
【請求項14】
請求項12に記載の容器内充填食品の製造装置において、
前記載置部は、前記容器を保持する容器保持部が形成されたリテーナが複数連結され、複数の前記容器を前記ピックアップ部の下方へ順次間歇的に搬送するリテーナコンベアであることを特徴とする容器内充填食品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−35860(P2012−35860A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176536(P2010−176536)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【Fターム(参考)】