説明

飲料用容器型振動測定装置および飲料用容器の振動測定方法

【課題】複数の搬送用コンベアを連結して構成された搬送ライン上にて搬送される飲料用容器に対して、搬送の際に付加される振動レベルを測定して、測定された振動データに基づいて搬送ラインにおける問題箇所を容易に特定可能とする。
【解決手段】搬送ライン上にて搬送される複数の飲料用容器と実質的に同じ形状の外殻を有する容器本体と、容器本体の内側に固定された振動検出用センサおよび振動検出用センサにより測定された振動データを記憶するデータ記憶部とを備える飲料用容器型振動測定装置を、搬送ラインにて搬送させ、搬送の際に容器本体に付加される振動を振動検出用センサにより測定するとともに、測定された振動データを搬送位置の情報と関連付けてデータ記憶部に記憶させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用容器に対する洗浄処理や飲料充填処理を行う製造ライン等において、飲料用容器を搬送する際に付加される振動を測定する方法および振動測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような飲料用容器に対する洗浄処理や飲料充填処理等を行う製造ラインでは、例えば、複数の搬送用コンベアが連結して構成された搬送ライン(コンベアライン)が用いられて、搬送ラインによる飲料用容器の搬送が行われる。製造ラインにおいて、搬送ライン上に供給配置された複数の飲料用容器が連続的に搬送されて、飲料用容器の内面・外面に対する洗浄処理工程や飲料充填処理工程を経由して、飲料用容器が製品として出荷される。
【0003】
このような飲料の製造ラインでは、品質管理の観点からも、搬送ラインにより連続的に搬送される飲料用容器の状態を把握する必要がある。そのため、例えば、ビールの製造ラインでは、飲料用容器の一例である個々のビール樽容器にバーコードやIDタグなどを貼り付けて、ビール樽容器の搬送経路などの管理を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−311782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなビール樽容器の搬送ラインでは、搬送用コンベアにおいて経時的にコンベア摩耗が生じ、特にコンベア同士の連結部分(渡り部分)等では、段差や速度差が生じる。このような場合にあっては、ビール樽容器は連結部分を通過する際に、ビール樽容器に対して振動や衝撃が付加され、その程度によっては、ビール樽容器より中身製品の漏洩(樽漏れ)やビール樽容器の転倒(樽倒れ)が発生する場合がある。また、このような樽漏れや樽倒れが生じない場合であっても、ビール樽容器自体が損傷(凹み、傷など)する場合もある。
【0006】
このような樽漏れや樽倒れの問題は、ビール樽容器に貼り付けられたバーコードやIDタグを用いて搬送経路の管理を行うことだけでは解決することが困難である。そのため、従来においては、このような問題が発生した場合、搬送ラインにおいてコンベア段差などの発生要因となる箇所をオペレータが推定し、1箇所ずつ人手で測定調査した後に、問題箇所の特定と解決を図る方法が採られている。このような方法では、調査と解決に手間と時間を要し、また、問題箇所の特定には、熟練オペレータの経験が必要とされるという問題もある。
【0007】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、複数の搬送用コンベアを連結して構成された搬送ライン上にて搬送される飲料用容器に対して、搬送の際に付加される振動レベルを容易に測定することができ、搬送ラインにおける問題箇所を特定することができる飲料用容器型振動測定装置および飲料用容器の振動測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0009】
本発明の第1態様によれば、複数の搬送用コンベアを連結して構成された搬送ライン上にて搬送される複数の飲料用容器と実質的に同じ形状の外殻を有する容器本体と、容器本体の内側に固定され、搬送の際に容器本体に付加される振動を検出する振動検出用センサと、容器本体の内側に固定され、振動検出用センサにより測定された振動データを時間と関連付けて記憶するデータ記憶部と、容器本体の内側に固定され、振動検出用センサおよびデータ記憶部を機能させるための電力を供給する電源とを備えることを特徴とする、飲料用容器型振動測定装置を提供する。
【0010】
本発明の第2態様によれば、飲料用容器はビール樽容器であり、密閉された容器本体内に、振動検出用センサ、データ記憶部、および電源が配置されている、第1態様に記載の飲料用容器型振動測定装置を提供する。
【0011】
本発明の第3態様によれば、容器本体の底部内壁の略中央に振動検出用センサが固定され、振動検出用センサは、搬送の際に容器本体の底部を介して容器本体に対して付加される上下方向の振動を検出する、第2態様に記載の飲料用容器型振動測定装置を提供する。
【0012】
本発明の第4態様によれば、容器本体の側壁に振動検出用センサが固定され、振動検出用センサは、搬送の際に容器本体に対して付加される水平方向の振動を検出する、第2態様に記載の飲料用容器型振動測定装置を提供する。
【0013】
本発明の第5態様によれば、飲料用容器型振動測定装置の重量が、規定量のビールが充填されたビール樽容器の重量と同じとなるように、重量調整用の重り部材が容器本体内に配置されている、第2態様から第4態様のいずれか1つに記載の飲料用容器型振動測定装置を提供する。
【0014】
本発明の第6態様によれば、データ記憶部に記憶された振動データを、容器本体の外部へ送信する有線または無線の通信装置が、容器本体内にさらに備えられている、第2態様から第5態様のいずれか1つに記載の飲料用容器型振動測定装置を提供する。
【0015】
本発明の第7態様によれば、複数の搬送用コンベアを連結して構成された搬送ライン上にて搬送される複数の飲料用容器と実質的に同じ形状の外殻を有する容器本体と、容器本体の内側に固定された振動検出用センサおよび振動検出用センサにより測定された振動データを記憶するデータ記憶部とを備える飲料用容器型振動測定装置を、搬送ラインにて搬送させ、搬送の際に容器本体に付加される振動を振動検出用センサにより測定するとともに、測定された振動データを搬送位置の情報と関連付けてデータ記憶部に記憶させることを特徴とする、飲料用容器の振動測定方法を提供する。
【0016】
本発明の第8態様によれば、飲料用容器はビール樽容器であって、密閉された容器本体内に振動検出用センサおよびデータ記憶部が配置された樽型振動測定装置を、搬送ラインにて搬送させる、第7態様に記載の飲料用容器の振動測定方法を提供する。
【0017】
本発明の第9態様によれば、樽型振動測定装置において、振動検出用センサが容器本体の底部内壁の略中央に固定され、搬送の際に容器本体の底部を介して容器本体に対して付加される上下方向の振動を測定する、第8態様に記載の飲料用容器の振動測定方法を提供する。
【0018】
本発明の第10態様によれば、樽型振動測定装置において、振動検出用センサが容器本体の側壁に固定され、複数のビール樽容器とともに樽型振動測定装置を搬送ラインにて搬送させて、搬送の際に容器本体に対して付加される水平方向の振動を検出する、第8態様に記載の飲料用容器の振動測定方法を提供する。
【0019】
本発明の第11態様によれば、データ記憶部に記憶された振動データが、振動許容値を超えているか否かを判断し、振動許容値を超えた場合に警報を出力する、第8態様から第10態様のいずれか1つに記載の飲料用容器の振動測定方法を提供する。
【0020】
本発明の第12態様によれば、搬送ラインは、少なくともビール樽容器に対する洗浄処理工程およびビール充填処理工程に対して複数のビール樽容器を搬入および搬出するラインであって、複数のビール樽容器とともに樽型振動測定装置を洗浄処理工程およびビール充填処理工程に搬送する際における振動データを連続的に測定する、第8態様から第11態様のいずれか1つに記載の飲料用容器の振動測定方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、振動検出用センサ、データ記憶部、および電源が容器本体の内側に固定され、容器本体の外殻が飲料用容器と実質的に同じ形状に形成されている。したがって、搬送ライン上において飲料用容器型振動測定装置を搬送させることで、容器本体に対して付加される振動を振動検出用センサにより測定し、測定された振動データを搬送位置と関連付けてデータ記憶部に記憶させることができる。特に、容器本体の外殻が飲料用容器と実質的に同じ形状に形成されているため、測定された振動データを用いて、製品である飲料用容器に対して実際に付加される振動レベルを把握することができる。また、データ記憶部では、測定時間に関連付けて振動データが記憶されているため、許容値を超過している振動データの測定時間に基づいて、搬送ラインにおける問題発生箇所(搬送位置)を特定することができる。したがって、搬送ラインにおいて容器倒れなどの搬送トラブルが発生する可能性がある箇所を、振動データを解析することで容易に特定することができる。よって、搬送過程において生じる飲料用容器の損傷や内容物の漏洩などのトラブルを防止することができる、あるいは搬送トラブル対応を迅速に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一の実施形態にかかるビール樽型振動測定装置の模式外観図(蓋閉止状態)
【図2】本実施形態のビール樽型振動測定装置の模式外観図(蓋開放状態)
【図3】本実施形態のビール樽型振動測定装置の容器本体の内部空間における底部拡大図
【図4】ビールの製造工程の搬送ラインにおいてビール樽容器とともに本実施形態のビール樽型振動測定装置が搬送されている状態の模式図
【図5】ビール樽型振動測定装置により測定された振動データの一の実施例を示すグラフ
【図6】ビール樽型振動測定装置により測定された振動データの別の実施例を示すグラフ(通常搬送状態)
【図7】ビール樽型振動測定装置により測定された振動データの別の実施例を示すグラフ(樽漏れ発生)
【図8】ビール樽型振動測定装置により測定された振動データの別の実施例を示すグラフ(樽倒れ発生)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
本発明の一の実施形態にかかる飲料用容器型振動測定装置の一例であるビール樽型振動測定装置10の模式外観図を図1に示し、ビール樽型振動測定装置10の蓋を取り外した状態の模式外観図を図2に示す。
【0025】
図1および図2から明らかなように、本実施形態では、飲料用容器の一例としてビール樽容器が搬送される搬送ラインにおいて、搬送の際にビール樽容器に対して付加される振動を計測するビール樽型振動測定装置10について説明する。
【0026】
図1および図2に示すように、ビール樽型振動測定装置10は、製品であるビールが充填されて出荷されるビール樽容器と実質的に同じ外殻を有する容器本体11と、容器本体11の内側に固定されて、容器本体11が搬送される際に容器本体11に付加される振動を検出する振動検出用センサ12とを備えている。さらにビール樽型振動測定装置10の内側には、振動検出用センサ12により測定された振動データを、測定時間と関連付けて記録するデータ記録部13と、振動検出用センサ12およびデータ記録部13を電気的に機能させるために必要な電力を供給する電源であるバッテリー14とが固定されている。なお、このようなビール樽容器としては、例えば、10L樽容器、20L樽容器、30L樽容器などが流通しており、本実施形態では、20L樽容器を例として説明する。
【0027】
図2に示すように、容器本体11の内部空間では、複数のブラケット(固定部材)15を介して、データ記録部13およびバッテリー14が容器本体の円筒状の内壁に固定されている。また、図3に示す容器本体11の内部空間における底部拡大図に示すように、振動検出用センサ12は、容器本体11の底部16の内壁面の略中央に固定されている。なお、振動検出用センサ12、データ記録部13、およびバッテリー14は、電力供給用あるいは信号伝送用の複数のケーブル17により互いに電気的に接続されている。
【0028】
また、図1および図2に示すように、容器本体11の側面(円筒周面)には、各装置の取り付けおよびメンテナンス用の開口部18が設けられており、この開口部18は蓋19により閉止(密閉)可能とされている(図1参照)。また、容器本体11の上部には、ビール樽型振動測定装置10を手動にてハンドリングするための取っ手20が設けられている。
【0029】
ビール樽型振動測定装置10に用いられている振動検出用センサ12としては、例えば、一方向における振動を検出するセンサが用いられ、このようなセンサとしては圧電型加速度ピックアップセンサがある。圧電型加速度ピックアップセンサは、圧電素子をサイズモ系のばねとして用い、また同時に機械電気変換素子として用いられるセンサである。このようなセンサでは、一の方向において生じた振動加速度に比例した電気信号を測定データとして出力する。また、圧電型加速度ピックアップセンサは、圧電素子への力の加わり方の違いにより、圧縮型とせん断型(シェア型)との2種類に大別される。圧縮型は、センサのベースと重りとの間に圧電素子を挟み込んだ構造が採用されており、シェア型は、ベースに対して垂直に立てられたポストと重りとの間に圧電素子を固定した構造が採用されている。本実施形態の振動検出用センサ12としては、ベース歪みや急激な温度変化の影響が少ないシェア型を用いることが好ましい。なお、本実施形態のビール樽型振動測定装置10では、容器本体11の円筒の長手方向(上下方向)における振動を測定するように振動検出用センサ12が取り付けられている。
【0030】
このような構成のビール樽型振動測定装置10では、容器本体11に対して付加された検出方向(上下方向)の振動を振動検出用センサ12により測定し、測定された振動データを振動加速度に比例した電気信号としてデータ記録部13に出力して、データ記録部13にて振動データが測定時間と関連付けられて連続的に記録(記憶)される。オペレータが記録された振動データを確認したい場合には、蓋19を取り外して開口部18と通じてデータ記録部13にアクセスして、必要な振動データを確認する、あるいは取り出すことができる。なお、データ記録部13は、振動データを電子データとして電気的に保持(記憶)するような場合の他、振動データをシート等に記録するような場合であってもよい。
【0031】
次に、このようなビール樽型振動測定装置10を用いて、ビール樽容器を用いたビールの製造工程(製造ライン)にて、ビール樽容器に対して付加される振動を測定する方法について説明する。
【0032】
図4の模式図に示すように、ビールの製造工程では、複数台の搬送用コンベア22が互いに連結されて、複数のビール樽容器21を連続的に搬送する搬送ライン23が形成されている。このような搬送ライン23では、例えば、ビール樽容器21の内面・外面に対して洗浄処理工程を行う洗浄処理装置(図示せず)や、ビール樽容器21に対してビールの充填処理工程を行う充填処理装置に、搬送用コンベア22上に配置された複数のビール樽容器21が連続的に搬送(搬入・搬出)される。
【0033】
図4に示すように、搬送ライン23にて順次搬送されるビール樽容器21にとともに、その外殻形状が実質的に同じであるビール樽型振動測定装置10を搬送させる。搬送ライン23にて搬送されるビール樽型振動測定装置10は、搬送中において、その底部16(図4では、搬送用コンベア22上に配置される部分としている。)を通じて、容器本体11に付加される振動、すなわち図示Z方向(上下方向)における振動が振動検出用センサ12により測定される。測定された振動データは、データ記録部13により測定時間と関連づけられた状態にて連続的に記録される。
【0034】
ここで、データ記録部13により記録された振動データの一の実施例を図5のグラフに示す。図5のグラフでは、縦軸に振動レベル(電圧:V)を示し、横軸に測定時間(T1〜T9)を示している。また、搬送ライン23上におけるビール樽型振動測定装置10の搬送位置は、搬送用コンベア22の搬送速度のデータや搬送位置と時間との関係のデータを予め取得することなどにより、時間T1〜T9のそれぞれと関連付けて把握することができる。
【0035】
図5のグラフにおいて、搬送用コンベア22上にビール樽型振動測定装置10を載置したタイミングである時間T1にて、−1.000V〜+0.750Vの振動レベルが検出されている。その後、ビール樽型振動測定装置10が搬送ライン23にて搬送され、時間区間T1−T2にて搬送用コンベア22間の連結部分(渡り部分)を通過した際に、−0.500V〜+0.375Vの振動レベルが検出されている。時間区間T2−T5では、振動レベルが−0.125V〜+0.125V以内に納まっており、通常搬送時の振動レベルが検出されている。また、時間区間T5−T6では、再び搬送用コンベア22の連結部分を通過して、−0.250V〜+0.250V程度の振動レベルが検出されている。
【0036】
図5のグラフに示される振動データからは、搬送ライン23にてビール樽容器21を搬送する際に、ビール樽容器21に対して付加される振動レベルの大きさを把握することができ、振動レベルが大きくなる搬送位置を、測定時間T1〜T9と搬送位置との関係データに基づいて搬送ライン23上にて容易に特定することができる。したがって、特定された振動レベルが大きい搬送位置(搬送用コンベア22の連結部分)などにおいて、その振動レベルの大きさに応じて、搬送ライン23のメンテナンス等の要否を判断することが可能となる。
【0037】
次に、ビール樽型振動測定装置10により測定された振動データの別の実施例を、図6から図8のグラフに示す。
【0038】
図6のグラフは、搬送ライン23において、ビール樽容器21が通常搬送された場合の振動レベルを示している。ここで、通常搬送とは、搬送の際にビール樽容器21に対して、樽漏れ(内容物の漏洩)、樽倒れ、樽容器の損傷などの問題が生じないような搬送状態である。なお、このような振動データは、ビール樽容器21とともにビール樽型振動測定装置10を搬送ライン23にて搬送することにより取得している。
【0039】
図6のグラフにおいて、時間区間T11−T12では、搬送用コンベア22上にビール樽型振動測定装置10が載置され、その際に−1.0V〜+0.75Vの振動レベルが検出されている。また、時間区間T13−T14およびT18−T19では、ビール樽型振動測定装置10が搬送用コンベア22間の連結部分(渡り部分)を通過しており、この際に、−0.6V〜+0.4Vの振動レベルが検出されている。これらの検出結果からは、ビール樽容器21が搬送ライン23にて通常搬送された場合の振動レベルは、−0.6V〜+0.4V程度であることが判る。
【0040】
図7のグラフは、搬送ライン23において、ビール樽容器21の樽漏れ(内容物の漏洩)が生じた場合に振動レベルを示している。具体的には、図7の時間区間T24−T25にて、ビール樽容器21にて衝撃が付加され、その際に樽漏れが生じ、−2.6V〜+3.6Vの振動レベルが検出されている。したがって、−2.6V〜+3.6Vの振動レベルに近づくにしたがって、搬送ライン23にてビール樽容器21の樽漏れが生じる可能性が高くなることが判る。
【0041】
図8のグラフは、搬送ライン23において、ビール樽容器21の樽倒れ(横倒れ)が生じた場合に振動レベルを示している。具体的には、図8の時間区間T39−T40にて、ビール樽型振動測定装置10にて衝撃が付加され、その際に樽倒れが生じ、−1.6V〜+4.4Vの振動レベルが検出されている。したがって、−1.6V〜+4.4Vの振動レベルに近づくにしたがって、搬送ライン23にてビール樽容器21の樽倒れが生じる可能性が高くなることが判る。
【0042】
このように、上述の各実施例のような振動レベルを予め取得することにより、搬送の際に、ビール樽容器21の樽漏れや樽倒れあるいは損傷などが生じる可能性のある振動レベルを把握することができる。このような振動レベルのデータに基づいて、搬送トラブルが生じないような振動レベルの許容値を設定することができる。このような振動レベルの許容値を用いることで、例えば、データ記録部13にて記録された振動データを解析して、振動レベルが許容値を超過しているような場合には、搬送ライン23におけるその搬送位置を点検して、メンテナンス等の改善措置を採ることができ、搬送トラブルの発生防止または早期改善を図ることができる。
【0043】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、図3において、振動検出用センサ12を容器本体11の底部16の内壁の略中央に設置したが、振動検出用センサ12の設置位置は、検出すべき振動の種類やビール樽容器21の搬送姿勢などにより好適な位置に変更することができる。
【0044】
例えば、ビール樽容器21の搬送姿勢が上下反転姿勢(すなわち底部16が上側)とされるような場合にあっては、振動検出用センサ12は上部の内壁に設置することが好ましい。搬送用コンベア22により近い位置に振動検出用センサ12を設置することで、精度良く測定することができる。
【0045】
また、例えば、水平方向の振動を測定したい場合には、振動検出用センサ12の測定方向を水平方向として設置する必要がある。この場合、例えば、容器本体11の円筒内周面(側壁内面)に振動検出用センサ12を設置することが好ましい。なお、ビール樽容器21の樽倒れ防止のためには上下(縦)方向の振動を測定することが効果的である。
【0046】
また、ビール樽型振動測定装置10では、容器本体11の外殻形状をビール樽容器21と実質的に同じ形状としている。このように同じ形状の容器本体11を搬送ライン23上にて搬送した状態にて振動を検出することで、ビール樽容器21に対して実際に付加される振動レベルに近いデータを取得することができる。このような観点からは、例えば、ビール樽型振動測定装置10の重量が、規定量のビールが充填された状態のビール樽容器21の重量と略同じとなるように、その重量差を調整する重り部材を、容器本体11内に設置することも効果的である。また、この場合、容器本体11内に設ける重り部材の配置を調整して、重量バランス(例えば、重心の位置)が、実際にビール樽容器21に近づくようにすることが望ましい。
【0047】
また、ビール樽型振動測定装置10は、洗浄処理工程や充填処理工程にビール樽容器21とともに搬送されることになるため、容器本体11内に高温洗浄等による熱が伝熱され難くするために容器本体11の内壁面に断熱材を設け、さらに容器本体11の密閉性を高めておくことが好ましい。
【0048】
また、ビール樽型振動測定装置10の容器本体11内にデータ記録部13にて記録(記憶)された振動データを、外部に対して送信する無線通信装置を設けても良い。このように無線通信装置を設けることで、ビール樽型振動測定装置10を搬送ライン23にて搬送しながら、測定された振動データを無線通信装置により送信して外部のモニタ等にリアルタイムに表示させることが可能となる。例えば、搬送ライン23において、複数のビール樽容器21とともにビール樽型振動測定装置10を搬送させることで、リアルタイムでビール樽容器21の搬送状態(振動レベルの状態)をオペレータが把握することができ、搬送トラブルの発生を防止できる、あるいは早期に対処することが可能となる。また、このように送信された振動データを、外部の制御装置に入力させて、予め設定されている振動レベルの許容値を超過しているかどうかを判断させて、超過している場合には警報を発することで、オペレータに迅速に振動レベルの超過を知らせることもできる。なお、無線通信装置に代えて、有線の通信装置を用いることも可能である。
【0049】
また、ビール樽型振動測定装置10は、ビールの製造工程以外にも用いることができる。例えば、工場から出荷されるビール樽容器21とともにビール樽型振動測定装置10を搬送車に積載して、流通過程においてビール樽容器21に付加される振動を測定することもできる。このような場合にあっては、工場から店頭までの流通過程における搬送トラブル(樽漏れなど)が発生した場合に、その発生場所を容易に特定することが可能となり、出荷される製品に対する搬送トラブルを効果的に防止できる。
【0050】
また、本実施形態では、飲料用容器がビール樽容器である場合について一例として説明したが、その他様々な形態の飲料用容器に対して、本実施形態の振動測定装置および方法を適用することができる。例えば、飲料がビールである場合には、缶や瓶などの容器形態についても適用できる。缶の場合には、搬送ラインにおいて缶同士の擦れによる缶の損傷が生じる場合があり、このような缶同士の擦れの程度を水平方向の振動を測定することで把握することができる。また、瓶の場合についても瓶同士の擦れによるラベルの摩耗が発生する場合があり、瓶同士の擦れの程度を水平方向の振動を測定することで把握することができる。
【0051】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【符号の説明】
【0052】
10 ビール樽型振動測定装置
11 容器本体
12 振動検出用センサ
13 データ記録部
14 バッテリー
15 ブラケット
16 底部
17 ケーブル
18 開口部
19 蓋
20 取っ手
21 ビール樽容器
22 搬送用コンベア
23 搬送ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の搬送用コンベアを連結して構成された搬送ライン上にて搬送される複数の飲料用容器と実質的に同じ形状の外殻を有する容器本体と、
容器本体の内側に固定され、搬送の際に容器本体に付加される振動を検出する振動検出用センサと、
容器本体の内側に固定され、振動検出用センサにより測定された振動データを時間と関連付けて記憶するデータ記憶部と、
容器本体の内側に固定され、振動検出用センサおよびデータ記憶部を機能させるための電力を供給する電源とを備えることを特徴とする、飲料用容器型振動測定装置。
【請求項2】
飲料用容器はビール樽容器であり、
密閉された容器本体内に、振動検出用センサ、データ記憶部、および電源が配置されている、請求項1に記載の飲料用容器型振動測定装置。
【請求項3】
容器本体の底部内壁の略中央に振動検出用センサが固定され、振動検出用センサは、搬送の際に容器本体の底部を介して容器本体に対して付加される上下方向の振動を検出する、請求項2に記載の飲料用容器型振動測定装置。
【請求項4】
容器本体の側壁に振動検出用センサが固定され、振動検出用センサは、搬送の際に容器本体に対して付加される水平方向の振動を検出する、請求項2に記載の飲料用容器型振動測定装置。
【請求項5】
飲料用容器型振動測定装置の重量が、規定量のビールが充填されたビール樽容器の重量と同じとなるように、重量調整用の重り部材が容器本体内に配置されている、請求項2から4のいずれか1つに記載の飲料用容器型振動測定装置。
【請求項6】
データ記憶部に記憶された振動データを、容器本体の外部へ送信する有線または無線の通信装置が、容器本体内にさらに備えられている、請求項2から5のいずれか1つに記載の飲料用容器型振動測定装置。
【請求項7】
複数の搬送用コンベアを連結して構成された搬送ライン上にて搬送される複数の飲料用容器と実質的に同じ形状の外殻を有する容器本体と、容器本体の内側に固定された振動検出用センサおよび振動検出用センサにより測定された振動データを記憶するデータ記憶部とを備える飲料用容器型振動測定装置を、搬送ラインにて搬送させ、
搬送の際に容器本体に付加される振動を振動検出用センサにより測定するとともに、測定された振動データを搬送位置の情報と関連付けてデータ記憶部に記憶させることを特徴とする、飲料用容器の振動測定方法。
【請求項8】
飲料用容器はビール樽容器であって、密閉された容器本体内に振動検出用センサおよびデータ記憶部が配置された樽型振動測定装置を、搬送ラインにて搬送させる、請求項7に記載の飲料用容器の振動測定方法。
【請求項9】
樽型振動測定装置において、振動検出用センサが容器本体の底部内壁の略中央に固定され、搬送の際に容器本体の底部を介して容器本体に対して付加される上下方向の振動を測定する、請求項8に記載の飲料用容器の振動測定方法。
【請求項10】
樽型振動測定装置において、振動検出用センサが容器本体の側壁に固定され、複数のビール樽容器とともに樽型振動測定装置を搬送ラインにて搬送させて、搬送の際に容器本体に対して付加される水平方向の振動を検出する、請求項8に記載の飲料用容器の振動測定方法。
【請求項11】
データ記憶部に記憶された振動データが、振動許容値を超えているか否かを判断し、振動許容値を超えた場合に警報を出力する、請求項8から10のいずれか1つに記載の飲料用容器の振動測定方法。
【請求項12】
搬送ラインは、少なくともビール樽容器に対する洗浄処理工程およびビール充填処理工程に対して複数のビール樽容器を搬入および搬出するラインであって、複数のビール樽容器とともに樽型振動測定装置を洗浄処理工程およびビール充填処理工程に搬送する際における振動データを連続的に測定する、請求項8から11のいずれか1つに記載の飲料用容器の振動測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−269920(P2010−269920A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125059(P2009−125059)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】