説明

飼料生育用筺体

【課題】給水源および電源と接続して使用する可搬型飼料製造ユニットを提供する。
【解決手段】前端部22ならびに後端部28のある断熱コンテナ20と、それぞれの底面部に排水口を備えた複数のトレーと、コンテナ前端部22からコンテナ後端部にわたる複数の棚60を備え、各トレーを支えるラック収納システム50と、水源に接続可能であり、ポンプ120ならびに複数の配管130により複数の噴霧ヘッド110と連通している灌漑システム90と、コンテナ内部を所定の照度に維持する照明システム150と、コンテナ内部の温度を所定の温度範囲内に維持する熱制御システム160、および他のシステムを起動して電源の負荷バランスを行う中央制御システム190を備えた可搬型飼料製造ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飼料製造に関連する。本発明は、特に飼料製造ユニットに関連する。
【背景技術】
【0002】
現在に至るまで、家畜に対する飼料を供給するための集約的飼料製造用システムが多数提案されている。内部で種子が生育される簡単なトレーから、灌漑システム、そして各種自動システムに至るまで、多数のシステムが提案されて来た。これら飼料製造用各種システムの主要な問題点は、経済的な方法で飼料製造を達成することである。
【0003】
トレー内で飼料を製造するシステムは回分式過程であり、その結果として大量の飼料を収穫し、収穫した飼料は後日利用のため保存する必要がある。次回分の飼料は、次回の飼料の作物が成長して収穫準備が出来た場合にのみ利用可能となる。
【0004】
こうした回分式システムでは、植え付け時期をずらして、より均等に配分された飼料製造を実現可能である。しかしながら、これらのシステムでは植え付け時、飼料の生育段階全体、および収穫時に、トレーの人為操作がかなり必要とされる。多くの場合、生育する飼料のトレーの重量のため、飼料のトレーの人為操作は困難であり、したがって一般に不便であり、重労働であり、結果として飼料の生育が不均等となる。
【0005】
自動化されたユニットも製作されており、自動化されたユニットでは、トレーが機械的にコンベヤシステム上を移動して、種が植えられたトレーが乗せられ、製造装置の他方の終端で飼料が収穫される。このようなシステムで要求される設備投資は通常極めて高額であり、結果として自動化されたシステムは一般に家畜飼料の製造では受け入れられていない。
【0006】
また、多数の水耕システムも飼料製造で使用されている。これらのシステムは発芽種子および成育中の芽に対する栄養素の管理供給が必要とされ、一般に回分式収穫システムで採用されている。
【0007】
水耕システムの費用と管理された栄養素供給は一般に不経済または大きな労働力を要する。フィンク(Finck)の米国特許第3,991,514号(1976年11月16日)では、種子が蒔かれたトレーを棚システムの後部に装着し、成長した飼料マットが入っているトレーを操作者が前部から取り出すことが可能であり、各種灌漑システムおよび温度管理システムを搭載した、継続的な飼料製造作業について報告されている。しかしながら、そうしたシステムにおいては、棚にトレーが部分的に装填された場合でさえ、飼料のトレーを前進させることが困難となり、とりわけ比較的生育間隔数が多く、結果として各棚の各間隔を前進させる必要のあるトレー数が比較的多数となる場合は、前進させることが特に困難となる。さらに、電動システムの多数が専用のタイマー回路により運転されること、あるいは概して常時通電状態とされること、およびかかる複数のシステムが同時に電力を引き込んでいる場合があることが原因となり、こうした装置では相当の電力容量を要する。マーチン(Martin)の米国特許第2,928,211号(1960年3月15日)では、上記と同様の欠点が多数存在する類似の水耕装置が教示されている。
【0008】
上述のシステムには、その全てに家畜への供給用飼料の製造が不経済または非実用的なものとなる固有の問題点または制約がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,991,514号
【特許文献2】米国特許第2,928,211号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
飼料の集約製造を実現し、上述の不利益の少なくとも1件を克服し、あるいはこれを緩和する飼料製造ユニットを発見した。発明のその他の目的および利点は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、給水源および電源と接続して使用する可搬型飼料製造ユニットである。飼料製造ユニットには断熱コンテナが含まれ、前端部および後端部が存在する。好ましくは、選択して解放可能かつロック可能な扉を各端部に備えている。
【0012】
複数個のトレーが含まれ、各トレーにはトレー前部壁面の底部に複数個の排水口が存在し、支えられた状態で前方に向かってわずかに傾斜した場合にトレー内部の水がトレー前部、そしてその付近の排水口に向かって流れる。さらに各トレーには側壁2個を備えることが出来る。トレー前端部には、成育した飼料マットの迅速な取り出しに便利なリップを備えることが出来る。トレーには、区分けされた成育飼料マットを供給するため、それぞれ1個以上の仕切壁を備えることが出来る。
【0013】
各トレーをコンテナ内部に保持するため、ラック収納システムが備えられている。ラック収納システムには、コンテナ前端部からコンテナ後端部にわたり複数個の棚が備えられている。各棚は、少なくとも1個のトレーを支えるために十分な幅と、生育期間内において所定の列数のトレーを収容し、コンテナ内を循環させるために十分な奥行きがある。各棚には、各トレーを支え、トレーをコンテナ前端部からコンテナ後端部へと滑動させるのに適した複数個のレールが備えられている。
【0014】
灌漑システムが備えられており、好ましくは、灌漑システムの大部分がコンテナ内部に収容されている。灌漑システムには、水槽が1個備えられており、水槽と複数の噴霧ヘッド間でポンプおよび複数のパイプにより液体が連通する。また、水槽には、水源と連結された給水バルブが含まれており、水槽内の水位が所定の水量以下となると、水槽に給水するように適合されている。水槽はコンテナ内部にあり、水槽内部の水温をコンテナ内部の温度と同じ温度とすることが可能である。
【0015】
また好ましくは、水槽はその上部表面に踏板を備える。踏板および水槽は、補強リブ等によりその上部に乗った人間の重量を支えるよう適合されている。水槽は、コンテナの前端部付近の底部に設置され、水槽内部の水が持つ熱が、すべてコンテナ前端部を熱して飼料種子の発芽を促進させる。さらに水槽には、水槽内部の水を所定の温度に熱するための温水器を備えることが出来る。
【0016】
照明システムが電源に接続され、これがコンテナ内部の照度を維持する。最低限度として、かかる照明システムには、各トレーをコンテナ後端部からコンテナ前端部に向けて照射する、複数個の電球が備えられており、照射は種子の発芽前の生育過程以前において停止する。
【0017】
熱制御システムは電源に接続され、コンテナ内部の温度を所定の温度範囲内に維持する。さらに熱制御システムは、湿度制御システムも備え、コンテナ内部の湿度を所定の湿度範囲内に維持することが出来る。かかる熱制御システムには熱ポンプ式空気調節を備え、コンテナ内部の温度を摂氏18度から摂氏23度まで、湿度を40パーセントから80パーセントまでの範囲内に維持することが出来る。
【0018】
さらに、中央制御システムを備え、これを灌漑システムのポンプ、照明システム、熱制御システム、および温水器と電気的に接続することが出来る。したがって、制御システムをプログラムして、ポンプを起動して所定の予定に従いトレーに対して噴霧させ、照明システムを所定の予定に従って起動し、コンテナ内部の温度ならびに湿度に基づき必要に応じて熱制御システムを起動して所定の予定に基づいて水温を管理することが出来る。中央制御システムは、ポンプ、照明システム、熱制御システム、温水器が決して同時に起動しないことを確実化することにより、飼料製造ユニットからの電流引き込みを制御する。
【0019】
使用時には、トレーは種子で満たされてコンテナ後端部に装着される。トレーは飼料が生育期間を経過するに従い、操作者により強制的に前進させられる。トレーはコンテナ前端部で生育が完了した飼料マットと共に取り外される。生育過程全体を通して、配管を通してポンプが定期的に水槽から複数の噴霧ヘッドへと水を汲み上げ、通常所定時間内にわたりポンプを起動することにより計量される所定の水量を、各トレーに噴霧する。
【発明の効果】
【0020】
以上のような構成により、本発明は飼料の集約製造を実現し、従来技術の不利益を克服し、あるいはこれを緩和する。本発明のその他の特徴およびこれによる利点は、以下に記述された更に詳細な解説を、発明の原理が例示により説明されている添付図面と併せて考察することにより、明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明の斜視図であり、本発明のコンテナの扉が閉じた状態で図解されている。
【図2】図2は図1の分解斜視図である。
【図3】図3は本発明の前方立面図である。
【図4】図4は図3の線4−4部における本発明の横断面図である。
【図5】図5は本発明の上部平面図である。
【図6】図6は図5の線6−6部における本発明の横断面図である。
【図7】7Aは本発明のラック収納システムの正面図である。7Bは7Aの7B部におけるラック収納システムの部分図であり、ラック収納システムのレール上部表面に形成された縦溝が図示されている。
【図8】図8は本発明の水槽および踏板の分解斜視図である。
【図9】図9は本発明のトレーの実施態様の斜視図である。
【図10】図10は、本発明の中央制御システムの操作の全体的なフロー図である。
【図11】図11は本発明のトレーの実施態様の上部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の様々な態様を更に十分に理解し、実務に導入することが可能となるよう、以下の通り添付図面を参照して好ましい実施態様を説明する。
【0023】
以下の説明では、これらの実施態様の十分な理解と実施を可能とするための説明の具体的な詳細を提供する。当技術分野の技術者は、かかる詳細なくして発明を実施することが可能であることを理解するであろう。それ以外の場合について、実施態様を不必要に不明瞭とすることを回避するため、周知の構造および機能は詳細な説明ないし解説はされていない。
【0024】
「を備える」、「を備えている」およびこれに類する語は、説明および特許請求の範囲全体において、文脈の前後関係から明白にこれと異なる解釈が必要な場合を除き、排他的または網羅的意義とは異なり、包括的意義すなわち「含むがこれに限らず」の意義として解釈すべきものである。単数形または複数形を用いた語は、それぞれ複数または単数を含む。さらに、「本書において」、「前述の」、「以下に」およびこれに類似の趣旨の語は、これが本出願書で使用された場合、本出願書全体を指し、本出願書中の特定の一部を指すものではないものとする。 本発明の第一の態様に従い、断熱コンテナ20を備えた可搬型飼料製造ユニット10を用意するが、前述の断熱コンテナは、内部にラック収納システム50、灌漑システム90、照明システム150、熱制御システム160が備えられていることを特徴とする。ラック収納システム50には、コンテナ20の後端部28からコンテナ20の前端部22までにわたる複数の棚60が存在し、この棚60は、飼料生育トレー30を少なくとも1個収納するのに適切な幅であり、所定の個数のトレー30の列を収納し、生育期間全体においてコンテナ内を循環させるのに十分な奥行きがある。したがって種が蒔かれたトレー30を棚60の後部から装着可能であり、またトレー30は生育が完了した飼料のマット13と共に棚60の前部から取り出し可能であり、前述のトレー30は、飼料が生育期間全体を経過してゆく際に、操作者により強制的に前進させられる。灌漑システム90は、ラック収納システム50内に設置された、各トレー30に対して所定の水量を定期的に噴霧するための複数の噴霧ヘッド110、所定の照度を維持する照明システム150、温度を所定の温度範囲内に維持する熱制御システム160を備える。
【0025】
生育条件を管理することにより、飼料の生育周期を管理することが可能であり、内部のラック収納システム50上で飼料の生育を効果的に実施可能であることが確認され、これにより飼料が生育するトレー30を容易に強制してラック収納システム50上を前進させることが出来る。したがってラック収納システム50の後端部28から挿入されたトレー上に蒔かれた種子は、後続するトレー30の挿入により、飼料の収穫準備が完了したトレー30がラック収納システム50の前部へと前進する。飼料の経済的な製造を実現する方法で、ラック収納システム50全体において後続するトレー30の挿入により強制されるトレー30の容易な使用を実施可能とするのは、生育条件の管理である。本発明の飼料生育ユニット10は、オオムギ、アルファルファ、ヒマワリ、ヤエナリ、カモジグサ、コロハ、タマネギ、サヤエンドウ、およびこれに類似の家畜用および人間の食用の様々な種子を発芽させるために使用可能である。
【0026】
使用時においては、1番目の列のトレー30内部に選択された種子が蒔かれ、棚60の後端部28に置かれる。コンテナ20が閉じられ、次回の時間間隔後に開かれて追加のトレー30の列に種子が蒔かれてから後端部28の棚に置かれる。2番目の列のトレー30を後端部28で棚60に置くことにより、1番目の列のトレー30が前進させられる。一番目の列のトレー30がコンテナ20の前端部22の棚60へと前進するまでこの過程が反復され、この時点で消費用の飼料のマット13と共に1番目の列のトレー30を取り出すことが出来る。飼料製造ユニット10の継続的な稼働時には、新たに種子が蒔かれた次のトレー30の列がコンテナ20の後端部28に導入される前に、コンテナ20の前端部22のトレー30の列を取り出すことが可能であり、また多量の消費用飼料を取り出すことが出来る。
【0027】
本発明の好ましい実施態様では、種蒔きおよび発芽した飼料の収穫を容易にするトレー30が提供される。好ましい態様では、生育トレーは両側面および後部に壁36、38を備えている。トレー30の前部32には、種子12および水分の保持を容易にし、しかし生育が完了した芽または飼料のマット13の容易な取り出しが可能なリップ33または縁部がある。本発明の別の好ましい態様は、トレー30の前部32から後部38にわたり、トレー30の中間領域を作る壁39を装備し、これにより生育が完了した飼料マット13をトレー30全体の大きさと等しい大きさではなく、所望の大きさのビスケット(biscuit)またはマット13で取り出し可能とするよう準備される。
【0028】
本発明で使用する断熱コンテナ20は、都合に合わせてあらゆる構成とすることが出来る。断熱コンテナ20は、好ましくはチルト装置付トラックまたはこれに類似の輸送のための大きさとする。
【0029】
ラック収納システム50には、コンテナ20の後端部28からコンテナ20の前端部22にわたる複数の棚60があり、かかる棚60は所定数のトレー30の列を受容するのに適切な奥行きとなっている。トレー30の列数は発芽した種子および生育条件により異なる。通常において棚60は、一般に家畜飼料用大麦の発芽に必要とされる6個のトレー30を受容出来る程度の、十分な奥行きがある。棚は、所望される数のトレー30を受容するのに十分な幅を持つものとすることが出来る。
【0030】
好ましくは、棚60の寸法およびトレー30の大きさは、収穫のための発芽が完了した種子が入ったトレー30を1人の人間が容易に取り扱い可能となるように構成する。
【0031】
灌漑システム90は、一連のパイプ130を通して水を散水装置または噴霧ヘッド110へと汲み上げ、これによりトレー30の芽に灌漑される。トレー30の芽へと噴霧される水の温度は、断熱コンテナ20内部の温度に類する温度とすることが好ましい。水温は芽の生育に顕著な影響を及ぼすことが確認されており、これは水の潜熱の熱伝達のためであると考えられる。たとえば、断熱コンテナ20内部温度を大きく上回る温度の水を使用した場合、コンテナ20の温度を大幅に上昇させる可能性があり、これが熱制御システム160に対し、コンテナ20内部の温度を冷却する比較的大きな不可を負わせる。断熱コンテナ20の温度を大きく下回る温度の水を使用すると、芽の生育力に悪影響を及ぼす可能性がある。灌漑システム90には、好ましくはラック収納システム50に位置する噴霧ヘッド110のシステム内部に水を汲み上げるポンプ120を備え、各トレー30に対して所定の水量を定期的に噴霧する。中央制御装置または制御システム190を使用して、トレー30内部の種子12の種類が必要とする所定の水量を所定の間隔で各トレー30に供給することが出来る。
【0032】
さらに断熱コンテナ20には、芽の最適な生育を可能とするため、光合成に十分な光を供給する照明システム150が含まれる。断熱コンテナ20の前端部28に蛍光灯2灯ないし3灯を設置することにより、芽の生育を促進させることが可能であり、生育した芽には好ましい緑色を備えていることを確認した。光を多量または少量供給することにより、芽の色を管理出来る。比較的多量の光を供給することにより、結果として比較的濃い緑色の芽が得られる。
【0033】
熱制御システム160は、好ましくは熱ポンプ式空気調節装置の態様が好ましく、システムは断熱コンテナ内部の温度を摂氏18度から23度の範囲内に維持するのが好ましい。この温度範囲内において芽の最適な生育が得られることを確認した。また、熱制御システム160は、断熱コンテナ20内部の空気の移動を促進し、また高速なファン回転速度用に調節されていることが好ましいことも確認した。熱制御システム160には、恒温装置(図示されていない)が備えられている。
【0034】
もっとも、生育条件は各種種子12により異なる。たとえばオオムギの生育では、最適条件は温度が摂氏約23度、湿度が40パーセントから80パーセントの間であることが確認された。同様に、比較的高温の環境では、好ましい温度の維持に関連する運営経費を節減するため、一般に断熱コンテナ20を日陰に設置するのが好ましいと考えられる。
【0035】
トレー30内部において、芽の根もまた湿った状態かつ濡れていない状態に維持しなければならない。そのため、トレーには、開口部付の底面31を装備し、余分な水をトレー30から排水出来るようにすることも出来る。トレー30からの排水を回収し、所望される場合には芽の灌漑または適切な清浄剤とともにトレー30の洗浄用に再利用されるよう、断熱コンテナには排水システム(図示されていない)を備えることが出来る。
【0036】
オオムギでは、糸状菌の生育が促進される摂氏24度以上の温度を避けるのが好ましいことを確認した。既定の設定では、温度制御システムのファンを通電とし、照明システムを20分間有効とした後に20分間無効とし、灌漑システム90を毎時24秒間有効とすることが好ましい。(図10)管理システム190は、たとえば運転者により無効化されることのない限り、これらの設定を既定とするようプログラムに組み込むことが出来る。
【0037】
使用時には、トレー30の洗浄後、トレー30に所望される量の種子が蒔かれる。最良の結果を得るためには、無菌の生育環境を維持し、トレー30を塩素等適切な殺菌剤で洗浄した後に使用することが好ましい。断熱コンテナ20内で糸状菌が検知された場合、塩素処理水で芽を灌漑し、システムを清潔かつ無菌の状態に復旧することが出来る。塩素処理水は、長期の使用を回避するのが好ましい。比較的高濃度の塩素処理水の使用は、結果として芽の先端部の黄変および収穫高の制限となることを確認した。
【0038】
外部の条件が適切な場合には、コンテナ20内部の温度が摂氏18度から23度の範囲内に維持されることを条件として断熱コンテナ20の扉29を解放しておくことも可能であるが、それでもなお断熱コンテナ20は、好ましくは使用時に閉鎖されている。
【0039】
最適な種子の発芽および製造ユニット10による最高の飼料製造量のため、1平方メートルあたり4.5キログラムの種子率が好ましいことを確認した。種子は事前に温水中に約30分間浸漬して発芽過程を開始するのが好ましい。種子のあらゆる汚染物質、糸状菌の胞子および病原体を洗浄するため、少量の塩素を使用することが可能であり、これにより製造ユニット10内においてカビの問題の発生率は最低限度にとどめられる。種子は、好ましくはトレー30の縁に沿って少量の隙間を残してトレー30上に配分し、種子が生育してゆくにつれ拡張することが出来るようにする。
【0040】
有利なことに、標準的システムで収穫、洗浄、および再種蒔に要する時間は僅か15分である。オオムギは、生育中は一般的に24時間以内に発芽し、同じトレー30内において6日間の生育周期で生育し、15センチメートルから20センチメートルに伸びた草のマット13として収穫準備が完了する。各トレー30がラック収納システム50を前進してゆくため、操作者は新鮮なオオムギの草のマット13を一番先頭のトレー30から収穫出来る。これに続いて、トレー30に対してすすぎ、洗浄、再種蒔が平易に行われ、コンテナ20の後端部28から挿入された後、発芽、生育する。
【0041】
本発明の飼料製造システムが緑色の芽1キログラムを製造するために要する水の量は、僅かに2〜3リットルであることを確認した。通常、従来の生育方法では、同等量の緑草製造に約80リットルの水が必要となる。少量の塩素を用いて糸状菌のない状態に維持することで、その他に必要とされる薬品は無い。種子は、芽が収穫において所望される高さへと生育するために十分な栄養分を含有し、したがってシステム使用中に必要とされる追加養分は無い。
【0042】
本発明により製造された飼料は高タンパクであり、食肉牛、乳牛、家畜馬および競走馬、羊、山羊、豚、ニワトリ、動物園の動物用の飼料の栄養補助飼料、ならびに人間の食用の芽として使用可能である。
【0043】
図1−3および5では、可搬型飼料製造ユニット10が都市上水道、井戸、給水タンク等の水源15、公共電力等の電源16との接続のために図解により説明されている。
【0044】
飼料製造ユニット10には断熱コンテナ20が備えられ、前端部22および後端部28が存在する。好ましくは、選択して解放可能かつロック可能な扉29を各端部22、28に備える。さらに車輪27をコンテナ20の底面21に備え、コンテナ20の地表面(図示されていない)における移動を容易にすることが出来る。
かかるコンテナ20は、好ましくは屋外の自然力に耐え、コンテナ内部を断熱しうる堅牢、剛体材料で作られている。
【0045】
トレー30は堅牢であり、かつ好ましくは合成樹脂製であり、各トレーには、溝付き排水用開口部40など、複数の排水用開口部40(図11)がトレー30の底面31の前部壁面32付近に存在する。かかるトレーが前部壁面32を下にして僅かに傾斜した場合、トレー30内部の水がトレー30の前部壁面32に向かって移動し、そしてその内部の排水用開口部40に向かって流れる。各排水口40は、好ましくはこれを溝付き排水口40とする。さらに各トレー30には2個の側壁36を備えることが出来る。トレー30の前端部32には、成育した飼料マット13の迅速な取り出しに便利なリップ33を備えることが出来る。トレー30には、区分けされた成育飼料マットを供給するため、それぞれ1個以上の仕切壁39を備えることが出来る。
【0046】
各トレー30をコンテナ20内部に保持するため、ラック収納システム50(図2、図4、および図7A)が備えられている。ラック収納システム50には、コンテナ20の前端部22からコンテナ20の後端部28付近にわたり、複数個の棚60が備えられている。各棚60は、少なくとも1個のトレー30を支えるために十分な幅と、生育期間内において所定の列数のトレー30を収容し、トレー30をコンテナ20の内部で循環させるために十分な奥行きがある。各棚60には、各トレー30を支え、トレー30をコンテナ20の前端部22からコンテナ20の後端部28へと滑動させるのに適した複数個のレール70が備えられている。例えば、各レール70には、各トレー30とレール70との接触面積を低減し、さらに各トレー30からの排水を溜めることによりレール70を潤滑化する複数の縦列溝80(図7B)が備えられている。生育期間が比較的長い種子を生育するための棚など、比較的長い棚60の使用時は、トレー30とレール70の間の摩擦が棚60の長さ全体において少ないことが、より重要となる。各棚60は、好ましくはコンテナ20の側壁25に固定された複数の堅牢なL型ブラケット65(図1および図6)上に支えられている。設置時において、棚60上のトレー30内の水が各トレー30の壁面部32に向かって流れ易いように、好ましくはコンテナ20の後端部28をわずかにコンテナ20の前端部22よりも高くする。この僅かな傾斜は5度から10度の間とすることが好ましく、またトレー30を後端部28からコンテナ20の前端部22へと滑動するのを補助する。
【0047】
灌漑システム90(図4)は、好ましくはその大部分がコンテナ20の内部に収容されている。灌漑システム90には、水槽100が1個備えられており、水槽100と複数の噴霧ヘッド110の間でポンプ120および複数のパイプ130により液体が連通する。また、水槽100には、水源15と連結された給水バルブ140が含まれており、水槽100内の水位が所定の水量以下となると、水槽100を給水するように適合されている。水槽100はコンテナ20の内部にあり、水槽100内部の水温をコンテナ20内部の温度と同じ温度とすることが可能である。
【0048】
また水槽100は、好ましくはその上部表面108に踏板105(図8)を備える。かかる踏板105はいわゆる「縞板」薄板金材などで製作されているものとすることが出来る。踏板105および水槽100は、補強リブ109等によりその上部に乗った人間の重量を支えるよう適合されている。これにより、操作者は踏板に立って最後部の棚60に手を届かせることが出来る。水槽100は、例えば強度のあるプラスチック材で製作され、コンテナ20の前端部22付近の底部21に設置される。また水槽100には、コンテナ20内部の温度以上の所定の温度に水槽100内部の水を熱するための温水器180を備え、よって発芽を一層促進することが出来る。温水器180には、好ましくはチタニウム製コア温水器発熱体(図示されていない)を備える。
【0049】
照明システム150(図4)が電源16に接続され、これがコンテナ20内部の照度を維持する。最低限度として、かかる照明システム150には、各トレー30をコンテナ20の前端部22からコンテナ20の後端部28に向けて照射する、蛍光灯電球などの電球155が複数個備えられており、照射は種子12の発芽前の生育過程以前において停止する。
【0050】
熱制御システム160(図4)は電源16に接続され、コンテナ20内部の温度を所定の温度範囲内に維持する。さらに熱制御システム160は、湿度制御システムも備え、コンテナ20内部の湿度を所定の湿度範囲内に維持することが出来る。かかる熱制御システム160には熱ポンプ式空気調節170を備え、コンテナ20内部の温度を摂氏18度から摂氏23度まで、湿度を40パーセントから80パーセントまでの範囲内に維持することが出来る。
【0051】
中央制御システム190(図4、図9および図10)を備え、これを灌漑システム90のポンプ120、照明システム150、熱制御システム160、および温水器180と電気的に接続することが出来る。したがって、制御システム190をプログラムして、ポンプ120を起動して所定の予定に従いトレー30に対して噴霧させ、照明システム150を所定の予定に従って起動し、コンテナ20内部の温度ならびに湿度に基づき必要に応じて熱制御システムを起動して所定の予定に基づいて水温を管理することが出来る。中央制御システム190は、ポンプ120、照明システム150、熱制御システム160、温水器180が決して同時に起動しないことを確実化することにより、飼料製造ユニット10からの電流引き込みを制御する。つまり、中央制御システム190は最大電気的負荷により共有されるアンペア容量を強制する、すなわち、あらゆる有効な負荷の合計が、16アンペア、20アンペア等、所定の容量を超えることのないようにする。
【0052】
一つの実施態様においては、さらに灌漑システム160に電子的に発動する送水バルブ200(図4)も備え、ポンプ120からの水をトレー130上にある複数の噴霧ヘッド110またはホース(図示されていない)を用いたトレー30への手動噴霧用のホース用水栓210のいずれかに切り替えている。このため、中央制御システム190には、バルブ200をホース用水栓210に設定し、ポンプ120を起動し、かつ他のシステム90、150、160の作動を防止して、電源16から所定のレベルを超える電流を引き込まないようにする動作様式を備える。熱制御システム160の恒温装置を制御システム190の一部として備えることが出来る。
【0053】
使用時には、トレー30は種子12で満たされてコンテナ20の後端部28に装着される。トレー30は飼料が生育期間を経過するに従い、操作者により強制的に前進させられる。トレー30はコンテナ前端部22で生育が完了した飼料マット13と共に取り外される。生育過程全体を通して、配管130を通してポンプ120が定期的に水槽100から複数の噴霧ヘッド110へと水を汲み上げ、通常所定時間内にわたりポンプを起動することにより計量される所定の水量を、各トレー30に噴霧する。(図10)一方で、熱制御システム160は、コンテナ20内部を所望される温度の範囲を維持し、照明システム150は一定の予定に基づいてランプ155の通電と遮断を循環させる。
【0054】
本発明の具体的な態様が図示解説したが、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく各種修正が可能であることは明白であろう。したがって、特許請求の範囲以外によるものを除き、本発明を限定することを意図するものではない。
【0055】
本発明の特定の機能または態様を解説する際の具体的な用語は、用語が関連する本発明のあらゆる具体的な特徴、機能または態様に限定されるように本書により用語が再定義されたことを暗示するものとして解釈されてはならない。一般的に、以下の請求範囲において使用されている用語は、かかる用語が上記の詳細な説明において明示的に定義されていない限りにおいて、明細書に開示されている特定の実施態様に本発明を限定するものとして解釈してはならない。したがって、本発明の実際の範囲は、開示された実施態様のみならず、類似する本発明の実施方法ないし実装方法が全て含まれる。
【0056】
上記の本発明の実施態様の詳細な説明は、本発明を正確に上記に開示した態様または本開示に記述されている特定の使用領域に限定するための網羅的なものとすることを意図するものではない。本発明の特定の実施態様および本発明の例が上記において図示を目的として説明されているが、本発明の範囲内において各種の類似修正が可能であり、当技術分野の技術者は類似修正を認識するであろう。さらに、本書に規定する本発明の教示は、必ずしも上記に説明されているシステムに限らず、その他のシステムにも適用可能である。前述した各種実施態様の原理および機能を組み合わせてさらなる実施態様を提供することが出来る。
【0057】
前述した特許および特許出願ならびにその他の参照は、添付の出願書類に一覧表示されているあらゆるものも含めて、全て参照として本出願の一部を構成する。本発明の態様は、必要な場合に修正し、前述の各種参照のシステム、機能および構想を採用して本発明のさらなる実施態様を提供することが出来る。
【0058】
上記の「詳細な説明」に照らして、本発明に対して変更を行うことが出来る。前述の説明は、本発明の特定の実施態様を詳述し、最良の態様を説明するものであるが、上述の文言がいかに詳細であっても、本発明は多数の方法で実施出来る。したがって、本書において開示される発明に含まれる一方で、実装の詳細は大きく異なる場合がある。前述の通り、本発明の特定の機能または態様を解説する際の具体的な用語は、用語が関連する本発明のあらゆる具体的な特徴、機能または態様に限定されるように本書により用語が再定義されたことを暗示するものとして解釈されてはならない。
【0059】
本発明の具体的な態様を、特定の請求様式で以下に示されているが、本願発明者は、その回数を問わず、本発明の各種態様の請求項目を意図する。したがって、本件発明者は出願後に請求項目を追加し、本発明のその他の態様に関する追加の請求様式を追求する権利を留保する。
【符号の説明】
【0060】
10・・・可搬型飼料製造ユニット
15・・・水源
20・・・コンテナ
22・・・コンテナ前端部
30・・・トレー
31・・・トレー底面部
40・・・排水口
50・・・ラック収納システム
60・・・棚
90・・・灌漑システム
110・・・噴霧ヘッド
120・・・ポンプ
130・・・配管
150・・・照明システム
160・・・熱制御システム
190・・・中央制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部および後端部のある断熱コンテナと、
それぞれ底面部に複数の排水口のある複数のトレーと、
コンテナの前端部付近からコンテナの後端部付近にわたる複数の棚が存在するラック収納システムであり、前記棚が、少なくとも1個のトレーを支えるために十分な幅と、生育期間内において所定の列数のトレーを収容し、コンテナ内を循環させるために十分な奥行きがあり、また棚は各トレーを支持し、コンテナ前端部からコンテナ後端部へのトレーの滑動を容易にするのに適したレールを含むラック収納システムと、
ポンプおよび複数の配管により複数の噴霧ヘッドと液体が連通する水槽を備えた灌漑システムであり、前記水槽には、水源と連結され、水槽内の水位が所定の水量以下となると、水槽が給水されるように構成されている給水バルブが含まれている灌漑システムと、
電源と接続され、コンテナ内部を所定の明度に維持する照明システムと、
電源に接続され、コンテナ内部の温度を所定の温度範囲内に維持する熱制御システムを備えており、種が蒔かれたトレーはコンテナ後端部から装着され、飼料が生育期間を進行するのに従って操作者により強制的に前進し、生育が完了した飼料マットと共にコンテナ前端部から取り出され、ポンプは生育過程全体を通して、配管を通して水槽から複数の噴霧ヘッドへと水を汲み上げ、所定の水量を定期的に各トレーに噴霧することを特徴とする給水源および電源と接続して使用する可搬型飼料製造ユニット。
【請求項2】
各トレー底面部にある複数の排水口が各トレーの前部の壁面部付近に存在し、各トレーの後部が持ち上げられるとトレー内部の水が前部壁面の開口部方向に流れる点を特徴とする請求項1記載の可搬型飼料製造ユニット。
【請求項3】
側面部および後部の壁面が備えられている点、およびトレー前部には、成育した飼料マットの迅速な取り出しに便利なリップが備えられている点を特徴とする請求項1記載の可搬型飼料製造ユニット。
【請求項4】
トレーの前部から後部にわたり、トレーの中間領域を作る壁を装備し、これにより生育が完了した飼料マットの区分けされた製造を実現する点を特徴とする請求項1記載の可搬型飼料製造ユニット。
【請求項5】
水槽の上部表面に堅牢な踏板が備えられており、水槽上に乗った人間の重量を支えるように適合されており、水槽がコンテナの前端部付近の底部床面に設置されている点を特徴とする請求項1記載の可搬型飼料製造ユニット。
【請求項6】
断熱コンテナ内部の温度を摂氏18度から23度の間に維持するように事前設定された熱制御システムが熱ポンプ式空気調節装置の態様である点を特徴とする請求項1記載の可搬型飼料製造ユニット。
【請求項7】
断熱コンテナ内部の湿度を摂氏40パーセントから80パーセントの間に維持するように事前設定された熱制御システムが熱ポンプ式空気調節装置の態様である点を特徴とする請求項1記載の可搬型飼料製造ユニット。
【請求項8】
各棚の各レールに縦列溝が備えられており、レールとトレーの間の摩擦低減およびトレーからの排水によってレールに沿った各トレーの滑動が容易なものとされている点を特徴とする請求項1記載の可搬型飼料製造ユニット。
【請求項9】
灌漑システムのほぼ全体がコンテナ内部に含まれており、これよって水槽内部の水温をコンテナ内部の温度と同じ温度とすることが可能である点を特徴とする請求項1記載の可搬型飼料製造ユニット。
【請求項10】
水槽にさらに水槽内部の水を所定の温度に熱するための温水器が備えられている点を特徴とする請求項1記載の可搬型飼料製造ユニット。
【請求項11】
灌漑システムのポンプ、照明システム、および熱制御システムと電気的に接続された中央制御システムが備えられており、これにより中央制御システムをプログラムすることでポンプを起動して所定の予定に従いトレーに対して噴霧させ、照明システムを所定の予定に従って起動し、コンテナ内部の温度ならびに湿度に基づき必要に応じて熱制御システムを起動して所定の予定に基づいて水温を管理することが出来る請求項1記載の可搬型飼料製造ユニット。
【請求項12】
水槽にさらに水槽内部の水を所定の温度に熱するための温水器が備えられている点、および温水器には中央制御システムも電気的に接続されており、事前に設定された予定に基づいて水温を制御する点を特徴とする請求項11記載の可搬型飼料製造ユニット。
【請求項13】
中央制御システムが灌漑システム、照明システム、および熱制御システムの累積電流引き込みが所定のレベルを超えることを防止し、かかるシステムのうち1個以上を、別のシステムが起動される前に遮断して製造ユニットの累積電流引き込みを所定のレベル以下に留める点を特徴とする請求項11記載の可搬型飼料製造ユニット。
【請求項14】
灌漑システムに電子的にさらに発動する送水バルブを備え、ポンプからの水をトレー上にある複数の噴霧ヘッドまたはホースを用いたトレーへの手動噴霧用のホース用水栓のいずれかに切り替える点を特徴とし、この中央制御システムには、バルブをホース水栓に設定し、ポンプを起動し、かつ他のシステムの稼働を防止する動作様式を備え、これにより所定のレベルを超える電流を電源から引き込まないようにする点を特徴とする請求項11記載の可搬型飼料製造ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−187093(P2012−187093A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125308(P2011−125308)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(511136083)
【氏名又は名称原語表記】Terry Colless
【出願人】(511136094)
【氏名又は名称原語表記】Flavio Raccenello
【Fターム(参考)】