説明

養鶏用多段ケージシステムにおける集卵装置

【課題】
構造が簡単で安定して動作でき、卵の乗せ換え時の卵の損傷や破損を大幅に低減できる養鶏用多段ケージシステムにおける集卵装置を提供することにある。
【解決手段】
複数のケージ列を上下に重ねて配置した養鶏用多段ケージシステムにおいて、各段のケージ列に沿って取付けた集卵コンベアの一端に共通に設けた上下にのびる集卵用上下送り装置における各バケットを多数のフィンガー部材で構成し、各フィンガー部材の先端部分に、集卵コンベアからの卵を一時的に受け止めるストッパーが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養鶏用多段ケージシステムにおける各段のケージ列から集卵コンベアで回収された卵を、各段のケージ列に組み合わされた集卵コンベアの一端に共通に設けた上下にのびる集卵用上下送り装置を介して移送し、集卵できるようにした養鶏用多段ケージシステムにおける集卵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の集卵装置は公知であり、例えば、また、別の先行技術例としては、各段のケージ列毎に集卵コンベアを設けた多段式ケージシステムにおいて、各集卵コンベアの端部に隣接して共通して、集卵コンベアから卵を受け取る複数の集卵バスケットを備えた略垂直方向にのびるコンベアを設け、各集卵コンベアと略垂直にのびるコンベアとの間に、各集卵コンベアからの卵を略垂直方向にのびるコンベアの集卵バスケットへ乗せ換える装置を設けた種々の集卵装置が知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0003】
特許文献1に記載の発明では、各集卵コンベアからの卵を略垂直方向にのびるコンベアの集卵バスケットへ乗せ換える装置は、周囲で卵を受ける回転体から成っている。
【0004】
また、特許文献2及び3に記載の発明では、添付図面の図4に示すように、多段式ケージシステム1は、複数のケージ室2に仕切られたケージ列3を複数段重ねて構成され、各ケージ列3に沿って集卵コンベア4が設けられている。各ケージ列3における各ケージ室2内に収容されている鶏が生んだ卵は、各ケージ列3に沿って設けられた集卵コンベア4によって、ケージシステム1の左方の端部に向けて移送される。
【0005】
ケージシステム1の左方端部には乗せ換え装置5及び集卵機6が設けられており、乗せ換え装置5の上方には、ケージシステム1の長手方向に略直交する方向に伸びる集中集卵コンベア7が集卵機6の上部に隣接するように設置されている。乗せ換え装置5は、各段の集卵コンベア4に対応した複数の乗せ換えバスケット5aを備え、これら乗せ換えバスケット5aを介してケージシステム1の各集卵コンベア4の卵は集卵機6へ乗せ換えられる。集卵機6は、ケージシステム1の最下段に位置する集卵コンベア4より下方から上方の集中集卵コンベア7の上方まで略垂直方向の軌道に沿って駆動する無端コンベア6aを備え、該無端コンベア6aには複数の集卵バスケット6bが取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平4−71491号公報
【特許文献2】特許第3541118号公報
【特許文献3】特許第358150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1〜特許文献3に記載されたような先行技術では、各段に設けた乗せ換え装置によって、各段のケージ列に取付けられた集卵コンベアから垂直方向に伸びる集卵機へ卵が乗せ換えられるが、例えば各集卵コンベアで運ばれてきた卵が勢いよく言い換えれば高速で集卵コンベアへ乗り移り、卵に罅が入ったり酷い時には破卵する危険があった。また、既に下位の段で乗り移って運ばれてくる他の卵に強く衝突して他の卵も破損させる危険もあった。
【0008】
また、上述のような先行技術では、乗せ換えバスケットや周囲で卵を受ける回転体から成り得る乗せ換え装置を駆動する駆動装置の動作と集卵機の動作とを同期制御する必要があった。そのため、同期駆動機構が必要と成り、構造が複雑で設備にコストが掛かり、また故障発生頻度を高めることになっていた。
【0009】
そこで、本発明は、このような先行技術に伴う問題点を解決して、構造が簡単で安定して動作でき、卵の乗せ換え時の卵の損傷や破損を大幅に低減できる養鶏用多段ケージシステムにおける集卵装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、複数のケージ列を上下に重ねて配置した養鶏用多段ケージシステムにおける各段のケージ列に沿って各々取付けた集卵コンベアと、各集卵コンベアで集められた卵を、各段のケージ列に組み合わされた集卵コンベアの一端に共通に設けた上下にのびる集卵用上下送り装置とを有し、集卵用上下送り装置が、櫛の歯状に配列し、各集卵コンベアからの卵を受けるバケットを形成する多数のフィンガー部材を備え、各フィンガー部材の先端部分に、集卵コンベアからの卵を一時的に受け止めるストッパーを設けたことを特徴とする養鶏用多段ケージシステムにおける集卵装置が提供される。
【0011】
本発明による養鶏用多段ケージシステムにおける集卵装置においては、集卵コンベアからの卵を一時的に受け止めるストッパーは、各集卵コンベアからの卵を受けるバケットを形成する多数のフィンガー部材の各々の先端部から集卵用上下送り装置の走行軌道に沿って走行方向後方に向ってのびる伸張部分から成り得、また各フィンガー部材の先端部の伸張部分の長さは、その先縁部がそのフィンガー部材の直ぐ後のバケットを形成しているフィンガー部材の先端部との間に卵を受入れるのに十分な間隔を規定するように決められ得る。
【0012】
また、本発明による養鶏用多段ケージシステムにおける集卵装置においては、好ましくは各集卵コンベアの一端と集卵用上下送り装置との間には集卵コンベアから移送されてきた卵を集卵用上下送り装置へスムースに受け渡すための転移コンベアが設けられ得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、複数のケージ列を上下に重ねて配置した養鶏用多段ケージシステムにおいて、各段のケージ列に沿って取付けた集卵コンベアの一端に共通に設けた上下にのびる集卵用上下送り装置における各バケットを多数のフィンガー部材で構成し、各フィンガー部材の先端部分に、集卵コンベアからの卵を一時的に受け止めるストッパーを設けたことにより、各集卵コンベアからの卵の動きを一時的に止めて、集卵用上下送り装置における各バケットに実質的な衝撃を伴わずにしかもタイミングよく乗り移させることができる。その結果、各集卵コンベアから集卵用上下送り装置への乗り移り時に発生し得る卵の損傷や破損並びに集卵用上下送り装置から集卵コンベアへの押し戻しによる破卵を実質的に防止することができる。特に集卵コンベアからの卵が連続して送られてきている場合でも、集卵用上下送り装置における各バケットへの乗り移りをスムースに行うことができる。
【0014】
また、集卵コンベアからの卵を一時的に受け止めるストッパーを、各集卵コンベアからの卵を受けるバケットを形成する多数のフィンガー部材の各々の先端部から集卵用上下送り装置の走行軌道に沿って該走行軌道の上流に向ってのびる伸張部分で構成した場合には、ストッパーとして別個に設ける必要がなく装置の複雑化が避けられ、コストの実質的な増加も避けることができることができる。
【0015】
さらに、各集卵コンベアの一端と集卵用上下送り装置との間には集卵コンベアから移送されてきた卵を集卵用上下送り装置へスムースに受け渡すための転移コンベアを設けた場合には、集卵コンベアで運ばれてきた卵の慣性力は和らげられ、卵の損傷や破損の低減に役立つと共に集卵用上下送り装置への卵のスムースな受け渡しを保証でき、また既存の集卵コンベアに対する本発明による集卵装置の適用が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を模式的に示す概略線図。
【図2】本発明の一実施形態による集卵装置の要部を示す概略斜視図。
【図3】図2に示す装置の一部を成す集卵用上下送り装置を背面側から見た拡大斜視図。
【図4】先行技術による養鶏用多段ケージシステムにおける集卵装置の一例を示す概略線図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面の図1〜図3を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1には、本発明の一実施形態による集卵装置の構成を概略的に示し、図示実施形態は三段式の養鶏用ケージシステムに適用した例であり、10は各段のケージ列(図示していない)に沿って設けられた集卵コンベアであり、各集卵コンベア10は駆動ロール11と図示していない従動ロールとのまわりを回って矢印で示す方向に走行する。なお12は案内ロール又はテンションロールであり、また13は集卵コンベア10で運ばれてきた卵である。また、各段のケージ列の長さに応じて、集卵コンベア10は複数個に連続させて配列して設けることもできる。
【0019】
また図1において14は集卵用上下送り装置であり、この集卵用上下送り装置14と各集卵コンベア10との間には、卵受け渡し用の転移コンベア15がそれぞれ設けられている。各転移コンベア15は、駆動スプロケット16と従動スプロケット17とに掛けられた二本のチェーン18間にそれ自体回動自在に間隔を開けて取付けられた多数のバー19で構成されている。集卵用上下送り装置14及び卵受け渡し用の各転移コンベア15の作動は独立して或いは関連して制御され、すなわち集卵用上下送り装置14及び卵受け渡し用の各転移コンベア15の走行速度は、集卵コンベア10で運ばれてきた卵を、転移コンベア15へそして集卵用上下送り装置14へと損傷させることなしにスムースに受け渡しできるように制御又は調整され得る。
【0020】
集卵用上下送り装置14は、駆動ローラ20と従動ローラ21とに掛合して、矢印で示すように上下方向に沿って回動される無端ベルト部材22と、この無端ベルト部材22に等間隔に取付けられた複数のバケット23とを有している。各バケット23は図2に示すように、多数のフィンガー部材24で構成され、各フィンガー部材24の先端部には、集卵用上下送り装置14の走行軌道に沿って上流すなわち走行方向の後方へ向ってのびる伸張部分24aが形成されている。この伸張部分24aは、卵13を一時的に止めるストッパーを構成し、また各フィンガー部材24の先端部の伸張部分24aの長さは、その先縁部がそのフィンガー部材24の直ぐ後のバケット23を形成しているフィンガー部材24の先端部との間に卵13を受入れるのに十分な間隔を規定するように決められている。バケット23の各フィンガー部材24は、その前面すなわち上面が無端ベルト部材22の平面に対して鋭角を成すように取付けられている。そして枠体25内に収容されている。枠体25の背面には、図2及び図3に示すように、格子状覆い部材26が設けられ、バケット23が従動ローラ21のまわりを回って下降行程に入ると、そのバケット23で受けて運ばれてきた卵は、その一つ先のバケット23すなわち先行するバケット23の各フィンガー部材24の背面すなわち下面で受けられ、その結果、卵はバケット23から落ちる方向へ移動するが、格子状覆い部材26によりバケット23上に留まった状態で移送される。一例として、各フィンガー部材24の先端部の伸張部分24aの長さは22.8mm、隣接バケット18におけるフィンガー部材24間の周囲に沿った距離は90mmに設定され得る。
【0021】
再び図1を参照すると、集卵用上下送り装置14の後側には、集卵用上下送り装置14に近接して移送用のバーコンベア27が設けられ、このバーコンベア27は、各集卵コンベア10及び転移コンベア15の走行方向に対してほぼ直交する方向に集卵部(図示していない)までのびている。バーコンベア27に相対した位置において、集卵用上下送り装置14の後側の格子状覆い部材26には卵放出開口28が設けられ、この卵放出開口28を介して集卵用上下送り装置14のバケット23で運ばれてきた卵はバーコンベア27上に放出される。
【0022】
このように構成した図示装置の動作において、各段のケージ列(図示していない)に沿って設けられた集卵コンベア10で搬送されてきた卵13は、転移コンベア15の一端へ乗り移り、そして転移コンベア15によりその他端へ向って運ばれる。転移コンベア15で運ばれてきた卵13は、集卵用上下送り装置14のバケット23におけるフィンガー部材24の先端部の伸張部分24aに当接して止められ、伸張部分24aとの当接から解放されるまで卵13はバケット23に乗り移らないようにしている。これにより、転移コンベア15から集卵用上下送り装置14のバケット23へ卵13が勢いよく乗り移って、破損したり或いは既に収容されている他の卵に強く当たったり、跳ね返ったりして破卵する危険を避けることができる。実際に、各集卵コンベア10から卵13はランダムに運ばれてくるため、卵同志の衝突やバケットへの卵の強い飛び込みが生じ易いが、集卵用上下送り装置14のバケット23自体にストッパーの機能を持たせたことにより、卵の受け渡しを緩衝作用を伴ってソフトに行うことができる。こうして集卵用上下送り装置14のバケット23で受けた卵13は、そのバケット23が集卵用上下送り装置14の下降行程へ移ると隣接した先行するバケット23の裏面に乗って運ばれる。そして集卵用上下送り装置14の後側の格子状覆い部材26における卵放出開口28に相対した位置まで来ると、バケット23上の卵13は卵放出開口28を通ってバーコンベア27上に放出される。
【0023】
ところで、図示実施例では、三段式の養鶏用ケージシステムに適用した例について説明してきたが、当然四段式又はそれ以上の多段式の養鶏用ケージシステムに適用することができる。
【0024】
また、図示実施例では、各集卵コンベア10と集卵用上下送り装置14との間に卵受け渡し用の転移コンベア15を設けているが、集卵用上下送り装置14の各バケット23にストッパーを設けたことにより、各集卵コンベア10からの卵13を集卵用上下送り装置14へ直接乗り移らせるように構成することもできる。
【0025】
さらに、図示実施例では、集卵用上下送り装置14の各バケット23におけるストッパーは、バケット23を構成しているフィンガー部材24の先端を走行方向に対して実質的に垂直方向後方へ曲げて形成されているが、代わりに各フィンガー部材24の先端部に走行方向に対して実質的に垂直方向後方へのびる別の部材を取付けて構成することも可能である。その場合には、フィンガー部材を構成している材料と異なる材料、例えば反発性の比較的低い弾性材料で構成することもできる。
【符号の説明】
【0026】
10:集卵コンベア
11:集卵コンベア10の駆動ロール
12:案内ロール又はテンションロール
13:卵
14:集卵用上下送り装置
15:卵受け渡し用の転移コンベア
16:駆動スプロケット
17:従動スプロケット
18:チェーン
19:バー
20:集卵用上下送り装置14の駆動ローラ
21:集卵用上下送り装置14の従動ローラ
22:無端ベルト部材
23:バケット
24a:フィンガー部材24の先端部における伸張部分
25:枠体
26:格子状覆い部材
27:バーコンベア
28:格子状覆い部材26における卵放出開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のケージ列を上下に重ねて配置した養鶏用多段ケージシステムにおける各段のケージ列に沿って各々取付けた集卵コンベアと、各集卵コンベアで集められた卵を、各段のケージ列に組み合わされた集卵コンベアの一端に共通に設けた上下にのびる集卵用上下送り装置とを有し、集卵用上下送り装置が、櫛の歯状に配列し、各集卵コンベアからの卵を受けるバケットを形成する多数のフィンガー部材を備え、各フィンガー部材の先端部分に、集卵コンベアからの卵を一時的に受け止めるストッパーを設けたことを特徴とする養鶏用多段ケージシステムにおける集卵装置。
【請求項2】
集卵コンベアからの卵を一時的に受け止めるストッパーが、各集卵コンベアからの卵を受けるバケットを形成する多数のフィンガー部材の各々の先端部から集卵用上下送り装置の走行軌道に沿って走行方向後方に向ってのびる伸張部分から成ることを特徴とする請求項1記載の養鶏用多段ケージシステムにおける集卵装置。
【請求項3】
各フィンガー部材の先端部の伸張部分の長さは、その先縁部がそのフィンガー部材の直ぐ後のバケットを形成しているフィンガー部材の先端部との間に卵を受入れるのに十分な間隔を規定するように決められることを特徴とする請求項2記載の養鶏用多段ケージシステムにおける集卵装置。
【請求項4】
集卵コンベアからの卵を一時的に受け止めるストッパーが、各集卵コンベアからの卵を受けるバケットを形成する多数のフィンガー部材の各々の先端部に取付けられた別の部材から成ることを特徴とする請求項1記載の養鶏用多段ケージシステムにおける集卵装置。
【請求項5】
各集卵コンベアの一端と集卵用上下送り装置との間には集卵コンベアから移送されてきた卵を集卵用上下送り装置へスムースに受け渡すための転移コンベアが設けられることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載の養鶏用多段ケージシステムにおける集卵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−19472(P2011−19472A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168739(P2009−168739)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(390030661)株式会社ハイテム (22)
【Fターム(参考)】