説明

餌溜まり防止装置

【課題】餌樋における直立ケージ列の外側に溜まった餌を確実にケージの有る位置へ移動させて餌溜まりを防止することができる餌溜まり防止装置を提供する。
【解決手段】餌溜まり防止装置1に、餌樋に沿って往復移動するホッパーフィーダ4の両端から外側へ延出する係止部5と、係止部5に対して接近したホッパーフィーダ4が離反する方向へ移動する時のみ係止可能な係止片17、及び両端のケージに当接することで係止片17を係止部5との係止が解除される方向へ移動させる係止解除片18を備え、ホッパーフィーダ4によって押動され、係止片17と係止部5とが係止することでホッパーフィーダ4によって引動されると共に、係止解除片18がケージに当接することで係止部5と係止片17との係止が解除されて移動が停止し、ケージの無い位置に溜まった餌をケージの有る位置へ移動させる餌戻しユニット10とを具備させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直立ケージ列の餌樋に沿って往復移動するホッパーフィーダを備えたホッパーフィーダ・ケージシステムに用いられ、餌樋の直立ケージ列の両端から外側の位置に餌が溜まるのを防止する餌溜まり防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のケージが列設された直立ケージ列の餌樋へ、餌樋に沿って往復移動することで餌を供給するホッパーフィーダを備えたホッパーフィーダ・ケージシステムが知られている。このホッパーフィーダ・ケージシステムでは、餌を供給しない時にホッパーフィーダをケージの前で停止させると、そのケージ内の家畜が餌を食べることが困難となるので、餌樋を直立ケージ列の両端から更に外側へ延長した上で、その餌樋における延長したケージの無い位置(以下、停止位置とも称する)へホッパーフィーダを移動させて停止させるようにしている。
【0003】
しかしながら、ホッパーフィーダは、移動中は餌樋内へ餌を供給するようになっているので、停止位置で停止するまでは餌樋におけるケージの無い位置まで餌を供給してしまい、その位置に供給された餌をケージ内の家畜が食べることができないため、停止位置に餌が溜まることとなる。また、餌ならし装置を備えたホッパーフィーダでは、餌をならすことでケージの無い位置へ餌が移動してしまい、上述と同様に餌が溜まることとなる。そのため、従来ではケージの無い位置に溜まった餌を、手作業でケージのある位置へ移動させたり、廃棄したりしており、手間がかかると共に、コストがかかる問題があった。
【0004】
そこで、本願出願人は、餌樋におけるホッパーフィーダの停止位置よりも外側と、直立ケージ列における両端のケージまでとの間で、ホッパーフィーダの移動に伴って餌樋内を往復移動する餌戻しユニットを備え、餌戻しユニットによってケージの無い位置に溜まった餌をケージの有る位置へ自動的に移動させるようにした餌溜まり防止装置を種々提案している(特許文献1及び特許文献2)。
【0005】
具体的には、特許文献1は、ホッパーフィーダによって停止位置よりも外側に位置した餌戻しユニットを、コイルバネの付勢力によって直立ケージ列の端部のケージまで復帰させるようにしたものである。また、特許文献2は、ホッパーフィーダと餌戻しユニットとを磁気吸着機構により磁着するようにした上で、直立ケージ列の端部のケージ付近で開放機構によって磁着を開放するようにしたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のものでは、餌樋内に配置されたコイルバネによって餌戻しユニットを復帰させるようにしているので、コイルバネが伸びた時にその隙間に餌が入り込み、バネ本来の特性が失われて餌戻しユニットが動き難くなる問題があった。また、停止位置へ移動するホッパーフィーダには、餌戻しユニットを介してコイルバネの付勢力がかかるので、コイルバネの付勢力に抗してホッパーフィーダを移動させなければならず、エネルギー損失の大きいものとなっていた。
【0007】
一方、特許文献2のものでは、ホッパーフィーダと餌戻しユニットとを磁着するようにしているので、餌樋に溜まった餌の量が多かったり、餌樋内における餌戻しユニットの摺動抵抗が大きかったりすると、磁着が開放されてしまい餌戻しユニットにより溜まった餌をケージの有る位置へ移動させることができなくなる虞があった。これに対して、より強力な磁石を用いることが考えられるが、この場合、停止位置からケージ側へホッパーフィーダが移動して磁着した餌戻しユニットを開放する際に、その強力な磁着力に抗した力でホッパーフィーダを移動させる必要があり、ホッパーフィーダの移動に係るコストが増加する問題がある。また、磁気吸着機構の磁石を電磁石とした場合、電磁石を作動させるための電力が必要となると共に、電磁石をON/OFFさせるリードスイッチ等が必要となり、餌溜まり防止装置に係るコストが増加する問題がある。更に、ホッパーフィーダと餌戻しユニットとを磁着するようにしているので、その磁着面に餌が付着すると磁着力(吸着力)が低下して開放され易くなり、餌戻しユニットの移動に支障を来す虞があった。そのため、定期的に磁着面を清掃する必要があり、メンテナンスに手間がかかってランニングコストが高くなる問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記の実情に鑑み、餌樋における直立ケージ列の外側に溜まった餌を確実にケージの有る位置へ移動させて餌溜まりを防止することができる餌溜まり防止装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の餌溜まり防止装置は、「直立ケージ列よりも長い長尺状の餌樋に沿って往復移動すると共に餌樋内へ餌を供給するホッパーフィーダに取付けられ、餌樋内で餌樋に沿った方向の両端から外側へ延出する係止部と、該係止部に対して接近したホッパーフィーダが離反する方向へ移動する時のみ係止可能な係止片、及び直立ケージ列における両端のケージに当接することで該係止片を前記係止部との係止が解除される方向へ移動させる係止解除片を備え、ホッパーフィーダに当接することでホッパーフィーダによって押動され、前記係止片と前記係止部とが係止することでホッパーフィーダによって引動されると共に、前記係止解除片がケージに当接することで前記係止部と前記係止片との係止が解除されて移動が停止し、餌樋における直立ケージ列の両端よりも外側のケージの無い位置に溜まった餌をケージの有る位置へ移動させる餌戻しユニットとを具備する」ことを特徴とする。
【0010】
ここで、「係止部」としては、「板状又は棒状の部材の先端を直角以上に屈曲させたもの」、「返しを有した爪状のもの」、「リング状又は孔を有したもの」、等を例示することができる。また、「接近したホッパーフィーダ」とは、ホッパーフィーダが餌戻しユニットと当接した状態、又は、ホッパーフィーダの係止部が係止片よりも餌戻しユニットの中央側に位置した状態のことである。
【0011】
また、「ホッパーフィーダが離反する方向へ移動する時のみ係止部と係止可能な係止片」としては、「回動可能に軸支された係止片の先端が、ホッパーフィーダの移動軸に対して略直角方向を向いた位置と、ホッパーフィーダから遠ざかった方向を向いた位置との間でのみ回動可能とされたもの」、「回転可能に軸支された係止片の先端を、ホッパーフィーダ側から押圧すると回転し、ホッパーフィーダとは反対側から押圧すると回転不能とされたラチェット機構を備えたもの」、「ホッパーフィーダの移動軸に対して略直角方向へ出没可能とされ、ホッパーフィーダ側から当接すると没入するもの」、等を例示することができる。
【0012】
更に、「係止解除片」としては、「餌戻しユニットの本体に回転可能に軸支されると共に所定位置で係止片を支持し、ケージと当接可能な当接部がケージと当接することで軸支された軸周りに回転して係止片を解除する方向へ回転移動させるもの」、「係止片の基端側が摺動可能な傾斜したカム面を有し、ケージとの当接によってカム面が移動することで係止片が解除する方向へ移動するもの」、等を例示することができる。
【0013】
本発明の餌溜まり防止装置は、餌樋における直立ケージ列の両端よりも外側のケージの無い位置に配置された餌戻しユニットに対して、ケージ側からホッパーフィーダが移動してくると、ホッパーフィーダが餌戻しユニットに当接し、餌戻しユニットを押すようにして餌樋の端部へ向かって移動(押動)させることができる。この際に、餌戻しユニットの係止片は、ホッパーフィーダが餌戻しユニットから遠ざかる方向へ移動する時のみ係止部と係止するようになっているので、ホッパーフィーダの係止部は係止片を通り越して餌戻しユニットに接近した位置となる。なお、ホッパーフィーダの係止部を餌戻しユニットに当接させて係止部によって餌戻しユニットを押すようにしても良い。その後、ホッパーフィーダが直立ケージ列よりも外側のケージの無い停止位置に到達すると、その移動が停止すると共に餌戻しユニットの押動も停止する。なお、ホッパーフィーダの停止位置への移動に伴って、餌樋におけるケージの無い位置にも餌が供給された状態となる。
【0014】
一方、この停止位置の状態からホッパーフィーダをケージ側へ移動させると、餌戻しユニットに対してホッパーフィーダが離反する方向へ移動することとなり、係止片を越えて餌戻しユニットに接近した位置の係止部が係止片の位置に到達すると、係止部と係止片とが互いに係止し、係止部及び係止片を介して餌戻しユニットをケージの有る方向へ牽引するように移動(引動)させることができる。この餌戻しユニットがケージの有る方向へ移動することで、ケージの無い停止位置に溜まった餌を、餌戻しユニットによって押圧してケージの有る位置へ移動させることができる。そして、ホッパーフィーダによってケージの方向へ引動された餌戻しユニットは、その係止解除片が端部のケージに当接すると、係止部との係止が解除される方向へ係止片が移動して係止が解除されると同時に、餌戻しユニットの移動が停止し、ホッパーフィーダのみが移動することとなる。
【0015】
このように、本発明の餌溜まり防止装置によると、上述した餌戻しユニットの動きによって、餌樋における直立ケージ列よりも外側に溜まった餌を確実にケージの有る位置へ移動させて餌溜まりを防止することができる。また、ホッパーフィーダによる押動や引動によって餌戻しユニットを移動させるようにしているので、従来の特許文献1のものと比較して、ホッパーフィーダにコイルバネ等の付勢力が作用することが無い。また、餌戻しユニットの係止解除片が両端のケージに当接するとホッパーフィーダの係止部と餌戻しユニットの係止片との係止が解除されるようにしているので、従来の特許文献2のものと比較して、餌戻しユニットの引動を解除する際に磁気吸着構造の磁着力がホッパーフィーダに作用することが無い。従って、ホッパーフィーダには、餌戻しユニットの摺動抵抗と、溜まった餌を移動させる移動抵抗のみが作用し、従来のように付勢力や磁着力等が更に作用しないので、ホッパーフィーダの移動に係る負荷を低減させることができ、消費電力が増加するのを防止することができると共に、ランニングコストを低減させることができる。
【0016】
また、係止部と係止片との係止によって餌戻しユニットを引動するようにしており、ホッパーフィーダと餌戻しユニットとを機械的に連結するようにしているので、係止部と係止片との間に餌等が挟まっても、ホッパーフィーダと餌戻しユニットとの連結が弱くなることが無く、餌戻しユニットを確実に引動させて溜まった餌をケージの有る位置に移動させることができる。
【0017】
更に、餌戻しユニットに係止片と係止解除片とを備えるようにしているので、例えば、係止片や係止解除片と同様の機構をホッパーフィーダ側に備えるようにした場合と比較して、ホッパーフィーダの重量を軽くすることができ、ホッパーフィーダを移動させ易くすることができる。また、餌戻しユニットの重量が係止片や係止解除片の分だけ重くなるので、餌戻しユニットにより溜まった餌を移動させる際に、餌戻しユニットが溜まった餌に乗り上げてしまい餌溜まりを解消させることができなくなるのを防止することができる。
【0018】
なお、ホッパーフィーダによる餌戻しユニットの引動を、餌戻しユニットの重心よりも下側の位置で引動(牽引)させるようにすることが望ましく、これにより、餌戻しユニットを安定した状態で餌樋内を摺動させることができる。また、ホッパーフィーダの係止部を、水平方向へ広がるような板状の先端に備えるようにしても良く、これにより、板状の部分で餌樋内に供給された餌をならすことが可能となり、餌ならし装置を別途備える必要がなくホッパーフィーダに係る構成を簡略化してコストを低減させることができる。
【0019】
ところで、係止片と係止解除片とを一体的に形成し係止片のみが単独で可動しないような構成としても良いが、この場合、ホッパーフィーダの係止部が係止片と係止しない方向へ移動して係止片と当接すると、係止片だけでなく係止解除片も一緒に可動することとなるので、係止片の可動抵抗が大きくなってエネルギー損失が増加する問題があると共に、可動抵抗が大きくなることで係止片が復帰し難くなり、係止部と係止させることができなくなる虞がある。そこで、係止片のみが単独で可動するようにすることが望ましく、これにより、係止片の可動抵抗を小さくしてエネルギー損失を低減させることができると共に、係止片を復帰させ易くすることができる。
【0020】
また、本発明の餌溜まり防止装置は、上記の構成に加えて、「前記係止片及び前記係止解除片は、前記係止片がホッパーフィーダの前記係止部と係止可能な位置へ自重によって復帰する」ことを特徴としても良い。
【0021】
ここで、「自重によって復帰」としては、「係止片及び係止解除片を夫々回動可能に軸支した上で、それらの回動軸芯と重心との位置関係によって復帰するようにしたもの」、「係止片及び係止解除片を上下方向へスライド可能に支持したもの」、等が挙げられる。
【0022】
本発明の餌溜まり防止装置によると、係止片及び係止解除片の自重によって、ホッパーフィーダの係止部と係止不能となった係止片が係止可能となる位置へ復帰するようにしているので、例えば、バネ等の弾性部材を用いて復帰させるようにした場合と比較して、餌溜まり防止装置に係る構成を簡略化することができ、コストを低減させることができる。
【0023】
また、バネ等の弾性部材を用いて係止片等を復帰させるようにした場合、係止片の係止を解除させる際に復帰させるための弾性部材による付勢力が作用し、解除にかかる負荷が大きくなって特許文献2のものと同様の問題が発生するが、本発明によると、自重で復帰させるようにしているので、係止片を解除する際に係止片や係止解除片の自重に抗うだけの力があれば良く、解除にかかる負荷を軽減させて上記の問題を解決することができる。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明によれば、直立ケージ列の餌樋に沿って往復移動するホッパーフィーダによって、餌樋における直立ケージ列よりも外側に配置された餌戻しユニットを確実に押動・引動させて、餌樋における直立ケージ列の両端よりも外側のケージの無い位置に溜まった餌をケージの有る位置へ自動的に移動させることができるので、作業者の手間を軽減させることができると共に、餌や作業に係るコストを低減させることが可能な餌溜まり防止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(A)は餌溜まり防止装置の正面図であり、(B)は餌溜まり防止装置における餌戻しユニットの斜視図である。
【図2】(A)は餌戻しユニットにおける係止片の動きを示す説明図であり、(B)は餌戻しユニットにおける餌戻しアームの動きを示す説明図である。
【図3】餌溜まり防止装置においてホッパーフィーダによる餌戻しユニットの押動を示す説明図である。
【図4】ホッパーフィーダによる餌戻しユニットの引動を示す説明図である。
【図5】図3とは異なる状態から餌戻しユニットが押動する例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態である餌溜まり防止装置について、図1乃至図5に基いて詳細に説明する。図1(A)は餌溜まり防止装置の正面図であり、(B)は餌溜まり防止装置における餌戻しユニットの斜視図である。また、図2(A)は餌戻しユニットにおける係止片の動きを示す説明図であり、(B)は餌戻しユニットにおける餌戻しアームの動きを示す説明図である。更に、図3は、餌溜まり防止装置においてホッパーフィーダによる餌戻しユニットの押動を示す説明図であり、図4は、ホッパーフィーダによる餌戻しユニットの引動を示す説明図である。また、図5は、図3とは異なる状態から餌戻しユニットが押動する例を示す説明図である。
【0027】
本実施形態の餌溜まり防止装置1は、複数のケージ2を横方向へ列設した直立ケージ列の前側に、ケージ2内の家畜(例えば、鶏)へ与える餌を受けるための長尺状の餌樋3と、餌樋3に沿って往復移動し餌樋3内に餌6を供給するホッパーフィーダ4とを備えたホッパーフィーダ・ケージシステムに好適に用いることができるものであり、長尺状の餌樋3における直立ケージ列の両端よりも外側のケージの無い位置に餌6が溜まるのを防止するものである。
【0028】
この餌溜まり防止装置1は、ホッパーフィーダ4における餌樋3内へ挿入された部位の餌樋3に沿った方向の両端から、餌樋3に沿った外側へ延出するようにホッパーフィーダ4に取付けられる係止部5と、係止部5と機械的に係止することでホッパーフィーダ4によって牽引(引動)されると共に、ホッパーフィーダ4に当接することでホッパーフィーダ4によって押動され、餌樋3における直立ケージ列の両端よりも外側のケージ2の無い位置で往復移動可能とされた餌戻しユニット10と、を備えている。この餌溜まり防止装置1における係止部5は、基端がホッパーフィーダ4に取付けられた帯板状の部材の先端を上方へ屈曲させたものである。
【0029】
本例の餌溜まり防止装置1における餌戻しユニット10は、図1に示すように、餌樋3の延びる方向に対して直角方向へ広がり、側辺及び下辺が餌樋3の断面形状と略一致するように形成された板状の押圧板11と、一対の押圧板11を所定間隔で連結する平面視が略コ字状の連結板12とを有したユニット本体13を備えている。このユニット本体13は、餌樋3の断面と略一致する押圧板11によって餌樋3内の餌6を綺麗に押出すことができると共に、連結板12によって一対の押圧板11を連結することで、餌樋3内でユニット本体13が安定するようになっている。また、連結板12には、上辺における長手方向の中央に形成された後述するアーム16の回転量を規制するアームストッパ12aと、アーム16を軸支するための軸孔12bとを備えている。
【0030】
なお、連結板12の軸孔12bは、長手方向中央を中心として対称に備えられており、同一形状のユニット本体13で直立ケージ列における両端の何れの側にも使用することができるようになっている。また、図1(A)では、押圧板11と連結板12とを固定する固定具14を省略して示してある。なお、図1(B)では固定具14としてボルト及びナットを用いた例を示してあるが、リベット等の他の固定具を用いても良い。
【0031】
また、餌戻しユニット10は、基端が一対の押圧板11の間で連結板12に対して回転可能に軸支され、先端が一方の押圧板11よりも外方へ延出するアーム16と、アーム16の先端に回動可能に支持された板状の係止片17と、係止片17が支持されたアーム16の先端が延びる方向と同じ方向で上方へ向かって斜めにアーム16の所定位置から延びる係止解除片18と、を更に備えている。このアーム16は、図1に示すように、基端がユニット本体13の長手方向中央よりも一方の押圧板11(図1(A)では左側の押圧板11)に接近した位置で、押圧板11における高さの約半分の位置に形成された連結板12の軸孔12bに軸支されていると共に、係止片17を支持する先端が一方の押圧板11を乗り越えるように外方へ延出しており、全体が略L字状に形成されている。
【0032】
また、アーム16は、係止片17を支持した先端に係止片17が回動可能に支持された位置よりも上側で係止片17における押圧板11を向いた側の辺と当接可能な係止片ストッパ19と、軸支された基端と係止片17を支持する先端と間の途中から、連結板12よりも上方へ延出した後に押圧板11の幅方向(餌樋3における幅方向と対応した方向)に対して押圧板11よりも外側へ延出するように屈曲した棹部20と、を有している。この棹部19の先端からは、係止解除片18が斜め上方へ延びだしており、餌戻しユニット10を餌樋3内に配置した時に、係止解除片18がケージ2と当接することができるようになっている。なお、本例のアーム16、係止解除片18、係止片ストッパ19、及び棹部20は、一枚の金属板を所定形状に切断した後に屈曲形成することで、一体的に形成されている。
【0033】
本例の餌戻しユニット10における係止片17は、図2(A)に示すように、アーム16の係止片ストッパ19と当接することで、略垂下した状態から下端が押圧板11から遠ざかる方向へ回動するのを規制されるようになっており、下端が押圧板11へ接近する方向へのみ回動するようになっている。この係止片17は、図1(A)に示すように、通常の状態では自重によって略垂下した状態となっている。一方、アーム16は、図2(B)に示すように、押圧板11の上辺に当接することで先端(係止片17)がこれ以上下方へ回転するのを規制され、連結板12のアームストッパ12aに当接することで先端(係止片17)がこれ以上上方へ回転するのを規制されるようになっている。このアーム16は、重心が回転可能に軸支された位置よりも先端側に位置しており、図1(A)に示すように、自重によって押圧板11の上辺と当接した状態となっている。
【0034】
なお、本例の餌戻しユニット10では、アーム16及び係止片17は、ボルト21とナット22により連結板12及びアーム16に支持されており、それらを締結しない位置でボルト21にナット22を固定することで、アーム16及び係止片17が回転可能に軸支されるようになっている。本例では、緩止め機構を備えたナット22を用いたり、ボルト21とナット22とを接着したりすることで、ナット22が緩むのを防止するようにしている。
【0035】
次に、本実施形態における餌溜まり防止装置1の動作について説明する。まず、餌溜まり防止装置1における餌戻しユニット10を、図3乃至図5に示すように、長尺状の餌樋3における直立ケージ列の両端のケージ2よりも外側のケージ2の無い位置に、ユニット本体13に対して係止片17が直立ケージ列の中央側を向くように、餌樋3内に配置する。餌戻しユニット10を餌樋3内に設置した状態で、直立ケージ列の中央側からホッパーフィーダ4が餌樋3内へ餌6を供給しながらケージ2の無い端部側(餌戻しユニット10へ接近する側)へ移動してくると(図3(ア))、ホッパーフィーダ4の係止部5が餌戻しユニット10の係止片17と当接すると共にホッパーフィーダ4の移動に伴って係止片17が、その下端がユニット本体13へ接近する方向へ回動する(図3(イ))。
【0036】
そして、係止片17が係止部5から逃げるように回動することで、係止部5が係止片17を通り越すと同時に、係止片17が自重によって初期状態の垂下した位置へ復帰し、更にホッパーフィーダ4が外側へ移動すると、係止部5がユニット本体13に当接することとなる(図3(ウ))。係止部5がユニット本体13に当接することで、餌戻しユニット10はホッパーフィーダ4によって押されて押動し(図3(エ))、ホッパーフィーダ4が端部のケージ2よりも外側のケージ2の無い停止位置に到達すると、ホッパーフィーダ4の移動が停止すると共に餌戻しユニット10も停止する(図3(オ))。この状態では、ホッパーフィーダ4によってケージ2の無い停止位置まで餌6が供給された状態となっている。また、停止位置に供給された餌6は、ケージ2内の家畜が食べることができず、そのまま残って溜まった状態となる(図4(ア))。
【0037】
一方、ホッパーフィーダ4が餌樋3における停止位置の状態から直立ケージ列の中央側へ移動を開始すると、ユニット本体13と当接していた係止部5がユニット本体13から遠ざかる方向(離反する方向)へ移動する。なお、ホッパーフィーダ4の移動開始時点では、餌戻しユニット10は移動せず停止した状態となっている。そして、餌戻しユニット10から離反する方向へ移動するホッパーフィーダ4の係止部5が、係止片17と当接すると、係止片17はその下端がユニット本体13から遠ざかる方向へ回動しようとするが、係止片ストッパ19によってその回動が阻止され係止片17と係止部5とが機械的に係止された状態となり(図4(イ))、餌戻しユニット10がホッパーフィーダ4に牽引されて直立ケージ列側へ引動(移動)することとなる。
【0038】
このように、ホッパーフィーダ4に牽引されて餌戻しユニット10が直立ケージ列側へ移動することで、餌樋3におけるケージ2の無い位置に溜まった餌6が、餌戻しユニット10の押圧板11によって押圧されてケージ2の有る側へ移動する。そして、ホッパーフィーダ4によって直立ケージ列側へ引導する餌戻しユニット10の係止解除片18が、直立ケージ列における端部のケージ2に当接すると(図4(ウ))、係止解除片18の先端が上昇する方向へアーム16が回転すると同時に、アーム16の先端に支持された係止片17全体が上昇する(図4(エ))。その後、更にアーム16が回転して係止片17が上昇すると、係止片17と係止部5との係止が解除され、餌戻しユニット10が直立ケージ列における端部のケージ2付近の位置に停止して、餌樋3におけるケージ2の無い位置に溜まった餌6をケージ2の有る位置へ移動させた状態となると共に、ホッパーフィーダ4のみが直立ケージ列の中央側へ更に移動することとなる(図4(オ))。
【0039】
なお、溜まった餌6をケージ2の有る位置へ移動させて停止した餌戻しユニット10は、図4(オ)に示すように、ケージ2に当接した係止解除片18によってアーム16が回転して係止片17が上昇した状態となっているが、この状態でホッパーフィーダ4がケージ2の無い端部側へ移動してくると(図5(ア))、ホッパーフィーダ4の係止部5が餌戻しユニット10のユニット本体13に当接し(図5(イ))、上述と同様に、餌戻しユニット10を外側へ向かって押動させる。そして、餌戻しユニット10が外側へ向かって移動するのに伴い、アーム16が自重によって係止片17が下降する方向へ回転し、係止解除片18がケージ2から離れると、アーム16が押圧板11の上辺と当接して自重によるアーム16の回転が停止し、初期の位置に復帰することとなる(図5(ウ))。
【0040】
上述したように、本実施形態の餌溜まり防止装置1によると、餌戻しユニット10の動きによって、餌樋3における直立ケージ列よりも外側に溜まった餌6を確実にケージ2の有る位置へ移動させて餌溜まりを防止することができる。また、ホッパーフィーダ4には、餌戻しユニット10の摺動抵抗と、溜まった餌6を移動させる移動抵抗のみが作用し、従来のように付勢力や磁着力等が更に作用しないので、ホッパーフィーダ4の移動に係る負荷を低減させることができ、消費電力が増加するのを防止することができると共に、ランニングコストを低減させることができる。
【0041】
また、係止部5と係止片17との係止によって餌戻しユニット10を引動するようにしており、ホッパーフィーダ4と餌戻しユニット10とを機械的に連結するようにしているので、係止部5と係止片17との間に餌6等が挟まっても、ホッパーフィーダ4と餌戻しユニット10との連結が弱くなることが無く、餌戻しユニット10を確実に引動させて溜まった餌6をケージ2の有る位置に移動させることができる。更に、係止片17及び係止解除片18(アーム16)の自重によって、ホッパーフィーダ4の係止部5と係止不能となった係止片17が係止可能となる位置へ復帰するようにしているので、例えば、バネ等の弾性部材を用いて復帰させるようにした場合と比較して、餌溜まり防止装置1に係る構成を簡略化することができ、コストを低減させることができる。
【0042】
更に、アーム16から係止解除片18を、係止片17を支持した方向と同じ方向で斜め上へ延びるように形成しているので、ケージ2と当接することで係止解除片18を介してアーム16を容易に回転させることができると共に、アーム16の重心を軸支された位置よりも遠い係止片17側へ位置させることができ、アーム16を自重によって初期の位置に復帰させ易くすることができる。
【0043】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0044】
すなわち、上記の実施形態では、係止部5を、帯板状の部材の先端を上方へ屈曲させたものを示したが、これに限定するものではなく、例えば、係止片を挿通可能なリング状又は孔としたものや、鉤爪状のものとしても良い。
【0045】
また、上記の実施形態では、アーム16の先端に回動可能に支持した係止片17に対して、係止片17が回動可能に軸支された位置よりも上側で係止片17における押圧板11を向いた側の辺と当接可能な係止ストッパ19を備えることで、ホッパーフィーダ4が離反する方向へ移動する時のみ係止可能な係止片17を構成するようにしたものを示したが、これに限定するものではなく、例えば、上下方向へスライド可能とされ押圧板11と反対側の辺が下方へ向かって細くなるような傾斜面を有した係止片としても良く、これにより、接近する係止部が傾斜面に当接すると係止片全体が上方へスライドして係止不能となり、押圧板11側から離反する係止部が当接すると係止片と係止可能となるので、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 餌溜まり防止装置
2 ケージ
3 餌樋
4 ホッパーフィーダ
5 係止部
6 餌
10 餌戻しユニット
11 押圧板
12 連結板
12a アームストッパ
12b 軸孔
13 ユニット本体
16 アーム
17 係止片
18 係止解除片
19 係止片ストッパ
20 棹部
21 ボルト
22 ナット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開平10−215725号公報
【特許文献2】特開2004−329131号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直立ケージ列よりも長い長尺状の餌樋に沿って往復移動すると共に餌樋内へ餌を供給するホッパーフィーダに取付けられ、餌樋内で餌樋に沿った方向の両端から外側へ延出する係止部と、
該係止部に対して接近したホッパーフィーダが離反する方向へ移動する時のみ係止可能な係止片、及び直立ケージ列における両端のケージに当接することで該係止片を前記係止部との係止が解除される方向へ移動させる係止解除片を備え、ホッパーフィーダに当接することでホッパーフィーダによって押動され、前記係止片と前記係止部とが係止することでホッパーフィーダによって引動されると共に、前記係止解除片がケージに当接することで前記係止部と前記係止片との係止が解除されて移動が停止し、餌樋における直立ケージ列の両端よりも外側のケージの無い位置に溜まった餌をケージの有る位置へ移動させる餌戻しユニットと
を具備することを特徴とする餌溜まり防止装置。
【請求項2】
前記係止片及び前記係止解除片は、
前記係止片がホッパーフィーダの前記係止部と係止可能な位置へ自重によって復帰することを特徴とする請求項1に記載の餌溜まり防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−10627(P2011−10627A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159431(P2009−159431)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(390030661)株式会社ハイテム (22)
【Fターム(参考)】