説明

香料組成物

【課題】メコノプシス本来の花香気の再現性が高く、かつ、優れた嗜好性を有する香料組成物を提供する。
【解決手段】(A)ベンジルアルコール、(B)アニスアルデヒド、(C)アニシルアルコール、(D)2−フェニルエチルアルコール及び(E)メチル p−アニセートを含有し、
(A)ベンジルアルコール100質量部に対し、(B)アニスアルデヒドを30〜70質量部、(C)アニシルアルコールを30〜70質量部、(D)2−フェニルエチルアルコールを2〜50質量部、(E)メチル p−アニセートを2〜50質量部の比率で含有することを特徴とする香料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メコノプシス・グランディスの花の香りを再現した香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メコノプシス属(学名:Meconopsis)は、ケシ目ケシ科に属し、ヒマラヤの高山地帯を中心とするチベット、四川省、青海、雲南省等に自生する1年又は多年生植物である。数十種が知られ、青い花を咲かせる種は、俗称「ヒマラヤの青いケシ」とも呼ばれる。暑さに弱く、日本では北海道や長野において一部栽培されているのみで、生育条件が限定される。植物全体特に茎と芽が毛に覆われている。一般には青い4弁の花を6月から7月にかけて咲かせる。
【0003】
特に知られている品種は、メコノプシス・グランディス(学名:Meconopsis grandis Prain)、メコノプシス・ベトニキフォリア(学名:Meconopsis betonicifolia Franch)、メコノプシス・ラセモサ(学名:Meconopsis racemosa var.racemosa)である。共に、透き通る青い花弁を持ち、雄蕊は黄色から橙色を呈し、中心に淡黄色の雌蕊を有する。
【0004】
これらの植物に関する公知文献としては、非特許文献1〜3が挙げられる。これら文献には、いくつかの含有成分分析結果が記載されているが、香気成分の再現に関する検討は一切なされてはいない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Chemistry & Biodiversity vol.7(2010),p1930-1948
【非特許文献2】Zhongguo Yaoxue Zazhi,42(7), (2007)
【非特許文献3】Phytochemistry, 67(10),(2006),992(Yoshida Kumi 等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般にメコノプシス属の花は「ヒマラヤの青いケシ」と呼ばれるように、青色の花等の形態やその生態に着目されているが、メコノプシス属の香気成分についての詳細な検討はほとんど検討されてこなかった。そこで、本発明者は、メコノプシス属として特に、メコノプシス・グランディス(以下、単に「メコノプシス」と略記する。)に着目し、その花の香気について検討を行った。開花直後のメコノプシスの花の香気を実際に調べてみると、ライラックの花を想起させる爽やかなフローラル調の香りとともに、バルサミック(樹脂)調の淡い深みのある甘さをもつ優れた香気を有することを見出した。
【0007】
本発明者は、開花直後のメコノプシスの花の香気をヘッドスペース香気分析法によるガスクロマトグラフィーによる分析等を行い、ベンジルアルコールがメコノプシスの主成分であることを見出した。さらに、数十種類の香気成分を見出し、その香気の再現を試みたが、メコノプシスの花の香気としては、とても満足できるものではなかった。
【0008】
従って、本発明の課題は、メコノプシス本来の花の香気を再現し、かつ、優れた嗜好性を有する香料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するためメコノプシスの花の香気成分について鋭意検討した結果、各種セスキテルペン、アニスアルデヒド、アニシルアルコール、メチル p−アニセート、2−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、2−フェニルエチルアルコール、2−ヘプタデカノン、4−メトキシフェニルエチルアルコール等の数十種類のメコノプシスの香気成分について、香気の組み合わせを種々検討した結果、ベンジルアルコール、アニスアルデヒド、アニシルアルコール、2−フェニルエチルアルコール及びメチル p−アニセートを特定質量比で配合することで、メコノプシス本来のライラックの花を想起させる爽やかなフローラル調の香りとともに、淡い甘さとバルサミックな側面の香りも感じられるメコノプシスらしい香りを再現でき、しかも嗜好性が高い香料組成物が得られることを見いだし、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、(A)ベンジルアルコール、(B)アニスアルデヒド、(C)アニシルアルコール、(D)2−フェニルエチルアルコール及び(E)メチル p−アニセートを含有し、
(A)ベンジルアルコール100質量部に対し、(B)アニスアルデヒドを30〜70質量部、(C)アニシルアルコールを30〜70質量部、(D)2−フェニルエチルアルコールを2〜50質量部、(E)メチル p−アニセートを2〜50質量部の比率で含有することを特徴とする香料組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、上記香料組成物を含有する飲食品又は香粧品を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の香料組成物は、ライラックの花を想起させる爽やかなフローラル調の香りとともに、バルサミック(樹脂)調の淡い深みのある甘さをもつ香りも感じられるメコノプシス本来の花の香気を彷彿させ、優れた嗜好性を有する香料組成物であり、香粧品及び飲食品用の香料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
メコノプシスはケシ目ケシ科に属し、ヒマラヤの高山地帯を中心とするチベット、四川省、青海、雲南省等に自生する多年生植物で、6月から7月にかけて青い4弁の花を咲かせる俗称「ヒマラヤの青いケシ」と呼ばれる希少な植物である。
【0014】
本発明者は、開花直後のメコノプシスの花の香気が、これまで知られていないライラック様の爽やかなフローラル調の香りを有することを見出している。
【0015】
本発明の香料組成物においては、メコノプシスの花の香気の主成分である(A)ベンジルアルコールに、さらに(B)アニスアルデヒド、(C)アニシルアルコール、(D)2−フェニルエチルアルコール及び(E)メチル p−アニセートを含有する。
【0016】
本発明で用いる(A)ベンジルアルコール、(B)アニスアルデヒド、(C)アニシルアルコール、(D)2−フェニルエチルアルコール、(E)メチル p−アニセートは、いずれも公知の成分である。
【0017】
本発明の香料組成物においては、メコノプシスの花の香気の再現性の点から、メコノプシスの香気主成分である(A)ベンジルアルコール100質量部に対して、(B)アニスアルデヒドは30〜70質量部必要であり、好ましくは40〜70質量部であり、より好ましくは40〜60質量部である。同様に(A)ベンジルアルコール100質量部に対して、(C)アニシルアルコールは30〜70質量部必要であり、好ましくは40〜70質量部であり、より好ましくは40〜60質量部である。(A)ベンジルアルコール100質量部に対して、(D)2−フェニルエチルアルコールは2〜50質量部必要であり、好ましくは4〜40質量部であり、より好ましくは10〜40質量部である。(A)ベンジルアルコール100質量部に対して、(E)メチル p−アニセートは2〜50質量部必要であり、好ましくは4〜40質量部であり、より好ましくは10〜40質量部である。
【0018】
本発明の香料組成物において(A)ベンジルアルコールの香料組成物中における含有量は、前記含有質量比を満たせば特に限定されないが、メコノプシス本来の花の香気の再現性の点、及び香料としての取り扱いのし易さから、好ましくは10〜38質量%であり、より好ましくは20〜38質量%であり、さらに好ましくは25〜38質量%である。
【0019】
本発明で用いる(B)アニスアルデヒドの香料組成物中における含有量は、前記含有質量比を満たせば特に限定されないが、メコノプシス本来の花の香気の再現性の点、及び香料としての取り扱いのし易さから、好ましくは5〜20質量%であり、より好ましくは10〜20質量%であり、さらに好ましくは10〜19質量%である。
【0020】
本発明で用いる(C)アニシルアルコールの香料組成物中における含有量は、前記含有質量比を満たせば特に限定されないが、メコノプシス本来の花の香気の再現性の点、及び香料としての取り扱いのし易さから、好ましくは5〜20質量%であり、より好ましくは10〜20質量%であり、さらに好ましくは10〜19質量%である。
【0021】
本発明で用いる(D)2−フェニルエチルアルコールの香料組成物中における含有量は、前記含有質量比を満たせば特に限定されないが、メコノプシス本来の花の香気の再現性の点、及び香料としての取り扱いのし易さから、好ましくは2.5〜9.5質量%であり、より好ましくは5〜9.5質量%であり、さらに好ましくは7.5〜9.5質量%である。
【0022】
本発明で用いる(E)メチル p−アニセートの香料組成物中における含有量は、前記含有質量比を満たせば特に限定されないが、メコノプシス本来の花の香気の再現性の点、及び香料としての取り扱いのし易さから、好ましくは2.5〜9.5質量%であり、より好ましくは5〜9.5質量%であり、さらに好ましくは7.5〜9.5質量%である。
【0023】
本発明の香料組成物において、フローラル調の香りとバルサミック調の香りを引き立たせるために、さらに(F)4−メトキシフェニルエチルアルコール及び/又は(G)メチルバニレートを含有させることが好ましい。これらの(F)4−メトキシフェニルエチルアルコール、(G)メチルバニレートは、いずれも公知の成分である。
【0024】
特にメコノプシスの花香気の再現性の点から、(A)ベンジルアルコール100質量部に対して、(F)4−メトキシフェニルエチルアルコールは2〜10質量部必要であり、好ましくは3〜8質量部である。また、(A)ベンジルアルコール100質量部に対して、(G)メチルバニレートは2〜10質量部必要であり、好ましくは3〜8質量部である。
【0025】
本発明で用いる(F)4−メトキシフェニルエチルアルコールの香料組成物中における含有量は、前記含有質量比を満たせば特に限定されないが、メコノプシス本来の花の香気の再現性の点、及び香料としての取り扱いのし易さから、好ましくは0.5〜1.9質量%であり、より好ましくは1.0〜1.9質量%であり、さらに好ましくは1.5〜1.9質量%である。
【0026】
本発明で用いる(G)メチルバニレートの香料組成物中における含有量は、前記含有質量比を満たせば特に限定されないが、メコノプシス本来の花の香気の再現性の点、及び香料としての取り扱いのし易さから、好ましくは0.5〜1.9質量%であり、より好ましくは1.0〜1.9質量%であり、さらに好ましくは1.5〜1.9質量%である。
【0027】
本発明の香料組成物には、メコノプシスの花の香気を阻害しない範囲で必要により、エタノール等のアルコール類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、トリアセチン、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油剤などの溶剤を配合することができる。ここでアルコール類としては、炭素数2〜5の一価アルコールが好ましい。多価アルコールとしては、炭素数2〜の2価〜4価のアルコールが好ましい。油剤としてはトリグリセリドが好ましい。また、本発明の香気を妨げない範囲において、保留剤・保香剤、エンハンサー、冷感剤、温感剤、乳化剤、酸化防止剤、増粘剤、保存料、防黴剤などを適宜配合することもできる。
【0028】
本発明の香料組成物は、飲料、デザート、冷菓、菓子、調味料等の飲食品に好適に用いることができる。飲食品以外に、香水、コロン、化粧水、クリーム、乳液、ファンデーション、化粧下地料、頬紅、口紅、室内芳香剤等の香粧品としても用いることができる。
【0029】
本発明の香料組成物の飲食品又は香粧品への添加量は、対象とする飲食品や香粧品の種類や賦香性により一概には規定することができないが、一般的に飲食品への添加量としては、0.0001〜10質量%であり、好ましくは0.001〜1質量%の範囲である。また、一般的に香粧品への添加量としては0.0001〜30質量%であり、好ましくは0.001〜20質量%の範囲である。
【0030】
本発明の好ましい実施態様を以下に示す。
[1](A)ベンジルアルコール、(B)アニスアルデヒド、(C)アニシルアルコール、(D)2−フェニルエチルアルコール及び(E)メチル p−アニセートを含有し、
(A)ベンジルアルコール100質量部に対し、(B)アニスアルデヒドを30〜70質量部、(C)アニシルアルコールを30〜70質量部、(D)2−フェニルエチルアルコールを2〜50質量部、(E)メチル p−アニセートを2〜50質量部の比率で含有することを特徴とする香料組成物。
[2](B)アニスアルデヒドを(A)ベンジルアルコール100質量部に対し40〜70質量部含有する[1]記載の香料組成物。
[3](B)アニスアルデヒドを(A)ベンジルアルコール100質量部に対し40〜60質量部含有する[1]又は[2]記載の香料組成物。
[4](C)アニシルアルコールを(A)ベンジルアルコール100質量部に対し40〜70質量部含有する[1]〜[3]のいずれかに記載の香料組成物。
[5](C)アニシルアルコールを(A)ベンジルアルコール100質量部に対し40〜60質量部含有する[1]〜[4]のいずれかに記載の香料組成物。
[6](D)2−フェニルエチルアルコールを(A)ベンジルアルコール100質量部に対し4〜40質量部含有する[1]〜[5]のいずれかに記載の香料組成物。
[7](D)2−フェニルエチルアルコールを(A)ベンジルアルコール100質量部に対し10〜40質量部含有する[1]〜[6]のいずれかに記載の香料組成物。
[8](E)メチル p−アニセートを(A)ベンジルアルコール100質量部に対し4〜40質量部含有する[1]〜[7]のいずれかに記載の香料組成物。
[9](E)メチル p−アニセートを(A)ベンジルアルコール100質量部に対し10〜40質量部含有する[1]〜[8]のいずれかに記載の香料組成物。
[10]さらに、(F)4−メトキシフェニルエチルアルコール及び/又は(G)メチルバニレートを含有する[1]〜[9]のいずれかに記載の香料組成物。
[11](F)4−メトキシフェニルエチルアルコールを(A)ベンジルアルコール100質量部に対し2〜10質量部含有する[1]〜[10]のいずれかに記載の香料組成物。
[12](F)4−メトキシフェニルエチルアルコールを(A)ベンジルアルコール100質量部に対し3〜8質量部含有する[1]〜[11]のいずれかに記載の香料組成物。
[13](G)メチルバニレートを(A)ベンジルアルコール100質量部に対し2〜10質量部含有する[1]〜[12]のいずれかに記載の香料組成物。
[14](G)メチルバニレートを(A)ベンジルアルコール100質量部に対し3〜8質量部含有する[1]〜[13]のいずれかに記載の香料組成物。
[15](A)ベンジルアルコールを10〜38質量%含有する[1]〜[14]のいずれかに記載の香料組成物。
[16](A)ベンジルアルコールを20〜38質量%含有する[1]〜[15]のいずれかに記載の香料組成物。
[17](A)ベンジルアルコールを30〜38質量%含有する[1]〜[16]のいずれかに記載の香料組成物。
[18](B)アニスアルデヒドを5〜19質量%含有する[1]〜[17]のいずれかに記載の香料組成物。
[19](B)アニスアルデヒドを10〜19質量%含有する[1]〜[18]のいずれかに記載の香料組成物。
[20](B)アニスアルデヒドを15〜19質量%含有する[1]〜[19]のいずれかに記載の香料組成物。
[21](C)アニシルアルコールを5〜19質量%含有する[1]〜[20]のいずれかに記載の香料組成物。
[22](C)アニシルアルコールを10〜19質量%含有する[1]〜[21]のいずれかに記載の香料組成物。
[23](C)アニシルアルコールを15〜19質量%含有する[1]〜[22]のいずれかに記載の香料組成物。
[24](D)2−フェニルエチルアルコールを2.5〜9.5質量%含有する[1]〜[23]のいずれかに記載の香料組成物。
[25](D)2−フェニルエチルアルコールを5〜9.5質量%含有する[1]〜[24]のいずれかに記載の香料組成物。
[26](D)2−フェニルエチルアルコールを7.5〜9.5質量%含有する[1]〜[25]のいずれかに記載の香料組成物。
[27](E)メチル p−アニセートを2.5〜9.5質量%含有する[1]〜[26]のいずれかに記載の香料組成物。
[28](E)メチル p−アニセートを5〜9.5質量%含有する[1]〜[27]のいずれかに記載の香料組成物。
[29](E)メチル p−アニセートを7.5〜9.5質量%含有する[1]〜[28]のいずれかに記載の香料組成物。
[30](F)4−メトキシフェニルエチルアルコールを0.5〜1.9質量%含有する[1]〜[29]のいずれかに記載の香料組成物。
[31](F)4−メトキシフェニルエチルアルコールを1.0〜1.9質量%含有する[1]〜[30]のいずれかに記載の香料組成物。
[32](F)4−メトキシフェニルエチルアルコールを1.5〜1.9質量%含有する[1]〜[31]のいずれかに記載の香料組成物。
[33](G)メチルバニレートを0.5〜1.9質量%含有する[1]〜[32]のいずれかに記載の香料組成物。
[34](G)メチルバニレートを1.0〜1.9質量%含有する[1]〜[33]のいずれかに記載の香料組成物。
[35](G)メチルバニレートを1.5〜1.9質量%含有する[1]〜[34]のいずれかに記載の香料組成物。
[36]さらに、アルコール、多価アルコール及び油剤から選ばれる溶剤を含有する[1]〜[35]のいずれかに記載の香料組成物。
[37]アルコールが炭素数2〜5の1価アルコールであり、多価アルコールが炭素数2〜8の2価〜4価アルコールであり、油剤がトリグリセリドである[36]記載の香料組成物。
[38]メコノプシス様香料組成物である[1]〜[37]のいずれかに記載の香料組成物。
[39][1]〜[38]のいずれかに記載の香料組成物を含有する香粧品。
[40][1]〜[38]のいずれかに記載の香料組成物を0.0001〜30質量%含有する[39]記載の香粧品。
[41][1]〜[38]のいずれかに記載の香料組成物を0.001〜20質量%含有する[39]記載の香粧品。
[42][1]〜[38]のいずれかに記載の香料組成物を含有する飲食品。
[43][1]〜[38]のいずれかに記載の香料組成物を0.0001〜10質量%含有する[42]記載の飲食品。
[44][1]〜[38]のいずれかに記載の香料組成物を0.001〜1質量%含有する[42]記載の飲食品。
[45][1]〜[38]のいずれかに記載の香料組成物を添加することを特徴とする香粧品又は飲食品へのメコノプシス花様香気付与方法。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。尚、各成分の量は、質量%である。
【0032】
実施例1〜10、比較例1〜6
表1及び表2の組成からなる香料組成物を調製した。得られた実施例及び比較例について、メコノプシスの香気を想起させるか否かを官能評価した。評価方法及び評価点に示す。また、参考例は下記のようにして製造した。
【0033】
参考例
メコノプシス1株に開花した直後の隣接する花3個にテフロン(登録商標)バッグを被せ、それに活性炭等の吸着剤を充填した吸着管を取り付け、毎分1リットルの流量で香気成分を吸着させた。その後、エチルエーテル20mlで抽出し、3mgまで濃縮し、香気成分を含む濃縮溶液得た。ニオイ紙にこの濃縮溶液を付着させ、以後の香り評価をおこなった。
【0034】
(評価方法)
参考例のメコノプシスの花香気と実施例及び比較例の香料組成物との匂いの対比を、専門パネラー5名による官能評価により行った。メコノプシスの花香気(参考例)らしい特徴が表現されているかを、下記評価点による合計点として表1及び表2に合わせて示す。
(評価点)
5点:香りの特徴が非常に良く表現され、非常に良く似ている。
4点:香りの特徴が表現され、良く似ている。
3点:似た香りを認める。
2点:多少似た香りを認める。
1点:類似しない。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
表1及び表2から、本発明の香料組成物は、メコノプシス本来の花の香気成分に極めて類似するものであることが分かる。
【0038】
実施例11 香料組成物
(成 分) (質量%)
ベンジルアルコール 36.0
アニスアルデヒド 18.0
アニシルアルコール 18.0
2−フェニルエチルアルコール 9.0
メチル p−アニセート 9.0
4−メトキシフェニルエチルアルコール 1.8
メチルバニレート 1.8
プロピレングリコール 残 量
合計 100.0
【0039】
実施例11に示す香料組成物は、参考例のメコノプシスの花香気に極めて類似した香気を有し、ライラック用の爽やかなフローラル調の香りの嗜好性の高い香気を有していた。
【0040】
処方例1
下記処方のフローラル系調合香料処方を示す。
(成 分) (質量%)
ベルガモットオイル(天然香料) 2.0
リナリールアセテート 1.5
メチルアンスラニレート 0.2
ペチグレインオイル(天然香料) 0.5
オーランチオール 10%DPG 1.0
(ヒドロキシシトロネラールとメチルアンスラニレートとのシッフ塩基)
アミルアリルグリコレート 1%DPG 0.5
ガルバナムオイル 1%DPG(天然香料) 0.1
ブラックカラントバズアブソリュート 10%DPG(天然香料) 1.5
タジェットオイル 10%DPG(天然香料) 0.8
イランイランオイルエキストラ(天然香料) 2.0
ベンジールアセテート 5.0
メチルジヒドロジャスモネート 13.0
シスジャスモン 10%DPG 1.0
ジャスミンアブソリュート(天然香料) 0.5
インドール 5%DPG 0.5
アルファヘキシルシンナミックアルデヒド 1.5
L−シトロネロール 0.5
ローズオイル(天然香料) 0.5
ローズアブソリュート(天然香料) 0.5
ダマセノン 1%DPG 0.5
L−ローズオキサイド 1%DPG 0.5
ジメチルベンジルカーボニルアセテート 1.0
ヒドロキシシトロネラール 3.0
リラール 3.5
(4−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カーボキシアルデヒド)
シクラメンアルデヒド 0.5
(2−メチル−3−(4−イソプロピルフェニル)−プロパノール)
アルファイソメチルヨノン 4.0
(5−(2,2,6−トリメチル−2−シクロヘキセニル)−3−メチル−3−ブテン−2−オン)
オリスコンクリート 10%DPG(天然香料) 0.8
メチルオイゲノール 0.5
イソEスーパー 2.5
(7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタハイドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン)
ベルトフィックスクール 4.0
((4−アセチル−トリメチル−68α−エタノ−1,2,3,5,6,7,8,8αオクタヒドロナフタレノン))
ベチバーアセテート 2.0
サンダルウッドオイル(天然香料) 1.5
バグダノール 10%DPG 1.0
(2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール)
パチュリーオイル 10%DPG(天然香料) 0.2
エベルニール 10%DPG 1.5
(メチル−2,4−ジヒドロキシ−3,6−ジメチルベンゾエート)
ガラクソリッド 50%ベンジールベンゾエート 10.0
(4,6,6,7,8,8−ヘキサメチル−1,3,4,6,7,8−ヘキサヒロドシクロペンタベンゾピラン)
シクロペンタデカノリッド 4.0
ヘリオトロピン 0.5
クマリン 0.5
バニリン 10% 0.5
エチルバニリン 10% 2.5
ラズベリーケトン 10% 0.5
(4−(4−ヒドロフェニル)−2−ブタノン)
ガンマウンデカラクトン 10% 1.5
ガンマデカラクトン 10% 1.5
ラブダナム アブソリュート 10%(天然香料) 0.5
ジプロピレングリコール 残 量
実施例11の香料組成物 10.0
合計 100.0
【0041】
処方例1のフローラル系調合香料を用いた下記処方のスキンローション処方を示す。
【0042】
(成 分) (質量%)
(アルコール相)
95%エチルアルコール 15.0
ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 2.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.05
処方例1のフローラル系調合香料 0.01
(水相)
グリセリン 5.0
クエン酸ナトリウム 適 量
精製水 残 量
【0043】
(製造方法)
水相、アルコール相を各々均一に溶解し、水相とアルコール相とを混合攪拌分散して可溶化を行い、次いで容器に充填する。使用時には内容物を均一になるよう振って使用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ベンジルアルコール、(B)アニスアルデヒド、(C)アニシルアルコール、(D)2−フェニルエチルアルコール及び(E)メチル p−アニセートを含有し、
(A)ベンジルアルコール100質量部に対し、(B)アニスアルデヒドを30〜70質量部、(C)アニシルアルコールを30〜70質量部、(D)2−フェニルエチルアルコールを2〜50質量部、(E)メチル p−アニセートを2〜50質量部の比率で含有することを特徴とする香料組成物。
【請求項2】
香料組成物総量に対して、(A)ベンジルアルコールを10〜38質量%含有する請求項1に記載の香料組成物。
【請求項3】
さらに、(F)4−メトキシフェニルエチルアルコール及び/又は(G)メチルバニレートを含有する請求項1又は2に記載の香料組成物。
【請求項4】
(A)ベンジルアルコール100質量部に対して、(F)4−メトキシフェニルエチルアルコールを2〜10質量部、(G)メチルバニレートを2〜10質量部の比率で含有する請求項3に記載の香料組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の香料組成物を含有する香粧品。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1項に記載の香料組成物を含有する飲食品。

【公開番号】特開2013−112758(P2013−112758A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260803(P2011−260803)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(390019460)稲畑香料株式会社 (22)
【Fターム(参考)】