説明

駆動装置およびそれを備えたキャスター付屋内移動装置

【課題】構造が複雑でなく、コンパクトで、かつキャスター付屋内移動体に簡単かつ容易に取付けることができるとともに、電動化を安価に図ることができ、しかも、始動時における安心感のある安定した走行が行え、好ましくは、走行時における直進性と旋回性を高めることができるようにした駆動装置およびそれを備えたキャスター付屋内移動装置を提供する。
【解決手段】車台1下面の前後方向の中間部における左右の両側に、前後方向の支軸14を支点に回動することによって上下方向に揺動可能な駆動輪10を、各々独立して懸架するとともに、両駆動輪10,10の各々に、屋内床面は上への接地方向に向けて常時付勢しうるコイルスプリング15を独立して設け、かつ両駆動輪10,10を、水平な屋内床面Fへの接地状態において、互いに正面視ハ字形に対向しうるように配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に肢体不自由者(18歳未満の肢体不自由児を含む)などが障害者施設の屋内で使用する姿勢保持用、リハビリ用、遊戯用または作業用のキャスター付屋内移動体、例えば車椅子やクッションチェアを搭載した台車等に取付けられて、屋内床面上を自走可能なように電動化を図るために用いられる駆動装置およびそれを備えたキャスター付屋内移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
重度の障害を持つ肢体不自由者が、例えば障害者施設等の屋内において移動したり、リハビリや遊戯、あるいは作業を円滑に行う場合に、姿勢保持用、リハビリ用、遊戯用または作業用に各々適応したキャスター付屋内移動体、例えば姿勢保持用として、車椅子が使用されている。
このような車椅子は、手押しのため、作業療法士や理学療法士などや保護者の介助を必要としている。
【0003】
そこで、従来では、肢体不自由者の自立と日常生活の質的向上を図るための訓練に、肢体不自由者自身が着座姿勢のままで操縦することにより移動することができるようにした自操型の屋内用または屋外用の電動式車椅子が開発されている(特許文献1,2参照)。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の電動式車椅子は、ダブルリンク式のサスペンション機構をもって各々上下動可能に独立懸架された、左右1対の前後両輪を備えた既成の車椅子における車体フレームの後部下面に、前記左右の後輪を跨ぐように、駆動ブロックを取付けるとともに、この駆動ブロックに設けた駆動モータの駆動力を、駆動伝達機構をもって左右の後輪に伝達しうるような4輪構造となっている。
そのため、左右の後輪への駆動伝達機構の構造が複雑となり、車体フレームへの取付けが簡単かつ安価に行うことができないばかりでなく、旋回するにあたって、後輪を旋回中心としているために、旋回範囲が大きくなり、旋回性に劣る。
しかも、肢体不自由者が着座した際の重心位置が高いために、転倒し易いという危険性がある。
【0005】
また、特許文献2に記載の電動式車椅子は、車体フレームの下面に、互いにサスペンション機構をもって各々上下動可能に独立懸架された、左右1対のキャスターからなる前後両輪を設けるとともに、車体フレームの前後方向のほぼ中央部に左右1対の中輪を設け、これら左右の中輪を、ダブルリンク式のサスペンション機構をもって上下動可能に独立懸架し、かつ駆動モータが内蔵されたホイールインモータ式をもって駆動しうるような6輪構造となっている。
【0006】
しかし、特許文献2に記載された電動車椅子は、左右の中輪(駆動輪)が、キャスターからなる前後両輪と比較して、非常に大径であるため、椅子全体の高さが高く、着座姿勢における重心位置も高くなり、走行が不安定で、転倒し易い。
また、障害者施設等の屋内での使用を考えた場合には、機構そのものが頑丈で複雑であることから、コスト的にも高くなる。
【0007】
また、台車を、左右1対のキャスターからなる前後両輪によって支持するとともに、その前後方向のほぼ中央部に、前記キャスターとほぼ同径の左右1対の駆動輪を独立懸架させて設けた電動式搬送車が公知である(特許文献3参照)。
【0008】
特許文献3に記載の電動式搬送車は、例えば車台上にクッションチェア等の姿勢保持体を搭載した場合、着座姿勢における重心位置も低く、走行が安定するため、障害者施設等の屋内での使用において好適である。
しかし、左右の駆動輪が、左右方向の支軸を支点に回動することによって上下方向に揺動する揺動板をもって、互いに独立懸架させて設けられていることから、前進または後退の際の始動時に働く慣性により、駆動輪が下方または上方に押し出される力が作用するため、始動時の動きが不安定となり、肢体不自由者に不安感を与える。
【0009】
ところで、小学校の中学年以下の肢体不自由児や重度の障害者にあっては、その障害の程度や操作能力の制約などから、公的機関によって認定された正規の電動車椅子の支給対象者にはなっていない。
このような正規の電動車椅子を使用することができない障害者や障害児は、体の変形や機能障害等により、自身で姿勢を保持することが非常に困難なため、その障害に応じて姿勢を保持させることができるクッションチェア等の姿勢保持装置を必ず持っており、この姿勢保持装置を、簡単かつ安価に電動化できるような駆動装置が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−346835号公報
【特許文献2】特開2007−061342号公報
【特許文献3】特開平9−169271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記の現状に鑑み、構造が複雑でなく、コンパクトで、かつキャスター付屋内移動体に簡単かつ容易に取付けることができるとともに、電動化を安価に図ることができ、しかも、始動時における安心感のある安定した走行が行え、好ましくは、走行時における直進性と旋回性を高めることができるようにした駆動装置およびそれを備えたキャスター付屋内移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、「特許請求の範囲」の欄における各請求項に記載するように、次のような構成からなる発明によって解決される。
【0013】
(1)肢体不自由者が使用する姿勢保持用、リハビリ用、遊戯用または作業用のキャスター付屋内移動体の車台下面に取り付けて、屋内床面上を自走可能に電動化するための駆動装置であって、前記車台下面の前後方向の中間部における左右の両側に、前後方向の支軸を支点に回動することによって上下方向に揺動可能な駆動輪を、各々独立して懸架するとともに、両駆動輪の各々に、前記屋内床面上への接地方向に向けて常時付勢しうる付勢手段を独立して設ける。
【0014】
(2)上記(1)項において、車台下面に取り付けうる左右方向を向く支持部材の中央部に、前後方向を向く左右1対の支軸を設け、この支軸を支点に回動することによって上下方向に揺動する揺動板を、支軸から左右方向の外側に向けて各々延設して取り付けるとともに、これら各揺動板の遊端に電動モータによって回転駆動される駆動輪を、各々独立して設け、かつ各駆動輪を接地方向に向けて常時付勢する付勢手段を、支持部材と揺動板との間に介在させる。
【0015】
(3)上記(1)項または(2)項において、付勢手段を、駆動輪よりも外側に位置しうるように設ける。
【0016】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、駆動輪を、左右方向に移動可能に調整しうるものとする。
【0017】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、駆動輪の上下方向の揺動範囲を、上限位置と下限位置との間で調整しうるようにする。
【0018】
(6)上記(1)〜(5)に記載の駆動装置を、肢体不自由者が使用する姿勢保持用、リハビリ用、遊戯用または作業用のキャスター付屋内移動体の車台下面に備えるキャスター付屋内移動装置であって、前記駆動装置の駆動輪を、水平な屋内床面への接地状態において、互いに正面視ハ字形に対向しうるように配設する。
【0019】
(7)上記(6)項において、車台の下面に、下降操作可能にした補助用キャスターを設けるとともに、この補助用キャスターの下降操作によって、左右の駆動輪を、屋内床面上から離間しうるようにする。
発明の具体的な内容は、次の通りである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、次のような効果が奏せられる。
(A)請求項1記載の発明によると、車台下面の前後方向の中間部における左右の両側に、前後方向の支軸を支点に回動することによって上下方向に揺動可能な駆動輪を、各々独立して懸架してあるため、構造が複雑でなく、コンパクトで、かつキャスター付屋内移動体に簡単かつ容易に取付けることができるとともに、駆動輪が、前進または後退の際の始動時に働く慣性を受けないため、駆動輪が下方または上方に押し出される力が作用せず、始動時の動きが安定し、始動時における安心感のある走行が行える。
また、左右の各駆動輪を、それぞれ独立した付勢手段をもって、屋内床面上への接地方向に向けて常時付勢しうるようにしてあるため、屋内床面上の凹凸に対する追従性を高めることができ、安定した走行が行える。
【0021】
(B)請求項2記載の発明によると、車台下面に取り付けうる左右方向を向く支持部材の中央部に、前後方向を向く左右1対の支軸を設け、この支軸を支点に回動することによって上下方向に揺動する揺動板を、支軸から左右方向の外側に向けて各々延設して取り付けるとともに、これら各揺動板の遊端に電動モータによって回転駆動される駆動輪を、各々独立して設け、かつ各駆動輪を接地方向に向けて常時付勢する付勢手段を、支持部材と揺動板との間に介在させてあるため、装置全体の構造が複雑でなく、コンパクトな構成とすることができる。
【0022】
(C)請求項3記載の発明によると、付勢手段を、駆動輪よりも外側に位置しうるように設けてあるため、付勢手段の上下方向の伸縮範囲が長くなり、揺動板の上下方向の揺動範囲を大きくすることができ、これにより、屋内床面上の凹凸に対して、駆動輪の追従性の調整範囲を大きくすることができる。
【0023】
(D)請求項4記載の発明によると、駆動輪を、左右方向に移動可能に調整しうるようにしてあるため、左右の駆動輪を、外側に向けて互いに離間する方向に移動調整すれば、キャスター付屋内移動体の旋回速度を遅くすることができ、また、内側に向けて互いに近づく方向に移動調整すれば、キャスター付屋内移動体の旋回速度を速くすることができる。
【0024】
(E)請求項5記載の発明によると、駆動輪の上下方向の揺動範囲を、上限位置と下限位置との間で調整しうるようにしてあるため、屋内床面の凹凸の度合いによって、左右の駆動輪の揺動範囲を調整することができる。
【0025】
(F)請求項6記載の発明によると、駆動装置の駆動輪を、水平な屋内床面への接地状態において、互いに正面視ハ字形に対向しうるように配設してあるため、周知のキャンバー効果によって、直進性および旋回性を良好なものとすることができるとともに、屋内床面が傾斜していても、安定した走行が行える。
【0026】
(G)請求項7記載の発明によると、車台の下面に、下降操作可能にした補助用キャスターを設けるとともに、この補助用キャスターの下降操作によって、左右の駆動輪を、屋内床面上から離間しうるようにしてあるため、キャスター付屋内移動体を、電動モータの減速ギヤ駆動系によるブレーキ作用から開放され、手押し用として円滑に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明における一実施形態の駆動装置を備えたキャスター付屋内移動装置の斜視図である。(実施例)
【図2】同じく、側面図である。
【図3】駆動装置を下方から見上げた斜視図である。
【図4】駆動装置の正面視縦断面図である。
【図5】同じく、駆動装置の側面図である。
【図6】駆動輪の屋内床面上における突起部への乗上げ状態の挙動を示す要部拡大断面図である。
【図7】駆動輪の屋内床面上における凹陥部への落込み状態の挙動を示す要部拡大断面図である。
【図8】手押し使用時におけるキャスター付屋内移動体の浮上状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明における一実施形態の駆動装置を備えたキャスター付屋内移動装置の斜視図、図2は、同じく、側面図である。
なお、本実施形態においては、キャスター付屋内移動体として、肢体不自由者が使用する姿勢保持用のクッションチェアが、キャスター付車台上に搭載されたものを例にして説明する。
【実施例】
【0029】
本発明のキャスター付屋内移動装置は、図1および図2に示すように、平面視ほぼ矩形状の車台1と、この車台1における前後の下面隅部に取り付けた左右1対のキャスターからなる前輪2,2および後輪3,3と、前記車台1上に組み付けたクッションチェア4とを備えているとともに、前記前輪2,2および後輪3,3によってほぼ全荷重を受けて、屋内床面F上を移動可能になっている。
また、車台1の下面と屋内床面Fとの間の高さHは、例えば90〜120mm程度の低重心となっているとともに、車台1の下面には、前輪2と後輪3との間のほぼ重心位置に相当する中間部に、後記する駆動装置5が取外し可能に取り付けられている。
【0030】
図3は、駆動装置を下方から見上げた斜視図、図4は、駆動装置の正面視縦断面図、図5は、同じく、駆動装置の側面図である。
【0031】
前記駆動装置5は、図3〜図5に示すように、車台1下面に取り付けうる左右方向を向く上面板6aおよび前後両側面板6b,6bからなる側面視下向きコ字状の支持部材6と、この支持部材6におけるコ字状空間内の左右両側部に遊嵌状態で配設された左右1対の揺動板7,7と、これら左右の揺動板7の遊端に逆L字状のブラケット8をもって各々取り付けられた、図示しないバッテリーを電源とする左右1対の電動モータ9,9と、これら左右の電動モータ9の駆動軸9aに取り付けることよって各々独立して回転駆動する左右1対の駆動輪10,10とを備えている。
【0032】
左右の電動モータ9は、図1及び図2に示すように、前記車台1の前端中央部1aに立設した支持杆11をもって取り付けた操作盤12上に設けた複数の操作ボタン13をもって、停止・前進・後退・右旋回・左旋回などに応じて適宜に押釦操作し、図示しないコントローラを介して互いに独立して正逆回転させることにより、駆動制御されるようになっている。
【0033】
揺動板7は、その内側に位置する一端部7aが、支持部材6の前後方向の両側面板6b,6b間に設けた支軸14に枢支されて、この支軸14から左右方向の外側に向けて各々延設して取り付けられているとともに、その外側の遊端状態にある他端部7bは、外側に向けて正面視L字状に延設されている。
すなわち、揺動板7の他端部7bは、前後方向を向く前記支軸14を支点にして回動することによって上下方向に揺動可能になっている。
なお、ここで、「揺動板7が上下方向に揺動可能」とは、揺動板7が支軸14を支点にして所定範囲内で上下方向にあたかも揺動するかのように回動可能であることを意味し、回動とは、別途に揺動することを必須とすることを意味するものではない。
【0034】
揺動板7の上面と支持部材6の上面板6aとの間には、間隙aが形成されているとともに、コイルスプリング15が、支持部材6と揺動板7における正面視L字状の他端部7bとの間に介在され、かつこれら支持部材6、揺動板7、支軸14、コイルスプリング15をもって左右の駆動輪10を各々独立して懸架し、装置全体がユニット化されている。
【0035】
コイルスプリング15は、駆動輪10よりも外側に位置させて配設してなるとともに、支持部材6における上面板6aの下面に、その上端部16aが支持されたボルト軸16に巻装され、かつ揺動板7の上下動に対して伸縮自在に追従しうるようになっている。
【0036】
ボルト軸16の下端部16bは、揺動板7の他端部7bに形成した左右方向に伸びる長孔7cを通して、揺動板7の下面に突出しうるように貫通させてなるとともに、前記下端部16bに、上下1対のナット17,17を、互いに螺合方向が逆となるように螺合させて設けられている。
【0037】
すなわち、揺動板7は、各ナット17を正逆方向に螺合調整することにより、ボルト軸16による揺動板7の上面と支持部材6における上面板6aの下面との間の間隔を調整しうるようになっている。
これにより、前後方向を向く支軸14を支点として回動することによって上下方向に揺動する揺動板7の揺動範囲を調整しうるようになっているとともに、その下限位置が調整可能になっている。
【0038】
支持部材6における上面板6aの左右両側部には、左右1対の調整ボルト18,18が、その下端を揺動板7の上面に対向しうるようにして、各々ナット19をもって締着されており、これら左右の調整ボルト18を螺合調整することにより、その下端と揺動板7の上面との間の間隔を調整し、これにより、揺動板7の上限位置が調整可能になっている。
【0039】
コイルスプリング15のばね力は、図4に示すように、左右の駆動輪10が、肢体不自由者が着座した状態で、左右の前後両輪2,3と共に掛かる全荷重の負荷の下で、水平な屋内床面Fへの接地状態において、常時互いに正面視ハ字形に対向して配設されるように、すなわち、互いの回転中心軸O1,O2を、水平な屋内床面Fに対して傾斜角度θ1,θ2でもって、上向きの傾斜状態が維持されるように設定することにより、左右の駆動輪10を、常時屋内床面Fへの接地方向に向けて付勢しうるようになっている。
【0040】
図6は、駆動輪の屋内床面上における突起部への乗上げ状態の挙動を示す要部拡大断面図、図7は、駆動輪の屋内床面上における凹陥部への落込み状態の挙動を示す要部拡大断面図である。
【0041】
すなわち、前記コイルスプリング15は、駆動輪10を屋内床面F上に弾性的に接床させてなるとともに、図6に示すように、駆動輪10が屋内床面Fの走行上に突出する突起物20Aに乗り上げた際には、その突起物20Aの突出高さに応じて、駆動輪10の上動を許容しうるように、揺動板7が、コイルスプリング15のばね力に抗して上方に揺動する。
また、図7に示すように、駆動輪10が屋内床面Fの走行上に陥没する凹陥部20Bに落ち込んだ際には、その凹陥部20Bの深さに応じて、駆動輪10の下動を許容しうるように、揺動板7が、コイルスプリング15のばね力によって下方に揺動する。
これによって、走行時における屋内床面Fの凹凸を吸収し、車台1上のクッションチェア4側に衝撃が伝達されることがないように、緩衝機能をもたせている。
【0042】
左右の電動モータ9が取り付けられたブラケット8は、揺動板7の下面に締結ボルト21とナット22とによって締結されているとともに、ブラケット8の上面が当接される揺動板7の当接面には、左右方向に延びる長孔23が形成され、前記締結ボルト21、ナット22を弛めることにより、前記ブラケット8、すなわち、電動モータ9の駆動軸9aに取り付けられた駆動輪10を、左右方向に移動可能に調整しうるようになっている。
【0043】
図2に示すように、車台1の左右方向における後端中央部1bには、補助用キャスター24が設けられているとともに、この補助用キャスター24は、ペダル25の下方への踏み込み操作によって下降可能になっている。
【0044】
図8は、手押し使用時におけるキャスター付屋内移動体の浮上状態を示す側面図である。
【0045】
すなわち、前記補助用キャスター24は、図8に示すように、ペダル25の下方への踏み込み操作によって下降させることにより、屋内床面F上に接地させ、前記車台1の後端を相対的に浮上させるとともに、車台1の下面に取り付けられた駆動装置5における左右の駆動輪10,10が、屋内床面F上から離間しうるようになっている。
これにより、車台1の移動時に、電動モータ9の減速ギヤ系によるブレーキ作用から開放され、手押し用として円滑に移動させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 車台(屋内移動体)
1a 前端中央部
1b 後端中央部
2 前輪(キャスター)
3 後輪(キャスター)
4 クッションチェア
5 駆動装置
6 支持部材
6a 上面板
6b 側面板
7 揺動板
7a 一端部
7b 他端部
7c 長孔
8 ブラケット
9 電動モータ
9a 駆動軸
10 駆動輪
11 支持杆
12 操作盤
13 操作ボタン
14 支軸
15 コイルスプリング(付勢体)
16 ボルト軸
16a 上端部
16b 下端部
17 ナット
18 調整ボルト
19 ナット
20A 突起物
20B 凹陥部
21 締結ボルト
22 ナット
23 長孔
a 間隙
F 屋内床面
H 車台の下面と屋内床面と間の高さ
O1,O2 左右の駆動輪の回転中心軸
θ1,θ2 水平な屋内床面に対する傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肢体不自由者が使用する姿勢保持用、リハビリ用、遊戯用または作業用のキャスター付屋内移動体の車台下面に取り付けて、屋内床面上を自走可能に電動化するための駆動装置であって、
前記車台下面の前後方向の中間部における左右の両側に、前後方向の支軸を支点に回動することによって上下方向に揺動可能な駆動輪を、各々独立して懸架するとともに、両駆動輪の各々に、前記屋内床面上への接地方向に向けて常時付勢しうる付勢手段を独立して設けたことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
車台下面に取り付けうる左右方向を向く支持部材の中央部に、前後方向を向く左右1対の支軸を設け、この支軸を支点に回動することによって上下方向に揺動する揺動板を、支軸から左右方向の外側に向けて各々延設して取り付けるとともに、これら各揺動板の遊端に電動モータによって回転駆動される駆動輪を、各々独立して設け、かつ各駆動輪を接地方向に向けて常時付勢する付勢手段を、支持部材と揺動板との間に介在させた請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
付勢手段を、駆動輪よりも外側に位置しうるように設けた請求項1または2記載の駆動装置。
【請求項4】
駆動輪を、左右方向に移動可能に調整しうるものとした請求項1〜3のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項5】
駆動輪の上下方向の揺動範囲を、上限位置と下限位置との間で調整しうるようにした請求項1〜4のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項6】
前記請求項1〜5に記載の駆動装置を、肢体不自由者が使用する姿勢保持用、リハビリ用、遊戯用または作業用のキャスター付屋内移動体の車台下面に備えるキャスター付屋内移動装置であって、
前記駆動装置の駆動輪を、水平な屋内床面への接地状態において、互いに正面視ハ字形に対向しうるように配設したことを特徴とするキャスター付屋内移動装置。
【請求項7】
車台の下面に、下降操作可能にした補助用キャスターを設けるとともに、この補助用キャスターの下降操作によって、左右の駆動輪を、屋内床面上から離間しうるようにした請求項6記載のキャスター付屋内移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−227490(P2010−227490A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81346(P2009−81346)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(590003722)佐賀県 (38)
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)
【出願人】(000003171)株式会社戸上電機製作所 (29)
【出願人】(591281622)有限会社佐賀プラント工業 (1)