説明

駆動装置

【課題】従動円盤の回転速度が変化してもロータリシャッタの回転速度が変化しない駆動装置を得る。
【解決手段】従動円盤200の回転速度が変化すると、従動円盤200の慣性モーメントにより、第2の遊星ギアセット620に対して反力が伝えられる。反力は、従動円盤200を駆動させる力の伝達と反対方向に伝達され、駆動軸300に伝えられる。駆動軸300に伝えられた反力は、駆動軸300の回転に対して影響を与え、回転を乱す原因となる。駆動軸300に直接接続される駆動円盤100は、従動円盤200よりも3倍以上6倍未満の質量を有する。そのため、従動円盤から駆動円盤に伝えられる反力は、駆動円盤の質量から生じる慣性モーメントの働きにより打ち消される。これにより、従動円盤200からの反力を受けた駆動軸300は、駆動円盤100の慣性により従動円盤200の反力による影響を受けることなく回転し続けることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関し、より詳しくは、同軸に回転駆動される円盤の質量に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動装置は、例えば複数のシャッタ羽根を有するロータリシャッタとして用いられる。
【0003】
ロータリシャッタは駆動円盤と従動円盤とを有する。駆動円盤と従動円盤にはそれぞれ対応する位置に開口部が設けられる。それぞれの開口部は重複してシャッタ開口部を成す。
【0004】
駆動円盤は第1のモータから延びる駆動軸の端部に同軸に直接取り付けられ、回転駆動される。駆動軸にはサンギアが取り付けられる。サンギアは遊星ギアセットを回転する。遊星ギアセットは従動円盤を駆動円盤と同軸に回転する。
【0005】
シャッタ開口部はロータリシャッタの軸回りに回転して光路の開閉を行う。ロータリシャッタの回転速度により光路の開閉速度が決定され、ロータリシャッタを通過する光の光量の制御が行われる。
【0006】
遊星ギアセットのリングギアは外周に設けられた第2のモータにより回転される。この回転は従動円盤の回転速度を変化させ、駆動円盤と従動円盤との間に相対的な位置の変化を生じさせる。この位置変化を発生させることによりシャッタ開口部の開口面積を制御し、ロータリシャッタのシャッタ速度を決定する方法が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−102474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従動円盤の回転速度を変化させると、従動円盤の慣性及び重量によって反力が生じる。反力はリングギアから遊星ギアセットを介して駆動軸に伝えられる。これにより、駆動軸の回転速度が変化する。駆動軸の回転速度が変化すると光路の開閉速度を正確に制御することが出来なくなり、ロータリシャッタのシャッタ速度が一定でなくなる。
【0008】
本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、従動円盤の回転速度が変化してもロータリシャッタの回転速度が変化しない駆動装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による駆動装置は、同軸で回転駆動される駆動回転体と従動回転体を備え、駆動回転体は従動回転体の3倍以上6倍未満の質量であることを特徴とする。
【0010】
駆動回転体は駆動軸に直接接続され、従動回転体は駆動軸に取り付けられた加減速機構により駆動されることが望ましい。
【0011】
加減速機構は駆動軸に取り付けられた第1のサンギアを含む遊星ギア機構であっても良い。
【0012】
駆動回転体は第1の開口部を有する円盤であり、従動回転体は第2の開口部を有する円盤であって、駆動回転体と従動回転体を第1の開口部と第2の開口部とが対応した位置となるように重合させることによりロータリシャッタが形成されることが好ましい。
【0013】
第1の開口部と第2の開口部は重合してシャッタ開口部を形成し、遊星ギア機構は第1のサンギアと係合する第1のプラネタリギアセットと、第1のプラネタリギアセットの外周で係合する第1のリングギアとを備え、第1のプラネタリギアセットが第1のリングギアにより駆動されて、シャッタ開口部の開口面積が調節されればなお良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従動円盤の回転速度が変化してもロータリシャッタの回転速度が変化しない駆動装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明における駆動装置の一実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0016】
駆動装置を図1及び図2を用いて説明する。
【0017】
駆動装置、すなわちロータリシャッタは駆動円盤100と従動円盤200とを有する。駆動円盤100と従動円盤200は同軸に設けられる。駆動円盤100と従動円盤200にはそれぞれ対応する位置に開口部101、201が設けられる。それぞれの開口部101、201は重複してシャッタ開口部900を成す。
【0018】
駆動円盤100は中心軸に第1のモータ400から延びる駆動軸300の端部が取り付けられ、回転駆動される。駆動円盤100と第1のモータ400との間の駆動軸300には第1のサンギア500が取り付けられる。第1のサンギア500は周囲に設けられる遊星ギアセット600を回転する。遊星ギアセット600は従動円盤200を駆動円盤100と同軸に回転する。
【0019】
遊星ギアセット600は、第1の遊星ギアセット610と第2の遊星ギアセット620とから成る。第1の遊星ギアセット610と第2の遊星ギアセット620は駆動軸の軸方向に隣接して設けられる。第1の遊星ギアセット610は第1のモータ400側に、第2の遊星ギアセット620は駆動円盤100側に設けられる。第1の遊星ギアセット610は3つの第1の遊星ギア611を有する。3つの第1の遊星ギア611の回転軸は、駆動軸300と同軸の円周上に等間隔であって、駆動軸300と平行に配置される。第2の遊星ギアセット620は3つの第2の遊星ギア621を有する。3つの第2の遊星ギア621の回転軸は第1の遊星ギアセット610が有する3つの第1の遊星ギアと同軸である。すなわち、3つの第2の遊星ギア621の回転軸は、駆動軸300と同軸の円周上に等間隔であって、駆動軸300と平行に配置される。これらの遊星ギアはそれぞれの回転軸をギア支持枠630が支持することによって保持される。
【0020】
第1の遊星ギアセット610は外周で第1のリングギア640と係合する。第1のリングギア640は、第1の遊星ギアセット610の外周と係合するために内周側に設けられる第1の内周ギア641と、外周側に設けられる外周ギア642とを有する。
【0021】
第2の遊星ギアセット620の外周には第2のリングギア650が設けられる。第2のリングギア650は、第2の遊星ギアセット620の外周、すなわち第2の遊星ギアセット620が有する3つの遊星ギアの外周と係合するために内周側に設けられる第2の内周ギア651を有する。第2のリングギア650は、駆動軸300を回転可能に支持する図示しない筐体に取り付けられて回転しない。
【0022】
第1のサンギア500が回転すると、第1の遊星ギアセット610が第1のサンギア500により回転される。第1の遊星ギアセット610は外周で係合する第1のリングギア640に反力を得るため、遊星ギアセット600全体が駆動軸300回りに回転する。
【0023】
第2の遊星ギアセット620は遊星ギアセット600の回転と共に駆動軸300回りに回転する。3つの第2の遊星ギア621は第2のリングギア650と係合しているが、第2のリングギア650は駆動軸300に対して回転しないため、第2の遊星ギア621はそれぞれの軸回りに回転する。
【0024】
従動円盤200には第2のサンギア700が同軸に取り付けられる。従動円盤200及び第2のサンギア700の軸には円筒状の穴701が設けられ、駆動軸300が貫通する。
【0025】
第2のサンギア700は第2の遊星ギアセット620の内周と、つまり第2の遊星ギア621と係合する。第2の遊星ギア621はそれぞれの軸を中心として回転するため、係合する第2のサンギア700を回転させる。第2のサンギア700が回転すると、従動円盤200が回転する。
【0026】
第1のリングギア640の外周ギア642から径方向に一定の距離を置いて、第2のモータ800が設けられる。第2のモータ800は第2の駆動軸を有する。第2の駆動軸には駆動ギア802が同軸に取り付けられる。
【0027】
駆動ギア802と外周ギア642は係合し、第2のモータ800が回転すると第1のリングギア640が回転する。前述のように、第1のリングギア640は第1の遊星ギアセット610に反力を与えているため、外周ギア642による第1のリングギア640の回転は、第1の遊星ギアセット610が与える反力を増加又は減少させる。つまり、駆動軸300回りの遊星ギアセット600の回転が加速又は減速される。これにより、第2の遊星ギアセット620から第2のサンギア700に伝達する回転も加速又は減速され、従動円盤200の回転速度が駆動軸300の回転速度に対して変化する。
【0028】
従動円盤200の回転速度が駆動軸300の回転速度、すなわち駆動円盤100の回転速度に対して変化すると、2つの円盤100、200に設けられる開口部101、201の相対的な位置関係が変化する。そのため、シャッタ開口部900の開口面積が変化する。これにより、シャッタ開口部900を通過する光束の量を変化させて、ロータリシャッタのシャッタ速度及び露出を制御することが出来る。
【0029】
従動円盤200の回転速度が変化すると、従動円盤200の慣性モーメントにより、第2の遊星ギアセット620に対して反力が伝えられる。反力は、従動円盤200を駆動させる力の伝達と反対方向に伝達され、駆動軸300に伝えられる。駆動軸300に伝えられた反力は、駆動軸300の回転に対して影響を与え、回転を乱す原因となる。
【0030】
駆動軸300に直接接続される駆動円盤100は、従動円盤200よりも3倍以上6倍未満の質量を有する。そのため、従動円盤から駆動円盤に伝えられる反力は、駆動円盤の質量から生じる慣性モーメントの働きにより大きく減少される。
【0031】
これにより、従動円盤200からの反力を受けた駆動軸300は、駆動円盤100の慣性により従動円盤200の反力による影響を受けることなく回転し続けることが可能となる。すなわち、駆動円盤100の外乱耐性が向上する。
【0032】
また、駆動装置を内視鏡装置の光源装置が備えるロータリシャッタに用いることにより、シャッタ開口部900の開口面積を変化させるときにロータリシャッタの回転と撮像のタイミングがずれなくなり、撮像された画像が明滅することを防止し、精度の高い画像を得ることができる。
【0033】
なお、第1及び第2の遊星ギアセット610、620は3つの遊星ギアから成るものでなくても良く、複数の遊星ギアから成るものであればよい。
【0034】
また、外周ギア642はプーリ溝に置き換えられても良い。
【0035】
第2のリングギア650は外周側に外周ギアを更に備え、第2のモータ800はその外周ギアと係合してもよい。このとき、第1のリングギア640は筐体に取り付けられて回転しない。
【0036】
さらに、駆動円盤と従動円盤との間の質量差は、駆動円盤が従動円盤の反力による影響を受けることなく回転し続けることが可能な程度であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】駆動装置の斜視分解図である。
【図2】駆動装置の模式図である。
【符号の説明】
【0038】
100 駆動円盤
200 従動円盤
400 第1のモータ
600 遊星ギアセット
800 第2のモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸で回転駆動される駆動回転体と従動回転体を備え、
前記駆動回転体は前記従動回転体の3倍以上6倍未満の質量であることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記駆動回転体は駆動軸に直接接続され、前記従動回転体は駆動軸に取り付けられた加減速機構により駆動されることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記加減速機構は前記駆動軸に取り付けられた第1のサンギアを含む遊星ギア機構であることを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記駆動回転体は第1の開口部を有する円盤であり、前記従動回転体は第2の開口部を有する円盤であって、
前記駆動回転体と前記従動回転体を前記第1の開口部と前記第2の開口部とが対応した位置となるように重合させることによりロータリシャッタが形成されることを特徴とする請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第1の開口部と前記第2の開口部は重合してシャッタ開口部を形成し、
前記遊星ギア機構は前記第1のサンギアと係合する第1のプラネタリギアセットと、前記第1のプラネタリギアセットの外周で係合する第1のリングギアとを備え、
前記第1のプラネタリギアセットが前記第1のリングギアにより駆動されて、前記シャッタ開口部の開口面積が調節されることを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−111986(P2008−111986A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294724(P2006−294724)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】