骨接合用プレートの加工用具
【課題】本発明の目的は、骨接合用プレートを加工し易くした骨接合用プレートの加工用具を提供することにある。
【解決手段】加工用具10は、骨接合用プレート50を支持するための受け部12と、受け部12に対向する押さえ部14と、受け部12と押さえ部14を加熱するためのヒーターと、加工用具10を操作するときに手で握るための把持部16a,16bとを備える。平面と曲面を組み合わせた複数の作業部22a,22b,22cを備えるため、骨接合用プレート50に異なる段差d1,d2や円弧を形成することができる。
【解決手段】加工用具10は、骨接合用プレート50を支持するための受け部12と、受け部12に対向する押さえ部14と、受け部12と押さえ部14を加熱するためのヒーターと、加工用具10を操作するときに手で握るための把持部16a,16bとを備える。平面と曲面を組み合わせた複数の作業部22a,22b,22cを備えるため、骨接合用プレート50に異なる段差d1,d2や円弧を形成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨接合手術で使用する骨接合用プレートの加工用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、骨への取り付け穴を有する骨接合用プレートが周知である(下記の特許文献1など)。例えば図12に示す骨接合用プレート50が使用されている。骨接合用プレート50は、帯状体52に取り付け穴54を複数設けた形状である。取り付け穴54の数や取り付け穴54の間隔などは適宜変更される。骨接合用プレート50は、取り付け穴54の箇所56が幅広になっている。図12は1本の帯になっているが、帯以外の異形のものもある(例えば、T字形状、L字形状、X字形状など)。
【0003】
骨接合用プレート50の使用方法について、骨折治療を一例にして説明する。(1)骨折箇所をまたぐように骨接合用プレート50を配置し、(2)取り付け穴54に生分解性のねじを通し、(3)そのねじを骨に取り付ける。(1)〜(3)によって骨折箇所をまたぐように骨接合用プレート50が骨に取り付けられ、骨折箇所が固定される。
【0004】
骨接合用プレート50の材料としては、生体内で加水分解されて生体に吸収される性質を有するものが含まれる。その材料の例として、ポリグリコール酸、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−およびD−乳酸/グリコール酸共重合体、ポリ−L−およびD−乳酸/カプロラクトン共重合体、及びこれにバイオセラミック(ハイドロキシアパタイト、シトロンチウムアパタイト、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウムなどのリン酸カルシウム系化合物、A−W結晶化ガラス、アルミナ、ジルコニア、カーボン、バイオガラス等)を含む医療用として従来より公知の熱可塑性生体内分解吸収性高分子が挙げられる。これを溶融成型したもの、あるいは、更に延伸、加圧等、適宜の手段により分子配向させて強度を改善したものを切削、プレスなどの手段を用いて、多数の取り付け穴を有する骨接合用プレート50に加工する。
【0005】
骨接合用プレート50は骨の形状に合わせて変形させる必要がある。骨折箇所および治療方法によっては、骨接合用プレート50に段差を形成する必要がある。そのため、特許文献1のような加工用具が開発されている。加工用具の把持部の幅が段階的に変化するようになっている。骨接合用プレート50を把持する部分を変えることによって、段差部分の大きさを変えることができる。
【0006】
しかし、特許文献1の加工用具は段差を形成するのには役立つが、他の加工はできない。曲げてしまった部分を元に戻して、加工をやり直すことはできない。骨接合用プレート50は常温で無理矢理変形されると、変形された箇所が白濁し、強度が低下する。特許文献1の加工用具では、骨接合用プレート50を加熱する装置を別途用意する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−51381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、骨接合用プレートを加工し易くした骨接合用プレートの加工用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の骨接合用プレートの加工用具は、複数の取り付け穴を有する帯状の骨接合用プレートを曲げ加工するために使用する。骨接合用プレートを支持する受け部と、受け部に対向し、受け部とで骨接合用プレートを保持する押さえ部と、受け部または押さえ部の少なくとも一方から骨接合用プレートを加熱するためのヒーターとを備える。受け部と押さえ部のそれぞれが、板状体および該板状体の一辺に設けられた棒状体で構成され、板状体同士および棒状体同士が対向し、棒状体同士の対向部分が、平面および曲面で構成される。
【0010】
受け部と押さえ部とがヒーターによって加熱される。受け部と押さえ部とで骨接合用プレートを保持する。骨接合用プレートは加熱され、曲げ加工をおこなうことができる。受け部と押さえ部とは板状体と棒状体とからなり、種々の曲げ加工がおこなえる。
【0011】
前記棒状体同士の対向部分は、平面同士の対向、曲面同士の対向、平面と曲面との対向である。平面と曲面の組み合わせによって、骨接合用プレートに段差を形成したり、円弧を形成したりできる。
【0012】
前記受け部と押さえ部とが、骨接合用プレートの厚みと同じ間隔または該間隔よりも狭い間隔を有して対向する。骨接合用プレートを把持したとき、骨接合用プレートを軽く圧迫しながら把持する。また、前記棒状体の先端部分同士が、前記間隔よりも狭い間隔で対向するまたは接触する。棒状体の先端部分では、強固に骨接合用プレートを把持できる。
【0013】
前記棒状体において、該棒状体を横切る溝を備える。溝に骨接合用プレートをはめ込んで把持する。
【0014】
前記受け部の板状体および押さえ部の板状体が方形であり、少なくとも一方の板状体の一側部に、前記取り付け穴に通されるピンを備える。骨接合用プレートを板状体に挟んで曲げ加工するとき、ピンによって骨接合用プレートを固定しながら加工する。
【0015】
前記受け部および押さえ部の板状体において、一側部の反対側にある他側部に突出部を設けている。骨接合用プレートを板状体から突出部で脱落させずに加工する。
【0016】
前記板状体において、板状体同士の対向部分とは反対側に設けられ、板状体とで函体を構成する把持部を設ける。板状体の付近に把持部が設けられ、両把持部を近づけるように握ることによって、板状体または棒状体で骨接合用プレートを挟み持つことができる。
【0017】
前記板状体を加熱するヒーターは複数である。複数のヒーターによって板状体を加熱して、1つのヒーターによって棒状体を加熱する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、棒状体の部分で骨接合用プレートを把持した場合、骨接合用プレートを持ちかえることなく段差を形成したり、円弧を形成したりできる。受け部や押さえ部に種々の形状を設けることによって、骨接合用プレートを折り曲げた形状も多様になる。一度折り曲げた骨接合用プレートを板状体で挟み込むことによって、元に戻すことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の骨接合用プレートの加工用具の外観を示す斜視図であり、(a)受け部と押さえ部を閉じた図であり、(b)受け部と押さえ部を開けた図である。
【図2】本発明の受け部と押さえ部を示す図であり、(a)は受け部を示す図であり、(b)は押さえ部を示す図である。
【図3】受け部と押さえ部の棒状体を対向させた図である。
【図4】図3におけるA−A線断面図であり、(a)は断面を示す図であり、(b)は骨接合用プレートに段差を形成した図である。
【図5】図3におけるB−B線断面図であり、(a)は断面を示す図であり、(b)は骨接合用プレートに円弧を形成した図である。
【図6】図3におけるC−C線断面図であり、(a)は断面を示す図であり、(b)は骨接合用プレートに段差を形成した図であり、(c)は骨接合用プレートに円弧を形成した図である。
【図7】棒状体の溝で骨接合用プレートの帯状体を把持下図である。
【図8】受け部の板状体を示す図であり、(a)は受け部の板状体を示す正面図であり、(b)は骨接合用プレートの取り付け穴にピンを通した図である。
【図9】図8(b)の状態から骨接合用プレートをxz面で曲げた図である。
【図10】受け部におけるヒーターの配置を示す図である。
【図11】キャップを示す図である。
【図12】骨接合用プレートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の骨接合用プレートの加工用具について図面を使用して説明する。曲げ加工される骨接合用プレートは従来技術で説明した図12のものと同じであるため、説明を省略する。
【0021】
図1に示す加工用具10は、骨接合用プレート50を支持するための受け部12と、受け部12に対向する押さえ部14と、受け部12と押さえ部14を加熱するためのヒーターと、加工用具10を操作するときに手で握るための把持部16a,16bとを備える。
【0022】
把持部16a,16bの長軸の一端部分には、取り付け部材(図示せず)を設け、両把持部16a,16bが互いに取り付けられる。取り付け部材は、把持部16a,16bの側部に板状のガイドを設けて重ね、ガイドを貫くヒンジピンを設ける。ヒンジピンを軸として把持部16a,16bが回転する。トーションバネにヒンジピンを通し、受け部12と押さえ部14との距離を近づけた後(図1(a))、自動的に元の位置に戻るようにしても良い(図1(b))。また、トーションバネやガイドなどによって受け部12と押さえ部14とは一定の角度以上は開かないようにする。
【0023】
受け部12と押さえ部14は、それぞれ棒状体18a,18bと板状体20a,20bとを備える(図2(a)、(b))。板状体20a,20bの一辺に棒状体18a,18bが取り付けられる。取り付けは溶接でおこなっても良いし、棒状体18a,18bと板状体20a,20bとを一体的に形成しても良い。
【0024】
棒状体18a,18bと板状体20a,20bは、CrとNiを含むステンレス鋼を使用する。ステンレス鋼の中でも、オーステナイト系ステンレス鋼であり、Crが18〜20%、Niが8〜10.5%含まれるSUS304を使用するのが好ましい。加工用具を滅菌するために、高温高湿環境に入れたり、薬剤を使用したりするため、それらの環境でも腐食させないためである。
【0025】
棒状体18a,18bの幅は、骨接合用プレートの長さに比べて狭くなっている。1回の把持で2箇所の折り曲げが可能である。棒状体18a,18b同士の対向する部分は、骨接合用プレート50を把持し、折り曲げをおこなうための作業部22a,22b,22cとなっている。図2および図3に示すように、作業部22a,22b,22cは複数である。板状体20a,20bのある方向から順番に、第1作業部22a、第2作業部22b、第3作業部22cとする。
【0026】
各作業部22a,22b,22cは、平面または曲面で構成され、一定間隔で対向する。この間隔は、骨接合用プレート50の厚みと同じ間隔またはそれよりも少しだけ狭い間隔である。すなわち、骨接合用プレート50を軽く圧迫できる程度の間隔である。骨接合用プレート50を保持して折り曲げることができる。骨接合用プレート50を保持したときに、その厚みがほぼ変形しない。
【0027】
第1作業部22aは、平面同士を対向させている(図4(a))。対向させた平面の大きさは同じである。平面の側部は、棒状体18a,18bの側方に向かって曲がる曲面を形成している。骨接合用プレート50を折り曲げたときに、傷つきにくい。曲面によって、図4(b)のように段差d1を形成しやすくなる。第1作業部22aで段差d1を形成した場合、例えば段差d1は4mmとなる。
【0028】
第2作業部22bは、曲面同士を対向させている(図5(a))。押さえ部14が受け部12に向けて突出した円弧であり、受け部12はその突出にあわせて窪んだ曲面である。押さえ部14は、半径2.5mmの円弧である。骨接合用プレート50に弧状を形成されるように曲げることができる。図5(b)の様に円弧に沿って折り曲げられた角度θ1は90°である。
【0029】
第3作業部22cは、平面と曲面を対向させている(図6(a))。受け部12が平面であり、押さえ部14が曲面である。第1作業部22aと同様に平面の側部に曲面を形成している。曲面は受け部12に突出させた円弧である。図6(b)の様に段差d2を形成した場合、第1作業部22aの段差d1よりも低い段差d2となる。例えば、2mmの段差d2を形成できる。第2作業部22bの円弧よりも曲率が小さい。例えば、半径1.1mmの円弧である。そのため、第3作業部22cの側部の方向は、平面に対して斜方向を有する。図6(c)の様に斜方向に沿って折り曲げた場合、骨接合用プレート50に形成される角度は90°である。
【0030】
上記のように各作業部22a,22b,22cの平面と曲面が異なる形状になっている。平面と曲面を組み合わせた複数の作業部22a,22b,22cを備えるため、骨接合用プレート50に異なる段差d1,d2や円弧を形成することができる。骨接合用プレート50を1回挟み持てば、骨接合用プレート50に段差d1,d2を形成する折り曲げができる。骨接合用プレート50を持ちかえる必要がない。上述した段差d1,d2や角度θ1,θ2の数値は一例であり、他の数値になるように設計しても良い。
【0031】
受け部12と押さえ部14の棒状体18a,18bの長さは同じである。棒状体18a,18bの先端部分24a,24bは平面であり、その先端部分24a,24b同士は、作業部22a,22b,22cよりも狭い間隔または接触するようになっている。先端部分24a,24bで骨接合用プレート50を強固に把持できる。板状体20a,20bで骨接合用プレート50を加熱して、骨接合用プレート50を先端部分24a,24bで把持して、折り曲げることもできる。
【0032】
第3作業部22cと先端部分24a,24bの間に、棒状体18a,18bを幅方向(z軸方向)に横切る溝26a,26bを設ける。溝26a,26bの幅は骨接合用プレート50の厚みと同じか少し広い。受け部12と押さえ部14とを対向させたとき、互いの溝26a,26bの底から底までの距離が、帯状体52の幅と同じか多少狭くする。骨接合用プレート50の幅方向と溝26a,26bの深さ方向が一致し、骨接合用プレート50の帯状体52を溝26a,26bにはめ込んで把持することができる(図7)。
【0033】
なお、溝26a,26bはいずれか一方の棒状体18a,18bにだけ設けても良い。その場合、溝26a,26bの深さが帯状体52の幅と同じか多少短くする。また、溝26a,26bの位置は、棒状体18a,18bの他の位置であっても良い。
【0034】
板状体20a,20bは、棒状体18a,18bに比べて幅広の平面である。骨接合用プレート50の大部分を挟み持つことができる。板状体20a,20b同士は一定間隔を有して対向している。この間隔は、棒状体18a,18bの各作業部22a,22b,22cの間隔と同じである。骨接合用プレート50を折り曲げた後、折り曲げ部分を把持することにより、元通りに戻すことができる。
【0035】
図8(a)に示すように、受け部12の板状体20aの一側部X1の付近には、複数のピン28が設けられる。ピン28は円柱形状であり、頂上部分が押さえ部14の板状体20bに接する。このピン28は、骨接合用プレート50の穴54に通される。ピン28が2列に配置され、各列のピン28は複数である。1列目のピン28同士の間に2列目のピン28が配置されるようになっている。1列目および2列目のピン28同士の間隔は、骨接合用プレート50の帯状体52の幅と同じか若干広くなっている。ピン28が骨接合用プレート50の穴54に通されたとき、骨接合用プレート50の帯状体52がピン28同士の間に配置される(図8(b))。骨接合用プレート50の穴54にピン28を通して把持し、骨接合用プレート50を横方向(板状体20a,20bの平面と同一面(xz面))に曲げたり(図9)、ツイストさせたりするとき、骨接合用プレート50が滑らない。
【0036】
板状体20a,20bで骨接合用プレート50を把持して、骨接合用プレート50の厚み方向(y軸方向)に折り曲げても良い。この場合、ピン28を穴54に通しても通さなくても良い。
【0037】
受け部12と押さえ部14の板状体20a,20bに骨接合用プレート50のストッパー30a,30bを設ける。ストッパー30a,30bは、板状体20a,20bの側部X2に設けた線状の突出部である。ストッパー30a,30bによって、把持した骨接合用プレート50が脱落するのを防止する。ストッパー30a,30bは、ピン28が配置された一側部X1とは反対の他側部X2に設ける。また、他側部X2から一側部X1を見た際、ピン28の無い位置にストッパー30a,30bを設ける。ピン28のない位置で骨接合用プレート50が脱落する可能性があるからである。線状の突出部の代わりに複数の突起を並べても良い。受け部12と押さえ部14の板状体20a,20bにストッパーを設けたが、いずれか一方の板状体20a,20bだけに設けても良い。
【0038】
図10に示すヒーター32は、棒状体18a,18bおよび板状体20a,20bを加熱して、棒状体18a,18bまたは板状体20a,20bに挟まれた骨接合用プレート50を軟化点まで熱する。ヒーター32は、棒状体18a,18bおよび板状体20a,20bを約120℃まで加熱する。受け部12および押さえ部14の両方にヒーター32を備える方が、骨接合用プレート50の加熱時間を短縮できる。なお、受け部12または押さえ部14の一方にのみヒーター32を設けても良い。
【0039】
ヒーター32は、例えば線状のカートリッジヒータが使用される。板状体20a,20bの対向面の反対面側に配置される。また、棒状体18a,18bの内部に穴を空け、その穴の中にヒーター32を配置する。例えば、70Wと50Wの2本のカートリッジヒータを使用し、一方が板状体20a,20bと棒状体18a,18bを加熱して、他方が板状体20a,20bのみを加熱する。板状体20a,20bを加熱するヒーター32は2本には限定されず、板状体20a,20bの面積に応じてヒーター32の数を適宜増加させても良い。そのため、本発明では棒状体18a,18bが板状体20a,20bの中心からずれている。また、板状体20a,20bの厚みがヒーター32よりも十分に厚ければ、板状体20a,20bの内部にヒーター32を配置しても良い。
【0040】
ヒーター32は、取り付け部材の設けられた付近から温度を調節するための調温装置に接続される。また、ヒーター32の付近には温度計を配置する。温度計としては熱電対を用いた温度計である。調温装置に温度計が接続される。温度計の数は限定されず、複数の温度を測定しも良い。温度計が測定した値は調温装置に送られる。調温装置は、所望の温度になるように、ヒーター32に電力を供給する。例えば、所望の温度よりも高ければ、ヒーター32への電力供給を停止し、所望の温度よりも低ければ、ヒーター32へ電力供給する。
【0041】
ヒーター32や温度計は防水処理および耐薬品処理される。それらの処理の一例としては、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリイミド系樹脂などの樹脂によってヒーター32や温度計を覆うことが挙げられる。
【0042】
ヒーター32や温度計と調温装置とを接続する電気線にも防水処理を施す。電気線を耐熱、耐薬品および可撓性の樹脂で覆い、把持部への取り付け部分にもパッキンを設ける。樹脂とパッキンとが一体であっても良い。
【0043】
把持部16a,16bは、板状体20a,20bの対向面の反対側に設けられる。把持部16a,16bは、加工用具を手で握って操作するためのものである。板状体20a,20b、棒状体18a,18bの板状体20a,20bへの接続部分、および把持部16a,16bによってほぼ直方体形状の函体を形成する。形成された函体の中には、ヒーター32や温度計が配置される。把持部16a,16bが板状体20a,20bの反対面側に設けられることにより、骨接合用プレート50を挟み持ち、曲げ加工しやすい。上述したように取り付け部材は、棒状体18a,18b、板状体20a,20b、把持部16a,16bの回転するための軸となっている。その取り付け部材から見て同一方向に受け部12、押さえ部14および把持部16a,16bを設けており、コンパクトになっている。
【0044】
把持部16a,16bを近づけるように握ることによって、骨接合用プレート50を板状体20a,20b、または棒状体18a,18bで挟み持つことができる。上述したように、取り付け部材にトーションバネ、コイルバネまたは板バネなどの弾性部材を利用することによって、握っている把持部16a,16bを放したり脱力したりすることによって、把持部16a,16bが元の位置に戻り、骨接合用プレート50を取り出すことができる。
【0045】
把持部16a,16bは樹脂で形成する。樹脂の種類としては、耐熱性および耐薬品性に優れたPEEK(ポリエーテルエーテルケトン,polyetheretherketone)樹脂が挙げられる。PEEK樹脂は、約300℃の環境下でも樹脂特性が変化せず、ほとんどの薬品に対して耐薬品性があるため、滅菌をおこなうことができる。上記のシリコーン系樹脂などの樹脂は、把持部16a,16bなどで形成された函体の中に満たされるようにする。なお、把持部16a,16bを形成する樹脂の一部が、板状体20a,20bと同一平面に形成されても良い。
【0046】
把持部16a,16bは空洞34が設けられる。本発明では、把持部16a,16bにおける棒状体18a,18bの付近に盛り上がり部分36を設け、その盛り上がり部分36に空洞34を形成している。空洞34によって断熱構造が形成されている。空洞34を設けた部分は、握ったときに力の掛かる部分であり、熱が指や手のひらに伝わりにくくなっている。把持部16a,16bをしっかり握ることができ、骨接合用プレート50の曲げ加工がし易い。また、盛り上がり部分36によって手が滑りにくくなる。
【0047】
把持部16a,16bにおける盛り上がり部分36の他端側にも盛り上がり部分38を設ける。したがって、把持部16a,16bは、両端部に盛り上がり部分36,38が設けられ、中央付近がなだらかに窪む。手のひらで把持部16a,16bを握ったときに握りやすくなっている。また、把持部16a,16bにおける棒状体18a,18bの付近に、凸状部分40を設ける。凸状部分40は、直方体である。凸状部分40によって手が滑りにくくなっており、把持部16a,16bを持ちやすくなっている。把持部16a,16bの側部にも凸状部分40bを設けて、この凸状部分40bに空洞34bを設けている。
【0048】
受け部12と押さえ部14を閉じて対向させたとき、2本の棒状体18a,18bを覆うキャップ42を設けても良い(図11)。キャップ42の内部の空洞44に棒状体18a,18bが収納される。キャップ42は棒状体18a,18bへ着脱可能である。2本の棒状体18a,18bを覆うことで、短時間で棒状体18a,18bの温度を上げることができる。キャップ42によって、棒状体18a,18bを直接触れて火傷する事故を防止できる。キャップ42は把持部16a,16bと同様の樹脂で形成しても良い。
【0049】
受け部12と押さえ部14に把持されて、加熱された骨接合用プレート50を、手袋をした手でつかんで曲げても良いし、プライヤーなどの工具で把持して曲げても良い。加熱されて部分が曲げられる。骨折箇所に応じて、種々の曲げ加工をおこない、骨接合用プレート50の穴44からネジ止めして、骨に固定する。
【0050】
以上のように、棒状体18a,18bで骨接合用プレート50を把持した場合、骨接合用プレート50を持ちかえることなく段差d1,d2を形成する折り曲げができる。受け部12や押さえ部14の棒状体18a,18bに種々の形状を設けることによって、骨接合用プレート50を折り曲げた形状も多様になる。板状体20a,20bによって、一度折り曲げた骨接合用プレート50を元に戻すことも可能である。把持部16a,16bが板状体20a,20bの反対面に設けられていることにより、骨接合用プレート50を取り扱いやすくなっている。
【0051】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0052】
10:加工用具
12:受け部
14:押さえ部
16a,16b:把持部
18a,18b:棒状体
20a,20b:板状体
22a,22b,22c:作業部
24a,24b:先端部分
26a,26b:溝
28:ピン
30a,30b:ストッパー
32:ヒーター
34,34b,44:空洞
36,38:盛り上がり部分
40,40b:凸状部分
42:キャップ
50:骨接合用プレート
52:帯状体
54:穴
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨接合手術で使用する骨接合用プレートの加工用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、骨への取り付け穴を有する骨接合用プレートが周知である(下記の特許文献1など)。例えば図12に示す骨接合用プレート50が使用されている。骨接合用プレート50は、帯状体52に取り付け穴54を複数設けた形状である。取り付け穴54の数や取り付け穴54の間隔などは適宜変更される。骨接合用プレート50は、取り付け穴54の箇所56が幅広になっている。図12は1本の帯になっているが、帯以外の異形のものもある(例えば、T字形状、L字形状、X字形状など)。
【0003】
骨接合用プレート50の使用方法について、骨折治療を一例にして説明する。(1)骨折箇所をまたぐように骨接合用プレート50を配置し、(2)取り付け穴54に生分解性のねじを通し、(3)そのねじを骨に取り付ける。(1)〜(3)によって骨折箇所をまたぐように骨接合用プレート50が骨に取り付けられ、骨折箇所が固定される。
【0004】
骨接合用プレート50の材料としては、生体内で加水分解されて生体に吸収される性質を有するものが含まれる。その材料の例として、ポリグリコール酸、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−およびD−乳酸/グリコール酸共重合体、ポリ−L−およびD−乳酸/カプロラクトン共重合体、及びこれにバイオセラミック(ハイドロキシアパタイト、シトロンチウムアパタイト、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウムなどのリン酸カルシウム系化合物、A−W結晶化ガラス、アルミナ、ジルコニア、カーボン、バイオガラス等)を含む医療用として従来より公知の熱可塑性生体内分解吸収性高分子が挙げられる。これを溶融成型したもの、あるいは、更に延伸、加圧等、適宜の手段により分子配向させて強度を改善したものを切削、プレスなどの手段を用いて、多数の取り付け穴を有する骨接合用プレート50に加工する。
【0005】
骨接合用プレート50は骨の形状に合わせて変形させる必要がある。骨折箇所および治療方法によっては、骨接合用プレート50に段差を形成する必要がある。そのため、特許文献1のような加工用具が開発されている。加工用具の把持部の幅が段階的に変化するようになっている。骨接合用プレート50を把持する部分を変えることによって、段差部分の大きさを変えることができる。
【0006】
しかし、特許文献1の加工用具は段差を形成するのには役立つが、他の加工はできない。曲げてしまった部分を元に戻して、加工をやり直すことはできない。骨接合用プレート50は常温で無理矢理変形されると、変形された箇所が白濁し、強度が低下する。特許文献1の加工用具では、骨接合用プレート50を加熱する装置を別途用意する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−51381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、骨接合用プレートを加工し易くした骨接合用プレートの加工用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の骨接合用プレートの加工用具は、複数の取り付け穴を有する帯状の骨接合用プレートを曲げ加工するために使用する。骨接合用プレートを支持する受け部と、受け部に対向し、受け部とで骨接合用プレートを保持する押さえ部と、受け部または押さえ部の少なくとも一方から骨接合用プレートを加熱するためのヒーターとを備える。受け部と押さえ部のそれぞれが、板状体および該板状体の一辺に設けられた棒状体で構成され、板状体同士および棒状体同士が対向し、棒状体同士の対向部分が、平面および曲面で構成される。
【0010】
受け部と押さえ部とがヒーターによって加熱される。受け部と押さえ部とで骨接合用プレートを保持する。骨接合用プレートは加熱され、曲げ加工をおこなうことができる。受け部と押さえ部とは板状体と棒状体とからなり、種々の曲げ加工がおこなえる。
【0011】
前記棒状体同士の対向部分は、平面同士の対向、曲面同士の対向、平面と曲面との対向である。平面と曲面の組み合わせによって、骨接合用プレートに段差を形成したり、円弧を形成したりできる。
【0012】
前記受け部と押さえ部とが、骨接合用プレートの厚みと同じ間隔または該間隔よりも狭い間隔を有して対向する。骨接合用プレートを把持したとき、骨接合用プレートを軽く圧迫しながら把持する。また、前記棒状体の先端部分同士が、前記間隔よりも狭い間隔で対向するまたは接触する。棒状体の先端部分では、強固に骨接合用プレートを把持できる。
【0013】
前記棒状体において、該棒状体を横切る溝を備える。溝に骨接合用プレートをはめ込んで把持する。
【0014】
前記受け部の板状体および押さえ部の板状体が方形であり、少なくとも一方の板状体の一側部に、前記取り付け穴に通されるピンを備える。骨接合用プレートを板状体に挟んで曲げ加工するとき、ピンによって骨接合用プレートを固定しながら加工する。
【0015】
前記受け部および押さえ部の板状体において、一側部の反対側にある他側部に突出部を設けている。骨接合用プレートを板状体から突出部で脱落させずに加工する。
【0016】
前記板状体において、板状体同士の対向部分とは反対側に設けられ、板状体とで函体を構成する把持部を設ける。板状体の付近に把持部が設けられ、両把持部を近づけるように握ることによって、板状体または棒状体で骨接合用プレートを挟み持つことができる。
【0017】
前記板状体を加熱するヒーターは複数である。複数のヒーターによって板状体を加熱して、1つのヒーターによって棒状体を加熱する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、棒状体の部分で骨接合用プレートを把持した場合、骨接合用プレートを持ちかえることなく段差を形成したり、円弧を形成したりできる。受け部や押さえ部に種々の形状を設けることによって、骨接合用プレートを折り曲げた形状も多様になる。一度折り曲げた骨接合用プレートを板状体で挟み込むことによって、元に戻すことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の骨接合用プレートの加工用具の外観を示す斜視図であり、(a)受け部と押さえ部を閉じた図であり、(b)受け部と押さえ部を開けた図である。
【図2】本発明の受け部と押さえ部を示す図であり、(a)は受け部を示す図であり、(b)は押さえ部を示す図である。
【図3】受け部と押さえ部の棒状体を対向させた図である。
【図4】図3におけるA−A線断面図であり、(a)は断面を示す図であり、(b)は骨接合用プレートに段差を形成した図である。
【図5】図3におけるB−B線断面図であり、(a)は断面を示す図であり、(b)は骨接合用プレートに円弧を形成した図である。
【図6】図3におけるC−C線断面図であり、(a)は断面を示す図であり、(b)は骨接合用プレートに段差を形成した図であり、(c)は骨接合用プレートに円弧を形成した図である。
【図7】棒状体の溝で骨接合用プレートの帯状体を把持下図である。
【図8】受け部の板状体を示す図であり、(a)は受け部の板状体を示す正面図であり、(b)は骨接合用プレートの取り付け穴にピンを通した図である。
【図9】図8(b)の状態から骨接合用プレートをxz面で曲げた図である。
【図10】受け部におけるヒーターの配置を示す図である。
【図11】キャップを示す図である。
【図12】骨接合用プレートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の骨接合用プレートの加工用具について図面を使用して説明する。曲げ加工される骨接合用プレートは従来技術で説明した図12のものと同じであるため、説明を省略する。
【0021】
図1に示す加工用具10は、骨接合用プレート50を支持するための受け部12と、受け部12に対向する押さえ部14と、受け部12と押さえ部14を加熱するためのヒーターと、加工用具10を操作するときに手で握るための把持部16a,16bとを備える。
【0022】
把持部16a,16bの長軸の一端部分には、取り付け部材(図示せず)を設け、両把持部16a,16bが互いに取り付けられる。取り付け部材は、把持部16a,16bの側部に板状のガイドを設けて重ね、ガイドを貫くヒンジピンを設ける。ヒンジピンを軸として把持部16a,16bが回転する。トーションバネにヒンジピンを通し、受け部12と押さえ部14との距離を近づけた後(図1(a))、自動的に元の位置に戻るようにしても良い(図1(b))。また、トーションバネやガイドなどによって受け部12と押さえ部14とは一定の角度以上は開かないようにする。
【0023】
受け部12と押さえ部14は、それぞれ棒状体18a,18bと板状体20a,20bとを備える(図2(a)、(b))。板状体20a,20bの一辺に棒状体18a,18bが取り付けられる。取り付けは溶接でおこなっても良いし、棒状体18a,18bと板状体20a,20bとを一体的に形成しても良い。
【0024】
棒状体18a,18bと板状体20a,20bは、CrとNiを含むステンレス鋼を使用する。ステンレス鋼の中でも、オーステナイト系ステンレス鋼であり、Crが18〜20%、Niが8〜10.5%含まれるSUS304を使用するのが好ましい。加工用具を滅菌するために、高温高湿環境に入れたり、薬剤を使用したりするため、それらの環境でも腐食させないためである。
【0025】
棒状体18a,18bの幅は、骨接合用プレートの長さに比べて狭くなっている。1回の把持で2箇所の折り曲げが可能である。棒状体18a,18b同士の対向する部分は、骨接合用プレート50を把持し、折り曲げをおこなうための作業部22a,22b,22cとなっている。図2および図3に示すように、作業部22a,22b,22cは複数である。板状体20a,20bのある方向から順番に、第1作業部22a、第2作業部22b、第3作業部22cとする。
【0026】
各作業部22a,22b,22cは、平面または曲面で構成され、一定間隔で対向する。この間隔は、骨接合用プレート50の厚みと同じ間隔またはそれよりも少しだけ狭い間隔である。すなわち、骨接合用プレート50を軽く圧迫できる程度の間隔である。骨接合用プレート50を保持して折り曲げることができる。骨接合用プレート50を保持したときに、その厚みがほぼ変形しない。
【0027】
第1作業部22aは、平面同士を対向させている(図4(a))。対向させた平面の大きさは同じである。平面の側部は、棒状体18a,18bの側方に向かって曲がる曲面を形成している。骨接合用プレート50を折り曲げたときに、傷つきにくい。曲面によって、図4(b)のように段差d1を形成しやすくなる。第1作業部22aで段差d1を形成した場合、例えば段差d1は4mmとなる。
【0028】
第2作業部22bは、曲面同士を対向させている(図5(a))。押さえ部14が受け部12に向けて突出した円弧であり、受け部12はその突出にあわせて窪んだ曲面である。押さえ部14は、半径2.5mmの円弧である。骨接合用プレート50に弧状を形成されるように曲げることができる。図5(b)の様に円弧に沿って折り曲げられた角度θ1は90°である。
【0029】
第3作業部22cは、平面と曲面を対向させている(図6(a))。受け部12が平面であり、押さえ部14が曲面である。第1作業部22aと同様に平面の側部に曲面を形成している。曲面は受け部12に突出させた円弧である。図6(b)の様に段差d2を形成した場合、第1作業部22aの段差d1よりも低い段差d2となる。例えば、2mmの段差d2を形成できる。第2作業部22bの円弧よりも曲率が小さい。例えば、半径1.1mmの円弧である。そのため、第3作業部22cの側部の方向は、平面に対して斜方向を有する。図6(c)の様に斜方向に沿って折り曲げた場合、骨接合用プレート50に形成される角度は90°である。
【0030】
上記のように各作業部22a,22b,22cの平面と曲面が異なる形状になっている。平面と曲面を組み合わせた複数の作業部22a,22b,22cを備えるため、骨接合用プレート50に異なる段差d1,d2や円弧を形成することができる。骨接合用プレート50を1回挟み持てば、骨接合用プレート50に段差d1,d2を形成する折り曲げができる。骨接合用プレート50を持ちかえる必要がない。上述した段差d1,d2や角度θ1,θ2の数値は一例であり、他の数値になるように設計しても良い。
【0031】
受け部12と押さえ部14の棒状体18a,18bの長さは同じである。棒状体18a,18bの先端部分24a,24bは平面であり、その先端部分24a,24b同士は、作業部22a,22b,22cよりも狭い間隔または接触するようになっている。先端部分24a,24bで骨接合用プレート50を強固に把持できる。板状体20a,20bで骨接合用プレート50を加熱して、骨接合用プレート50を先端部分24a,24bで把持して、折り曲げることもできる。
【0032】
第3作業部22cと先端部分24a,24bの間に、棒状体18a,18bを幅方向(z軸方向)に横切る溝26a,26bを設ける。溝26a,26bの幅は骨接合用プレート50の厚みと同じか少し広い。受け部12と押さえ部14とを対向させたとき、互いの溝26a,26bの底から底までの距離が、帯状体52の幅と同じか多少狭くする。骨接合用プレート50の幅方向と溝26a,26bの深さ方向が一致し、骨接合用プレート50の帯状体52を溝26a,26bにはめ込んで把持することができる(図7)。
【0033】
なお、溝26a,26bはいずれか一方の棒状体18a,18bにだけ設けても良い。その場合、溝26a,26bの深さが帯状体52の幅と同じか多少短くする。また、溝26a,26bの位置は、棒状体18a,18bの他の位置であっても良い。
【0034】
板状体20a,20bは、棒状体18a,18bに比べて幅広の平面である。骨接合用プレート50の大部分を挟み持つことができる。板状体20a,20b同士は一定間隔を有して対向している。この間隔は、棒状体18a,18bの各作業部22a,22b,22cの間隔と同じである。骨接合用プレート50を折り曲げた後、折り曲げ部分を把持することにより、元通りに戻すことができる。
【0035】
図8(a)に示すように、受け部12の板状体20aの一側部X1の付近には、複数のピン28が設けられる。ピン28は円柱形状であり、頂上部分が押さえ部14の板状体20bに接する。このピン28は、骨接合用プレート50の穴54に通される。ピン28が2列に配置され、各列のピン28は複数である。1列目のピン28同士の間に2列目のピン28が配置されるようになっている。1列目および2列目のピン28同士の間隔は、骨接合用プレート50の帯状体52の幅と同じか若干広くなっている。ピン28が骨接合用プレート50の穴54に通されたとき、骨接合用プレート50の帯状体52がピン28同士の間に配置される(図8(b))。骨接合用プレート50の穴54にピン28を通して把持し、骨接合用プレート50を横方向(板状体20a,20bの平面と同一面(xz面))に曲げたり(図9)、ツイストさせたりするとき、骨接合用プレート50が滑らない。
【0036】
板状体20a,20bで骨接合用プレート50を把持して、骨接合用プレート50の厚み方向(y軸方向)に折り曲げても良い。この場合、ピン28を穴54に通しても通さなくても良い。
【0037】
受け部12と押さえ部14の板状体20a,20bに骨接合用プレート50のストッパー30a,30bを設ける。ストッパー30a,30bは、板状体20a,20bの側部X2に設けた線状の突出部である。ストッパー30a,30bによって、把持した骨接合用プレート50が脱落するのを防止する。ストッパー30a,30bは、ピン28が配置された一側部X1とは反対の他側部X2に設ける。また、他側部X2から一側部X1を見た際、ピン28の無い位置にストッパー30a,30bを設ける。ピン28のない位置で骨接合用プレート50が脱落する可能性があるからである。線状の突出部の代わりに複数の突起を並べても良い。受け部12と押さえ部14の板状体20a,20bにストッパーを設けたが、いずれか一方の板状体20a,20bだけに設けても良い。
【0038】
図10に示すヒーター32は、棒状体18a,18bおよび板状体20a,20bを加熱して、棒状体18a,18bまたは板状体20a,20bに挟まれた骨接合用プレート50を軟化点まで熱する。ヒーター32は、棒状体18a,18bおよび板状体20a,20bを約120℃まで加熱する。受け部12および押さえ部14の両方にヒーター32を備える方が、骨接合用プレート50の加熱時間を短縮できる。なお、受け部12または押さえ部14の一方にのみヒーター32を設けても良い。
【0039】
ヒーター32は、例えば線状のカートリッジヒータが使用される。板状体20a,20bの対向面の反対面側に配置される。また、棒状体18a,18bの内部に穴を空け、その穴の中にヒーター32を配置する。例えば、70Wと50Wの2本のカートリッジヒータを使用し、一方が板状体20a,20bと棒状体18a,18bを加熱して、他方が板状体20a,20bのみを加熱する。板状体20a,20bを加熱するヒーター32は2本には限定されず、板状体20a,20bの面積に応じてヒーター32の数を適宜増加させても良い。そのため、本発明では棒状体18a,18bが板状体20a,20bの中心からずれている。また、板状体20a,20bの厚みがヒーター32よりも十分に厚ければ、板状体20a,20bの内部にヒーター32を配置しても良い。
【0040】
ヒーター32は、取り付け部材の設けられた付近から温度を調節するための調温装置に接続される。また、ヒーター32の付近には温度計を配置する。温度計としては熱電対を用いた温度計である。調温装置に温度計が接続される。温度計の数は限定されず、複数の温度を測定しも良い。温度計が測定した値は調温装置に送られる。調温装置は、所望の温度になるように、ヒーター32に電力を供給する。例えば、所望の温度よりも高ければ、ヒーター32への電力供給を停止し、所望の温度よりも低ければ、ヒーター32へ電力供給する。
【0041】
ヒーター32や温度計は防水処理および耐薬品処理される。それらの処理の一例としては、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ポリイミド系樹脂などの樹脂によってヒーター32や温度計を覆うことが挙げられる。
【0042】
ヒーター32や温度計と調温装置とを接続する電気線にも防水処理を施す。電気線を耐熱、耐薬品および可撓性の樹脂で覆い、把持部への取り付け部分にもパッキンを設ける。樹脂とパッキンとが一体であっても良い。
【0043】
把持部16a,16bは、板状体20a,20bの対向面の反対側に設けられる。把持部16a,16bは、加工用具を手で握って操作するためのものである。板状体20a,20b、棒状体18a,18bの板状体20a,20bへの接続部分、および把持部16a,16bによってほぼ直方体形状の函体を形成する。形成された函体の中には、ヒーター32や温度計が配置される。把持部16a,16bが板状体20a,20bの反対面側に設けられることにより、骨接合用プレート50を挟み持ち、曲げ加工しやすい。上述したように取り付け部材は、棒状体18a,18b、板状体20a,20b、把持部16a,16bの回転するための軸となっている。その取り付け部材から見て同一方向に受け部12、押さえ部14および把持部16a,16bを設けており、コンパクトになっている。
【0044】
把持部16a,16bを近づけるように握ることによって、骨接合用プレート50を板状体20a,20b、または棒状体18a,18bで挟み持つことができる。上述したように、取り付け部材にトーションバネ、コイルバネまたは板バネなどの弾性部材を利用することによって、握っている把持部16a,16bを放したり脱力したりすることによって、把持部16a,16bが元の位置に戻り、骨接合用プレート50を取り出すことができる。
【0045】
把持部16a,16bは樹脂で形成する。樹脂の種類としては、耐熱性および耐薬品性に優れたPEEK(ポリエーテルエーテルケトン,polyetheretherketone)樹脂が挙げられる。PEEK樹脂は、約300℃の環境下でも樹脂特性が変化せず、ほとんどの薬品に対して耐薬品性があるため、滅菌をおこなうことができる。上記のシリコーン系樹脂などの樹脂は、把持部16a,16bなどで形成された函体の中に満たされるようにする。なお、把持部16a,16bを形成する樹脂の一部が、板状体20a,20bと同一平面に形成されても良い。
【0046】
把持部16a,16bは空洞34が設けられる。本発明では、把持部16a,16bにおける棒状体18a,18bの付近に盛り上がり部分36を設け、その盛り上がり部分36に空洞34を形成している。空洞34によって断熱構造が形成されている。空洞34を設けた部分は、握ったときに力の掛かる部分であり、熱が指や手のひらに伝わりにくくなっている。把持部16a,16bをしっかり握ることができ、骨接合用プレート50の曲げ加工がし易い。また、盛り上がり部分36によって手が滑りにくくなる。
【0047】
把持部16a,16bにおける盛り上がり部分36の他端側にも盛り上がり部分38を設ける。したがって、把持部16a,16bは、両端部に盛り上がり部分36,38が設けられ、中央付近がなだらかに窪む。手のひらで把持部16a,16bを握ったときに握りやすくなっている。また、把持部16a,16bにおける棒状体18a,18bの付近に、凸状部分40を設ける。凸状部分40は、直方体である。凸状部分40によって手が滑りにくくなっており、把持部16a,16bを持ちやすくなっている。把持部16a,16bの側部にも凸状部分40bを設けて、この凸状部分40bに空洞34bを設けている。
【0048】
受け部12と押さえ部14を閉じて対向させたとき、2本の棒状体18a,18bを覆うキャップ42を設けても良い(図11)。キャップ42の内部の空洞44に棒状体18a,18bが収納される。キャップ42は棒状体18a,18bへ着脱可能である。2本の棒状体18a,18bを覆うことで、短時間で棒状体18a,18bの温度を上げることができる。キャップ42によって、棒状体18a,18bを直接触れて火傷する事故を防止できる。キャップ42は把持部16a,16bと同様の樹脂で形成しても良い。
【0049】
受け部12と押さえ部14に把持されて、加熱された骨接合用プレート50を、手袋をした手でつかんで曲げても良いし、プライヤーなどの工具で把持して曲げても良い。加熱されて部分が曲げられる。骨折箇所に応じて、種々の曲げ加工をおこない、骨接合用プレート50の穴44からネジ止めして、骨に固定する。
【0050】
以上のように、棒状体18a,18bで骨接合用プレート50を把持した場合、骨接合用プレート50を持ちかえることなく段差d1,d2を形成する折り曲げができる。受け部12や押さえ部14の棒状体18a,18bに種々の形状を設けることによって、骨接合用プレート50を折り曲げた形状も多様になる。板状体20a,20bによって、一度折り曲げた骨接合用プレート50を元に戻すことも可能である。把持部16a,16bが板状体20a,20bの反対面に設けられていることにより、骨接合用プレート50を取り扱いやすくなっている。
【0051】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0052】
10:加工用具
12:受け部
14:押さえ部
16a,16b:把持部
18a,18b:棒状体
20a,20b:板状体
22a,22b,22c:作業部
24a,24b:先端部分
26a,26b:溝
28:ピン
30a,30b:ストッパー
32:ヒーター
34,34b,44:空洞
36,38:盛り上がり部分
40,40b:凸状部分
42:キャップ
50:骨接合用プレート
52:帯状体
54:穴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の取り付け穴を有する帯状の骨接合用プレートを曲げ加工するための骨接合用プレートの加工用具であって、
前記骨接合用プレートを支持する受け部と、
前記受け部に対向し、受け部との間で骨接合用プレートを保持する押さえ部と、
前記受け部または押さえ部の少なくとも一方から骨接合用プレートを加熱するためのヒーターと、
を備え、
前記受け部と押さえ部のそれぞれが、板状体および該板状体の一辺に設けられた棒状体で構成され、
前記板状体同士および棒状体同士が対向し、
前記棒状体同士の対向部分が、平面および曲面で構成される
加工用具。
【請求項2】
前記棒状体同士の対向部分が、平面同士の対向、曲面同士の対向、平面と曲面との対向である請求項1の加工用具。
【請求項3】
前記受け部と押さえ部とが、骨接合用プレートの厚みと同じ間隔または該間隔よりも狭い間隔を有して対向する請求項1または2の加工用具。
【請求項4】
前記棒状体の先端部分同士が、前記間隔よりも狭い間隔で対向するまたは接触する請求項3の加工用具。
【請求項5】
前記棒状体を横切る溝を備えた請求項1から4のいずれかの加工用具。
【請求項6】
前記受け部の板状体および押さえ部の板状体が方形であり、少なくとも一方の板状体の一側部に、前記取り付け穴に通されるピンを備えた請求項1から5のいずれかの加工用具。
【請求項7】
前記受け部および押さえ部の板状体において、一側部の反対側にある他側部に突出部を設けた請求項6の加工用具。
【請求項8】
前記板状体において、板状体同士の対向部分とは反対側に設けられ、板状体とで函体を構成する把持部を設けた請求項1から7のいずれかの加工用具。
【請求項9】
前記板状体を加熱するためのヒーターが複数である請求項1から8のいずれかの加工用具。
【請求項1】
複数の取り付け穴を有する帯状の骨接合用プレートを曲げ加工するための骨接合用プレートの加工用具であって、
前記骨接合用プレートを支持する受け部と、
前記受け部に対向し、受け部との間で骨接合用プレートを保持する押さえ部と、
前記受け部または押さえ部の少なくとも一方から骨接合用プレートを加熱するためのヒーターと、
を備え、
前記受け部と押さえ部のそれぞれが、板状体および該板状体の一辺に設けられた棒状体で構成され、
前記板状体同士および棒状体同士が対向し、
前記棒状体同士の対向部分が、平面および曲面で構成される
加工用具。
【請求項2】
前記棒状体同士の対向部分が、平面同士の対向、曲面同士の対向、平面と曲面との対向である請求項1の加工用具。
【請求項3】
前記受け部と押さえ部とが、骨接合用プレートの厚みと同じ間隔または該間隔よりも狭い間隔を有して対向する請求項1または2の加工用具。
【請求項4】
前記棒状体の先端部分同士が、前記間隔よりも狭い間隔で対向するまたは接触する請求項3の加工用具。
【請求項5】
前記棒状体を横切る溝を備えた請求項1から4のいずれかの加工用具。
【請求項6】
前記受け部の板状体および押さえ部の板状体が方形であり、少なくとも一方の板状体の一側部に、前記取り付け穴に通されるピンを備えた請求項1から5のいずれかの加工用具。
【請求項7】
前記受け部および押さえ部の板状体において、一側部の反対側にある他側部に突出部を設けた請求項6の加工用具。
【請求項8】
前記板状体において、板状体同士の対向部分とは反対側に設けられ、板状体とで函体を構成する把持部を設けた請求項1から7のいずれかの加工用具。
【請求項9】
前記板状体を加熱するためのヒーターが複数である請求項1から8のいずれかの加工用具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−187312(P2012−187312A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54450(P2011−54450)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】
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