説明

高分子フィルムの製造方法

【課題】 溶液キャスティング法で高分子フィルムを製造する場合において、溶媒乾燥後の高分子フィルムをキャスティング支持体から容易に剥離させ、フィルムにキズが付くのを防止する。
【解決手段】 溶液キャスティング法による高分子フィルムの製造方法であって、高分子溶液を、表面の弾性率が20〜70GPa、であるキャスティング支持体上に流延又は塗布乾燥することを特徴とする、高分子フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液キャスティング法による高分子フィルムの製造方法に関する。更に詳しくは、溶液キャスティング法で高分子フィルムを製造する場合、溶媒乾燥後のキャスティング支持体からの高分子フィルムの剥離を安定的に行える高分子フィルムの製造方法に関する。さらに、本発明は、このような高分子フィルムを製造するためのキャスティング支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、ノルボルネン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー等の全部又は一部の高分子フィルムは、溶液キャスティング法により製造される。溶液キャスティング法は、高分子溶液をキャスティング支持体上に流延又は塗布して溶媒を乾燥し、その後キャスティング支持体より剥離して高分子フィルムを得る、高分子フィルムの製造方法である。溶液キャスティング法で使用するキャスティング支持体としては、ステンレス、ニッケル、銅、鉄等の金属板、石英ガラス、ソーダライムガラス等のガラス板、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂等のプラスチックフィルムを使用するのが一般的である。
【0003】
しかしながら、上記の金属板やガラス板をキャスティング支持体として用いた場合、溶媒乾燥後の高分子フィルムを安定的に剥離させることが難しく、高分子フィルムの外観が悪化したり、製造速度が上げられない等の問題があった。
そこで、上記問題を解決する方法として、ポリビニルアルコール系樹脂溶液に剥離性を付与する剥離剤を添加する方法(特許文献1 偏光膜用ポリビニルアルコール系フィルム)、熱可塑性高分子フィルムの剥離時において残存溶媒量及びキャスティング支持体の表面温度を特定の値にする方法(特許文献2 流延製膜方法)、剥離時の高分子フィルムの弾性率を特定の範囲(70,000Pa以上)にする方法(特許文献3 溶液製膜法)、キャスティング支持体の表面にワックス、シリコン樹脂、高級脂肪族アミン等の離型剤を塗布する方法等が開示されている。
【0004】
一方、プラスチックフィルムをキャスティング支持体として用いた場合には、一般にプラスチック材料は耐熱性、耐溶剤性が劣るため、適用可能な温度範囲が狭い、使用可能な溶剤の種類が限定される等の問題があった。
そこで、上記問題を解決する方法として、ガラス転移温度の高いポリアリレートフィルムを使用する方法(特許文献4 光学等方性を有するポリアリレートフィルムおよびその製造方法)、ポリエステルフィルム上に酸化ケイ素膜を形成する方法(特許文献5 離型フィルム)等が開示されている。
【特許文献1】特開2002−62429号公報
【特許文献2】特許第2640189号号公報
【特許文献3】特開2003−266456号公報
【特許文献4】特許第2988636号公報
【特許文献5】特公平6−2833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来方法では、高分子フィルムの種類、使用用途によっては、剥離性を付与するために高分子溶液に添加する物質が高分子フィルムの透明性や光沢等の物性に悪影響を与える、キャスティング支持体の加熱、冷却を繰り返すためにエネルギー効率が低下する、ワックス、シリコン樹脂等の表面自由エネルギーの小さい離型剤によりキャスティング支持体への高分子溶液の濡れが不足し、高分子フィルムの厚薄精度が悪化する、プラスチックフィルムを用いた場合には高分子フィルムにキズが付きやすい、等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、表面の弾性率が20〜70GPa、好ましくは25〜65GPa、より好ましくは30〜60GPaであるキャスティング支持体を用いることにより、溶媒乾燥後のキャスティング支持体からの高分子フィルムの剥離を容易かつ安定的に行えることを見出し、本発明を発明するに至った。
なお、従来より使用されているキャスティング支持体はいずれも、その表面の弾性率が小さいか、大きいものであり、本発明が限定する範囲の表面弾性率を有するキャスティング支持体は知られていなかった。
即ち、本発明は、次の(1)に記載されるような、溶液キャスティング法による高分子フィルムの製造方法であって、高分子溶液を、表面の弾性率が20〜70GPa、好ましくは25〜65GPa、より好ましくは30〜60GPaであるキャスティング支持体上に流延又は塗布乾燥することを特徴とする、高分子フィルムの製造方法である。また、本発明は、次の(2)に記載されるような表面の弾性率を有する、前記高分子フィルムを製造するためのキャスティング支持体に関する。
【0007】
なお、本発明でいうキャスティング支持体の表面の弾性率は、一般にはナノインデンテーション法により測定される。ナノインデンテーション法は、薄膜あるいは試料の極表面の機械的特性を評価する目的で開発された技術であり、具体的には極微小な荷重で鋭角圧子を試料に押し込み、ナノメートルの精度で押し込み深さを測定し、得られた荷重−変位曲線の除荷曲線から弾性率を算出する。
(1) 溶液キャスティング法による高分子フィルムの製造方法であって、高分子フィルム溶液を、表面の弾性率が20〜70GPaであるキャスティング支持体上に流延又は塗布乾燥することを特徴とする、高分子フィルムの製造方法。
(2) 表面の弾性率が20〜70GPaである、前記(1)に記載される高分子フィルムを製造するためのキャスティング支持体。
【0008】
本発明で使用されるキャスティング支持体の表面材料は、弾性率が20〜70GPa、好ましくは25〜65GPa、より好ましくは30〜60GPaの範囲であり、高分子溶液に使用される溶媒に対して安定であり、かつ溶媒乾燥時の温度で容易に変形しないものであれば、特に限定されるものではない。例えば、工業用アルミニウム、マグネシウム合金、ソーダカリガラス等が使用される。
また、キャスティング支持体の表面が複合材料である場合には、(1)式で表される複合材料の弾性率が20〜70GPa、好ましくは25〜65GPa、より好ましくは30〜60GPaの範囲であれば、特に限定されるものではない。
composite=E1φ1+E2φ2+・・・+Enφn (1)
φ1+φ2+・・・+φn=1
ここで、Ecomposite:複合材料の表面の弾性率(GPa)、En:各成分の表面の弾性率(GPa)、φn:各成分の面積分率(−)である。例えば、ガラス繊維強化ポリフェニレンサルファイド樹脂、カーボン繊維強化ポリフェニレンサルファイド樹脂、ガラス繊維強化エポキシ樹脂、カーボン繊維強化エポキシ樹脂等が使用される。
【0009】
キャスティング支持体の表面の弾性率が20GPaより小さい場合、キャスティング支持体の表面にキズが入りやすく取扱いが難しく、また溶媒乾燥による高分子フィルムの収縮によりキャスティング支持体の表面が変形し、高分子フィルムのキャスティング支持体面側に摺りガラス状のキズが入るという問題がある。溶媒乾燥に伴って発生する高分子フィルムの収縮応力は、(2)式で表され、キャスティング支持体の表面の弾性率が低い場合には、その収縮応力によってキャスティング支持体の表面に変形が生じ、それが高分子フィルムのキャスティング支持体面側に摺りガラス状のキズが入る原因になると考えられる。
σa=ε×E (2)
ここで、σa:収縮応力、(GPa)、ε:高分子フィルムの収縮歪み(−)、E:高分子フィルムの弾性率(GPa)である。
【0010】
逆にキャスティング支持体の表面の弾性率が70GPaより大きい場合には、溶媒乾燥後に高分子フィルムを安定して剥離することができない。表面の弾性率が大きくなるとキャスティング支持体からの高分子フィルムの剥離が困難になる確かな理由は明らかではないが、次のような仮説を立てるとうまく説明できる。つまり、キャスティング支持体からの高分子フィルムの剥離現象を、クラックを持つ物体の破壊現象(物体に新しい二つの表面が形成される現象)と等価であると考えると、クラックを持つ物体の破壊強度は、下記(3)式のグリフィスの式で表されるため(ここでは議論を簡単にするために表面自由エネルギーとクラック長さを一定であるとする)、物体の弾性率が大きい程、キャスティング支持体からの高分子フィルムの剥離強度が大きくなる(剥離が困難になる)という結論が得られる。
σf=(2Emγ/πa)1/2 (3)
ここで、σf:物体の破壊強度(GPa)、Em:物体の弾性率(GPa)、γ:物体の表面自由エネルギー(mJ/m2)、a:クラック長さの1/2の長さ(m)である。
【0011】
また、高分子溶液の溶媒としては、水あるいは塩化メチレン、N,N−ジメチルアセトアミド、キシレン等の有機溶媒を用いることが好ましい。
高分子フィルムの製造は、通常の流延乾燥、塗布乾燥等で行われる。溶媒乾燥はフィルムの性質、厚さ、溶媒等によって相違するが、30〜200℃の熱風あるいは50〜200℃にキャスティング支持体を加熱し、5〜60分間行うと良い。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明では、表面の弾性率が20〜70GPa、好ましくは25〜65GPa、より好ましくは30〜60GPaであるキャスティング支持体を用いることにより、溶媒乾燥後のキャスティング支持体からの高分子フィルムの剥離を容易かつ安定的に行うことができ、表面外観、厚薄精度に優れた高分子フィルムを容易に製造できるという効果を有する。
【0013】
また、本発明は剥離性を改善するために高分子溶液に剥離剤を添加したり、キャスティング支持体の表面に表面自由エネルギーの小さい離型剤を塗布したりする方法でないため、表面外観、厚薄精度に優れた高分子フィルムを容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例1〜10及び比較例1〜12の試験結果を表1と2に示す。
【0015】
[キャスティング支持体の鏡面研磨]
表面粗さの影響を無くすため、キャスティング支持体の表面を鏡面研磨した上で試験に供した。
【0016】
[キャスティング支持体の表面の弾性測定]
試験に供したキャスティング支持体の表面の弾性率は、ナノインディテーション測定装置(三角錐型圧子使用)により測定した。
【0017】
[剥離性及び外観の評価方法]
フィルムの剥離性は、加熱乾燥後に高分子フィルムに幅5cm×長さ15cmの長方形の切れ目を入れ、その後高分子フィルムの長手方向の一端を手で掴んでキャスティング支持体から剥離させ、次の4段階で評価した。なお、◎、○の評価で高分子フィルムを製造するためのキャスティング支持体として使用可能である。
剥離性評価基準:◎極めて容易に剥離、○容易に剥離、△剥離が困難、×剥離が極めて困難。また、フィルムの外観は、目視によりキャスティング支持体面側の剥離痕、摺りガラス状のキズの有無を評価した。剥離痕、摺りガラス状のキズが無く、良好と評価された場合にキャスティング支持体として使用可能である。
【実施例1】
【0018】
表面の弾性率が21GPa、板厚が2mmの強化ポリフェニレンサルファイド樹脂板A(キャスティング支持体)(旭硝子マテックス社製アサヒPPS RE-101JA(ペレット)を熱成形によりシート化したもの)上に、完全けん化ポリビニルアルコール(重合度:2000、けん化度:99mo1%)の15重量%水溶液を流延し、加熱乾燥(熱風乾燥、70℃×20分間+11O℃×30分間)により含有溶媒量を乾量基準で1重量%以下の状態まで乾燥し、その後キャスティング支持体から完全けん化ポリビニルアルコールフィルム(膜厚:0.07mm)を剥離した。キャスティング支持体からの完全けん化ポリビニルアルコールフィルムの剥離性及び外観は良好であった。
【実施例2】
【0019】
キャスティング支持体に表面の弾性率が33GPa、板厚が2mmの強化ポリフェニレンサルファイド樹脂板B(旭硝子マテックス社製アサヒPPS RC-179(ペレット)を熱成形によりシート化したもの)を用い、実施例1と同様の方法で完全けん化ポリビニルアルコールフィルム(膜厚:0.07mm)を製造した。キャスティング支持体からの完全けん化ポリビニルアルコールフィルムの剥離性及び外観は良好であった。
【実施例3】
【0020】
キャスティング支持体に表面の弾性率が45GPa、板厚が1.5mmのマグネシウム合金板(JIS種類:AZ91)を用い、実施例1と同様の方法で完全けん化ポリビニルアルコールフィルム(膜厚:0.07mm)を製造した。キャスティング支持体からの完全けん化ポリビニルアルコールフィルムの剥離性及び外観は良好であった。
【実施例4】
【0021】
キャスティング支持体に表面の弾性率が57GPa、板厚が2mmのソーダカリガラス板(松浪硝子工業社製電子材料用ガラス7622)を用い、実施例1と同様の方法で完全けん化ポリビニルアルコールフィルム(膜厚:0.07mm)を製造した。キャスティング支持体からの完全けん化ポリビニルアルコールフィルムの剥離性及び外観は良好であった。
【実施例5】
【0022】
キャスティング支持体に表面の弾性率が69GPa、板厚が1.5mmの工業用アルミニウム板(JIS種類:AlO85P)を用い、実施例1と同様の方法で完全けん化ポリビニルアルコールフィルム(膜厚:0.07mm)を製造した。キャスティング支持体からの完全けん化ポリビニルアルコールフィルムの剥離性及び外観は良好であった。
【実施例6】
【0023】
表面の弾性率が21GPa、板厚が2mmの強化ポリフェニレンサルファイド樹脂板A(キャスティング支持体)上に、ポリカーボネート(帝人化成社製パンライトK-1300Y)の17重量%塩化メチレン溶液を流延し、加熱乾燥(熱風乾燥、40℃×20分間+100℃×20分間+150℃×1Omin)により含有溶媒量を乾量基準で1重量%以下の状態まで乾燥し、その後キャスティング支持体からポリカーポネートフィルム(膜厚:0.075mm)を剥離した。キャスティング支持体からのポリカーボネートフィルムの剥離性及び外観は良好であった。
【実施例7】
【0024】
キャスティング支持体に表面の弾性率が33GPa、板厚が2mmの強化ポリフェニレンサルファイド樹脂板Bを用い、実施例6と同様の方法でポリカーボネートフィルム(膜厚:0.075mm)を製造した。キャスティング支持体からのポリカーボネートフィルムの剥離性及び外観は良好であった。
【実施例8】
【0025】
キャスティング支持体に表面の弾性率が45GPa、板厚が1.5mmのマグネシウム合金板を用い、実施例6と同様の方法でポリカーボネートフィルム(膜厚:0.075mm)を製造した。キャ
スティング支持体からのポリカーボネートフィルムの剥離性及び外観は良好であった。
【実施例9】
【0026】
キャスティング支持体に表面の弾性率が57GPa、板厚が2mmのソーダカリガラス板を用い
、実施例6と同様の方法でポリカーボネートフィルム(膜厚:0.075mm)を製造した。キャスティング支持体からのポリカーボネートフィルムの剥離性及び外観は良好であった。
【実施例10】
【0027】
キャスティング支持体に表面の弾性率が69GPa、板厚が1.5mmの工業用アルミニウム板を用い、実施例6と同様の方法でポリカーボネートフィルム(膜厚:0.075mm)を製造した。キャスティング支持体からのポリカーボネートフィルムの剥離性及び外観は良好であった。
【0028】
[比較例1]
キャスティング支持体にステンレス板上に表面の弾性率が7GPa、膜厚が20μmの特殊シリコン樹脂系高温焼付け塗装(セラミックコート社製SPB-BX-2)を形成したものを用い、実施例1と同様の方法で完全けん化ポリビニルアルコールフィルム(膜厚:O.07mm)を製造した。キャスティング支持体からの完全けん化ポリビニルアルコールフィルムの剥離性は良好であったが、フィルムのキャスティング支持体面側には摺りガラス状のキズが見られた。
【0029】
[比較例2]
キャスティング支持体に表面の弾性率が14GPa、板厚が2mmの強化ボリフェニレンサルファイド樹脂板C〈旭硝子マテックス社製アサヒPPS RE-04(ペレット)を熱成形によりシート化したもの)を用い、実施例1と同様の方法で完全けん化ポリビニルアルコールフィルム(膜厚:0.07mm)を製造した。キャスティング支持体からの完全けん化ポリビニルアルコールフィルムの剥離性は良好であったが、フィルムのキャスティング支持体面側には摺りガラス状のキズが見られた。
【0030】
[比較例3]
キャスティング支持体に表面の弾性率が73GPa、板厚が2.4mmのソーダライムガラス板(セントラル硝子社製FL)を用い、実施例1と同様の方法で完全けん化ポリビニルアルコールフィルム(膜厚:0.07mm〕を製造した。キャスティング支持体から完全けん化ポリビニルアルコールフィルムを剥離させることは困難であり、フィルムのキャスティング支持体面側には剥離による剥離痕が見られた。
【0031】
[比較例4]
キャスティング支持体に表面の弾性率が74GPa、板厚が1.5mmの耐食アルミニウム板(JIS
種類:A5083P)を用い、実施例1と同様の力法で完全けん化ポリビニルアルコールフィルム(膜厚:0.07mm)を製造した。キャスティング支持体から完全けん化ポリビニルアルコールフィルムを剥離させることは困難であり、フィルムのキャスティング支持体面側には剥離による剥離痕が見られた。
【0032】
[比較例5]
キャスティング支持体に表面の弾性率が120GPa、板厚が1.5mmの無酸素銅板(JIS種類:C1O20)を用い、実施例1と同様の方法で完全けん化ポリビニルアルコールフィルム(膜厚:0.07mm)を製造した。キャスティング支持体から完全けん化ポリビニルアルコールフィルムを剥離させることは極めて困難であり、フィルムのキャスティング支持体面側には剥離による剥離痕が見られた。
【0033】
[比較例6]
キャスティング支持体に表面の弾性率が235GPa、板厚が1.5mmのステンレス板〔JIS種類:SUS304)を用い、実施例1と同様の方法で完全けん化ポリビニルアルコールフィルム(膜厚:0.07mm)を製造した。キャスティング支持体から完全けん化ポリビニルアルコールフィルムを剥離させることは極めて困難であり、フィルムのキャスティング支持体面側には剥離による剥離痕が見られた。
【0034】
[比較例7]
キャスティング支持体にステンレス板上に表面の弾性率が7GPa、膜厚が20μmの特殊シリコン樹脂系高温焼付け塗装を形成したものを用い、実施例6と同様の方法でポリカーボネートフィルム(膜厚:0.07mm)を製造した。キャスティング支持体からのポリカーボネートフィルムの剥離性は良好であったが、フィルムのキャスティング支持体面側には摺りガラス状のキズが見られた。
【0035】
[比較例8]
キャスティング支持体に表面の弾性率が14GPa、板厚が2mmの強化ポリフェニレンサルファイド樹脂板Cを用い、実施例6と同様の方法でポリカーボネートフィルム(膜厚:0.07mm)を製造した。キャスティング支持体からのポリカーボネートフィルムの剥離性は良好であったが、フィルムのキャスティング支持体面側には摺りガラス状のキズが見られた。
【0036】
[比較例9]
キャスティング支持体に表面の弾性率が73GPa、板厚が2.4mmのソーダライムガラス板を用い、実施例6と同様の方法でポリカーボネートフィルム(膜厚:0.075mm)を製造した。キャスティング支持体からポリカーボネートフィルムを剥離させることは極めて困難であり、フィルムのキャスティング支持体面側には剥離による剥離痕が見られた。
【0037】
[比較例10]
キャスティング支持体に表面の弾性率が74GPa、板厚が1.5mmの耐食アルミニウム板を用い、実施例6と同様の方法でポリカーボネートフィルム(膜厚:0.075mm)を製造した。キャスティング支持体からポリカーボネートフィルムを剥離させることは極めて困難であり、フィルムのキャスティング支持体面側には剥雌による剥離痕が見られた。
【0038】
[比較例11]
キャスティング支持体に裏面の弾性率が120GPa、板厚が1.5mmの無酸素銅板を用い、実施例6と同様の方法でポリカーボネートフィルム(膜厚:0.075mm)を製造した。キャスティグ支持体からポリカーボネートフィルムを剥離させることは極めて困難であり、フィルムのキャスティング支持体面側には剥離による剥離痕が見られた。
【0039】
[比較例12]
キャスティング支持体に表面の弾性率が235GPa、板厚が1.5mmのステンレス板を用い、実施例6と同様の方法でポリカーボネートフィルム(膜厚:0.075mm)を製造した。キャスティング支持体からポリカーボネートフィルムを剥離させることは極めて困難であり、フィルムのキャスティング支持体面側には剥離による剥離痕が見られた。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液キャスティング法による高分子フィルムの製造方法であって、高分子溶液を、表面の弾性率が20〜70GPaであるキャスティング支持体上に流延又は塗布乾燥することを特徴とする、高分子フィルムの製造方法。
【請求項2】
表面の弾性率が20〜70GPaである、請求項1の高分子フィルムを製造するためのキャスティング支持体。


【公開番号】特開2006−321163(P2006−321163A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147703(P2005−147703)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000100849)アイセロ化学株式会社 (20)
【Fターム(参考)】