説明

高周波加熱装置用表面波発生体

【課題】 加熱室内外へ出し入れ自在な表面波発生体を実現する。
【解決手段】 空気孔15、15を、上下各ケース10、11の接合部のうちの板状導電性部材12の中心から見た対称の位置にそれぞれ設けて、水洗い時等にケース内に侵入した水が、空気孔の一方を上にし他方を下にすることにより、ケース外に確実に排出できるようにしたことにより、表面波発生体が異常加熱を起こすようなことがあっても、水蒸気が異常大量に発生することはなくなり、したがって、上下ケースないし接着剤の破壊が確実に回避されることになった。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高周波加熱装置の加熱室内に出し入れ自在に設置されて表面波を発生する表面波発生体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】表面波技術を利用した従来の高周波加熱装置として、例えば特開昭51−11242号公報のように、表面波線路が加熱室底部に固定的に取り付けられ、かつ食品も表面波線路上に固定的に設置されるようになっているもの、実開昭59−7595公報のように、表面波線路が加熱室底部に回転自在に取り付けられ、食品については表面波線路上に固定的に設置されるようになっているもの、特開昭51−128038号公報のように、加熱室底部に表面波線路が固定的に取り付けられ、その表面波線路上で食品が回転するようになっているもの、あるいは特開昭52−155445号公報のように、加熱室底部において表面波線路および食品の両者が回転するようになっているものなどが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】それら従来の高周波加熱装置においては、表面波線路(表面波発生体)が加熱室底部に取り外し可能な形で取り付けられていないため、表面波加熱専用装置の感があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は上述の問題点を解決するためになされたもので、所定の誘電体損失値をとるとともに周縁部に対して中央側が上膨らみのセラミック製上ケースと、所定の誘電体損失値をとるとともに周縁部に対して中央側が下膨らみのセラミック製下ケースと、これら上下各ケースの周縁部によって挟まれることにより上下各ケースの中間部において水平な面に広がりを有する板状導電性部材と、上下各ケースの接合部にあって上下各ケースと板状導電性部材とを弾性的に接着する接着剤と、上下各ケースの接合部のうちの板状導電性部材の中心から見た対称の位置の接着剤をそれぞれ欠落させることにより上下各ケースで仕切られた内外空間を通ずるようにした少なくとも2個の空気孔とで高周波加熱装置用の表面波発生体を構成した。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の表面波発生体の構成は上述した通りのものであり、必要時、表面波発生体を加熱室内に設置し、その上に食品を載せるだけで、表面波を利用した加熱が実行される。
【0006】その際、上下各ケースはセラミックで作られているので、食品の重みで簡単に変形することもなく、また加熱動作時に温度が上昇しても、大きな熱変形が生じることはなく、致命的な被害が発生することはない。
【0007】また、上下各ケースが、弾性を有する接着剤によって接合しているので、温度が上昇して両者が異なる熱膨張率で膨張しても、その差は接着剤によって吸収されることとなり、両者の離脱や損傷破壊が発生することはない。
【0008】さらにまた、上ケースと下ケースを接着剤で接合するだけでよい構造にしてあるので、平板状導電性部材の外郭ケース内への取り付け作業がきわめて容易に行なえる。
【0009】また、空気孔を、上下各ケースの接合部のうちの、板状導電性部材の中心から見た対称の位置それぞれ設けて、水洗い時等にケース内に侵入した水が、空気孔の一方を上にし他方を下にすることにより、ケース外に確実に排出できるようにした。
【0010】
【実施例】以下本発明の実施例を説明する。
【0011】図1および図2において、1は加熱室、2、3は高周波エネルギーの発生源であるマグネトロン、4、5はそれぞれマグネトロン2、3で発生した高周波エネルギーを加熱室1へ導く導波管であり、6、7はそれぞれ導波管4、5と加熱室1を結合する結合口である。
【0012】8は加熱室1の底部に設けられた円板状の回転台で、9はこの回転台8を回転駆動するモータである。
【0013】10は所定の誘電体損失値(たとえば、誘電率=7、誘電正接=0.05)をとるとともに周縁部に対して中央側が上膨らみのセラミック製上ケースで、11はこの上ケース10の誘電体損失値とは異なる誘電体損失値(誘電率=3、誘電正接=0.02)をとるとともに周縁部に対して中央側が下膨らみのセラミック製下ケースである。12はこれら上下各ケースの周縁部によって挟まれることにより上下各ケースの中間部が水平方向に広がりを有する板状導電性部材で、13はこの板状導電性部材の周縁4ヶ所に張り出して設けられた小鍔部であり、この小鍔部13、13、・・が上下各ケースの周縁に挟まれるようになっている。14は上下各ケース10、11周縁接合部にあって上下各ケースと上述板状導電性部材12とを弾性的に接着する接着剤で、15、15は上下各ケース10、11の接合部のうちの、板状導電性部材12の中心Oから見た対称の位置において、接着剤14の一部をそれぞれ欠落させることにより上下各ケース10、11で仕切られたの内外空間を通ずるように開設された少なくとも2個の空気孔である。
【0014】そして16は上ケース10上に設置されたプラスチック製の食品容器で、17はこの食品容器16内に配列設置された冷凍食品である。
【0015】本発明表面波発生体の一実施例の構成は以上の通りであり、次にその作用と効果について説明する。
【0016】板状の導電性部材12と上下各ケース10、11とで構成された表面波発生体を図1のように回転台8上に設置するとともに、その上面に冷凍食品17、17・・・の配列された食品容器16を載置して、マグネトロン2、3を作動させると、上ケース10の上面表面に表面波が生成され、冷凍食品17、17、・・・はその表面波によって加熱される。
【0017】この実施例の場合、上ケース10の誘電損失を下ケース11のそれより大きい値にしているから、表面波の生成強度は、上ケース表面から離れるに従って急激に低下するようになっている。そのため、被加熱冷凍食品17、17、・・・はその底部が比較的集中的に加熱されることになり、反面その上部の解凍は比較的緩やかになる。つまり、上ケース10が上になるように設置することにより、食品底部を他の部分に比べて集中的に加熱するのに威力を発揮する。
【0018】これに対して下ケース11が上側になるように設置すると、上述の例とは違って、ケース11の表面からの距離による表面波の強度の低下の仕方は緩やかになり、上述した例の場合のように食品の底部に集中することなく、食品上部についても比較的良好に加熱することができるようになる。
【0019】なお、上下各ケース10、11の誘電損失の違いが目視によって簡単に判別できないことが十分考えられる。その対応策として、上下各ケース10、11の各上表面に、発生する表面波の性質を表示する標識を設ける必要があることはいうまでもないことである。
【0020】また、上下各ケース10、11は、荷重および温度上昇に対する強度が比較的高いセラミックで作られているので、繰返し使用、長時間使用若しくは誤使用によって上下各ケース10、11、板状導電性部材12の両方あるいは一方が高温になっても、発煙や発火等が発生することはなく、安全である。当然、冷凍食品17、17、・・・が発煙発火を起こすようなことがあっても、各ケースに致命的な損傷が発生することはない。
【0021】また、上下各ケース10、11が、弾性を有する接着剤14によって接合されているから、温度上昇にともなって両者が異なる熱膨張率で膨張しても、その差は接着剤14によって吸収されることとなり、両者の離脱や損傷破壊が発生することもない。
【0022】さらに、板状導電性部材12を接着剤14を介在させてただ単に上下各ケース10、11で挟むだけで、極めて簡単に表面波発生体を組み立てることが可能である。
【0023】さらにまた、使用にともなう温度上昇によりケース10、11内の空気が膨張したときには、空気は空気孔15、15を通じて流出するので、ケース内圧力が高まることはない。
【0024】その空気孔15、15は上ケース10と下ケース11を接合する接着剤の一部を欠落させるだけで簡単に形成することができ、難加工材であるセラミックの加工工程を削減することができる。
【0025】ところで、各空気孔15、15は、上下各ケース10、11の接合部のうちの板状導電性部材12の中心Oから見た対称の位置に設けられているから、内部に水が溜った場合にそれぞれの空気孔15、15を上下に位置させれば、上方の空気孔15から空気が供給される中で水が下方の空気孔15から確実に排出されることになる。したがって、そのようにして水が溜らないように管理された表面波発生体が、異常加熱を起こすようなことがあっても、水蒸気が異常大量に発生することはなく、上下ケースないし接着剤の破壊は確実に回避される。
【0026】なおここまでは、表面波発生体を回転台8上に設置した例を説明したが、回転台を備えていない場合には、単に加熱室底部に設置するだけでも、十分利用可能であることはいうまでもない。
【0027】
【発明の効果】以上、本発明によれば、ケースがセラミック製なので、簡単に変形することもなく、また加熱動作時に温度が上昇しても大きな熱変形を生じることもなく、致命的な被害が発生することはない。
【0028】さらに、上下各ケースが、弾性を有する接着剤によって接合しているので、温度が上昇して両者が異なる熱膨張率で膨張しても、その差は接着剤によって吸収されることとなり、両者の離脱や損傷破壊が発生することもない。
【0029】さらにまた、板状導電性部材の取り付けも接着剤によって取り付けるだけのものであるから、極めて簡単に組み立てることが可能である。
【0030】また、空気孔を、上下各ケースの接合部のうちの、板状導電性部材の中心から見た対称の位置にそれぞれ設けて、水洗い時等にケース内に侵入した水が、空気孔の一方を上にし他方を下にすることにより、ケース外に確実に排出できるようになっているので、表面波発生体が異常加熱を起こすようなことがあっても、水蒸気が異常大量に発生することはなくなり、したがって、上下ケースないし接着剤の破壊が確実に回避されることになった。
【0031】なお、空気孔の開設位置については、実施例の説明では板状導電性部材の中心に対して対称位置であると述べたが、水の排出を手際よく行なう上で都合の良い位置という程度の意味であることを申し添えておくことにする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明一実施例の表面波発生体を高周波加熱装置の加熱室内に設置した例の断面図である。
【図2】図1のA−A矢視図である。
【符号の説明】
1 加熱室
10 上ケース
11 下ケース
12 板状導電性部材
13 小鍔部
14 接着剤
15、15 空気孔
16 食品容器
17、17、・・・ 冷凍食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の誘電体損失値をとるとともに周縁部に対して中央側が上膨らみのセラミック製上ケース(10)と、所定の誘電体損失値をとるとともに周縁部に対して中央側が下膨らみのセラミック製下ケース(11)と、これら上下各ケースの周縁部によって挟まれることにより上下各ケースの中間部において水平な面に広がりを有する板状導電性部材(12)と、前記上下各ケースの接合部にあって前記上下各ケースと前記板状導電性部材とを弾性的に接着する接着剤(14)と、前記上下各ケースの接合部のうちの前記板状導電性部材の中心から見た対称の位置の接着剤をそれぞれ欠落させることにより前記上下各ケースで仕切られた内外空間を通ずるようにした少なくとも2個の空気孔(15、15)とで構成されていることを特徴とする高周波加熱装置用表面波発生体。

【図1】
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【図2】
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