説明

高圧ランプ点灯制御方法および画像投影装置

【課題】高圧ランプが破裂しているときには破片飛散を抑制でき、破裂していないときには再点灯までの待ち時間が従来と同等にできる高圧ランプ制御方法を提供する。
【解決手段】高圧ランプ点灯制御方法は、a)ランプ消灯の要因を保存する手順、b)ランプ点灯時に手順a)で保存したランプ消灯の要因を読み出す手順、c)読み出した要因が「ランプ失灯」の場合は、ランプ点灯、冷却ファン回転の順で、それ以外の場合は、冷却ファン回転、ランプ点灯の順に動作させる手順、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ランプからの光を光源として映像を投射するプロジェクタ等の画像投影装置に係り、光源となるランプの点灯制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧ランプ(以下、単にランプともいう。)を光源として映像を投影するプロジェクタ等の画像投影装置はランプ点灯時と点灯中の温度上昇に起因する装置本来の性能の低下を防止するために温度センサと冷却ファンとを装置内に設けて、温度センサからの温度情報に基づいて冷却ファンを回転させ、この回転により生じた冷却風を所定の部位に吹き付けて所定の温度を維持するようにしている。
【0003】
また、ランプの特性として所定の温度以下でないとランプバルブ内部の圧力が低下しないため放電が行われずランプは点灯しない。このため、ランプ消灯後直ぐに再点灯させたい場合はランプが所定の温度になるまで数分間の待ち時間が生じる。この待ち時間を短縮するため、冷却ファンによる送風でランプの冷却を早めるようにしている。
このように、ランプ点灯制御においてはランプの点灯と冷却ファンの回転は一体的に実行されている。
【0004】
このようなランプ点灯制御方法には特許文献1に記載されているような冷却ファン起動後に光源ランプ点灯を行う方法と特許文献2に記載されているような光源ランプ点灯後に冷却ファンの回転を行う方法とがある。又、特許文献3には光源ランプの温度等で点灯前に冷却ファンの起動を制御する技術も公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−12778
【特許文献2】特開2006−32111
【特許文献3】特開平11−109504
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているようなランプ点灯制御方法は、誤操作等によりランプを消灯させてしまい、すぐに再点灯したいような場合にもかかわらず、ランプが高温状態にあって所定の温度に低下するまで再点灯できないような場合に、冷却ファンを回転させることでランプの温度低下を可能な限り早めることでランプの再点灯までの時間を短くできるという点で有用な方法である。
【0007】
ところが、ランプは消耗品であり、ランプ寿命の末期には点灯中に破裂する危険がある。したがって、前記のような手順のランプ点灯制御方法では、ランプが破裂している場合にはランプの破片が散乱し、この破片が画像投影装置内部の損傷を引き起こしたり、冷却ファンによる送風で装置外に飛散し、この破片により使用者を傷付けたり、周辺に置かれた機材を損傷する等安全上の欠点があった。
【0008】
このような安全上の問題に対処するために従来ランプ前方を透明な保護材でカバーする手法が用いられている。しかしランプを冷却するためランプ全体を覆う事は不可能であり、細かい破片はカバーの隙間より装置内部に出てしまい十分な対策とはなっていない。
【0009】
このような問題に対処するには、特許文献2に記載されているようなランプ点灯を確認した後に冷却ファンを回転させるランプ点灯制御方法が考えられる。
【0010】
しかしながら、このランプ点灯制御方法ではランプが点灯しない限り冷却ファンは回転しないので、前記のように誤操作等によりランプを消灯させてしまい、すぐにランプを再点灯させようとしても、ランプは所定の温度を超えていることもあり、所定の温度以下になるまでランプは点灯しない。しかも冷却ファンは回転しないのでランプの温度は自然冷却に任されるのですぐには所定の温度に低下せず、待ち時間を短縮することはできないので使い勝手が悪いという欠点があった。
【0011】
また、特許文献3に記載されているようにランプの温度等で点灯前に冷却ファンの起動を制御する方法の採用も考えられるが、このランプ点灯制御方法では、冷却ファンの起動前にランプの状態が不明のためランプが破裂していた場合に破片が外部に飛散するので、前述のような安全性上の欠点があった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、冷却ファンの回転とランプ点灯の順序をランプ消灯の要因に基づいて決定することで安全性が高く使い勝手にも悪影響のないランプ点灯制御方法を提供することと、このようなランプ点灯制御方法を直接使用する画像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明になるランプ点灯制御方法は、次の手順を含むことを特徴とするものである。
a)ランプ消灯の要因を保存する手順
b)ランプ点灯時に手順a)で保存したランプ消灯の要因を読み出す手順
c)読み出した要因が「ランプ失灯」の場合は、ランプ点灯、冷却ファン回転の順で、それ以外の場合は、冷却ファン回転、ランプ点灯の順に動作させる手順
【0014】
本発明になる画像投影装置は、ランプ消灯の要因を保存する記憶手段と、この記憶手段に保存されたランプ消灯の要因を読み出し、読み出した要因が「ランプ失灯」の場合は、ランプ点灯、冷却ファン回転の順で、それ以外の場合は、冷却ファン回転、ランプ点灯の順に動作指令を生成する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ランプ点灯時に保存されているランプ消灯の要因応じて冷却ファンの回転とランプの点灯の動作を入れ替えることとしたのでランプ点灯時の待ち時間を従来と同等に保ちながら光源ランプ破裂時の破片飛散を防止することができるランプ点灯制御方法を提供することができる。また、このようなランプ点灯制御方法を直接使用することができる画像投影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明になる画像投影装置で、ランプ点灯制御に関連する部分を示す要部ブロック図である。
【図2】ランプ消灯の要因保存手順を示す概略フローチャート図である。
【図3】本発明になるランプ点灯制御手順を示す概略フローチャート図である。
【図4】図3中のランプ点灯処理手順を示すフローチャート図である。
【図5】図3中の冷却ファン起動処理手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明になる画像投影装置で、ランプ点灯制御に関連する部分を示す要部ブロック図、図2はランプ消灯の情報保存手順を示す概略フローチャート図、図3は本発明になるランプ点灯制御手順を示すフローチャート図、図4は図3のランプ点灯手順中のランプ点灯処理手順を示すフローチャート図、図5は図3のランプ点灯制御手順中の冷却ファン起動処理手順を示すフローチャート図である。
【0018】
図1に示すように画像投影装置10はメイン電源1、ランプ電源2、高圧ランプ3、制御部4、温度センサ5、冷却ファン6、記憶部7で構成される。
メイン電源1は図示しない商用電源を受けてランプ電源2と制御部4とで用いられる電源を生成し、それぞれに供給する。ただし、ランプ電源2への電力は、高圧ランプ3点灯時に制御部4からの信号で供給・遮断を制御される。
【0019】
ランプ電源2はメイン電源1から供給される電源を受けて高圧ランプ3を駆動する電源を生成し、制御部4からの点灯指令により高圧ランプ3に供給する。ランプ電源2は高圧ランプ3へ供給する電流を監視して高圧ランプ3の点灯の成否を判断してこの結果を制御部4に送出する。また、ランプ電源2は制御部4からの消灯指令により高圧ランプ3への電力を遮断し、前述のように供給電流を監視して高圧ランプ3の消灯の成否を判断し、その結果を制御部4に送出する。また、ランプ電源2は制御部4から消灯指令がないときに高圧ランプ3の消灯を検出した場合にも、高圧ランプ3の消灯を制御部4に送出する。
【0020】
高圧ランプ3はこの駆動電源を受けて点灯し、公知の手段により画像を拡大投影するときの光源となる。
【0021】
温度センサ5は高圧ランプ3付近等画像投影装置10の内部に複数設置され、それぞれの部位の温度を検出して制御部4に送出する。制御部4は温度センサ5からの温度情報に基づいてそれぞれの部位の温度を所定の温度に保持するために冷却ファンの回転数を設定して冷却ファン6の回転を制御する。冷却ファン6は画像投影装置10の内部の複数設けられ、それぞれの部分を冷却する。また、このときの回転情報を制御部4に送出する。
【0022】
制御部4は前述のランプ電源2、冷却ファン6の制御を行うと共にその制御の成否を結果として入力する。また、温度センサ5からそれぞれの部位の温度情報も入力する。
そして、高圧ランプ3が点灯中に消灯した場合は、何に起因して消灯したのか、その要因を情報として記憶部7に保存する。そして、高圧ランプ3を点灯するときにこの情報を用いて冷却ファン6の起動処理を行ってから高圧ランプ3の点灯処理を行うか、または高圧ランプ3の点灯処理を行ってから冷却ファン6の起動処理を行うか決定する。
記憶部7は本発明に係る高圧ランプ3消灯の要因を保存する他、高圧ランプ3の点灯時間などの情報を保存する。この記憶部7は、電源が切断されても情報が消滅しないように不揮発性のメモリを用いるのがよい。
【0023】
次に、高圧ランプ3消灯の要因とその保存について説明する。
この高圧ランプ3の点灯中の消灯は次のような場合に起きる。
1)使用者の消灯操作等通常の手順で高圧ランプ3を消灯させた場合である。
2)画像投影装置10の外部からの電力が遮断された場合である。
3)制御部4が異常を検出して安全上高圧ランプ3を消灯させる必要があると判断した場合である。異常は、例えば温度センサ5からの温度情報が所定の温度を超えた場合や、冷却ファンの回転が所定の範囲外の場合など複数ある。
4)これらの3つの場合に当てはまらない状況で高圧ランプ3が消灯した場合である(このような高圧ランプ3の消灯をランプ失灯ともいう)。
【0024】
1)〜3)の場合は制御部4からの制御により高圧ランプ3を消灯させたものであるが、4)の場合は制御部4からの制御によるものではなく、原因不明で高圧ランプ3が消灯してしまっており、特定はできないが高圧ランプ3が破裂したために消灯した可能性がある。このような、1)〜4)の場合について制御部4は高圧ランプ3の消灯の要因をそれぞれの場合についてコード化して記憶部7に保存する。
【0025】
次に高圧ランプ3消灯の要因を保存する手順について図2を用いて説明する。
前記1)〜3)の場合は制御部4がランプ消灯制御を行う。すなわち制御部4はランプ電源2に対しランプ消灯指令を送出する(ステップS201)。ランプ電源2は高圧ランプ3への電力を遮断してランプを消灯させ、成否を制御部4へ送出する。制御部4この結果を受けて、ランプが消灯したことを確認した場合は(ステップS202のYES)、記憶部7に消灯の要因を保存する(ステップS203)。
保存する要因はコード化され、前記1)の場合は正常終了のコード、前記2)の場合は電源断のコード、前記3)の場合は各々の異常に対応するコードを保存する。
ランプが消灯しない場合(ステップS202のNO)は消灯不能に対応するコードを記憶部7に保存した後(ステップS204)、ランプ電源に供給している電力を遮断する(ステップS205)。
【0026】
4)の場合は制御部4がランプ電源2に対して消灯指令を出力していないにもかかわらずランプ電源2から高圧ランプ3消灯の信号を受信した場合であり、既に高圧ランプ3は消灯しているので消灯制御は行わない。この場合制御部4は記憶部7にランプ失灯のコードを保存した後にランプ失灯に対応するエラー処理を行う。
【0027】
次に、本発明になるランプ点灯制御方法について図3を使用して説明する。
使用者の点灯操作が制御部4に入力されると、制御部4は記憶部7より前回の高圧ランプ3消灯の要因を読み出す(ステップS301)。
【0028】
[ランプ失灯の場合の手順]
高圧ランプ3消灯の要因がランプ失灯の場合は(ステップ302のYES)、ランプが破裂している可能性があり冷却ファンを回転させると破片が飛散する恐れがある。このため冷却ファンを回転させる前にランプ点灯処理を実施してランプ点灯の可否を確認する(ステップS303)。
【0029】
[ランプ点灯処理]
ランプ点灯処理について図4を用いて説明する。
【0030】
制御部4はランプ電源2にランプ点灯指令を出力する(ステップS401)。この指令を受けて、前述のようにランプ電源2は所定の電源を生成して高圧ランプ3に供給する。そして高圧ランプ3への供給電流を監視し、この電流が所定の値に到達したか否かで高圧ランプ3の点灯の成否を判断する(ステップS402)。ここで高圧ランプ3が点灯したと判断した場合はランプ点灯処理を完了する(ステップS402のYES)。
【0031】
一方、高圧ランプ3が点灯していないと判断した場合は、再度高圧ランプ3の点灯処理を行う(ステップS402のNO)。この高圧ランプ3の点灯処理の繰り返しは、予め定められた失敗回数(ランプ点灯処理に失敗した回数)だけ、予め定められた時間経過後に実行される(ステップS403、ステップS404)。そして、予め定められた失敗回数の範囲内に高圧ランプ3が点灯したと判断した場合はランプ点灯処理を完了する(ステップS403のYES)。
【0032】
このようにするのは、高圧ランプ3が所定の温度以下にならないと点灯しないことから、所定の時間経過後に所定の回数分だけ点灯指令を繰り返すことで高圧ランプ3に破裂などの異常がないにもかかわらず点灯しない場合と実際に破裂等の異常がある場合とを区別するためである。
【0033】
ところで、高圧ランプ3の消灯の要因がランプ破裂の場合は当然ランプは点灯しないから、失敗回数は所定の回数を超える(ステップS404のNO)。そうするとエラー処理に移行するので(ステップS406)、ランプ点灯処理は完了しないから冷却ファン起動処理(図3のステップS304)には移行しない。従って、冷却ファン6は回転しないので高圧ランプ3が破裂して破損が存在するとしても飛散することはない。
【0034】
[ランプ失灯以外の場合の手順]
高圧ランプ3消灯の要因がランプ失灯以外の場合は(図3ステップS302のNO)、ランプは破裂していないと判断できる。このため、従来どおり冷却ファン6の回転を先に実行するために冷却ファン起動処理を実行する(図3のステップS304)。
【0035】
[冷却ファン起動処理]
冷却ファン起動処理について図5を用いて説明する。
制御部4は温度センサ5から温度情報を読み取り(ステップS501)、読み取った温度情報に適応する冷却を行うように冷却ファン6の回転数を設定し(ステップS502)、この回転数で冷却ファン6が回転するように制御する。すなわち、高圧ランプ3の温度が高い場合は冷却ファン6の回転数を高くし、温度が低い場合は冷却ファンの回転数を低くする。冷却ファン6はこの制御により回転し、回転数を制御部4に送出するので、制御部4はこの回転数と設定した回転数とを比較し、設定した回転数の範囲内か否か判断する(ステップS503)。
【0036】
ここで範囲内と判断した場合は(ステップS503のYES)、そのまま冷却ファン6を回転させながら、高圧ランプ3の点灯処理に移行する(図3のステップS303)。
一方、範囲外と判断した場合は(ステップS503のNO)、エラー処理に移行し(ステップS504)、ランプ点灯処理には移行しない。
【0037】
ランプ点灯処理に移行すると、前述のランプ点灯処理が実行される。
従って、高圧ランプ3消灯後すぐに再点灯した場合などで高圧ランプ3が所定の温度以上の高温のために一回の点灯処理では点灯しない場合であっても冷却ファン6が温度に適応した回転数で回転することに伴う冷却風により高圧ランプ3を冷却するという手順は従来と同様であるから再点灯に要する待ち時間は従来と同じになる。
【0038】
以上説明したように、高圧ランプ3が破裂して破片が存在するような場合は冷却ファン6が回転しないので破片が飛散することはない。また、高圧ランプ3に異常がなく、一回の点灯処理または所定の失敗回数の範囲内での点灯処理で高圧ランプ3が点灯すれば、高圧ランプ3の点灯までの時間は従来と同じになる。
【符号の説明】
【0039】
1 メイン電源
2 ランプ電源
3 高圧ランプ
4 制御部
5 温度センサ
6 冷却ファン
7 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の手順を含むことを特徴とするランプ点灯制御方法。
a)ランプ消灯の要因を保存する手順
b)ランプ点灯時に手順a)で保存したランプ消灯の要因を読み出す手順
c)読み出した要因が「ランプ失灯」の場合は、ランプ点灯、冷却ファン回転の順で、それ以外の場合は、冷却ファン回転、ランプ点灯の順に動作させる手順
【請求項2】
高圧ランプからの光を光源として映像を投射する画像投影装置であって、
前記ランプ消灯の要因を保存する記憶手段と、前記記憶手段に保存されたランプ消灯の要因を読み出し、読み出した要因が「ランプ失灯」の場合は、ランプ点灯、冷却ファン回転の順で、それ以外の場合は、冷却ファン回転、ランプ点灯の順に動作指令を生成する制御手段とを備えることを特徴とする画像投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−78428(P2012−78428A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221386(P2010−221386)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000227836)日本アビオニクス株式会社 (197)
【Fターム(参考)】