説明

高圧放電ランプおよび照明装置

【課題】
キセノンの封入圧が比較的低圧であっても一般照明用途において実用的な高いランプ電圧および発光効率を有するとともにアークの安定性に優れた水銀フリーの高圧放電ランプおよびこれを用いた照明装置を提供する。
【解決手段】
高圧放電ランプは、透光性セラミックス気密容器1と、その小径筒部の内部に挿入された一対の電流導入導体3と、電極軸部2aおよび大径部2bを備え、電極軸部は電流導入導体の先端に接続し、その先端が大径部から突出して管軸方向に長さAの突出部を形成している一対の電極と、小径筒部の内径に対する外径の比率Bの電極マウントサブコイルSCと、希ガスが1〜5気圧のキセノン主体で、TmおよびHoの少なくとも一種のハロゲン化物を含み、水銀を含まないで封入されたイオン化媒体と、封止部4とを具備し、数値A、Bおよびそれらの和がそれぞれ所定範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水銀を本質的に含まない水銀フリーの高圧放電ランプおよびこれを備えた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛などの可視域の発光が少なくてランプ電圧を形成するのに効果的な金属のハロゲン化物を水銀に代えて封入して水銀フリーにした高圧放電ランプは既知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
水銀フリーの高圧放電ランプについては、上記の他にも多数の特許文献が存在するが、それらには希ガスの封入圧は0.1〜25気圧程度まで幅広く開示されている。そして、適性とされる希ガス圧は5〜7気圧以上と述べられているものが多く、この場合高圧放電ランプを始動させるために印加する始動用高電圧は8kV以上、キセノンが10気圧では始動用高電圧が15〜20kVになってしまう。
【0004】
しかしながら、水銀フリーの高圧放電ランプにおいては、亜鉛などの可視域の発光が少なくてランプ電圧を形成するのに効果的な金属のハロゲン化物は、その封入量が増加するにしたがいランプ電圧を増大させる反面、高圧放電ランプの発光効率が低下するという問題がある。
【0005】
これに対して、ツリウム(Tm)およびホルミウム(Ho)のハロゲン化物は、他の希土類金属のハロゲン化物と違って、高い発光効率に加えて高いランプ電圧増大効果が得られる。このため、ZnIなどのランプ電圧形成用金属ハロゲン化物の封入量を低減して上記問題を抑制し、結果的にキセノン封入圧が比較的低いにもかかわらず高い発光効率を維持することができる(特許文献2参照。)。
【0006】
特許文献2の高圧放電ランプでは、キセノンの封入圧が3〜15気圧であり、5気圧を超えると一般照明用の高圧放電ランプとしては始動電圧が高くなりすぎる。すなわち、水銀フリーにした高圧放電ランプを一般照明用途に適合させるためには、E形口金が広く普及しているため、この口金を装着している必要がある。この場合、E形口金は耐電圧が低いので、5kV以下の始動用高電圧で始動可能であることが望ましい。なお、始動電圧が5kVを超えると、水銀入りの高圧放電ランプ、これを用いる照明器具および配線との互換性が得られない。したがって、専用の口金を採用することを要し、照明システムのコストアップを招いてしまう。
【0007】
一方、セラミック製発光管を用いたメタルハライドランプでは、石英製の発光管を用いたメタルハライドランプに比べて、発光管の管壁負荷を大きくし、高効率・高演色を実現しているが、電極コイルの先端側が軸部の先端と面一構造であると、電極コイル上の放電輝点移動により、ランプのちらつきが発生する割合が大きくなる。この問題を解決するために、電極の軸部を電極コイルから所定距離突出させることが知られている(特許文献3参照。)。この高圧放電ランプは、発光管内に、所定量の水銀と、始動用希ガスと、ハロゲン化金属からなるヨウ化物ペレット13とが封入され、始動用希ガスとして、アルゴンを用いている。また、ヨウ化物ペレットは、ヨウ化ジスプロシウム、ヨウ化ツリウム、ヨウ化ホルミウム、ヨウ化タリウム、およびヨウ化ナトリウムの混合物を用いている(段落0018、0039)。
【0008】
【特許文献1】特開平11−238488号公報
【特許文献2】特開2008−177160号公報
【特許文献3】特開2000−340172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者が、キセノン10気圧程度の既知の水銀フリー高圧放電ランプと同じ透光性気密容器、電極およびイオン化媒体を用いて試験を行った結果、0.1〜5気圧程度まではランプ電圧および発光効率が低く実用上問題が生じやすい。特に1気圧未満で問題が顕著であるが、水銀フリー高圧放電ランプにおいては、キセノン封入圧が1〜5気圧であれば他のランプパラメータ設計により実用最低限レベルを維持できることが確認された。また、キセノン封入圧が最大5気圧までならば、適正な始動補助手段を用いることにより、5kVまでの始動用高電圧で始動可能である。さらに、透光性セラミックス気密容器を用いた水銀フリーの高圧放電ランプにおいて、従来の一般照明用セラミックメタルハライドランプでは不可能であった瞬時再点灯さえも可能になることが判明した。
【0010】
本発明者による検討、試作および試験の結果、イオン化媒体の金属ハロゲン化物がツリウム(Tm)およびホルミウム(Ho)の少なくとも一種のハロゲン化物を含み、始動ガスが25℃換算で1〜5気圧のキセノン主体であり、かつ水銀を含まない構成とすることで、発光効率が高くなるとともにランプ電圧が高くて一般照明用途において実用的な水銀フリーの高圧放電ランプを提供することが可能になった。
【0011】
ところが、この高圧放電ランプは、従来の水銀入りの高圧放電ランプおよび水銀フリーの高圧放電ランプに比較して、放電アークの安定性が著しく劣る場合が生じ得ることが分かった。そこで、電極の軸部を電極コイルから突出させてみたところ、上記一般照明用途において実用的な水銀フリーの高圧放電ランプにおいては、特許文献3に記載されている範囲内で放電アークの安定化について必ずしも十分な効果を得ることができないことが分かった。
【0012】
そこで、本発明者は、さらに検討を進めた結果、上記一般照明用途において実用的な水銀フリーの高圧放電ランプにおいては、電極の軸部を電極コイルから突出させるだけでなく、電極マウントサブコイルを配設するとともに、その外径を小径筒部の内径に対して所定比率にしたときに放電アークの安定性を得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0013】
本発明は、キセノンの封入圧が比較的低圧であっても一般照明用途において実用的な高いランプ電圧および発光効率を有するとともにアークの安定性に優れた水銀フリーの高圧放電ランプおよびこれを用いた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の高圧放電ランプは、放電空間を包囲する包囲部および包囲部に連通してその両端から延在する一対の小径筒部を備えた透光性セラミックス気密容器と;封着性部分および封着性部分の先端に接続した耐火性部分を備え、透光性セラミックス気密容器の小径筒部の内部に挿入された一対の電流導入導体と;電極軸部および大径部を備え、電極軸部はその基端が電流導入導体の耐火性部分の先端に接続し、かつ先端が透光性セラミックス気密容器の包囲部内に臨み、大径部は電極軸部の先端近傍に配設されていて、電極軸部の先端が大径部から突出して管軸方向に突出する長さAが0.3〜1.5mmとなる突出部を形成している一対の電極と;透光性セラミックス気密容器の小径筒部の内径に対する外径の比率Bが0.65≦B≦0.95を満足し電極軸部および電流導入導体の耐火性部分の外周面に巻装された電極マウントサブコイルと;希ガスおよび金属ハロゲン化物を含み、希ガスが25℃換算で1〜5気圧のキセノン主体であり、金属ハロゲン化物がツリウム(Tm)およびホルミウム(Ho)の少なくとも一種のハロゲン化物を含み、水銀を含まないで透光性セラミックス気密容器内に封入されたイオン化媒体と;電流導入導体の封着性部分と小径筒部との間を封着することによって透光性セラミックス気密容器を封止している封止部と;を具備することを特徴としている。
【0015】
〔透光性セラミックス気密容器について〕 透光性セラミックス気密容器は、透光性セラミックスを主体として気密容器が構成されていて、放電によって発生した所望波長域の可視光を外部に導出することが可能であることを意味している。透光性セラミックス気密容器は、最冷部温度を高く設定して、ランプ電圧を高くするとともに、発光効率を向上させることができる。なお、透光性セラミックスとしては、透光性アルミナ、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)、イットリウム酸化物(YOX)と、多結晶非酸化物、例えばアルミニウム窒化物(AlN)などの多結晶または単結晶のセラミックスなどを用いることができる。なお、必要に応じて、気密容器の内面に耐ハロゲン性または耐金属性の透明性被膜を形成するか、透光性気密容器の内面を改質することが許容される。
【0016】
また、透光性セラミックス気密容器は、その内部に放電空間を有している。そして、放電空間を包囲するために、包囲部を備えている。包囲部は、その内部が適当な形状、例えば球状、楕円球状、ほぼ円柱状などの形状をなしている。放電空間の容積は、高圧放電ランプの定格ランプ電力、電極間距離などに応じてさまざまな値が選択され得る。例えば、一般照明用ランプの場合、定格ランプ電力に応じて0.1cc以上および以下のいずれにすることもできる。また、透光性気密容器の最大内径は、ランプ電力100W級で4〜7mmとし、35W級で3〜5mmに設定すれば、最冷部の温度を高く維持して発光効率を高く維持するのに効果的である。
【0017】
また、包囲部に連通して包囲部の両端から管軸方向に延在する一対の小径筒部を備えている。一対の小径筒部は、透光性セラミックス気密容器を封止するとともに、電極軸部がここに挿通し、かつ電流導入導体を経由して点灯回路から供給される電流を電極へ気密に導入するのに寄与する手段である。
【0018】
透光性セラミックス気密容器の封止手段としては、例えばフリットガラスを透光性セラミックスと導入導体の間に流し込んで封止するフリット封着やフリットガラスに代えて金属を用いる金属封着および透光性セラミックス気密容器の封止予定の開口部を溶融させて電流導入導体に直接または間接的に封着する手段などの各種封止手段を所望により適宜選択的に採用することができる。また、封止部を所要の比較的低い温度に保持しながら放電空間の最冷部温度を所望の比較的高い温度に維持するために、包囲部に連通する小径筒部の長さを所要の比較的大きな値に設定することもできる。
【0019】
また、本発明においては、詳細を後述するが、透光性セラミックス気密容器の封止部を小径筒部の端部部分に配設し、小径筒部内に電極軸部を延在させるとともに、さらに電極軸部の外周面に電極マウントサブコイルを配設する。そして、電極マウントサブコイルと小径筒部の内面との間にキャピラリーと称される僅かな隙間を小径筒部の軸方向に沿って形成する。
【0020】
〔電流導入導体について〕 電流導入導体は、後述する電極に電圧を印加して、電極に電流を供給し、かつ小径筒部を協働して透光性セラミックス気密容器を封止するために機能する導体である。そのために、透光性セラミックス気密容器の小径筒部の内部に挿入されている先端側の部分が電極に接続し、基端側が透光性セラミックス気密容器の外部に露出している。なお、上記において、透光性セラミックス気密容器の外部に露出しているとは、透光性セラミックス気密容器から外部へ突出していてもよいし、また突出していなくてもよいが、外部から給電できる程度に外部に臨んでいればよい。
【0021】
また、電流導入導体は、封着性部分および耐火性部分の直列接続体からなる。封着性部分は、小径筒部のセラミックスと直接または間接的に封着して透光性セラミックス気密容器を封止する部分であり、したがって封着性が良好な導電性物質からなる。これに対して、耐火性部分は、電極を支持するとともに、電極と封着性部分との間に介在して、それらの間の熱膨張差を緩和する。
【0022】
また、封着性部分は、これを封着性金属またはサーメットを用いて構成することができる。封着性金属としては、その熱膨張係数が透光性セラミックス気密容器の小径筒部を構成している透光性セラミックスのそれと近似している導電性金属であるニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)などの金属を採用することができる。サーメットとしては、上記金属およびセラミックスの混合焼結体からなるものを採用することができる。
【0023】
また、透光性セラミックス気密容器の材料に透光性多結晶アルミナセラミックスなどのアルミニウム酸化物を用いる場合、ニオブおよびタンタルは、平均熱膨張係数がアルミニウム酸化物とほぼ同一であり、またモリブデンはその平均熱膨張係数が上記酸化物のそれと接近しているから、封止に好適である。イットリウム酸化物およびYAGの場合も平均熱膨張係数の差が少ない。窒化アルミニウムを透光性セラミックス気密容器に用いる場合には、電流導入導体にジルコニウムを用いるとよい。
【0024】
さらに、封着性部分を複数の材料部分を接合して形成することもできる。例えば、一部を上記のグループから選択した金属の部分とし、この金属部分にサーメットを管軸方向に接合したり、管軸と直交する周方向に接合した構成とすることができる。そして、電流導入導体の封着性部分の少なくとも一部にサーメットを用いる場合、当該サーメットの部位または当該サーメットおよび封着性金属の両方に跨った部位で透光性セラミックス気密容器の小径筒部と電流導入導体との間の封着を行って透光性セラミックス気密容器の封止部を形成することができる。
【0025】
前記サーメットとしては、例えばその材料成分のセラミックスがアルミナセラミックスで、金属が上記グループから選択された一種または複数種の金属、例えばモリブデン(Mo)、タングステン(W)またはニオブ(Nb)などの導電性金属からなるものを用いることができる。また、電流導入導体の透光性セラミックス気密容器に封着される部分のサーメットは、少なくともニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)およびタングステンなどの導電性金属成分と、アルミナ、YAGおよびイットリアなどのセラミックス成分とを含み、金属成分の含有比率が5〜60質量%であることを許容する。
【0026】
〔一対の電極について〕 一対の電極は、透光性セラミックス気密容器内に封装されて放電空間に離間して臨むように配設される有電極形放電を生起させる形式の高圧放電ランプを構成する。本発明において、電極は、電極軸部および大径部を備えている。電極軸部は、細長くて小径筒部の内部に挿通され、基端が後述する電流導入導体の先端に接続し、先端が包囲部内に望む。大径部は、電極軸部の先端側において、電極軸部の先端部が以下に示す所定長さの突出部を構成する位置に配設される。
【0027】
すなわち、電極軸部の先端は、大径部から所定寸法だけ放電空間側へ突出して突出部を形成する。上記所定寸法は、突出部の先端から大径部までの長さA(mm)が管軸方向に0.3〜1.5mmの位置である。これに対して、突出部の長さAが0.3mm未満であると、放電アークの以下に定義する不安定度が2を超えやすくなる。ここで、放電アークの不安定度は、0〜6の段階からなり、高圧放電ランプが定格ランプ電力の点灯で放電アークが不安定となれば不安定度6、同じく1.1倍で不安定となれば不安定度5、以下1.2倍で4、1.3倍で3、1.4倍で2、1.5倍で2、1.5倍でも安定していれば0と定義している。
【0028】
放電アークの上記不安定度が3以下であれば、実用上問題ないと判断される。水銀フリーでツリウムおよびホルミウムの少なくとも一種のハロゲン化物を含む本発明の構成においては、後述する電極マウントサブコイルとの間の上記所定条件を満足することを前提として、電極軸部の突出部の長さが0.3mm以上であれば放電アークが安定して実用的な高圧放電ランプが得られる。しかし、上記突出部の長さが1.5mmを超えると、包囲部の内部に所望の電極間距離を確保して、かつ発光効率および光束維持率が高くて長寿命の高圧放電ランプの設計が困難になるので、本発明においては、上記突出部の長さは0.3〜1.5mmの範囲でなければならない。なお、好適には0.6〜1.0mmである。
【0029】
大径部の直径は、放電アークのちらつきに影響を与えやすくなるので、小径筒部の内径に対する比率Cが0.70≦C≦0.95を満足する値であるのがよい。大径部の直径の比率Cが0.7未満になると、放電アークのちらつきが発生しやすくなる。また、0.95倍を超えると、電極を外部から小径筒部内に挿入するのが困難になる。なお、好適には0.85≦C≦0.95を満足する範囲である。
【0030】
また、大径部は、全体が耐熱性金属の内部が充実した塊状であってもよいし、耐熱性金属線を電極軸部の周囲に巻回して形成した電極コイルであってもよい。大径部が塊状の場合、電極軸部と一体成形したり、電極軸部と別に形成した大径部を溶接などにより電極軸部に固着したりしてもよい。
【0031】
一対の電極の先端間に形成される電極間距離は、一般照明用ランプの場合、実用可能なランプ電圧を得る目的で以下のように比較的大きく設定するのが好ましい。なぜなら、ランプ電圧形成用の金属ハロゲン化物としてイオン化エネルギーが8eV以上で、かつ融点が500℃以下の金属ハロゲン化物、例えばZnIなどを封入するものの高圧放電ランプが水銀フリーであるため、水銀入りの場合ほどランプ電圧が高くならないからである。
【0032】
すなわち、例えばランプ電力100W級では電極間距離16〜38mm、35W級で同じく9〜22mmである。また、ZnIなどのランプ電圧形成用の上記金属ハロゲン化物を気密容器の内容積に対して0.3〜1.6mg/cc封入し、かつランプ電力100W級で同じく14〜32mm、35W級で同じく7〜18mmに設定すれば、さらに高い所望のランプ電圧を得ることができる。これらの電極間距離に加えて、透光性セラミックス気密容器の最大内径を、ランプ電力100W級で4〜7mmとし、35W級で3〜5mmに設定すれば、発光管の最冷部の温度を高く維持して発光効率を高く維持することができる。
【0033】
また、電極の構成材としては、耐熱性で、かつ導電性の金属を用いるのがよい。例えば、純タングステン(W)、ドープ剤(例えばスカンジウム(Sc)、アルミニウム(Al)、カリウム(K)およびケイ素(Si)などのグループから選択された一種または複数種)を含有するドープドタングステン、酸化トリウムを含有するトリエーテッドタングステン、レニウム(Re)またはタングステン−レニウム(W−Re)合金などである。
【0034】
〔電極マウントサブコイルについて〕 電極マウントサブコイルは、電極軸部および電流導入導体の耐火性部分にわたりそれらの外周面に巻装された耐熱性金属の細線からなるコイルである。なお、電極および電流導入導体は、透光性セラミックス気密容器の内部に組み込まれる前に予め直列に接続され、さらに電極マウントサブコイルが上記位置に巻装されて電極マウントを構成する。また、電極マウントサブコイルを形成する耐熱性金属としては、タングステン、モリブデンなどを用いることができる。
【0035】
本発明において、電極マウントサブコイルは、その外径の、透光性セラミックス気密容器の小径筒部の内径に対する比率Bが0.65≦B≦0.95を満足するように設定されている。そして、上記の範囲内で、電極の突出部の長さA(mm)が前述の条件を満足することにより、ツリウムおよびホルミウムの少なくとも一種のハロゲン化物を含み、水銀を含まない水銀フリーの高圧放電ランプにおいて発生しやすい放電アークのちらつきを抑制できることが分かった。
【0036】
0.65≦B≦0.95において、電極マウントサブコイルの外径の、小径筒部の内径に対する比率Bが0.65未満になると、小径筒部と電極マウントとの間に形成されるキャピラリーが大きくなりすぎてイオン化媒体の封入量が多くする必要がある。そして、これに伴ってイオン化媒体に紛れ込んで透光性セラミックス気密容器の内部に入る不純物の量が増加して始動電圧が上昇したり放電アークのちらつきが発生したりするなどの不都合を生じるので、不可である。これに対して、電極マウントサブコイルの外径の上記比率Bが0.95を超えると、電極マウントを小径筒部内に挿入が困難になるので、不可である。なお、好適には0.75≦B≦0.90の範囲である。
【0037】
放電アークのちらつきは、電極の突出部の長さA(mm)と、電極マウントサブコイルの外径の小径筒部の内径に対する比率Bとの相関によって影響を受けることを示している。すなわち、突出部の長さA(mm)が大きくなるほど放電アークのちらつきが少なくなるが、電極マウントサブコイルの外径の小径筒部の内径に対する比率Bが小さくなるほど放電アークのちらつきが多くなるので、突出部の長さA(mm)と電極マウントサブコイルの外径の小径筒部の内径に対する比率Bとを上記範囲を満足するようにバランスさせる必要がある。
【0038】
また、電極マウントサブコイルは、これを配設することにより、電極マウントの熱容量が大きくなるので、電極マウントの温度を低下させて金属ハロゲン化物と電極マウントとの反応を抑制して高圧放電ランプを長寿命にすることができる。
【0039】
〔封止部について〕 封止部は、電流導入導体の封着性部分と小径筒部との間を封着することによって透光性セラミックス気密容器を封止しているのであるが、本発明においては、フリットガラスを用いて上記封着を行ってもよいし、電流導入導体の封着性部分と小径筒部とが直接的に融着して行ってもよい。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、発光効率およびランプ電圧が高くて、しかも放電アークのちらつきが抑制される一般照明用途として実用的な水銀フリーの高圧放電ランプおよびこれを備えた照明装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0042】
図1ないし図3は、本発明の高圧放電ランプを実施するための一形態を示し、図1は高圧放電ランプ全体の正面図、図2は発光管の拡大断面図、図3は電極マウントの拡大正面図である。
【0043】
本形態の高圧放電ランプは、定格ランプ電力100W形であり、透光性セラミックス気密容器1、一対の電極2、2、一対の電流導入導体3、3、一対の封止部4、4、電極マウントサブコイルSCおよびイオン化媒体を具備し、これらの構成部材が発光管ITを構成する。また、発光管ITに加えて外管OT、始動補助手段としての近接導体TWおよび紫外線放射放電管UVEを具備している。なお、図中、SGは保護ガラス管、SFは発光管支持部材、Gはゲッタ、Bは口金である。
【0044】
透光性セラミックス気密容器1は、透光性セラミックス、例えば透光性多結晶アルミナセラミックスからなる。そして、包囲部1aおよび一対の小径筒状部1b、1bを備えていて、一体成形された構造をなしている。包囲部1aは、俵形をなし、中間の円筒部とその両端に連続する一対の半球部からなる。そして、包囲部1aは、その内部に形成される放電空間1cを包囲する。小径筒状部1bは、細長いパイプ状をなしていて、先端が包囲部1aの半球部の中央部に連通していとともに、管軸に沿って外方へ延在している。
【0045】
電極2は、図2および図3に示すように、電極軸部2aおよび大径部2bを備えている。そして、ドープドタングステンの棒状体からなる。電極軸部2aは、細長くて小径筒部1bの内部に挿入されていて、先端が透光性セラミックス気密容器1の包囲部1aの内部に臨み、基端が電流導入導体3の先端に突合せ溶接されている。径大部2bは、電極軸部2aの先端側において電極軸部2aの先端からやや後退した位置に配設されている。このため、径大部2bの先端から所定長さA(mm)の突出部2a1を形成されている。なお、本形態において、径大部2bは、ドープドタングステン線を電極軸部2aに巻装してなる電極コイルによって形成されている。所定長さA(mm)は0.3≦A≦1.5を満足する範囲内に設定されている。
【0046】
高圧放電ランプが定格ランプ電力50W以下の場合、大径部2bの直径をd3とし、小径筒部1bの内径をd1としたとき、d3/d1が比率Cであり、Cが0.7≦C≦0.95を満足する範囲内に設定されている。
【0047】
電流導入導体3は、図2および図3に示すように、互いに直列に接続した封着性部分3aおよび耐ハロゲン性部分3bを備えていて、透光性セラミックス気密容器1の小径筒部1bの内部に挿入されている。封着性部分3aは、二オブの棒状体からなり、小径筒部1bと封着して透光性セラミックス気密容器1の封止部4を形成しているとともに、基端が透光性セラミックス気密容器1の外部に露出している。耐ハロゲン性部分3bは、モリブデンの棒状体からなり、その基端が封着性部分3aの先端に突合せ溶接されている。また、その先端部に電極軸部2aの基端が溶接されている。
【0048】
電極マウントサブコイルSCは、図2および図3に示すように、ドープドタングステンの細線を小径筒部1b内において電極軸部2aおよび電流導入導体の耐火性部分2bの外周面に巻装されている。したがって、電極マウントサブコイルSCの外周面と小径筒部1bの内面との間にわずかな隙間が形成される。小径筒部の内径をd1とし、電極マウントサブコイルSCの外径をd2としたとき、比d2/d1が、極マウントサブコイルSCの小径筒部1bの内径に対する電極マウントサブコイルSCの外径の比率Bである。本発明において、Bの値は既述のとおり0.65≦B≦0.95を満足する範囲内に設定されている。
【0049】
本形態において、封止部4は、フリットガラスすなわちセラミックスコンパウンドの溶融固化体からなり、溶融状態のときに小径筒状部1b内に進入して、小径筒状部1b内に位置する電流導入導体3の封着性部分3aと小径筒状部1b内面との間の隙間に気密に充填されるとともに、封着性部分3aの表面が透光性セラミックス気密容器1内に露出しないように包囲している。
【0050】
イオン化媒体は、透光性セラミックス気密容器1内に封入され、金属ハロゲン化物および希ガスを含んでいるが、水銀は含まない。本発明において、金属ハロゲン化物はツリウム(Tm)およびホルミウム(Ho)の少なくとも一種を含み、希ガスはキセノン主体で、かつその封入圧が25℃換算で1〜5気圧である。また、好ましくはイオン化エネルギーが8eV以上で、かつ融点が500℃以下の金属ハロゲン化物がランプ電圧形成用として封入される。
【0051】
ツリウム(Tm)は、放電時に視感度特性曲線のピーク波長付近に多数の輝線スペクトルを放射し、その発光のピークが視感度曲線のピークに一致するので、発光効率を向上させるのに極めて効果的な発光金属である。しかし、これらの金属ハロゲン化物は、主として発光に寄与する金属のハロゲン化物でありながら水銀フリーにおいてランプ電圧を高める作用もある。このため、主としてランプ電圧形成用の金属ハロゲン化物の封入量を削減できる。そして、その結果、ランプ電圧形成用の金属ハロゲン化物の相対的に過剰な量の封入に伴って発生する弊害(色偏差の増大)を回避することができる。ホルミウムもツリウムの上述した性質に類似した性質を有している。
【0052】
なお、一般的に主として発光に寄与する金属とは、高圧放電ランプとしての発光に対して寄与することが明らかな金属であり、ランプ電圧形成作用の有無については問わない。したがって、発光に寄与する金属は、後述する主としてランプ電圧形成用の金属ハロゲン化物を除いた発光金属でもある。しかしながら、ツリウムおよびホルミウムは、前述のように可視域における発光が多いために、発光に寄与する金属に該当するが、これに加えてランプ電圧形成作用もある。
【0053】
また、ツリウム(Tm)およびホルミウム(Ho)の少なくとも一種のハロゲン化物を主として発光に寄与する金属のハロゲン化物の主成分として含み、かつキセノン主体の希ガスが25℃換算で1〜3気圧封入されている本発明の好ましい態様においては、光束立上がり時の色度偏差duv.の変化幅が極めて小さくなるので良好である。また、この態様においては、キセノン主体の封入圧が上記より高い場合よりは青色域発光量が大幅に少なくなるために、発光効率が高くなるとともに、上記より低い場合よりは青色域発光が低減しすぎないので、色度偏差が実用レベルを越えて悪化することがない。
【0054】
さらに、ツリウム(Tm)およびホルミウム(Ho)のハロゲン化物を主として発光に寄与する金属ハロゲン化物として封入するに際して、それらの合計が後述する主としてランプ電圧形成用の金属ハロゲン化物を除いた、したがって主として発光に寄与する金属のハロゲン化物の全体に対して35質量%以上であるのが好ましい。この範囲であれば、ツリウム(Tm)およびホルミウム(Ho)がランプ電圧を十分に実用範囲まで高める作用を発揮するとともに高い発光効率が得られる。このため、例えばZnIなどランプ電圧形成用の金属ハロゲン化物の封入量を例えば従来の1/5のように少なくしても、少なくする前の封入量におけるのと同等のランプ電圧を得ることができる。ランプ電圧形成用の金属ハロゲン化物の封入量が多くなるにしたがって色偏差が増大するので、ランプ電圧形成用金属ハロゲン化物の封入量が少なくなることにより、色偏差が著しく改善される。
【0055】
さらにまた、ツリウム(Tm)およびホルミウム(Ho)のハロゲン化物の合計が主として発光に寄与する金属のハロゲン化物の全体に対して50質量%以上であれば、より高いランプ電圧とより高い発光効率を得ることができるので、より一層好適である。しかしながら、上記封入比率が80質量%を超えると、ツリウム(Tm)およびホルミウム(Ho)以外の金属ハロゲン化物を封入し得る比率が相応して低下してしまう。その結果、所望の白色発光が得られなくなるので、白色発光を得る目的に対しては好ましくない。また、ツリウム(Tm)およびホルミウム(Ho)のハロゲン化物の封入比率が50〜70質量%の範囲のときには、特に高い発光効率が得られる。
【0056】
所望によりタリウム(Tl)をイオン化媒体に添加することが許容される。タリウム(Tl)のハロゲン化物または金属タリウムを封入すると、タリウム(Tl)の緑色発光がツリウム(Tm)およびホルミウム(Ho)の少なくとも一種の発光に加算されるので、高圧放電ランプの発光効率が高くなる。
【0057】
上述以外のその他の金属のハロゲン化物を、白色発光を得る以外に、例えば発光の色度を調整する、または発光効率を高くするなどの目的で適宜選択的に添加することができる。以下、その他の金属のハロゲン化物を添加する場合の主な例について説明する。
【0058】
ナトリウム(Na)などのアルカリ金属を主として発光する金属のハロゲン化物を封入する場合には、その封入量を主として発光する金属のハロゲン化物の全体に対して30質量%以下に抑制することにより、ランプ電圧を高めに維持することができる。また、25質量%以下にすることにより、本発明においては、アルカリ金属の発光が弱くなり、反対に上記希土類金属の発光比率が増大するので、平均演色評価数Raが高くなる。
【0059】
希土類金属のハロゲン化物は、ツリウム(Tm)およびホルミウム(Ho)の少なくとも一種の他にプラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)およびサマリウム(Sm)の一種または複数種のハロゲン化物を副成分として封入することができる。上記希土類金属は、ツリウムハロゲン化物およびホルミウムハロゲン化物に次いで発光金属として有用であり、副成分としての封入比率で封入することが許容される。なお、上記希土類金属は、そのいずれも視感度特性曲線のピーク波長付近で無数の輝線スペクトルを有するため、発光効率向上に寄与することができる。
【0060】
インジウム(In)のハロゲン化物は、これを所望の演色性および/または色温度などを得るなどの目的で副成分として選択的に封入することが許容される。
【0061】
以上の各ハロゲン化物を形成するハロゲンとしては、適度の反応性を有していることからヨウ素が好適であるが、所望により臭素および塩素のいずれかでもよく、またヨウ素、臭素および塩素のうち所望の二種以上を用いてもよい。
【0062】
次に、ランプ電圧形成用の金属ハロゲン化物について説明する。ランプ電圧形成用の金属ハロゲン化物を所望により透光性セラミックス気密容器1の内部に封入することができる。ランプ電圧形成用の金属ハロゲン化物としては、イオン化エネルギーが8eV以上で、かつ融点が500℃以下の金属ハロゲン化物がこれに含まれることが多い。
【0063】
本発明において、ツリウムハロゲン化物およびホルミウムハロゲン化物の少なくとも1種を所定比率封入し、かつキセノン主体を3〜5気圧封入する態様であれば、所望のランプ電圧が形成されるので、ランプ電圧形成用のハロゲン化物を封入しなくてもよい。しかし、本発明においては、封入するツリウムハロゲン化物およびホルミウムハロゲン化物の少なくとも1種の封入量が特段限定されないとともに、キセノン主体が25℃換算で1〜5気圧の範囲内で封入されるが、一対の電極間に7V/mm以上の電位傾度を形成するために必要であれば、ランプ電圧形成用の金属ハロゲン化物を所要量封入することが許容される。この場合、透光性セラミックス気密容器1の内容積に対して0.3〜1.6mg/ccの範囲内で封入することが好ましい。
【0064】
また、ランプ電圧形成用の金属ハロゲン化物は、本発明において透光性セラミックス気密容器1内に封入する前述のハロゲン化物に比較して蒸気圧が高くて、高圧放電ランプにおけるランプ電圧を主として決定する作用がある。なお、「蒸気圧が大きい」とは、点灯中の蒸気圧が高いことを意味するが、水銀のように大きすぎる必要はなく、好ましくは点灯中の透光性セラミックス気密容器1内の圧力は5気圧程度以下である。したがって、上記の条件を備えていれば特定の金属のハロゲン化物に限定されない。
【0065】
また、ランプ電圧形成用のハロゲン化物は、主としてランプ電圧を形成する金属ハロゲン化物により構成され、例えばマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、ベリリウム(Be)、レニウム(Re)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)からなるグループから選択された一種または複数種の金属のハロゲン化物を主体として用いることができる。そして、その殆どが水銀より蒸気圧が低く、またランプ電圧の調整範囲が水銀より狭い。
【0066】
次に、希ガスについて説明する。希ガスとして25℃換算で1〜5気圧のキセノン(Xe)主体を封入する理由は、始動電圧を低下させて水銀入りの一般照明用の高圧放電ランプ、照明器具および配線と互換性を得るために必要な前提であるからである。しかし、好ましくは1〜3気圧である。
【0067】
なお、キセノン主体とは、キセノンの体積が80%以上であればよいことを意味する。キセノンに混合し得る希ガスとしてはアルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびネオン(Ne)などである。
【0068】
水銀について説明する。本発明は、水銀フリーの高圧放電ランプであり、したがって水銀は封入しない。
【0069】
外管OBは、その内部に発光管IT、始動補助手段としての近接導体TWおよび紫外線放射放電管UVE、保護ガラス管SG、発光管支持部材SFおよびゲッタGなどの部材を所定の位置に収納し、内部が真空になっている。また、外管OTは、図において下部に位置するネック部にフレアステム5を封着して備えている。フレアステム5は、一対の内部導入線6a、6bを外管OT内へ気密に突出させて備えている。
【0070】
また、外管OTは、発光管ITを、その内部の中心軸に沿って外管OTのほぼ中央部に配置しれていて、上部の電流導入導体3が後述する接続片10に溶接されて支持されるとともに、発光管支持部材SFを介して内部導入線6aに接続している。また、発光管ITの下部の電流導入導体3が、接続導体7に溶接されて支持されているとともに、接続導体7を介して内部導入線6bに接続している。
【0071】
本発明において、イオン化媒体のキセノンの封入圧が許容範囲内で相対的に低い場合は、比較的始動電圧が低下するので、近接導体のみを配設するのであっても5kV以下の始動用高電圧の印加で始動させることができる。これに対して、希ガスの封入圧が許容範囲内で相対的に高い場合は、比較的始動電圧が高くなるので、近接導体および紫外線放射手段の両方を併用すれば、5kV以下の始動用高電圧の印加で始動させることができる。なお、所望により近接導体および紫外線放射手段に加えて、それ以外の始動補助手段を併用することも許容される。
【0072】
始動補助手段は、外管OT内に配設され、透光性セラミックス気密容器1の内部に配設された一対の電極2、2間に始動用高電圧を印加したときに発光管IT内にイオン化媒体の放電が開始するように始動を補助する手段である。始動補助手段としては、本形態においては、近接導体TWおよび紫外線放射手段UVEを具備しているが、本発明においては、上記二手段の少なくとも一方のみを採用することを許容する。また、所望により始動器など既知の他の始動補助手段を併用することができる。
【0073】
近接導体TWは、その一端が発光管ITの図1において上方の電流導入導体3に溶接されている。そして、中間部が上方の小径筒部1bと包囲部1aとの境界部近傍において透光性セラミックス気密容器1に巻き付けられてリング部r1を形成し、さらに包囲部1aの外周に近接して管軸方向に沿って下方へ延在している。また、先端が下方の小径筒部1bと包囲部1aとの境界部近傍において透光性セラミックス気密容器1に巻き付けられてリング部r2を形成している。
【0074】
そうして、近接導体TWは、その先端と対向する他方の電極2との間の短い距離に大きな電位傾度を形成するように配設される。近接導体TWを配設していることにより、高圧放電ランプは、始動用高電圧印加時に絶縁破壊されやすくなってその始動が促進される。なお、高圧放電ランプが始動して発光管内にグロー放電が発生し、さらにアーク放電に転移すると、近接導体TWは、発光管ITによって短絡されるので、高圧放電ランプの点灯に支障を来たすことはない。
【0075】
紫外線放射放電管UVは、UVエンハンサであり、小形で紫外線透過性の気密容器内に一方の導体l1の先端が封装されて内部電極を形成している。一方の導体l1は、発光管ITの図1において下方の電流導入導体3に溶接されている。そして、紫外線透過性の気密容器を抱持する他方の導体l2が後述する発光管支持部材SFの支持枠8に溶接されて外部電極を形成している。したがって、紫外線放射放電管UVは、発光管ITに並列接続している。紫外線透過性の気密容器内には紫外線放射性の希ガスなどが封入されている。
【0076】
そうして、高圧放電ランプの始動に先立って始動用高電圧が一対の電極2、2間に印加されると、最初に放電開始し、発生した紫外線を発光管ITの下方の電極近傍に照射する。これにより発光管IT内のイオン化媒体が励起されて始動しやすくなる。
【0077】
そうして、紫外線放射手段UVEは、高圧放電ランプの始動時に作動して紫外線を発生し、それを発光管ITの一方の電極近傍に照射する。その結果、電極などから電子が放出され、初期電子となって高圧放電ランプの始動が促進される。なお、高圧放電ランプが始動すると、紫外線放射手段は、発光管IT内に発生した放電アークにより短絡されるので、点灯に支障を来たすことはない。
【0078】
なお、始動器は、グロースタータ、バイメタルスイッチまたは非線形コンデンサなどのスイッチング手段を備えて構成されていて、外管内に配設されて、電源投入時に急速なスイッチング動作を行い、その際に安定器に発生した始動用高電圧を発光管ITの電極2、2間に印加して、高圧放電ランプの始動を容易にする。
【0079】
本発明の高圧放電ランプに始動補助手段を具備した場合、5kV以下の始動用高電圧であっても、これを印加して高圧放電ランプを始動させることができる。もちろん、5kVを超える始動用高電圧を印加して本発明の高圧放電ランプを点灯させることができる。始動用高電圧印加手段としては、例えばイグナイタと称される高電圧パルス発生器を高圧放電ランプと組み合わせて、ここから発生する高電圧パルスを印加する態様および安定器を用いて高圧放電ランプを点灯する際に、ここから発生するいわゆるキック電圧を高圧放電ランプの外部から発光管に印加する態様のいずれでもよい。
【0080】
保護ガラス管SGは、石英ガラス製の円筒体からなり、発光管ITの周囲を離間状態にして包囲することで、発光管ITの破裂時に破片の飛散を抑制する。そして、後述のように発光管支持部材SFに支持されている。
【0081】
発光管支持部材SFは、支持枠8、一対の支持プレート9、9および接続片10からなる。支持枠8は、ステンレス鋼棒を縦長の変形コ字形に屈曲してなり、内部導入線6aに接続している。一対の支持プレート9、9は、ステンレス鋼板をほぼ円盤状に形成してなり、支持枠8に固定されている。また、一対の支持プレート9、9の中央部には通孔が形成されており、透光性セラミックス気密容器1の一対の小径筒部1b、1bを上記通孔に挿通させることにより、発光管ITを外管OTの管軸位置に定置しているとともに、発光管ITをその管軸方向に支持している。接続片10は、支持枠8の上部に溶接されていて、発光管ITの図において上方の電流導入導体3に接続している。1対の支持プレート9、9は、保護ガラス管SGの上下端面に嵌合してそれらの間に保護ガラス管SGを挟持するとともに、発光管支持部材SFに固定されている。したがって、保護ガラス管SGは、1対の支持プレート9、9を介して発光管支持部材SFに支持されている。
【0082】
ゲッタGは、発光管支持部材SFの図において上部に支持されているパフォーマンスゲッタである。
【0083】
口金Bは、ねじ形口金であり、図1において外管OTの下部に装着され、一対の内部導入線6a、6bに接続している。
次に、実施例を説明する。
【実施例1】
【0084】
実施例1は、図1に示すメタルハライドランプである。
【0085】
透光性セラミックス気密容器 :多結晶アルミナセラミックス一体成形、内容積0.6cc、
小径筒部内径1.0mm
一対の電極 :電極間距離6.0mm、突出部の長さA=1.0mm、
電極マウントサブコイル:外径(対小径筒部内径比)B=0.95
イオン化媒体 :TmI3-NaI=6.0mg(TmI3の含有比率75%)、ZnI=1.2mg、Xe4気圧
始動用高電圧 :4.0kV
口金 :市販一般照明HID用口金
電気特性 :ランプ電圧64V、ランプ電力100W、安定器は専用安定器使用
発光特性 :発光効率90 lm/W、放電アークの不安定度は0であった。

【0086】
次に、実施例1と基本仕様が同じ透光性セラミックス気密容器1および電極間距離であって、TmI33.0〜9.0mg、NaI1.0〜3.0mg、ZnI0.2〜2.2mg、Xe1〜5気圧、電極軸部の突出部の長さAを0〜1.5mmおよび電極マウントサブコイルの外径比B(対小径筒部内径比)を0.64〜0.96の範囲で種々振って製作したメタルハライドランプの放電アークの不安定度を調査した結果を図4に示す。
【0087】
図4は、高圧放電ランプにおける放電アークの不安定度に対する電極軸部の突出長と電極マウントサブコイルの外径の対小径筒部内径比との関係を示すグラフである。なお、図中のグラフは、放電アークの不安定度がパラメータなっていて、斜めの線は不安定度の境界線であり、境界線上の数値が該当する不安定度を示し、当該境界線から右側に隣接する不安定度を示す境界線までの領域が同一の不安定度である。
【0088】
図4から理解できるように、電極の突出部の長さA(mm)が0.3≦A≦1.5を満足し、電極マウントサブコイル外径の対小径筒部の内径比Bが0.65≦B≦0.95を満足することにより、放電アークの不安定度が2以下になり、放電アークのちらつきが顕著に低減して実用的な高圧放電ランプを得ることができる。
【実施例2】
【0089】
透光性セラミックス気密容器 :多結晶アルミナセラミックス一体成形、内容積0.07cc、
小径筒部内径0.7mm
一対の電極 :電極間距離4.0mm、突出部の長さA=0.5mm、
大径部直径(対小径筒部内径比)C=0.86
電極マウントサブコイル:外径(対小径筒部内径比)B=0.86
イオン化媒体 :TmI3-NaI=6.0mg(TmI3の含有比率75%)、ZnI=1.2mg、Xe4気圧
始動用高電圧 :4.0kV
口金 :市販一般照明HID用口金
電気特性 :ランプ電圧64V、ランプ電力100W、安定器は専用安定器使用
発光特性 :発光効率90 lm/W、放電アークの不安定度は0であった。
電気特性 :ランプ電圧45V、ランプ電力30W、安定器は専用安定器使用
発光特性 :発光効率88 lm/W

【0090】
次に、実施例2と基本仕様が同じ透光性セラミックス気密容器1および電極間距離であって、TmI33〜9mg、NaI1〜3mg、ZnI0.2〜2.2mg、Xe1〜5気圧、電極軸部の突出部長0〜1.5mmおよび電極マウントサブコイルの外径(対小径筒部内径比)0.64〜0.96の仕様を種々振って製作したメタルハライドランプの放電アークの不安定度を調査した結果は図2に示すのとほぼ同様であった。また、電極の突出部の長さA(mm)が0.3≦A≦1.5を満足し、電極マウントサブコイル外径の対小径筒部の内径比Bが0.65≦B≦0.95を満足する範囲内で電極2の大径部2bの外径(対小径筒部内径比)0.64〜0.96の仕様を種々振った場合、比率Cが0.7≦C≦0.95を満足する範囲内であれば、放電アークの不安定度は2以下であった。しかし、比率Cが上記数式を満足しない場合には、放電アークの不安定度は3以上であった。
【0091】
図5は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第2の形態における電極を示す要部一部断面正面図である。なお、図3と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0092】
本形態において、電極2は、電極軸部2aの突出部2a1が円錐体状をなしている。円錐体の頂角θは、30〜120°の範囲内で所望に応じて適宜設定するが好ましい。なお、頂角θが30°未満になると、先端部が温度過剰になって蒸発しやすくなり、その結果先端の形状変化が起きやすい。また、先端部が120°を超えると、先端が平坦な場合との差がなくなる。
【0093】
そうして、本形態によれば、アーク放電が一層安定化することができる。
【0094】
図6は、本発明の照明装置を実施するための一形態としての天井埋込形ダウンライトを示す断面図である。
【0095】
図において、11は高圧放電ランプ、12は照明器具本体である。
【0096】
高圧放電ランプ11は、図1に示す本発明の高圧放電ランプを実施するための一形態におけるのと同じである。
【0097】
照明器具本体12は、天井埋込形ダウンライトを構成するもので、基体12a、反射板12bを具備している。基体12aは、天井に埋め込まれるために、下端に天井当接縁12a1を備えている。反射板12bは、基体12aに支持されているとともに、高圧放電ランプ11の発光中心がそのほぼ焦点に位置するように包囲している。
【0098】
高圧放電ランプ11を点灯させるための高圧放電ランプ点灯装置(図示を省略している。)は、これを照明器具本体12に配設したり、照明器具本体12に隣接する位置または遠隔した位置に別置きとしたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の高圧放電ランプを実施するための第1の形態を示す正面図
【図2】同じく発光管の拡大断面
【図3】同じく電極マウントの拡大正面図
【図4】高圧放電ランプにおける放電アークの不安定度に対する電極軸部の突出長と電極マウントサブコイルの外径の対小径筒部内径比との関係を示すグラフ
【図5】本発明の高圧放電ランプを実施するための第2の形態における電極を示す要部一部断面正面図
【図6】本発明の照明装置を実施するための一形態としての天井埋込ダウンライトを示す断面図
【符号の説明】
【0100】
1…透光性セラミックス気密容器、1a…包囲部、1b…小径筒部、1c…放電空間、2…電極、3…電流導入導体、3a…封着性部分、3b…耐ハロゲン性部分、4…封止部、5…ステム、B…口金、IT…発光管、OT…外管、SC…電極マウントサブコイル、SF…支持枠、SG…保護ガラス、TW…近接導体、UVE…紫外線放射放電管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間を包囲する包囲部および包囲部に連通してその両端から延在する一対の小径筒部を備えた透光性セラミックス気密容器と;
封着性部分および封着性部分の先端に接続した耐火性部分を備え、透光性セラミックス気密容器の小径筒部の内部に挿入された一対の電流導入導体と;
電極軸部および大径部を備え、電極軸部はその基端が電流導入導体の耐火性部分の先端に接続し、かつ先端が透光性セラミックス気密容器の包囲部内に臨み、大径部は電極軸部の先端近傍に配設されていて、電極軸部の先端が大径部から突出して管軸方向に突出する長さAが0.3〜1.5mmとなる突出部を形成している一対の電極と;
透光性セラミックス気密容器の小径筒部の内径に対する外径の比率Bが0.65≦B≦0.95を満足し電極軸部および電流導入導体の耐火性部分の外周面に巻装された電極マウントサブコイルと;
希ガスおよび金属ハロゲン化物を含み、希ガスが25℃換算で1〜5気圧のキセノン主体であり、金属ハロゲン化物がツリウム(Tm)およびホルミウム(Ho)の少なくとも一種のハロゲン化物を含み、水銀を含まないで透光性セラミックス気密容器内に封入されたイオン化媒体と;
電流導入導体の封着性部分と小径筒部との間を封着することによって透光性セラミックス気密容器を封止している封止部と;
を具備することを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
電極は、その大径部の外径の小径筒部の内径に対する比率Cが0.7≦C≦0.95を満足する値であることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
照明装置本体と;
照明装置本体に配設された請求項1または2記載の高圧放電ランプと;
高圧放電ランプを点灯する点灯回路と;
を具備していることを特徴とする照明装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate