説明

高度不飽和脂肪酸の濃縮方法

【課題】ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)等の高度不飽和脂肪酸を高濃度で含む高度不飽和脂肪酸グリセリドを製造する方法の提供。
【解決手段】リパーゼを用いた高度不飽和脂肪酸を含有する原料油脂をリパーゼにより加水分解し複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮する高度不飽和脂肪酸を多く含む高度不飽和脂肪酸グリセリドを製造する方法であって、極性有機溶媒の存在下でリパーゼと油脂とを反応させ、高度不飽和脂肪酸の加水分解効率を抑制し、反応によって得られる混合物からリパーゼ、水、極性有機溶媒、グリセリンならびに遊離脂肪酸あるいは遊離脂肪酸および脂肪酸低級アルコールエステルを除去し、アシルグリセロール中の複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮することを含む、高度不飽和脂肪酸が濃縮され多量に含む高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造に関する技術を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度不飽和脂肪酸が有する多彩な生理作用が注目されている。特に、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は、動脈硬化症、血栓症などの成人病に対する予防効果や制ガン作用、学習能の増強作用などの多くの生理活性作用を有していることが知られている。そして、その利用法について様々な検討がなされている。
【0003】
EPAやDHAを主体とした高度不飽和脂肪酸を濃縮する方法としては、例えば(1)クロマトグラフィーによる方法、(2)液‐液分配による方法、(3)分子蒸留による方法、(4)尿素付加による方法、(5)二重結合への付加物による方法、およびこれらを組み合わせた方法が知られている。しかし、これらの方法では高度不飽和脂肪酸を濃縮するために、油脂を脂肪酸またはそのアルカリ金属塩および低級アルコールエステル等に変換して濃縮する場合が多く、高度不飽和脂肪酸を高濃度に濃縮できる利点はあるものの、トリアシルグリセロールを主体としたグリセリドの形態で濃縮することはできない。
【0004】
また、(6)低温分別結晶化法を用いると、高度不飽和脂肪酸をトリアシルグリセロールの形態で濃縮できるものの、濃縮効率を高めるために溶剤を使用する場合が多く、その際、-30℃〜-50℃という極低温下での結晶化および濾過が必要となり、装置の仕様が大掛かりになるという欠点がある。しかも、EPAの豊富なイワシ油を使って処理した場合でも、EPAを28%程度含むトリグリセリドの回収率は現状では約15%とかなり低いという問題点がある。
【0005】
さらに、トリアシルグリセロールを主体としたグリセリドの形態で高度不飽和脂肪酸を効率的に濃縮する方法として、(7)リパーゼを用いた方法が知られている。即ち、キャンディダ・ルゴーサ(Candida rugosa)が産生するリパーゼを使用して、DHAを豊富に含むマグロ油(またはカツオ油)を選択的加水分解し、未分解のグリセリド中にDHAを高濃度に濃縮する方法が実用化されている(特許文献1を参照)。
【0006】
しかし、この方法ではEPAに対するリパーゼの作用性が高く、反応を進めるとEPAの加水分解が進行してしまい、結局、EPAを未分解のアシルグリセロール中に濃縮できないという問題点があった。
【特許文献1】特公平4-16519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)等の高度不飽和脂肪酸を高濃度で含む高度不飽和脂肪酸グリセリドを製造する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、(6)低温分別結晶化法を用いる方法および(7)リパーゼを用いた方法の欠点を解決する方法について鋭意研究を行った結果、高度不飽和脂肪酸を含有する油脂を酵素的に加水分解する反応系に極性有機溶媒を適量加えることにより、DHAとEPAをほぼ同様の濃縮率で未分解のアシルグリセロール中に濃縮することができることを見出した。
【0009】
本発明は、高度不飽和脂肪酸を含有する油脂を酵素的に加水分解する反応系に極性有機溶媒を適量添加すると、リパーゼが有する本来の脂肪酸への作用性が変化することを見出し、これまで作用性が高かったEPAに対し、変換活性を抑制し、未分解のアシルグリセロール中にDHAとほぼ同等の濃縮率で濃縮できることを見出し、EPA およびDHA含量を高めた油の製造技術の開発に成功したことに基づく。従って、本発明は、以下のものを含む。
[1] リパーゼを用いた高度不飽和脂肪酸を含有する原料油脂をリパーゼにより加水分解し複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮する高度不飽和脂肪酸を多く含む高度不飽和脂肪酸グリセリドを製造する方法であって、極性有機溶媒の存在下でリパーゼと油脂とを反応させ、高度不飽和脂肪酸の加水分解効率を抑制し、反応によって得られる混合物からリパーゼ、水、極性有機溶媒、グリセリンおよび遊離脂肪酸を除去し、アシルグリセロール中の複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮することを含む、高度不飽和脂肪酸が濃縮され多量に含む高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
[2] リパーゼを用いた高度不飽和脂肪酸を含有する原料油脂をリパーゼにより加水分解し複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮する高度不飽和脂肪酸を多く含む高度不飽和脂肪酸グリセリドを製造する方法であって、低級アルコールの存在下でリパーゼと油脂とを反応させ、高度不飽和脂肪酸の加水分解効率を抑制し、反応によって得られる混合物からリパーゼ、水、低級アルコール、グリセリン、遊離脂肪酸および脂肪酸低級アルコールエステルを除去し、アシルグリセロール中の複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮することを含む、[1]の高度不飽和脂肪酸が濃縮され多量に含む高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
[3] リパーゼを用いた高度不飽和脂肪酸を含有する原料油脂をリパーゼにより加水分解し複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮する高度不飽和脂肪酸を多く含む高度不飽和脂肪酸グリセリドを製造する方法であって、極性有機溶媒の存在下でリパーゼと油脂とを反応させ、極性有機溶媒の非存在下ではリパーゼによる加水分解効率の高い高度不飽和脂肪酸の加水分解効率を抑制し、該高度不飽和脂肪酸の濃縮率を高め、反応によって得られる混合物からリパーゼ、水、極性有機溶媒、グリセリンおよび遊離脂肪酸を除去し、アシルグリセロール中の複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮することを含む、[1]の高度不飽和脂肪酸が濃縮され多量に含む高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
[4] リパーゼを用いた高度不飽和脂肪酸を含有する原料油脂をリパーゼにより加水分解し複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮する高度不飽和脂肪酸を多く含む高度不飽和脂肪酸グリセリドを製造する方法であって、低級アルコールの存在下でリパーゼと油脂とを反応させ、低級アルコールの非存在下ではリパーゼによる加水分解効率の高い高度不飽和脂肪酸の加水分解効率を抑制し、該高度不飽和脂肪酸の濃縮率を高め、反応によって得られる混合物からリパーゼ、水、低級アルコール、グリセリン、遊離脂肪酸および脂肪酸低級アルコールエステルを除去し、アシルグリセロール中の複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮することを含む、[2]の高度不飽和脂肪酸が濃縮され多量に含む高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
[5] リパーゼがキャンディダ・ルゴーサ(Candida rugosa)が産生するリパーゼである、[1]〜[4]のいずれかの高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
[6] 高度不飽和脂肪酸がω-3系高度不飽和脂肪酸である、[1]〜[5]のいずれかの高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
[7] ω-3系高度不飽和脂肪酸がエイコサペンタエン酸および/またはドコサヘキサエン酸である、[6]の高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
[8] 極性有機溶媒によりエイコサペンタエン酸のリパーゼによる加水分解効率を抑制し、得られる高度不飽和脂肪酸グリセリド中のエイコサペンタエン酸の原料油脂中のエイコサペンタエン酸に対する濃縮率を、得られる高度不飽和脂肪酸グリセリド中のドコサヘキサエン酸の原料油脂中のドコサヘキサエン酸に対する濃縮率と同等にする、[7]の高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
[9] 得られる高度不飽和脂肪酸グリセリド中のエイコサペンタエン酸の原料油脂中のエイコサペンタエン酸に対する濃縮率が、得られる高度不飽和脂肪酸グリセリド中のドコサヘキサエン酸の原料油脂中のドコサヘキサエン酸に対する濃縮率に対して1〜1.3である[8]の高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
[10] 極性有機溶媒がアセトンである、[1]、[3]および[5]〜[9]のいずれかの高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
[11] 低級アルコールがエチルアルコールである、[2]、[4]および[5]〜[9]のいずれかの高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明では高度不飽和脂肪酸を含有する原料油脂を酵素的に加水分解する際、極性有機溶媒を適量添加することにより、リパーゼが有する脂肪酸への作用性を変え、DHAのみならずEPAもほぼ同等の濃縮率で未分解のアシルグリセロール中に濃縮した油を製造する方法の開発に成功した。本発明の方法により、原料油脂よりDHAおよびEPAを効率的に無駄なく回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において、油脂または油とは生物体に貯えられている脂質をいい、脂肪酸とグリセリンのエステルを主成分として含む混合物をいう。本発明に使用する高度不飽和脂肪酸を含有する油脂は、海産動物油、例えばマグロ、カツオ、イワシ、サバ、サンマ、アジ、イカまたはタラ等から得られる魚油がエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)を多く含むため好ましい。魚油の抽出方法としては、マグロも若しくはカツオの頭部、またはイワシ、サバ、サンマ若しくはアジの全魚体、またはイカ若しくはタラの肝臓を採取し、これを煮取り抽出、溶剤抽出、圧搾抽出する方法等が挙げられる。本発明の方法においては、上記の油脂を原料として高度不飽和脂肪酸を高濃度で含む高度不飽和脂肪酸グリセリドを製造する。用いる油脂はアルカリ脱酸処理等により遊離脂肪酸を低減しておくことが望ましい。
【0012】
本発明において、高度不飽和脂肪酸(HUFA)とは、多不飽和脂肪酸(PUFA)とも呼ばれ、炭素鎖長20以上で二重結合を3個以上含むものをいう。高度不飽和脂肪酸には、EPA、DHA、α-リノレン酸等のω-3(n-3)系例とアラキドン酸、リノール酸等のω-6(n-6)系列が存在し、本発明においては、ω-3系列の高度不飽和脂肪酸を含む高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造を目的とする。特に魚油中のエイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸を濃縮し、これらの高度不飽和脂肪酸を高濃度で含む高度不飽和脂肪酸グリセリドを製造することを目的とする。
【0013】
ここで、高度不飽和脂肪酸がアシルグリセロール中に濃縮されるとは、アシルグリセロールを構成する全脂肪酸中の高度不飽和脂肪酸の比率が高くなることをいう。本発明においては、最終的に得られる高度不飽和脂肪酸を濃縮した油を高度不飽和脂肪酸グリセリドという。
【0014】
本発明に使用する酵素は、アシルグリセロール類を基質として認識する酵素であればいずれでもよく、好ましくはトリアシルグリセロールリパーゼ、クチナーゼ、エステラーゼであり、より好ましくはトリアシルグリセロールリパーゼ(以下、これらを総称してリパーゼという)である。
【0015】
酵素の由来は、微生物、動物、植物のいずれでもよいが、好ましくはCandida属、Geotrichum属、Rhizopus属、Rhizomucor属、Mucor属、Aspergillus属、Thermomyces属(以前の名称はHumicola属)、Fusarium属、Penicillium属、Pseudomonas属、Serratia属、Burkholderia属、Alcaligenes属、Staphylococcus属、Bacillus属、Pseodozyma属等の微生物が生産する酵素や豚膵臓由来の酵素であり、より好ましくはCandida属、Geotrichum属、Rhizopus属、Rhizomucor属、Mucor属、Aspergillus属、Thermomyces属が生産する酵素であり、さらにより好ましくはCandida属、Geotrichum属、Rhizomucor mieheiRhizopus oryzae(以前の名称はRhizopus delemar)、RhizopusniveusThermomyces lanuginosaが生産するリパーゼである。これらの酵素は一般に市販されており、容易に入手可能である。例えば、市販品としてCandida rugosaリパーゼ(名糖産業社製)がある。
【0016】
酵素の性状は、粗精製、部分精製、精製のいずれでもよい。また遊離型のまま、あるいはイオン交換樹脂、多孔性樹脂、セラミックス、炭酸カルシウム等の担体に固定して使用してもよい。また、遊離型酵素の場合は、グリセリンとの混合を良くするために、シリカゲルやセライトなどの各種添加物を入れて反応させても良い。
【0017】
反応に使用する酵素の量は、反応温度や時間等により決定されるため特に規定されないが、遊離型の酵素の場合、一般的には反応混液1g当たり1単位(U)〜10,000 U、好ましくは5 U〜1,000 U添加すればよく、適宜設定することができる。ここでの酵素活性の1Uとは、リパーゼの場合はオリーブ油の加水分解において1分間に1μmolの脂肪酸を遊離する酵素量である。固定化酵素を用いる場合は、反応混液の重量に対して0.1〜200%、好ましくは1〜20%である。
【0018】
本発明の方法は、高度不飽和脂肪酸を含有する油脂、水、極性有機溶媒、およびリパーゼを含む反応系で行う。反応は15〜70℃、好ましくは20〜60℃、より好ましくは25〜50℃で行うのがよい。反応温度が15℃未満ではリパーゼの反応速度が遅くなり、70℃を超えるとリパーゼが失活するので好ましくない。反応時のpHは、4.0〜8.5、好ましくは4.5〜8.0である。反応は静置しながら行ってもよい。また、各種の攪拌法・振盪法・超音波法・窒素等の吹き込み法・ポンプ等による循環混合法・弁やピストンを用いる混合法などにより、あるいはこれらの方法の組合せにより、反応液をよく混合しながら行ってもよい。反応を行わせる際には、油脂の酸化的劣化を防止するため、不活性ガス気流下で1〜72時間、好ましくは1〜30時間行うのがよい。ここで、不活性ガスとしては窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。反応系に添加する水は、油脂に対して1〜500%(重量%)、好ましくは5〜300%(重量%)、より好ましくは20〜200%(重量%)である。
【0019】
本発明において、脂肪酸への作用性を変化させるのに用いる極性有機溶媒はアセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、低級アルコール等が挙げられる。低級アルコールとしては、炭素数1〜4の低級アルコールが挙げられ、エチルアルコール、メチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等が含まれる。この中でもエチルアルコールが好ましい。添加する極性有機溶媒の量は、油脂に対して0.1〜10モル倍量、好ましくは0.5〜5モル倍量である。ここで、材料として用いる油脂のモル数は油脂の平均分子量に基づいて算出すればよい。
【0020】
高度不飽和脂肪酸を含有する油脂を水系中でリパーゼと反応させると、トリアシルグリセロールの加水分解反応が進行する。しかし、この反応系に低級アルコールが存在する場合は、トリアシルグリセロールの加水分解により生成した高度不飽和脂肪酸以外の脂肪酸と低級アルコールのエステル化反応も同時に進行し、また、生成したジアシルグリセロールとモノアシルグリセロール中に加水分解されずに残った高度不飽和脂肪酸以外の脂肪酸と低級アルコールがエステル交換(アルコリシス)反応するため、添加した低級アルコールが反応基質として消費される。
【0021】
従って、低級アルコールを用いる場合は、反応開始時から添加することが好ましいが、全量を一度に添加することなく、一部ずつ数度に分けて添加してもよい。また、連続的に系内に供給する方法を用いることもできる。この場合、トータルで上記の量の低級アルコールを添加すればよい。反応後の混液中には分解された遊離脂肪酸、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロールが存在し、低級アルコールを添加した場合のみ脂肪酸低級アルコールエステルも存在する。従って、反応後の混液から遊離脂肪酸と脂肪酸低級アルコールエステルを除去することによりアシルグリセロール中の高度不飽和脂肪酸が濃縮された高度不飽和脂肪酸グリセリドを製造することができる。
【0022】
高度不飽和脂肪酸を含有する油脂とリパーゼを反応させる際に極性有機溶媒を添加するとリパーゼの脂肪酸への作用性が変化する。ここで、作用性が変化するとは、アシルグリセロール中の脂肪酸の加水分解効率が変化すること、すなわち脂肪酸の変換活性を変化させることをいう。上記のようにリパーゼの、高度不飽和脂肪酸とグリセリンのエステル結合の加水分解効率は、高度不飽和脂肪酸以外の脂肪酸とグリセリンのエステル結合の加水分解効率よりも低いが、高度不飽和脂肪酸の中でもその種類によって、加水分解効率に差がある。加水分解効率が高い高度不飽和脂肪酸、すなわちリパーゼの作用性が高い高度不飽和脂肪酸は、加水分解反応が進み、添加した極性有機溶媒が低級アルコールの場合、さらにエステル化反応とエステル交換(アルコリシス)反応が進行するため、遊離の脂肪酸や脂肪酸低級アルコールエステルとなり、未分解のアシルグリセロール中に濃縮されにくくなってしまう。例えば、EPAのリパーゼによる加水分解効率は、DHAよりも高い。従って、EPAおよびDHAを含む油脂からEPAおよびDHAを含むアシルグリセロールを製造しようとする場合、リパーゼのEPAに対する作用性が高く、リパーゼ処理によりEPAが加水分解を受け遊離脂肪酸や脂肪酸低級アルコールエステルとなり易い。この結果、EPAが未分解のアシルグリセロール中に十分濃縮されず、原料油脂からのEPAの濃縮率がDHAよりも低くなってしまう。一方、高度不飽和脂肪酸を含有する油脂とリパーゼとの反応時に極性有機溶媒を添加すると、リパーゼの高度不飽和脂肪酸に対する作用性が変化し、高度不飽和脂肪酸による加水分解効率に差がなくなる。すなわち、もともとリパーゼの作用性が高かった高度不飽和脂肪酸に対するリパーゼの作用性が低下する。例えば、EPAとDHAの場合、EPAに対する加水分解効率が低くなり、すなわち変換効率が低くなる。そのため、DHAに対する加水分解効率に対してのEPAに対する加水分解効率が相対的に低くなり、EPAの濃縮率が高くなる。従って、EPAとDHAの濃縮率の差が小さくなり、濃縮率が同等となる。その結果、どちらも未分解のアシルグリセロール中に高い効率で濃縮できるようになる。ここで、ある高度不飽和脂肪酸の濃縮率とは、原料油脂をリパーゼで処理する前のアシルグリセロール中に含まれる全脂肪酸中の高度不飽和脂肪酸含有率に対するリパーゼで処理した後のアシルグリセロール中に含まれる全脂肪酸中の高度不飽和脂肪酸含有率の比をいう。例えば、リパーゼ処理前のアシルグリセロール中にEPAが20%含まれており、リパーゼ処理後のアシルグリセロール中にEPAが30%含まれている場合、濃縮率は150%(1.5倍)と計算される。例えば、本発明の方法による高度不飽和脂肪酸の濃縮率は1.1倍以上、好ましくは1.2倍以上、さらに好ましくは1.3倍以上、特に好ましくは1.4倍以上であり、高度不飽和脂肪酸の間の濃縮率の差は、濃縮率が最も高い高度不飽和脂肪酸の濃縮率と濃縮率が最も低い高度不飽和脂肪酸の濃縮率の比が、1.4倍以内、好ましくは1.3倍以内になる。イワシ油からDHAとEPAを多く含む高度不飽和脂肪酸グリセリドを濃縮する場合、原料油脂とリパーゼの反応時に極性有機溶媒を添加しない場合、EPAに対するDHAの濃縮率の比は、約1.5であるが、極性有機溶媒を添加した場合、約1から約1.3となる。
【0023】
リパーゼと油脂を極性有機溶媒のうち、低級アルコール存在下で反応させた場合、トリアシルグリセロールの加水分解により生成した高度不飽和脂肪酸以外の脂肪酸と低級アルコールのエステル化反応も同時に進行し、また、生成したジアシルグリセロールとモノアシルグリセロール中に加水分解されずに残った高度不飽和脂肪酸以外の脂肪酸と低級アルコールのエステル交換(アルコリシス)反応も進行することを先に述べた。すなわち、その場合のみ、反応終了後の油層に脂肪酸低級アルコールエステル(以下、EEと称する)が含まれ、以下、ジアシルグリセロール(以下、DAGと称する)、モノアシルグリセロール(以下、MAGと称する)、遊離脂肪酸(以下、FFAと称する)、未分解のトリアシルグリセロール(以下、TAGと称する)、極性有機溶媒の一部が含まれる。一方、水層には、水以外にグリセリンと極性有機溶媒の大部分が含まれる。高度不飽和脂肪酸はアシルグリセロール中に濃縮されるため、反応後の油層から生成したFFAとEE、さらに極性有機溶媒を除去することにより、高度不飽和脂肪酸が濃縮した油を分画することができる。
【0024】
高度不飽和脂肪酸が濃縮した高度不飽和脂肪酸グリセリドを精製するには、どのような方法を採用してもよく、例えば脱酸、水洗、蒸留、溶媒抽出、イオン交換クロマトグラフィー、膜分離等の方法を組合せることにより行うことができる。
【0025】
本発明において油脂の組成分析は、イヤトロスキャン(三菱ヤトロン製、型式MK-6、クロマロッドS-III使用)を用いて、生成したEE、MAG、DAG、未分解のTAG(FFAを含む)の各ピークの面積比(%)から算出できる。ただし、TAGのピークにはFFAが含まれるため、基準油脂分析試験法((社)日本油化学会編)に従い、FFA(%)を[酸価×0.503]の数式から算出して、FFA(%)を差し引くことで正確なTAG(%)を求めることができる。
【実施例】
【0026】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
〔実施例1〕
アルカリ脱酸したイワシ油(平均分子量:884、酸価:0.2、EPA:20.0%、DHA:7.7%)200gにキャンディダ・ルゴーサ(Candida rugosa)が産生するリパーゼ(名糖産業社製)を油1gに対して100ユニットになるよう溶解した蒸留水80gとアセトン(純正化学製、特級99.5%)6.56g(油に対して0.5倍モル量)を加え、攪拌しながら37℃で24時間反応を行った。次いで、該反応液からリパーゼを含む水層(アセトンを含む)を除去して油層を得、水洗することによりグリセリンとアセトンを完全に除去した。油層の脂質組成を測定したところ、MAG:9.0%、DAG:22.7%、FFA:36.1%、TAG:32.2%であった。脱水後、蒸留法により高度不飽和脂肪酸を濃縮したTAGとDAGを主成分とする残渣画分117.7gを得た(酸価:0.6)。この油の脂質組成はTAG:56.3%、DAG:39.3%、MAG:4.1%、FFA0.3%、さらには構成脂肪酸中のEPAは26.7%、DHAは11.9%であった。したがって、本実施例によりEPAを1.3倍、DHAを1.5倍に濃縮したイワシ油を得ることができた。
【0027】
なお、イワシ油の構成脂肪酸はミリスチン酸(C14:0、分子量:228)からDHA(C22:6、分子量:328)まで多様な分布を示す。そこで、イワシ油の分子量としてC18の脂肪酸が平均的な分子量であるので、天然油脂に多く含まれるオレイン酸(C18:1、分子量:282)のTGの分子量を計算した。計算値は282×3分子+92(グリセリン)−18(水)×3分子=884となる。
【0028】
〔実施例2〕
アルカリ脱酸したイワシ油(平均分子量:884、酸価:0.2、EPA:20.0%、DHA:7.7%)200gにキャンディダ・ルゴーサ(Candida rugosa)が産生するリパーゼ(名糖産業社製)を油1gに対して100ユニットになるよう溶解した蒸留水80gとアセトン(純正化学製、特級99.5%)13.12g(油に対して等モル量)を加え、攪拌しながら37℃で24時間反応を行った。次いで、該反応液からリパーゼを含む水層(アセトンを含む)を除去して油層を得、水洗することによりグリセリンとアセトンを完全に除去した。油層の脂質組成を測定したところ、MAG:4.4%、DAG:21.5%、FFA:24.1%、TAG:50.0%であった。脱水後、蒸留法により高度不飽和脂肪酸を濃縮したTAGとDAGを主成分とする残渣画分138.6gを得た(酸価:0.6)。この油の脂質組成はTAG:66.0%、DAG:31.1%、MAG:2.7%、FFA0.3%、さらには構成脂肪酸中のEPAは25.3%、DHAは10.3%であった。したがって、本実施例によりEPAを1.3倍、DHAを1.3倍に濃縮したイワシ油を得ることができた。
【0029】
〔実施例3〕
アルカリ脱酸したイワシ油(平均分子量:884、酸価:0.2、EPA:20.0%、DHA:7.7%)200gにキャンディダ・ルゴーサ(Candida rugosa)が産生するリパーゼ(名糖産業社製)を油1gに対して100ユニットになるよう溶解した蒸留水80gとアセトン(純正化学製、特級99.5%)13.12g(油に対して1.5倍モル量)を加え、攪拌しながら37℃で24時間反応を行った。次いで、該反応液からリパーゼを含む水層(アセトンを含む)を除去して油層を得、水洗することによりグリセリンとアセトンを完全に除去した。油層の脂質組成を測定したところ、MAG:2.0%、DAG:15.4%、FFA:14.3%、TAG:68.3%であった。脱水後、蒸留法により高度不飽和脂肪酸を濃縮したTAGとDAGを主成分とする残渣画分159.2gを得た(酸価:0.7)。この油の脂質組成はTAG:75.3%、DAG:26.4%、MAG:0.9%、FFA0.4%、さらには構成脂肪酸中のEPAは23.0%、DHAは9.1%であった。したがって、本実施例によりEPAを1.2倍、DHAを1.2倍に濃縮したイワシ油を得ることができた。
【0030】
〔実施例4〕
アルカリ脱酸したイワシ油(平均分子量:884、酸価:0.2、EPA:20.0%、DHA:7.7%)200gにキャンディダ・ルゴーサ(Candida rugosa)が産生するリパーゼ(名糖産業社製)を油1gに対して100ユニットになるよう溶解した蒸留水80gとエチルアルコール(純正化学製、特級99.5%)10.44g(油に対して等モル量)を加え、攪拌しながら37℃で24時間反応を行った。次いで、該反応液からリパーゼを含む水層(エチルアルコールを含む)を除去して油層を得、水洗することによりグリセリンとエチルアルコールを完全に除去した。油層の脂質組成を測定したところ、EE:18.1%、MAG:7.7%、DAG:23.0%、FFA:12.8%、TAG:44.7%であった。脱水後、蒸留法により高度不飽和脂肪酸を濃縮したTAGとDAGを主成分とする残渣画分107.0gを得た(酸価:0.6)。この油の脂質組成はTAG:69.5%、DAG:26.8%、MAG:2.5%、FFA0.3%、EE1.0%、さらには構成脂肪酸中のEPAは27.6%、DHAは13.4%であった。したがって、本実施例によりEPAを1.4倍、DHAを1.7倍に濃縮したイワシ油を得ることができた。
【0031】
〔実施例5〕
アルカリ脱酸したイワシ油(平均分子量:884、酸価:0.2、EPA:20.0%、DHA:7.7%)200gにキャンディダ・ルゴーサ(Candida rugosa)が産生するリパーゼ(名糖産業社製)を油1gに対して100ユニットになるよう溶解した蒸留水80gとエチルアルコール(純正化学製、特級99.5%)15.66g(油に対して1.5倍モル量)を加え、攪拌しながら37℃で24時間反応を行った。次いで、該反応液からリパーゼを含む水層(エチルアルコールを含む)を除去して油層を得、水洗することによりグリセリンとエチルアルコールを完全に除去した。油層の脂質組成を測定したところ、EE:16.5%、MAG:7.8%、DAG:22.5%、FFA:12.8%、TAG:40.5%であった。脱水後、蒸留法により高度不飽和脂肪酸を濃縮したTAGとDAGを主成分とする残渣画分125.8g を得た(酸価:0.3)。この油の脂質組成はTAG:70.4%、DAG:25.9%、MAG:2.7%、FFA0.2%、EE0.8%、さらには構成脂肪酸中のEPAは27.0%、DHAは11.1%であった。したがって、本実施例によりEPAを1.4倍、DHAを1.4倍に濃縮したイワシ油を得ることができた。
【0032】
〔実施例6〕
アルカリ脱酸したイワシ油(平均分子量:884、酸価:0.2、EPA:20.0%、DHA:7.7%)200gにキャンディダ・ルゴーサ(Candida rugosa)が産生するリパーゼ(名糖産業社製)を油1gに対して100ユニットになるよう溶解した蒸留水80gとエチルアルコール(純正化学製、特級99.5%)20.88g(油に対して2倍モル量)を加え、攪拌しながら37℃で24時間反応を行った。次いで、該反応液からリパーゼを含む水層(エチルアルコールを含む)を除去して油層を得、水洗することによりグリセリンとエチルアルコールを完全に除去した。油層の脂質組成を測定したところ、EE:9.4%、MAG:4.5%、DAG:18.7%、FFA:6.6%、TAG: 60.8%であった。脱水後、蒸留法により高度不飽和脂肪酸を濃縮したTAGとDAGを主成分とする残渣画分154.2g を得た(酸価:0.2)。この油の脂質組成はTAG:81.2%、DAG:16.9%、MAG:1.2%、FFA:0.1%、EE:0.5%、さらには構成脂肪酸中のEPAは24.1%、DHAは9.5%であった。したがって、本実施例ではEPAを1.2倍、DHAを1.2倍に濃縮したイワシ油を得ることができた。この原因として、エチルアルコールの添加量が多いため、リパーゼの変換活性が低下したことが考えられた。
【0033】
〔実施例7〕
アルカリ脱酸したイワシ油(平均分子量:884、酸価:0.2、EPA:20.0%、DHA:7.7%)200gにキャンディダ・ルゴーサ(Candida rugosa)が産生するリパーゼ(名糖産業社製)を油1gに対して100ユニットになるよう溶解した蒸留水80gとエチルアルコール(純正化学製、特級99.5%)5.22g(油に対して0.5倍モル量)を加え、その後2時間後に5.22g、4時間後に5.22g、7時間後に5.22gと3回に分けて合計15.66g(油に対して1.5倍モル量)のエチルアルコールを加え、攪拌しながら37℃で24時間反応を行った。次いで、該反応液からリパーゼを含む水層(エチルアルコールを含む)を除去して油層を得、水洗することによりグリセリンとエチルアルコールを完全に除去した。油層の脂質組成を測定したところ、EE:18.1%、MAG:7.7%、DAG:23.8%、FFA:15.8%、TAG:35.3%であった。脱水後、蒸留法により高度不飽和脂肪酸を濃縮したTAGとDAGを主成分とする残渣画分121.4gを得た(酸価:0.8)。この油の脂質組成はTAG:54.9%、DAG:39.4%、MAG:5.1%、FFA:0.4%、EE:0.3%、さらには構成脂肪酸中のEPAは27.5%、DHAは11.8%であった。したがって、本発明によりEPAを1.4倍、DHAを1.5倍に濃縮したイワシ油を得ることができた。油に対し、反応当初からエチルアルコールを2倍モル量添加するよりも、このように一部ずつ数度に分けて添加することでEPAを効率的に濃縮できた。
【0034】
〔比較例1〕
アルカリ脱酸したイワシ油(平均分子量:884、酸価:0.2、EPA:20.0%、DHA:7.7%)200gにキャンディダ・ルゴーサ(Candida rugosa)が産生するリパーゼ(名糖産業社製)を油1gに対して100ユニットになるよう溶解した蒸留水80gを加え、攪拌しながら37℃で24時間加水分解反応を行った。次いで、該反応液からリパーゼを含む水層を除去して油層を得、水洗することによりグリセリンを完全に除去した。油層の脂質組成を測定したところ、MAG:2.7%、DAG:15.2%、FFA:47.7.2%、TAG:34.4%であった。脱水後、蒸留法により高度不飽和脂肪酸を濃縮したTAGとDAGを主成分とする残渣画分96.2gを得た(酸価:1.2)。この油の脂質組成はTAG:67.2%、DAG:26.6%、MAG:4.0%、FFA:0.6%、さらには構成脂肪酸中のEPAは25.7%、DHAは15.0%であった。したがって、本法ではEPAを1.3倍、DHAを1.9倍に濃縮したイワシ油が得られた。このようにエチルアルコールを添加しないと、選択的にDHAがよく濃縮され、その結果としてEPAの濃縮率との差が大きくなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リパーゼを用いた高度不飽和脂肪酸を含有する原料油脂をリパーゼにより加水分解し複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮する高度不飽和脂肪酸を多く含む高度不飽和脂肪酸グリセリドを製造する方法であって、極性有機溶媒の存在下でリパーゼと油脂とを反応させ、高度不飽和脂肪酸の加水分解効率を抑制し、反応によって得られる混合物からリパーゼ、水、極性有機溶媒、グリセリンおよび遊離脂肪酸を除去し、アシルグリセロール中の複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮することを含む、高度不飽和脂肪酸が濃縮され多量に含む高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
【請求項2】
リパーゼを用いた高度不飽和脂肪酸を含有する原料油脂をリパーゼにより加水分解し複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮する高度不飽和脂肪酸を多く含む高度不飽和脂肪酸グリセリドを製造する方法であって、低級アルコールの存在下でリパーゼと油脂とを反応させ、高度不飽和脂肪酸の加水分解効率を抑制し、反応によって得られる混合物からリパーゼ、水、低級アルコール、グリセリン、遊離脂肪酸および脂肪酸低級アルコールエステルを除去し、アシルグリセロール中の複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮することを含む、請求項1記載の高度不飽和脂肪酸が濃縮され多量に含む高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
【請求項3】
リパーゼを用いた高度不飽和脂肪酸を含有する原料油脂をリパーゼにより加水分解し複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮する高度不飽和脂肪酸を多く含む高度不飽和脂肪酸グリセリドを製造する方法であって、極性有機溶媒の存在下でリパーゼと油脂とを反応させ、極性有機溶媒の非存在下ではリパーゼによる加水分解効率の高い高度不飽和脂肪酸の加水分解効率を抑制し、該高度不飽和脂肪酸の濃縮率を高め、反応によって得られる混合物からリパーゼ、水、極性有機溶媒、グリセリンおよび遊離脂肪酸を除去し、アシルグリセロール中の複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮することを含む、請求項1記載の高度不飽和脂肪酸が濃縮され多量に含む高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
【請求項4】
リパーゼを用いた高度不飽和脂肪酸を含有する原料油脂をリパーゼにより加水分解し複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮する高度不飽和脂肪酸を多く含む高度不飽和脂肪酸グリセリドを製造する方法であって、低級アルコールの存在下でリパーゼと油脂とを反応させ、低級アルコールの非存在下ではリパーゼによる加水分解効率の高い高度不飽和脂肪酸の加水分解効率を抑制し、該高度不飽和脂肪酸の濃縮率を高め、反応によって得られる混合物からリパーゼ、水、低級アルコール、グリセリン、遊離脂肪酸および脂肪酸低級アルコールエステルを除去し、アシルグリセロール中の複数の高度不飽和脂肪酸を濃縮することを含む、請求項2記載の高度不飽和脂肪酸が濃縮され多量に含む高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
【請求項5】
リパーゼがキャンディダ・ルゴーサ(Candida rugosa)が産生するリパーゼである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
【請求項6】
高度不飽和脂肪酸がω-3系高度不飽和脂肪酸である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
【請求項7】
ω-3系高度不飽和脂肪酸がエイコサペンタエン酸および/またはドコサヘキサエン酸である、請求項6記載の高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
【請求項8】
極性有機溶媒によりエイコサペンタエン酸のリパーゼによる加水分解効率を抑制し、得られる高度不飽和脂肪酸グリセリド中のエイコサペンタエン酸の原料油脂中のエイコサペンタエン酸に対する濃縮率を、得られる高度不飽和脂肪酸グリセリド中のドコサヘキサエン酸の原料油脂中のドコサヘキサエン酸に対する濃縮率と同等にする、請求項7記載の高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
【請求項9】
得られる高度不飽和脂肪酸グリセリド中のエイコサペンタエン酸の原料油脂中のエイコサペンタエン酸に対する濃縮率が、得られる高度不飽和脂肪酸グリセリド中のドコサヘキサエン酸の原料油脂中のドコサヘキサエン酸に対する濃縮率に対して1〜1.3である請求項8記載の高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
【請求項10】
極性有機溶媒がアセトンである、請求項1、3および5〜9のいずれか1項に記載の高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。
【請求項11】
低級アルコールがエチルアルコールである、請求項2、4および5〜9のいずれか1項に記載の高度不飽和脂肪酸グリセリドの製造方法。

【公開番号】特開2009−153485(P2009−153485A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337384(P2007−337384)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000003274)株式会社マルハニチロ水産 (13)
【Fターム(参考)】