説明

高温炉用断熱材の製造方法及び該製造方法で製造した高温炉用断熱材。

【課題】熱源域から外部への放熱を遮熱断熱する性能に優れ、且つ、コストが安い断熱材を製造する製造方法と、該製造方法によって製造された断熱材を提供すること。
【解決手段】水抜き用開口部を設けた抄造枠4を遠心分離機2を備えた容器に載置し、カーボン繊維とカーボン粉末とフェノール樹脂を水中で分散混合した混合物を、遠心分離機を回転させて、その遠心力で、混合物に含まれている水分を抄造枠に設けた水抜き用開口部6から外に絞り出し、約50%の水分を除去し、残った層状混合物に熱風を吹き込み、残存水分を5%以下にして乾燥物とし、該乾燥物を不活性ガスの高温炉に投入し、高温炉の温度を段階的に上げ、150℃〜200℃で残存の水分を飛ばし除去し、1500℃以上の高温にて焼成して高温炉用断熱材を作る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン繊維とカーボン粉末とフェノール樹脂粉末を水に分散混合した混合物を遠心分離機を回転させて円筒形又は略円筒状形に層状混合物として形成し、該層状混合物を段階的に不活性ガスの炉で焼成した高温炉用断熱材の製造方法及び該製造方法で製造した、金属の焼入れ、あるいはセラミック等の焼成に用いられる高温炉用断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、この種の断熱材は、カーボン繊維をフェルト状あるいは織布にフェノール樹脂を含浸し、ニードルパンチ等で押圧し乾燥させたシートを円筒状に巻き重ねて焼成したものが広く知られている。又、黒鉛シートや炭素繊維クロスを貼り付けた成型体が知られている(特許文献1)。更に、炭素繊維糸を集積して第一基材とする基材調整工程と、炭素繊維紡績糸からなる織物層を形成する織物形成工程と、織物を基材に接着させる接着工程とこれらを焼成する焼成工程からなる炭素繊維含有積層成型体の製造方法が知られている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3029534号公報。
【特許文献2】国際公開番号WO2008/023777。
【発明の概要】

【発明が解決しょうとする課題】
【0004】
従来の断熱材は、カーボン繊維をフェルト状のもの、あるいは織布にフェノール樹脂を含浸したものをニードルパンチ等で押圧してカーボン繊維を縦横に絡ませ、乾燥させたシートを円筒状に巻き重ねて焼成したもので、カーボン繊維が縦横に絡まっている。そのため、高温炉中に発生した熱がカーボン繊維を伝導して放熱されるので、熱源域から外部への放熱を遮熱断熱する性能に課題があった。
特許文献1の特許では、炭素繊維(カーボン繊維)の均一な分散が難しく、均一なフェルトを作るのに難があり、且つ、炭素繊維(カーボン繊維)が縦横に絡み合っており、遮熱断熱効果が弱い。
又、特許文献2の炭素繊維含有積層成型体の製法は、炭素繊維紡績糸を作る工程から始まり、基材調整工程、織物形成工程、接着工程、焼成工程と多くの時間とコストが掛かり、特に円筒形の成型体では、炭素繊維の配向が円周方向でなく、遮熱断熱効果が弱い。
本発明が解決しょうとする課題は、熱源域から外部への放熱を遮熱断熱する性能に優れ且つ、コストが安い高温炉用断熱材を製造する製造方法と、該製造方法によって製造された高温炉用断熱材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために下記手順にて熱源域から外部への放熱を遮熱断熱する性能に優れ、且つ、コストが安い高温炉用断熱材を製造する製造方法と該製造方法で製造した高温炉用断熱材を提供する。
1.遠心分離機を備えた容器に、水のみを通す小さい貫通穴(以下「水抜き用開口部」という)を多数設けている円筒形又は略円筒状形に形成された枠板(以下「抄造枠」という)を載置する。
2.該抄造枠に抄造枠の上部の開口部を覆う蓋を取り付ける。
3.抄造枠の内側に、カーボン繊維とカーボン粉末とフェノール樹脂、又はカーボン繊維とフェノール樹脂を水中で分散混合した水を含んだ混合物、あるいは該混合物に定着剤を加えてカーボン繊維にフェノール樹脂を定着させた混合物を抄造枠内に入れる。
4.遠心分離機を回転させる。
5.混合物を遠心力で抄造枠に押し付け、混合物内の水のみを抄造枠の水抜き用開口部から外に絞り出して、混合物内の水分の約50%を放出し、カーボン繊維の一本一本を円周方向に配向して、円筒形又は略円筒形状の層状混合物(以下「スラリー」という)を形成する。
6.上記スラリーに熱風を吹き込み、スラリーに含まれた残存の水分を5%以下に除去する。水分を5%以下含んだ混合物が乾燥物である。
7.乾燥物を不活性ガス中の炉に入れ、段階的に温度を上げ、150℃〜200℃で乾燥物内の残存水分を除去し、1500℃以上で焼成し、フェノール樹脂をカーボン及び黒鉛化して、高温炉中で用いることができる高温炉用断熱材を生成する。
以上が高温炉中で用いることができる高温炉用断熱材を製造する方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の高温炉用断熱材を製造する方法により製造した高温炉用断熱材は、フェノール樹脂を定着したカーボン繊維を含む混合物が遠心分離機の回転による遠心力で、円筒形あるいは略円筒形状の抄造枠に押し付けられ、この混合物に含まれる水のみを水抜き用開口部から外に絞り出され、カーボン繊維が厚み方向でなく、円周方向に配向される。遠心分離機の回転で約50%の水が外部に放出されるので、加熱による水分除去よりもコストが掛からない。カーボン繊維が厚み方向でなく、円周方向に配向されているので、厚み方向に対してはカーボン繊維が点でしか接触せず、このため、内側(熱源域)からの熱が外側に伝達されにくい。内側から外側への熱の伝導が遅い。更に、断熱材の各層の間に空気があるので、熱が伝導されにくく遮熱断熱効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例の断面図である。
【図2】本発明の第一の実施例の混合物が、遠心力によって抄造枠に押し付けられた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の第一の実施の形態は、図1で見るように、遠心分離機2を備えた容器1に、円筒形あるいは略円筒形状の水抜き用開口部6を設けた抄造枠4を載置し、抄造枠4の上面開口部に抄造枠を覆う蓋5を取り付け、抄造枠4内に、カーボン繊維とカーボン粉末とフェノール樹脂を水中で分散混合した混合物、又はカーボン繊維とフェノール樹脂を水中で分散混合した混合物、あるいはこれらの混合物に定着剤を加えてカーボン繊維にフェノール樹脂を定着させた混合物を入れ、遠心分離機2を回転させて該混合物を抄造枠4に押し付け、混合物内の水のみを抄造枠の水抜き開口部6から外部へ絞り出し、混合物内に含まれた水分の約50%を除去し、残った約50%の水分を含んだ円筒形あるいは略円筒形状の層状混合物、即ちスラリー7を取り出し、該スラリーに熱風を吹き込み、スラリーに含まれている水分を除去し、残存水分を5%以下にする。水分が5%以下の混合物を乾燥物と呼び、該乾燥物を不活性ガス中の炉に入れ、温度を段階的に上げて、150℃〜200℃で乾燥物に含まれた残存水分を除去し、1500℃以上で焼成し、この焼成の過程でフェノール樹脂をカーボン及び黒鉛化して高温炉用断熱材を製造する。
スラリーに熱風を吹き込んで水分を除去する代りに、他の加熱手段、例えば加熱炉やコンロなどで加熱して水分を除去することもできる。
以上が高温炉中で用いることができる高温炉用断熱材の製造方法である。
抄造枠を覆う蓋5は遠心分離機が回転したとき、混合物が上部から放出されるのを防ぐためのものである。
遠心分離機の回転数と混合物の水溶融濃度およびカーボン繊維とカーボン粉末とフェノール樹脂の配合比により、生成される高温炉用断熱材の密度を制御することができる。
遠心分離機の回転数としては1分間に300回転から2000回転の回転数で、高速度回転ほど、高温炉用断熱材の密度を高くすることができる。
カーボン繊維とカーボン粉末は断熱材を構成するもので、フェノール樹脂はカーボン繊維を接合させるバインダーで、フェノール樹脂以外に例えばフラン樹脂、ポリイミド樹脂等を使用することができる。
抄造枠4に開けられた水抜き用開口部は混合物に含まれる水のみを外部に絞り出して放出するためのもので、混合物を構成するカーボン繊維とカーボン粉末は水抜き用開口部から外部に放出されない。抄造枠4には水のみが通り抜けることができる小さい穴(水抜き用開口部6)が多数開けられている。遠心分離機2を回転させると、その遠心力で水を含んだ混合物(フェノール樹脂を定着されたカーボン繊維、又はカーボン繊維とカーボン粉末)を抄造枠4に押し付け、混合物内の水のみを水抜き用開口部6から外に絞り出して、約50%の水分を放出し、残り約50%の水を含んだ混合物が抄造枠4に層を成して形成される。このとき、カーボン繊維の一本一本が円周方向に配向され、内側から外側への厚み方向には全くなくなる。
本発明の高温炉用断熱材の製造方法の特徴は、遠心分離機を使用することと、水抜き用開口部を持つ抄造枠を使用することである。遠心分離機の回転によって、カーボン繊維を含む混合物を抄造枠に押し付け、カーボン繊維の一本一本を円周方向に配向し、厚み方向、即ち内側から外側に向かう方向に配向しないことで、これによって熱源域である内側から外側への熱伝導を押さえ、遮熱断熱効果を高めている。更に、遠心分離機を回転させ、その遠心力で水を含んだ混合物を抄造枠に押し付けたとき、抄造枠にあけられた多数の水抜き用開口部から混合物内の水の約50%が外部に絞り出され排出されることである。従来の方法では、カーボン繊維は円周方向だけでなく、厚み方向にも配向されていたので、熱がカーボン繊維を伝わって内側から外側に早く伝導され、遮熱断熱効果が低かった。更に、混合物に含まれる水を除去するのに、混合物を加熱して除去していたので、加熱コストも高くついた。本発明の方法では、混合物に含まれる水分の約50%が遠心分離機の回転で外部に絞り出されて排出されるので、コストも時間も節約される。
実験で使用したカーボン繊維は5〜30μm、長さが1〜30mmのもので、カーボン粉末は5〜100μmくらいのもので、フェノール樹脂は5〜30μmの粉末を用いた。
【符号の説明】
【0009】
1.容器
2.遠心分離機
3.モーター
4.抄造枠
5.蓋
6.水抜き用開口部
7.スラリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離機を備えている容器内に、貫通穴(以下「水抜き用開口部」という)を設けた、円筒形又は略円筒形状に形成された枠板(以下「抄造枠」という)を載置し、該抄造枠に抄造枠の上部の開口部を覆う蓋を取り付け、抄造枠の内側に、カーボン繊維とカーボン粉末とバインダー樹脂粉末、例えばフェノール樹脂粉末、又はカーボン繊維とバインダー樹脂粉末、例えばフェノール樹脂粉末を水中で分散混合した水を含んだ混合物、あるいは該混合物に定着剤を加えてカーボン繊維にバインダー樹脂、例えばフェノール樹脂を定着させた混合物を入れ、遠心分離機を回転させて混合物を抄造枠に押し付け、混合物内に含まれる水分のほぼ半分の水分を水抜き用開口部から外部に絞り出し、抄造枠内に適当な厚みの円筒形又は略円筒形状の層状混合物(以下「スラリー」という)を形成し、該スラリーに含まれる残存水分の大半を熱風を吹き込むか、あるいは他の加熱手段にて加熱して除去して乾燥物となし、該乾燥物を高温の不活性ガスの炉中で段階的に焼成して高温炉用断熱材を製造することを特徴とする高温炉用断熱材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された高温炉用断熱材の製造方法で製造された高温炉用断熱材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−91988(P2012−91988A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255343(P2010−255343)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(598159908)株式会社ワメンテクノ (5)
【Fターム(参考)】