説明

高硬度材料切削用エンドミル

【課題】高硬度金型材の荒切削において、エンドミルの切れ刃の耐欠損性と耐摩耗性が優れ、しかも、金型の隅部形状部分の加工や工具の突き出し量の長くなる加工の場合に、振動を抑制でき、高能率の加工においても、長寿命で安定した加工を実現できるエンドミルを提供する。
【解決手段】複数の外周刃と底刃を有し、外周刃は主外周刃と副外周刃、底刃は主底刃と副底刃を有し、主底刃は、工具半径に対し1.5倍以上5倍以下の長さの曲率半径を持つ円弧刃と、円弧刃において外周刃と接続される端部と対向した位置にある端部から工具軸中心に向かって延びる中低勾配刃とで構成され、副底刃及び副外周刃は、それぞれ主底刃及び主外周刃から工具直径に対し0.0025倍以上0.01倍以下の範囲で減寸した位置にあるエンドミルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高硬度材料切削用エンドミルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、金型を作成するための納期を短縮することへの要求が高まっているため、金型を作成するために高能率な加工を行うことが望まれている。金型の高能率荒加工にはボールエンドミルやラジアスエンドミルが幅広く使用されている。しかし、ボールエンドミルは中心部付近での切削が多くなるため、切削速度が上がらず、切削性が悪くなる。そのほか、中心部付近のチップポケットが小さく、切りくずの排出が悪いという欠点もある。従って、最近では金型の高能率荒加工にはラジアスエンドミルの方が多く使われている。ラジアスエンドミルであれば、外周側での切削が多くなるため、チップポケットが広く、切りくずの排出性が良好で切削速度の高い場所での切削となり、ボールエンドミルと比べ、高能率な荒加工が可能である。
【0003】
しかし、最近では、新成形材料の使用や成形能率の向上への要求に伴い、金型の耐久性に対する要求が高くなっている。従って、通常の金型材料よりはるかに高い硬度を有する高硬度金型材料の採用が広がっている。このような高硬度金型材料の高能率荒加工においては、従来のラジアスエンドミルを用いた場合でも、欠損が生じやすく、摩耗の進行も早いという問題点が存在している。また、特に金型の隅部を加工する際には切削時の振動が発生しやすくなるため、まだ十分な寿命と安定性を実現できていない。
【0004】
このような高硬度材の切削におけるエンドミルの摩耗の進行の抑制、耐欠損性の向上及び切削加工時の振動の抑制を図ることにより、高能率かつ安定した加工を実現するために、ラジアスエンドミルを含め幾つかの提案がなされている。
【0005】
特許文献1では、金属除去率を向上させ工具摩耗を抑制し、工具の寿命を長くするように、工具の端面から見ると少なくともそれらの長さの一部に沿って湾曲している、底刃の切削用部分が円弧形状にしている正面フライスが記載されている。
【0006】
特許文献2では、軸心の回りに回転する工具本体の先端部に略楕円弧状の切刃が形成されており、前記楕円の焦点が軸心に対して略対称位置にあり、前記切刃の少なくとも一部が超高硬度材で構成されていることを特徴とする楕円弧状エンドミルが記載されている。
【0007】
特許文献3では、エンドミルは切れ刃が外周刃、円弧状底刃及びそれらをつながる円弧状コーナーR刃から構成された高送り加工及び高能率加工を目的とした正面フライスエンドミルが記載されている。
【0008】
特許文献4では、複数のコーナ刃を有する超硬合金製ソリッドエンドミルにおいて、該コーナ刃は、該エンドミルの回転軌跡をなす主コーナ刃1と該回転軌跡より減寸する副コーナ刃2とからなり、該主コーナ刃は円弧状、該副コーナ刃は、該主コーナ刃と同一又は小さな円弧状で、且つ、該回転軌跡を成す刃径より0.5%〜10%減寸したことを特徴とする高送り切削用エンドミルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2009−532222号公報
【特許文献2】特開2003−326414号公報
【特許文献3】米国特許7125210号
【特許文献4】特開2005−52924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、金型加工においては、高能率な切削への要求が一段と高まっているが、高硬度金型材料の高能率荒加工の際に、エンドミルの寿命が非常に短くなるという問題が存在している。その原因としては、高硬度材の高能率荒加工において、エンドミルは切削熱が高くなりやすく、摩耗進行が早くなることに加え、刃先への衝撃による欠損も発生しやすくなるため、寿命が短くなることが挙げられる。さらに、金型の加工において必須となる隅部の加工や工具突き出し量の長い加工を行う際には、エンドミルは振動により、刃先の欠損が発生しやすくなる。従って、高硬度材の荒加工においては、エンドミルの寿命が非常に短くなることから、高能率かつ長寿命での切削を実現することが難しいという問題が存在する。
【0011】
特許文献1に記載されたエンドミルは刃先の形状設計により、エンドミルの耐欠損性が向上されたものの、本発明が目的の一つとしている高硬度材金型の隅部の切削や工具の突き出しの長い加工の場合においては、振動を十分に抑制できないため、エンドミルの欠損が発生しやすい。
【0012】
特許文献2に記載されたエンドミルは楕円の底刃形状設計により、刃先の強度が強くなり、耐欠損性が向上できるものの、被削材と接触する切れ刃が長いため、切削抵抗が大きくなり、欠損する危険性がある。従って、高硬度材の切削においては、寿命が短くなってしまうという問題があった。
【0013】
特許文献3に記載されたエンドミルは円弧状の底刃により、高能率の荒加工においては刃先の耐摩耗性を確保できるものの、特許文献1と同じように、金型の隅部の加工や突き出しの長い加工においては、振動を十分に抑制できず、欠損が発生するという問題点が存在している。
【0014】
特許文献4に記載されたエンドミルは、副コーナ刃が減寸されているため、金型の隅部の加工で同時接触刃が減少し、振動が抑制される効果がある。しかし、ラジアスエンドミルは底刃と外周刃が単一の円弧状のコーナR刃で接するため、切りくずが厚くなり、特に高硬度材の切削では切削熱が高くなるため、摩耗の進行が早くなり、寿命が短くなるという問題があった。
【0015】
上記の課題を踏まえ本発明が解決しようとする課題は、高硬度金型材の荒切削において、エンドミルの切れ刃の耐欠損性と耐摩耗性が優れ、しかも、金型の隅部形状部分の加工や工具の突き出し量の長くなる加工の場合に、振動を抑制でき、高能率の加工においても、従来のエンドミルが不可能であった長寿命で安定した加工を実現できるエンドミルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上記の目的を達成するために、エンドミルの底刃形状を変化させ、切削試験を繰り返して評価し、最適な切れ刃形状について検討を行った。その結果、高硬度材の切削における上記の課題を解決するためには、底刃の形状を従来のエンドミルとは異なる新規なものとすることが重要であることが分かった。
【0017】
すなわち本発明は、工具軸に対し垂直な方向から見たときに、曲線状である円弧刃と、円弧刃に連続する直線状もしくは曲線状である中低勾配刃とから構成された底刃と、外周刃を有するエンドミルであって、工具軸に対し平行となる方向から見たときに、円弧刃及び円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁は、曲率半径を有する曲線状であり、円弧刃の曲率半径は、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径より小さいことを特徴とするエンドミルである。
【0018】
本発明の超硬合金製エンドミルは工具軸に対し平行となる方向から見たときの、円弧刃の曲率半径は工具半径より大きいことが望ましい。
【0019】
本発明の超硬合金製エンドミルは、工具軸に対し平行となる方向から見たときの、円弧刃の曲率半径は、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径の0.3倍以上0.7倍以下の範囲であることが望ましい。
【0020】
本発明の超硬合金製エンドミルは、工具軸に対し平行となる方向から見たときの、円弧刃の曲率半径は、工具半径の1.1倍以上1.5倍以下の範囲であることが望ましい。
【0021】
本発明の超硬合金製エンドミルは、工具軸に対し平行となる方向から見たときの、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径は、工具半径の2倍以上4倍以下の範囲であることが望ましい。
【0022】
本発明の超硬合金製エンドミルは、底刃と外周刃は略円弧状のR刃を介して接続されていることが望ましい。
【0023】
本発明の超硬合金製エンドミルは、R刃の曲率半径は工具半径の0.02倍以上0.2倍以下の範囲であることが望ましい。
【0024】
本発明の超硬合金製エンドミルは、底刃と外周刃は面取り刃を介して接続されていることが望ましい。
【0025】
本発明の超硬合金製エンドミルは、面取り刃の幅は工具半径の0.02倍以上0.2倍以下の範囲であることが望ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明のエンドミルは、工具軸に対し平行となる方向から見たときに、円弧刃及び円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁は、曲率半径を有する曲線状であり、円弧刃の曲率半径は、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径より小さいため、切り屑の排出性が良好となる。さらに、円弧刃の逃げ面幅は工具軸中心に近づくと幅が狭くなり、外周側の逃げ面の幅は徐々に広くなる。そのため、外周側の刃先の剛性が向上し、切削速度を高く設定できるため、高い送り速度での加工ができ、切削能率の向上が可能となる。
【0027】
本発明において、工具軸に対し平行となる方向から見たときの、円弧刃の曲率半径は工具半径より大きいことが望ましい。これにより、外周側の逃げ面の幅は徐々に広くなり、さらに工具の最外周すなわち切削負荷が最も大きくなる円弧刃と外周刃のつなぎ部において、外周側の逃げ面の幅を最も広くすることが可能となる。そのため、円弧刃と外周刃のつなぎ部における剛性がより向上し、高能率な切削加工を行った際にも、欠損せずに安定した切削加工を行うことが可能となる。
【0028】
本発明において、円弧刃の曲率半径は、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径の0.3倍以上0.7倍以下の範囲であることが望ましい。これによりさらに切り屑の排出性が良好となり、硬さ60HRC以上の高硬度材の隅部形状を含む金型の荒加工においても、従来のエンドミルと比較して1.5倍以上の高能率加工が実現できる。
【0029】
さらに、円弧刃の曲率半径は、工具半径の1.1倍以上1.5倍以下の範囲であることが望ましい。これにより、硬さ60HRC以上の高硬度材の隅部形状を含む金型の高能率荒加工において、従来のエンドミルと比較して、欠損せずに1.5倍以上の寿命が実現できる。
【0030】
本発明において、工具軸に対し平行となる方向から見たときの、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径は、工具半径の2倍以上4倍以下の範囲であることが望ましい。これにより、外周側の逃げ面の幅が厚くなり剛性が向上するので、より高能率な加工条件で加工した場合においても、外周側の刃先が欠損せずに、安定した加工が可能となる。
【0031】
本発明において、底刃と外周刃は略円弧状のR刃を介して接続されていることが望ましく、さらにR刃の曲率半径は工具半径の0.02倍以上0.2倍以下の範囲であることが良い。または、底刃と外周刃は面取り刃を介して接続されていることが望ましく、さらに、面取り刃の幅は工具半径の0.02倍以上0.2倍以下の範囲であることが望ましい。底刃の外周刃側は最も切削速度が速く、欠損などが生じやすいが、底刃と外周刃をR刃や面取り刃を介して接続させることにより、欠損の発生を抑制し、安定した加工が可能となる。
【0032】
従って、本発明は複雑な金型形状の加工を高能率で加工することができ、さらに、高硬度の材料の加工においても、長寿命かつ安定した加工が行えるエンドミルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施例であるエンドミルの正面図である。
【図2】図1に示すエンドミルの工具軸に対し垂直な方向から見たときの先端付近の拡大図である。
【図3】図1に示すエンドミルの工具軸に対し平行となる方向から見たときの底刃の拡大図である。
【図4】図3に示すエンドミルにおける底刃の拡大図である。
【図5】円弧刃の曲率半径と、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径が同じ場合の従来のエンドミルを示す図である。
【図6】金型の隅部を加工する際における、エンドミルの先端付近の拡大図である。
【図7】底刃と外周刃が略円弧状のR刃を介して接続されたエンドミルを示す図である。
【図8】底刃と外周刃が略円弧状の面取り刃を介して接続されたエンドミルを示す図である。
【図9】相対的に外側に設けられた主外周刃と相対的に内側に設けられた副外周刃を設けた本発明のエンドミルの図である。
【図10】本発明の一実施例であるエンドミルの正面図である。
【図11】図10に示すエンドミルの工具軸に対し垂直方向から見たときの外周刃の回転軌跡を示すエンドミルの先端付近の拡大図である。
【図12】エンドミルの送り方向が直線及び直線に近い部分を加工する際における、主底刃の切削量を示すエンドミルの先端付近の拡大図である。
【図13】エンドミルの送り方向が直線及び直線に近い部分を加工する際における、副底刃の切削量を示すエンドミルの先端付近の拡大図である。
【図14】金型の隅部を加工する際における、主底刃と副底刃の切削量の違いを示すエンドミルの先端付近の拡大図である。
【図15】金型の壁面を切削する際における、主底刃の切削量を示すエンドミルの先端付近の拡大図である。
【図16】金型の壁面を切削する際における、副底刃の切削量を示すエンドミルの先端付近の拡大図である。
【図17】図10に示す本発明のエンドミルを用いて金型の隅部を加工する際における主外周刃と副外周刃の被削材との接触の違いを示す、底刃側から見たエンドミルの拡大図である。
【図18】従来のラジアスエンドミルによる切削を行った際に発生する切り屑を示す略図である。
【図19】本発明のエンドミルによる切削を行った際に発生する切り屑を示す略図である。
【図20】主底刃の円弧刃の曲率半径が工具半径の1.5倍未満となる主底刃を有するエンドミルを用いて切削を行った際に発生する切り屑を示す略図である。
【図21】主底刃の円弧刃の曲率半径が工具半径の5倍を超えた主底刃を有するエンドミルを用いて切削を行った際に発生する切り屑を示す略図である。
【図22】円弧の中心距離を工具直径Dの0.05倍未満としたエンドミルを用いて切削を行った際に発生する切り屑を示す略図である。
【図23】円弧の中心距離を工具直径Dの0.25倍を超えた値としたエンドミルを用いて切削を行った際に発生する切り屑を示す略図である。
【図24】主底刃の円弧刃の曲率半径と副底刃の円弧刃の曲率半径が同じである本発明のエンドミルを示す図である。
【図25】底刃及び外周刃を、略円弧状のR刃を介して接続させた本発明のエンドミルにおいて、R刃付近を拡大した図である。
【図26】底刃及び外周刃を、面取り刃を介して接続させた本発明のエンドミルにおいて、面取り刃付近を拡大した図である。
【図27】主外周刃を2枚、副外周刃を4枚とした本発明のエンドミルの左側面図である。
【図28】工具軸に対し垂直となる方向で測定したときの円弧刃の長さを示した、本発明のエンドミルの回転軌跡の拡大図である。
【図29】工具軸に対し垂直となる方向で測定したときの円弧刃の長さを示した、本発明の別のエンドミルにおける回転軌跡の拡大図である。
【図30】本発明のエンドミルにおける別の実施例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の代表的な形態として、本発明のエンドミルを図1乃至図9で説明する。図1は本発明の一実施例であるエンドミルの正面図である。図1に示すように、本発明のエンドミル11は外周刃1、先端側の端面に設けられた底刃2によって構成されている。本発明のエンドミル11は通常、等高線加工で用い、主に底刃2を用いて切削を行う。
【0035】
図2は図1に示すエンドミルの工具軸に対し垂直な方向から見たときの先端付近の拡大図である。本発明における切れ刃は主に曲線状である円弧刃32と、円弧刃32に連続する中低勾配刃33とから構成された底刃2と外周刃1で構成されている。本発明のエンドミルは金型等の等高線加工で用いるため、底刃2を用いて切削することとなる。ここで、底刃2は円弧刃32と中低勾配刃33で構成されているが、切削で主に用いるのは円弧刃32となる。
【0036】
図3は図1に示すエンドミルの工具軸に対し平行となる方向から見たときの底刃の拡大図である。本発明のエンドミル11の底刃は円弧刃32及び中低勾配刃33で構成されている。円弧刃32は刃溝と円弧刃の逃げ面35とで形成されており、前記円弧刃32の回転後方側にある刃溝と円弧刃の逃げ面35とは、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁34を介して接続された構造となっている。また、円弧刃32及び中低勾配刃33は円弧刃と中低勾配刃の境界部42を介して接続されており、同様に円弧刃の逃げ面35及び中低勾配刃の逃げ面は円弧刃の逃げ面と中低勾配刃の逃げ面との境界線43を介して接続されている。
【0037】
図4は図3に示すエンドミルにおける底刃の拡大図である。上述したとおり本発明のエンドミルは、円弧刃32及び中低勾配刃33は円弧刃と中低勾配刃の境界部42を介して接続されており、円弧刃の逃げ面35及び中低勾配刃の逃げ面44が円弧刃の逃げ面と中低勾配刃の逃げ面との境界線43を介して接続されている。すなわち、円弧刃32は円弧刃と中低勾配刃の境界部42から外周刃との接続部までにかけて設けられており、中低勾配刃33は円弧刃と中低勾配刃の境界部42から工具軸Oまでにかけて設けられている。
【0038】
また、円弧刃32の曲率半径である円弧刃の曲率半径Ra(円弧の中心38)は、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁34の曲率半径である回転後方側の縁の曲率半径Rb(円弧の中心39)より小さいため、円弧刃の刃先稜線は外周側を向くように設けられ、切り屑は外周側に排出される。よって、エンドミルのチップポケットに滞留することはなく、安定した加工が可能となる。
【0039】
図4に示すように、円弧刃の曲率半径Raは、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径Rbより小さいため、円弧刃の逃げ面の幅xは外周側ほど広くなる。ここで円弧刃の逃げ面の幅xは円弧刃の逃げ面35の幅を回転方向で測定したときの長さである。円弧刃の逃げ面の幅xが広くなると、刃先の剛性が向上し欠損しにくくなる。エンドミルでの切削中は常に同一の回転数で切削を行うのが一般的であり、回転数が同じであれば、エンドミル中心側は切削速度が遅く、外周側は切削速度が速くなる。本発明の構成により、切削速度が速くなり、欠損が生じやすい外周側では円弧刃の逃げ面の幅xが広い設計となり、切削速度が遅く、欠損が生じにくい中心側では、刃先剛性が必要でないため円弧刃の逃げ面の幅xを狭く設計し、チップポケットを大きくすることで、最適な条件設定が可能となり、安定した高能率な切削条件で加工することができる。ここで、円弧刃の曲率半径で形成される円弧36および、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径で形成される円弧37は底刃中心側の終端付近に設けられた交点40で交わることが望ましい。
【0040】
ここで、交点40は、底刃と円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁との交わる点であり、それぞれの稜線でなす角は非常に鋭角となるため、刃先剛性が劣る。よって、通常、使用する等高線加工において、交点40が常に被削材と接触し切削すれば、剛性不足によりチッピングが生じる可能性がある。よって、交点40は通常、使用する等高線加工では被削材と接触しない中低勾配刃33に設けるのが望ましい。また、工具軸に対し平行となる方向から見たときには、交点40は工具軸Oから工具直径Dの0.05倍以上0.25倍以下の距離となる位置に設けられることが望ましく、工具軸Oから工具直径Dの0.10倍以上0.25倍以下の距離となる位置に設けられることがより望ましい。
【0041】
ここで、円弧刃の曲率半径Raは、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径Rbの0.3倍以上0.7倍以下の範囲であることが望ましい。円弧刃の曲率半径Raが、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径Rbの0.3倍より小さければ、最外周の位置における円弧刃の逃げ面の幅が広くならず、剛性不足で欠損が生じやすくなる傾向が確認される。円弧刃の曲率半径Raが、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径Rbの0.7倍より大きければ、円弧刃から排出される切り屑が外周方向へ排出されにくくなり、切り屑詰まりによる欠損が生じやすくなる傾向が確認される。
【0042】
なお、本明細書においては、図2のように本発明のエンドミルをエンドミルの工具軸に対し垂直な方向から見たときに、中低勾配刃33と工具軸Oとが一つの直線で結ばれるような例を示しているが、中低勾配刃33と工具軸Oとが曲線で結ばれた場合にも、本発明と同様の効果を奏する。また、中低勾配刃33が交点40を介して複数の直線もしくは緩やかな曲線で構成された場合、例えば円弧刃と中低勾配刃の境界部42から交点40までは直線状であり、交点40から工具軸Oまでは曲線状で中低勾配刃33が形成された場合においても同様である。
【0043】
図5は円弧刃の曲率半径と、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径が同じ場合の従来のエンドミルを示す図である。図5に示す従来のエンドミル41は、円弧刃の曲率半径Raと、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径Rbが同じ値のものであり、さらに円弧刃の逃げ面35と、円弧刃32の回転後方側に設けられた刃溝との間に円弧刃の逃げ面35とは異なる平面を設けたものである。図5(a)は前記平面を比較的狭く設けた例である。図5(b)は前記平面を比較的広く設けた例である。図5に示すように、円弧刃の曲率半径Raと、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径Rbが同じ場合は円弧刃の逃げ面幅が中心側から外周側まで均一となり、刃先の剛性も均一となる。上記で述べたようにエンドミルの中心側は切削速度が遅く、外周側は切削速度が速くなるが、円弧刃の剛性が中心側と外周側で均一であれば、外周側の刃先剛性が不足するため欠損などが生じやすくなり、高能率に加工を行うことが困難となる。
【0044】
また、図5に示すように、エンドミルにおいて、円弧刃の逃げ面35と、円弧刃32の回転後方側に設けられた刃溝との間に円弧刃の逃げ面35とは異なる平面を設けた場合、チップポケットが狭くなるため、高能率な切削加工を行った場合に切屑詰まりが発生してしまう。本発明は図3及び図4に示す通り、円弧刃の逃げ面35と刃溝が円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁34を介して連続した構成すなわち隣り合った二つの刃溝は一つの平面(円弧刃の逃げ面35)により接続された構成となっているため、チップポケットが広くなり、切削加工を行った場合においても安定して切屑を排出することが出来る。そのため、従来のエンドミルよりも高能率で切削加工を行うことが可能となる。
【0045】
図4に示す工具軸に対し平行となる方向から見たときの底刃の拡大図において、円弧刃の曲率半径Raは工具半径Rより小さいと、エンドミルの最外周となる位置における円弧刃の逃げ面の幅xが広くならず、剛性不足で欠損が生じやすくなるため、円弧刃の曲率半径Raは工具半径Rより大きいことが望ましい。
【0046】
さらに、円弧刃の曲率半径Raは、工具半径Rの1.1倍以上1.5倍以下の範囲であることが望ましい。これにより、硬さ60HRC以上の高硬度材の隅部形状を含む金型の高能率荒加工において、従来のエンドミルと比較して、欠損せずに1.5倍以上の切削寿命が実現できる。円弧刃の曲率半径Raが工具半径Rの1.1倍以上1.5倍以下の範囲から外れた場合には、切削寿命が若干低下する傾向が確認される。
【0047】
図6は金型の隅部を加工する際における、エンドミルの先端付近の拡大図である。図7は底刃と外周刃が略円弧状のR刃を介して接続されたエンドミルを示す図である。図8は底刃と外周刃が略円弧状の面取り刃を介して接続されたエンドミルを示す図である。本発明のエンドミルは等高線加工で主に底刃2を使用して切削を行うが、金型等の隅部を加工する際は、円弧刃32のすべてを切削に使用することとなる。その際、底刃2と外周刃1のつなぎ部がカドとなっていると欠損が生じる可能性があるため、底刃2と外周刃1は略円弧状のR刃8又は、面取り刃9を介して接続されることが望ましい。さらには、R刃8の曲率半径、又は、面取り刃9を工具軸Oに対し垂直な方向で測定したときの幅は工具半径の0.02倍以上0.2倍以下であることが望ましい。工具半径の0.02倍より小さければ、欠け防止の効果は小さく、欠損が生じやすくなる傾向が確認される。工具半径の0.2倍より大きくなれば、被削材との接触距離が長くなり、切削抵抗増大により欠損や折損等が生じやすくなる傾向が確認される。
【0048】
円弧刃及び円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁を前記の通り新規な形状とした本発明は、複雑な金型形状の加工を高能率で加工することができ、さらに、高硬度の材料の加工においても、長寿命かつ安定した加工が行えるエンドミルを提供することができる。
【0049】
また、このような円弧刃及び円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の構造を持ったエンドミルは、工具製造時において底刃の刃先稜線から法線方向となるように当てた研削砥石を、工具軸を回転させながら、工具中心から外周側へ動かして形成することにより製造が可能である。
【0050】
また本発明においては、エンドミルの底刃の形状、底刃と外周刃の配置及び底刃と外周刃を繋ぐ部分の形状を変化させたとしても、本発明の効果を発揮することが可能である。図9は相対的に外側に設けられた主外周刃と相対的に内側に設けられた副外周刃を設けた本発明のエンドミルの図である。図9に示すように、主外周刃3よりも外周刃の減寸量14の分だけ内側となる位置に副外周刃4を設けている。これにより、振動の抑制や切削抵抗の低減が可能となる。さらに円弧刃と中低勾配刃からなる底刃及び外周刃の構成を、相対的に外側に設けられた主底刃及び主外周刃、並びに相対的に内側に設けられた副底刃及び副外周刃とすることにより、工具の突出し量が長くなる軸方向に深い位置における切削加工においても、振動の抑制や切削抵抗の低減が可能となる。そのため、特にポケット加工を行う際において、深いポケットの底面側に設けられたポケットの壁面や、ポケットの隅部にて頻発する欠損の発生を抑制することができる。以下、本発明の別の実施例について説明する。
【0051】
本発明の別の実施例として、本発明の超硬エンドミルを図10乃至図30で説明する。図10は本発明の一実施例である超硬エンドミルの正面図である。図9に示すように、本発明のエンドミル11は外周刃1、先端側の端面に設けられた底刃2によって構成されている。本発明のエンドミルは等高線加工で用い、主に底刃2を用いて切削を行う。
【0052】
図11は図10に示すエンドミルの工具軸に対し垂直方向から見たときの外周刃の回転軌跡を示すエンドミルの先端付近の拡大図である。本発明の別の実施例における切れ刃は主に主外周刃3、工具軸Oから延びる長さが相対的に長い主底刃5を構成する主底刃の円弧刃19及び主底刃の中低勾配刃20、並びに副外周刃4、工具軸Oから延びる長さが相対的に短い副底刃6を構成する副底刃の円弧刃21及び副底刃の中低勾配刃22から構成されている。また、本発明の別の実施例における主底刃の中低勾配刃20及び副底刃の中低勾配刃22は、それぞれの円弧刃の端部から工具軸Oに向かって延びた形状となっている。また図11において、相対的に外周側にある主外周刃3、主底刃の円弧刃19及び主底刃の中低勾配刃20の回転軌跡は実線で示し、相対的に内周側にある副外周刃4、副底刃の円弧刃21及び副底刃の中低勾配刃22の回転軌跡は点線で示す。
【0053】
図11に示すように、本発明の別の実施例における副外周刃4、副底刃6を構成する副底刃の円弧刃21及び副底刃の中低勾配刃22はそれぞれ主外周刃3、主底刃5を構成する主底刃の円弧刃19及び主底刃の中低勾配刃20に対し、外周刃の減寸量14、底刃の減寸量15の間隔だけ内周側に減寸した位置に設けられている。本発明において、外周刃の減寸量14及び底刃の減寸量15は工具軸Oに対し垂直方向に工具直径Dの0.0025倍以上0.01倍以下の範囲とするのが望ましい。
【0054】
すなわち、本発明において、副底刃6及び副外周刃4は、それぞれ主底刃5及び主外周刃3から工具軸Oに対し垂直方向に工具直径Dの0.0025倍以上0.01倍以下の範囲で減寸した位置に形成されているのが望ましい。この場合は、工具の防振効果が最も発揮できる。なお、本発明のエンドミルにおける底刃の減寸量15は、工具軸Oに対し垂直方向に測定したときにおける主底刃5と副底刃6との距離である。そのため、底刃上の測定する位置によって底刃の減寸量15が異なる場合がある。本発明においては、底刃の減寸量15のうち最大値になる減寸量の最大値と、底刃の減寸量15のうち最小値になる減寸量の最小値の両方が、工具直径Dの0.0025倍以上0.01倍以下の範囲に含まれるように設計するのが望ましい。
【0055】
図12はエンドミルの送り方向が直線及び直線に近い部分を加工する際における、主底刃の切削量を示すエンドミルの先端付近の拡大図である。図13はエンドミルの送り方向が直線及び直線に近い部分を加工する際における、副底刃の切削量を示すエンドミルの先端付近の拡大図である。図12において、軸方向切り込み量ap、直線及び直線に近い部分の加工の際における一刃送り量f1の切削条件で加工を行った場合の主底刃5の切削量を斜線で示す。また図13においても同様に、軸方向切り込み量ap、直線及び直線に近い部分の加工の際における一刃送り量f1の切削条件で加工を行った場合の副底刃6の切削量を斜線で示す。なお、図12を始めとしたこれらの切削量を示す図においては、軸方向切り込み量ap、直線及び直線に近い部分の加工の際における一刃送り量f1、主底刃の円弧刃を構成する円弧の中心17の位置や大きさなどを模式図として簡易的に表している。
【0056】
図12及び図13に示すように、本発明の別の実施例のエンドミルによる切削加工において、エンドミルの工具軸Oの位置に本発明のエンドミルの工具軸があった場合、本発明のエンドミルが直線及び直線に近い部分の加工の際における一刃送り量f1だけ移動すると、本発明のエンドミルの工具軸の位置は一刃送り量だけ移動したときのエンドミルの工具軸O’の位置となる。図12及び図13に示す通り、前記一刃送り量f1だけ移動したときの主底刃5の切削量は、副底刃6の切削量よりも多くなることがわかる。このことから、エンドミルの送り方向が直線及び直線に近い方向となる部分の加工においては、主底刃5と副底刃6の切削量が違うことにより、共振等の同周期波による振動を抑制できる効果がある。
【0057】
図14は金型の隅部を加工する際における、主底刃と副底刃の切削量の違いを示すエンドミルの先端付近の拡大図である。金型の隅部を切削する際には、工作機械及びCAMの機能によって、エンドミルが減速しながら金型の隅部に入るため、一刃送り量が小さくなる。図14に示す通り、隅部の加工の際における一刃送り量f2は、図12及び図13における直線及び直線に近い部分の加工の際における一刃送り量f1よりも小さく、なおかつ底刃の減寸量15よりも小さくなる。図14において、前記一刃送り量f2が前記一刃送り量f1よりも小さく、なおかつ底刃の減寸量15よりも小さくなった場合における主底刃5の切削量を斜線で示す。前記一刃送り量f2が底刃の減寸量15の値以下になると、主底刃5だけが被削材に接触し、副底刃6が被削材に接触しなくなるため、エンドミルの被削材との同時接触刃すなわち金型の隅部にある壁面と接触する底刃の枚数が副底刃6の枚数だけ減少する。
【0058】
したがって本発明において、副底刃6及び副外周刃4を、それぞれ主底刃5及び主外周刃3から工具軸Oに対し垂直方向に工具直径Dの0.0025倍以上0.01倍以下の範囲で減寸した位置に形成することにより、同時接触刃が減少し、複数の方向から切削抵抗がかからなくなるため、金型の加工において必須となる隅部の加工を行う際に発生しやすい振動を効果的に抑制できる。底刃の減寸量15が工具直径Dの0.0025倍未満であると、同時接触刃が減少しにくく、防振効果が非常に小さい。底刃の減寸量15が工具直径Dの0.01倍を超えると、主底刃5の切削量が非常に大きくなるため、主底刃5の早期に損傷しやすく、エンドミルの寿命も短くなる傾向にある恐れがある。
【0059】
図15は金型の壁面を切削する際における、主底刃の切削量を示すエンドミルの先端付近の拡大図である。図16は金型の壁面を切削する際における、副底刃の切削量を示すエンドミルの先端付近の拡大図である。図15において、工具移動方向aが工具軸Oの方向であり、軸方向切り込み量apの切削条件で加工を行った場合の主底刃5の切削量を斜線で示す。また、図16においても同様に、工具移動方向aが工具軸Oの方向であり、軸方向切り込み量apの切削条件で加工を行った場合の副底刃6の切削量を斜線で示す。図15及び図16に示す通り、工具移動方向aが工具軸Oの方向であり、軸方向切り込み量apの切削条件で加工を行ったときの主底刃5の切削量は、副底刃6の切削量よりも多くなることがわかる。金型の壁面を切削する際に、エンドミルの送り方向が直線及び直線に近い方向である部分の加工においては、図15及び図16に示すように主底刃5と副底刃6の切削量が違うことにより、共振等の同周期波による振動を抑制できる効果がある。
【0060】
図17は図10に示す本発明の別の実施例のエンドミルを用いて金型の隅部を加工する際における主外周刃と副外周刃の被削材との接触の違いを示す、底刃側から見たエンドミルの拡大図である。金型の隅部を切削する際には、工作機械及びCAMの機能によって、エンドミルが減速しながら隅部に入るため、一刃送り量が小さくなる。金型の隅部の切削時において、一刃送り量が外周刃の減寸量14以下になると、図17に示すように、主外周刃3だけが被削材Wに接触して、副外周刃4が被削材Wに接触しなくなるため、同時接触刃すなわち金型の隅部にある壁面と接触する外周刃の枚数が減少する。図17に示す場合では、エンドミルの外周刃が全て主外周刃3の位置に配置されていたときには被削材Wに同時に接触する同時接触刃が2枚となるが、本発明のエンドミルは副外周刃4が外周刃の減寸量14だけ内周側に配置されているので、被削材Wに同時に接触する同時接触刃は1枚となる。同時接触刃が減少すれば、複数の方向から切削抵抗がかからないので、振動を効果的に抑制できる。外周刃の減寸量14は工具直径Dの0.0025倍未満であると、同時接触刃が減少しにくく、防振効果が非常に小さい。外周刃の減寸量14が工具直径Dの0.01倍を超えると、主外周刃3の切削量が非常に大きくなるため、主外周刃3が早期に損傷しやすく、エンドミルの寿命も短くなる恐れがある。
【0061】
また、図11に示すように、本発明の主底刃5は主底刃の中低勾配刃20と、工具半径Rの1.5倍以上5倍以下となる主底刃の円弧刃の曲率半径R1を有する主底刃の円弧刃19とで構成される。同様に、本発明の副底刃6は、副底刃の円弧刃の曲率半径R2を有する副底刃の円弧刃21と、副底刃の中低勾配刃22とで構成される。前記曲率半径R1が工具半径Rに対し1.5倍以上5倍以下となる範囲であると、主底刃5の刃先の強度が確保できる。さらに切削時に発生する切り屑も薄くすることができる。また、本発明のエンドミルは底刃の減寸量15が工具直径に対し0.0025倍から0.01倍となる範囲であるため、副底刃6は曲率半径R1が小さくならず、主底刃5と同様に刃先強度が確保できる。さらに、前記曲率半径R2も前記曲率半径R1と同様に、工具半径Rに対し1.5倍以上5倍以下となる範囲であれば、副底刃6の刃先の強度が確保できるので望ましい。
【0062】
図18は従来のラジアスエンドミルによる切削を行った際に発生する切り屑を示す略図である。図18において、軸方向切り込み量ap、直線及び直線に近い部分の加工の際における一刃送り量f1の切削条件で加工を行った場合の従来のラジアスエンドミルの底刃24の切削量を斜線で示す。従来のラジアスエンドミル23は、底刃の円弧刃の曲率半径R3が工具半径Rの0.1倍〜0.5倍程度であるため、従来のラジアスエンドミルにおける底刃の円弧刃を構成する円弧の中心27もしくは主底刃の円弧刃を構成する円弧の中心17と、中低勾配刃と円弧刃との交点から軸方向切り込み量apの高さにある直線と円弧刃の交点とを結んだ直線の方向で、斜線にて示した領域の長さを測定したときの実質的な切りくずの厚み7が厚くなることにより、切削時の衝撃が大きくなり、欠損が発生しやすくなる。さらに、実質的な切りくずの厚み7が厚くなることから切削熱が高くなり、摩耗の進行も早くなる。
【0063】
図19は本発明のエンドミルによる切削を行った際に発生する切り屑を示す略図である。図19において、軸方向切り込み量ap、直線及び直線に近い部分の加工の際における一刃送り量f1の切削条件で加工を行った場合の主底刃5の切削量を斜線で示す。本発明のエンドミルの主底刃5は、主底刃の中低勾配刃と、工具半径Rの1.5倍以上5倍以下となる主底刃の円弧刃の曲率半径R1を有する主底刃の円弧刃とで構成されているため、切削時に形成される実質的な切りくずの厚み7が薄くなることにより、切削時の衝撃が軽減され、耐欠損性が向上される。さらに、実質的な切りくずの厚み7が薄くなることから切削熱も抑制でき、耐摩耗性の向上も実現できる。これらの効果により、送り速度を高くできるため、能率の向上も可能である。従って、本発明のエンドミルにより、高硬度材を高能率で切削する際に、長寿命で安定した加工が可能である。
【0064】
図20は主底刃の円弧刃の曲率半径が工具半径の1.5倍未満となる主底刃を有するエンドミルを用いて切削を行った際に発生する切り屑を示す略図である。図20において、軸方向切り込み量ap、直線及び直線に近い部分の加工の際における一刃送り量f1の切削条件で加工を行った場合の主底刃5の切削量を斜線で示す。主底刃の円弧刃の曲率半径R1が工具半径Rの1.5倍未満となる場合は、ボールエンドミルの形状に近づくため、切削時に形成される実質的な切りくずの厚み7が厚く、切削抵抗も大きくなる。さらに、主底刃5の刃先の強度が不足となるため、欠損が発生しやすくなる。
【0065】
また、図21は主底刃の円弧刃の曲率半径が工具半径の5倍を超えた主底刃を有するエンドミルを用いて切削を行った際に発生する切り屑を示す略図である。図21において、軸方向切り込み量ap、直線及び直線に近い部分の加工の際における一刃送り量f1の切削条件で加工を行った場合の主底刃5の切削量を斜線で示す。主底刃の円弧刃の曲率半径R1の値が工具半径Rの5倍を超える場合には、前記切り込み量apを大きく設定すると、常に主外周刃3及び副外周刃4を用いた切削により加工を行うことになるため、切削時に形成される実質的な切りくずの厚み7が厚くなる。さらに、切削時の衝撃が大きくなり、欠損が発生しやすくなる。加えて、切削熱が高くなることにより、摩耗の進行も早くなる。
【0066】
図11に示すように、本発明において、主底刃の円弧刃19を構成する円弧の中心17を、工具軸Oに対して垂直となる方向で測定したときの距離である円弧の中心距離18は、工具軸Oから工具軸Oに対し垂直となる方向で測定したときに工具直径Dの0.05倍以上0.25倍以下の範囲となることが望ましい。中心距離18が工具直径Dの0.05倍以上であると、エンドミルは切削速度がゼロとなる中心部およびその付近の切れ刃での切削を避ける事ができる。さらに、中心距離18が工具直径Dの0.25倍以下であると、軸方向切り込み量をより大きく設定しても、底刃2のみで切削ができるため、切削時に形成される実質的な切りくずの厚み7が薄くなり、高能率かつ安定した加工ができる。
【0067】
図22は円弧の中心距離を工具直径Dの0.05倍未満としたエンドミルを用いて切削を行った際に発生する切り屑を示す略図である。図22において、軸方向切り込み量ap、直線及び直線に近い部分の加工の際における一刃送り量f1の切削条件で加工を行った場合の主底刃5の切削量を斜線で示す。主底刃の円弧刃を構成する円弧の中心17を、工具軸Oに対して垂直となる方向で測定したときの距離である円弧の中心距離18が工具直径Dの0.05倍未満であると、図22に示すように切削速度が低いエンドミル中心部及びその付近の切れ刃で切削を行うため、切削性能が落ち、摩耗が進行しやすい。
【0068】
図23は円弧の中心距離を工具直径Dの0.25倍を超えた値としたエンドミルを用いて切削を行った際に発生する切り屑を示す略図である。図23において、軸方向切り込み量ap、直線及び直線に近い部分の加工の際における一刃送り量f1の切削条件で加工を行った場合の主底刃5の切削量を斜線で示す。主底刃の円弧刃を構成する円弧の中心17を、工具軸Oに対して垂直となる方向で測定したときの距離である円弧の中心距離18が工具直径Dの0.25倍を超えた場合、図23に示すように実質的な切りくずの厚み7が厚くなるため、切り込み量を大きく設定できず、高能率な加工が困難である。
【0069】
図28は工具軸に対し垂直となる方向で測定したときの円弧刃の長さを示した、本発明のエンドミルの回転軌跡の拡大図である。図28に示したエンドミルは、主底刃の円弧刃の長さ28は工具半径の80%、副底刃の円弧刃の長さ29も同様に工具半径の80%とした例である。図28に示すように、本発明において、円弧刃と中低勾配刃の長さの割合は工具軸Oに対し垂直となる方向で、少なくとも主底刃の円弧刃の長さが工具半径の50%以上90%未満となることが望ましい。少なくとも主底刃の円弧刃の長さが工具半径の50%以上90%未満であれば、円弧刃19と中低勾配刃20のつなぎ目の位置は、工具軸Oから垂直方向への距離が円弧刃の中心17の位置と同範囲になる。よって主底刃の円弧刃の長さが50%未満であれば、図23に示す現象と同様の現象が生じ、実質的な切りくずの厚み7が厚くなるため、切り込み量を大きく設定できない可能性がある。また、主底刃の円弧刃の長さが90%以上であれば、図22に示す現象と同様の現象が生じ、切削速度が低いエンドミル中心部及びその付近の切れ刃で切削を行うため、切削性能が落ち、摩耗が進行しやすくなる可能性がある。
【0070】
図29は工具軸に対し垂直となる方向で測定したときの円弧刃の長さを示した、本発明の別のエンドミルにおける回転軌跡の拡大図である。図29に示したエンドミルは、主底刃の円弧刃の長さ28は工具半径の80%、副底刃の円弧刃の長さ29は工具半径の77%とした例である。本発明においては、主底刃の円弧刃の長さ28と副底刃の円弧刃の長さ29は必ずしも同じ長さである必要は無く、副底刃の円弧刃の長さ29が主底刃の円弧刃の長さ28よりも20%程度短い場合でも、本発明の効果を発揮することが可能である。すなわち副底刃の円弧刃の長さ29は、主底刃の円弧刃の長さ28の80%以上100%以下の長さであれば本発明の効果を発揮することが可能である。なお、望ましい副底刃の円弧刃の長さ29は、主底刃の円弧刃の長さ28の90%以上100%以下の長さである。
【0071】
図30は本発明のエンドミルにおける別の実施例を示した図である。本発明において、主底刃の円弧刃を構成する円弧の中心17と、円弧刃と中低勾配刃のつなぎ部30を工具軸Oに対し垂直方向に測定したときの間隔である円弧の中心とつなぎ部の間隔31は、工具半径の0%以上20%以下であることが望ましい。これにより、切り屑の厚み7が非常に薄くなり、切削抵抗が抑えられるため、非常に高寿命で安定した切削加工が可能となる。このとき円弧刃と中低勾配刃のつなぎ部30が、主底刃の円弧刃を構成する円弧の中心17に対し相対的に内側にあった方が、加工面が向上するためさらに望ましい。また、円弧の中心とつなぎ部の間隔31が工具半径の0%、すなわち、主底刃の円弧刃を構成する円弧の中心17と、円弧刃と中低勾配刃のつなぎ部30とが工具軸Oに平行な直線上に存在する場合に本発明の効果が最も多く得られるが、円弧の中心とつなぎ部の間隔31を工具半径の0%以上10%以下に設定すれば、ほぼ同等の効果が得られる。
【0072】
本発明において、主底刃の円弧刃の曲率半径R1は、副底刃の円弧刃の曲率半径R2と同じであることが望ましい。図24は主底刃の円弧刃の曲率半径と副底刃の円弧刃の曲率半径が同じである本発明のエンドミルを示す図である。図24に示すように、前記曲率半径R1が、前記曲率半径R2と同じである場合、底刃2は全体に渡って底刃の減寸量15が均一となるため、切削時において底刃2は全体に渡って底刃2に生ずる負担が均一となり、安定した加工ができる。この場合、前記曲率半径R1と前記曲率半径R2を比較したときに、工具半径Rの0.001倍以上0.2倍以下の差が生じたときにおいても、本発明においては前記曲率半径R1と前記曲率半径R2が同じであるとみなすことができ、前記曲率半径R1と前記曲率半径R2が全く同じであるときと同等の効果が得られる。さらに、工具製造上には、同じ曲率半径の主底刃及び副底刃を有するエンドミルの製造は異なる曲率半径の主底刃及び副底刃を有するエンドミルより作製しやすいため、工具精度の確保と製造コスト削減にも繋がる。
【0073】
図25は底刃及び外周刃を、略円弧状のR刃を介して接続させた本発明のエンドミルにおいて、R刃付近を拡大した図である。本発明のエンドミルの外周刃1と底刃2は略円弧状のR刃8を介して繋いでもよい。この略円弧状のR刃8を設けた本発明のエンドミルによって、垂直に近い角度が設けられた勾配面を有する金型の切削において、本発明のエンドミルは外周刃1と底刃2のつなぎ部分が被削材と接触した場合でも、欠損が発生せずにより長寿命の加工が可能になる。
【0074】
図26は底刃及び外周刃を、面取り刃を介して接続させた本発明のエンドミルにおいて、面取り刃付近を拡大した図である。本発明のエンドミルの外周刃1と底刃2は面取り刃9を介して繋いでもよい。この面取り刃9を設けた本発明のエンドミルによって、略円弧状のR刃8を設けた場合と同様に、垂直に近い角度が設けられた勾配面を有する金型の切削において、本発明のエンドミルは外周刃1と底刃2のつなぎ部分が被削材と接触した場合でも、欠損が発生せずにより長寿命の加工が可能になる。
【0075】
図27は主外周刃を2枚、副外周刃を4枚とした本発明のエンドミルの左側面図である。図17には、主外周刃3を3枚、副外周刃4を3枚とし、主外周刃3及び副外周刃4を交互に配置した本発明のエンドミルを示したが、主外周刃3及び副外周刃4がそれぞれ1組以上ある構成であれば、主外周刃3及び副外周刃4の枚数が必ずしも同じでなくとも本発明の効果が得られる。主外周刃3及び副外周刃4の配置に関しても、交互に配置せずに、図27に示す通り主外周刃3、副外周刃4、副外周刃4、主外周刃3、副外周刃4、副外周刃4のように配置したとしても、本発明によるびびり振動を抑制する効果が得られる。また、外周刃の枚数が本明細書と異なる枚数となるエンドミルの場合でも、主外周刃3及び副外周刃4の枚数及び配置を適宜調整することにより本発明の効果が得られる。
【0076】
以下、本発明を下記の実施例により詳細に説明するが、それらにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
(実施例1)
本発明のエンドミルの優位性の確認のために、ポケット形状の切削加工による切削試験を行った。切削試験には本発明例及び従来例を用いた。それぞれの工具の仕様を以下に示す。
【0078】
実施例1には本発明例1、従来例2及び3を用いた。共通するエンドミル形状の諸元として、工具直径Dが10mm、心厚が7.5mm、外周刃のねじれ角を20度、刃数を6枚、コーティングをTiSiN系とし、エンドミルの母材を超硬合金としたものを用意した。
【0079】
本発明例1、従来例2及び3で、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を13mmとし、円弧刃の曲率半径を変化させたエンドミルを製作した。
【0080】
本発明例1として、円弧刃の曲率半径を工具半径の1.3倍である6.5mm、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を工具半径の2.6倍である13mmとし、円弧刃の曲率半径を円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径より小さくし、底刃と外周刃を接続させたエンドミルを作製した。
従来例2として、円弧刃の曲率半径を13mm、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を13mmとし、円弧刃の曲率半径を円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径と同じ数値としたものを作製した。
従来例3として、円弧刃の曲率半径を20mm、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を13mmとし、円弧刃の曲率半径を円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径より大きくしたものを作製した。
【0081】
評価の方法として、ポケット形状の荒加工を等高線加工で行い、工具の損傷状態を比較した。切削試験の条件としては、いずれの試料番号も統一した条件で行った。被削材はSKD11の焼き入れ材(62HRC)のブロック材を用意し、被削材の寸法は高さ60mm、長さ120mm、幅70mmとした。エンドミルの回転数は2200回転/min(切削速度70m/min)、送り速度は3300mm/min(一刃送り量は0.25mm/刃)、軸方向切込み量0.2mm、径方向切込み量5mmとし、エアブローを使用した。加工形状は、振動し易い隅部の形状を含むポケット状の形状になっている。ポケットの寸法は深さ40mm、長さ100mm、幅50mm、壁面の勾配角度を1°とした。作製した試料の加工寿命を評価するために、同条件で2ポケットまで切削して、摩耗幅を光学顕微鏡を用いて測定評価し、底刃の欠損の有無を目視にて観察した。
【0082】
切削試験の評価基準として、底刃の逃げ面の摩耗幅が0.08mm未満で尚且つ、欠損が無かったものを良好とした。試験結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
結果として、本発明例1は円弧刃の曲率半径Raを回転後方側の縁の曲率半径Rbよりも小さくしたため、底刃の逃げ面の摩耗幅が0.047mmであり、尚且つ、欠損が無く良好な結果となった。
これに対し、従来例2及び3は円弧刃の曲率半径Raが回転後方側の縁の曲率半径Rb以上の大きさであったため、切削する際の衝撃が大きくなり、欠損が発生した。
【0085】
(実施例2)
実施例2では、本発明例において円弧刃の曲率半径と円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径の関係の確認のために、実施例1と同様にポケット形状の切削加工による切削試験を行った。
【0086】
実施例2には本発明例4〜10を用いた。共通するエンドミル形状の諸元として、実施例1で用いた本発明例1と同様に、工具直径Dが10mm、心厚が7.5mm、外周刃のねじれ角を20度、刃数を6枚、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を工具半径の2.6倍である13mm、コーティングをTiSiN系、エンドミルの母材を超硬合金とし、底刃と外周刃を接続させたものを用意した。
【0087】
本発明例4として、円弧刃の曲率半径を工具半径の0.52倍である2.6mm、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を13mmとして、円弧刃の曲率半径を円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径の0.2倍としたものを作製した。
本発明例5として、円弧刃の曲率半径を工具半径の0.78倍である3.9mm、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を13mmとして、円弧刃の曲率半径を円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径の0.3倍としたものを作製した。
本発明例6として、円弧刃の曲率半径を工具半径の1.04倍である5.2mm、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を13mmとして、円弧刃の曲率半径を円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径の0.4倍としたものを作製した。
本発明例7として、円弧刃の曲率半径を工具半径の1.3倍である6.5mm、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を13mmとして、円弧刃の曲率半径を円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径の0.5倍とした本発明例1と同じ仕様のものを作製した。
本発明例8として、円弧刃の曲率半径を工具半径の1.56倍である7.8mm、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を13mmとして、円弧刃の曲率半径を円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径の0.6倍としたものを作製した。
本発明例9として、円弧刃の曲率半径を工具半径の1.82倍である9.1mm、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を13mmとして、円弧刃の曲率半径を円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径の0.7倍としたものを作製した。
本発明例10として、円弧刃の曲率半径を工具半径の2.08倍である10.4mm、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を13mmとして、円弧刃の曲率半径を円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径の0.8倍としたものを作製した。
【0088】
評価の方法として、実施例1と同様の評価でポケット形状の荒加工を等高線加工で行い、工具の損傷状態を比較した。切削試験の評価基準として、底刃の逃げ面の摩耗幅が0.08mm未満で尚且つ、欠損が無かったものを良好とした。試験結果を表2に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
結果として、本発明例4〜10は底刃の逃げ面の摩耗幅がすべて0.08mm未満であり、尚且つ、欠損が無く良好な結果となった。円弧刃の曲率半径は円弧刃の曲率半径は円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径の0.3倍以上0.7倍以下である本発明例5〜9は摩耗幅が0.07mm以下となり、さらに良好な結果が得られた。円弧刃の曲率半径が6.5mmで円弧刃の曲率半径は円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径の0.5倍で制作された本発明例7が摩耗幅0.048mmとなり、最も摩耗幅が小さかった。円弧刃の曲率半径を小さくすると刃先の剛性が無くなり、振動により摩耗が大きくなる傾向がある。また、円弧刃の曲率半径を大きくしても切り屑排出性が悪くなり、結果として摩耗が大きくなる傾向となった。
【0091】
(実施例3)
実施例3では、本発明例において円弧刃の曲率半径と工具半径の関係の確認のために、実施例1と同様にポケット形状の切削加工による切削試験を行った。
【0092】
実施例3には本発明例11〜17を用いた。共通するエンドミル形状の諸元として、実施例1で用いた本発明例1と同様に、工具直径Dが10mm、心厚が7.5mm、外周刃のねじれ角を20度、刃数を6枚、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を工具半径の2.6倍である13mm、コーティングをTiSiN系、エンドミルの母材を超硬合金とし、底刃と外周刃を接続させたものを用意した。
【0093】
本発明例11として、円弧刃の曲率半径が5mmとして、円弧刃の曲率半径は工具半径Rの1.0倍のものを作製した。
本発明例12として、円弧刃の曲率半径が5.5mmとして、円弧刃の曲率半径は工具半径Rの1.1倍のものを作製した。
本発明例13として、円弧刃の曲率半径が6mmとして、円弧刃の曲率半径は工具半径Rの1.2倍のものを作製した。
本発明例14として、円弧刃の曲率半径が6.5mmとして、円弧刃の曲率半径は工具半径Rの1.3倍とした本発明例1と同じ仕様のものを作製した。
本発明例15として、円弧刃の曲率半径が7mmとして、円弧刃の曲率半径は工具半径Rの1.4倍のものを作製した。
本発明例16として、円弧刃の曲率半径が7.5mmとして、円弧刃の曲率半径は工具半径Rの1.5倍のものを作製した。
本発明例17として、円弧刃の曲率半径が8mmとして、円弧刃の曲率半径は工具半径Rの1.6倍のものを作製した。
【0094】
評価の方法として、実施例1と同様の評価でポケット形状の荒加工を等高線加工で行い、工具の損傷状態を比較した。切削試験の評価基準として、底刃の逃げ面の摩耗幅が0.08mm未満で尚且つ、欠損が無かったものを良好とした。試験結果を表3に示す。
【0095】
【表3】

【0096】
結果として、本発明例11〜17は底刃の逃げ面の摩耗幅がすべて0.08mm未満であり、尚且つ、欠損が無く良好な結果となった。さらに、円弧刃の曲率半径が工具半径の1.1倍以上1.5倍以下である本発明例12〜16は、摩耗幅が0.06mm以下となり、さらに良好な結果が得られた。円弧刃の曲率半径が6.5mmで円弧刃の曲率半径は工具半径の1.3倍の本発明例14が摩耗幅0.051mmと最も小さかった。円弧刃の曲率半径を小さくすると摩耗が大きくなる傾向があり、また、円弧刃の曲率半径を大きくしても切削抵抗が大きくなり、摩耗が大きくなる傾向となった。
【0097】
(実施例4)
実施例4では、本発明例において円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径と工具半径の関係の確認のために、実施例1と同様にポケット形状の切削加工による切削試験を行った。
【0098】
実施例4には本発明例18〜24を用いた。共通するエンドミル形状の諸元として、実施例1で用いた本発明例1と同様に、工具直径Dが10mm、心厚が7.5mm、外周刃のねじれ角を20度、刃数を6枚、円弧刃の曲率半径を工具半径の1.3倍である6.5mm、コーティングをTiSiN系、エンドミルの母材を超硬合金とし、底刃と外周刃を接続させたものを用意した。
【0099】
本発明例18として、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を7.5mmとして、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径は工具半径Rの1.5倍としたものを作製した。
本発明例19として、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を10mmとして、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径は工具半径Rの2.0倍としたものを作製した。
本発明例20として、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を12.5mmとして、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径は工具半径Rの2.5倍としたものを作製した。
本発明例21として、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を15mmとして、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径は工具半径Rの3.0倍としたものを作製した。
本発明例22として、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を17.5mmとして、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径は工具半径Rの3.5倍としたものを作製した。
本発明例23として、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を20mmとして、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径は工具半径Rの4.0倍としたものを作製した。
本発明例24として、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を22.5mmとして、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径は工具半径Rの4.5倍としたものを作製した。
【0100】
評価の方法として、実施例1と同様の評価でポケット形状の荒加工を等高線加工で行い、工具の損傷状態を比較した。切削試験の評価基準として、底刃の逃げ面の摩耗幅が0.08mm未満で尚且つ、欠損が無かったものを良好とした。試験結果を表4に示す。
【0101】
【表4】

【0102】
結果として、本発明例18〜24は底刃の逃げ面の摩耗幅がすべて0.08mm未満であり、尚且つ、欠損が無く良好な結果となった。さらに、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径が工具半径の2.0倍以上4.0倍以下である本発明例19〜23は摩耗幅が0.07mm以下となり、特に良好な結果が得られた。円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径が15mmで、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径は工具半径Rの3.0倍の本発明例21が摩耗幅0.050mmとなり摩耗幅が最も小さかった。円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を小さくすると摩耗が大きくなる傾向があり、また、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を大きくしても切削抵抗が大きくなり、摩耗が大きくなる傾向となった。
【0103】
(実施例5)
実施例5では、本発明例において底刃と外周刃を接続するR刃の有効性の検討を行うために、切削試験を行った。
【0104】
実施例5には本発明例25〜32を用いた。共通するエンドミル形状の諸元として、実施例1で用いた本発明例1と同様に、工具直径Dが10mm、心厚が7.5mm、外周刃のねじれ角を20度、刃数を6枚、円弧刃の曲率半径を工具半径の1.3倍である6.5mm、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を工具半径の2.6倍である13mm、コーティングをTiSiN系とし、エンドミルの母材を超硬合金としたものを用意した。
【0105】
本発明例25として、底刃と外周刃を接続した本発明例1と同様の形状とし、底刃と外周刃を接続するR刃を設けないものを作製した。
本発明例26として、底刃と外周刃を接続するR刃を設け、R刃の曲率半径は0.05mmとして、工具半径の0.01倍のものを作製した。
本発明例27として、底刃と外周刃を接続するR刃を設け、R刃の曲率半径は0.1mmとして、工具半径の0.02倍のものを作製した。
本発明例28として、底刃と外周刃を接続するR刃を設け、R刃の曲率半径は0.25mmとして、工具半径の0.05倍のものを作製した。
本発明例29として、底刃と外周刃を接続するR刃を設け、R刃の曲率半径は0.5mmとして、工具半径の0.10倍のものを作製した。
本発明例30として、底刃と外周刃を接続するR刃を設け、R刃の曲率半径は0.75mmとして、工具半径の0.15倍のものを作製した。
本発明例31として、底刃と外周刃を接続するR刃を設け、R刃の曲率半径は1.0mmとして、工具半径の0.20倍のものを作製した。
本発明例32として、底刃と外周刃を接続するR刃を設け、R刃の曲率半径は1.25mmとして、工具半径の0.25倍のものを作製した。
【0106】
評価の方法として、実施例1と同様の評価方法でポケット形状の荒加工を等高線加工で行い、底刃及び底刃と外周刃のつなぎ目(R刃を設けたものはR刃と外周刃のつなぎ目)の損傷状態を比較した。ただ、加工するポケットのサイズを深さ40mm、長さ200mm、幅25mm、壁面の勾配角度を1°とした。底刃と外周刃を接続するR刃の評価のため、壁際の切削を多く行い、R刃が被削材に接触しやすい形状とした。そのため準備した被削材の寸法は高さ60mm、長さ220mm、幅45mmと変更した。今回の試験は実施例1と加工体積は同じであるため、実施例1と同様に、試験の評価基準として、底刃の逃げ面の摩耗幅が0.08mm未満で尚且つ、底刃の欠損が無かったものを良好とした。試験結果を表5に示す。
【0107】
【表5】

【0108】
結果として、本発明例25〜32は底刃の逃げ面の摩耗幅がすべて0.08mm未満であり、尚且つ、底刃の欠損が無かったため、良好な結果を示した。さらに、R刃の曲率半径を工具半径Rの002倍以上0.2倍以下とした本発明例27〜31は、底刃の逃げ面の摩耗幅がすべて0.07mm以下であり、底刃の欠損が無かったことに加え、R刃の逃げ面の摩耗幅がすべて0.08mm未満であり、底刃と外周刃のつなぎ目の欠損が無かったため、特に良好な結果を示した。
【0109】
(実施例6)
実施例6では、本発明例において底刃と外周刃を接続する面取り刃の有効性の検討を行うために、切削試験を行った。
【0110】
実施例6には本発明例33〜40を用いた。共通するエンドミル形状の諸元として、実施例1で用いた本発明例1と同様に、工具直径Dが10mm、心厚が7.5mm、外周刃のねじれ角を20度、刃数を6枚、円弧刃の曲率半径を工具半径の1.3倍である6.5mm、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径を工具半径の2.6倍である13mm、コーティングをTiSiN系とし、エンドミルの母材を超硬合金としたものを用意した。
【0111】
本発明例33として、底刃と外周刃を接続した本発明例1と同様の形状とし、底刃と外周刃を接続する面取り刃を設けないものを作製した。
本発明例34として、底刃と外周刃を接続する面取り刃を設け、面取り刃の幅は0.05mmとして、工具半径の0.01倍のものを作製した。
本発明例35として、底刃と外周刃を接続する面取り刃を設け、面取り刃の幅は0.1mmとして、工具半径の0.02倍のものを作製した。
本発明例36として、底刃と外周刃を接続する面取り刃を設け、面取り刃の幅は0.25mmとして、工具半径の0.05倍のものを作製した。
本発明例37として、底刃と外周刃を接続する面取り刃を設け、面取り刃の幅は0.5mmとして、工具半径の0.10倍のものを作製した。
本発明例38として、底刃と外周刃を接続する面取り刃を設け、面取り刃の幅は0.75mmとして、工具半径の0.15倍のものを作製した。
本発明例39として、底刃と外周刃を接続する面取り刃を設け、面取り刃の幅は1.0mmとして、工具半径の0.20倍のものを作製した。
本発明例40として、底刃と外周刃を接続する面取り刃を設け、面取り刃の幅は1.25mmとして、工具半径の0.25倍のものを作製した。
【0112】
評価の方法として、実施例5と同様の評価方法でポケット形状の荒加工を等高線加工で行い、底刃及び底刃と外周刃のつなぎ目(面取り刃を設けたものは面取り刃と外周刃のつなぎ目)の損傷状態を比較した。試験の評価基準として、底刃の逃げ面の摩耗幅が0.08mm未満で尚且つ、底刃の欠損が無かったものを良好とした。試験結果を表6に示す。
【0113】
【表6】

【0114】
結果として、本発明例33〜40は底刃の逃げ面の摩耗幅がすべて0.08mm未満であり、尚且つ、底刃の欠損が無かったため、良好な結果を示した。さらに、面取り刃の幅を工具半径Rの0,02倍以上0.2倍以下とした本発明例35〜39は、底刃の逃げ面の摩耗幅がすべて0.07mm以下であり、底刃の欠損が無かったことに加え、面取り刃の逃げ面の摩耗幅がすべて0.08mm未満であり、底刃と外周刃のつなぎ目の欠損が無かったため、特に良好な結果を示した。
【0115】
(実施例7)
本発明のエンドミルの優位性の確認のために、ポケット形状の切削加工による切削試験を行った。切削試験には本発明例、比較例、及び従来例を用いた。それぞれの工具の仕様を以下に示す。
【0116】
実施例7には本発明例42〜49、本発明例52〜56、本発明例59〜63、比較例41、50、51、57、58、64、従来例65、66を用いた。共通するエンドミル形状の諸元として、工具直径Dが10mm、心厚が7.5mm、外周刃のねじれ角を20度、刃数を6枚、コーティングをTiSiN系とし、エンドミルの母材を超硬合金としたものを用意した。さらに、本発明例42〜49、本発明例52〜56、本発明例59〜63は主底刃の円弧刃を構成する円弧の中心を、工具軸Oに対して垂直となる方向で測定したときの距離である円弧の中心距離を工具軸から工具直径の0.15倍の1.5mmとし、主底刃は主外周刃に接続され、副底刃は副外周刃に接続された形状とした。
【0117】
本発明例42〜49、比較例41及び比較例50においては、それぞれ主底刃の円弧刃の曲率半径R1を変化させたエンドミルを製作した。
【0118】
比較例41として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の1.0倍の5mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.005倍の0.05mmとしたものを作製した。
本発明例42として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の1.5倍の7.5mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.005倍の0.05mmとしたものを作製した。
本発明例43として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の2.0倍の10mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.005倍の0.05mmとしたものを作製した。
本発明例44として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の2.5倍の12.5mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.005倍の0.05mmとしたものを作製した。
本発明例45として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.0倍の15mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.005倍の0.05mmとしたものを作製した。
本発明例46として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.5倍の17.5mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.005倍の0.05mmとしたものを作製した。
本発明例47として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の4.0倍の20mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.005倍の0.05mmとしたものを作製した。
本発明例48として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の4.5倍の22.5mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.005倍の0.05mmとしたものを作製した。
本発明例49として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の5.0倍の25mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.005倍の0.05mmとしたものを作製した。
比較例50として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の5.5倍の27.5mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.005倍の0.05mmとしたものを作製した。
【0119】
本発明例52〜56、比較例51及び比較例57においては、それぞれ底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値もしくは底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を変化させたエンドミルを製作した。
【0120】
比較例51として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.0倍の15mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.002倍の0.02mmのものを作製した。
本発明例52として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.0倍の15mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.0025倍の0.025mmとしたものを作製した。
本発明例53として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.0倍の15mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.005倍の0.05mmとしたものを作製した。
本発明例54として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.0倍の15mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.007倍の0.07mmとしたものを作製した。
本発明例55として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.0倍の15mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.0075倍の0.075mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.007倍の0.07mmとしたものを作製した。
本発明例56として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.0倍の15mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.01倍の0.1mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.007倍の0.07mmとしたものを作製した。
比較例57として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.0倍の15mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.0125倍の0.125mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.007倍の0.07mmとしたものを作製した。
【0121】
本発明例59〜63、比較例58及び比較例64においては、それぞれ外周刃の減寸量を変化させたエンドミルを製作した。
【0122】
比較例58として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.0倍の15mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.002倍の0.02mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径0.007倍の0.07mmとしたものを作製した。
本発明例59として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.0倍の15mm、外周刃減寸量を工具直径の0.0025倍の0.025mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径0.007倍の0.07mmとしたものを作製した。
本発明例60として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.0倍の15mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.005倍の0.05mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径0.007倍の0.07mmとしたものを作製した。
本発明例61として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.0倍の15mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径0.007倍の0.07mmとしたものを作製した。
本発明例62として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.0倍の15mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.0075倍の0.075mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径0.007倍の0.07mmとしたものを作製した。
本発明例63として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.0倍の15mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.01倍の0.1m、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径0.007倍の0.07mmとしたものを作製した。
比較例64として、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.0倍の15mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.0125倍の0.125mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径0.007倍の0.07mmとしたものを作製した。
【0123】
従来例65として、6枚刃のボールエンドミルを作製した。また、従来例66として、6枚刃のコーナーR刃の半径が2mmのラジアスエンドミルを作製した。
【0124】
評価の方法として、ポケット形状の荒加工を等高線加工で行い、工具の損傷状態を比較した。切削試験の条件としては、いずれの試料番号も統一した条件で行った。被削材はSKD11の焼き入れ材(62HRC)のブロック材を用意し、被削材の寸法は高さ60mm、長さ120mm、幅70mmとした。エンドミルの回転数は2200回転/min(切削速度70m/min)、送り速度は3300mm/min(一刃送り量は0.25mm/刃)、軸方向切込み量0.2mm、径方向切込み量5mmとし、エアブローを使用した。加工形状は、振動し易い隅部の形状を含むポケット状の形状になっている。ポケットの寸法は深さ40mm、長さ100mm、幅50mm、壁面の勾配角度を1°とした。従来のエンドミルでは、上記の条件での切削の寿命は2ポケットの加工が困難となるので、作製した試料の加工寿命を評価するために、同条件で2ポケットまで切削して、摩耗幅を光学顕微鏡を用いて測定評価し、底刃の欠損の有無を目視にて観察した。
【0125】
切削試験の評価基準として、底刃の逃げ面の摩耗幅が0.08mm未満で尚且つ、欠損が無かったものを良好とした。試験結果を表7に示す。
【0126】
【表7】

【0127】
結果として、本発明例42〜49、本発明例52〜56、本発明例59〜63は底刃の逃げ面の摩耗幅がすべて0.08mm未満であり、尚且つ、欠損が無く良好な結果となった。
これに対し、比較例41は主底刃の円弧刃の曲率半径R1が小さく、主底刃の強度が不足したため、欠損が発生した。
比較例50は主底刃の円弧刃の曲率半径R1が大きく、切削熱が高くなるため、摩耗の進行が早く、底刃の逃げ面の摩耗幅が0.115mmであった。
比較例51は底刃の減寸量の最小値が0.02mmと小さく、隅部の加工において、振動を抑制する効果が小さかったため、欠損が発生した。
比較例57は底刃の減寸量の最大値が0.125mmと大きく、切削時に副底刃と比べて、主底刃の切削量が大きかったため、主底刃に欠損が発生した。
比較例58は外周刃の減寸量が0.02mmと小さく、隅部の加工において、振動を抑制する効果が小さかったため、欠損が発生した。
比較例64は外周刃の減寸量が0.125mmと大きく、壁面の加工時に副外周刃と比べて、主外周刃の切削量が非常に大きくなったため、主外周刃に欠損が発生した。
従来例65はボールエンドミルであるため、中心部付近での切削が多くなり、切削速度が上がらず、切削性が悪くなったため、逃げ面の摩耗幅は0.183mmと非常に大きくなった。
従来例66はラジアスエンドミルであるため、コーナーR刃の半径が2mmと非常に小さいため、比較例1と同様に、強度が不足し、欠損が発生した。
【0128】
(実施例8)
実施例8において、主底刃の円弧刃を構成する円弧の中心を、工具軸Oに対して垂直となる方向で測定したときの距離である円弧の中心距離の違い及び面取り刃、円弧状のR刃の有無による切削寿命の比較を行った。それぞれの工具の仕様を以下に示す。
【0129】
実施例8には本発明例67〜75を用いた。共通するエンドミル形状の諸元として、工具直径Dが10mm、心厚が7.5mm、外周刃のねじれ角を20度、刃数を6枚、コーティングをTiSiN系とし、エンドミルの母材を超硬合金としたものを用意した。さらに、本発明例67〜75において、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.0倍の15mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.007倍の0.07mmとした。
【0130】
本発明例67〜73においては、それぞれ円弧の中心距離を変化させたエンドミルを製作した。
【0131】
本発明例67は円弧の中心距離を工具軸から工具直径の0.03倍の0.3mmとし、主底刃は主外周刃に接続され、副底刃は副外周刃に接続された形状とした。
本発明例68は円弧の中心距離を工具軸から工具直径の0.05倍の0.5mmとし、主底刃は主外周刃に接続され、副底刃は副外周刃に接続された形状とした。
本発明例69は円弧の中心距離を工具軸から工具直径の0.10倍の1.0mmとし、主底刃は主外周刃に接続され、副底刃は副外周刃に接続された形状とした。
本発明例70は円弧の中心距離を工具軸から工具直径の0.15倍の1.5mmとし、主底刃は主外周刃に接続され、副底刃は副外周刃に接続された形状とした。
本発明例71は円弧の中心距離を工具軸から工具直径の0.20倍の2.0mmとし、主底刃は主外周刃に接続され、副底刃は副外周刃に接続された形状とした。
本発明例72は円弧の中心距離を工具軸から工具直径の0.25倍の2.5mmとし、主底刃は主外周刃に接続され、副底刃は副外周刃に接続された形状とした。
本発明例73は円弧の中心距離を工具軸から工具直径の0.3倍の3.0mmとし、主底刃は主外周刃に接続され、副底刃は副外周刃に接続された形状とした。
【0132】
本発明例74は円弧の中心距離を工具軸から工具直径の0.15倍の1.5mmとし、底刃と外周刃は面取り刃を介して接続された形状とした。
本発明例75は円弧の中心距離を工具軸から工具直径の0.15倍の1.5mmとし、底刃と外周刃は円弧状のR刃を介して接続された形状とした。
【0133】
評価の方法として、実施例7と同様の切削試験を4ポケットまで行った。切削試験の評価基準として、2ポケット加工後に工具の損傷を実施例1に示す方法と同様の方法で確認し、底刃の逃げ面の摩耗幅が0.08mm未満で尚且つ、底刃の欠損が無かったものを良好として、さらに継続して4ポケットまで切削加工を行った。4ポケット加工後に同様の方法で工具の損傷を確認した。試験結果を表8に示す。
【0134】
【表8】

【0135】
結果として、本発明例67〜75は2ポケット加工後の底刃の逃げ面の摩耗幅が0.08mm未満であり、尚且つ、欠損が無かったため、良好であった。さらに、本発明例74及び本発明例75は、底刃と外周刃は面取り刃もしくは円弧状のR刃を介して接続された形状であるため、4ポケット加工後も欠損がなく、非常に良好な結果であった。
【0136】
(実施例9)
実施例9において、主底刃の円弧刃の長さと副底刃の円弧刃の長さの検討を行った。それぞれの工具の仕様及びテスト内容を以下に示す。
【0137】
実施例3には本発明例76〜85を用いた。共通するエンドミル形状の緒元として、工具直径Dが10mm、心厚が7.5mm、外周刃のねじれ角を20度、刃数を6枚、コーティングをTiSiN系とし、エンドミルの母材を超硬合金としたものを用意した。さらに、本発明例76〜85において、主底刃の円弧刃の曲率半径R1を工具半径の3.0倍の15mm、外周刃の減寸量を工具直径の0.006倍の0.06mm、底刃の減寸量のうち最大値になる減寸量の最大値を工具直径の0.007倍の0.07mm、底刃の減寸量のうち最小値になる減寸量の最小値を工具直径の0.007倍の0.07mmとし、主底刃の円弧刃を構成する円弧の中心を工具軸から1.5mmの位置とした。
【0138】
本発明例76〜85においては、主底刃の円弧刃の長さ及び副底刃の円弧刃の長さを変化させたエンドミルを作製した。
【0139】
本発明例76は主底刃の円弧刃の長さを工具半径の40%である2.00mmとし、副底刃の円弧刃の長さも主底刃の円弧刃の長さと同様に2.00mmとした。
本発明例77は主底刃の円弧刃の長さを工具半径の50%である2.50mmとし、副底刃の円弧刃の長さも主底刃の円弧刃の長さと同様に2.50mmとした。
本発明例78は主底刃の円弧刃の長さを工具半径の60%である3.00mmとし、副底刃の円弧刃の長さも主底刃の円弧刃の長さと同様に3.00mmとした。
本発明例79は主底刃の円弧刃の長さを工具半径の70%である3.50mmとし、副底刃の円弧刃の長さも主底刃の円弧刃の長さと同様に3.50mmとした。
本発明例80は主底刃の円弧刃の長さを工具半径の80%である4.00mmとし、副底刃の円弧刃の長さも主底刃の円弧刃の長さと同様に4.00mmとした。
本発明例81は主底刃の円弧刃の長さを工具半径の90%である4.50mmとし、副底刃の円弧刃の長さも主底刃の円弧刃の長さと同様に4.50mmとした。
本発明例82は主底刃の円弧刃の長さを工具半径の95%である4.75mmとし、副底刃の円弧刃の長さも主底刃の円弧刃の長さと同様に4.75mmとした。
【0140】
本発明例83は主底刃の円弧刃の長さを工具半径の80%である4.00mmとし、副底刃の円弧刃の長さは主底刃の円弧刃の長さの85%である3.40mmとした。
本発明例84は主底刃の円弧刃の長さを工具半径の80%である4.00mmとし、副底刃の円弧刃の長さは主底刃の円弧刃の長さの90%である3.60mmとした。
本発明例85は主底刃の円弧刃の長さを工具半径の80%である4.00mmとし、副底刃の円弧刃の長さは主底刃の円弧刃の長さの95%である3.80mmとした。
【0141】
評価の方法として、実施例7と同様の切削試験を4ポケットまで行った。切削試験の評価基準として、2ポケット加工後に工具の損傷を実施例1に示す方法と同様の方法で確認し、底刃の逃げ面の摩耗幅が0.08mm未満で尚且つ、底刃の欠損が無かったものを良好として、さらに継続して4ポケットまで切削加工を行った。4ポケット加工後に同様の方法で工具の損傷を確認した。試験結果を表9に示す。
【0142】
【表9】

【0143】
結果として、本発明例76〜85は2ポケット加工後の底刃の逃げ面摩耗幅が0.08mm未満であり、尚且つ、欠損が無かったため、良好な結果であった。特に主底刃の円弧刃の長さが工具半径の50%以上90%以下である本発明例77〜81、及び副底刃の円弧刃の長さが主底刃の円弧刃の長さの90%以上100%以下の本発明例84〜85は摩耗幅が0.06mm未満となり、さらに良好な結果であった。また、主底刃の円弧刃の長さが工具半径の70%以上80%以下である本発明例79、80及び主底刃の円弧刃の長さが工具半径の80%であり、副底刃の円弧刃の長さが主底刃の円弧刃の長さの95%である本発明例85は、4ポケット加工後においても、欠損が無く、特に良好な結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明のエンドミルは、特徴のある底刃の形状、外周刃と底刃の繋ぐ部分の切れ刃の形状の組合せにより、より高能率かつ長寿命に高硬度材を切削することができた。また副底刃が主底刃に対して減寸した形状により、切削中の振動を効果的に抑制でき、突発的な欠損を回避し、従来形状より少なくとも2倍以上の寿命が可能となる。本発明のエンドミルは、欠損等の欠損を心配する必要がなく、高硬度材の荒切削加工においても、寿命が長く切削できるため、加工時間の大幅短縮と工具費の削減に寄与する。
本発明のエンドミルは主な切削対象材料が合金工具鋼、高速鋼などであり、特に高硬度材料金型直加工の切削に好適である。
【符号の説明】
【0145】
1 外周刃
2 底刃
3 主外周刃
4 副外周刃
5 主底刃
6 副底刃
7 実質的な切りくずの厚み
8 R刃
9 面取り刃
11 本発明のエンドミル
14 外周刃の減寸量
15 底刃の減寸量
17 主底刃の円弧刃を構成する円弧の中心
18 円弧の中心距離
19 主底刃の円弧刃
20 主底刃の中低勾配刃
21 副底刃の円弧刃
22 副底刃の中低勾配刃
23 従来のラジアスエンドミル
24 従来のラジアスエンドミルの底刃
25 従来のラジアスエンドミルの外周刃
26 副底刃の円弧刃を構成する円弧の中心
27 従来のラジアスエンドミルにおける底刃の円弧刃を構成する円弧の中心
28 主底刃の円弧刃の長さ
29 副底刃の円弧刃の長さ
30 円弧刃と中低勾配刃のつなぎ部
31 円弧の中心とつなぎ部の間隔
32 円弧刃
33 中低勾配刃
34 円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁
35 円弧刃の逃げ面
36 円弧刃の曲率半径で形成される円弧
37 回転後方側の縁の曲率半径で形成される円弧
38 円弧刃の曲率半径で形成される円弧の中心
39 回転後方側の縁の曲率半径で形成される円弧の中心
40 交点
41 従来のエンドミル
42 円弧刃と中低勾配刃の境界部
43 円弧刃の逃げ面と中低勾配刃の逃げ面との境界線
44 中低勾配刃の逃げ面
O 工具軸
O’ 一刃送り量だけ移動したときのエンドミルの工具軸
D 工具直径
R 工具半径
f1 直線及び直線に近い部分の加工の際における一刃送り量
f2 隅部の加工の際における一刃送り量
ap 軸方向切り込み量
a 工具移動方向
b 工具回転方向
W 被削材
R1 主底刃の円弧刃の曲率半径
R2 副底刃の円弧刃の曲率半径
R3 底刃の円弧刃の曲率半径
Ra 円弧刃の曲率半径
Rb 回転後方側の縁の曲率半径
x 円弧刃の逃げ面の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具軸に対し垂直な方向から見たときに、曲線状である円弧刃と、円弧刃に連続する直線状もしくは曲線状である中低勾配刃とから構成された底刃と、外周刃を有するエンドミルであって、
工具軸に対し平行となる方向から見たときに、円弧刃及び円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁は、曲率半径を有する曲線状であり、円弧刃の曲率半径は、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径より小さいことを特徴とするエンドミル。
【請求項2】
工具軸に対し平行となる方向から見たときの、円弧刃の曲率半径は工具半径より大きいことを特徴とする請求項1に記載のエンドミル。
【請求項3】
工具軸に対し平行となる方向から見たときの、円弧刃の曲率半径は、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径の0.3倍以上0.7倍以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載のエンドミル。
【請求項4】
工具軸に対し平行となる方向から見たときの、円弧刃の曲率半径は、工具半径の1.1倍以上1.5倍以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のエンドミル。
【請求項5】
工具軸に対し平行となる方向から見たときの、円弧刃の逃げ面における回転後方側の縁の曲率半径は、工具半径の2倍以上4倍以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエンドミル。
【請求項6】
底刃と外周刃は略円弧状のR刃を介して接続されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のエンドミル。
【請求項7】
R刃の曲率半径は工具半径の0.02倍以上0.2倍以下の範囲であることを特徴とする請求項6に記載のエンドミル。
【請求項8】
底刃と外周刃は面取り刃を介して接続されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のエンドミル。
【請求項9】
面取り刃の幅は工具半径の0.02倍以上0.2倍以下の範囲であることを特徴とする請求項8に記載のエンドミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2013−31911(P2013−31911A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−275595(P2011−275595)
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【出願人】(000233066)日立ツール株式会社 (299)
【Fターム(参考)】