説明

高粘度材料の重合

【課題】ポリカーボネートやポリスチレンのような高粘度の高分子量製品を妥当な時間で重合するのに適した、新しい重合方法を提供する。
【解決手段】重合反応の少なくとも最終段階において、二種の異なる機械的混合手段を第一および第二の混合手段1,11として二者択一的に用いる重合方法により、上記の目的を達成する。第一の混合手段1は、処理される材料に機械的混合と重力駆動式混合により新しい表面を生成し、第二の混合手段11は、処理される材料に機械的混合でなく重力駆動式混合のみにより新しい表面を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの重合反応は、高粘度材料の処理を伴う。例えば、溶融ポリカーボネートの粘度は高いので、ポリカーボネートから異物を除去するのは難しい。さらに、そのような高粘度材料の処理中に新しい表面が絶えず生成されることが一般的に要求される。これは、例えば、以下の目的のためである:重合反応の副生物が蒸発できるようにする(例えばポリカーボネートの製造中);未反応単量体の蒸発ができるようにする(例えばポリスチレン系材料の製造中);さらに、全ての成分の良好な混合を実現する(本来、上記の表面が生成されると実現される);または、重合反応がさらに完全に行われるようにする(一例は、ポリスチレン系重合体またはポリカーボネートの製造であろう)。
【0003】
このような方法のために種々の重合反応器が開発されており、それらは通常、水平二軸スクリュー反応器におけるような高粘度反応混合物の機械的攪拌、または、効果的な表面更新と高粘度組成物の混合を達成するために重力を利用するスタティックミキサー、例えば流下薄膜型蒸発缶、を伴う。そのような重合反応器やこれらを用いる方法の例は、下記の特許文献1〜6に開示されている。
【0004】
しかしながら、高粘度重合組成物の処理についてのこれら従来の取組み方には、幾つかの欠点がある。例えば、ポリカーボネート樹脂は、二軸スクリュー反応器で製造すると、二軸スクリュー反応器における処理中の高い剪断速度とこれに相当する高温条件に起因して、一般に変色と低い安定性を示す。さらに、高粘度のため、高分子量製品を製造するのが困難である。
【0005】
効果的な表面更新と高粘度重合材料の混合を達成するのに重力のみを利用する反応器を用いる方法は、長時間の滞留が必要なので、そのような重合方法の経済的価値が減少する、という点で不利である。
【0006】
下記特許文献7は、円筒状の多孔壁を持つ回転可能な円筒状バスケットと上記バスケットの周囲に沿って配置されたディスクからなる反応器を用いて高粘度重合体を製造する方法を開示している。この方法の実施中、反応器に溶融反応混合物を部分的に充填する。多孔構造物を回転により溶融液を通して引き出すので、一旦多孔構造物が溶融液から再び出現すると、付着している溶融液が下方に流れ、表面更新を可能にする連続膜が作成される可能性が与えられる。
【0007】
しかしながら、この方法でも、高粘度重合組成物の高度に良好な取り扱いができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5932683号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1760105号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1760106号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1760107号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1760108号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1760109号明細書
【特許文献7】米国特許第6630563号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、従来技術に伴う欠点を克服し、ポリカーボネートのような高粘度高分子材料の重合方法を提供するという目的に関する。特に、本発明の目的は、高粘度の高分子量製品を妥当な時間内に調製できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、請求項1に特定されたような重合方法により上記の目的を達成する。さらに好ましい実施態様は、以下の明細書だけでなく下位請求項にも規定されている。
【0011】
したがって、本発明は、高粘度高分子材料の製造方法であって、上記方法の少なくとも一段階において、第一の混合手段と第二の混合手段の組合せが用いられ、第一の混合手段は、処理される材料に、機械的混合と重力により駆動される混合(重力駆動式混合)により、新しい表面を生成し、第二の混合手段は、処理される材料に、主として機械的混合によらずに、好ましくは機械的混合でなく、ほとんど重力駆動式混合により、好ましくは重力駆動式混合のみにより、新しい表面を生成する、製造方法に関する。
【0012】
本願において用いられる「機械的混合」という表現は、高分子材料を混合する手段であって、たわみにより剪断力が高分子材料に施される手段を指すものとする。高分子材料のたわみは、第一の混合手段において一体化される偏向ブレードまたは回転ディスクにより引き起すことができる。好ましくは、混合手段を通過する高分子材料全体を偏向させる。本発明において用いられる「重力駆動式混合」という表現は、高分子材料を混合する手段であって、第二の混合手段のスピン力によってのみ剪断力が材料に加えられ、材料はわずかに偏向されるだけであるような手段を指すものとする。したがって、第二の混合手段は、好ましくは偏向ブレードまたは回転ディスクからなるものではない。
【0013】
発明者らは、ポリカーボネートのような高分子量重合体の製造方法であって、重合反応の少なくとも最終段階において、二種の異なる機械的混合手段を第一および第二の混合手段として二者択一的に用いる方法、を提供することにより、従来技術に伴う欠点を克服することに成功した。
【0014】
本発明に係る方法において用いられる第一の混合手段は、複数配置した場合、粘度が300℃で約150000cPまでの範囲内にある高分子量重合体の製造段階において適宜に用いることができ、第二の混合手段は、通常、複数配置した場合、粘度が300℃で約400000cP以上までである製造方法の後段階において用いられる。
【0015】
本発明にしたがい用いられる混合手段は、水平配置を持つ反応器および垂直配置を持つ反応器において利用することができるが、後者の方が好ましい(水平および垂直は、高分子材料の一般的な流れ方向を指す)。もちろん、垂直および水平混合手段を好きなように組み合わせることも可能である。
【発明の効果】
【0016】
高粘度の高分子量製品を妥当な時間内に調製できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明に係る第一の混合手段である。
【図2】図2は、本発明に係る第二の混合手段である。
【図3】図3は、連続した2個の第一の混合手段と1個の第二の混合手段からなる本発明の第一の実施態様に係る垂直配置(3層配置)の概略図である。
【図4】図4は、連続した4個の第一の混合手段と1個の第二の混合手段からなる本発明の第二の実施態様に係る垂直配置(5層配置)の概略図である。
【図5】図5は、直列に接続した、4つのオートクレーブと、第一および第二の混合手段からなる1台の反応器とを具備する、ポリカーボネート製造のための本発明に係る第三の実施態様にしたがう工程流れ図である。
【図6】図6は、直列に接続した、6つのオートクレーブと、第一および第二の混合手段からなる1台の反応器とを具備する、本発明に係る第四の実施態様にしたがうポリカーボネート製造における典型的な操作条件を図示する。
【図7】図7は、本発明の第五の実施態様に係る水平配置の概略図である。
【図8】図8は、本発明の第六の実施態様に係る水平配置の概略図である。
【図9】図9は、本発明の第六の実施態様に係る水平配置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[垂直反応器]
〈第一の混合手段〉
一般的に、第一の混合手段は、機械的混合により、但し処理する材料に加わる剪断を最小限にして、新しい表面を生成し、成分を良好に混合する混合手段である。好ましい実施態様は、回転ディスクとディスク上に存在するワイヤからなり、ワイヤは例えば回転軸の中心からディスクの外縁まで延びている。通常、ワイヤはディスクの外周まで延出している。この第一の混合手段用のワイヤの本数は適宜選ぶことができる。ワイヤの代表的本数は、5本から20本である。通常、ワイヤはディスクにその外周で接し、その後、ディスクの中心より上方の点に向かって上方向に所望の形態で延びている。ワイヤ直径とディスクの直径との比率は、好ましくは1/80<d/D<1/200、より好ましくは1/60<d/D<1/130、の範囲内にある(式中、dはワイヤの直径、Dはディスクの直径である)。
【0019】
このような混合手段の一つ以上を本発明に係る方法において用いることができる。
【0020】
〈第二の混合手段〉
一般に重合反応のうち比較的高粘度の部分に用いられる第二の混合手段は、次の点を除けば、一般的には第一の混合手段に相当する:すなわち、機械的混合から生じる剪断力は、全く加わらないか、または最小限である;つまり、第二の混合手段は好ましくは重力だけで作用する。したがって、回転ディスクは通常設けられない。すなわち、第二の混合手段は、円筒状基部を有し、これは円筒状基部の中心部から円筒状基部の外周まで延びているワイヤだけからなっている。ワイヤの形状とワイヤの本数は、第一の混合手段について上述したように選ぶことができる。通常、第二の混合手段におけるワイヤは、円筒状基部の外周から円筒状基部の中心部より上方の点に向かって上方向に延びている。所望であれば、ワイヤはさらに第二の端部を持ち、円筒状基部の外周から円筒状基部の中心部まで水平に延びていてもよい。ワイヤ直径とワイヤにより形成された基部の直径との比率は、好ましくは1/80<d/D<1/200、より好ましくは1/60<d/D<1/130、の範囲内にある(式中、dはワイヤの直径、Dは円筒状基部の外径である)。
【0021】
通常、垂直反応器用の第一の混合手段と第二の混合手段は、回転軸を混合手段の中心を通して組入れることができるように構成されており、これは、垂直反応器において種々の第一および第二の混合手段を回転軸上の様々な位置に配置することができるようにするためである。そのような垂直反応器の適切な例は、一個以上の第一の混合手段と一個以上の第二の混合手段からなり、例えば(頂部から底部まで)第一の混合手段、次に第二の混合手段といった順序で配置された4個の第一の混合手段と4個の第二の混合手段からなる。しかしながら、この順序は逆にしてもよく、第一の混合手段と第二の混合手段を交互の順番にして用いることも可能である。
【0022】
第一および第二の混合手段が垂直反応器に配列されるので、ポリカーボネートのような高分子量の高分子材料を高い信頼性で良好に製造できる。第一および第二の混合手段に垂直反応器を用いると、例えば、5個〜10個の混合手段を含む配列で、好ましくは20〜40分の滞留時間で、12000より大きい数平均分子量を持つ高分子量ポリカーボネートを製造することができる。さらに重合条件を調整するとともに第一および第二の混合手段の個数を増やすことにより、さらに数平均分子量を増加させて、例えばポリカーボネートで20000以上の数値より高くすることもできる。通常、通常4000〜10000の範囲内の低い数平均分子量重合体供給材料には垂直反応器型が用いられるので、垂直型反応器は、数平均分子量を供給時の数平均分子量から、20000より高い、ある実施態様では25000まで、またはそれ以上の極めて良好な最終分子量、に増加することができる。
【0023】
第一および第二の混合手段を用いた特定の方法制御により、押出機を用いた従来方法で遭遇するような剪断の有害作用を最小限にすることが可能となる。同時に、既知の流下薄膜蒸発缶のような、重力駆動式装置を用いた従来方法と比べ、本発明は滞留時間を短縮できる。
【0024】
[水平反応器]
本発明は、高粘度の高分子材料の製造および処理のため水平反応器も考えている。一般的に、垂直反応器と比べ、水平反応器は、数平均分子量で表されるような比較的高い供給時分子量を可能とする。ポリカーボネートでは、供給時数平均分子量は10000またはそれ以上、すなわち、垂直反応器での典型的供給時数平均分子量より実質的に高い数値、と思われる。
【0025】
また、本願は、水平反応器において二種の異なった混合手段の使用を考えている。典型的な一例は、押出機型の混合手段であり、この混合手段では、押出機スクリュの一部分はさらにスクリュの中心軸に平行に配列されたバーまたはロッドを示しており、これらは新しい表面の生成を担当し、一方、押出機スクリュの残りの部分はそのようなロッドやバーを示さず、主に材料を押出機を通して搬送する役割を担っている。通常、この方法は低い充填量の溶融材料を用いてそのような改造押出機において行われるので、高い空隙率が与えられる。そのような押出機の充填は、溶融材料の上部境界が押出機スクリュの最下部に接触するような充填のみであるのが好ましい。
【0026】
水平反応器の他の実施態様においては、押出機スクリュは全長にわたり、スクリュの中心軸に実質的に平行に配列された追加のバーまたはロッドからなり、他の部分は存在しない。
【0027】
そのような水平配置では、本発明にしたがうと、高粘度の高分子量高分子材料を非常に良好な収率と品質で提供することが可能である。
【0028】
[高分子材料]
本発明の方法では、どのような高粘度材料も製造でき、特に、単重合体と共重合体を含むどのような種類のポリカーボネート材料も製造でき、さらに単重合体と共重合体を含むスチレン系重合体も製造できる。好ましくは、本発明の方法は、CD等に用いられる材料のような高品質ポリカーボネートの製造に用いられる。
【0029】
本発明で提案した目的は、重力下で混合手段により自由膜を連続して形成し、高い膜形成速度を持つ反応装置により達成された。膜形成速度は、櫂により引き出され、自由膜の形態で下方に流れる、単位時間当たりの材料の量の反応器の総処理量に対する比率と定義される。この膜形成速度は15より高かった。
【0030】
図1を参照すると、本発明の一実施態様にかかる第一の混合手段1が示される。この第一の混合手段1は、回転ディスク3とワイヤ2からなる。ワイヤ2はディスク状に存在し、回転可能な軸4の中心から回転ディスク3の外周まで延びている。ワイヤ2は回転ディスク3にその外周で接触し、次に上方に湾曲し屈曲部5に向かって延び、次に真直ぐ上方に回転軸4より上方の点まで延び、次に湾曲して下方に延び、回転軸4上の点まで真直ぐに延びている。本実施態様においては、特にワイヤの湾曲および屈曲構造は、当業者が容易に認識するように、変更できる。例えば、ワイヤ2は湾曲して上方に、屈曲部5なしに直接回転軸4より上方の点にまで延びることができ、次に下方に回転軸4上の点まで延びることができる。または、ワイヤ2は湾曲せずに真直ぐ上方に0個、1個またはより多くの屈曲部5を有して回転軸4より上方の点まで延び、次に下降して回転軸4上の点まで延びる。既に述べたように、ワイヤ2の本数と太さは反応の要件にしたがい調節される。ワイヤ2の典型的な本数は8〜2本であり、ワイヤ2の直径と回転ディスク3の直径との比率は、好ましくは1/80<d/D<1/200、より好ましくは1/60<d/D<1/130、の範囲内である(式中、dはワイヤの直径、Dはディスクの直径である)。
【0031】
図2を参照すると、本発明の他の実施態様にかかる第二の混合手段11が示される。この第二の混合手段11は、回転軸14の一部から延びたワイヤ12から形成された円筒状基部を持つ。ワイヤ12の形状とワイヤ12の本数は、第一の混合手段について上述したように選ぶことができる。ワイヤ12の直径とワイヤ12により形成された基部の直径との比率は、好ましくは1/80<d/D<1/200、より好ましくは1/60<d/D<1/130、の範囲内である(式中、dはワイヤの直径、Dは円筒状基部の外径である)。
【0032】
図3を参照すると、本発明の第一の実施態様に係る垂直反応器21が示されており、この反応器21は、混合手段1,11の中心を通して回転軸24を組込んでいる。図3の実施態様によると、垂直反応器は2個の第一の混合手段1と1個の第二の混合手段11からなる。しかしながら、この順序は逆にしてもよく、第一および第二の混合手段を交互の順番で用いることもできる。
【0033】
図4を参照すると、本発明の第二の実施態様に係る垂直反応器22が示されており、この反応器22は、混合手段1,11の中心を通して回転軸24を組込んでいる。図4の実施態様によると、垂直反応器は4個の第一の混合手段1と1個の第二の混合手段11からなる。しかしながら、この順序は逆にしてもよく、第一および第二の混合手段を交互の順番で用いることもできる。図4から判るように、反応器は、追加の製品を反応器内に供給する追加の入口8を含んでもよい。
【0034】
配列された数個の混合手段同士の間の間隔と混合手段のサイズとの両方とも、垂直反応器の高さ/長さに沿って変化する溶融粘度に比例してもよく、混合手段の間隔とサイズの両方とも、反応器の入口側から出口側へと重合体の粘度が増加するにつれて増加する。好ましくは、約3〜12個、より好ましくは5〜8個の混合手段が反応器の長さ1メートルごとに設置される。
【0035】
反応器は、反応器の端面の供給ノズルを介して低分子量の低重合体製品が供給され、この製品は反応器中で縮合されると、高分子量樹脂を形成し、この樹脂は出口ノズルを介して排出される。
【0036】
反応器は当初空である。低分子量の低重合体製品が連続的に供給され、回転が始まると、溶融液は回転する混合手段を通して回転引き抜きされ、下方に流れ、連続伸張膜を形成するので、該当する単量体の蒸発を可能とする。
【0037】
加熱手段と反応器内の製品との温度差は縮小すると思われ、応急の加熱や反応器の壁上での製品損傷を防止する。これは、製品は主に混合手段と重力により処理され、反応器壁からの熱干渉はほとんど受けないからである。
【0038】
重縮合の処理温度は一般的に240〜320℃、好ましくは260〜300℃であり、圧力は0.001〜10ミリバール、好ましくは0.01〜5ミリバールであり、平均滞留時間は15〜200分、好ましくは25〜120分である。
【0039】
縮合の過程で形成される蒸気は、蒸気出口を介して上方に導出される。
【0040】
図5を参照すると、ポリカーボネート製造のための本発明に係る第三の実施態様にしたがう工程流れ図が示されている。この工程は、4つのオートクレーブ25と、第一および第二の混合手段(図示せず)からなる1台の垂直反応器23を具備する。
【0041】
驚くべきことに、本発明に係る反応器装置の使用は、例えば触媒の存在下にジアリールカーボネートとジヒドロキシアリール化合物とのエステル交換により製造されたオートクレーブ型のオリゴカーボネートから非常に高品質のポリカーボネートを工業的に製造するのに特に適していることが判った。得られたポリカーボネートの非常に良好な色質は特に驚異的である。
【0042】
溶融液のエステル交換法は、ジヒドロキシアリール化合物、ジアリールカーボネート、さらに必要であれば分岐剤および/またはモノヒドロキシアリール化合物から既知のやり方で進行する。
【0043】
反応器は、自由膜を形成するために重力強化された機械的方法を特徴としており、膜発泡速度の点で単純な重力法よりまさっている。一方、反応器は、高分子量樹脂を処理する際に剪断応力が極めて低いという利点も持つ。
【0044】
ポリカーボネート製造における典型的な操作条件を図6に示す。反応器A,B,C,D,E,Fは、オリゴカーボネート製造のため、様々な温度および圧力で操作される、直列に接続されたより多くのオートクレーブの1つと見なすことができる。反応器Gは、高分子量ポリカーボネートを製造するためにオートクレーブの後に直列に接続された所定の混合手段を持つ本願で提案された発明である。
【0045】
オリゴカーボネートの重縮合のために特に好ましいオートクレーブ装置は攪拌機を持つ水平円筒状容器であることが判った。
【0046】
原則として、オリゴカーボネートの重縮合は1台の反応器中で行ってよい。しかしながら、達成すべき最終分子量は、温度、圧力、そしてポリカーボネートの末端基含量に依存する反応平衡により決まるので、二台以上の反応器を連続して配置するのが便利と思われる。不十分な圧力では、引き抜かれる単量体はほとんど縮合されていないか、またはまったく縮合されていないと思われるので、高価な特大の真空装置ということになる。しかしながら、滞留時間と共同して品質を決定する反応温度が低下すると思われることが、低い圧力の利点である。例えば2台の反応器間の分布により、様々な圧力および必要であれば分解され蒸発された化合物の部分的縮合や真空装置により最小限になったガス暴露、および製品の熱暴露は最適化されると思われる。出発材料である低重合体の分子量レベル、さらに最終分子量に至るまで分解される製品のまだ蒸発していない量もここでは重要である。
【0047】
反応の進行と得られる製品の品質のためには、反応器を複数の好ましくは垂直ディスク形帯域であって、たがいに別々に加熱されると思われる帯域に分け、それにより分子量の傾向に適合させた温度プロフィールが可能なようにすることが有利である。したがって、ポリカーボネートの熱暴露が最小限になると思われ、これは一般的にポリカーボネートの色のような特性に対しプラスの影響を及ぼす。この目的のため、反応器の各部分の加熱は水平方向に分けた方が有益と思われる。
【0048】
本発明において「オリゴカーボネート」という用語は、1.02〜1.25、好ましくは1.05〜1.10の相対粘度を持つ縮合体を意味する。この相対粘度は、溶媒の粘度とこの溶媒に溶解された低重合体の粘度との商として表される。これは、ジクロロメタン中25℃で5g/リットルの濃度で決定された。
【0049】
本発明に係る方法により得ることができるポリカーボネートは、1.16〜1.40、好ましくは1.18〜1.32の相対粘度を持っている。この相対粘度は、溶媒の粘度とこの溶媒に溶解された低重合体の粘度との商として表される。これは、ジクロロメタン中25℃で5g/リットルの濃度で決定された。
【0050】
ポリカーボネートの特性を変えるため、高分子量ポリカーボネートへと合成する前のオリゴカーボネートに補助剤や補強剤を添加してもよく、本発明の反応器をプラスチック添加剤供給装置およびミキサーとして役立てることができる。これらの例としては、熱および紫外線安定剤、流れ促進剤、離型剤、難燃剤、低分子量炭酸エステル、ハロゲン化合物、塩類、白墨、石英粉末、ガラスおよび炭素繊維、顔料およびそれらの組合せが含まれる。
【0051】
比較的低い温度、すなわち、オリゴカーボネートの融点とガラス転移温度との間の温度、で反応器を工程Gに適用すると、この反応器は固相重合用の反応器として働く。ポリカーボネートの重合は、まず低重合体のようなポリカーボネート前駆体の結晶化度を溶媒増強剤との接触により高め、次に窒素のような不活性ガスの気体流中で固相重合を実施することにより、行われる。本発明に係る混合手段は、結晶性低重合体を作る手助けをし、約200〜240℃の一定温度範囲内で、必要であれば約160〜200℃の第一の加熱段階と組み合わされて、加熱を行う。本発明に係る混合手段反応器は連続操作に適合でき、少なくとも15000の数平均分子量(ポリスチレンゲルに対するゲル浸透クロマトグラフィで測定)を持つポリカーボネートを製造する。
【0052】
図7,8,9は、それぞれ本発明の第五の実施態様に係る水平反応器31、第六の実施態様に係る水平反応器32、第七の実施態様に係る水平反応器33の概略図である。全ての水平反応器31,32,33は押出機型混合手段41からなり、押出機スクリュの一部分はスクリュ41の中心軸43と平行に配列されたバーまたはロッド42を示している。バーまたはロッド42は新しい表面の形成を担当し、そのようなロッドまたはバー42を示さない押出機スクリュ41の残りの部分は主に押出機を通して材料を搬送する役割を果たす。それぞれ水平反応器32,33を図示する図8,9に係る実施態様において、押出機スクリュ41は全長にわたり、スクリュ41の中心軸43と実質的に平行に配列された追加のバーまたはロッド42を具備し、その他の部分は存在しない。
【符号の説明】
【0053】
1 第一の混合手段
2 ワイヤ
3 回転ディスク
4 回転軸
5 屈曲部
8 入口
11 第二の混合手段
12 ワイヤ
14 回転軸
21,22,23 垂直反応器
24 回転軸
25 オートクレーブ
31,32,33 水平反応器
41 スクリュ
42 バーまたはロッド
43 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高粘度高分子材料の製造方法であって、
上記方法の少なくとも一段階において、第一の混合手段と第二の混合手段との組合せが用いられ、
上記第一の混合手段は、処理される上記材料に、機械的混合および重力駆動式混合により、新しい表面を生成し、
上記第二の混合手段は、処理される上記材料に、主として機械的混合によらずに、ほとんど重力駆動式混合により、新しい表面を生成する
ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、
複数の第一および第二の混合手段が用いられる
ことを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の製造方法であって、
上記第一および第二の混合手段は交互の順序で配置される
ことを特徴とする製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の製造方法であって、
上記第一および第二の混合手段は交互でない順序で配置される
ことを特徴とする製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の製造方法であって、
上記第一および第二の混合手段は、処理される上記材料が上記第一および第二の混合手段を垂直に通過するように配置される
ことを特徴とする製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の製造方法であって、
上記高粘度高分子材料はポリカーボネートである
ことを特徴とする製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の製造方法であって、
上記第一の混合手段は回転ディスクからなる
ことを特徴とする製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の製造方法であって、
処理される上記材料の供給時の数平均分子量は5000以上である
ことを特徴とする製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の製造方法であって、
少なくとも一個の上記第一の混合手段を出た上記材料の数平均分子量は10000以上である
ことを特徴とする製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の製造方法であって、
少なくとも一個の第一の混合手段と少なくとも1個の第二の混合手段との組み合せを出た上記高分子材料の最終数平均分子量は15000以上である
ことを特徴とする製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の製造方法であって、
上記第一および第二の混合手段は、処理される上記材料が上記第一および第二の混合手段を水平に通過するように配置される
ことを特徴とする製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の製造方法であって、
上記第一および第二の混合手段は押出機型の混合手段であり、
押出機スクリュの一部分は当該スクリュの中心軸と平行に配列されたバーまたはロッドを示している
ことを特徴とする製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法であって、
上記押出機スクリュはその全長にわたり、当該スクリュの中心軸と実質的に平行に配列された追加のバーまたはロッドを具備している
ことを特徴とする製造方法。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれ一項かに記載の製造方法であって、
処理される上記材料の供給時の数平均分子量は10000以上である
ことを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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