説明

高輝度放電ランプ

【課題】高輝度放電(HID)ランプに関し、温度制限に適した電極を備えた放電ランプを提供する。
【解決手段】高輝度放電ランプ1は、放電空間を取り囲む壁2を有する放電容器と、該空間に含まれるイオン性材料と、埋め込み部分4と、壁から延在して電極3の先端7で終了する電極軸6とを有し、先端の間に電気アークを確立する電極とからなる。電極軸の各々は、埋め込み部分と先端の間に配置された肉厚部分20と、埋め込み部分と肉厚部分の間に延在し第1長さと第1軸径を有する第1軸部分と、肉厚部分と先端の間に延在し第2長さと第2軸径を有する第2軸部分とからなる。肉厚部分は第1軸径の少なくとも50%の内壁からの最小距離を有し、第2軸部分の第2長さは第2軸径の少なくとも100%であり、第1長さは多くとも第2長さである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高輝度放電(HID)ランプに関し、より詳細には、温度制限に適した電極を備えた放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
高輝度放電ランプの電極構造は複数の要件によって左右され、同時に適切な電極動作を満たす必要がある。ランプは、確実に始動し、定常状態下で適切に機能する必要がある。電極の始動及び定常状態動作体制は、適切な電極構造に対して異なる、多くの場合矛盾する制約を設定する。
【0003】
ランプ動作の始動(即ち、点火)及び準備移行期間中、電極は電流の大きさの異なるグロー及びグロー・アーク遷移モードを通過する。有効製品寿命を長くするためには、放電プラズマからの重粒子衝突によるスパッタリングや、電極材料の融点温度付近、或いは時にはそれをも上回る過剰な蒸発速度に起因する電極劣化を低減するために、これらの移行期間をできるだけ短くする必要がある。電極動作のこれらの移行期間の最中、ランプの中で放電プラズマが発生して、一般にプラズマから電極への十分なエネルギー伝達が必要とされる。伝達されたエネルギーは、電界によって促進された熱電子電極放出がランプの動作状態を保つために必要な引継(take-over)電流を供給して、ランプを定常状態にする温度まで電極を加熱する。
【0004】
電極がそれらの定常状態動作温度まで加熱すると、電極の空間温度分布を適切に調整して、放電プラズマとの界面領域で必要な放電電流を供給する必要がある。一方で、電極材料の過剰な蒸発、ちらつき、アークの固定点の移動、及び電極最下部(foot-points)の過熱を避けるために、電極前面全体だけでなく電極軸に沿って適切な温度勾配を形成する必要がある。
【0005】
高い引継、準備及び/又は定常状態動作電流を有する高輝度放電ランプ、特に自動車用高輝度放電ランプの電極に関する要件の設定は更に厳しい。自動車用高輝度放電ランプの場合、光学投影系におけるランプ(自動車のヘッドランプ)の性能に関連する電極軸径、電極先端形状及び位置決めに関して設定された更なる制約が存在する。更に、「瞬時点灯」発生及び「ホットリスタート」機能の要件は、ランプ動作の始動及び準備移行期間中のランプ電流が大きく電極過負荷が重いことを意味する。自動車のヘッドランプは概してランプ準備中に70W〜90Wの電力で加熱され、この電力は約30秒以内に35Wまで徐々に減少して定格定常ランプ電力値及びランプ動作状態に到達する。結果的にこの準備期間中、電極本体の要部は定常状態と比べてかなり高い温度で動作する。これは非常に高い電極最下部温度をもたらすが、周囲の放電容器壁温度は低く、非作動ランプの温度値に近い。高温の電極最下部の容器壁及びこの部分を超えて、放電容器の真空気密閉鎖に関与する封止部(ピンチシール部)における高い空間及び時間温度勾配は、電極を取り囲むシールのガラスに非常に高い熱誘導機械的応力レベルをもたらす。これらの熱的に誘導された高い機械的応力は、ランプが繰り返し始動及び消灯する場合にこれらのピンチ又はシュリンクシール部に亀裂及び亀裂伝播を発生させる。これは、漏れ経路の形成、更には放電室の充填ガス及び線量成分の損失をもたらし、従って最終的にランプを動作不能にする。そのような寿命の短いランプが製品寿命性能及び信頼性に大きな影響を与えることによって、路上の安全もマイナスの形で影響を受け、車両維持費が増加する。
【0006】
高輝度放電ランプの電極が多くの場合電極先端の近くにコイル構造を有することは、従来技術により知られている。そのようなコイル部品の役割は、部分的には点火を促進し、部分的には電極の軸に沿って、特に電極先端付近の領域において放射冷却の向上を介して適切な軸方向温度勾配を設定することである。
【0007】
このようなコイル配置を備えたメタルハライドランプが、例えば米国特許第4,105,908号において開示されている。この既知のランプのグロー・アーク遷移は、タングステン軸上の裸のタングステン線コイルからなる電極を用いて加速し、このコイルはコア上の外巻を開放巻きにした2層の複合線と、その後軸上に密巻きすることによって作られる2層の複合線からなる。この構造は始動時のスパッタリングを減少させ、グロー・アーク遷移時間を短縮するが、開示のコイル構造は電極先端の比較的近くに配置されており、これは自動車産業によって設定された高輝度放電ランプに関する適用規格に矛盾する。そのため、この既知のランプは本技術分野において使用することができない。
【0008】
米国特許第4,232,243号において、高圧電気放電ランプが開示されている。その電極は、好ましくは電極先端の比較的近くに配置されたタングステン線コイルからなり、その配置は上記と同じ欠点を有する。
【0009】
HIDランプは、更に米国特許第4,893,057号において開示されている。この既知のHIDランプは、電極先端へのアークの急速な遷移をもたらす「全金属」電極を組み込んでいる。電極は、先端端部に密巻きコイルを有する長いトリウムタングステン線からなるため、電極先端の急速加熱がコイル隙間から先端へのアークの急速な遷移を促進するようになる。更に、コイルは電極先端の比較的近くにあり、電極最下部の温度も制限する代わりに、もっぱら点火にのみ関与する。
【0010】
自動車用高輝度放電ランプにおいて現在使用されている電極は、より単純な形状を有する。これらの電極は電極軸上にはコイル部品を有しておらず、少なくともアーク室の内部には決してない。なぜなら、これらのランプは、ランプが使用されるヘッドランプ/投影反射器の光学設計に基本的に関連する更なる制約に適合する必要があるからである。そのような光学的考察に関する厳しい制約やこれらのランプの放電容器の極めてコンパクトな形状により、一般に電極軸の先端及びその近くに追加の部品を配置することができなくなる。電極の軸方向温度分布は、放電プラズマと相互作用する電極先端の入力電力、電極軸の円筒側面の放射及び伝導/対流冷却、並びに電極最下部領域に対する軸断面全体の伝導力損失の間の力の均衡によって左右される。
【0011】
電極最下部のガラス壁への熱負荷を減少させるために、高い動作電流の高輝度放電ランプの電極上でコイルが使用されることも、従来技術から一般に知られている。前述のような電極軸の先端付近に配置されたコイルとは対照的に、そのようなコイルは放電室の外部に配置され、放電室の壁材によって取り囲まれる。即ち、放電室端部部分のガラス−金属シールのバルクガラス材料に「挟まれる」。このコイル構造は、電極最下部表面を増加させることによってコイル電極部分を取り囲むガラス上の単位面当たりの電力負荷を減少させるという利点があるにもかかわらず、高輝度放電ランプ製品において多用されていない。この理由の1つは、ガラス壁内でコイル部品を取り囲むマイクロチャネルにおける線量損失である。ランプ動作中、線量成分は放電室から外部へゆっくり移動し、シールにおいて電極上のコイルの周囲のマイクロチャネルを塞ぐ。この線量移動の結果としては、ランプパラメータの段階的変化がある。これは、アーク室内の線量の量及びその温度(「最冷点(コールドスポット)温度」)が、ランプの電気及び光学パラメータ、特にメタルハライドランプの色性能及び光束を決定する重要な要素であるからである。そのようなマイクロチャネルにおける著しい線量損失に起因するランプ性能の段階的な変化(しばしば非常に急速な変化)は容認できない。
【0012】
シールにおいて電極上のコイルを取り囲むマイクロチャネルにおける線量損失のまた別の結果としては、マイクロチャネル内の線量タンクの蓄積がある。例えば金属ハロゲン化物線量成分の熱膨張率は、チャネルを取り囲む石英ガラスの熱膨張率よりも数桁大きくなり得るので、この石英ガラスとタンク内の金属ハロゲン化物線量成分の間の熱膨張不整合による機械的応力によって亀裂が発生する可能性がある。最終的には、ランプが漏洩して動作不能になる可能性があり、破裂することさえあり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4,893,057号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、放電容器内の電極軸に沿った熱放散の向上によって(主には放電容器内の周囲の放電ガス及び蒸気による放射、更には対流/伝導によって)、電極最下部の温度を制限する電極を備えた高輝度放電ランプを提供することが特に必要である。更に、埋め込みコイルによるものよりも単純な最下部温度制限構造も必要である。更にまた、放電容器の中央部の方向に向いているその先端部分の近くに追加の要素を有していない電極構造を備えた同様のランプも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の例示的実施形態によって提供される高輝度放電ランプは、
放電空間を取り囲む壁を有する放電容器と、
前記空間に含まれるイオン性材料と、
少なくとも2つの電極であって、各々が埋め込み部分と、放電容器の壁から延在して電極の先端で終了する電極軸とを有しており、前記先端の間に電気アークを確立するために前記空間内に配置されている前記電極とからなり、
電極の電極軸の各々は、
電極の埋め込み部分と先端の間に配置された肉厚部分と、
埋め込み部分と肉厚部分の間に延在し、第1長さと第1軸径を有する第1軸部分と、
電極の肉厚部分と先端の間に延在し、第2長さと第2軸径を有する第2軸部分とからなる高輝度放電ランプにおいて、
肉厚部分は第1及び第2軸径のいずれよりも大きな全径を有することによって、第1軸部分の比表面積及び第2軸部分の比表面積それぞれよりも高い比表面積を有し、熱放散によって内壁における電極軸の温度を制限するように配置されており、
肉厚部分は第1軸径の少なくとも50%の内壁からの最小距離を有し、第2軸部分の第2長さは第2軸径の少なくとも100%であり、第1長さは多くとも第2長さである。
【発明の効果】
【0016】
提案された電極構造は、好ましくは高い引継、準備及び/又は定常状態動作電流を有する高輝度放電ランプにおいて使用することができる。提案された電極形状は、特に自動車用高輝度放電ランプに適用できる。本発明は、内壁の近くに配置された肉厚部分が電極の最下部を確実に効果的に冷却する一方で、電極軸の残りの部分は影響を受けないことによって、電極先端の周囲の追加の要素が望ましくない用途で使用できるという、従来技術よりも優れた利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】高輝度放電ランプの好適な実施形態の縦断面図である。
【図2】図1に示す電極構造の拡大概略断面図である。
【図3】電極構造の他の好適な実施形態の概略断面図である。
【図4】電極構造の他の好適な実施形態の概略断面図である。
【図5】電極構造の他の好適な実施形態の概略断面図である。
【図6】電極構造の他の好適な実施形態の概略断面図である。
【図7】電極構造の他の好適な実施形態の概略断面図である。
【図8】電極構造の他の好適な実施形態の概略断面図である。
【図9】電極構造の他の好適な実施形態の概略断面図である。
【図10】電極構造の他の好適な実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、添付図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0019】
まず図1及び2を参照すると、例示的実施形態の電極構造を備えた高輝度放電ランプ1が示されている。高輝度放電ランプ1は、放電空間を取り囲む壁2を有する放電容器と、該空間に含まれるイオン性材料とからなる。
【0020】
少なくとも2つの電極3がランプ内に配置されており、各々が好ましくは放電容器のピンチシール又はシュリンクシール部5によって壁2に密封された埋め込み部分4を有する。電極3は、内壁2から先端7まで延在する電極軸6も有する。電極は、先端7の間に電気アークを確立するために放電空間に配置される。
【0021】
電極3の電極軸6の各々は、
電極3の埋め込み部分4と先端7の間の肉厚部分20と、
埋め込み部分4と肉厚部分20の間に延在し、第1長さXと第1軸径D1を有する第1軸部分11と、
電極3の肉厚部分20と先端7の間に延在し、第2長さYと第2軸径D2を有する第2軸部分12とからなる。肉厚部分は、好ましくは電極軸6上に配置されたコイルとして形成される。
【0022】
肉厚部分20は、第1軸径D1及び第2軸径D2が必ずしも互いに異なるものではないと仮定して、D1及びD2のいずれよりも大きな全径Dを有する。肉厚部分20は大きな直径を有するので、第1軸部分11及び第2軸部分12の比表面積よりも高い比表面積も有する。この文脈における全径は、包括的な直径、即ち電極軸と平行であり肉厚部分20を取り囲む最小仮想円筒の直径を意味する。この文脈における比表面積は、所定の電極部分に関する断面積/断面長さの比率を意味する。その高い比表面積により、肉厚部分20は、熱放散によって、主には放電容器内の周囲のガス及び蒸気による放射、更には対流/伝導によって、内壁2、即ち電極最下部における電極軸6の温度を制限する。
【0023】
提案された電極構造の所望の効果を得るために、肉厚部分20は放電容器の内壁2に接触してはいけないが、好ましくは内壁2の近くに配置しなければならない。このようにして、電極最下部の局部的な温度制限は、電極軸6の熱放散の向上によって、即ち放電容器端部部分の容器壁2と高温の電極軸6の間の熱交換の向上によって達成されるが、肉厚部分20の周囲の壁2に対してマイナスの集中過熱を伴うことはない。我々の実験では、肉厚部分20は、内壁2から第1軸径D1の少なくとも50%の最小距離をあけて離間配置すべきであることが分かった。この文脈における最小距離は、内壁2に対する肉厚部分の最接近点の内壁2からの距離を意味する。そのような最小距離は、壁2と肉厚部分20の望ましくない接触に関する製造可能性及び位置決め精度の問題を解消しつつ、依然として電極最下部の局部的な温度制限機能を保証することになる。更に、肉厚部分20は、静止アークを確保するために、即ち先端7と肉厚部分20の間のアーク「ジャンプ」に起因するちらつき効果を回避するために、電極の先端7から離間配置すべきである。我々の実験では、第2軸部分の長さYが第2軸径D2の少なくとも100%であれば、ちらつき効果が回避されることが分かった。電極最下部の局部的な温度制限のため、及び電極先端7のアークの安定性のため、並びに電極部品を追加せずに放電容器の中央部を残すため、第1長さXは多くとも第2長さYと等しくすべきである。
【0024】
従って、提案された電極構造は電極軸上に肉厚部分20を有する。肉厚部分20は、好ましくは電極軸上に配置されたコイル要素として形成される。しかしながら、従来技術の電極構造とは対照的に、この肉厚部分20は完全にアーク室の内部に配置されており、全く放電容器壁とは直接接触しない。肉厚部分20は、できるだけ電極最下部の近くに配置しなければならない。このようにして、一般的な従来技術の考察で説明したように、放電容器の壁材によって覆われているコイルを有する電極構造の欠点は解消することができる。これにより、コイルの周囲のガラス金属シールにおける微小亀裂の発生及び伝播を回避することができる。
【0025】
同時に、電極軸6の最下部の温度が制限され、即ち、電極軸6が肉厚部分の表面上の主放射電力損失によって効率的に冷却される。この主放射冷却効果は、電極軸6の温度が電極の電流過負荷によって肉厚部分の領域においてもかなり高い時である、ランプの始動及び準備期間中に最も効率的である。このようにして、提案された電極構造によれば、電極軸6を通って最下部へ向かう伝導力が肉厚部分20上の主放射電力損失の量だけ低下するので、電極最下部の放電室壁への熱負荷が減少する。
【0026】
他方では、提案された電極構造の肉厚部分20が電極の先端7から離間配置されているので、電極軸6の前面の温度は基本的にランプの定常動作状態下で肉厚部分20の影響を受けない。これは、コイルが電極軸の先端領域の近くに配置される従来技術の構造と対照的である。電極先端温度分布が変化しないことに加えて、先端の近くの電極軸の形状が肉厚部分20の影響を受けないので、電極の先端部に関する光学的規制を提案された構造によって容易に満たすこともできる。
【0027】
肉厚部分20の寸法は、電極最下部及び電極先端の温度に関して設定された同時要件、電極先端領域に関する形状規制、並びに製造可能性及び位置決め精度規制に適応させる必要がある。肉厚部分20は、始動及び準備期間中に高度に要求される(主)放射電力損失のみならず、定常状態中にはるかに減少する最適放散電力損失を確保する必要がある。
【0028】
好適な実施形態では、第2長さは第2軸径D2の少なくとも150%、好ましくは少なくとも200%である。先端7からのこの間隔により、先端7の周囲の電極パラメータが受ける影響を更に低くしながら、電極最下部に対するより集中的な冷却が可能となる。
【0029】
図示の実施形態では、第1軸径D1及び第2軸径D2は、その長さに沿って均一直径を有する電極軸6を適用することによって等しくなる。しかしながら、第1軸径D1及び第2軸径D2は異なっていても良いが、肉厚部分20は常にD1、D2のいずれよりも大きな全径Dを有する。
【0030】
肉厚部分は、電極軸6上に準軸対称本体として形成することもできる。図3〜10は、電極軸6上の準軸対称本体の例示的実施形態を図示する。本体は、別々に製造して電極軸6上に例えば溶接によって固定することも、電極軸6と一体的に製造することもできる。本体は、電極最下部のより効果的な冷却をもたらす比表面積を更に増加させるためにリブ付き又はでこぼこの表面を有することができる。肉厚部分21は、図3に示すような円筒状本体であっても良い。円形リブ31を備えた円筒状肉厚部分22を図4に示す。本体は、球、楕円、又は円錐形状を有することもできる。楕円状本体を有する肉厚部分23を図5に示す。
【0031】
特に好適な実施形態では、肉厚部分の本体は壁2に向かって先細りする形状を有しており、この先細り形状は好ましくは放電容器の内壁2の形状に従っている。そのような肉厚部分24及び25は、それぞれ図6及び7に拡大して示す。肉厚部分24及び25の寸法は、アーク管そのものの製造可能性の問題を回避するようにして選択する必要があり、例えば、肉厚部分24及び25は、容器の端部部分の封止が行われる前に放電容器の端部部分の孔に嵌合して滑り込まなければならない。図6の肉厚部分24は、放電容器の内壁2と基本的に平行に続いている外壁を有する楕円断面の形状を有する。図7の肉厚部分25は円形リブ32を備えており、その縁は基本的に放電容器の内壁2の形状に従っていて、即ち、壁2とリブ32の縁の間の距離は全てのリブ32に関しておおよそ同じである。これらの実施形態は、2つの主な利点を有する。第一に、肉厚部分24、25が壁2を基本的に均一に加熱することによって、放電容器の局部過熱を回避する。第二に、肉厚部分24、25をできるだけ壁2の近くに配置しながら可能な限り高い比表面積を提供することによって、高い熱放散効率を確保し、電極要素を追加せずに放電容器の中央部を残すことができる。これは、例えば、ランプの中央部に特別な電極要素を追加することを適用規格で禁じられている自動車用途において非常に重要である。
【0032】
更なる好適な実施形態では、肉厚部分は電極軸6上のコイルとして形成されており、コイルは電極軸上に、好ましくは溶接、より好ましくは溶融される。このような溶融肉厚部分26を図8に示す。溶接又は溶融構造によって、電極軸6の接触面と肉厚部分26の間の熱伝達が向上し、より堅固な構造が得られる。図9に図示するように、肉厚部分27を形成するコイルは、好ましくは埋め込み部分4の方向に向かう面よりも先端の方向に向かう面上により多くの巻線層を有する多層コイルにすることができる。肉厚部分は、従来技術のコイルを電極先端7に形成するのと基本的に同じ方法で、電極軸6の表面の周囲のコイルとして非常に簡単に形成することができる。先細りのコイル構造は、図6及び7の実施形態と同様の利点を有する。
【0033】
上記の電極構造の実施形態により、従来技術の電極製造技術を電極先端に応用することができる。図10に図示するように、肉厚部分20に加えて、第2軸部分12は先端に更なる肉厚部分33を備えることができる。更なる肉厚部分33は好ましくは従来技術から知られているコイルとして形成され、第2軸部分12上に溶接、より好ましくは溶融することができ、更に例えば球状に成形することもできる。更なる肉厚部分33は、肉厚部分のいずれの実施形態でも使用することができる。
【0034】
電極軸及び肉厚部分は、当該技術分野で使用される任意の適切な材料からなっても良い。例えばThO(二酸化トリウム)、希土類酸化物等を添加したタングステン又は無添加のタングステン、或いは例えばK、Al及び/又はSiを含有するタングステン合金は、電極軸及び肉厚部分の両方に適している。肉厚部分に関しては、追加の合金添加物としてのタングステンの有無にかかわらずMo、Re、Os及び/又はそれらの合金等の低い溶融温度を有する材料を使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
上記の電極構造は、特に、高い引継、準備及び/又は定常状態動作電流を有する高輝度放電ランプに適用でき、より詳細には自動車用高輝度放電ランプに適用できる。提案された電極構造は、信頼性の向上と長い製品寿命をもたらす。これらの利点は、電極最下部における放電容器の壁への熱負荷を減少させ、それによって、ランプを繰り返し点灯及び消灯していても電極を取り囲む放電容器の壁の亀裂発生及び伝播の可能性を削減することによって達成される。
【0036】
最良の形態を含む本明細書は実施例を使用して本発明を開示し、当業者が本発明を製造し、且つ使用できるようにするものである。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲に規定され、当業者が想到するその他の例を含む。このようなその他の例は、特許請求の範囲の文言と相違しない構成要素を有する場合又は特許請求の範囲の文言と実質的に相違しない同等の構成要素を含む場合に、特許請求の範囲内に含まれることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高輝度放電ランプ(1)であって、
放電空間を取り囲む壁(2)を有する放電容器と、
前記空間に含まれるイオン性材料と、
少なくとも2つの電極(3)であって、各々が埋め込み部分(4)と、前記放電容器の前記壁(2)から延在して前記電極(3)の先端(7)で終了する電極軸(6)とを有しており、前記先端(7)の間に電気アークを確立するために前記空間内に配置されている前記電極(3)とからなり、
前記電極(3)の前記電極軸(6)の各々は、
前記電極(3)の前記埋め込み部分(4)と前記先端(7)の間に配置された肉厚部分(20〜27)と、
前記埋め込み部分(4)と前記肉厚部分(20〜27)の間に延在し、第1長さ(X)と第1軸径(D1)を有する第1軸部分(11)と、
前記電極(3)の前記肉厚部分(20〜27)と前記先端(7)の間に延在し、第2長さ(Y)と第2軸径(D2)を有する第2軸部分(12)とからなる前記高輝度放電ランプ(1)において、
前記肉厚部分(20〜27)は前記第1及び第2軸径(D1、D2)のいずれよりも大きな全径(D)を有することによって、前記第1軸部分の比表面積及び前記第2軸部分の比表面積それぞれよりも高い比表面積を有し、熱放散によって前記内壁(2)における前記電極軸(6)の温度を制限するように配置されており、
前記肉厚部分(20〜27)は前記第1軸径(D1)の少なくとも50%の前記内壁(2)からの最小距離を有し、前記第2軸部分(12)の前記第2長さ(Y)は前記第2軸径(D2)の少なくとも100%であり、前記第1長さ(X)は多くとも前記第2長さ(Y)であることを特徴とする、高輝度放電ランプ。
【請求項2】
前記第2長さ(Y)は前記第2軸径(D2)の少なくとも150%であることを特徴とする、請求項1に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項3】
前記第2長さ(Y)は前記第2軸径(D2)の少なくとも200%であることを特徴とする、請求項1に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項4】
前記第1軸径(D1)及び前記第2軸径(D2)は互いに等しいことを特徴とする、請求項1に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項5】
前記肉厚部分(20〜27)は準軸対称本体として形成されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項6】
前記準軸対称本体は、その比表面積を更に増加させるためにリブ付き表面を有することを特徴とする、請求項5に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項7】
前記準軸対称本体は、球、円筒、楕円、又は円錐形状を有することを特徴とする、請求項5に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項8】
前記準軸対称本体は先細り形状を有することを特徴とする、請求項5に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項9】
前記準軸対称本体の前記先細り形状は、前記放電容器の前記内壁(2)の形状に従うことを特徴とする、請求項8に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項10】
前記肉厚部分(20、26、27)は前記電極軸(6)上のコイルとして形成されることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項11】
前記コイルは前記電極軸(6)上に溶接又は溶融されることを特徴とする、請求項10に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項12】
前記コイルは多層コイルであることを特徴とする、請求項10に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項13】
前記コイルは、前記埋め込み部分(4)の方向に向かう面よりも前記先端(7)の方向に向かう面上により多くの巻線層を有することを特徴とする、請求項12に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項14】
前記第2軸部分(12)は、前記先端(7)に更なる肉厚部分(33)を備えていることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の高輝度放電ランプ。
【請求項15】
前記更なる肉厚部分(33)は、前記電極軸(6)上に溶接又は溶融されたコイルとして形成されることを特徴とする、請求項14に記載の高輝度放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−177188(P2010−177188A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−296932(P2009−296932)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】