説明

魚油を含む飼料

【課題】 本発明は、高い嗜好性を有する飼料を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明者らは、魚油の嗜好性に着目し、魚油を魚の種類よって区別して、魚油に対する動物の嗜好性を調査した。また、魚油を接種した動物の血中β-エンドルフィンの血中濃度を調査した。これらの調査の結果から、魚油に対する動物の嗜好性が魚の種類よって異なることを見いだし、本発明に想到するに至った。本発明は、タラ目に属する魚の魚油を含有する摂餌性を向上させた動物飼料を提供する。また、動物用飼料に添加する魚油として、タラ目に属する魚の魚油を用いることを特徴とする動物用飼料の摂餌性を向上させる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い嗜好性を有する飼料に関する。より詳細には、本発明は高い嗜好性を有する魚油を含む飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
魚油は、生体に対して種々の効果を有することが知られている。たとえば、魚油に含まれるω3多価不飽和脂肪酸(n-3 polyunsaturated fatty acid、n-3 PUFA)は、生体に対する効果が研究されており、特に魚油に含まれるエイコサペンタエン酸(以下、「EPA」と記載)およびドコサヘキサエン酸(以下、「DHA」と記載)は、生体に対して種々の効果を有することが報告されている。これらは、たとえば動脈硬化を防ぐ効果、コレステロール値を下げる効果、中性脂肪値を下げる効果、並びに心臓病、癌および糖尿病などの疾患に対する効果などを有することが、広く報告されている。
【0003】
また、魚油に含まれるω3多価不飽和脂肪酸は、サプリメントなどにも添加されているし、機能性成分として、様々な食品にも添加されている。さらに、魚油は、動物のための飼料に対しても、栄養源としてなどの種々の目的で添加されている。
【0004】
たとえば、ウシおよびブタなどの家畜、並びにトリなどの家禽におけるω3多価不飽和脂肪酸の含量を増大するために、これらの脂肪酸を多く含む飼料を家畜に与えることが開示されている(特許文献1および2)。その他、家畜の肉の風味や柔らかさを改善することを目的として、家畜の飼料にω3多価不飽和脂肪酸を添加することが開示されている(特許文献3)。
【0005】
一方、ヒトおよび動物は、油脂に対して高い嗜好性を示すことが知られている。このような油脂に対する嗜好性には、内在性オピオイドペプチド、特にβ-エンドルフィンが関与していることが明らかになされている(非特許文献1および2)。さらに、動物試験では、動物が遊離脂肪酸、特に長鎖脂肪酸に対して高い嗜好性を示すことが報告されている(非特許文献3および4)。
【0006】
また、ヒトおよび動物が通常摂取している油脂は、主にトリグリセリドから構成されている。これらのトリグリセリドは、種々の脂肪酸組成を有するが、脂肪酸組成の相違による動物の嗜好性の変化は、いまだ不明のままである。
【0007】
さらに、魚油の嗜好性については、ほとんど研究されていない。また、種々の目的で魚油を飼料に含めることは知られているものの、魚の種類に基づいて魚油を区別して、動物によるその嗜好性を調べた報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-046081号公報
【特許文献2】特開2010-046081号公報
【特許文献3】特開2008-131949号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Sclafani A., (2001).Psychobiology of food preferences.Int J Obes Relat Metab Disord, 25(Suppl 5), S13-16.
【非特許文献2】Mizushige, T., Saitoh, K., Manabe, Y.,Nishizuka, T., Taka, Y., Eguchi, A., Yoneda, T., Matsumura, S., Tsuzuki, S.,Inoue, K., & Fushiki, T. (2009) Preference for dietary fat induced byrelease of beta-endorphin in rats. Life Sci, 84, 760-765.
【非特許文献3】Laugerette, F., Passilly-Degrace, P.,Patris, B., Niot, I., Febbraio, M., Montmayeur, J.P., & Besnard, P. (2005)CD36 involvement in orosensory detection of dietary lipids, spontaneous fatpreference, and digestive secretions. J Clin Invest, 115(11), 3177-3184.
【非特許文献4】Tsuruta, M., Kawada, T., Fukuwatari, T., & Fushiki, T.(1999) The orosensory recognition of long-chain fatty acids in rats. Physiol.Behav. 66,285-28.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高い嗜好性を有する飼料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の通り、魚油の嗜好性については、ほとんど研究されていない。本発明者らは、魚油の嗜好性に着目し、魚油を魚の種類よって区別して、動物の魚油に対する嗜好性を調査した。また、魚油を摂餌した動物の血中β-エンドルフィンの血中濃度を調査した。これらの調査の結果から、魚油に対する動物の嗜好性が魚の種類よって異なることを見いだし、本発明に想到するに至った。
【0012】
本発明は、タラ目に属する魚の魚油を含有する動物飼料を提供する。
【0013】
また、本発明は、動物が哺乳類または家禽類である、上記動物飼料を提供する。
【0014】
また、本発明は、魚油がスケトウダラ油である、上記動物飼料を提供する。
【0015】
また、本発明は、動物飼料中の魚油の含有量が総飼料の5重量%〜10重量%である、上記動物飼料を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、動物の摂餌性を高めるための方法であって、上記動物飼料を動物のための飼料として与える工程を含む方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の動物飼料は、高い嗜好性を有するため、家畜などの動物の摂餌性を高めることができる。また、本発明の動物飼料を動物に与えることにより、動物の摂餌性が高まるので、家畜などの生産性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の動物飼料は、摂餌性を改善するために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】マウスがスケトウダラ油、サンマ油、イワシ油およびマグロ油をそれぞれ10%添加した粉末飼料を摂餌した1匹、1日あたりの量を示す図。
【図2】2ボトル選択試験において、マウスが5%のスケトウダラ油および5%のサンマ油を摂取した量(1日、1匹あたり20分間に摂取した量)を示す図(図2A)および2ボトル選択試験において、マウス1匹あたりが5%のスケトウダラ油および5%のイワシ油を摂取した量(1日、1匹あたり20分間に摂取した量)を示す図(図2B)。
【図3】1ボトル摂取試験における5%のスケトウダラ油区および5%のサンマ油区のマウスの摂餌料を示す図。
【図4】1ボトル摂取試験における5%のスケトウダラ油区および5%のサンマ油区のマウスの血中β-エンドルフィン濃度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の動物飼料は、以下の実施例に示したように、魚油を魚の種類よって区別して動物の魚油に対する嗜好性を調査した結果、魚油に対する動物の嗜好性が魚の種類よって異なることを見いだしたことに基づく。以下、本発明の動物飼料について、詳細を説明する。
【0021】
本発明の動物飼料は、タラ目に属する魚の魚油を含有する。本発明の動物飼料のための原料として使用される魚油は、タラ目に属する魚の魚油である。タラ目に属する魚の例には、具体的には、スケトウダラ、ミナミダラ、ノーザンブルーホワイティング、キングクリップ、メルルーサ、マダラおよびホキなどを含む。特に、スケトウダラから精製されたスケトウダラ油が好ましい。また、本明細書において、魚油とは、魚から精製された脂肪酸をいい、魚油に含有される脂肪酸がそれらの塩またはエステルにされたものを包含する。また、本発明の動物飼料に使用される魚油は、医薬および食品に対して許容される程度に精製されたものであれば、任意の魚油を使用することができる。
【0022】
魚から魚油を精製するためには、たとえば以下の方法を使用することができる。まず、魚を粉砕する。たとえば、水産加工により発生する魚の頭、皮、中骨および内臓などの加工残滓を粉砕する。次いで、粉砕物を蒸煮した後、圧搾して煮汁(スティックウォーター、SW)と圧搾ミールに分離する。SWを、さらに遠心分離を繰り返して濃縮し、魚油に加工する。このようにして得られた魚油は、さらにシリカゲルおよび活性炭によって精製することもできる。また、得られた魚油は、さらに水蒸気蒸留法によって脱臭することもできる。
【0023】
実施例で用いた魚油は、シリカゲルおよび活性白土による脱色処理、並びに水蒸気蒸留による脱臭処理を施した精製魚油であり、使用する魚の種類にかかわらず、特徴的な色や臭いを有するものはなく、ヒトが臭いや外観から魚の種類を識別することができない程度に精製されたものである。さらに、このようにして精製された魚油は、いずれも酸化等の劣化は認められなかった。
【0024】
本発明で用いる精製魚油は、たとえば表1に示すような脂肪酸組成を有する。魚油は、漁獲の季節や魚のサイズなどによってその脂質の含有率や脂肪酸組成なども変化するが、本実施例では、表1の組成の油脂を用いた。スケトウダラ油の場合、面積百分率で飽和脂肪酸17.5%、MUFA 48.8%、n-6 PUFA 1.5%およびn-3 PUFA 22.2%を含むものである。
【0025】
【表1】

【0026】
表1には、スケトウダラ、サンマ、イワシおよびマグロから精製された魚油の脂肪酸組成の例を示してある。これらの魚のうち、本発明の動物飼料に使用されるスケトウダラ油は、サンマ油、イワシ油およびマグロ油と比較すると、脂肪酸組成において以下のような特徴を有する。スケトウダラ油およびサンマ油は、脂肪酸末端から3番目に二重結合を有する多価不飽和脂肪酸の含有量が全脂肪酸のうちの22〜23%を占めており、イワシ油およびマグロ油よりも少ない。また、スケトウダラ油およびサンマ油は、モノ不飽和脂肪酸の含有量がイワシ油およびマグロ油よりも多く、45〜50%程度を占めている。そして、スケトウダラ油とサンマ油とを比較すると、スケトウダラ油は、モノ不飽和脂肪酸のうち16:1および18:1のものが比較的多く、それぞれ7〜8%および16%程度を占める。また、スケトウダラ油は、モノ不飽和脂肪酸のうち20:1および22:1のものがサンマ油よりも少なく、それぞれ11〜12%および13〜14%程度を占めている。
【0027】
また、本発明の動物飼料に使用される魚油は、含有される脂肪酸がそれらの塩またはエステルにされたものであることもできる。塩には、任意の無機塩基および有機塩基と形成される脂肪酸塩を含む。たとえば、塩には、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛などと形成される金属塩、並びにアミン、コリンおよびリジンなどと形成される有機酸塩を含むが、限定されない。また、エステルには、任意のアルコールと形成された脂肪酸エステルを含む。たとえば、エステルには、グリセリン、ソルビトールおよびショ糖などの多価アルコールと形成された脂肪酸エステルを含むが、限定されない。特に、本発明の動物飼料に使用される魚油は、グリセリドであることができる。
【0028】
本発明の動物飼料は、任意の動物のための飼料として使用することができる。本発明の動物飼料は、たとえばマウス、ブタ、ウシおよびヒツジなどの哺乳類、並びにニワトリなどの家禽類を含む任意の動物に与えることができる。
【0029】
本発明の動物飼料において、魚油以外の成分は、当業者に公知の任意の飼料成分であることができる。たとえばマウス、ブタ、ウシおよびヒツジなどの哺乳類、並びにニワトリなどの家禽類に適した任意の飼料に対して、任意の量の魚油を配合することができる。たとえば、本発明の動物飼料中の魚油の含有量は、全飼料のうち0.01〜99.9重量%、たとえば0.1〜10重量%および5〜10重量%であることができる。
【0030】
また、本発明の動物飼料は、動物に摂餌させる場合、動物の種類、年齢、体重および健康状態などの条件に応じて、任意の量を摂餌させることができる。本発明の動物飼料は、たとえば、1日1回または2〜4回以上に分割して、適宜間隔をあけて摂餌させることができる。また、本発明の動物飼料は、強力な効果や副作用を有するものではないので、1日の摂取量に制限はない。
【実施例】
【0031】
実験には、以下のとおりの材料を使用した。
【0032】
実験に使用したスケトウダラ油、サンマ油、イワシ油およびマグロ油は、以下のとおりに精製したものを使用した。まず、それぞれの魚の頭、皮、中骨および内臓などの加工残滓を粉砕し、次いで、粉砕物を蒸煮した。次いで、圧搾して煮汁(スティックウォーター、SW)と圧搾ミールに分離した。SWを、さらに遠心分離を繰り返して濃縮し、魚油に加工した。このようにして得られた魚油をさらにシリカゲルおよび活性炭によって精製した。また、得られた魚油をさらに水蒸気蒸留法によって脱臭した。各魚油の脂肪酸組成は、上記の表1に示したとおりであった。
【0033】
BALB/Cマウスは、日本チャールズ・リバー(株)から入手した。マウスのための粉末MF飼料は、オリエンタル酵母工業株式会社から入手した。
【0034】
実施例1 摂餌量実験
本実験では、スケトウダラ油、サンマ油、イワシ油およびマグロ油の4種類の魚油に対するマウスの嗜好性を調べた。
【0035】
6匹のBALB/Cマウスを3匹/ケージで40×40×18cmのケージに飼育した。4つの餌箱をそれぞれのケージの4つの角に置いた。予備試験において、魚油を添加した餌の味を慣れさせるためにスケトウダラ油、サンマ油、イワシ油およびマグロ油の4種類の魚油を、粉末MF飼料に対して10%添加して、4つの餌箱のそれぞれに同量の飼料を入れて、マウスを5日間飼育した。続いて、5日間の実験において、マウスを毎日7時間絶食させた後、スケトウダラ油、サンマ油、イワシ油およびマグロ油をそれぞれ10%添加した粉末MF飼料を、4つの餌箱にそれぞれ同量入れて飼育した。5日間の実験において、毎日新鮮な餌に置き換えた。置き換えた餌箱のそれぞれの重量を測定することによって、それぞれの魚油を10%添加した粉末MF飼料の摂餌量を調べた。
【0036】
結果を図1に示してある。結果は、5日間の実験において、それぞれの魚油を10%添加した粉末MF飼料の1日当たりの1匹の摂餌量の平均±SE(n=5)を示す。*および**は、それぞれスケトウダラ油摂取区からの有意差を示す。
【0037】
図1に示した結果から、スケトウダラ油を添加した餌は、サンマ油、イワシ油およびマグロ油を添加した餌と比べると摂餌量が多く、スケトウダラ油に対して高い嗜好性を示したことが分かる。
【0038】
実施例2 2ボトル選択試験
本実験では、スケトウダラ油とサンマ油およびスケトウダラ油とイワシ油について、それぞれの魚油に対するマウスの嗜好性を調べた。
【0039】
6匹のBALB/Cマウスを3匹/ケージで飼育した。5日間のトレーニングの期間中、飲料水として、0.3%のキサンタンガム水溶液(溶媒とした)と0.3%キサンタンガム水溶液にサフラワー油を5重量%添加した溶液をそれぞれ2つの給水瓶に入れて、マウスに提供した。
【0040】
続いて、1群のマウスでは、5日間の間、マウスを毎日2時間絶食絶水させた後、0.3%キサンタンガム水溶液にスケトウダラ油またはサンマ油を5重量%添加し、均一に混合したものをそれぞれ給水瓶に入れて、これらの2つの給水瓶をマウスに20分間提供し、摂取させた。それぞれの給水瓶を取り出して、それぞれの摂取量を測定した。
【0041】
もう一方の群のマウスでは、5日間の間、マウスを毎日2時間絶食絶水させた後、同様に、スケトウダラ油またはイワシ油5重量%を添加し、2つの給水瓶に入れて、マウスに20分間提供し、摂取させた。それぞれの給水瓶を取り出して、それぞれの摂取量を測定した。
【0042】
結果を図2AおよびBに示してある。図2Aは、スケトウダラ油とサンマ油を与えたマウスの結果を示す。一方、図2Bは、スケトウダラ油とイワシ油を与えたマウスの結果を示す。結果は、5日間の実験において、それぞれの魚油を混合した飲料水の1日の1匹あたりの20分間の摂取量の平均±SE(n=5)を示す。**および***は、それぞれスケトウダラ油摂取区からの有意差を示す。
【0043】
図2AおよびBに示した結果から、いずれの実験においても、スケトウダラ油を混合した飲料水は、イワシ油およびサンマ油を混合した飲料水と比べると摂餌量が多く、マウスは、スケトウダラ油に対して高い嗜好性を示したことが分かる。
【0044】
実施例3 1ボトル摂取試験
本実験では、スケトウダラ油およびサンマ油の2種の魚油に対するマウスの嗜好性を調べた。
【0045】
16匹のBALB/Cマウスを2群に分け、1匹/ケージで飼育した。一方の群のマウスには、5日間の間、マウスを毎日2時間絶食絶水させた後、0.3%キサンタンガム水溶液にスケトウダラ油を5重量%添加し、給水瓶に入れて、マウスに20分間提供し、摂取させ、その後に給水瓶を取り出して、摂取量を測定した。もう一方の群のマウスでは、同様に5日間の間、マウスを毎日2時間絶食絶水させた後、同様にサンマ油5重量%を添加し、給水瓶に入れて、マウスに20分間提供し、摂取させ、その後に給水瓶を取り出して、摂取量を測定した。
【0046】
結果を図3に示してある。図3は、スケトウダラ油を与えたマウス群とサンマ油を与えたマウス群の結果を示す。結果は、5日間の実験において、それぞれの魚油を混合した媒体の1日の1匹あたりの20分間の摂餌量の平均±SE(n=8)を示す。*は、スケトウダラ油摂取区からの有意差を示す。
【0047】
図3に示した結果から、スケトウダラ油を混合した媒体を与えたマウス群は、サンマ油を混合した媒体を与えたマウス群と比べると摂餌量が多く、マウスは、スケトウダラ油に対して高い嗜好性を示し、摂餌性が向上したことが分かる。
【0048】
実施例4 1ボトル摂取試験における血中β-エンドルフィン濃度試験
β-エンドルフィンのような内因性オピオイドは、油脂に対する高い嗜好性に関与していることが報告されている。本実験では、スケトウダラ油およびサンマ油の2種の魚油への嗜好性に対するβ-エンドルフィンの影響を調べた。
【0049】
実施例3と同様に、16匹のBALB/Cマウスを2群に分け、1匹/ケージで飼育した。一方の群のマウスでは、5日間の間、マウスを毎日2時間絶食絶水させた後、媒体に均一に混合した5%のスケトウダラ油給水瓶に入れて、マウスに20分間提供した。もう一方の群のマウスでは、同様に5日間の間、マウスを毎日2時間絶食絶水させた後、同じように媒体に均一に混合した5%のサンマ油を油給水瓶に入れて、マウスに20分間提供した。実験の最終日に、20分間の摂取実験の直後、頚動脈から採血した。血液を3000rpm、15分間で遠心した後、得られた血漿を用いて血中β-エンドルフィン濃度を測定した。血中β-エンドルフィン濃度は、ELISAキット(Peninsula Laboratories, San Carlos, California)によって測定した。
【0050】
結果を図4に示してある。図4は、スケトウダラ油を与えたマウス群とサンマ油を与えたマウス群における血中β-エンドルフィンの相対量を示す。
【0051】
図4に示した結果から、スケトウダラ油を与えたマウス群とサンマ油を与えたマウス群における血中βエンドルフィン濃度は、ほとんど相違していなかったことが分かる。内在性オピオイドは、油脂に対する高い嗜好性に関与しているが、種類の異なる油脂に対して、嗜好性が異なる原因ではないことが示唆された。
【0052】
上記の実施例1〜4の結果から、マウスがスケトウダラ油に対して高い嗜好性を示すことが示された。また、その嗜好性は、β-エンドルフィン濃度の増加によるものではないことが示唆された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タラ目に属する魚の魚油を含有する摂餌性を向上させた動物飼料。
【請求項2】
前記動物が哺乳類または鳥類である、請求項1に記載の動物飼料。
【請求項3】
前記魚油がスケトウダラ油である、請求項1または2に記載の動物飼料。
【請求項4】
前記動物飼料中の魚油の含有量が総飼料の5重量%〜10重量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の動物飼料。
【請求項5】
動物用飼料に添加する魚油として、タラ目に属する魚の魚油を用いることを特徴とする動物用飼料の摂餌性を向上させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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