説明

魚用飼料中の合成添加物を置換する、天然かつ持続可能な海藻配合物

現在サケ魚飼料で使用されている合成化学物質添加物を置換する、海藻に基づく商業的なサケ飼料添加物を提供する。合成添加物を海藻種の組み合わせと置換し、それによって、養殖魚の栄養価を向上させ、魚を有機物として販売するのに適したものとし、養殖業務の環境に対する影響を低減し、かつ寄生虫駆除で使用する化学薬品を置換し得る、天然製品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水産養殖に関する。一定の実施形態は、飼料ペレット、飼料ペレットを生成する方法、および飼料ペレットのため天然添加物を提供する。
(関連出願の相互参照)
本出願は、合衆国法典第35巻第119条(e)の下で、2009年7月17日に出願された米国特許仮出願第61/271,148号、名称「Natural and Sustainable Seaweed Formula that Replaces All (Synthetic) Additives In Fish Feed」の優先権を主張するものであり、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
水産養殖で使用される飼料ペレットは、典型的に、約40%の魚粉等のタンパク質、約30%の魚油、および約30%の結合剤、充填剤、ビタミンおよび鉱物混合物、着色剤および抗生剤、ならびに他の医療用化学物質等の他の成分から成る。充填剤および結合剤は、タンパク質に富む成分を互いに結合して水中での安定性を向上させ、かつ他の所望の特性を試料ペレットに提供するために使用される。
【0003】
水産養殖で使用される飼料ペレットは、典型的に、結合剤を含む。結合剤は、飼料製造工程の効率を向上させ、飼料浪費を低減し、かつ水安定性の食餌を生成するために使用される物質である。例えば、ベントナイト、リグノスルホン酸塩、ヘミセルロース、およびカルボキシメチルセルロース等の結合剤は、飼料製造工程の効率を向上させるように(すなわち、ペレット化中の、ペレットダイを通しての飼料混合物の摩擦力を低減し、それによって、飼料ミルの出力および仕事効率を高めることによる)、および耐久性のあるペレットを生成するために(すなわち、ペレットの硬度を高め、ペレット化工程中、ならびに取り扱いおよび輸送中に「微紛」の形態での浪費を低減することによる)、主に飼料分配量の範囲内で使用される。飼料ペレットの結合剤として一般に使用されている成分には、小麦グルテン(グルカン)、ナトリウムおよびカルシウムベントナイト、リグニンスルホン酸、ヘミセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ならびにグアーガムが挙げられる。
【0004】
サケの飼料ペレットには、赤色の呈色を好む消費者に合わせるように、着色剤が使用されている。例えば、アスタキサンチンまたはカンタキサンチン等の石油化学的に誘導されたケトカロテノイド色素が、しばしば、着色剤として使用される。赤色の呈色を好む消費者に合わせるために、サケの魚肉は、魚肉1kgあたり少なくとも5〜20mgの色素を含有しなければならない。これらのレベルを達成するために、飼料1kgあたり少なくとも40〜60mgのカンタキサンチンまたは40〜150mgのアスタキサンチンを添加しなければならない。しかしながら、公衆の健康上の懸念は、欧州委員会に、サケ飼料中のそのような着色剤の許容レベルを(以前の80mg/kgという最大レベルから)25mg/kgに減じるように促した。カンタキサンチンおよびアスタキサンチン等のケトカロテノイドは、高価でもあり、いくつかの従来の飼料ペレットのコスト全体の約10〜15%を占める。
【0005】
充填剤成分は、しばしば、例えばエトキシキン等の防腐剤も含有し、これは、しばしば、魚用飼料中の抗酸化剤として使用される。適切な抗酸化剤を伴わなければ、魚用飼料ペレットの酸化速度は、化学的な熱が魚粉を燃焼させるのに十分な程度になる可能性がある。しかしながら、エトキシキンを給餌した実験動物では、多数の悪影響が報告されている(National Toxicity Program、CAS No.91−53−
2、http://ntp.niehs.nih.gov/ntp/htdocs/Chem_Background/ExSum Pdf/Ethoxyquin_508.pdfを参照されたい)。欧州連合では、飼料材料中のエトキシキンの最大許容含有量は、150mg/kgであり、人間が使用する食品中の最大許容残量は、0.5の100万分の1(ppm)である。
【0006】
従来の魚飼料ペレットはまた、かなりの量の無駄につながる可能性もある。無駄の一部は、食べ残しであり、また、無駄の一部は、糞便である。そのような無駄と関連する経済的な問題は別として、食べ残しおよび糞便はまた、水産養殖場所に環境の悪影響を与える。
【0007】
いくつかの従来の飼料材料に関する別の問題は、個々の飼料成分および配合飼料の貯蔵時の酸化損傷(酸敗臭)および微生物攻撃に対する感受性である。例えば、天然の抗酸化保護がない場合、多価不飽和脂肪酸(例えば、魚油、魚粉、米糠、およびいくつかの圧搾油種かす)に富む飼料材料は、非常に酸化分解を受け易く、その結果、構成脂質、タンパク質、およびビタミンの栄養価の低下を引き起こし得る。同様に、高い含水量(>15%)を有する飼料材料は、微生物攻撃および分解を受け易く、非反芻動物の栄養価の損失および有害なマイコトキシンの生成を結果として伴う。
【0008】
水産養殖産業が直面している別の問題は、養殖魚がウイルスおよびその他の感染症にかかり易くなる可能性があることである。例えば、養殖サケは、膵性疾患を発症することが知られている。故に、養殖魚には、しばしば、疾患に対する耐性を提供するために、人手によってワクチン接種が行われる。そのような人手による予防接種は、コストと時間がかかる可能性がある。
【0009】
魚および他の動物に給餌するための種々の種類の成分の使用に関する多数の特許および特許出願公開がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,125,392号
【特許文献2】米国特許第5,715,774号
【特許文献3】米国特許第5,722,346号
【特許文献4】米国特許第6,747,001号
【特許文献5】米国特許第6,764,691号
【特許文献6】米国特許出願公開第2008/0003326号
【特許文献7】PCT公開第97/00021号
【特許文献8】PCT公開第00/25602号
【特許文献9】PCT公開第2004/043139号
【特許文献10】PCT公開第2004/080196号
【特許文献11】PCT公開第2006/115336号
【特許文献12】PCT公開第2006/123939号
【特許文献13】PCT公開第2007/117511号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、魚および他の海洋動物のための改善された飼料配合物が必要であると判断した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、現在サケ飼料で使用されている合成化学物質添加物を置換する、海藻ベースの商業的なサケ飼料成分を提供する。合成添加物(寄生虫駆除を含む)は、コストの約20%および飼料の重量の15%を占める。本発明は、構成添加物を持続可能な天然製品と置換し、該天然製品は、養殖魚の栄養価を向上させ、魚を有機物として販売するのに適したものとし、養殖業務の環境に対する影響を低減し、かつ寄生虫駆除で使用する化学薬品を置換し得る。
【0013】
本発明は、世界中で採取することができる海藻に基づいて配合される。海藻は、乾燥、製粉、混合、袋詰めされ、そして顧客に発送される。混合は、容易に利用できる装置に基づく低い技術の工程であるので、構成材料の供給が促進される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明の全体を通して、当業者により完全な理解を提供するために、具体的な詳細を述べる。しかしながら、本開示を不必要に不明瞭にすることを回避するために、周知の要素を詳細に図示または説明しない場合がある。したがって、説明および図面は、限定することを意図するものではなく、例示的なものであるとみなされるべきである。
【0015】
本発明の一定の実施形態は、魚用の飼料材料で使用するための一定の海藻および他の海洋成分の特有の配合物を提供する。いくつかのそのような配合物は、サケ養殖で使用するために特に構成されてもよく、また、これに限定されないが、例えばタラ、エビ、およびアワビを含む、他の養殖海洋種のために使用されてもよい。
【0016】
本明細書に記載される一定の配合物は、飼料材料を生成する際にタンパク質に富む成分に添加するための予混合物として使用されてもよく、これは、海洋動物による消費のためにペレットまたは他の形状に形成されてもよい。本発明のいくつかの実施形態による配合物は、約10〜50%(重量)の消費される最終的な飼料ペレットまたは他の飼料製品で構成され、残部は、主にタンパク質に富む成分および油で構成されてもよい。いくつかの実施形態は、例えば、本明細書に記載されるように、約40〜50%(重量)のタンパク質と、20〜30%の油と、15〜40%の配合物で構成され得る。いくつかの実施形態において、配合物は、飼料ペレットの総重量の約25%を占め得る。例えばアワビなどのより多くの草食動物等のための他の実施形態において、配合物は、飼料ペレットの総重量の最高約50%を占め得る。例示的な実施形態による配合物は、現在商業飼料で使用されているアスタキサンチン等の化学添加物を置換するように、抗生剤、鉱物、およびビタミン含有物、ならびに着色剤を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態において、タンパク質に富む成分は、魚粉および/またはエビ粉を含み得る。他の実施形態において、タンパク質に富む成分は、例えば海洋虫または他の海洋タンパク質源等の、魚に基づかない代用物であり得る。
【0018】
本発明のいくつかの例示的な実施形態による配合は、以下に説明するように、ある一定の海藻の種を種々の割合で組み合わせることによって行われ得る。海藻は、典型的に、それらを乾燥させ、次いで乾燥した海藻を、比較的に容易に配合することができる粉末に破砕することによって組み合わせられる。乾燥した海藻はまた、以下に論じるように、他の成分と組み合わせてもよい。
【0019】
サケ用の飼料材料は、典型的に、約40%のタンパク質含有量を必要とする。本発明のいくつかの実施形態による配合物は、乾燥重量の20〜25%の範囲のタンパク質含有量を有する。いくつかの例示的な配合物で使用される海藻は、アミノ酸に富む。海藻タンパク質は、ペプシン、パンクレアチン、およびプロナーゼ等のタンパク質分解酵素によって、インビトロで良好に分解する。
【0020】
いくつかの例示的な配合物で使用される海藻はまた、脂質および脂肪酸も含有する。いくつかの例示的な配合物で使用される紅海藻および褐海藻は、炭素原子20個の多価不飽和脂肪酸(C20−PUFA)、主にエイコサペンタエン酸(EPA、ω30−C20:5)、およびドコサヘキサエン酸(DHA)に富み、これらは典型的に動物に見られる。海藻は、酸化経路を介して種々のC20−PUFAを代謝させることが可能である。多数の紅藻において、オキシリピンと呼ばれるPUFAの代謝生成物は、一連の生理学的に重要な機能を果たす、高等植物およびヒトのエイコサノイドホルモンに似ている。いくつかの例示的な配合物で使用される紅海藻および褐海藻はまた、アラキドン酸(AA、ω6−C20:4)および炭素原子18個の多価不飽和脂肪酸(リノレン酸またはリノール酸)を含有する。褐海藻は、典型的に、紅海藻よりも高いリノレン酸濃度を有する。いくつかの例示的な配合物で使用される緑藻は、有用なレベルのアルファリノレン酸(ω3−C18:3)を示す。脂肪酸の一定の組み合わせは、強い免疫学的効果を有し、かつ海洋寄生虫が魚の皮膚に付着するのを魚が阻止することを補助することができる。海洋寄生虫は、サケ養殖における主要な関心事であり、魚の成長および生存に悪影響を与える。
【0021】
いくつかの例示的な配合物で使用される海藻は、比較的に大量の多糖類を含有する。例えば、例示的な配合物で使用されるいくつかの海藻は、褐海藻由来のアルギン酸塩ならびに紅海藻由来の寒天およびカラゲナン等の、細胞壁構造多糖類を含有する。いくつかの例示的な配合物で使用される海藻に含有される他の多糖類には、フコイダン(褐海藻由来)、キシラン(一定の紅海藻および緑海藻由来)、および緑海藻中のウルバン(ulvan)が挙げられる。フコイダンは、皮膚に好影響を与えることが知られており、また、海洋寄生虫に対抗するのを補助し得る。いくつかの例示的な配合物で使用される海藻は、例えば、褐海藻中のラミナリン(B−1,3−グルカン)および紅海藻中の紅藻デンプン(グルカン様)等の、貯蔵多糖類を含有する。フコイダンの形態で多糖類を含有している海藻は、それらの所望の生物活性(例えば、抗血栓剤、抗凝固剤、抗癌剤、抗増殖剤、抗ウイルス剤、および抗補体剤、抗炎症剤)のため、いくつかの例示的な配合物で使用するために選択される。
【0022】
いくつかの硫酸化されたマクロ藻類多糖類は、細胞障害特性を有する。いくつかの例示的な配合物中に存在するフコイダンは、マウスにおける抗腫瘍、抗癌、抗転移、および線維素溶解特性を有することが知られている。いくつかの例示的な配合物で使用される海藻は、ラミナランを含有する。ラミナランへの酵素の作用はTranslam(1−3:1−6−β−Dグルカン)を生成するが、これは、抗腫瘍特性を有する。いくつかの例示的な配合物中に存在するウルバンは、正常な、または癌性の結腸上皮細胞を標的にした細胞障害性または細胞静止性を有するが、これも、皮膚の保全および海洋寄生虫の阻止に関してサケの養殖に重要である。
【0023】
いくつかの例示的な配合物で使用される海藻はまた、比較的に大量の鉱物元素、マクロ元素、および痕跡要素を含有する。いくつかの海藻の鉱物画分は、乾燥物質の最高36%を占める。以下の表は、いくつかの例示的な配合物で使用される褐海藻、紅海藻、および緑海藻のいくつかの典型的な鉱物、ビタミン、および他の栄養素含有量を示す。
【0024】
褐海藻:
【0025】
【表1】

紅海藻:
【0026】
【表2】

緑海藻:
【0027】
【表3】

いくつかの例示的な実施形態による配合物は、比較的に高い抗酸化レベルを有する。高い抗酸化剤含有量は、必須脂肪酸が腐敗することを防ぐので、本発明の一定の実施形態による配合物を含む最終的な飼料製品の貯蔵寿命を延長する。いくつかの例示的な配合物で使用される海藻は、ポリフェノールに富むが、これは、抗酸化剤として作用する。ポリフェノールの最も高い含有量は、典型的に、褐海藻に見られ、フロロタンニンは、乾燥重量の5〜15%の範囲である。いくつかの例示的な配合物で使用される海藻はまた、例えばカロテノイド(いくつかの実施形態では、特にフコキサンチン、β−カロテン、およびビオラキサンチン)等の他の抗酸化剤、およびフラボノイドにも富む。
【0028】
いくつかの例示的な配合物中のカロテノイドは、強力な抗酸化剤である。最近の研究は、カロテノイドに富む食餌と、心臓血管疾患、癌(β−カロテン、リコピン)、ならびに眼科疾病(ルテイン、ゼアキサンチン)のリスク低減との間の相関関係を示している。褐海藻は、特にカロテノイドに富み、とりわけ、フコキサンチン、β−カロテン、ビオラキサンチンに富む。紅藻中に存在する主なカロテノイドは、β−カロテンおよびα−カロテン、ならびにそれらの二水酸化誘導体、ゼアキサンチンおよびルテインである。緑藻中に存在する主なカロテノイドは、β−カロテン、ルテイン、ビオラキサンチン、アンテラキサンチン、ゼアキサンチン、およびネオキサンチンである。
【0029】
いくつかの例示的な配合物のカロテノイドはまた、色素沈着も提供する。そのようなカロテノイドは、化学的に生成されたケトカロテノイド色素の必要性を回避する。
いくつかの例示的な実施形態による配合物はまた、ブロモフェノールを含有する。単純なブロモフェノール、2−および4−ブロモフェノール(2−BP、4−BP)、2,4−および2,6−ジブロモフェノール(2,4−DBP、2,6−DBP)、および2,4,6−トリブロモフェノール(2,4,6−TBP)は、魚介類の主要な天然風味成分として確認されている。
【0030】
いくつかの例示的な実施形態による配合物はまた、摂食刺激剤も含有する。摂食による最大の利益は、提供された食品が摂取された場合にだけ達成することができる。摂取効率は、給餌される魚、エビ、または他の動物の摂食反応に依存する。飼料材料の摂取を最大にするために、提供される飼料製品は、最適な摂食反応を誘発するように、適切な外観(
すなわち、サイズ、形状、および色合い)、テクスチャ(すなわち、硬い、軟らかい、湿っている、乾いている、粗い、または滑らか)、密度(浮力)、および誘引性(すなわち、匂いまたは味感)を持っていなければならない。これらの個々の要因の相対的な重要性は、当該の魚、エビ、または他の動物種が、主に視覚的な給餌物であるか、または化学的感覚の給餌物であるのかに依存する。例えば、捕獲された状態の海洋魚は、通常、それらの餌の場所を特定する視力に依存するが、それらはまた、飼料が摂取前に慎重に「感知される」、口、または口唇、触鬚、およびひれ等の外部の付属器官の中に位置する化学受容器にも依存する。同様の状態はまた、海洋エビおよび淡水エビにも存在する。したがって、許容可能かつ迅速な摂食反応を誘発するために、食餌摂食刺激剤をこれらの養殖種に使用することが望ましい。加えて、摂食刺激剤を使用して、飼料の嗜好性を向上させることによって、飼料が水中に留まる期間を短くすることができ、したがって、栄養素の浸出が最小化する。
【0031】
(実施例)
本発明のいくつかの実施形態による配合物は、約40〜75%(重量)の間のオオバアオサ(Ulva Lactuca)(「ウルバ(Ulva)」)を含有する。ウルバは、典型的に以下の栄養素含有量を有する:
【0032】
【表4】

ウルバ(Ulva)のビタミンC含有量は、保護抗酸化剤として作用する際に、結合組織および神経伝達物質の合成、鉄分の代謝の調節、および鉄分の腸管吸収の活性化を援助する際に、免疫防御システムを強化する際に、結合的組織および骨組織のプロチドマトリクスの形成を制御する際に、特に有益であり得、また、遊離基を閉じ込めてビタミンEを再生する際にも有益である。ウルバ(Ulva)は、高レベルの天然着色剤、および短鎖多糖類を有するが、これらはそれぞれ、魚肉の着色、および消化器官の健康を向上させる。
【0033】
アオサ目(ulvals)の細胞壁多糖類は、乾燥藻類物質の38〜54%を表す。2つの主要な種類、すなわち、水溶性ウルバンおよび不溶性セルロース様材料が確認されている。ウルバンは、主に、主なモノマー糖としてラムノース、ウロン酸、およびキシロースを含む、高帯電硫酸化高分子電解質であり、共通の構成二糖類(アルドビウロン酸)を含有し、また、(1−4)−β−D−グルクロン酸−(1−4)−α−L−ラムノース3
−硫酸−(1−2,12,16,22)−イズロン酸も、構成糖である。ウルバンオリゴマーおよびポリマーの他の潜在的用途は、それらの生物学的特性に関連する。最近の研究は、ウルバンおよびそれらのオリゴ糖類が、正常および腫瘍ヒト結腸細胞の付着および増殖、ならびに形質転換成長因子(TGF−α)および細胞分化に関連する表面グリコシルマーカーの発現を修飾することが可能であることを示している。初期の作業は、オオバアオサ(Ulva Lactuca)由来のウルバンの株特異性のある抗インフルエンザ活性を実証し、脱硫酸ヒトエグサ(Monostroma)ウルバン由来のラムナン、ラムノース、およびオリゴマーの使用は、胃潰瘍の治療について特許を取得している。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態による配合物は、約0.5〜7%(重量)の間のアスコフィラムノドサム(Ascophyllum nodosum)(「アスコ(Asco)」)を含有する。アスコ等の褐海藻は、典型的に、緑海藻および紅海藻よりも高レベルのビタミンEを含有する。アスコは、典型的に、乾燥物質1kgあたり約200〜600mgの間のトコフェロールを有する。アスコはまた、アルファ、ベータ、およびガンマトコフェロールも含有するが、一方で、緑藻類および赤藻類は、典型的に、アルファトコフェロールだけしか含有していない。ガンマおよびアルファトコフェロールは、一酸化窒素の生成および一酸化窒素シンターゼ活性(cNOS)を高め、また、心臓血管疾患の予防に重要な役割を果たす。アスコはまた、高レベルのフコイダン(約10〜15乾燥重量%)およびラミナランも含有する。フコイダンは、抗ウイルスおよび抗菌特性を有する多糖類である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態による配合物は、約0.5%(重量)の、一般に「マール」(Maerl)と呼ばれる、リトタムニオンコラリオイド(Lithothamnion corallioides)、リトタムニオングラシエール(Lithothamnion glaciale)、および/またはフィマトリトンカルカレウム(Phymatolithon calcareum)を含有する。マール(Maerl)は、典型的に、最高約25〜34%(乾燥重量)のカルシウム含有量を含有する。マール(Maerl)はまた、典型的に、フィコビリンタンパク質も含有する。フィコビリンタンパク質は、共有結合でタンパク質鎖に連結されるビリン(テトラピロールオープンコア)で構成される。フィコビリンタンパク質は、抗酸化特性を示す。マール(Maerl)はまた、典型的に、約3%のマグネシウム含有量を含有する。マール(Maerl)は、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸を含む、高レベルの必須の鉱物および痕跡元素を含有するが、これらは全て、適切な魚骨の発育に必要である。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態による配合物は、約5〜10%(重量)の間のホンダワラ属(Sargassum)を含有する。この種は、魚の貯蔵寿命を向上させる高レベルの必須抗酸化剤を含有し、また、抗バクテリアおよび抗ウイルス特性を有する、高レベルのアルギン酸塩およびフコイダンも加え、長鎖化されることで、多糖類が、消化器官の健康を向上させ、悪玉菌(腸内細菌および大腸菌)を低減し、善玉菌を増加させ、それによってより良好な栄養吸収、したがって成長を可能にする。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態による配合物は、約2〜8%(重量)の間のオゴノリ属(Gracilaria)を含有する。この種は、養殖海洋動物の味感を向上させる高レベルのブロモフェノール性化合物と、高レベルのタンパク質、したがって必須アミノ酸とを含有する。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態による配合物は、約2〜10%(重量)の間のコンブ属(Laminaria)を含有する。この種は、消化器官の健康、抗菌剤、および抗ウイルス剤、ならびに免疫刺激特性のための高レベルのラミナリンおよびアルギン酸塩を含有する。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態による配合物は、約1〜3%(重量)の間のダルス(Palmaria palmata)を含有する。この種は、カイニン酸を含有し、寄生虫剤(抗回虫)である。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態による配合物は、約0.1%(重量)のホソユカリ(Plocamium cartilagineum)を含有する。この種は、高レベルのモノテルペノイドを有する。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態による配合物は、約0.1%(重量)のオスマンディアピンナティフィダ(Osmundia pinnatifida)を含有する。この種は、高レベルのジテルペノイドを有する。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態による配合物は、約0.05〜1.0%(重量)の間の等量のイトグサ属(Polysiphonia)、ファルケンベルギア(Falkenbergia)、およびデレセリア(Delleseria)の組み合わせを含有する。これらの種は、養殖魚またはエビ等の海洋動物の味感を向上させる、高レベルのブロモフェノールを有する。イトグサ属(Polysiphonia)は、フジマツモ科(family Rhodomelaceae)の海洋紅藻であり、豊かなブロモフェノール源である。この科は、摂食抑止、R−グルコシダーゼ抑制性、成長刺激効果を含む、ある範囲の生物活性を伴うブロモフェノールを含有する。フジマツモ科(Polysiphonia lanosa)は、ラノソール(2,3−ジブロモ−4,5−ジヒドロキシベンジルアルコール)を含有する。ラノソールは、細菌および藻に対する毒性が高い物質として知られている。紅藻類のカギケノリ(Asparagaposis taxiformis)および四分胞子体のファルケンベルギアルフラノーサ(Falkenbergia rufulanosaは、少なくとも52の有機臭素化合物を含有する。ファルケンベルギア(Falkenbergia)は、紅海藻類のホソユカリ(Plocamium cartilagineum)から分離された、以前に混合ハロゲン化化合物1(MHC−1)と命名された天然ハロゲン化物を含有する。合計1.9mgの純粋なMHC−1が、1gの空気乾燥した海藻から得られた。MHC−1の構造は、(1R,2S,4R,5R,10E)−2−ブロモ−1−ブロモメチル−1,4−ジクロロ−5−(20−クロロエテニル)−5−メチルシクロヘキサンとなるように構築された。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態による配合物は、約0.1〜2.0%(重量)の間の多毛虫粉末を含有する。多毛類または多毛虫は、通常は海洋の環形動物の類である。10,000を超える種が、この種別に記載されている。一般的な代表例には、ラグワーム(タマシキゴカイ)およびサンドワーム、またはクラムワーム(Nereis)が挙げられる。多毛虫は、主にアミノ酸組成による、極めて良好な飼料誘引剤として使用することができる。多毛虫はまた、いくつかの実施形態において、高タンパク質および油含有量を有し、それ自体は、魚粉および魚油の置換物として使用されてもよい。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態による配合物は、約0.5〜1.0%(重量)のフラボノイドを含有する。一定の実施形態は、高レベルのフラボノイドのために選択的に育てられたレモンおよびオレンジ等の、特別に育てられた柑橘類果物から抽出された柑橘類フラボノイドを含有する。濃縮フラボノイドを含有する商品は、典型的に、柑橘類果物の皮および種を乾燥させることによって作製される。柑橘類フラボノイドは苦い風味を有し、柑橘類果物の天然の防衛機構の一部である。フラボノイドは、肥満細胞の活性および関連する組織炎症を抑制し、皮膚に好影響を与え、また海洋寄生虫によって引き起こされる皮膚の損傷を有し得る。フラボノイドはまた、天然の殺生物剤として機能することもでき、風味強化も提供することができる。
【0045】
以下の表は、サケ飼料用の天然添加物として特別に開発された例示的な配合物の含有量を示すが、他の魚および海洋動物用の飼料の添加物としても有用であり得る。
【0046】
【表5】

魚粉および魚油に添加される前述の配合物を含む食餌を給餌したサケの予備調査は、従来の食餌を給餌した魚と比較して、魚の健康、魚のサイズおよび重量、ならびに飼料材料の嗜好性について良好な結果を示した。また、前述の配合物を含む食餌に関する魚が、標準的な食餌を給餌した魚と比較して、より低い魚の感染症を有すること、および5週間後に、前述の配合物を含む食餌に関する魚が、標準的な食餌を給餌した魚と比較して、向上した色素の取り込みを示し、魚肉がよりピンク色になったことが観察された。さらに、5週間にわたって前述の配合物を含む食餌を給餌したサケは、標準的な食餌を給餌した魚と比較して、麻酔剤の影響からより早く回復するように思われた。
(製造工程)
一定の実施形態による配合物は、タンパク質に富む成分と組み合わせて、押出型ペレット化工程で飼料ペレットを作製してもよい。その工程における成分の温度は、栄養素含有量を維持するために、いくつかの実施形態にでは、40℃以下のままであってもよい。また、以下に論じるように、温度を比較的に低く保つことは、エネルギーおよびコストの節約をもたらす。
【0047】
一定の実施形態による配合物を含む飼料ペレットは、標準的な押出システムを使用して作製されてもよい。しかしながら、一定の実施形態による配合物を含む飼料ペレットは、適合させた押出システムで有利に作製されてもよく、該システムでは、スクリューフライティングが、順方向に搬送するように交換され、押出機の剪断力および温度を低減する。同じく形成押出機も標準的な装置として利用することが可能であり、スクリューフライティングの交換を、任意の調理用押出機に行うことができる。
【0048】
典型的な水生飼料の生成工程では、成分を熱(蒸気)および機械的エネルギー入力の組
み合わせを使用して、加熱工程を成分に受けさせることが必要である。押出ペレットでは、典型的に、前調整機で7%の蒸気を加え、押出機で2%の蒸気を加えるが、これは、製品1トンあたり57kWhのエネルギー入力に等しい。ペレット化システムでは、前調整機が最高5%の蒸気を加え、後調整機がさらに2%の蒸気を加えるが、これは、44kWh/トンに等しい。成分を加熱する理由は、それらを低温殺菌すること、およびデンプンを調理することであり、該デンプンは、それを調理した後(それが結晶状の固体からガラス状の流体への変化を経た後)に、接着剤および/または構造ポリマーとしてだけ機能することができる。また、未調理のデンプンは、腸の潰瘍化の発生といった、サケの胃腸刺激を引き起こす。成分を低温殺菌するためには、それらを80℃の温度に上昇させる必要がある。周囲温度が20℃であると仮定すると、これは84kJ/kg、すなわち23kWh/トンのエネルギー入力を必要とする。典型的な押出システムで成分に伝達される機械的エネルギーは、19〜40kWh/トンの幅で変動する。
【0049】
これに対して、本発明の一定の例示的な実施形態による配合物を含有する飼料ペレットの製造では、混合した成分を「調理する」必要はない。配合物の接着性は、既存の押出およびペレット化システムの場合と同じようなレベルに製品を水和させることだけしか必要としない。低いデンプン含有量は、未調理のデンプンと関連する胃腸の問題を回避する。既存の押出システムで使用される非常に高い機械的エネルギーは必要なく、必要とされるエネルギーは、ダイの前にペレットに加圧するのに十分なエネルギーだけである。いくつかの実施形態では、熱的に23kWh/トンおよび機械的に19kWh/トンという低いエネルギー入力しか費やさず、1トンあたり55kWhの潜在的低減である。
【0050】
本発明の一定の例示的な実施形態による配合物を含有する飼料ペレットの製造で使用される比較的に低い温度は、ビタミンC、チアミン、リボフラビン、および高度不飽和脂質等の一定の栄養素の熱/酸化分解を回避する。カロテノイド色素等の材料も、高温で脱色される。いくつかの実施形態において、成分は、40℃以下に維持される。いくつかの実施形態において、成分は、低温殺菌に必要とされる最小レベルまで加熱され得る。したがって、熱損傷が最小化され得、これらの栄養素および色素の送達が向上する。成分が「調理される」工程では、デンプンに基づく配合物に必要とされるので、典型的に、これらの材料を余分に添加することが必要であり、これは、飼料製品のコストおよびカーボンフットプリントを上昇させる。
【0051】
既存の水生飼料処理装置は、本発明の一定の例示的な実施形態による配合物を含有する飼料製品を製造するように適合させることができる。代替として、飼料製造装置は、装置の同じ複雑さを必要としない、本発明の一定の例示的な実施形態による配合物を含有する飼料製品を作製するために、特別に設計されてもよい。例えば、前調整機は、典型的に、本発明の一定の例示的な実施形態による配合物を含有する飼料製品の生成には不要である。押出された本発明の一定の例示的な実施形態による配合物を含有する飼料製品には、最小のエネルギーで水を乾燥成分と混合して飼料ペレットを作製するように、「新世代」の二重反転式2軸押出機を使用することが可能である。これは、前調整機が大きい電気モータを有するので、資本費用を大幅に低減することができ、5kWh/トンを超えるエネルギーコストのさらなる節約となる。本発明の一定の例示的な実施形態による配合物を含有する飼料製品を生成するためのペレットミルシステムはまた、大規模な前調整システムも必要とせず、これは、最新の二重駆動ペレットミルの使用と組み合わせて、資本の節約に加えて、さらなるエネルギーの節約をもたらす。
【0052】
いくつかの実施形態は、以下に説明するように、特別に適合させた押出システムを使用してもよい。
・この工程では、任意の時点においていかなる蒸気の注入もない。典型的な前調整機では、通常、7%の蒸気を注入する。この70kg/トンは、1トンあたり157,920キ
ロジュール、すなわち44kWh/トンのエネルギー入力を必要とする。典型的な押出機では、通常、2%の蒸気、すなわち20kg/トンを注入し、1トンあたりさらに45,120キロジュール、すなわち12.5kWh/トンを必要とする。
・シアーロック、バックフロー要素、およびカットフライトは、典型的な押出機から除去することが可能であり、該機械を正に搬送する形成機に変える。典型的な押出機において、必要とされる一定の機械的エネルギー(押出機に対する電力)は、1トンあたり25〜30kWhである。いくつかの実施形態による適合させた押出機において、機械的エネルギーの入力は、1トンあたり約10kWhに低減される。
・押出システムは、非流体押出物を取り扱うように適合させてもよい。向流2軸押出は、いくつかの実施形態において用いられてもよい、飼料業界における新しい技術であり、機械的エネルギーの入力を1トンあたり約5kWhまでさらに低減する。
・システムは、製品の破損を防止するように、押出機から乾燥機までの重力落下設計を含むように設計されてもよく、これは、1トンあたり約5kWhのさらなるエネルギーの節約を提供する。
【0053】
いくつかの実施形態において、既存の押出システムは、他の成分を調理押出機から出した後に成形押出機に入れる時に、本明細書に記載される配合物を該他の成分に添加することができ、よって、魚粉を、さらにはデンプンも該配合物の添加前に調理することができるように適合させてもよい。これは、配合物の低温処理を行って、栄養素および着色剤特性を保つことを可能にする。形成押出機は、混合区間とそれに続く形成区間とを伴う2軸押出機であってもよい。これは、比較的に簡単な逆行的な添加によって、あらゆる既存の設備を適合可能にする。適合させた押出システムは、それでも通常の製品を高められた効率で作製することができるが、第2の形成押出機は、本明細書に記載される配合物を含む製品を作製することを可能にする。形成押出機は、本明細書に記載される配合物が集中的な調理工程を省略することを可能にする、それ自体の成分取り込みシステムを有してもよい。
【0054】
本発明の一定の例示的な実施形態による配合物の使用はまた、水に浸漬した時の飼料ペレットの安定性も高める。これは、より多くの飼料材料が食べられ、水中に分散することが少なくなる結果となり、食べ残しの飼料による水の汚染を低減する。デンプンは、典型的に海洋に見られる材料ではなく、かつBODおよび生態毒性の問題を引き起こす可能性があるので、低デンプン含有量の一定の例示的な配合物はまた、いくつかの環境において有利であり得る。配合物のデンプン含有量が低いので、一定の実施形態による配合物を含む飼料ペレットによって、BOD問題はより小さくなる。
【0055】
また、サケ飼料からのデンプンの排除は、ヒトまたは他の動物が消費するための穀物を確保する。例えば、サケ飼料製品から20%の穀類を排除することで、作製されるサケ飼料100万トンごとに、200,000トンの穀物を食物連鎖の中に解放することになる。
【0056】
本発明の一定の例示的な実施形態による配合物の使用はまた、従来の飼料ペレットに添加される微量元素に関連する、いかなる付加的な処理および配送コストもかからないので、飼料ペレット生成の総カーボンフットプリントも低減する。そのような微量元素は、典型的に、中国で生成され、ペレットが作製される他の世界中の場所に配送される。
【0057】
一定の実施形態による配合物を含むペレットの構造は、乾燥機での向上した水の拡散性を提供するが(いかなるガラス状のプラスチックデンプンの壁もペレットの中にない)、これは、より低い内部空気温度で製品を乾燥することを可能にし、向上した乾燥機効率を提供する。一定の実施形態による配合物を含むペレットの構造はまた、容易に油をペレット内に拡散させ、油がより確実に結合し、浸出を低減し、したがって、栄養の送達が向上
し、かつ環境問題を低減する。最終的な飼料ペレットは、強固で、水安定性があり、かつゆっくりと沈下する。これは、最大の飼料の取り込みおよび最小の環境破壊を確実にする。
実施例
出願人は、本明細書に開示する配合物に基づく海藻混合添加物を伴うサケ飼料を生成して、EWOS Harmony食餌(既存の有機食餌、以下、Harmony食餌と称する)を使用した比較摂食試行を行った。試行は、重量が250〜300gの魚と、重量が5〜5.5kgの魚で行った。目的は、本明細書に開示する高有機EWOS食餌(Harmony)または本発明の海藻に基づく食餌のうちのいずれかを給餌した時の、養殖大西洋サケ(Salmon Salar L)の成長、死亡、着色剤の取り込み、および魚肉品質を比較することとした。海洋寄生虫負荷に対する効果も、両方の食餌を使用して比較した。
【0058】
試行は、本開示の海藻配合物のうちの2つの配合物を使用して、2つの段階に分けた。

段階1
食餌
A=海藻含有:B=対照;Harmony250配合物
【0059】
【表6】

段階2
食餌A
【0060】
【表7】

食餌B−Harmony1000
試行は、混合性別のS1 09大西洋サケスモルトを使用し、約250グラムの近似した開始重量で、13ヵ月間にわたって続けた。2つの食餌は、それぞれが、600匹の魚の3つの複製(合計6ケージ)、合計3600匹の魚を有した。それぞれの125平方メートルのケージは、Aquasmart AQ300適合型飼料制御システムによって制御される、より厳格な給餌機を備えた。魚には、飽食するまで、自然な光周期に従った光環境で給餌した。水温は、周囲温度とした。ケージは、それぞれ、6および4mでの温度および塩分を記録しながら、毎日検査した。死亡数は、毎日監視し、記録には、検視に提出する前に、死亡の日付、ケージID、数、および重量を含めた。
【0061】
魚は、標準養殖KPIに対して評価し、2つの食餌(1つは標準、1つは試験)のそれぞれの魚肉品質パラメータを評価した。試行中、成長パラメータおよびFCRを観察した。品質態様には、条件因子、収率、色素沈着、および脂肪分析を含めた。
【0062】
魚は、ランダムに試行用の囲いに移送する前に、乱塊法の使用に続いて、同じくランダムに群に配分した。それらを、試行開始日前の最低2週間にわたって順応させた。移送前の死亡を考慮して、合計615匹の魚を各ケージへ移送した。試行の開始時には、150匹の魚を各ケージから取り出して、個々に重量および長さを計測した。試行開始時に、試行母集団から30匹の余分の魚(ケージ1つあたりの5匹の魚)を、基本データのために使用した。これらの魚は、重量および長さを計測し、Scottish Quality
Cut(SQC)を取った。SQCは、ラベル付けを行い、SalmoFanスコアを取り、脂質含有量およびアスタキサンチンレベルの試験を行った。
【0063】
試行母集団は、以下のように試料を採取した。
−開始時の魚数:計数
−開始時の魚の重量:各ユニット(ケージあたり200匹)の平均重量
−開始時の品質試料採取:SQC、収率、CF(ケージあたり5匹の魚)
−中間時の魚の重量:各ユニット(ケージあたり200匹)の平均重量
−中間時の品質試料採取:SQC(脂肪および色素)、Salmofan、収率、CF(ケージあたり24匹の魚)
−終了時の魚の重量:各ユニット(ケージあたり200匹)の平均重量
−終了時の品質試料採取:SQC(脂肪および色素)、Salmofan、収率、CF(ケージあたり36匹の魚)
−終了時の魚の数:計数
−与えられる1日の飼料量
−2つの深さ(5および10メートル)での温度および酸素
−5メートルでの流れの記録
−死亡(日付、ケージ、数、重量、事後分析)
【0064】
成長を分析するための個々の試料の計量は、試行の開始時、4ヵ月目、6ヵ月目、9ヵ月目、および終了時に行った。200匹の魚の重量および長さを個々に計測した。同様に、0、3、6、9、および12ヵ月目に、ケージあたりそれぞれ5匹、36匹、および36匹の魚をそれぞれランダムに選択して、品質試料採取のために取り出した。これらの魚は、1つの切り身上の3つの標準地点でSalmofanスコアを取る前に、異常性を調査するために、長さおよび重量を測定し、内臓を取り出して再度重量を測定し、そしてSQCを取った。各ケージの36匹の魚を、重量(小、中、大)で分類して12匹の魚の3つのプールにプールした。
【0065】
試行開始データを採取する前に、デルタメトリンに基づくAlpha Max(Pharmaq社)を使用して、海洋寄生虫(レペオフテイルス サルモニス(Lepeophtheirius salmonis)およびカリグス エロンガタス(Caligus
elongatus))に対する浸漬処理を行った。さらなる海洋寄生虫処理を周期的に行った。海洋寄生虫処理の前に、囲いあたり25匹の魚を、寄生虫負荷について評価した。海洋寄生虫処理の間には、日常的な海洋寄生虫評価も行ったが、囲いあたり10匹の魚であった。魚の腸に関する微生物学的な評価、および魚の腸の組織学的検査を行った。
【0066】
異なる食餌を給餌した2匹のサケの味感を比較するために、一般のメンバーから成るフォーカスグループを組織して、味感の二重盲検試験で該サケを試食した。切り身は、好ましくはできる限り少ない調味料またはソースで、同じ方法で調製して調理した。報告書は、詳細な分類(下記)に加えて、あらゆる付加的な情報(味感:苦い、甘い、濃い;テクスチャ:軟らかい、硬い;匂い:土臭い、濃厚、軽い;色:薄い、半透明、等)に関して作製した。評価尺度は、1=最良、2=良、3=普通、4=劣、5=最劣とした。
【0067】
結果
以下の結果が得られた。
a)段階1において、Harmony飼料(「食餌B」)は、より高い油、タンパク質、およびより低い含水量を有するが、どちらの飼料も、等窒素性および等発熱性ではなく、食餌Bは、飼料の乾燥重量1グラムあたりより多量のエネルギーを送達したことを示した。最初の3ヶ月間、成長は同等であったが、重量の増加は、海藻に基づく食餌(「食餌A」)の方がより少なかった。これは、食餌Aと比較して、食餌Bは、油およびタンパク質含有量が多く水分レベルが8%低いことによって引き起こされている。この差異は、2つの食餌が等窒素性および等発熱性であることから説明される。段階2では、どちらの食餌も、等窒素性および等発熱性となるように製造した。第2の試行期間にわたって、食餌Aは、より良好な飼料変換比率(食餌Bよりも2.2%良好)、内臓を取り出した魚の重量(食餌Bよりも1.4%良好)、EWOS成長指数(食餌Bよりも8.9%良好)、および死亡率(食餌Bよりも3倍低い)を示した。
b)どちらの食餌で育てた魚のSalmoFanも同じであった。食餌Aは、より高いレベルのオメガ3PUFAを有した。全脂質は、食餌Bで2.17%高く、より多くのエネルギーを送達した。食餌間での魚肉の油レベルは、大きく異ならなかった。食餌Bのアスタキサンチンレベルは、食餌A中に存在する5倍のレベルであり、より高いレベルの天然色素およびアスタキサンチン様のエステル、とりわけ、ルテインおよび他の未確認のエステルを含んでいた。SalmoFan値は、同じ色素沈着の取り込み値を示した。両方の食餌の全ての囲いの小、中、および大の魚の魚肉の分析は、カロテノイドおよびアスタキサンチンの色素の取り込みついていかなる顕著な差異も示さなかった。食餌Aは、いかな
る化学的なアスタキサンチンまたはファフィア酵母も使用しなかったので、供給された天然色素(カロテノイドおよび他のエステル)が、魚の中でアスタキサンチンに変換され、ファフィア酵母を給餌した食餌Bの魚と同等のレベルを提供することを示している。
c)味感の二重盲検試験の結果は、生および調理した食餌Aを給餌した魚に対して一般的な選好を示した(以下のスコアを参照されたい)。これは、食餌Aで使用した選択された大型藻類の高レベルのブロモフェノール性化合物の効果であり、これは、味感に対して顕著な影響を有する。食餌Aを給餌した魚は、魚肉の品質がより堅く、調理後に、より良好な色素沈着を保っていた。これは、食餌Bを給餌した魚と比較して、食餌Aを給餌した魚における、異なる油の組成、異なるタンパク質プロファイル、および異なる色素構造により引き起こされたものと考えられる。調理後に食餌Aを給餌した魚の色を保持した効果は、おそらく、食餌B飼料に添加されたファフィア酵母由来のアスタキサンチンと比較して、魚自体が、食餌A中に存在する種々の天然色素およびエステルを使用してアスタキサンチンを合成して、それを筋肉の中に取り込んでいるという事実により引き起こされている。
【0068】
(味感試験)
ここで、1は最良、5は劣を示す。
番号1(n=14)
【0069】
【表8】

番号2(n=10)
味感試験A=2.39
味感試験B=2.70
d)両者の腸、および微生物分析にはいかなる顕著な差異も見られず、また、いかなる病原体も検出されなかったが、食餌Bを給餌した魚は、腸がより重く成長しており、これは、食餌中の植物タンパク質を活用した効果であり得、また、食餌Bを給餌した魚の内臓を取り出した平均重量をより低くする。
e)食餌Aまたは食餌Bを給餌した魚の腸の組織学的検査は、いかなる差異または悪影響も示さなかった。
f)食餌Aは、特に抗寄生虫処理(Alpha−Max)で前処理して、さらに処理の6日後に、海洋寄生虫に顕著影響を与えた。特に、卵を持つ雌の寄生虫ならびに成体の雌お
よび雄の数は、食餌Bを給餌した魚と比較して、食餌Aを給餌した魚の方が少なかった。結果は、食餌Aの生物活性分子が、魚の寄生虫の漸増および再増殖に悪影響を与えることを示した。
【0070】
(全般的結論)
海藻に基づく食餌を給餌した魚は、重量増加の向上、より良好な飼料変換率のより良好な成長指数、より高い内臓を取り出した重量およびより少ない死亡率、より良好な天然色素沈着、ならびに寄生虫の漸増および再増殖の減少を示した。したがって、開示された海藻に基づく食餌を使用することで、養魚場経営者は、(飼料変換率に基づいて)飼料の使用を節約することが可能であり、また、飼料に費やす費用を減らしながら、より健康でより良い魚を生成することが可能である。
【0071】
多数の例示的な態様および実施形態を上記に説明してきたが、当業者は、一定の修正、置換、およびそれらの部分的組み合わせを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約40〜75%(重量)の間のオオバアオサ(Ulva Lactuca)(「ウルバ(Ulva)」)を含有する、魚および他の海洋動物用の飼料で使用するための添加物。
【請求項2】
約0.5〜7.0%(重量)の間のアスコフィラムノドサム(Ascophyllum
nodosum)(「アスコ(Asco)」)を含有する、請求項1に記載の添加物。
【請求項3】
約0.5%(重量)のリトタムニオンコラリオイド(Lithothamnion corallioides)、リトタムニオングラシエール(Lithothamnion
glaciale)、および/またはフィマトリトンカルカレウム(Phymatolithon calcareum)(「マール」(Maerl))を含有する、請求項1または2に記載の添加物。
【請求項4】
約5〜10%(重量)の間のホンダワラ属(Sargassum)を含有する、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の添加物。
【請求項5】
約2〜8%(重量)の間のオゴノリ属(Gracilaria)を含有する、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の添加物。
【請求項6】
約2〜10%(重量)の間のコンブ属(Laminaria)を含有する、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の添加物。
【請求項7】
約1〜3.0%(重量)の間のダルス(Palmaria palmata)を含有する、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の添加物。
【請求項8】
約0.1%(重量)のホソユカリ(Plocamium cartilagineum)を含有する、請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の添加物。
【請求項9】
約0.1%(重量)のオスマンディアピンナティフィダ(Osmundia pinnatifida)を含有する、請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の添加物。
【請求項10】
約0.05〜1.0%(重量)の間の等量のイトグサ属(Polysiphonia)、ファルケンベルギア(Falkenbergia)、およびデレセリア(Delleseria)の組み合わせを含有する、請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の添加物。
【請求項11】
約0.1〜2.0%(重量)の間の多毛虫粉末を含有する、請求項1〜10のうちのいずれか1項に記載の添加物。
【請求項12】
約0.5〜1.0%(重量)のフラボノイドを含有する、請求項1〜11のうちのいずれか1項に記載の添加物。
【請求項13】
ほぼ65%(重量)のオオバアオサ(Ulva Lactuca)(「ウルバ(Ulva)」)と、約5%(重量)のアスコフィラムノドサム(Ascophyllum nodosum)(「アスコ(Asco)」)と、約10%(重量)のホンダワラ属(Sargassum)と、約6%(重量)のオゴノリ属(Gracilaria)と、約10%(重量)のコンブ属(Laminaria)と、約2%(重量)のダルス(Palmaria palmata)と、約0.5%(重量)のリトタムニオンコラリオイド(Lithothamnion corallioides)、リトタムニオングラシエール(L
ithothamnion glaciale)、および/またはフィマトリトンカルカレウム(Phymatolithon calcareum)(「マール」(Maerl))と、約0.1%(重量)の等量のイトグサ属(Polysiphonia)、ファルケンベルギア(Falkenbergia)、およびデレセリア(Delleseria)の組み合わせと、約0.1%(重量)のオスマンディアピンナティフィダ(Osmundia pinnatifida)と、約0.1%(重量)のホソユカリ(Plocamium cartilagineum)と、約0.5%(重量)の多毛虫粉末と、約0.5%(重量)未満のフラボノイドと、を含有する、請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の添加物。
【請求項14】
前記魚および他の海洋動物は、サケ、タラ、エビ、およびアワビから成る群より選択される、請求項1〜13のうちのいずれか1項に記載の添加物。
【請求項15】
前記魚は、サケである、請求項1〜13のうちのいずれか1項に記載の添加物。
【請求項16】
請求項1〜13のうちのいずれか1項に記載の添加物を含有する、魚および他の海洋動物用の飼料。
【請求項17】
約10〜50%(重量)の請求項1〜13のうちのいずれか1項に記載の添加物を含有し、残部は、主にタンパク質に富む成分および油を含む、請求項16に記載の飼料。
【請求項18】
15〜40%(重量)の請求項1〜13のうちのいずれか1項に記載の添加物を含有し、残部は、主にタンパク質に富む成分および油を含む、請求項16に記載の飼料。
【請求項19】
約25%(重量)の請求項1〜13のうちのいずれか1項に記載の添加物を含有する、請求項18に記載の飼料。
【請求項20】
約15%(重量)の請求項1〜13のうちのいずれか1項に記載の添加物を含有する、請求項18に記載の飼料。
【請求項21】
前記魚および他の海洋動物は、サケ、タラ、エビ、およびアワビから成る群より選択される、請求項16に記載の飼料。
【請求項22】
前記魚は、サケである、請求項21に記載の飼料。
【請求項23】
約10〜50%(重量)の海藻種の組み合わせから成る添加物を含有し、残部は、主にタンパク質に富む成分および油を含む、魚および他の海洋動物用の飼料。
【請求項24】
15〜40%(重量)の前記海藻種の組み合わせから成る添加物を含有し、残部は、主にタンパク質に富む成分および油を含む、請求項23に記載の飼料。
【請求項25】
約25%(重量)の前記海藻種の組み合わせから成る添加物を含有する、請求項24に記載の飼料。
【請求項26】
約15%(重量)の前記海藻種の組み合わせから成る添加物を含有する、請求項24に記載の飼料。
【請求項27】
前記魚および他の海洋動物は、サケ、タラ、エビ、およびアワビから成る群より選択される、請求項23に記載の飼料。
【請求項28】
前記魚は、サケである、請求項27に記載の飼料。

【公表番号】特表2012−533285(P2012−533285A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519857(P2012−519857)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001126
【国際公開番号】WO2011/006261
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(512013743)オーシャン ハーベスト テクノロジー (カナダ) インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】OCEAN HARVEST TECHNOLOGY (CANADA) INC.
【Fターム(参考)】