魚釣り用手動リール
【課題】 簡単な構造によって手元操作でスプール軸に対するスプールの自由回転と回転力野清掃との切替えが容易に且つ確実に行え、釣糸を所望の長さに繰り出し可能にし得ると共に糸絡み等の発生を防止するができる魚釣り用手動リールを提供する。
【解決手段】 釣り竿側に装着する固定ディスク2の中心部に突設したスプール軸3にスプール4を回転自在に支持させてなる手動リールにおいて、固定ディスク2とスプール4との対向面のいずれか一方にリング状の弾性制動部材5を取付けると共に、スプール4の他側面側に突出しているスプール軸3の先端部に第1係止周溝6と第2係止周溝7とを設けてあり、さらに、スプール4の他側面に手元操作によってスプリング力に抗して上記第1係止周溝6と第2係止周溝7とのいずれか一方に選択的に係止させる切替えレバー8を設けて、弾性制動部材5による制動、制動解除を行うように構成している。
【解決手段】 釣り竿側に装着する固定ディスク2の中心部に突設したスプール軸3にスプール4を回転自在に支持させてなる手動リールにおいて、固定ディスク2とスプール4との対向面のいずれか一方にリング状の弾性制動部材5を取付けると共に、スプール4の他側面側に突出しているスプール軸3の先端部に第1係止周溝6と第2係止周溝7とを設けてあり、さらに、スプール4の他側面に手元操作によってスプリング力に抗して上記第1係止周溝6と第2係止周溝7とのいずれか一方に選択的に係止させる切替えレバー8を設けて、弾性制動部材5による制動、制動解除を行うように構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手釣り用釣竿の元竿に装着して穂先からの釣糸の長さを所望長さに調整可能にし、且つ、巻き取りや繰り出しが円滑に行える魚釣り用手動リールに関する。
【背景技術】
【0002】
手釣り用釣竿においては、通常、リールを装着することなく釣竿の先端に釣糸を繋着して魚釣りを行うようにしているが、そうすると釣り場の状況等の応じて釣糸の長さを調整することができず、また、釣糸が容易に弛んで絡み易くなる。
【0003】
そのため、近年、手釣り用釣竿においても、元竿に装着して手元操作により釣糸の長さを調整したり、釣糸にドラグ力を付与して糸絡みを防止できるようにした簡易手動リールが開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、元竿に支軸を突設している取付台を取付けて固定する一方、糸巻であるスプールの両面を基端ディスクと先端ディスクとで挟んでこれらを一体的に上記支軸に回転自在に外嵌すると共に、先端ディスクから突出した支軸にナット部材を螺合してこのナット部材でスプールを先端ディスクを介して締め付けることにより基端ディスクを上記取付台上に圧着させてスプールを固定可能に構成し、さらに、上記基端ディスクの下面中央部に凹部を設けてこの凹部内にコイルスプリングを圧入し、コイルスプリングの両端を取付台と基端ディスクの凹部奥底面とに弾圧させることによってスプールに所定のドラグ力を保持させてなる手動リールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−298990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の手動リールによれば、スプールと一体の基端ディスクに設けている凹部と、元竿に取付ける取付台との対向面にコイルスプリングを圧入しているために、スプールには常にこのコイルスプリングとの摩擦によるドラグ力が付与されていてスプールを軽快に自由回転させることができず、従って、釣糸の繰り出しや巻き取り操作が円滑に行えないばかりでなく、スプールを回転させるとコイルスプリングに捩れが発生して短期間で破損する虞れがある。
【0007】
また、上記特許文献1には、このようなドラグ機構以外に、元竿に自由回転可能な手動リールを装着すると共にこの手動リールの前方に釣糸のガイドとして上下一対の挟持ロールを配設し、この挟持ロールの接圧力を調整可能にして釣糸にドラグ力を付与するように構成した簡易なドラグ機構も記載されているが、このような構成では手動リールとは別に元竿にドラグ機構を設けなければならず、構造が複雑化してコスト高になると共にその取付作業に手間を要するといった問題点がある。さらに、スプールから引き出された釣糸にドラグ力を付与することができてもスプール自体は自由回転するので、スプールとこのドラグ機構に至るまでの釣糸部分に弛みが発生し、糸絡みが生じるといった問題点がある。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、構造が簡単で安価に提供できるのは勿論、簡単な構造によって手元操作によりスプールの自由回転と回転力の制動との切り替えが容易に且つ確実に行え、糸絡みの発生も防止することができる魚釣り用手動リールを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の魚釣り用手動リールは、請求項1に記載したように、元竿に装着する取付金具に固定ディスクを固着し、この固定ディスクの一側面中心部にスプール軸を突設してこのスプール軸にスプールの中心孔を回転自在に、且つ、スプール軸の長さ方向に移動可能に支持させてなる魚釣り用手動リールにおいて、上記スプール軸の先端部に第1係止周溝と第2係止周溝とをその第1係止周溝を先端側にして並設している一方、このスプール軸の先端部が突出する上記スプールの側面側に、スプリング力により上記スプール軸を横断する方向に付勢されて上記第1係止周溝と第2係止周溝とのいずれかに係脱自在に係止した切替えレバーを配設してあり、さらに、固定ディスクとスプールとの対向面のいずれか一方に、他方の面との圧接による摩擦力によってスプールの回転を制動する弾性制動部材を取付け、上記切替えレバーを第1係止周溝に係止させた時にスプールを自由回転可能とし、第2係止周溝に係止させた時に弾性制動部材によりスプールの回転を制動するように構成している。
【0010】
このように構成した魚釣り用手動リールにおいて、請求項2に係る発明は、スプール軸の先端が突出する側の上記スプールの側面中央部に中心孔を被覆した蓋部材を取付け、この蓋部材内に切替えレバーを設けて該切替えレバーの基端部を蓋部材の天壁部の内面外周部に回動自在に枢着すると共に蓋部材内に装着しているスプリング力によって切替えレバーを第1、第2係止周溝に係止させる方向に常時付勢してあり、さらに、切替えレバーの先端部を蓋部材の周壁部の一部に開設している開口部に周方向に移動可能に挿通して外部に突出させ、その突出端部を操作突片に形成していることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、スプール軸の先端が突出する側の上記スプールの側面中央部に中心孔を被覆した蓋部材を取付け、この蓋部材内に、上記スプール軸の先端部を挿通させている係止孔を有する切替えレバーをスプール軸に対して直角方向に進退自在に配設していると共に、蓋部材内に装着しているスプリング力によってこの切替えレバーを上記係止孔が第1、第2係止周溝のいずれかに係止するように常時付勢してあり、さらに、切替えレバーの先端部を蓋部材の周壁部の一部に開設している開口部から外部に突出させ、その突出端部を操作突片に形成していることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、スプール軸の先端面を中心から外周面に向かって凸円弧状に緩傾斜した傾斜先端面に形成していると共に、第2係止周溝の溝底面を第1係止周溝の開口縁からスプール軸の基端側に向かって徐々に小径となる傾斜溝底面に形成していることを特徴とする。
【0013】
さらに、請求項5に係る発明は、固定ディスクに対向するスプールの側面に固定ディスクの収納凹部を設けていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に係る発明は、弾性制動部材は軟質合成樹脂又はゴムからなるリングであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、スプールを回転自在に支持しているスプール軸の先端部に第1係止周溝と第2係止周溝とを設けている一方、このスプール軸の先端部を突出させている上記スプールの側面側に、スプリング力により上記スプール軸を横断する方向に付勢されて上記第1係止周溝と第2係止周溝とのいずれかに係脱自在に係止した切替えレバーを回動自在に配設してあり、さらに、固定ディスクとスプールとの対向面のいずれか一方に、他方の面との圧接による摩擦力によってスプールの回転を制動する弾性制動部材を取付けているので、切替えレバーを指先で操作して上記第1係止周溝と第2係止周溝とのいずれかに容易に且つ確実に選択的に係止させることができると共に、切替えレバーを第1係止周溝に係止させることによって固定ディスクとスプールとの対向面間に一定の隙間を設けた状態に保持することができ、従って、スプールを円滑に自由回転させて釣糸の繰り出しや巻き取り操作が迅速に行うことができる。
【0016】
また、切替えレバーを第1係止周溝から離脱させると、スプール軸に対してスプールがその軸心方向に移動可能となり、切替えレバーを第2係止周溝の位置に素早く対向させて係止させることができる。そして、切替えレバーを第2係止周溝に係止させると、固定ディスクとスプールとの対向面を弾性制動部材を介して圧接させることができ、この弾性制動部材の摩擦によってドラグ力を発生させることができ、このドラグ力によってスプールの回転を制動して、釣糸が風圧や水の流れ等によってスプールから不測に繰り出されるのを阻止しながら魚釣り行うことができると共に、手元においてスプールを制動力に抗して回転させることによって釣糸の長さを所望の長さに自由に調整することができ、その長さに保持することができる。その上、魚釣り時にはドラグ力を発揮させて釣糸を緊張状態に保持することができ、絡み等を防止することができる。
【0017】
さらに、請求項2に係る発明によれば、スプール軸の先端が突出する側の上記スプールの側面中央部に中心孔を被覆した蓋部材を取付け、この蓋部材内に切替えレバーを設けて該切替えレバーの基端部を蓋部材の天壁部の内面外周部に回動自在に枢着すると共に蓋部材内に装着しているスプリング力によって切替えレバーを第1、第2係止周溝に係止させる方向に常時付勢しているので、切替えレバーや第1、第2係止周溝を蓋部材によって被覆しているから、外部からの衝撃等による不測の損傷等や塵埃等の侵入を防止して常に軽快な動作を可能にすることができ、また、切替えレバーの先端部を蓋部材の周壁部の一部に開設している開口部から外部に突出させてその突出端部を操作突片に形成しているので、スプールを把持しながらその指先を切替えレバーの操作突片に係止させて切替えレバーの切替え操作を簡単且つ素早く行うことができる。
【0018】
同様に、請求項3に係る発明によれば、蓋部材内に切替えレバーを回動自在に設けることなくスプール軸に対して直角方向に進退自在に配設しているので、上記請求項2に係る発明と同じく、スプールを把持しながらその指先を切替えレバーの操作突片に係止させて上記第1、第2係止周溝に対する選択的な切り替え操作が簡単且つ確実に行うことができる等の作用効果を奏する。
【0019】
また、請求項4に係る発明によれば、スプール軸の先端面を中心から外周面に向かって凸円弧状に緩傾斜した傾斜先端面に形成しているので、固定ディスクから突設しているスプール軸をスプールの中心孔に挿入してその先端部を蓋部材内に突出させた時に、このスプール軸の傾斜先端面によって切替えレバーをスプリング力に抗して後退させながら傾斜先端面に後続して形成されている上記第1係止周溝に自動的に係止させることができ、魚釣り用手動リールを簡単且つ正確に組み立てることができる。その上、第2係止周溝の溝底面を第1係止周溝の開口縁からスプール軸の基端側に向かって徐々に小径となる傾斜溝底面に形成しているので、この傾斜溝底面上に切替えレバーが係止すると、スプリングの力によって傾斜溝底面上に押付けている切替えレバーの押圧力が傾斜溝底面を介してスプール軸をさらに引き寄せる方向に作用して弾性制動部材を介しての固定ディスクとスプールとの摩擦力を常に所定圧に保持しておくことができ、所定のドラグ力を発揮させることができる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、固定ディスクに対向するスプールの側面に固定ディスクの収納凹部を設けているので、固定ディスクとスプールとの対向面間の隙間を外部に対して隠蔽した構造となり、釣糸がその隙間に食い込むのをなくすることができると共に体裁のよい外観を呈する手動リールを提供することができる。なお、上記弾性制動部材としては、請求項6に記載したように、軟質合成樹脂又はゴムからなるリングを採用することによって簡単なドラグ機構を構成することができると共に、固定ディスクとスプールとの対向面をこの制動リングを介して均一に圧着させて円滑な制動を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】スプールの回転の制動を解いた状態の魚釣り用手動リールの縦断正面図。
【図2】その要部の拡大縦断正面図。
【図3】その際の切替えレバーの位置を示す蓋部材の縦断側面図。
【図4】スプールの回転を制動している状態の魚釣り用手動リールの縦断正面図。
【図5】その要部の拡大縦断正面図。
【図6】その際の切替えレバーの位置を示す蓋部材の縦断側面図。
【図7】魚釣り用手動リールの斜視図。
【図8】その分解斜視図。
【図9】切替えレバーの切替え操作を説明するための斜視図。
【図10】本発明の別な実施例を示すスプールの回転の制動を解いた状態の魚釣り用手動リールの縦断正面図。
【図11】その際の切替えレバーの位置を示す蓋部材の縦断側面図。
【図12】スプールの回転を制動している状態の魚釣り用手動リールの縦断正面図。
【図13】その際の切替えレバーの位置を示す蓋部材の縦断側面図。
【図14】魚釣り用手動リール全体の斜視図。
【図15】蓋部材と切替えレバーとスプール軸との関係を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の具体的な実施の形態を図面に基づいて説明すると、魚釣り用手動リールは、釣竿の元竿Aに装着する取付金具1と、この取付金具1における元竿Aの長さ方向に対して直角方向に突設している支持板片1aにその一側面を一体に固着している円板形状の固定ディスク2と、この固定ディスク2の他側面の中心部に片持ち状に突設している断面円形のスプール軸3と、スプール軸3に回転自在に支持された円環形状のスプール4とを備えていると共に、上記固定ディスク2の他側面にスプール軸3を中心にしてこのスプール軸3を囲むように一定径を有するゴム等の弾性リングからなる弾性制動部材5を固着してあり、スプール4をスプール軸3の軸心方向に移動させて固定ディスク2の他側面から突出している上記弾性制動部材5の突出端面にスプール4の一側面を圧接させることにより、スプール4の回転を制動し、その圧接を解除することによりスプール4に対する制動を解いて自由に回転できるように構成している。
【0023】
さらに、スプール軸3の先端部において、スプール4の制動解除に対応した部分とスプール4の制動に対応した部分とにそれぞれ第1係止周溝6と第2係止周溝7とを並列状態に設けている一方、スプール4に、上記第1、第2係止周溝6、7に係脱自在に係止してスプール4を制動解除位置と制動位置とに保持するための切替えレバー8を設けている。
【0024】
上記取付金具1は図7、図8に示すように、元竿Aの外周面に沿って幅方向に円弧状に湾曲した一定長さを有する長方形状の金属板片からなり、その長さ方向の前後両端部を図7に示すように元竿Aに取付けている前後固定用リング部材B1、B2により着脱自在に固定されると共に、この取付金具1の一側端における長さ方向の中央部から下方に向かって一定高さを有する上記支持板片1aを直角に屈曲させて元竿Aの長さ方向に対して取付金具1から直角方向に突設している。
【0025】
この取付金具1の下方の空間部に面している支持板片1aの平坦な面に上記固定ディスク2の背面である一側面を当てがってビス等により支持板片1aにこの固定ディスク2を一体に固着している。固定ディスク2は、木製又は硬質合成樹脂製或いはアルミ等の軽金属製であって、上記スプール4よりも小径で一定厚みを有する円板形状に形成されてあり、その他側面における中心部にスプール4の厚みに略等しい長さを有するアルミ等の金属製の上記スプール軸3の基端を固着させている。
【0026】
スプール4は固定ディスク2と同じ材料からなり、その外周面に釣糸Cを巻装させる断面U字状の溝4aを形成していると共に、固定ディスク2の他側面と対向する一側面に固定ディスク2を遊嵌状態に収納可能な大きさと深さを有する円形状の収納凹部9を設けてあり、さらに、スプール4の中心部にスプール4の両側面間に亘って貫通した中心孔10を設け、この中心孔10に上記スプール軸3を挿脱可能に挿通してスプール4をこのスプール軸3回りに回転可能に支持させている。中心孔10は、スプール4の中心部に中心孔10よりも大径の孔11を設けてこの大径孔11に円筒形状のブッシュ11a を介してベアリング12を挿嵌することにより、このベアリング12のインナーレースの内周面で囲まれた孔によって形成されている。
【0027】
スプール軸3の先端面は中心から外周面に向かって凸円弧状に緩傾斜した傾斜先端面3aに形成していると共に、この傾斜先端面3aの外周端からスプール軸3の中心部に向かって断面U字状の一定深さの上記第1係止周溝6を形成してあり、さらに、スプール軸3の傾斜先端面3aからこの第1係止周溝6の溝幅間隔を存してスプール軸3の先端部に上記第2係止周溝7を設けることにより、第1係止周溝6と第2係止周溝7とをスプール軸3の先端部においてスプール軸3の先端側から基端側に向かって間隔を存することなく連続するように形成されている。
【0028】
また、第2係止周溝7の断面形状は、第1係止周溝6のように一定幅を有する溝底の両端から一定高さの溝壁面を設けた断面U字状ではなく、その一定幅を有する溝底面を第1係止周溝6におけるスプール軸3の基端側の垂直な溝壁面6aの外周端からスプール軸3の中心に向かって傾斜させた截頭円錐形状の傾斜溝底面7aに形成してあり、この傾斜溝底面7aの下傾端からスプール軸3の外周面に向かって垂直な溝壁面7bを形成した断面レ字状の周溝に形成されている。なお、この傾斜溝底面7aの溝幅は、切替えレバー8の厚みの倍以上に形成されている。
【0029】
一方、スプール4の他側面の中心部に、上記スプール軸3を挿嵌させている中心孔10の開口端を被覆した硬質合成樹脂製又は金属製の蓋部材13をビス14によって取付けている。この蓋部材13は天壁部13a の外周端に一定高さの周壁部13b を一体に設けてなり、その中空内部に上記第1、第2係止周溝6、7に係脱自在に係止してスプール4を制動解除位置と制動位置とに保持するための切替えレバー8を設けている。切替えレバー8は細幅で薄肉の棒状金属片からなり、その長さ方向の中央部を平面く字状に屈曲させていると共に基端部を蓋部材13の天壁部13a の内面外周部に平面方向に回動自在に枢着されてあり、この切替えレバー8の先端部を蓋部材13の周壁部13b に開設している開口部15を通じて外部に突出させてその突出端部を操作片部8aに形成している。
【0030】
さらに、蓋部材13の天壁部13a の下面外周部に支持ピン16を突設してこの支持ピン16に平面U字状のスプリング17の屈曲部を支持させていると共に、このスプリング17の一方の杆部17a を蓋部材13の周壁部13b の内面に圧着させ、他方の杆部16b を上記切替えレバー8のく字状に屈曲した部分に圧着させてあり、このスプリング17の圧力によって切替えレバー8をスプール軸3を横断する方向、即ち、スプール4の中心孔10から突出しているスプール軸3の先端部外周面に向かって回動する方向に押圧して、上記第1係止周溝6と第2係止周溝7とのいずれかに選択的に係止させている。
【0031】
なお、スプール4の中心孔10からスプール軸3を抜き取った場合には、切替えレバー8はスプリング17の力によって中心孔10を横断する方向に移動しようとするが、切替えレバー8の先端部は蓋部材13の上記開口部15の内端面に受止されて必要以上に回動するのを阻止され、中心孔10の中心に対してスプリング17側に偏位した位置でスプリング17により中心孔10の中心方向に向かって付勢された状態を維持している。
【0032】
また、スプール軸3をスプール4の中心孔10に挿入してその先端部を中心孔10から蓋部材13内に突出させ、その先端部に設けている上記第1係止周溝6を切替えレバー8に係止させた状態においては、スプール4の一側面に設けている上記収納凹部9に嵌入した固定ディスク2の他側面に装着している上記弾性制動部材5はスプール4の一側面に当接することなく僅かな隙間を存した状態でスプール4の一側面に対向させてあり、この状態から切替えレバー8を一旦、第1係止周溝6からの係止を解き、固定ディスク2をさらにスプール4の一側面に向かって押し進めて弾性制動部材5をスプール4の一側面に押接させた状態にすると、スプール軸3の先端部がその先端部に設けている上記第2係止周溝7が切替えレバー8との係合位置に達するように構成している。なお、図中、18はスプール4の他側面外周部に設けた操作ハンドルである。
【0033】
このように構成したので、取付金具1の支持板片1aに固着している固定ディスク2とスプール4とを組み合わせて魚釣り用手動リールを組み立てる場合、固定ディスク2の中心部から突設しているスプール軸3をスプール4の中心孔10に挿入すると、スプール軸3の傾斜先端面3aがスプール4の他側面において中心孔10を被覆している蓋部材13内に突出する際に、中心孔10の開口端に臨ませている切替えレバー8に突き当たる。
【0034】
この時、スプール軸3の先端面が傾斜先端面3aに形成されている一方、切替えレバー8は中心孔10の中心に対してこの切替えレバー8の背面を押圧しているスプリング17側に偏位した位置に保持されているので、スプール軸3の先端が蓋部材13内に突入するに従って切替えレバー8がスプリング17の力に抗してスプール軸3の傾斜先端面3aを伝ってスプール軸3の外周面側に移動させられ、スプール軸3の先端部において、傾斜先端面3aに後続して形成されている第1係止周溝6が切替えレバー8の位置に達すると、切替えレバー8がスフリング16の力によって自動的に瞬時に第1係止周溝6に進入、係止し、スプール軸3にスプール4が回転自在に支持された魚釣り用手動リールを簡単且つ正確に組み立てることができる。
【0035】
このように、スプール軸3に設けている第1係止周溝6に切替えレバー8を係止させた状態にすると、図2に示すように、スプール軸3を突設している固定ディスク2の一側面に設けた弾性制動部材5は、スプール4の対向側面に圧接することなく僅かな隙間を存して離間した位置に保持され、従って、スプール4はスプール軸3を中心として軽快に回転して釣り糸の円滑な繰り出し、巻き戻し等が可能となる。
【0036】
また、上記切替えレバー8は、固定ディスク2と反対側のスプール4の他側面中央部に装着している蓋部材13内に配設されてあり、その先端操作片部8aを蓋部材13の周壁部13b
に設けてい開口部15から外部に突出させているので、片手でスプール4を把持しながら指先を切替えレバー8の操作片部8aに押し当てて該切替えレバー8の回動操作を簡単且つ円滑に行うことができる。
【0037】
そして、切替えレバー8をスプリング17の力に抗して回動操作して上記第1係止周溝6から離脱させることにより第1係止周溝6に対する切替えレバー8の係止を解くと、スプール4はスプール軸3の長さ方向に移動可能となり、この状態にして固定ディスク2とスプール4との対向側面を互いに押し付け合う方向に相対移動させて固定ディスク2の一側面に設けている弾性制動部材5をスプール4の対向側面に押し付けると、スプール軸3の先端部に上記第1係止周溝6に後続して設けている第2係止周溝7が切替えレバー8の位置に達し、切替えレバー8に対する操作力を解くことによって該切替えレバー8を第2係止周溝7に係止させる。
【0038】
上記第1係止周溝6からの切替えレバー8の係止解除操作から第2係止周溝7に対する切替えレバー8の係止操作は、スプール4を把持しながら指先で切替えレバー8を操作することによって簡単且つ素早く行うことができ、図5に示すように切替えレバー8を第2係止周溝7に係止させると、この第2係止周溝7の溝底面を、第1係止周溝6の開口端からスプール軸3の基端方向に向かうに従って溝深くなる方向に傾斜した傾斜溝底面7aに形成しているので、この傾斜溝底面7a上に切替えレバー8が係止すると、スプリング17の力によって傾斜溝底面7a上に押付けている切替えレバー8の押圧力が傾斜溝底面7aを介してスプール軸3をさらに引き寄せる方向、即ち、固定ディスク2に取付けている弾性制動部材5をスプール4の対向側面にさらに強く押し付ける方向に作用し、弾性制動部材5とスプール4との摩擦力によってスプール4を制動して所定のドラグ力を発揮させることができる。
【0039】
このように、固定ディスク2に取付けている弾性制動部材5をスプール4の対向側面に押接させた状態にすると、スプール4が制動されて釣糸がスプール4から不測に繰り出されるのを阻止し得るのは勿論、手元においてスプール4を制動力に抗しながら回転させることによって釣糸の長さを所望の長さに自由に調整することができると共に調整した長さに保持することができる。また、魚釣り時にはドラグ力を発揮させて釣糸を緊張状態に保持することができ、絡み等を防止することができる。
【0040】
以上の実施例においては、スプール軸3の先端部に設けている第1、第2係止周溝7、8に選択的に係止させる切替えレバー8としては、その基端部を蓋部材13の天壁部13a の下面外周部に回動自在に枢着していると共に、その長さ方向の中間部を上記第1、第2係止周溝7、8に選択的に係止させるように構成しているが、切替えレバーを回動自在に設けることなく、蓋部材13内にその長さ方向に進退自在に設けておいてもよい。
【0041】
図10〜図15はその実施例を示すもので、取付金具1の形状や固定ディスク2の構造、及び、この固定ディスクの他側面に取付けている弾性制動部材5や中心部に突設しているスプール軸3の形状、このスプール軸3に回転自在に支持されているスプール4の構造、蓋部材13の形状等は上記実施例と同様である。
【0042】
スプール軸3の先端部に設けている第1、第2係止周溝7、8に選択的に係止させる切替えレバー8'は、金属板片からなる矩形状の平板部81の中央部にスプール軸3の径よりも大径の係止孔82を設けていると共に平板部81の先端部を平板部81よりも小幅の突片部81'
に形成してあり、さらに、この突片部81' の先端部を直角方向に屈折させて操作片部83に形成していると共に、基端部も同じく直角に屈折させてスプリング受け部84に形成している。
【0043】
スプール4の他側面中央部にビス14によって取付けられている蓋部材13の天壁部13a の内面にこの切替えレバー8'の平板部81に設けている上記係止孔82にスプール軸3の先端部を挿通させた状態にしてこの平板部81を長さ方向に摺動自在に収納させている矩形状の凹部13c を設けていると共に、周壁部13b の一部に、平板部81の突片部81' を蓋部材13から外部に突出させ、且つ、その内周面を平板部81と突片部81' との連設部に形成しているL字状の段部を受止する受止部15a に形成している一定幅を有する開口部15' を設けあり、さらに、この開口部15' と直径方向に対向して上記凹部13c に連通したスプリング収納凹部13d を設け、このスプリング収納凹部13d にコイルスプリング17' を配し、その長さ方向の両端を収納凹部13d の底面と切替えレバー8'の上記スプリング受け部84とに圧接してこのコイルスプリング17' の力より切替えレバー8'をその係止孔82が第1、第2係止周溝6、7のいずれかに選択的に係止するように常時付勢している。その他の構成については上記実施例と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0044】
このように構成したので、取付金具1の支持板片1aに固着している固定ディスク2とスプール4とを組み合わせて魚釣り用手動リールを組み立てる場合、固定ディスク2の中心部から突設しているスプール軸3をスプール4の中心孔10を通じて蓋部材13内に設けている切替えレバー8'の係止孔82に挿通しようとすると、そのスプール軸3の傾斜先端面3aが係止孔82の周縁部に押圧してその傾斜面で切替えレバー8'を後退させながら係止孔82に挿通し、傾斜先端面3aに後続して形成されている第1係止周溝6が切替えレバー8'の位置に達してこの切替えレバー8'がコイルスプリング17' の力によって自動的に瞬時にその係止孔82を第1係止周溝6に進入、係止させ、スプール軸3にスプール4が回転自在に支持された魚釣り用手動リールを簡単且つ正確に組み立てることができる。
【0045】
このように、スプール軸3に設けている第1係止周溝6に切替えレバー8'を係止させた状態にすると、図10に示すように、スプール軸3を突設している固定ディスク2の一側面に設けた弾性制動部材5は、スプール4の対向側面に圧接することなく僅かな隙間を存して離間した位置に保持され、従って、スプール4はスプール軸3を中心として軽快に回転して釣り糸の円滑な繰り出し、巻き戻し等が可能となる。
【0046】
そして、片手でスプール4を把持しながらその指先で切替えレバー8'の先端操作片部83を押圧して切替えレバー8'をコイルスプリング17' の力に抗してその突片部81' が蓋部材13内に没入する方向に後退させると、切替えレバー8'の係止孔82が上記第1係止周溝6から離脱し、この状態にしてスプール4をスプール軸3に沿って固定ディスク2側に相対的に移動させ固定ディスク2の一側面に設けている弾性制動部材5をスプール4の対向側面に押し付けると、スプール軸3の先端部に上記第1係止周溝6に後続して設けている第2係止周溝7が切替えレバー8'の係止孔82の位置に達し、この状態にして切替えレバー8に対する押圧力を解くと、切替えレバー8'の係止孔82が第2係止周溝7に係止する(図12、図13参照)。
【0047】
このように切替えレバー8'の係止孔82を第2係止周溝7に係止させると、この第2係止周溝7の溝底面が上述したように、第1係止周溝6の開口端からスプール軸3の基端方向に向かうに従って溝深くなる方向に傾斜した傾斜溝底面7aに形成しているので、この傾斜溝底面7a上に係止した切替えレバー8がコイルスプリング17' の力によってスプール軸3をさらに引き寄せる方向、即ち、固定ディスク2に取付けている弾性制動部材5をスプール4の対向側面にさらに強く押し付ける方向に作用し、弾性制動部材5とスプール4との摩擦力によってスプール4を制動して所定のドラグ力を発揮させることができる。
【0048】
このように、固定ディスク2に取付けている弾性制動部材5をスプール4の対向側面に押接させた状態にすると、スプール4が制動されて釣糸がスプール4から不測に繰り出されるのを阻止し得るのは勿論、手元においてスプール4を制動力に抗しながら回転させることによって釣糸の長さを所望の長さに自由に調整することができると共に調整した長さに保持することができる。また、魚釣り時にはドラグ力を発揮させて釣糸を緊張状態に保持することができ、絡み等を防止することができる。
【0049】
なお、以上の実施例においては、いずれも弾性制動部材5を固定ディスク2側に取付けているが、固定ディスク2に取付けることなくこの固定ディスク2に対向するスプール4の側面に取付けておいてもよく、さらには固定ディスク2とスプール4との対向面の両方に取付けておいてもよい。また、弾性制動部材5はリング状に限らず、板状その他の適宜な形状に形成しておいてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 取付金具
2 固定ディスク
3 スプール軸
4 スプール
5 弾性制動部材
6 第1係止周溝
7 第2係止周溝
8 切替えレバー
9 収納凹部
10 中心孔
13 蓋部材
15 開口部
17 スプリング
【技術分野】
【0001】
本発明は、手釣り用釣竿の元竿に装着して穂先からの釣糸の長さを所望長さに調整可能にし、且つ、巻き取りや繰り出しが円滑に行える魚釣り用手動リールに関する。
【背景技術】
【0002】
手釣り用釣竿においては、通常、リールを装着することなく釣竿の先端に釣糸を繋着して魚釣りを行うようにしているが、そうすると釣り場の状況等の応じて釣糸の長さを調整することができず、また、釣糸が容易に弛んで絡み易くなる。
【0003】
そのため、近年、手釣り用釣竿においても、元竿に装着して手元操作により釣糸の長さを調整したり、釣糸にドラグ力を付与して糸絡みを防止できるようにした簡易手動リールが開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、元竿に支軸を突設している取付台を取付けて固定する一方、糸巻であるスプールの両面を基端ディスクと先端ディスクとで挟んでこれらを一体的に上記支軸に回転自在に外嵌すると共に、先端ディスクから突出した支軸にナット部材を螺合してこのナット部材でスプールを先端ディスクを介して締め付けることにより基端ディスクを上記取付台上に圧着させてスプールを固定可能に構成し、さらに、上記基端ディスクの下面中央部に凹部を設けてこの凹部内にコイルスプリングを圧入し、コイルスプリングの両端を取付台と基端ディスクの凹部奥底面とに弾圧させることによってスプールに所定のドラグ力を保持させてなる手動リールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−298990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の手動リールによれば、スプールと一体の基端ディスクに設けている凹部と、元竿に取付ける取付台との対向面にコイルスプリングを圧入しているために、スプールには常にこのコイルスプリングとの摩擦によるドラグ力が付与されていてスプールを軽快に自由回転させることができず、従って、釣糸の繰り出しや巻き取り操作が円滑に行えないばかりでなく、スプールを回転させるとコイルスプリングに捩れが発生して短期間で破損する虞れがある。
【0007】
また、上記特許文献1には、このようなドラグ機構以外に、元竿に自由回転可能な手動リールを装着すると共にこの手動リールの前方に釣糸のガイドとして上下一対の挟持ロールを配設し、この挟持ロールの接圧力を調整可能にして釣糸にドラグ力を付与するように構成した簡易なドラグ機構も記載されているが、このような構成では手動リールとは別に元竿にドラグ機構を設けなければならず、構造が複雑化してコスト高になると共にその取付作業に手間を要するといった問題点がある。さらに、スプールから引き出された釣糸にドラグ力を付与することができてもスプール自体は自由回転するので、スプールとこのドラグ機構に至るまでの釣糸部分に弛みが発生し、糸絡みが生じるといった問題点がある。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、構造が簡単で安価に提供できるのは勿論、簡単な構造によって手元操作によりスプールの自由回転と回転力の制動との切り替えが容易に且つ確実に行え、糸絡みの発生も防止することができる魚釣り用手動リールを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の魚釣り用手動リールは、請求項1に記載したように、元竿に装着する取付金具に固定ディスクを固着し、この固定ディスクの一側面中心部にスプール軸を突設してこのスプール軸にスプールの中心孔を回転自在に、且つ、スプール軸の長さ方向に移動可能に支持させてなる魚釣り用手動リールにおいて、上記スプール軸の先端部に第1係止周溝と第2係止周溝とをその第1係止周溝を先端側にして並設している一方、このスプール軸の先端部が突出する上記スプールの側面側に、スプリング力により上記スプール軸を横断する方向に付勢されて上記第1係止周溝と第2係止周溝とのいずれかに係脱自在に係止した切替えレバーを配設してあり、さらに、固定ディスクとスプールとの対向面のいずれか一方に、他方の面との圧接による摩擦力によってスプールの回転を制動する弾性制動部材を取付け、上記切替えレバーを第1係止周溝に係止させた時にスプールを自由回転可能とし、第2係止周溝に係止させた時に弾性制動部材によりスプールの回転を制動するように構成している。
【0010】
このように構成した魚釣り用手動リールにおいて、請求項2に係る発明は、スプール軸の先端が突出する側の上記スプールの側面中央部に中心孔を被覆した蓋部材を取付け、この蓋部材内に切替えレバーを設けて該切替えレバーの基端部を蓋部材の天壁部の内面外周部に回動自在に枢着すると共に蓋部材内に装着しているスプリング力によって切替えレバーを第1、第2係止周溝に係止させる方向に常時付勢してあり、さらに、切替えレバーの先端部を蓋部材の周壁部の一部に開設している開口部に周方向に移動可能に挿通して外部に突出させ、その突出端部を操作突片に形成していることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、スプール軸の先端が突出する側の上記スプールの側面中央部に中心孔を被覆した蓋部材を取付け、この蓋部材内に、上記スプール軸の先端部を挿通させている係止孔を有する切替えレバーをスプール軸に対して直角方向に進退自在に配設していると共に、蓋部材内に装着しているスプリング力によってこの切替えレバーを上記係止孔が第1、第2係止周溝のいずれかに係止するように常時付勢してあり、さらに、切替えレバーの先端部を蓋部材の周壁部の一部に開設している開口部から外部に突出させ、その突出端部を操作突片に形成していることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、スプール軸の先端面を中心から外周面に向かって凸円弧状に緩傾斜した傾斜先端面に形成していると共に、第2係止周溝の溝底面を第1係止周溝の開口縁からスプール軸の基端側に向かって徐々に小径となる傾斜溝底面に形成していることを特徴とする。
【0013】
さらに、請求項5に係る発明は、固定ディスクに対向するスプールの側面に固定ディスクの収納凹部を設けていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に係る発明は、弾性制動部材は軟質合成樹脂又はゴムからなるリングであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、スプールを回転自在に支持しているスプール軸の先端部に第1係止周溝と第2係止周溝とを設けている一方、このスプール軸の先端部を突出させている上記スプールの側面側に、スプリング力により上記スプール軸を横断する方向に付勢されて上記第1係止周溝と第2係止周溝とのいずれかに係脱自在に係止した切替えレバーを回動自在に配設してあり、さらに、固定ディスクとスプールとの対向面のいずれか一方に、他方の面との圧接による摩擦力によってスプールの回転を制動する弾性制動部材を取付けているので、切替えレバーを指先で操作して上記第1係止周溝と第2係止周溝とのいずれかに容易に且つ確実に選択的に係止させることができると共に、切替えレバーを第1係止周溝に係止させることによって固定ディスクとスプールとの対向面間に一定の隙間を設けた状態に保持することができ、従って、スプールを円滑に自由回転させて釣糸の繰り出しや巻き取り操作が迅速に行うことができる。
【0016】
また、切替えレバーを第1係止周溝から離脱させると、スプール軸に対してスプールがその軸心方向に移動可能となり、切替えレバーを第2係止周溝の位置に素早く対向させて係止させることができる。そして、切替えレバーを第2係止周溝に係止させると、固定ディスクとスプールとの対向面を弾性制動部材を介して圧接させることができ、この弾性制動部材の摩擦によってドラグ力を発生させることができ、このドラグ力によってスプールの回転を制動して、釣糸が風圧や水の流れ等によってスプールから不測に繰り出されるのを阻止しながら魚釣り行うことができると共に、手元においてスプールを制動力に抗して回転させることによって釣糸の長さを所望の長さに自由に調整することができ、その長さに保持することができる。その上、魚釣り時にはドラグ力を発揮させて釣糸を緊張状態に保持することができ、絡み等を防止することができる。
【0017】
さらに、請求項2に係る発明によれば、スプール軸の先端が突出する側の上記スプールの側面中央部に中心孔を被覆した蓋部材を取付け、この蓋部材内に切替えレバーを設けて該切替えレバーの基端部を蓋部材の天壁部の内面外周部に回動自在に枢着すると共に蓋部材内に装着しているスプリング力によって切替えレバーを第1、第2係止周溝に係止させる方向に常時付勢しているので、切替えレバーや第1、第2係止周溝を蓋部材によって被覆しているから、外部からの衝撃等による不測の損傷等や塵埃等の侵入を防止して常に軽快な動作を可能にすることができ、また、切替えレバーの先端部を蓋部材の周壁部の一部に開設している開口部から外部に突出させてその突出端部を操作突片に形成しているので、スプールを把持しながらその指先を切替えレバーの操作突片に係止させて切替えレバーの切替え操作を簡単且つ素早く行うことができる。
【0018】
同様に、請求項3に係る発明によれば、蓋部材内に切替えレバーを回動自在に設けることなくスプール軸に対して直角方向に進退自在に配設しているので、上記請求項2に係る発明と同じく、スプールを把持しながらその指先を切替えレバーの操作突片に係止させて上記第1、第2係止周溝に対する選択的な切り替え操作が簡単且つ確実に行うことができる等の作用効果を奏する。
【0019】
また、請求項4に係る発明によれば、スプール軸の先端面を中心から外周面に向かって凸円弧状に緩傾斜した傾斜先端面に形成しているので、固定ディスクから突設しているスプール軸をスプールの中心孔に挿入してその先端部を蓋部材内に突出させた時に、このスプール軸の傾斜先端面によって切替えレバーをスプリング力に抗して後退させながら傾斜先端面に後続して形成されている上記第1係止周溝に自動的に係止させることができ、魚釣り用手動リールを簡単且つ正確に組み立てることができる。その上、第2係止周溝の溝底面を第1係止周溝の開口縁からスプール軸の基端側に向かって徐々に小径となる傾斜溝底面に形成しているので、この傾斜溝底面上に切替えレバーが係止すると、スプリングの力によって傾斜溝底面上に押付けている切替えレバーの押圧力が傾斜溝底面を介してスプール軸をさらに引き寄せる方向に作用して弾性制動部材を介しての固定ディスクとスプールとの摩擦力を常に所定圧に保持しておくことができ、所定のドラグ力を発揮させることができる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、固定ディスクに対向するスプールの側面に固定ディスクの収納凹部を設けているので、固定ディスクとスプールとの対向面間の隙間を外部に対して隠蔽した構造となり、釣糸がその隙間に食い込むのをなくすることができると共に体裁のよい外観を呈する手動リールを提供することができる。なお、上記弾性制動部材としては、請求項6に記載したように、軟質合成樹脂又はゴムからなるリングを採用することによって簡単なドラグ機構を構成することができると共に、固定ディスクとスプールとの対向面をこの制動リングを介して均一に圧着させて円滑な制動を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】スプールの回転の制動を解いた状態の魚釣り用手動リールの縦断正面図。
【図2】その要部の拡大縦断正面図。
【図3】その際の切替えレバーの位置を示す蓋部材の縦断側面図。
【図4】スプールの回転を制動している状態の魚釣り用手動リールの縦断正面図。
【図5】その要部の拡大縦断正面図。
【図6】その際の切替えレバーの位置を示す蓋部材の縦断側面図。
【図7】魚釣り用手動リールの斜視図。
【図8】その分解斜視図。
【図9】切替えレバーの切替え操作を説明するための斜視図。
【図10】本発明の別な実施例を示すスプールの回転の制動を解いた状態の魚釣り用手動リールの縦断正面図。
【図11】その際の切替えレバーの位置を示す蓋部材の縦断側面図。
【図12】スプールの回転を制動している状態の魚釣り用手動リールの縦断正面図。
【図13】その際の切替えレバーの位置を示す蓋部材の縦断側面図。
【図14】魚釣り用手動リール全体の斜視図。
【図15】蓋部材と切替えレバーとスプール軸との関係を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の具体的な実施の形態を図面に基づいて説明すると、魚釣り用手動リールは、釣竿の元竿Aに装着する取付金具1と、この取付金具1における元竿Aの長さ方向に対して直角方向に突設している支持板片1aにその一側面を一体に固着している円板形状の固定ディスク2と、この固定ディスク2の他側面の中心部に片持ち状に突設している断面円形のスプール軸3と、スプール軸3に回転自在に支持された円環形状のスプール4とを備えていると共に、上記固定ディスク2の他側面にスプール軸3を中心にしてこのスプール軸3を囲むように一定径を有するゴム等の弾性リングからなる弾性制動部材5を固着してあり、スプール4をスプール軸3の軸心方向に移動させて固定ディスク2の他側面から突出している上記弾性制動部材5の突出端面にスプール4の一側面を圧接させることにより、スプール4の回転を制動し、その圧接を解除することによりスプール4に対する制動を解いて自由に回転できるように構成している。
【0023】
さらに、スプール軸3の先端部において、スプール4の制動解除に対応した部分とスプール4の制動に対応した部分とにそれぞれ第1係止周溝6と第2係止周溝7とを並列状態に設けている一方、スプール4に、上記第1、第2係止周溝6、7に係脱自在に係止してスプール4を制動解除位置と制動位置とに保持するための切替えレバー8を設けている。
【0024】
上記取付金具1は図7、図8に示すように、元竿Aの外周面に沿って幅方向に円弧状に湾曲した一定長さを有する長方形状の金属板片からなり、その長さ方向の前後両端部を図7に示すように元竿Aに取付けている前後固定用リング部材B1、B2により着脱自在に固定されると共に、この取付金具1の一側端における長さ方向の中央部から下方に向かって一定高さを有する上記支持板片1aを直角に屈曲させて元竿Aの長さ方向に対して取付金具1から直角方向に突設している。
【0025】
この取付金具1の下方の空間部に面している支持板片1aの平坦な面に上記固定ディスク2の背面である一側面を当てがってビス等により支持板片1aにこの固定ディスク2を一体に固着している。固定ディスク2は、木製又は硬質合成樹脂製或いはアルミ等の軽金属製であって、上記スプール4よりも小径で一定厚みを有する円板形状に形成されてあり、その他側面における中心部にスプール4の厚みに略等しい長さを有するアルミ等の金属製の上記スプール軸3の基端を固着させている。
【0026】
スプール4は固定ディスク2と同じ材料からなり、その外周面に釣糸Cを巻装させる断面U字状の溝4aを形成していると共に、固定ディスク2の他側面と対向する一側面に固定ディスク2を遊嵌状態に収納可能な大きさと深さを有する円形状の収納凹部9を設けてあり、さらに、スプール4の中心部にスプール4の両側面間に亘って貫通した中心孔10を設け、この中心孔10に上記スプール軸3を挿脱可能に挿通してスプール4をこのスプール軸3回りに回転可能に支持させている。中心孔10は、スプール4の中心部に中心孔10よりも大径の孔11を設けてこの大径孔11に円筒形状のブッシュ11a を介してベアリング12を挿嵌することにより、このベアリング12のインナーレースの内周面で囲まれた孔によって形成されている。
【0027】
スプール軸3の先端面は中心から外周面に向かって凸円弧状に緩傾斜した傾斜先端面3aに形成していると共に、この傾斜先端面3aの外周端からスプール軸3の中心部に向かって断面U字状の一定深さの上記第1係止周溝6を形成してあり、さらに、スプール軸3の傾斜先端面3aからこの第1係止周溝6の溝幅間隔を存してスプール軸3の先端部に上記第2係止周溝7を設けることにより、第1係止周溝6と第2係止周溝7とをスプール軸3の先端部においてスプール軸3の先端側から基端側に向かって間隔を存することなく連続するように形成されている。
【0028】
また、第2係止周溝7の断面形状は、第1係止周溝6のように一定幅を有する溝底の両端から一定高さの溝壁面を設けた断面U字状ではなく、その一定幅を有する溝底面を第1係止周溝6におけるスプール軸3の基端側の垂直な溝壁面6aの外周端からスプール軸3の中心に向かって傾斜させた截頭円錐形状の傾斜溝底面7aに形成してあり、この傾斜溝底面7aの下傾端からスプール軸3の外周面に向かって垂直な溝壁面7bを形成した断面レ字状の周溝に形成されている。なお、この傾斜溝底面7aの溝幅は、切替えレバー8の厚みの倍以上に形成されている。
【0029】
一方、スプール4の他側面の中心部に、上記スプール軸3を挿嵌させている中心孔10の開口端を被覆した硬質合成樹脂製又は金属製の蓋部材13をビス14によって取付けている。この蓋部材13は天壁部13a の外周端に一定高さの周壁部13b を一体に設けてなり、その中空内部に上記第1、第2係止周溝6、7に係脱自在に係止してスプール4を制動解除位置と制動位置とに保持するための切替えレバー8を設けている。切替えレバー8は細幅で薄肉の棒状金属片からなり、その長さ方向の中央部を平面く字状に屈曲させていると共に基端部を蓋部材13の天壁部13a の内面外周部に平面方向に回動自在に枢着されてあり、この切替えレバー8の先端部を蓋部材13の周壁部13b に開設している開口部15を通じて外部に突出させてその突出端部を操作片部8aに形成している。
【0030】
さらに、蓋部材13の天壁部13a の下面外周部に支持ピン16を突設してこの支持ピン16に平面U字状のスプリング17の屈曲部を支持させていると共に、このスプリング17の一方の杆部17a を蓋部材13の周壁部13b の内面に圧着させ、他方の杆部16b を上記切替えレバー8のく字状に屈曲した部分に圧着させてあり、このスプリング17の圧力によって切替えレバー8をスプール軸3を横断する方向、即ち、スプール4の中心孔10から突出しているスプール軸3の先端部外周面に向かって回動する方向に押圧して、上記第1係止周溝6と第2係止周溝7とのいずれかに選択的に係止させている。
【0031】
なお、スプール4の中心孔10からスプール軸3を抜き取った場合には、切替えレバー8はスプリング17の力によって中心孔10を横断する方向に移動しようとするが、切替えレバー8の先端部は蓋部材13の上記開口部15の内端面に受止されて必要以上に回動するのを阻止され、中心孔10の中心に対してスプリング17側に偏位した位置でスプリング17により中心孔10の中心方向に向かって付勢された状態を維持している。
【0032】
また、スプール軸3をスプール4の中心孔10に挿入してその先端部を中心孔10から蓋部材13内に突出させ、その先端部に設けている上記第1係止周溝6を切替えレバー8に係止させた状態においては、スプール4の一側面に設けている上記収納凹部9に嵌入した固定ディスク2の他側面に装着している上記弾性制動部材5はスプール4の一側面に当接することなく僅かな隙間を存した状態でスプール4の一側面に対向させてあり、この状態から切替えレバー8を一旦、第1係止周溝6からの係止を解き、固定ディスク2をさらにスプール4の一側面に向かって押し進めて弾性制動部材5をスプール4の一側面に押接させた状態にすると、スプール軸3の先端部がその先端部に設けている上記第2係止周溝7が切替えレバー8との係合位置に達するように構成している。なお、図中、18はスプール4の他側面外周部に設けた操作ハンドルである。
【0033】
このように構成したので、取付金具1の支持板片1aに固着している固定ディスク2とスプール4とを組み合わせて魚釣り用手動リールを組み立てる場合、固定ディスク2の中心部から突設しているスプール軸3をスプール4の中心孔10に挿入すると、スプール軸3の傾斜先端面3aがスプール4の他側面において中心孔10を被覆している蓋部材13内に突出する際に、中心孔10の開口端に臨ませている切替えレバー8に突き当たる。
【0034】
この時、スプール軸3の先端面が傾斜先端面3aに形成されている一方、切替えレバー8は中心孔10の中心に対してこの切替えレバー8の背面を押圧しているスプリング17側に偏位した位置に保持されているので、スプール軸3の先端が蓋部材13内に突入するに従って切替えレバー8がスプリング17の力に抗してスプール軸3の傾斜先端面3aを伝ってスプール軸3の外周面側に移動させられ、スプール軸3の先端部において、傾斜先端面3aに後続して形成されている第1係止周溝6が切替えレバー8の位置に達すると、切替えレバー8がスフリング16の力によって自動的に瞬時に第1係止周溝6に進入、係止し、スプール軸3にスプール4が回転自在に支持された魚釣り用手動リールを簡単且つ正確に組み立てることができる。
【0035】
このように、スプール軸3に設けている第1係止周溝6に切替えレバー8を係止させた状態にすると、図2に示すように、スプール軸3を突設している固定ディスク2の一側面に設けた弾性制動部材5は、スプール4の対向側面に圧接することなく僅かな隙間を存して離間した位置に保持され、従って、スプール4はスプール軸3を中心として軽快に回転して釣り糸の円滑な繰り出し、巻き戻し等が可能となる。
【0036】
また、上記切替えレバー8は、固定ディスク2と反対側のスプール4の他側面中央部に装着している蓋部材13内に配設されてあり、その先端操作片部8aを蓋部材13の周壁部13b
に設けてい開口部15から外部に突出させているので、片手でスプール4を把持しながら指先を切替えレバー8の操作片部8aに押し当てて該切替えレバー8の回動操作を簡単且つ円滑に行うことができる。
【0037】
そして、切替えレバー8をスプリング17の力に抗して回動操作して上記第1係止周溝6から離脱させることにより第1係止周溝6に対する切替えレバー8の係止を解くと、スプール4はスプール軸3の長さ方向に移動可能となり、この状態にして固定ディスク2とスプール4との対向側面を互いに押し付け合う方向に相対移動させて固定ディスク2の一側面に設けている弾性制動部材5をスプール4の対向側面に押し付けると、スプール軸3の先端部に上記第1係止周溝6に後続して設けている第2係止周溝7が切替えレバー8の位置に達し、切替えレバー8に対する操作力を解くことによって該切替えレバー8を第2係止周溝7に係止させる。
【0038】
上記第1係止周溝6からの切替えレバー8の係止解除操作から第2係止周溝7に対する切替えレバー8の係止操作は、スプール4を把持しながら指先で切替えレバー8を操作することによって簡単且つ素早く行うことができ、図5に示すように切替えレバー8を第2係止周溝7に係止させると、この第2係止周溝7の溝底面を、第1係止周溝6の開口端からスプール軸3の基端方向に向かうに従って溝深くなる方向に傾斜した傾斜溝底面7aに形成しているので、この傾斜溝底面7a上に切替えレバー8が係止すると、スプリング17の力によって傾斜溝底面7a上に押付けている切替えレバー8の押圧力が傾斜溝底面7aを介してスプール軸3をさらに引き寄せる方向、即ち、固定ディスク2に取付けている弾性制動部材5をスプール4の対向側面にさらに強く押し付ける方向に作用し、弾性制動部材5とスプール4との摩擦力によってスプール4を制動して所定のドラグ力を発揮させることができる。
【0039】
このように、固定ディスク2に取付けている弾性制動部材5をスプール4の対向側面に押接させた状態にすると、スプール4が制動されて釣糸がスプール4から不測に繰り出されるのを阻止し得るのは勿論、手元においてスプール4を制動力に抗しながら回転させることによって釣糸の長さを所望の長さに自由に調整することができると共に調整した長さに保持することができる。また、魚釣り時にはドラグ力を発揮させて釣糸を緊張状態に保持することができ、絡み等を防止することができる。
【0040】
以上の実施例においては、スプール軸3の先端部に設けている第1、第2係止周溝7、8に選択的に係止させる切替えレバー8としては、その基端部を蓋部材13の天壁部13a の下面外周部に回動自在に枢着していると共に、その長さ方向の中間部を上記第1、第2係止周溝7、8に選択的に係止させるように構成しているが、切替えレバーを回動自在に設けることなく、蓋部材13内にその長さ方向に進退自在に設けておいてもよい。
【0041】
図10〜図15はその実施例を示すもので、取付金具1の形状や固定ディスク2の構造、及び、この固定ディスクの他側面に取付けている弾性制動部材5や中心部に突設しているスプール軸3の形状、このスプール軸3に回転自在に支持されているスプール4の構造、蓋部材13の形状等は上記実施例と同様である。
【0042】
スプール軸3の先端部に設けている第1、第2係止周溝7、8に選択的に係止させる切替えレバー8'は、金属板片からなる矩形状の平板部81の中央部にスプール軸3の径よりも大径の係止孔82を設けていると共に平板部81の先端部を平板部81よりも小幅の突片部81'
に形成してあり、さらに、この突片部81' の先端部を直角方向に屈折させて操作片部83に形成していると共に、基端部も同じく直角に屈折させてスプリング受け部84に形成している。
【0043】
スプール4の他側面中央部にビス14によって取付けられている蓋部材13の天壁部13a の内面にこの切替えレバー8'の平板部81に設けている上記係止孔82にスプール軸3の先端部を挿通させた状態にしてこの平板部81を長さ方向に摺動自在に収納させている矩形状の凹部13c を設けていると共に、周壁部13b の一部に、平板部81の突片部81' を蓋部材13から外部に突出させ、且つ、その内周面を平板部81と突片部81' との連設部に形成しているL字状の段部を受止する受止部15a に形成している一定幅を有する開口部15' を設けあり、さらに、この開口部15' と直径方向に対向して上記凹部13c に連通したスプリング収納凹部13d を設け、このスプリング収納凹部13d にコイルスプリング17' を配し、その長さ方向の両端を収納凹部13d の底面と切替えレバー8'の上記スプリング受け部84とに圧接してこのコイルスプリング17' の力より切替えレバー8'をその係止孔82が第1、第2係止周溝6、7のいずれかに選択的に係止するように常時付勢している。その他の構成については上記実施例と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0044】
このように構成したので、取付金具1の支持板片1aに固着している固定ディスク2とスプール4とを組み合わせて魚釣り用手動リールを組み立てる場合、固定ディスク2の中心部から突設しているスプール軸3をスプール4の中心孔10を通じて蓋部材13内に設けている切替えレバー8'の係止孔82に挿通しようとすると、そのスプール軸3の傾斜先端面3aが係止孔82の周縁部に押圧してその傾斜面で切替えレバー8'を後退させながら係止孔82に挿通し、傾斜先端面3aに後続して形成されている第1係止周溝6が切替えレバー8'の位置に達してこの切替えレバー8'がコイルスプリング17' の力によって自動的に瞬時にその係止孔82を第1係止周溝6に進入、係止させ、スプール軸3にスプール4が回転自在に支持された魚釣り用手動リールを簡単且つ正確に組み立てることができる。
【0045】
このように、スプール軸3に設けている第1係止周溝6に切替えレバー8'を係止させた状態にすると、図10に示すように、スプール軸3を突設している固定ディスク2の一側面に設けた弾性制動部材5は、スプール4の対向側面に圧接することなく僅かな隙間を存して離間した位置に保持され、従って、スプール4はスプール軸3を中心として軽快に回転して釣り糸の円滑な繰り出し、巻き戻し等が可能となる。
【0046】
そして、片手でスプール4を把持しながらその指先で切替えレバー8'の先端操作片部83を押圧して切替えレバー8'をコイルスプリング17' の力に抗してその突片部81' が蓋部材13内に没入する方向に後退させると、切替えレバー8'の係止孔82が上記第1係止周溝6から離脱し、この状態にしてスプール4をスプール軸3に沿って固定ディスク2側に相対的に移動させ固定ディスク2の一側面に設けている弾性制動部材5をスプール4の対向側面に押し付けると、スプール軸3の先端部に上記第1係止周溝6に後続して設けている第2係止周溝7が切替えレバー8'の係止孔82の位置に達し、この状態にして切替えレバー8に対する押圧力を解くと、切替えレバー8'の係止孔82が第2係止周溝7に係止する(図12、図13参照)。
【0047】
このように切替えレバー8'の係止孔82を第2係止周溝7に係止させると、この第2係止周溝7の溝底面が上述したように、第1係止周溝6の開口端からスプール軸3の基端方向に向かうに従って溝深くなる方向に傾斜した傾斜溝底面7aに形成しているので、この傾斜溝底面7a上に係止した切替えレバー8がコイルスプリング17' の力によってスプール軸3をさらに引き寄せる方向、即ち、固定ディスク2に取付けている弾性制動部材5をスプール4の対向側面にさらに強く押し付ける方向に作用し、弾性制動部材5とスプール4との摩擦力によってスプール4を制動して所定のドラグ力を発揮させることができる。
【0048】
このように、固定ディスク2に取付けている弾性制動部材5をスプール4の対向側面に押接させた状態にすると、スプール4が制動されて釣糸がスプール4から不測に繰り出されるのを阻止し得るのは勿論、手元においてスプール4を制動力に抗しながら回転させることによって釣糸の長さを所望の長さに自由に調整することができると共に調整した長さに保持することができる。また、魚釣り時にはドラグ力を発揮させて釣糸を緊張状態に保持することができ、絡み等を防止することができる。
【0049】
なお、以上の実施例においては、いずれも弾性制動部材5を固定ディスク2側に取付けているが、固定ディスク2に取付けることなくこの固定ディスク2に対向するスプール4の側面に取付けておいてもよく、さらには固定ディスク2とスプール4との対向面の両方に取付けておいてもよい。また、弾性制動部材5はリング状に限らず、板状その他の適宜な形状に形成しておいてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 取付金具
2 固定ディスク
3 スプール軸
4 スプール
5 弾性制動部材
6 第1係止周溝
7 第2係止周溝
8 切替えレバー
9 収納凹部
10 中心孔
13 蓋部材
15 開口部
17 スプリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
元竿に装着する取付金具に固定ディスクを固着し、この固定ディスクの一側面中心部にスプール軸を突設してこのスプール軸にスプールの中心孔を回転自在に、且つ、スプール軸の長さ方向に移動可能に支持させてなる魚釣り用手動リールにおいて、上記スプール軸の先端部に第1係止周溝と第2係止周溝とをその第1係止周溝を先端側にして並設している一方、このスプール軸の先端部が突出する上記スプールの側面側に、スプリング力により上記スプール軸を横断する方向に付勢されて上記第1係止周溝と第2係止周溝とのいずれかに係脱自在に係止した切替えレバーを配設してあり、さらに、固定ディスクとスプールとの対向面のいずれか一方に、他方の面との圧接による摩擦力によってスプールの回転を制動する弾性制動部材を取付け、上記切替えレバーを第1係止周溝に係止させた時にスプールを自由回転可能とし、第2係止周溝に係止させた時に弾性制動部材によりスプールの回転を制動するように構成していることを特徴とする魚釣り用手動リール。
【請求項2】
スプール軸の先端が突出する側の上記スプールの側面中央部に中心孔を被覆した蓋部材を取付け、この蓋部材内に切替えレバーを設けて該切替えレバーの基端部を蓋部材の天壁部の内面外周部に回動自在に枢着すると共に蓋部材内に装着しているスプリング力によって切替えレバーを第1、第2係止周溝に係止させる方向に常時付勢してあり、さらに、切替えレバーの先端部を蓋部材の周壁部の一部に開設している開口部に周方向に移動可能に挿通して外部に突出させ、その突出端部を操作突片に形成していることを特徴とする請求項1に記載の魚釣り用手動リール。
【請求項3】
スプール軸の先端が突出する側の上記スプールの側面中央部に中心孔を被覆した蓋部材を取付け、この蓋部材内に、上記スプール軸の先端部を挿通させている係止孔を有する切替えレバーをスプール軸に対して直角方向に進退自在に配設していると共に、蓋部材内に装着しているスプリング力によってこの切替えレバーを上記中心孔が第1、第2係止周溝のいずれかに係止するように常時付勢してあり、さらに、切替えレバーの先端部を蓋部材の周壁部の一部に開設している開口部から外部に突出させ、その突出端部を操作突片に形成していることを特徴とする請求項1に記載の魚釣り用手動リール。
【請求項4】
スプール軸の先端面を中心から外周面に向かって凸円弧状に緩傾斜した傾斜先端面に形成していると共に、第2係止周溝の溝底面を第1係止周溝の開口縁からスプール軸の基端側に向かって徐々に小径となる傾斜溝底面に形成していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の魚釣り用手動リール。
【請求項5】
固定ディスクに対向するスプールの側面に固定ディスクの収納凹部を設けていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣り用手動リール。
【請求項6】
弾性制動部材は軟質合成樹脂又はゴムからなるリングであることを特徴とする請求項1に記載の魚釣り用手動リール。
【請求項1】
元竿に装着する取付金具に固定ディスクを固着し、この固定ディスクの一側面中心部にスプール軸を突設してこのスプール軸にスプールの中心孔を回転自在に、且つ、スプール軸の長さ方向に移動可能に支持させてなる魚釣り用手動リールにおいて、上記スプール軸の先端部に第1係止周溝と第2係止周溝とをその第1係止周溝を先端側にして並設している一方、このスプール軸の先端部が突出する上記スプールの側面側に、スプリング力により上記スプール軸を横断する方向に付勢されて上記第1係止周溝と第2係止周溝とのいずれかに係脱自在に係止した切替えレバーを配設してあり、さらに、固定ディスクとスプールとの対向面のいずれか一方に、他方の面との圧接による摩擦力によってスプールの回転を制動する弾性制動部材を取付け、上記切替えレバーを第1係止周溝に係止させた時にスプールを自由回転可能とし、第2係止周溝に係止させた時に弾性制動部材によりスプールの回転を制動するように構成していることを特徴とする魚釣り用手動リール。
【請求項2】
スプール軸の先端が突出する側の上記スプールの側面中央部に中心孔を被覆した蓋部材を取付け、この蓋部材内に切替えレバーを設けて該切替えレバーの基端部を蓋部材の天壁部の内面外周部に回動自在に枢着すると共に蓋部材内に装着しているスプリング力によって切替えレバーを第1、第2係止周溝に係止させる方向に常時付勢してあり、さらに、切替えレバーの先端部を蓋部材の周壁部の一部に開設している開口部に周方向に移動可能に挿通して外部に突出させ、その突出端部を操作突片に形成していることを特徴とする請求項1に記載の魚釣り用手動リール。
【請求項3】
スプール軸の先端が突出する側の上記スプールの側面中央部に中心孔を被覆した蓋部材を取付け、この蓋部材内に、上記スプール軸の先端部を挿通させている係止孔を有する切替えレバーをスプール軸に対して直角方向に進退自在に配設していると共に、蓋部材内に装着しているスプリング力によってこの切替えレバーを上記中心孔が第1、第2係止周溝のいずれかに係止するように常時付勢してあり、さらに、切替えレバーの先端部を蓋部材の周壁部の一部に開設している開口部から外部に突出させ、その突出端部を操作突片に形成していることを特徴とする請求項1に記載の魚釣り用手動リール。
【請求項4】
スプール軸の先端面を中心から外周面に向かって凸円弧状に緩傾斜した傾斜先端面に形成していると共に、第2係止周溝の溝底面を第1係止周溝の開口縁からスプール軸の基端側に向かって徐々に小径となる傾斜溝底面に形成していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の魚釣り用手動リール。
【請求項5】
固定ディスクに対向するスプールの側面に固定ディスクの収納凹部を設けていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣り用手動リール。
【請求項6】
弾性制動部材は軟質合成樹脂又はゴムからなるリングであることを特徴とする請求項1に記載の魚釣り用手動リール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−244731(P2011−244731A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120674(P2010−120674)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(301041151)株式会社大島製作所 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(301041151)株式会社大島製作所 (1)
【Fターム(参考)】
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