説明

鮮映性化粧シートの製造方法

【課題】ポリエステルフィルムを表面素材に用いた高鮮映性化粧シートの製造において、ポリエステルフィルムの裏面にポリ塩化ビニル層を、ドライラミネート法によって、鮮映性を損なうことなく、且つ生産効率よく形成させる方法を提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルムの裏面に、ガラス転移点が50〜100℃の熱可塑性ポリウレタンと硬化剤を含有する溶剤溶液を塗布し乾燥して接着剤層を形成し、該接着剤層の上にポリ塩化ビニルペースト樹脂を塗布し加熱ゲル化してポリ塩化ビニル樹脂層を形成する鮮映性化粧シートの製造方法である。また、ポリエステルフィルムの裏面に印刷層を形成し、該印刷層の上に上記の接着剤層を形成してもよい。更に、ポリ塩化ビニルペースト樹脂を塗布し加熱ゲル化して形成したポリ塩化ビニル樹脂層の上に軟質ポリ塩化ビニルフィルムを積層して化粧シートの厚みを調整してもよい。また、前記のポリ塩化ビニルペースト樹脂に発泡剤を配合し、該ポリ塩化ビニルペースト樹脂を塗布し加熱ゲル化し発泡剤を発泡させて発泡ポリ塩化ビニル樹脂層を形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具、キャビネット、電子機器などの表面材として使用する化粧シートの製造方法に関し、更に詳しくは、表面の素材としてポリエステルフィルムを用いた鮮映性に優れた化粧シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築内装材、家具、キャビネット、電子機器などの表面に接着して装飾を施すための化粧シートは、無地或いは模様や文字を印刷した合成樹脂フィルムからなる。従来、鮮映性が要求されるピアノ、冷蔵庫、ユニットバスなどの表面材として、ポリエチレンテレフタレートのシートを表面素材にした化粧シートが多用されている。ポリエチレンテレフタレートは接着性が劣り、これを被装飾体の表面に直接接着するのは困難である。そのため、ポリエステルフィルムの裏面にポリ塩化ビニル系樹脂層などの接着性のよい熱可塑性合成樹脂層を形成させることが行なわれている。
【0003】
例えば、ポリエステル樹脂層の裏面に印刷模様層と接着剤層とを順次積層し、該接着剤の表面にポリ塩化ビニル樹脂層を積層した化粧シートが提案されている(特許文献1)。また、インキ層を有する着色ポリ塩化ビニルフィルムと熱接着層を有する透明2軸延伸ポリエステルフィルムを、前記印刷インキ層と前記熱接着層が対向するように重ね合わせて積層体を形成し、前記透明2軸延伸ポリエステルフィルムに鏡面仕上げ加工を施した鮮映性化粧シートの製造方法が提案されている(特許文献2)。また、着色もしくは印刷模様層を有するポリ塩化ビニル層、ポリエチレンテレフタレート層、ハ−ドコート層及び保護フィルム層が順次積層された化粧シートが提案されている(特許文献3)。そして、これらの従来の化粧シートにおいては、ポリエステル層にポリエステルフィルムを用い、またポリ塩化ビニル層にポリ塩化ビニルフィルムを用いている。また、これらのフィルムを積層するには、ウレタン系接着剤などの接着剤を用い、ドライラミネート法などで接着して遂行している。
【0004】
ところで、このドライラミネート法で積層する場合は、ポリエステルフィルムに接着剤の溶剤溶液をコーティングし、その後加熱乾燥して溶剤を揮散させて接着剤層を形成させてからロール状に捲き取り、次の工程において、ロールから捲き戻しながらポリエステルフィルムの接着剤層面にポリ塩化ビニルフィルムを当接し、加圧して積層する。接着剤として従来多用されているウレタン系接着剤を用いた場合、この接着剤の溶剤溶液をポリエステルフィルムにコーティングした後の乾燥が不十分であると、接着剤がべたつくため、ポリエステルフィルムを捲き取ったときにポリエステルフィルム表面にブロッキングが発生しやすい。ブロッキングが発生すると、その部分のツヤがなくなり、そのため全体として見るとツヤ斑が現出する。特に鮮暎化粧シートにおいては、このツヤ斑は鮮映性を低下させるので大きな問題となる。そして、接着剤コーティング後の乾燥を十分に行なうためには、水平に長い距離のラインを持つ乾燥炉が必要となり、生産性が低下するという問題点がある。
【0005】
また、ドライラミネート法を採用した場合の乾燥工程による生産性低下を解消するため、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にホットメルト型接着剤を塗布し、該塗布面に塩化ビニル系ペースト樹脂のゾルを塗布した後、該ゾルのゲル化温度以上に加熱して、該ゾルをゲル化させると同時にホットメルト型接着剤を軟化させて両者を接着させた塩化ビニル系樹脂積層フィルムが提案されている(特許文献4)。しかし、ホットメルト型接着剤を用いる方法は、ドライラミネート型接着剤を用いる方法に比し、接着剤が高価であり、また加熱して接着性を発揮させるときの温度管理が難しい問題点がある。
【特許文献1】:特開平8−174783号公報
【特許文献2】:特開平9−76445号公報
【特許文献3】:特開2000−79667号公報
【特許文献4】:特開平7−137213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、ポリエステルフィルムを表面素材に用いた高鮮映性化粧シートの製造において、ポリエステルフィルムの裏面にポリ塩化ビニル層を、ドライラミネート法によって、鮮映性を損なうことなく、且つ生産効率よく形成させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決すべく、種々検討した結果、ドライラミネート法で使用されていた従来のウレタン系接着剤は、常温で接着力が発揮できるように、そのガラス転移点(Tg)が室温以下のものを使用していたが、上記のコーティング・乾燥後のべたつきは接着剤のガラス転移点に依存すると考えて、ガラス転移点が高い、すなわち50〜100℃の熱可塑性ポリウレタンを用いたところ、べたつきは解消し、高鮮映性の化粧シートが得られた。しかし、このガラス転移点が高い熱可塑性ポリウレタンを用いる方法では、ポリエステルフィルムにポリ塩化ビニルフィルムを十分に接着させることができなかった。そこで、ポリ塩化ビニルフィルムを接着してポリ塩化ビニル層を形成する代わりに、ポリ塩化ビニルペースト樹脂を塗布しゲル化させてポリ塩化ビニル層を形成したところ、ポリエステルフィルムに強固に接着したポリ塩化ビニル層を形成することができることを知見した。本発明はこれらの知見に基づいてなされたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリエステルフィルムの裏面に、ガラス転移点が50〜100℃の熱可塑性ポリウレタンと硬化剤を含有する溶剤溶液を塗布し乾燥して接着剤層を形成し、該接着剤層の上に、ポリ塩化ビニルペースト樹脂を塗布し加熱ゲル化してポリ塩化ビニル樹脂層を形成することを特徴とする鮮映性化粧シートの製造方法である。また、本発明は、ポリエステルフィルムの裏面に印刷層を形成し、該印刷層の上にガラス転移点が50〜100℃の熱可塑性ポリウレタンと硬化剤を含有する溶剤溶液を塗布し乾燥して接着剤層を形成し、該接着剤層の上に、ポリ塩化ビニルペースト樹脂を塗布し加熱ゲル化してポリ塩化ビニル樹脂層を形成することを特徴とする鮮映性化粧シートの製造方法である。更に、上記の製造方法において、ポリ塩化ビニルペースト樹脂を塗布し加熱ゲル化して形成したポリ塩化ビニル樹脂層の上に軟質ポリ塩化ビニルフィルムを積層して化粧シートの厚みを調整してもよい。また、前記のポリ塩化ビニルペースト樹脂に発泡剤を配合し、該ポリ塩化ビニルペースト樹脂を塗布し加熱ゲル化し、発泡剤を発泡させて発泡ポリ塩化ビニル樹脂層を形成して鮮映性化粧シートを製造してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明方法によると、ポリエステルフィルムを表面素材に用いた鮮映性化粧シートの製造において、ポリエステルフィルムの裏面にポリ塩化ビニル層を、従来のドライラミネート法の設備を用いて、生産効率よく形成でき、またツヤ斑のない高鮮映性の化粧シートを製造できる。そして、この方法で製造された化粧シートは、ポリエステルフィルム層とポリ塩化ビニル層との接着が強固であり、ユニットバスなどのように高温の場所で使用される器具の表面材に用いても、いわゆる浮き現象を生じることがない。また、ポリ塩化ビニルペースト樹脂に発泡剤を配合し、発泡ポリ塩化ビニル樹脂層を形成することにより、ボリューム感があり、またクッション性を持たせた高鮮映性の化粧シートが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いるポリエステルフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルム、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレートフィルムなどである。特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。フィルムの厚さは、25〜50μmである。
【0011】
本発明では、ポリエステルフィルム層とポリ塩化ビニル層との接着剤として、ガラス転移点が50〜100℃の熱可塑性ポリウレタンを用いる。この熱可塑性ポリウレタンは溶剤に溶解して用いる。この熱可塑性ポリウレタンの溶剤溶液には硬化剤を配合する。ガラス転移点が50℃未満の熱可塑性ポリウレタンを用いた場合は、ポリエステルフィルムにコーティングして乾燥したときにべたつきが残り、このポリエステルフィルムを捲き取る際にポリエステルフィルム表面にブロッキングを発生しやすく、ツヤ斑のない鮮映性に優れた化粧シートが得られ難くなる。また、ガラス転移点が100℃を越えた熱可塑性ポリウレタンを用いた場合は、接着剤層がもろくなり、そのためポリエステルフィルムとポリ塩化ビニル層との接着が脆弱になる。
【0012】
本発明で用いる熱可塑性ポリウレタンは、ポリオールとジイソシアネートを原料とし、高分子化したものである。ポリオールは、一分子中に−OH基を2個以上持った高分子で、平均分子量200〜100000のものが用いられる。ポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテポリオール;アジピン酸、フタル酸等の二塩基酸とエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールとの縮合脱水反応物などのポリエステルポリオールが用いられる。その他に、多価アルコールを開始剤としε−カプロラクタムの開環重合によって得られるラクトン系ポリエステルポリオ−ル;グリコールとエチレンカーボネートとの反応で得られるカーボネートポリオール;アクリル共重合体に水酸基を導入したアクリルポリオールなども用いられる。
【0013】
ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネートなどが挙げられる。また、ガラス転移点の調整のために、必要に応じて、鎖伸長剤を使用する。鎖伸長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール等の多価アルコール、エチレンジアミン、プロピレンジアミン等の多価アミン、アルカノールアミン類が挙げられる。ガラス転移点が50〜100℃の熱可塑性ポリウレタンは、例えば、「バイロンUR−1400」、「バイロンUR−4125」「バイロンUR−8200」(いずれも、東洋紡績株式会社製)の商標名で市販されている。
【0014】
また、前記の硬化剤としては、ポリイソシアネート、ポリオキサゾリン、カルボジイミドなどが用いられるが、通常ジイソシアネートが好ましく用いられる。本発明方法では、ガラス転移点が50〜100℃の熱可塑性ポリウレタンに硬化剤を配合し、溶剤に溶解してポリエステルフィルムに塗布する。この溶剤には有機溶剤、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどが用いられる。なお、無機フィラーとしてシリカ粒子を0.3〜2質量%配合すると更によい。
【0015】
ポリエステルフィルムの裏面への、ガラス転移点50〜100℃の熱可塑性ポリウレタンと硬化剤を含有する溶剤溶液の塗布は、グラビアロール塗工方式などで行なうのが好ましい。塗布後に乾燥炉を通して乾燥し、ロール状に捲き取る。乾燥温度は溶剤によって異なるが、80〜120℃である。乾燥後の熱可塑性ポリウレタン層(接着剤層)の厚さは1〜5μmである。ポリエステルフィルム上に形成した熱可塑性ポリウレタン層にはべたつき感がない。ポリエステルフィルムの裏面に印刷して印刷層を施し、その上に上記の熱可塑性ポリウレタンの溶剤溶液の塗布・乾燥を行なって接着剤層を形成させてもよい。これによって、印刷模様のある鮮映性化粧シートが得られる。印刷模様は通常の文字、模様でもよいし、ベタ印刷でもよい。ベタ印刷の場合は、上記のガラス転移点50〜100℃の熱可塑性ポリウレタンに顔料を配合したものを印刷インキに用いてもよい。
【0016】
上記のロール状に捲き取ったポリエステルフィルムを、ロールから捲き戻しながら、該フィルムの接着剤層の上に、ポリ塩化ビニルペースト樹脂を塗布する。塗布は、コレマコーターによるコーティング方式などで行なう。次いで、加熱工程を通し、ポリ塩化ビニルペースト樹脂を加熱ゲル化させる。ポリエステルフィルム層とポリ塩化ビニル層とが密着性よく強固に接着した鮮映性化粧シートが得られる。ポリ塩化ビニルペースト樹脂は、ポリ塩化ビニルを可塑剤中に分散させたペースト状のものである。可塑剤としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ2エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、トリメット酸トリブチル、トリメット酸トリ2エチルヘキシル、トリメット酸トリノルマルオクチル、アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステルなどが用いられる。このときのポリ塩化ビニル層の厚さは、50〜200μmである。なお、ポリ塩化ビニルペースト樹脂に代えて水性ポリエステル、ナイロン系接着剤或は水性ポリ塩化ビニルメジウムを用いても、密着性がよい強固な接着は得られない。
【0017】
上記のポリ塩化ビニルペースト樹脂に発泡剤を配合して塗布してもよい。この発泡剤は、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチルニトリル、p,p’オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッドなどであるが、アゾジカルボンアミドが好ましい。発泡剤の配合量は、ポリ塩化ビニルに対し1〜10質量%、好ましくは、2〜5質量%である。この場合は、ポリ塩化ビニルペースト樹脂を加熱ゲル化させた後、さらに加熱して発泡剤を発泡させ、発泡ポリ塩化ビニル層を形成させる。ポリ塩化ビニル層が発泡層であるため、得られた鮮映性化粧シートは、かさ高になりボリューム感があり、またクッション性を有する。このボリューム感、クッション性は、同じ発泡剤の使用では、発泡剤の配合量に依存する。配合量が少な過ぎるとボリューム感、クッション性が劣る。配合量が多すぎると、発泡セルが崩れ、ボリューム感は出るが、クッション性が劣るようになる。
【0018】
上記で得た鮮映性化粧シートのポリ塩化ビニル層又は発泡ポリ塩化ビニル層の上に、化粧シートの厚さを調整する目的で軟質ポリ塩化ビニルフィルムを積層してもよい。この積層は、熱ラミネート方式によって行なう。また、上記で得た鮮映性化粧フィルムのポリエステルフィルムの表面にハ−ドコート層を施してもよい。また、保護フィルム層を施してもよい。更に、ハ−ドコート層を施し、その上に保護フィルム層を施してもよい。
【0019】
実施例1〜2、比較例1
表面にツヤがある厚さ0.3mmの白色ポリエチレンテレフタレートフィルムの裏面にコロナ放電処理した。表1に示す組成の熱可塑性ポリウレタン組成物をそれぞれ調製し、メチルエチルケトンで希釈し、上記のポリエチレンテレフタレートフィルムの裏面に、厚さが5g/m(乾燥後)になるように塗布し、100℃で乾燥して、熱可塑性ポリウレタン層(接着剤層)を形成し、ロール状に捲き取った。
【0020】
【表1】

【0021】
次に、このロール状のポリエチレンテレフタレートフィルムを捲き戻しながら、その熱可塑性ポリウレタン層面に、下記組成のポリ塩化ビニルペースト樹脂組成物を厚さが0.1mmになるように塗布した。次いで170℃で1分間加熱してゲル化させてポリ塩化ビニル層を形成して、本発明の鮮映性化粧シートを得た。
〔ポリ塩化ビニルペースト樹脂組成物〕
成分 (質量部)
1.乳化重合ポリ塩化ビニル 100
(鐘淵化学工業株式会社製:カネビニールPSL675)
2.ジイソノニルフタルレート 30
3.Ba−Zn系安定剤 1
4.二酸化チタン(白色顔料) 7
【0022】
得られた鮮映性化粧シートについて、表面のツヤ、及びポリエチレンテレフタレートとポリ塩化ビニル層との密着性を評価した。表面のツヤは目視で行い、ツヤ斑がないものを良好とし、ツヤ斑があるものを不良とした。密着性は、シートを幅1cmの短冊状に切断し、手で剥がし、材料破壊を生じたものを良好、界面剥離を生じたものを不良とした。その結果、実施例1で得られた鮮映性化粧シートは、表面のツヤ、密着性共に良好であった。実施例2で得られた化粧シートは、表面のツヤは良好でり、また密着性はわずかに界面剥離が見られたがおおむね良好であった。比較例1は、表面のツヤは不良であり(わずかにツヤ斑があり、商品として劣る)、密着性は良好であった。
【0023】
実施例3
表面にツヤがある厚さ0.3mmの透明ポリエチレンテレフタレートフィルムの裏面にコロナ放電処理した。このコロナ放電処理した裏面に、NH‐NTミキサー(ザ・インクティック株式会社製熱可塑性ポリウレタン、固形分20%、シリカを含有)100質量部、FG−700(ザ・インクティック株式会社製ポリイソシアネート、固形分20%)10質量部、NH‐NT青(ザ・インクティック株式会社製製青インク)1質量部及びNH‐NT赤(ザ・インクティック株式会社製製青インク)0.5質量部からなる印刷インクを用い、グラビア方式により印刷し60〜70℃で乾燥し、目付け量5g/m(乾燥後)の印刷層を形成した。更に、その印刷面に、NH‐NTミキサー100質量部とFG−700の10質量部からなる接着用メジウムをグラビア方式で全面に施し60〜70℃で乾燥し、目付け量5g/m(乾燥後)の接着剤層を形成してロール状に捲き取った。この接着剤層に、実施例1と同様にしてポリ塩化ビニルペースト樹脂組成物を塗布し、ポリ塩化ビニル層を形成して、本発明の鮮映性化粧シートを得た。得られた鮮映性化粧シートは、印刷層による着色を有し、表面のツヤ、密着性共に良好であった。
【0024】
実施例4
実施例1で得た鮮映性化粧シートのポリ塩化ビニル層の上に、更に、厚さ0.3mmの半硬質ポリ塩化ビニルフィルム(可塑剤30質量部配合)を加熱ラミネートして本発明の鮮映性化粧シートを得た。
【0025】
実施例5〜8
表面にツヤがある厚さ0.3mmの白色ポリエチレンテレフタレートフィルムの裏面にコロナ放電処理した。実施例1で用いた熱可塑性ポリウレタン組成物を調製し、メチルエチルケトンで希釈し、上記のポリエチレンテレフタレートフィルムの裏面に、厚さが5g/m(乾燥後)になるように塗布し、100℃で乾燥して、熱可塑性ポリウレタン層(接着剤層)を形成し、ロール状に捲き取った。
次に、このロール状のポリエチレンテレフタレートフィルムを捲き戻しながら、その熱可塑性ポリウレタン層(接着剤層)面に、表2に示す組成のポリ塩化ビニルペースト樹脂組成物を厚さが0.1mmになるように塗布した。次いで170℃で1分間加熱してゲル化させ、その後220℃で30秒加熱して発泡剤を発泡させ、発泡ポリ塩化ビニル層を形成して本発明の鮮映性化粧シートを得た。得られた鮮映性化粧シートは、表面のツヤ、密着性共に良好であった。
【0026】
得られた鮮映性化粧シートについて、発泡ポリ塩化ビニル層の発泡倍率及び発泡セルの状態、並びに鮮映性化粧シートのボリューム感及びクッション性を調べ、その結果を併せて表2に示した。発泡セルの状態は、断面をマイクロスコープにて観察した。○は良好なセル状態、△は膨張が過ぎセルがやや崩れた状態を示す。また、鮮映性化粧シートのボリューム感は触感で評価し、ボリューム感あるものを○,やや劣るものを△とした。また、クッション性は、指で表面を押さえた時の弾力感で評価し、クッション性があるものを○、やや劣るもの△とした。
【0027】
【表2】

【0028】
表2に見るように、この実施例においては、発泡剤アゾジカルボンアミドを2質量%配合した実施例5は、発泡セル良好であったが、ボリューム感及びクッション性はやや劣っていた。また、発泡剤アゾジカルボンアミドを4質量%配合した実施例7は、発泡セル良好で、ボリューム感があり、クッション性も良かった。一方、発泡剤アゾジカルボンアミドを5質量%配合した実施例8は、膨張が過ぎ発泡セルがやや崩れた状態になり、ボリューム感はあったが、クッション性はやや劣っていた。
【0029】
実施例9
表面にツヤがある厚さ0.3mmの透明ポリエチレンテレフタレートフィルムの裏面にコロナ放電処理した。このコロナ放電処理した裏面に、NH‐NTミキサー100質量部、FG−700の10質量部、NH‐NT青1質量部及びNH‐NT赤0.5質量部からなる印刷インクを用い、グラビア方式により印刷し60〜70℃で乾燥し、目付け量5g/m(乾燥後)の印刷層を形成した。更に、その印刷面に、NH‐NTミキサー100質量部とFG−700の10質量部からなる接着用メジウムをグラビア方式で全面に施し60〜70℃で乾燥し、目付け量5g/m(乾燥後)の接着剤層を形成し、ロール状に捲き取った。この接着剤層に、実施例7と同様にして発泡剤アゾジカルボンアミドを配合したポリ塩化ビニルペースト樹脂組成物を塗布し、発泡ポリ塩化ビニル層を形成して、本発明の鮮映性化粧シートを得た。得られた鮮映性化粧シートは、印刷層による着色を有し、表面のツヤ、密着性共に良好であり、ボリューム感、クッション性が良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの裏面に、ガラス転移点が50〜100℃の熱可塑性ポリウレタンと硬化剤を含有する溶剤溶液を塗布し乾燥して接着剤層を形成し、該接着剤層の上に、ポリ塩化ビニルペースト樹脂を塗布し加熱ゲル化してポリ塩化ビニル樹脂層を形成することを特徴とする鮮映性化粧シートの製造方法。
【請求項2】
ポリエステルフィルムの裏面に印刷層を形成し、該印刷層の上にガラス転移点が50〜100℃の熱可塑性ポリウレタンと硬化剤を含有する溶剤溶液を塗布し乾燥して接着剤層を形成し、該接着剤層の上に、ポリ塩化ビニルペースト樹脂を塗布し加熱ゲル化してポリ塩化ビニル樹脂層を形成することを特徴とする鮮映性化粧シートの製造方法。
【請求項3】
ポリ塩化ビニルペースト樹脂を塗布し加熱ゲル化して形成したポリ塩化ビニル樹脂層の上に、更に軟質ポリ塩化ビニルフィルムを積層することを特徴とする請求項1又は2記載の鮮映性化粧シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリ塩化ビニルペースト樹脂に発泡剤を配合し、該ポリ塩化ビニルペースト樹脂を塗布し加熱ゲル化し、発泡剤を発泡させて発泡ポリ塩化ビニル樹脂層を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鮮映性化粧シートの製造方法。

【公開番号】特開2007−307897(P2007−307897A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110179(P2007−110179)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】