説明

鳥害防除構造

【課題】鳥の営巣等に起因する地絡または短絡事故を確実に防ぐ絶縁構造を形成し、その絶縁構造の形成のための鉄塔上作業を容易に行うことができ、絶縁構造の改修にも簡単な作業で取り替えが可能とする、鉄塔や電柱に取り付けられた断路器における鳥害防除構造を提供する。
【解決手段】受電ケーブルが接続された受電ケーブルヘッドと断路器と避雷器とを有し、該断路器は台座に取り付けられた二つの固定碍子柱と固定碍子柱の先端にそれぞれ設けられた固定側接触部と固定碍子柱の先端間に橋渡されたブレードとからなり、固定碍子柱の一方の先端にある固定側接触部と受電ケーブルヘッドとが接続導線Aで連結され、固定碍子柱のもう一方の先端にある固定側接触部と避雷器とが接続導線Bで連結されており、且つ接続導線Aの表面と固定碍子柱の取り付けられた台座の表面と接続導線Bの表面とに絶縁シートが被覆されている断路器における鳥害防除構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔や電柱に取り付けられた断路器における鳥害防除構造に関する。より詳細に、本発明は、鳥の営巣等に起因する地絡または短絡事故を確実に防ぐ絶縁構造を形成し、その絶縁構造の形成のための鉄塔上作業を容易に行うことができ、絶縁構造の改修にも簡単な作業で取り替えが可能になる、鉄塔や電柱に取り付けられた断路器における鳥害防除構造に関する。
【背景技術】
【0002】
断路器は、電力回路の無負荷時の電圧を開閉する電力機器である。基本的に電流の開閉はできないが、一部の断路器には、変圧器の励磁電流や回路の充電電流程度の電流であれば、開閉可能なものがある。断路器は、点検・整備、あるいは修理・改造工事などの際に、下流側を無電圧にする目的で使用される。
断路器は、鉄塔や電柱上に水平に張り渡された台座に取り付けられ、受電ケーブルが接続された受電ケーブルヘッドと、別の台座に取り付けられた避雷器との間を接続導線で連結するように配置される。
【0003】
繁殖期等になると、鳥が鉄塔に飛来し、断路器等に、鳥の翼や体、または枝や金属線などの営巣材が接触して、地絡または短絡事故を起こすことがある。このような鳥害を防除するために、音による防除法が行われていたが、十分な効果をなすものではなかった。そこで、特許文献1には、気中断路器における鳥害防止構造として、台座の上下に交互に伸長するように碍子柱を配置することが提案されている。また、特許文献2には、ジャンパー線を備える架空電線路において、電線に絶縁シートを重ね巻きするという手段が提案されている。しかしながら、いずれの方法も十分な鳥害防除効果が得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−199968号公報
【特許文献2】実開平05−74131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、鳥の営巣等に起因する地絡または短絡事故を確実に防ぐ絶縁構造を形成し、その絶縁構造の形成のための鉄塔上作業を容易に行うことができ、絶縁構造の改修にも簡単な作業で取り替えが可能になる、鉄塔や電柱に取り付けられた断路器における鳥害防除構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、受電ケーブルが接続された受電ケーブルヘッドと断路器とを連結する接続導線、および断路器と避雷器とを連結する接続導線を絶縁シートで覆うだけでなく、断路器の取り付けられている台座も絶縁シートで覆うことによって、鳥の営巣等に起因する地絡または短絡事故を確実に防ぐことができることを見出した。
【0007】
すなわち本発明は、以下のものを含む。
(1) 受電ケーブルが接続された受電ケーブルヘッドと、断路器と、避雷器とを有し、 該断路器は、台座に取り付けられた二つの固定碍子柱と、該固定碍子柱の先端にそれぞれ設けられた固定側接触部と、前記固定碍子柱の先端間に橋渡されたブレードとからなり、 一方の固定碍子柱の先端にある固定側接触部と受電ケーブルヘッドとが接続導線Aで連結され、もう一方の固定碍子柱の先端にある固定側接触部と避雷器とが接続導線Bで連結されており、且つ接続導線Aの表面と、固定碍子柱の取り付けられた台座の表面と、接続導線Bの表面とに、絶縁シートが被覆されている、断路器における鳥害防除構造。
(2) 断路器は台座から吊り下げて取り付けられている、前記(1)に記載の鳥害防除構造。
(3) 絶縁シートが、熱収縮性絶縁チューブまたは電気絶縁テープである、前記(1)または(2)に記載の鳥害防除構造。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る鳥害防除構造によれば、鳥の営巣等に起因する地絡または短絡事故を確実に防ぐ絶縁構造を形成でき、その絶縁構造の形成のための鉄塔上作業を容易に行うことができ、絶縁構造の改修にも簡単な作業で取り替えが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】鉄塔上に設けた本発明に係る鳥害防除構造の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る鳥害防除構造の一実施形態を図面を参照しながら示し、本発明を詳細に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこの実施形態によって何ら制限されるものではない。
【0011】
本発明の鳥害防除構造は、受電ケーブルが接続された受電ケーブルヘッドと、断路器と、避雷器とを有し、 該断路器は、台座に取り付けられた二つの固定碍子柱と、該固定碍子柱の先端にそれぞれ設けられた固定側接触部と、前記固定碍子柱の先端間に橋渡されたブレードとからなり、 一方の固定碍子柱の先端にある固定側接触部と受電ケーブルヘッドとが接続導線Aで連結され、もう一方の固定碍子柱の先端にある固定側接触部と避雷器とが接続導線Bで連結されており、 且つ接続導線Aの表面と、固定碍子柱の取り付けられた台座の表面と、接続導線Bの表面とに、絶縁シートが被覆されている、ものである。
【0012】
断路器は、電力回路の無負荷時の電圧を開閉する電力機器である。基本的に電流の開閉はできない。断路器は、変圧器の励磁電流や回路の充電電流程度の電流で、開閉可能なものであってもよい。断路器は、点検・整備、あるいは修理・改造工事などの際に、下流側を無電圧にする目的で通常使用される。
【0013】
該断路器は、鉄塔(図示せず。)上の台座10に取り付けられた二つの固定碍子柱30,31と、固定碍子柱の先端にそれぞれ設けられた固定側接触部40,41と、固定碍子柱の先端間に橋渡されたブレード3とからなる。固定側接触部40は、2つの部材からなり、該部材がブレード3を挟むようにして、ブレードと接続されている。断路器は図1に示すように台座10から吊り下げて取り付けることが好ましい。このような吊り下げ構造とすると、仮に台座10上に鳥が巣を作ったとしても断路器の高電圧部分に営巣材が触れる機会を低減できる。
【0014】
本発明では、断路器の取り付けられている台座10の表面を絶縁シートCで被覆している。絶縁シートは、電気を伝導させないものであれば特に制限されない。絶縁シートは、熱収縮性絶縁チューブで形成してもよいし、電気絶縁テープを重ね巻くことで形成してもよい。好適な絶縁シートの材料としては、レイケム社製の特高圧用絶縁テープ HVBT−12A、HVBT−14A、HVBT−16Aなどが挙げられる。
【0015】
避雷器50は、発電、変電、送電、配電系統の電力機器や電力の供給を受ける需要家の需要機器、有線通信回線、空中線系統、通信機器などを、雷などにより生じる過渡的な異常高電圧から保護する、いわゆるサージ防護機器のひとつである。避雷器50は鉄塔上の台座11に取り付けられている。避雷器の中にはサージ防護素子が設けられていて、サージ電圧が生じたときにサージ電流を該避雷器を通してアースし、電力機器等に大電流が流れないようにする。
【0016】
固定碍子柱31の先端にある固定側接触部41と避雷器50とが接続導線Bで連結されている。本発明では、接続導線Bの表面を絶縁シートで被覆している。また、本発明では、避雷器50の取り付けられている台座11の表面を絶縁シートDで被覆することが好ましい。絶縁シートは、電気を伝導させないものであれば特に制限されない。絶縁シートは、台座10において用いるものとして例示したものと同じものを例示できる。
【0017】
発電所や変電所に繋がった架空高電圧ケーブルは、鉄塔に碍子(図示せず。)を介して取り付けられている。この架空高電圧ケーブルの末端から受電ケーブル2を経て、鉄塔や電柱の基部等に在る変電装置等に高電圧電気を送ることができる。受電ケーブル2には絶縁被膜が既になされていることが多いが、本発明では、受電ケーブル2の表面をさらに絶縁シートで被覆することが好ましい。絶縁シートは、電気を伝導させないものであれば特に制限されない。絶縁シートは、台座10において用いるものとして例示したものと同じものを例示できる。
【0018】
本発明では、固定碍子柱30の先端にある固定側接触部40と受電ケーブルヘッド32とが接続導線Aで連結されている。そして、接続導線Aの表面を絶縁シートで被覆している。この絶縁シートは、電気を伝導させないものであれば特に制限されない。絶縁シートは、台座10において用いるものとして例示したものと同じものを例示できる。
【0019】
電気絶縁処理は電圧の掛かっている部分に絶縁シートを被覆させるのが一般的である。ところが、本発明では、電圧の掛かっていない断路器の取り付けられている台座10に絶縁シートを被覆させている。このようにしたことによって、鳥の営巣等に起因する地絡または短絡事故を確実に防ぐ絶縁構造を形成でき、その絶縁構造の形成のための鉄塔上作業を容易に行うことができ、絶縁構造の改修にも簡単な作業で取り替えが可能となる。さらに避雷器50の取り付けられている台座11にも絶縁シートを被覆させるとその効果がより高くなる。
【符号の説明】
【0020】
2:受電ケーブル
10、11、12:台座
30、31:固定碍子柱
32:碍子柱
3:ブレード
40、41:固定側接触部
A:接続導線A
B:接続導線B
50:避雷器
C、D:台座に被覆された絶縁シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電ケーブルが接続された受電ケーブルヘッドと、断路器と、避雷器とを有し、
該断路器は、台座に取り付けられた二つの固定碍子柱と、該固定碍子柱の先端にそれぞれ設けられた固定側接触部と、前記固定碍子柱の先端間に橋渡されたブレードとからなり、
一方の固定碍子柱の先端にある固定側接触部と受電ケーブルヘッドとが接続導線Aで連結され、もう一方の固定碍子柱の先端にある固定側接触部と避雷器とが接続導線Bで連結されており、且つ
接続導線Aの表面と、固定碍子柱の取り付けられた台座の表面と、接続導線Bの表面とに、絶縁シートが被覆されている、断路器における鳥害防除構造。
【請求項2】
断路器は台座から吊り下げて取り付けられている、請求項1に記載の鳥害防除構造。
【請求項3】
絶縁シートが、熱収縮性絶縁チューブまたは電気絶縁テープである、請求項1または2に記載の鳥害防除構造。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−172438(P2011−172438A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35866(P2010−35866)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】