説明

鶏卵割れ防止部材

【課題】 鶏から産み落とされた卵が養鶏用ケージの底網に衝突してその衝撃で割れてしまうのを未然に防止し、且つ、既存の養鶏用ケージ内に配設して利用することができる鶏卵割れ防止部材を提供する。
【解決手段】 鶏卵割れ防止部材30は、前面の開口部13と、前方に低く傾斜し、開口部13より前方に突出した部分に集卵部22が構成されたワイヤから成る底網12とを備えた養鶏用ケージ10に用いられ、開口部13より養鶏用ケージ10内に挿入可能な寸法を有し、底網12上に着脱自在に配設されると共に、ワイヤから構成されて緩衝機能を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏から産み落とされた卵が養鶏用ケージの底網に衝突して割れてしまうのを防止するための鶏卵割れ防止部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より大規模養鶏場においては、一般に周囲がワイヤにて格子状に形成された養鶏用ケージが多数並設されたものが約2段〜5段設置され、これらの各養鶏用ケージ内に通常2羽ずつ鶏が収容されている。多数並設された養鶏用ケージの前面側一端から他端に渡って餌受樋や水受樋が設けられており、これらの餌受樋や水受樋に餌や水が自動的に供給されている。そして、鶏から産み落とされた卵は養鶏用ケージの底網上を転動して前方に設けられた集卵部に集められる。これらの各養鶏用ケージの前方には、各集卵部に渡って集卵ベルトが設けられており、集卵部で集められた鶏卵は、この集卵ベルトによって搬送され、更に搬送ベルトにて搬送されて集積所に集められていた。
【0003】
ところが、搬送され集積所に集められた多数の鶏卵の中には、既に割れている鶏卵が混入していた。集積所に集められた多数の鶏卵の中に、割れた鶏卵が混入していると、養鶏業者にとっては多大な損害になってしまう。このため、このような鶏卵割れの防止を行う方法として、養鶏用ケージの出口に制動部材(ワイヤ)を設け、この制動部材によって底網上を転動する鶏卵のスピードを弱め、鶏卵が割れてしまうのを防止する鶏卵割れ防止方法が提案されていた(特許文献1参照)。
【0004】
該制動部材は、鶏卵が養鶏用ケージ内の底網上を転動しながら集卵部に移動すると、鶏卵は養鶏用ケージの出口で制動部材に接触し、そこで一旦停止するようになっている。そして、養鶏用ケージ内の鶏が駆動部材に接触することで制動部材が制動位置から解除される。制動部材が解除されると停止していた鶏卵は、再度底網上を転動して集卵部まで移動する。このように、制動部材によって底網上を転動する鶏卵のスピードを弱めることにより、既に集卵部に集められた鶏卵に、底網上を転動する鶏卵が衝突して割れてしまう不都合を防止していた。即ち、底網上を転動する鶏卵の勢いを制動部材にて弱めることにより、その後集積所に搬送された鶏卵に割れが出ないようにしていた。
【0005】
【特許文献1】特開平5−328872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の鶏卵割れの防止方法は、集卵部での鶏卵同士の衝突による鶏卵の割れを防止することはできるが、それでも集積所に搬送された鶏卵の中には割れたものが混入していた。そこで、養鶏用ケージ内で産み落とされた鶏卵が何処で割れるのかを調査してみると、鶏から産み落とされた卵が養鶏用ケージの底網に衝突し、そのとき鶏卵の割れが発生していることが判明した。即ち、鶏から産み落とされた卵は、ワイヤでできた養鶏用ケージの底網上、特に底網を構成する強度の強いワイヤ上に落下した時にその衝突する衝撃で割れてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、係る従来技術の課題を解決するために成されたものであり、鶏から産み落とされた卵が養鶏用ケージの底網に衝突してその衝撃で割れてしまうのを未然に防止し、且つ、既存の養鶏用ケージ内に配設して利用することができる鶏卵割れ防止部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明の鶏卵割れ防止部材は、前面の開口部と、前方に低く傾斜し、開口部より前方に突出した部分に集卵部が構成されたワイヤから成る底網とを備えた養鶏用ケージに用いられ、開口部より養鶏用ケージ内に挿入可能な寸法を有し、底網上に着脱自在に配設されると共に、ワイヤから構成されて緩衝機能を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明の鶏卵割れ防止部材は、上記において、底網は、強度の大成る太径ワイヤと、この太径ワイヤよりも強度の小成る細径ワイヤから格子状に構成されており、当該底網上に配設された状態で、太径ワイヤとの間に間隔が構成されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明の鶏卵割れ防止部材は、請求項2において、底網上に配設された状態で、当該底網を構成する各ワイヤに対応するよう配置された複数のワイヤから格子状に構成されており、底網の太径ワイヤには比較的細い径のワイヤが対応することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明の鶏卵割れ防止部材は、請求項1乃至請求項3の何れかに加えて、底網に係脱自在に係合する保持部材を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前面の開口部と、前方に低く傾斜し、開口部より前方に突出した部分に集卵部が構成されたワイヤから成る底網とを備えた養鶏用ケージに用いられ、開口部より養鶏用ケージ内に挿入可能な寸法を有し、底網上に着脱自在に配設されると共に、ワイヤから構成されて緩衝機能を備えたので、例えば、養鶏用ケージ前面の開口部から底網上に鶏卵割れ防止部材を挿入して配設することができる。これにより、鶏から産み落とされた卵が割れてしまう不都合を極めて効果的に防止することができる。従って、鶏卵割れ防止部材を、既存の養鶏用ケージにも極めて容易に使用することが可能となり、鶏卵割れ防止部材の利便性を大幅に向上させることができるようになるものである。
【0013】
特に、鶏卵割れ防止部材を前面の開口部から養鶏用ケージ内に挿入可能に構成しているので、鶏卵割れ防止部材が鶏糞で汚れた場合などでも、養鶏用ケージ内に挿入した鶏卵割れ防止部材を開口部から取り出して洗浄し、清掃することが可能となる。従って、養鶏用ケージ内の鶏の活動空間を清潔に保つことができるようになり便利である。
【0014】
また、請求項2の発明によれば、上記において、底網は、強度の大成る太径ワイヤと、この太径ワイヤよりも強度の小成る細径ワイヤから格子状に構成されており、当該底網上に配設された状態で、太径ワイヤとの間に間隔が構成されるので、鶏卵割れ防止部材を構成する比較的細い径のワイヤを、鶏から産み落とされた鶏卵の衝撃によって底網の太径ワイヤ側となる下方に撓む緩衝性を持たせることができる。これにより、例えば、鶏から産み落とされた卵が底網の太径ワイヤ上に落下した場合でも、鶏卵割れ防止部材の細い径のワイヤにて落下する卵の衝撃を吸収することができる。従って、鶏から産み落とされた卵が、底網を構成する太径ワイヤに衝突する衝撃で割れてしまう等の不都合を効果的に防止することができるようになるものである。
【0015】
また、請求項3の発明によれば、請求項2において、底網上に配設された状態で、当該底網を構成する各ワイヤに対応するよう配置された複数のワイヤから格子状に構成されており、底網の太径ワイヤには比較的細い径のワイヤが対応するので、底網を構成する太径ワイヤと鶏卵割れ防止部材を構成する比較的細い径のワイヤとの間に所定の隙間を設けることが可能となる。これにより、鶏卵割れ防止部材を構成する比較的細い径のワイヤを底網の太径ワイヤ側となる下方に撓ませることができ、鶏卵割れ防止部材に緩衝性を持たせることができる。従って、例えば、鶏から産み落とされた卵が底網の太径ワイヤ上に落下した場合でも、鶏卵割れ防止部材を構成する細い径のワイヤにて落下する卵の衝撃を吸収することができ、鶏から産み落とされた卵が底網の太径ワイヤに衝突した衝撃で割れてしまう等の不都合を確実に阻止することができるようになるものである。
【0016】
特に、底網の格子と鶏卵割れ防止部材の格子とを対応するよう配置しているので、鶏が落とした鶏糞を格子の間から下方に落下させて鶏卵割れ防止部材が鶏糞で汚れないようにすることができる。これにより、鶏卵割れ防止部材上に産み落とされた鶏卵が鶏糞で汚れてしまうなどの不都合を効果的に防止することができるようになる。また、底網の格子と鶏卵割れ防止部材の格子とを対応して配置しているので、鶏が足を踏み外したりする不都合も防止することができ便利である。
【0017】
また、請求項4の発明によれば、請求項1乃至請求項3の何れかに加えて、底網に係脱自在に係合する保持部材を備えたので、底網の所定位置に鶏卵割れ防止部材を保持することが可能となる。これにより、傾斜した養鶏用ケージの底網上に配設した鶏卵割れ防止部材が、当該底網上を滑って移動してしまうなどの不都合を未然に防止することができるようになる。また、底網の所定位置に鶏卵割れ防止部材を保持することにより、底網の格子の垂直方向略真下に鶏卵割れ防止部材の格子を合致させることが可能になる。これにより、鶏が落とした鶏糞を、養鶏用ケージの下方への落下を効果的に促進することが可能になり、鶏の活動空間を極めて清潔に保つことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、鶏から産み落とされた卵が養鶏用ケージの底網に衝突し、その衝撃で割れてしまう不都合を防止することができる鶏卵割れ防止部材を提供する。卵が養鶏用ケージの底網に衝突する衝撃で割れてしまうのを防止するという目的を、養鶏用ケージの底網の上に緩衝性を有した鶏卵割れ防止部材を配設するだけの簡単な構造で実現した。
【実施例1】
【0019】
次に、図面に基づき本発明の実施例を詳述する。図1は本発明の鶏卵割れ防止部材30を適用した養鶏用ケージ10の側面図、図2は同図1の養鶏用ケージ10の要部拡大図、図3は本発明の鶏卵割れ防止部材30を適用した養鶏用ケージ10の底網12部分の平面図、図4は本発明の鶏卵割れ防止部材30の斜視図、図5は本発明の鶏卵割れ防止部材30の平面図をそれぞれ示している。
【0020】
本実施例における鶏卵割れ防止部材30は、鶏から産み落とされた卵が割れてしまうのを防止するためのもので、図1に示すように鶏舎(図示せず)内に複数設置された、既存の養鶏用ケージ10を構成する底網12上に配設できるように構成している。この鶏卵割れ防止部材30は、複数の縦上ワイヤ32と横下ワイヤ34、及び、鶏卵割れ防止部材30を底網12に保持するための保持部材40(図5に図示)とから構成されている。
【0021】
該養鶏用ケージ10は、筺体形状を呈しており、周囲はワイヤにて格子状に形成されている。この養鶏用ケージ10は、鶏舎内に横方向に多数並設されると共に、内部に6〜8羽の鶏を収容して飼うことができる大きさを呈している。そして、多数並設された養鶏用ケージ10の前面側には、図示しないが一側端部から他側端部に渡って餌受樋や水受樋、及び、飼料入れや給水設備などが配設されている。
【0022】
養鶏用ケージ10の前面下部には、卵(図示せず)が通過可能な開口部13が設けられており、この養鶏用ケージ10の底部には、後方より前方(餌受樋や水受樋側)を下方に傾斜させた底網12が設けられている。また、底網12は縦長略矩形状に形成されており、この底網12の前端部には湾曲した集卵部22が凹陥して設けられている。そして、鶏から産み落とされた卵は、底網12上を転動して開口部13を通過して集卵部22に移動できるようになっている。
【0023】
該養鶏用ケージ10の底網12は、図2、図3に示すように養鶏用ケージ10の開口部13と平行に設けられた底網横ワイヤ14と、この底網横ワイヤ14の上に直交して設けられた底網縦ワイヤ16とから構成されている。また、底網12は、底網横ワイヤ14と底網縦ワイヤ16とから所定の大きさの、格子状の網目にて形成されている。この底網横ワイヤ14は、直径約3mm〜5mmと、直径約2mmとの異なる直径のワイヤにて構成されており、直径約3mm〜5mmのワイヤを太径ワイヤ18、直径約2mmのワイヤを細径ワイヤ20としている。即ち、養鶏用ケージ10の底網12は、強度の大きい太径ワイヤ18と、この太径ワイヤ18よりも強度の小さい細径ワイヤ20から格子状の網目に形成されている。
【0024】
そして、例えば、太径ワイヤ18を(太)、細径ワイヤ20を(細)とした場合、底網横ワイヤ14は、底網12の後端部から前端部へ(太)、(細)、(太)、(細)、(太)、(細)、(細)、(太)、(細)、(細)、(太)、(細)、(細)、(太)の順に平行に配置されている。この太径ワイヤ18は、多数並設された養鶏用ケージ10の一端から他端まで延在して設けられている。尚、養鶏用ケージ10の一端から他端まで延在して設けられている太径ワイヤ18は、途中で溶接などによって接続されているが、開口部13の反対側端部に位置する太径ワイヤ18だけは横下ワイヤ34と同等の長さを呈している。
【0025】
また、底網横ワイヤ14は、約20mmと、約30mmとの2種類の間隔で配置されている。そして、底網12の後端部の底網横ワイヤ14から4本目の底網横ワイヤ14までは20mm間隔、それ以降前端部までの底網横ワイヤ14は約30mm間隔で配置されている。また、底網縦ワイヤ16は、約20mm間隔で平行に配置されると共に、両端のみ17.5mmの間隔で配置され、先端部には集卵部22が設けられている。尚、底網縦ワイヤ16は、直径約2mmのワイヤが使用されている。
【0026】
そして、多数並設された両端の養鶏用ケージ10間に渡って集卵ベルト24(図1に図示)が設けられており、この集卵ベルト24は集卵部22の上に移動自在に配設されている。尚、底網横ワイヤ14は、養鶏用ケージ10の側面周囲を構成する、これもまた格子状網目の側面網ワイヤ26の内の、所定位置の側面網ワイヤ26にて絡げ固定、或いは、U字状に折曲された側面網ワイヤ26に引っ掛けられて吊されている(図2)。また、細径ワイヤ20全てと、底網横ワイヤ14(この場合、開口部13の反対側端部に位置する太径ワイヤ18)は、底網縦ワイヤ16に溶接固定されている。係る底網横ワイヤ14(開口部13の反対側端部に位置する太径ワイヤ18を除く、細径ワイヤ20と太径ワイヤ18)は、鶏舎の所定位置に設けられ、養鶏用ケージ10を支えながら、且つ、底網12の一部を構成している。
【0027】
ここで、従来では一般的に養鶏用ケージ10内で鶏から産み落とされた卵は、傾斜した底網12上を転動して、底網12の前端部に設けられた集卵部22に集められている。集卵部22に集められた鶏卵は、集卵ベルト24(この集卵ベルト24は、集卵部22上に移動自在に載置されている)によって、多数並設された養鶏用ケージ10のどちらか一側に集められる。そして、多数並設された養鶏用ケージ10の一側に集められた卵は、搬送ベルト(図示せず)によって自動的に集積所に搬送されるようになっている。
【0028】
本実施形態では、図4、図5に示すように養鶏用ケージ10の底網12上に載置可能な鶏卵割れ防止部材30を設けている。この鶏卵割れ防止部材30も底網12同様、縦長略矩形状に形成されると共に、養鶏用ケージ10の前面下部に設けられた開口部13から養鶏用ケージ10内に挿脱自在に構成されている。即ち、鶏卵割れ防止部材30は、養鶏用ケージ10の前面下部に設けられた開口部13から養鶏用ケージ10内に挿脱自在に配設できるようになっている。
【0029】
該鶏卵割れ防止部材30は、弾性を有する金属ワイヤにて構成された複数の縦上ワイヤ32と、複数の横下ワイヤ34とから格子状の網目で構成されている。この鶏卵割れ防止部材30の後端部(実施例では、養鶏用ケージ10の後部側)は、各縦上ワイヤ32の下側に横下ワイヤ34が溶接固定されている。これにより、鶏から産み落とされた卵は、横下ワイヤ34に引っ掛かることなく、縦上ワイヤ32の上を転動して集卵部22まで移動できるようになっている。
【0030】
この鶏卵割れ防止部材30は、前記底網12の底網縦ワイヤ16と底網横ワイヤ14とで構成される格子状網目と略同一の格子状網目に形成されている(図5)。そして、鶏卵割れ防止部材30を構成する横下ワイヤ34は、前記底網12の底網横ワイヤ14より細い直径約1.8mmと、直径約1.2mmとの2種類の異なる直径のワイヤにて構成されている。
【0031】
また、鶏卵割れ防止部材30を構成する横下ワイヤ34は、底網12を構成する太径ワイヤ18と細径ワイヤ20との径より細い、直径約1.8mmの太径横下ワイヤ36と、直径約1.2mmの細径横下ワイヤ38(本発明の、鶏卵割れ防止部材30の比較的細い径のワイヤに相当)とから構成されている。そして、例えば太径横下ワイヤ36を(太径横下)、細径横下ワイヤ38を(細径横下)とした場合、横下ワイヤ34は、後端部から前端部へ(細径横下)、(太径横下)、(細径横下)、(太径横下)、(細径横下)、(太径横下)、(太径横下)、(細径横下)、(太径横下)、(太径横下)、(細径横下)、(太径横下)、(太径横下)、(細径横下)の順に平行に配置されている(図8に図示)。
【0032】
そして、底網12と鶏卵割れ防止部材30は、図8に示すように底網12の太径ワイヤ18に対応して、鶏卵割れ防止部材30の細径横下ワイヤ38を配置すると共に、底網12の細径ワイヤ20に対応して、鶏卵割れ防止部材30の太径横下ワイヤ36を配置している。この場合、鶏卵割れ防止部材30は、図9に示すように直径の太い太径横下ワイヤ36によって、直径の細い細径横下ワイヤ38が底網12を構成する底網縦ワイヤ16から浮くようになっている。これにより、底網12の太径ワイヤ18上には、底網縦ワイヤ16と細径横下ワイヤ38との間に約0.4mmの隙間44が開くようになっている。
【0033】
即ち、鶏卵割れ防止部材30を底網12より細い径で構成して、底網縦ワイヤ16より浮かし、太径ワイヤ18に対応して配置した細径横下ワイヤ38を下方(この場合、底網12の太径ワイヤ18側)に撓ませられるようにしている。この場合、既存の養鶏用ケージ10に設けられた底網12上に、鶏卵割れ防止部材30によって緩衝効果を持たせることができる。これにより、鶏卵割れ防止部材30によって、鶏から産み落とされた卵が鶏卵割れ防止部材30に衝突する衝撃を効率良く吸収して割れないようになっている。
【0034】
一方、図6、図7に鶏卵割れ防止部材30を底網12に保持するための保持部材40を示している。この保持部材40は、手で容易に折り曲げられる所定厚さの可塑性金属板(実施例では鉄板)にて構成されている。また、保持部材40は、縦長略矩形状を呈しており、一端部が鶏卵割れ防止部材30の後端部に設けられた細径横下ワイヤ38に固定されている。
【0035】
即ち、保持部材40は、鶏卵割れ防止部材30の後部両側に溶接にて固定されている(図5)。尚、どちらか一側の保持部材40は、底網12の格子より僅か狭く構成されると共に、先端部は拡狭に構成されている。これにより、底網12の格子の垂直方向略真下に養鶏用ケージ10の格子を合致させられるようになっている。尚、鶏卵割れ防止部材30の後部両側に設けた保持部材40は、溶接以外のカシメ、或いは、ボルトなどにて固定しても差し支えない。
【0036】
この保持部材40は、鶏卵割れ防止部材30が養鶏用ケージ10の底網12上に配設された状態で、略垂直に下方に向けて延在している。また、保持部材40は、底網12上に鶏卵割れ防止部材30が配設された状態で、底網12を構成する底網横ワイヤ14に約半周以上絡げられる長さにて構成されている。この場合、保持部材40の長さは養鶏用ケージ10の開口部13に鶏卵割れ防止部材30を容易に挿入することができる長さを呈している。
【0037】
即ち、鶏卵割れ防止部材30は、保持部材40によって底網12の最も後端部の太径ワイヤ18に絡げて保持できるようになっている。また、保持部材40は、底網12を構成する底網縦ワイヤ16、16間に容易に挿入可能な幅にて構成されている。これにより、底網12上の所定位置に鶏卵割れ防止部材30が載置された状態で、保持部材40を容易に底網横ワイヤ14に絡げて保持できるようになっている。
【0038】
以上構成で、鶏卵割れ防止部材30を養鶏用ケージ10の底網12上に配設する配設作業の説明を行う。まず、前面下部に形成した開口部13から、養鶏用ケージ10内に鶏卵割れ防止部材30を挿入する。このとき、鶏卵割れ防止部材30は、縦上ワイヤ32を上にして保持部材40側から挿入する。そして、鶏卵割れ防止部材30の後部(保持部材40側)を底網12の奥(開口部13の反対側)まで挿入したら、保持部材40を、底網12を構成する太径ワイヤ18の後部側に位置させた状態で、鶏卵割れ防止部材30を底網12上に設置する。
【0039】
次に、保持部材40の下部を手で折り曲げて、底網12の太径ワイヤ18を保持部材40で巻き込む(図10、図11に図示)。このとき、鶏卵割れ防止部材30を構成する縦上ワイヤ32と、底網12の底網縦ワイヤ16とが密着しないように、保持部材40を折り曲げて、太径ワイヤ18に絡げる。このとき、太径ワイヤ18に絡げた保持部材40は底部より上部を拡開しておく。これにより、保持部材40に絡げられた細径横下ワイヤ38は、太径ワイヤ18に固定されずに、下方に撓むことができるので、鶏卵割れ防止部材30に緩衝性を持たせることができる。尚、振動などで鶏卵割れ防止部材30が底網12より浮かなければ、保持部材40の折曲は、底網縦ワイヤ16に絡げなくても、くの字状に折り曲げるだけであっても差し支えない。これにより、鶏卵割れ防止部材30を養鶏用ケージ10の底網12の垂直方向略真上に配設することが可能となると共に、鶏卵割れ防止部材30の格子状の網目と、底網12の格子状の網目とを上下方向(垂直方向)において確実に一致させることができる。
【0040】
このように、鶏卵割れ防止部材30は、前面の開口部13と、前方に低く傾斜して、開口部13より前方に突出した部分に集卵部22が構成されたワイヤから成る底網12とを備えた養鶏用ケージ10に用いられる。そして、鶏卵割れ防止部材30は、養鶏用ケージ10前面下部の開口部13より養鶏用ケージ10内に挿入可能な寸法を有し、底網12上に着脱自在に配設されると共に、弾性を有する縦上ワイヤ32と横下ワイヤ34にて構成されて緩衝機能を備えている。これにより、既存の養鶏用ケージ10の開口部13から底網12上に鶏卵割れ防止部材30を容易に配設することができ、鶏から産み落とされた卵が割れてしまうなどの不都合を防止する緩衝効果を確実に得ることができる。
【0041】
特に、鶏卵割れ防止部材30を前面開口部13から養鶏用ケージ10内に挿入可能に構成しているので、鶏卵割れ防止部材30が鶏糞で汚れた場合には、養鶏用ケージ10内に挿入した鶏卵割れ防止部材30を開口部13から取り出して洗浄し、清掃することができる。これにより、養鶏用ケージ10内の鶏の活動空間を清潔に保つことができるようになり便利である。
【0042】
また、既存の養鶏用ケージ10の底網12は、前述した如き強度の大成る太径ワイヤ18と、この太径ワイヤ18よりも強度の小成る細径ワイヤ20から格子状に構成されている。そして、鶏卵割れ防止部材30がこの底網12上に配設された状態で、鶏卵割れ防止部材30は、底網12の太径ワイヤ18との間に所定の隙間ができるようになっている。この場合、鶏卵割れ防止部材30の細径横下ワイヤ38を、鶏から産み落とされた卵によって底網12の太径ワイヤ18側となる下方に撓ませることができる。
【0043】
これにより、鶏卵割れ防止部材30に緩衝性を持たせることができるので、鶏から卵が産み落とされた卵が底網12の太径ワイヤ18上に落下した場合でも、鶏卵割れ防止部材30の細径横下ワイヤ38にて落下する卵の衝撃を効果的に吸収することができる。従って、鶏から産み落とされた卵が底網12の太径ワイヤ18に衝突した衝撃で割れてしまう等という不都合を効果的に防止することができる。
【0044】
また、鶏卵割れ防止部材30は、底網12上に配設された状態で、当該底網12を構成する各ワイヤ(底網横ワイヤ14と底網縦ワイヤ16)に対応するよう配置された複数のワイヤ(縦上ワイヤ32と横下ワイヤ34)から格子状の網目に構成している。そして、底網12の太径ワイヤ18には、鶏卵割れ防止部材30の細径横下ワイヤ38、細径ワイヤ20には太径横下ワイヤ36を対応させているので、底網12の太径ワイヤ18と鶏卵割れ防止部材30の細径横下ワイヤ38との間に所定の隙間44を設けることができる。
【0045】
この隙間44によって、鶏卵割れ防止部材30の細径横下ワイヤ38を底網12の太径ワイヤ18側となる下方に容易に撓ませることができるので、鶏卵割れ防止部材30に緩衝性を持たせることができる。従って、鶏から産み落とされた卵が底網12の太径ワイヤ18上に落下した場合でも、鶏卵割れ防止部材30の細い径のワイヤ(細径横下ワイヤ38)にて落下する卵の衝撃を効率良く吸収することができ、その衝撃で鶏卵が割れてしまう等の不都合を確実に阻止することができる。
【0046】
特に、底網12の格子(網目)と鶏卵割れ防止部材30の格子(網目)とを対応するように配置しているので、鶏が落とした鶏糞をそれらの網目間から下方に落下させて鶏卵割れ防止部材30が鶏糞で汚れないようにすることができる。これにより、鶏卵割れ防止部材30上に産み落とされた鶏卵が鶏糞で汚れてしまうなどの不都合を効果的に防止することができる。また、底網12の格子と鶏卵割れ防止部材30の格子とを対応して配置しているので、鶏が足を踏み外したりする不都合も防止することができ便利である。
【0047】
また、鶏卵割れ防止部材30には、底網12(太径ワイヤ18)に係脱自在に係合する保持部材40を備えているので、底網12の所定位置に鶏卵割れ防止部材30を保持することができるようになる。これにより、傾斜した養鶏用ケージ10の底網12上に配設した鶏卵割れ防止部材30が、底網12上を滑って移動してしまうなどの不都合を未然に防止することが可能となる。
【0048】
また、底網12の所定位置に鶏卵割れ防止部材30を保持することにより、底網12の網目の垂直方向略真上からずれることなく鶏卵割れ防止部材30の網目を位置させることが可能となる。これにより、養鶏用ケージ10下方への鶏糞の落下を効果的に促進することが可能となり、鶏が落とした鶏糞によって底網12と鶏卵割れ防止部材30の双方が汚れてしまう不都合を効果的に防止することが可能となる。従って、産み落とされた鶏卵に鶏糞が付着してしまうなどの汚卵の発生を未然に防止することができるようになる。
【実施例2】
【0049】
次に図12は、保持部材40を取り付けた鶏卵割れ防止部材30の拡大図である。実施例2の鶏卵割れ防止部材30は、前述の実施例と略同じ構成を有している。以下、異なる部分について説明する。尚、前述の実施例と同じ部分については、説明を省略する。実施例2の鶏卵割れ防止部材30は、実施例1の鶏卵割れ防止部材30を構成する保持部材40の形状を変えただけのものである。即ち、鶏卵割れ防止部材30は、養鶏用ケージ10の底網12上に配設された状態で、図12に示すように底網12後部の太径ワイヤ18より所定寸法下方に延在した箇所から、略直角に養鶏用ケージ10の前側に折り曲がったストッパー42を設けている。
【0050】
この保持部材40のストッパー42は、鶏卵割れ防止部材30が養鶏用ケージ10の底網12上に配設された状態で、L字状に折り曲げられている。このストッパー42は、底網12後部の太径ワイヤ18と少許隙間が開くように予め折り曲げられると共に、ストッパー42は、太径ワイヤ18の直径と略同等の長さを呈している。即ち、保持部材40にストッパー42を設けることにより、鶏卵割れ防止部材30を前面の開口部13から養鶏用ケージ10内に挿入するだけで、ストッパー42を底網12後部の太径ワイヤ18に引っ掛けることができる。
【0051】
これにより、傾斜する底網12上に配設された鶏卵割れ防止部材30が、底網12の傾斜面を滑って、底網12と鶏卵割れ防止部材30との格子状の網目位置がずれてしまう等の不都合を防止することができる。他前述同様の効果を得ることができる。また、保持部材40を折り曲げていないので、清掃時の取り外しが簡単で便利である。
【0052】
尚、実施例では、養鶏用ケージ10の底網12に鶏卵割れ防止部材30を配設した状態で、鶏卵割れ防止部材30の後部に設けた保持部材40を、底網12後部の太径ワイヤ18に絡げるようにしたが、保持部材40を太径ワイヤ18に絡げなくてもそのままでも差し支えない。この場合、保持部材40は、養鶏用ケージ10の底網12に鶏卵割れ防止部材30を配設した状態で、底網12後部の太径ワイヤ18の直径と同等の長さ、或いは、太径ワイヤ18の直径より少許下方に延在する長さに構成する。
【0053】
これにより、傾斜する底網12上に配設された鶏卵割れ防止部材30が、底網12の傾斜面を滑って、網目位置がずれてしまう等の不都合を防止することができる。他前述同様の効果を得ることができる。また、保持部材40を太径ワイヤ18に絡げるように折り曲げていないので、養鶏用ケージ10の底網12上に配設した鶏卵割れ防止部材30の取り外しが簡単になる。これにより、清掃時などの作業性も大幅に向上することができて便利である。
【0054】
また、実施例では内部に6〜8羽の鶏を収容して飼うことができる大きさの養鶏用ケージ10で説明したが、養鶏用ケージ10は内部に6〜8羽の鶏を飼うことができる大きさのものに限らず、6羽以下、或いは、8羽以上の鶏を収容して飼うことができる大きさの養鶏用ケージに本発明の鶏卵割れ防止部材30を適用しても差し支えない。この場合、鶏卵割れ防止部材30は、それらの養鶏用ケージの大きさに合わせる必要がある。これにより、前述の実施例同様の効果を得ることができる。
【0055】
また、鶏卵割れ防止部材30の形状や寸法などを記載したが、鶏卵割れ防止部材30は本発明の要旨を逸脱しない範囲内で形状や寸法を変更しても良いのは言うまでもない。勿論本発明は、上記各実施例のみに限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の様々な変更を行っても有効である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の鶏卵割れ防止部材を適用した養鶏用ケージの側面図である(実施例1)。
【図2】同図1の養鶏用ケージの要部拡大図である。
【図3】本発明の鶏卵割れ防止部材を適用した養鶏用ケージの底網部分の平面図である。
【図4】本発明の鶏卵割れ防止部材の斜視図である。
【図5】本発明の鶏卵割れ防止部材の平面図である。
【図6】本発明の鶏卵割れ防止部材の後部の拡大図である。
【図7】同図6の鶏卵割れ防止部材の側面図である。
【図8】本発明の鶏卵割れ防止部材のワイヤと、既存の養鶏用ケージの底網(ワイヤ)の配置関係を示す図である。
【図9】本発明の鶏卵割れ防止部材のワイヤと、既存の養鶏用ケージの底網(ワイヤ)の配置関係を示す要部の拡大図である。
【図10】本発明の鶏卵割れ防止部材を構成する保持部材で底網の太径ワイヤを保持した斜視図である。
【図11】同図10の鶏卵割れ防止部材を構成する保持部材で底網の太径ワイヤを保持した側面図である。
【図12】保持部材を取り付けた本発明の鶏卵割れ防止部材の拡大図である(実施例2)。
【符号の説明】
【0057】
10 養鶏用ケージ
12 底網
13 開口部
14 底網横ワイヤ
16 底網縦ワイヤ
18 太径ワイヤ
20 細径ワイヤ
22 集卵部
24 集卵ベルト
26 側面網ワイヤ
30 鶏卵割れ防止部材
32 縦上ワイヤ
34 横下ワイヤ
36 太径横下ワイヤ
38 細径横下ワイヤ
40 保持部材
42 ストッパー
44 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面の開口部と、前方に低く傾斜し、前記開口部より前方に突出した部分に集卵部が構成されたワイヤから成る底網とを備えた養鶏用ケージに用いられ、
前記開口部より前記養鶏用ケージ内に挿入可能な寸法を有し、前記底網上に着脱自在に配設されると共に、ワイヤから構成されて緩衝機能を備えたことを特徴とする鶏卵割れ防止部材。
【請求項2】
前記底網は、強度の大成る太径ワイヤと該太径ワイヤよりも強度の小成る細径ワイヤから格子状に構成されており、当該底網上に配設された状態で、前記太径ワイヤとの間に間隔が構成されることを特徴とする請求項1に記載の鶏卵割れ防止部材。
【請求項3】
前記底網上に配設された状態で、当該底網を構成する各ワイヤに対応するよう配置された複数のワイヤから格子状に構成されており、前記底網の太径ワイヤには比較的細い径のワイヤが対応することを特徴とする請求項2に記載の鶏卵割れ防止部材。
【請求項4】
前記底網に係脱自在に係合する保持部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の鶏卵割れ防止部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−14216(P2007−14216A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196125(P2005−196125)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(505255242)
【Fターム(参考)】