説明

鶏舎用鳥インフルエンザ感染予防装置及び予防方法

【課題】 自然環境に悪影響を与えず、鶏や人間を始めとする動植物に対しては安全であり、しかも手間が掛からず効果の大きい鳥インフルエンザ感染予防手段及び予防方法を提供する。
【解決手段】 鶏舎1Aの内部には鶏Cを飼育するケージ2が設置され、各ケージ2の前下には飼料を供給する給飼部及び飲料水を供給する給水部としての給飼・給水部3が付設されている。鶏舎1Aの外部にはオゾン発生装置10が設置され、このオゾン発生装置10からのオゾンを鶏舎1A内に散布する配管20が敷設されている。配管20は、オゾン発生装置10からのオゾンを鶏舎1Aの外部から内部に導入する配管21と、配管21からのオゾンを天井部から散布する3本の配管22,23,24とからなる。配管22〜24は、オゾンを下向きに噴出する多数の細孔を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏舎内で飼育されている鶏が鳥インフルエンザに感染するのを予防する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、鳥インフルエンザウイルスにより鶏等の鳥が鳥インフルエンザの感染により死亡し、その処理や対策、引いては人間への感染予防が叫ばれている。鳥インフルエンザの対策としては、鶏舎内を薬剤で定期的に消毒したり、鶏舎の敷地に入る人間や車両を消毒したりするなどして、鳥インフルエンザウイルスが侵入しないよう厳重な管理が行われている。
【0003】
一方、オゾンを利用して家畜(家禽、牛、豚、馬等)の排泄物の悪臭、及び畜舎の悪臭を防止する装置がある。例えば、オゾン発生機により発生するオゾンを水とともにオゾン溶解槽に導入してオゾン水を製造し、このオゾン水を紫外線照射装置に通して紫外線照射処理を行い家畜に飲ませるとともに、オゾン水を洗浄水として使用して畜舎内を清掃し、畜舎内の天井付近にスプリンクラーを設置してオゾン水を散水するようにした畜舎の脱臭装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−306086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鳥インフルエンザ予防対策として鶏舎内外を消毒する場合、消毒薬を使用することになるが、消毒薬の取扱いには十分注意しなければならない。また、厳重な注意が必要な薬品を定期的かつ大量に使用し続けることに対しては、消毒薬の環境で育った鶏肉、土壌汚染、地下水汚染、人体や大気等の住環境への影響等にも十分な配慮が必要である。このため、消毒薬を使用する予防対策は、定期的に消毒するのに人手や手間、ランニングコストが掛かる上に、鶏自体や鶏肉の食品としての安全性、作業従事者や鶏舎内外の自然環境への影響にも注意を要するなど、多大な負担が掛かっているのが現状である。
【0005】
また、上記特許文献1記載の脱臭装置では、家畜の排泄物の悪臭や畜舎の悪臭を防止するのにオゾン水を使用しているが、鳥インフルエンザ感染の予防対策は何ら採られていない。
【0006】
この発明は、そのような実情に鑑みてなされたもので、自然環境に悪影響を与えず、鶏や人間を始めとする動植物に対しては安全であり、しかも手間が掛からず効果の大きい鳥インフルエンザ感染予防手段及び予防方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の鶏舎用鳥インフルエンザ感染予防装置は、鶏舎に、オゾン発生装置と、このオゾン発生装置からのオゾンを鶏舎内外に散布する多数の細孔を有する配管と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この予防装置において、具体的に配管は、鶏舎内の天井部に配置されている、鶏舎内の給餌部に沿って配置されている、鶏舎内の給水部に沿って配置されている、或いは鶏舎内の床及び鶏舎の外周に沿って配置されている。
【0009】
また、配管からは、気相オゾン、オゾン水、又はオゾン添加銀イオン水が切り換えられて散布されることが好ましい。これは、気相オゾンだけを用いるよりも、用途に応じてオゾン水やオゾン添加銀イオン水を使い分ける方がより効果的な予防を講ずることができるからである。
【0010】
例えば、天井部の配管からは気相オゾンを散布することで、鶏舎内全体にオゾンを曝気して鶏舎内の特に空気を殺菌し、給餌部、給水部、床及び鶏舎の外周の配管からは、気相オゾン、オゾン水、又はオゾン添加銀イオン水を切り換えて散布することで、主として飼料、飲料水、床(コンクリート面、地面等)、鶏舎の外周の地面を殺菌する。これにより、万一、飼料等に鳥インフルエンザウイルス(以下、単にウイルスともいう)が付着していた場合は、そのウイルスを死滅させることができるだけでなく、ウイルスの鶏舎内や鶏舎の敷地内への侵入を未然に防ぐことができ、鳥インフルエンザ感染の効果的な予防措置となる。
【0011】
特に、オゾン添加銀イオン水を使用すると、オゾンによる強力な殺菌作用だけでなく、銀イオン水中の銀イオンによる殺菌・抗菌作用が長期間にわたって持続するので、オゾンと銀イオンの相乗作用により、より強力で有効な予防対策となる。
【0012】
なお、配管は、天井部、給餌部、給水部、床及び鶏舎の外周のうち、いずれか1箇所に敷設してもよいが、万全を帰するのであれば2箇所以上、最善としては全ての箇所に敷設するのがよい。
【0013】
また、本発明の鶏舎用鳥インフルエンザ感染予防方法は、鶏舎内の天井部、鶏舎内の給餌部、鶏舎内の給水部、鶏舎内の床及び鶏舎の外周のうち、少なくとも1箇所からオゾンを散布することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によれば、次の効果が得られる。
(1)オゾンの殺菌作用により鶏舎内外を殺菌するので、ウイルスが万一侵入した場合のウイルスの死滅やウイルスの侵入防止を図ることができる。
(2)オゾンの脱臭作用により鶏舎内外が消臭されるので、鶏の排泄物やそれによる汚水等に起因する悪臭を防止でき、作業環境を改善できる。
(3)オゾンはウイルスと動植物とでは有害となる濃度が異なるため、適切な濃度調整をすることで、ウイルスの殺菌効果は確保した上で、人体や鶏を始めとする動植物に対して安全な環境を作り出すことが可能であり、自然環境に悪影響を与えることはない。
(4)オゾンは曝気後に空気中の酸素により還元されて酸素に戻るため、消毒薬のように使用後の処理に注意を払う必要がなく、消毒薬よりも取り扱いやすい。
(5)オゾンは消毒薬と違って24時間連続使用が可能であるため、常にウイルスの侵入を防ぐことができる。
(6)特にオゾン添加銀イオン水を使用すること(請求項6)で、オゾンによる強力な殺菌作用だけでなく、銀イオンによる殺菌・抗菌作用が長期間にわたって持続するので、オゾンと銀イオンの相乗作用により、より強力で有効な予防対策となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施の形態により、この発明を更に詳細に説明する。
【0016】
その実施形態に係る鳥インフルエンザ感染予防装置を配備した鶏舎の概略斜視図を図1に示す。鶏舎1Aの内部には、鶏Cを飼育する複数(ここでは4つ)のケージ2が設置され、各ケージ2の前下には飼料を供給する給餌部及び飲料水を供給する給水部としての給餌・給水部3が付設されている。
【0017】
鶏舎1Aの外部には、オゾン発生装置10が設置され、このオゾン発生装置10からのオゾンを鶏舎1A内に散布する配管20が配置されている。ここでは、配管20は、オゾン発生装置10からのオゾンを鶏舎1Aの外部から内部に導入する配管21と、配管21からのオゾンを天井部から散布する3本の配管22,23,24とからなる。配管22,23,24は、オゾンを下向きに噴出する多数の細孔(図示せず)を有する。配管22は鶏舎1Aの棟に沿って敷設され、配管23,24は棟と軒との中間当たりに敷設されている。
【0018】
この鶏舎1Aでは、オゾン発生装置10で発生したオゾンが配管21を経て配管22,23,24から鶏舎1A内に下向きに散布される。このオゾンの鶏舎1A内全体への曝気により、内部の空気が殺菌されるだけでなく、鶏舎1A内のケージ2等の設備も殺菌される。
【0019】
別実施形態に係る鶏舎の概略斜視図を図2に示す。但し、同じ要素には同一符号を付してある。この鶏舎1Bの内部では、配管20は、オゾン発生装置10からのオゾンを鶏舎1Bの外部から内部に導入する配管21と、配管21からのオゾンを給餌・給水部3に向かって散布する4本の配管25〜28とからなる。配管25〜28は各ケージ2の給餌・給水部3の上に沿って敷設されている。
【0020】
この鶏舎1Bでは、オゾン発生装置10で発生したオゾンが配管21を経て配管25〜28から給餌・給水部3に向かって散布される。このオゾンの散布により、給餌・給水部3に供給された飼料や飲料水が殺菌され、鶏Cがウイルスに汚染された飼料や飲料水を摂取するのを防止できる。
【0021】
更に別実施形態に係る鶏舎の概略斜視図を図3に示す。この鶏舎1Cの外部及び内部では、配管20は、オゾン発生装置10からのオゾンを鶏舎1Cの外周に散布する配管29と、オゾンを鶏舎1C内の床7に散布する配管30とからなる。配管29は鶏舎1Cの外周に沿って敷設され、配管30は下段のケージ2の給餌・給水部3の下の床7に沿って敷設されるとともに、下段のケージ2間の床7にも敷設されている。なお、配管29は鶏舎1Cの外周の2辺に沿ってだけ敷設されているが、全周に敷設されてもよいのは勿論である。
【0022】
この鶏舎1Cでは、オゾン発生装置10で発生したオゾンは、配管29から鶏舎1Cの外部に散布されるとともに、配管30から鶏舎1Cの内部の床7に向かって散布される。このオゾンの散布により、鶏舎1Cの外部の地面や空気が殺菌されるとともに、鶏舎1Cの内部の床7が殺菌される。
【0023】
上記鶏舎1A,1B,1Cによれば、オゾンの強力な殺菌作用により鶏舎内外を殺菌するので、ウイルスが万一侵入した場合でもウイルスを死滅させることができる上に、鶏舎外からのウイルスの侵入を未然に防止することができる。しかも、オゾンの脱臭作用により鶏舎内外が消臭されるので、鶏の排泄物やそれによる汚水等に起因する悪臭を防止でき、作業環境を改善できる。
【0024】
また、オゾンは曝気後に空気中の酸素により還元されて酸素に戻るため、消毒薬のように使用後の処理に注意を払う必要がなく、消毒薬よりも取り扱いやすい。加えて、オゾンは消毒薬と違って24時間連続使用が可能であるため、常にウイルスの侵入を防ぐことができる。つまり、オゾン発生装置10からのオゾンを配管により自動的に散布すればよいので、消毒薬のように作業者が定期的に噴霧する必要がなく、予防対策が容易であり、人手や手間が掛からない。
【0025】
更には、オゾンはウイルスと動植物とでは有害となる濃度が異なるため、適切な濃度調整をすることで、ウイルスの殺菌効果は確保した上で、人体や鶏を始めとする動植物に対して安全な環境を作り出すことが可能であり、自然環境に悪影響を与えることはない。
【0026】
そのオゾンの濃度については、上記鶏舎1A,1B,1Cで散布するオゾン濃度は、ウイルスの殺菌と人間や鶏を含む動植物の安全性を考慮して、0.05〜0.10ppm、好ましくは0.10〜0.20ppm程度である。
【0027】
上記鶏舎1A,1B,1Cで使用するオゾン発生装置10は、既知のものでもよいが、オゾンの濃度調整を容易に行うためには、特開平8−2903号公報に記載された「オゾン発生装置」を使用するのが好ましい。このオゾン発生装置は、両端を封じガス(不活性ガス)を封入したガラス管の一端部のみに高周波印加電極が設けられた2本の単極型ガス封入放電管を、電極位置が互いに逆向きに互いに近接して略平行に並設し、その2本の放電管に高周波の高電圧を印加する手段を設けたものである。このオゾン発生装置では、各電極に高周波の高電圧を印加すると、2本の放電管内で雷放電(プラズマ)が励起し、2本の放電管間の空隙からオゾンが発生する。
【0028】
このオゾン発生装置によると、従来のもの(絶縁物を介して対峙させた2つの導体に高電圧を印加するもの)に比べて、放電管内の雷放電が従来の放電極の代わりをするだけでなく、放電極が無く露出していないので、長寿命であり、小型化が可能である。
【0029】
また、上記実施形態では、配管からオゾンを散布することとしているが、特に鶏舎1B、1Cの場合は、気相オゾンの他にオゾン水又はオゾン添加銀イオン水を散布してもよい。オゾン水は、周知の手法、例えば水中にオゾンを導入するなどにより生成すればよい。
【0030】
銀イオン水は、例えば特開平8−192161号公報に記載された「銀イオン水生成器」を使用するのがよい。この銀イオン水生成器は、生成器本体と、水道蛇口に着脱可能に取り付けるための蛇口着脱具を設けた蛇口取付口と、生成された銀イオン水を排出する銀イオン水排出口と、蛇口取付口と銀イオン水排出口を連通する流路の上流側に配置されたカソード側銀電極及び流路の下流側に配置されたアノード側銀電極と、カソード側及びアノード側の銀電極間に電流を流す制御部とを備えるものである。
【0031】
この銀イオン水生成器では、両銀電極間に通電すると、アノード側銀電極の銀が溶解して、Agが析出し、水道水から銀イオン水が生成されて銀イオン水排出口から出る。この銀イオン水にオゾンを導入すればよい。
【0032】
特にオゾン添加銀イオン水を使用すれば、オゾンによる強力な殺菌作用だけでなく、銀イオンによる殺菌・抗菌作用が長期間にわたって持続するので、オゾンと銀イオンの相乗作用により、より強力で有効な予防対策となる。
【0033】
更には、上記鶏舎1Aでは天井部、鶏舎1Bでは給餌・給水部3、鶏舎1Cでは外周及び床7に配管が敷設されているが、それらを組合せることで、より万全な予防対策を講ずることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】一実施形態に係る鳥インフルエンザ感染予防装置を配備した鶏舎の概略斜視図である。
【図2】別実施形態に係る鳥インフルエンザ感染予防装置を配備した鶏舎の概略斜視図である。
【図3】更に別実施形態に係る鳥インフルエンザ感染予防装置を配備した鶏舎の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1A,1B,1C 鶏舎
2 ケージ
3 給餌・給水部
7 床
10 オゾン発生装置
20〜30 配管
C 鶏

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏舎に、オゾン発生装置と、このオゾン発生装置からのオゾンを鶏舎内外に散布する多数の細孔を有する配管と、を備えたことを特徴とする鶏舎用鳥インフルエンザ感染予防装置。
【請求項2】
前記配管は、鶏舎内の天井部に配置されていることを特徴とする請求項1記載の鶏舎用鳥インフルエンザ感染予防装置。
【請求項3】
前記配管は、鶏舎内の給餌部に沿って配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の鶏舎用鳥インフルエンザ感染予防装置。
【請求項4】
前記配管は、鶏舎内の給水部に沿って配置されていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の鶏舎用鳥インフルエンザ感染予防装置。
【請求項5】
前記配管は、鶏舎内の床及び鶏舎の外周に沿って配置されていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4記載の鶏舎用鳥インフルエンザ感染予防装置。
【請求項6】
前記配管からは、気相オゾン、オゾン水、又はオゾン添加銀イオン水が切り換えられて散布されることを特徴とする請求項3、請求項4又は請求項5記載の鶏舎用鳥インフルエンザ感染予防装置。
【請求項7】
鶏舎内の天井部、鶏舎内の給餌部、鶏舎内の給水部、鶏舎内の床及び鶏舎の外周のうち、少なくとも1箇所からオゾンを散布することを特徴とする鶏舎用鳥インフルエンザ感染予防方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−142204(P2009−142204A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322759(P2007−322759)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(391034271)成和サプライ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】