説明

黒原着ポリエステル繊維

【課題】黒く着色され、意匠性に優れ、日光が当たっても温度が上昇し難いポリエステル繊維を提供する。
【解決手段】赤外線透過型黒色染顔料を0.5〜10重量%含み、必要に応じて黒さを調節するためカーボンブラックを1,000ppm以下添加とすることで、黒く着色されているにもかかわらず、意匠性に優れ、日光に当たっても、蓄熱しにくい、黒原着ポリエステル繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒く着色されているにもかかわらず、日光が当たっても温度が上昇し難い黒原着ポリエステル繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維は、高強度、高ヤング率、熱寸法安定性に優れた繊維であり、衣料用途、産業資材用途に幅広く用いられている。
また、その中でも黒原着ポリエステル繊維は、通常の染色では困難である深い黒色を有するポリエステル繊維として、様々な用途に用いられている。
しかしながら、黒原着ポリエステル繊維は、例えば特許文献1のように、黒原着成分としてカーボンブラック等の粒子を用いるために、日光に当たると赤外線の吸収により、繊維事自体の温度が上昇するという課題を有していた。
また、特許文献2には、(a)熱可塑性エラストマー系ポリマー、および(b)ペリレン系色素を含むストランドが提案されている。しかしながら、ペリレン系色素は、赤外線透過型黒色有機顔料ではあるが、波長λ=750nm以上の波長領域で良好な透過率を示すものの、波長680〜750nmの間の赤外線透過率が低く、また、可視光領域での反射率が十分に低くないため、黒さが不十分であるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−241640号公報
【特許文献2】特開2009−39153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記従来の問題点を解決しようとするものであり、黒く着色されているにもかかわらず、日光が当たっても温度が上昇し難い黒原着ポリエステル繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリエステル繊維中に赤外線透過型黒色染顔料を0.5〜10重量%含み、黒く着色されているにもかかわらず、日光に当たっても、蓄熱しにくいことを特徴とするポリエステル繊維に関する。
ここで、本発明の黒原着ポリエステル繊維は、黒さを調節するためにカーボンブラックを1,000ppm以下添加してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の黒原着ポリエステル繊維は、見かけ上の黒色性に優れ、意匠性、蓄熱抑制に極めて優れている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において、着色剤として赤外線透過型の染顔料を用いる必要があり、下記染顔料の一種以上を用いても構わない。本発明における染料としては、アンスラキノン系染料、アゾ系染料、ピラゾロン系染料、キノフタロン系染料、ペリノン系染料、メチン系染料、クマリン系染料等が挙げられる。また、顔料としては、熱可塑性樹脂の着色に使用されている公知の有機、無機顔料が使用できる。有機顔料としてはピロール系、キナクリドン系、アゾ系、ジオキサン系、イソインドリノン系、インダスレン系、キノフタロン系、ペリノン系、フタロシアニン系等が挙げられる。無機顔料としては酸化鉄、カドミウムレッド、チタンイエロー、カドミウムイエロー、群青、紺青、コバルトブルー、コバルトグリーン、セルリアンブルー等が挙げられる。
【0008】
染顔料で黒色を表す場合、単色で黒色を呈すものの他に有彩色の組み合わせにより黒色になるものがある。単色で黒色を呈し近赤外線を透過する顔料としてはアゾメチアゾ系黒色顔料等が挙げられ、具体的には大日精化工業製のクロモファインブラックA―1103などが挙げられる。また、有彩色で黒色にするには、吸収域の違う黄(Y)、紅(M)、藍(C)を用いて可視光領域をカットすることにより、カーボンブラックのような黒色顔料で着色される真の黒色と同等の黒色が得られる。有彩顔料の組み合わせもしくは有彩顔料と有彩染料の組み合わせによっても黒色は得ることが出来るが、顔料を用いると近赤外線の吸収が増大してしまうため、染料の組み合わせにより黒色を得るのが好ましい。例えば、ランクセス社製のマクロレックスイエローG、マクロレックスレッドEG、マクロレックスブルーRR、マクロレックスグリーン5Bを用いて黒色を表現することが出来る。なお、有彩色の染顔料と単色で黒色を呈する染顔料を組み合わせて黒色を調節するなど、染顔料の組み合わせは限定されるものではない。それらの具体例としては、住化ケムテックス社製のSumiplast Black HB、Sumiplast Black HLG、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のオラゾール ブラックRL等が挙げられる。
【0009】
染顔料の配合割合は、ポリエステルに対し、0.5重量%以上10重量%以下である必要がある。好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは2.5重量%以下である。この着色剤(染顔料)は、1種でも使用可能であるが、複数種併用することもできる。10重量%を超えると、製糸性が悪化し紡糸困難となる。また、2.5重量%以下では、製糸性が向上し、単糸繊度の小さいものも製糸可能となる。一方、0.5重量%未満では、充分な黒色性は得られない。
【0010】
本発明の黒原着ポリエステル繊維は、赤外線透過型黒色染顔料を0.5〜10重量%含み、さらに「黒く着色されているにもかかわらず、日光に当たっても、蓄熱しにくい」という特徴を有する。
ここで、「黒く着色されている」とは、黒原着ポリエステル繊維の明度(L*)が好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下であることを指称する。
また、「日光にあたっても蓄熱しにくい」とは、後記する蓄熱性の測定項目において、温度が90℃以下の場合をさす。
【0011】
本発明の黒原着ポリエステル繊維の明度(L*)は、30.0以下であることが好ましい。明度(L*)が30を超える場合には、黒色度に優れるとは言い難い。より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。黒原着ポリエステル繊維の明度(L*)を30.0以下とするには、本発明の赤外線透過型黒色染顔料を上記範囲内で添加したり、有彩色の染顔料と単色で黒色を呈する染顔料の組み合わせにより調節すればよい。
また、本発明で得られる黒原着ポリエステル繊維のa*は、−5〜+10が好ましい。a*が上記範囲外の場合には、黒色度に優れるとは言い難い。より好ましくは−1〜+5である。
さらに、本発明で得られる黒原着ポリエステル繊維のb*は、−5〜+10が好ましい。b*が上記範囲外の場合には、黒色度に優れるとは言い難い。より好ましくは−1〜+5である。
上記a*やb*を上記範囲にするには、本発明の赤外線透過型黒色染顔料を上記範囲内で添加したり、有彩色の染顔料と単色で黒色を呈する染顔料の組み合わせにより調節すればよい。
【0012】
本発明では、染顔料の配合は、本来、黒さを調整する目的で行われる。本発明では、さらにカーボンブラック等の黒色顔料を配合して、意図的にL値を低下させることもできる。色相調整のため添加するカーボンブラックの添加量は、ポリエステル100重量部に対し、好ましくは1,000ppm以下であり、さらに好ましくは500ppm以下である。1,000ppmを超えると、カーボンブラックの蓄熱効果により、得られる黒原着ポリエステル繊維の蓄熱抑制の効果が得られない。また、500ppm以下では、カーボンブラックの蓄熱効果が殆ど発現しないため、黒さと蓄熱抑制の効果を兼ね備えた黒原着ポリエステル繊維が得られる。
【0013】
なお、本発明でいうポリエステルとは、繊維を形成するものであればどのようなものでもよく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等が好ましく挙げられる。
【0014】
これらポリエステルは、上述のようにホモポリエステルであってもよく、またコポリエステルであってもよい。コポリエステルの場合、上述のホモポリエステルに小割合(例えば20モル%以下)で第3成分を共重合させたものが好ましく、このような第3成分としては、例えばジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分等が挙げられる。なかでも、固有粘度(オルトクロロフェノールを溶媒として温度35℃にて測定)が0.5〜0.95dl/gのポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0015】
ポリエステル繊維中に本発明の赤外線透過型の黒色染顔料やその他の染顔料を配合するには特別な方法を採用する必要はなく、例えばポリエステルの重合工程で加える方法、マスターペレット化したのちカーボンブラックを含有しないベースポリエステルと混練する方法、カーボンブラックと液状ポリエステルとをあらかじめ混合した液状の添加剤組成物を紡糸直前の溶融ポリエステル流中にギアポンプ等で計量しながら注入添加した後、静的あるいは動的混練分散を行う方法等があげられる。なかでも、紡糸装置の汚染や取り扱い性、コスト等を考慮すると、マスターペレットによる方法が最も一般的であると言える。
【0016】
例えば、本発明の赤外線透過型黒色染顔料と繊維形成性ポリエステルを主成分とするポリエステル樹脂組成物よりなるペレットは、その溶融成形法は何ら限定されず、公知のペレット製造法により製造されたものが好適に使用できる。すなわち、ストランド、あるいは板状におしだされた樹脂組成物を、樹脂が完全に固化した後、あるいは完全には固化されないで、いまだ溶融状態にあるとき、空気中、あるいは水中でカッティングする等の手法が従来公知であるが、本発明においてはいずれも好適に適用できる。
【0017】
本発明における繊維プロセスについては代表的な合成繊維の繊維化プロセスであれば特に問題なく、以下に示す作製方法になんら制限されるものではない。具体的には代表的なポリエステルの溶融紡糸方法に従い、作製したペレットを必要に応じて結晶化後に乾燥し、紡糸段階で加水分解しない程度にまで水分減らした後に、一軸式エクストルーダーにて溶融押し出しし計量ギアポンプで計量し、連続して口金をより押し出すことで繊維化し、冷却風にて固化した後に油剤を付与して捲き取りを行う。捲き取った糸を予熱しながら延伸、熱セットすることで目的とする繊維を得る。延伸、熱セットは場合によっては紡糸後、直接行う方法でもよい。また必要に応じ、延伸、熱セット工程の途中または後に任意の長さにカットすることで、短繊維を作製してもよい。
また、捲き取られる繊維は、必要に応じ任意の繊維断面形状でよく、丸断面、三角断面、十字断面、中空、扁平、異型中空など必要に応じて選択したのでよい。また、本発明の繊維中には、そのほか、艶消剤、制電剤、蛍光増白剤、吸湿剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌剤等の改質剤や機能性付与剤が、本発明の効果を損なわない範囲で含有されていてもよい。
【0018】
紡糸速度は、一般的な紡糸速度であればよく500m/minから5,000m/minの間が、よく好ましくは1,000m/minから3,500m/minがよい。
延伸温度はポリマーのガラス転移温度以上であれば安定して延伸可能な予熱温度でよく、一般的には60℃から120℃、好ましくは70℃から100℃である。また、延伸倍率は所望の延伸糸伸度になる延伸倍率でよく、紡糸方法によって原糸伸度が大きく異なるのでここでは特に限定しないが、一般的に1.2倍から5倍までの範囲がよく、より好ましくは1.5倍から4倍の間である。熱セット温度は延伸糸を熱セットし熱収縮率を狙いの範囲に定め、経時による変化を止める目的でおこなうので、延伸糸の結晶化が起こる温度以上で糸が溶断しない温度であれば、延伸糸の用途に合わせて選択したのでよい。具体的には110℃から200℃、より好ましくは130℃から190℃である。延伸における延伸方法は特に限定は無く、1段延伸、2段延伸、3段以上の多段延伸に収縮操作を加えたいづれの方法であってもよい。また糸の用途により他繊維と混繊することで、布帛形成する際に特徴を際立たせる方法を採用してもよく、また中間配向状態で巻き取った糸や延伸糸を仮撚り加工することで、意匠性や捲縮特性などの機械特性を付与してもよい。
その際、紡糸延伸工程、特に延伸工程を制御して繊維の切断強度を2〜9cN/dtex、特に3〜9cN/dtexとすることが望ましい。
【0019】
本発明の繊維および繊維構造体は、樹脂組成物からなる繊維単独で使用してもよく、他種繊維と混用することもできる。混用の態様としては、他種繊維からなる繊維構造物との各種組み合わせのほか、他の繊維との混繊糸、複合仮撚糸、混紡糸、長短複合糸、流体加工糸、カバリングヤーン、合撚、交織、交編、パイル織物、混綿つめ綿、長繊維や短繊維の混合不織布、フェルトなどが例示される。混用する場合、ポリエステルの特徴を発揮するため混用比率は1重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上の範囲が選択される。
【0020】
混用される他の繊維、例えば綿、麻、レーヨン、テンセルなどのセルロース繊維、ウール、絹、アセテート、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリオレフィン、ポリウレタンなどを挙げることができる。
【0021】
また、本発明の繊維は、様々な繊維構造体の形態をとることができる。具体的には縫い糸、刺繍糸、紐類などの糸形態製品、織物、編み物、不織布、フェルト、等の布帛、シャツ、ブルゾン、パンツ、コート、セーター、ユニホームなどの外衣、下着、パンスト、靴下、裏地、芯地、スポーツ衣料、婦人衣料やフォーマルウエアなどの高付加価値衣料製品、カップ、パッド等の衣料製品、カーテン、カーペット、椅子張り、マット、家具、鞄、家具張り、壁材、各種のベルトやスリング等の生活資材用製品、さらに帆布、ベルト、ネット、ロープ、重布、袋類、フェルト、フィルター等の産業資材製品、車両内装製品、人工皮革製品などの各種繊維製品を含む。
【実施例】
【0022】
本発明を下記実施例によりさらに説明する。
下記実施例及び比較例において、下記の測定及び評価を行った。
(1)ポリエステルの固有粘度
オルソクロルフェノールを溶媒とし、35℃で測定した溶液粘度より算出した。単位はdl/gである。
(2)強伸度
延伸糸を20℃、65%RHの雰囲気下で、引張試験機により、試料長20cm、速度20cm/分の条件で破断時の強力、および伸度を測定した。測定数は10とし、強力の平均値と繊度を用いて、強度(cN/dtex)とした。
(3)カラー測定
JIS Z 8729−1994、L*a*b*表色系をMacbeth(登録商標)Color-Eye3100を用いて測定した。
(4)蓄熱性
20℃、65%RHの雰囲気下で、照明(IR100V/125W)を用いて測定した。サンプルは、厚紙に4cm×4cmの穴を開け、サンプルを貼り付けたものを使用し、15cm×15cmの開口部を有する厚さ1cmのアクリル板に載せた。照明とサンプルとの距離は30cmとし、照射開始15分後のサンプル裏面の温度を測定した。
【0023】
[実施例1]
固有粘度0.60dl/gのポリエチレンテレフタレートを用いて、
黒色染料混合物の含有率が10重量%のマスターバッチを製造した。黒色染料混合物は、ランクセス社製のマクロレックスイエローG3重量%、マクロレックスレッドEG51.4重量%、マクロレックスブルーRR19.6重量%、マクロレックスグリーン5B26重量%を混合することで得た。このマスターバッチと上述のポリエチレンテレフタレートを染料含有率が2重量%となるよう混ぜ、均一にしたものを紡糸原料とした。この原料を290℃で溶融し、孔数36の口金を有する紡糸ヘッドから、紡糸温度290℃、吐出量42g/min、紡糸速度1,500m/分で溶融紡糸し、未延伸糸を巻き取った。得られた未延伸糸を、延伸温度90℃、延伸倍率3.3倍でローラー延伸し、次いで180℃の非接触型ヒーターで熱セットして巻き取り、延伸糸を得た。延伸工程においても毛羽や断糸の発生はなく、全ての未延伸糸は問題なく延伸可能であった。
得られた延伸糸は84dtex/36filであり、強度は4.0cN/dtex、伸度は28%であった。この延伸糸を用いて筒編みを作成し、精錬、プレセット後、カラー測定を実施した。カラー測定の結果、L*値20.5、a*値4.7、b*値−4.4であった。また、蓄熱性を評価した結果、60℃であった。得られた繊維の物性、および黒さ、蓄熱抑制の効果は良好であった。
【0024】
[実施例2]
固有粘度0.60dl/gのポリエチレンテレフタレートを用いて、赤外線透過型黒色染料である住化ケムテックス社製のSumiplast Black HB(登録商標)PK3820の含有率が10重量%のマスターバッチを製造した。このマスターバッチと上述のポリエチレンテレフタレートを顔料含有率が2.4重量%となるよう混ぜ、均一にしたものを紡糸原料とした。この原料を実施例1と同様の方法で延伸糸を得た。
得られた延伸糸は84dtex/36filであり、強度は4.2cN/dtex、伸度は20%であった。この延伸糸を用いて筒編みを作成し、精錬、プレセット後、カラー測定を実施した。カラー測定の結果、L*値17.5、a*値−0.4、b*値−0.9であった。また、蓄熱性を評価した結果、80℃であった。得られた繊維の物性、および黒さ、蓄熱抑制の効果は良好であった。
【0025】
[実施例3]
固有粘度0.60dl/gのポリエチレンテレフタレートを用いて、実施例1と同様の黒色染料混合物とL*値を低下させるためカーボンブラックを染料混合物に対して1重量%添加して調整した、染料含有率が20重量%のマスターバッチを製造した。このマスターバッチと上述のポリエチレンテレフタレートを染顔料含有率が2.4重量%となるよう混ぜ、均一にしたものを紡糸原料とした。この原料を実施例1と同様の方法で延伸糸を得た。この延伸糸中のカーボン含有量は240ppmであった。
得られた延伸糸は84dtex/36filであり、強度は4.0cN/dtex、伸度は25%であった。この延伸糸を用いて筒編みを作成し、精錬、プレセット後、カラー測定を実施した。カラー測定の結果、L*値19.0、a*値−0.6、b*値−2.5であった。また、蓄熱性を評価した結果、65℃であった。得られた繊維の物性、および黒さ、蓄熱抑制の効果は良好であった。
【0026】
[比較例1]
固有粘度0.60dl/gのポリエチレンテレフタレートを紡糸原料とし、実施例1と同様の方法で延伸糸を得た。
得られた延伸糸は84dtex/36filであり、強度は5.0cN/dtex、伸度は26%であった。この延伸糸を用いて筒編みを作成し、精錬、プレセット後、カラー測定を実施した。カラー測定の結果、L*値80.8、a*値−0.1、b*値−0.1であった。また、蓄熱性を評価した結果、47℃であった。
【0027】
[比較例2]
固有粘度0.60dl/gのポリエチレンテレフタレートを用いて、カーボンブラック含有率が16重量%のマスターバッチを製造した。このマスターバッチと上述のポリエチレンテレフタレートを顔料含有率が2.4重量%となるよう混ぜ、均一にしたものを紡糸原料とした。この原料を実施例1と同様の方法で延伸糸を得た。
得られた延伸糸は84dtex/36filであり、強度は4.1cN/dtex、伸度は38%であった。この延伸糸を用いて筒編みを作成し、精錬、プレセット後、カラー測定を実施した。カラー測定の結果、L*値17.4、a*値−0.1、b*値−1.2であった。また、蓄熱性を評価した結果、106℃であった。得られた繊維の物性、および黒さは良好であったが、蓄熱性は106℃と布帛裏面の温度は上昇し、蓄熱していた。
【0028】
[比較例3]
固有粘度0.60dl/gのポリエチレンテレフタレートを用いて、実施例1と同様の黒色染料混合物とL*値を低下させるためカーボンブラックに染料混合物に対して5重量%添加して調整した、染顔料含有率が20重量%のマスターバッチを製造した。
このマスターバッチと上述のポリエチレンテレフタレートを顔料含有率が2.4重量%となるよう混ぜ、均一にしたものを紡糸原料とした。この原料を実施例1と同様の方法で延伸糸を得た。この延伸糸中のカーボン含有量は1,200ppmであった。
得られた延伸糸は84dtex/36filであり、強度は3.8cN/dtex、伸度は33%であった。この延伸糸を用いて筒編みを作成し、精錬、プレセット後、カラー測定を実施した。カラー測定の結果、L*値18.2、a*値−0.4、b*値−2.0であった。また、蓄熱性を評価した結果、105℃であった。得られた繊維の物性、および黒さは良好であったが、蓄熱性は実施例3と比較してカーボンをさらに添加したことで、105℃と布帛裏面の温度は上昇し、蓄熱していた。
















【0029】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の黒原着ポリエステル繊維は、黒く着色されているが、日光が当たった際の布帛の温度上昇を抑え、蓄熱抑制に極めて優れている。従って、衣服、車の内装、インテリアなどの用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線透過型黒色染顔料を0.5〜10重量%含み、黒く着色されているにもかかわらず、日光に当たっても、蓄熱しにくいことを特徴とする黒原着ポリエステル繊維。
【請求項2】
上記ポリエステル繊維の明度(L*)が30以下である、請求項1に記載の黒原着ポリエステル繊維。
【請求項3】
黒さを調節するためにさらにカーボンブラックを1,000ppm以下添加してなる、請求項1または2に記載の黒原着ポリエステル繊維。


【公開番号】特開2013−60678(P2013−60678A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199035(P2011−199035)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】