黒米を含む米飯の製造方法

【課題】本発明は、色むらが低減され、より均一かつ濃色に着色した黒米を含む米飯の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、黒米を含む米飯の製造方法であって、炊飯前に黒米を予め加熱処理することを特徴とする、黒米を含む米飯の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は黒米を含む米飯の製造方法に関する。より詳細には、黒米のアントシアニンに由来する赤色〜紫色を米飯に着色する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
黒米を含む米飯を炊飯する場合、スラリー〜固形条件下において黒米の色が抽出される条件となり、米の流動性が失われた時点以降に黒米から抽出された色素はその周辺に偏在する。このため、「色むら」が発生して好ましくない外観になる場合が多い。よって、その外観改善は商品価値向上のため重要な事項であった。
また、黒米の生産性や生産量は依然として低く、原料単価が高いため黒米の効率的な使用はコスト管理上重要であることから、従来色素を効率的に抽出するために、抽出温度の検討などが試みられてきたが、抽出前の黒米の前処理(加熱等)は検討されていなかった。本発明により色素利用効率が向上することも判明したため、前述した「色むら」低減とともに使用する原料削減技術にも効果が期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、色むらが低減され、より均一かつ濃色に着色した黒米を含む米飯の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、炊飯条件ではなく、黒米原料の前処理について検討を行い、炊飯前に黒米の加熱処理(ドラムロースター焙煎:110℃20分)を行ったところ、炊飯条件が同じでも色素抽出が早くなり、かつ、抽出される色素濃度も上昇することが分かった。そして、炊飯後、米飯は均一に濃い色に着色されることがわかった。本発明は、上記知見に基づいて行なわれたものである。
すなわち、本発明は、黒米を含む米飯の製造方法であって、炊飯前に黒米を予め加熱処理することを特徴とする、黒米を含む米飯の製造方法を提供する。
また、本発明は、黒米を含む米飯用の黒米の調製方法であって、黒米を加熱処理することを特徴とする、黒米を含む米飯用の黒米の調製方法を提供する。
さらに、本発明は、加熱した状態における温度と加熱時間の積(℃×分)で480〜11000の条件で加熱処理を施した黒米を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の製造方法によれば、色むらが低減され、より均一かつ濃色に着色した黒米を含む米飯を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実験例1の抽出液の色調を示すグラフである。
【図2】実験例1の抽出液のa値/b値を示すグラフである。
【図3】処理前の黒米の顕微鏡写真である。
【図4】80℃達温時の黒米の顕微鏡写真である。
【図5】80℃で60分間処理した黒米の顕微鏡写真である。
【図6】110℃で20分間処理した黒米の顕微鏡写真である。
【図7】対照Aの炊飯後の米飯の写真である。
【図8】実施例の炊飯後の米飯の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の黒米を含む米飯の製造方法は、炊飯前に黒米を予め加熱処理することを特徴とする。加熱処理のタイミングは、炊飯前であればいつでも良く、炊飯の直前であっても、数日前、もしくは収穫の直後であってもよい。また、加熱処理後の黒米の保管方法も特に制限されない。
加熱処理の方法としては、一定の熱を黒米に与えることができる方法であれば公知のいずれの方法も使用できる。例えば、ロースターや乾燥機を用いる方法、過熱水蒸気を含む蒸気による加熱方法などが挙げられる。
加熱温度としては、80℃以上の温度が好ましく、80〜125℃の範囲の温度がより好ましい。加熱温度が低すぎると、アントシアニンの抽出効率が落ち、色むらが発生する。また、加熱温度が高すぎると、色調が変化する、焦げ臭が米飯に付着する、膨化するなどの影響がある。なお、本発明において加熱温度とは、品温を意味している。
加熱時間は、加熱温度との積算で適切な時間を選択すればよい。その際、達温時点までの昇温時間もある程度考慮する必要がある。加熱装置や原料投入量等で若干の変化はあるが、例えば、ドラム型ロースター(Probat社 型番:L5)を使用する場合は、80℃まで約6分間、95℃まで約12分間、110℃まで約18分間、120℃まで約27分間見積もればよい。達温時点以降については、一般的には、その加熱温度を0〜60分間維持するのが好ましい。また、加熱した状態における温度と加熱時間の積(℃×分)の範囲は、480〜11000で選択すればよく、好ましくは480〜10100で選択すればよく、より好ましくは480〜6000で選択すればよい。
【0008】
黒米を含む米飯の炊飯条件は一般的な米飯の炊飯条件で良い。なお、アントシアニンは、スラリー〜固形条件下で黒米から抽出されるため、米飯全体に占める黒米の割合は10質量%以下に抑えることが好ましく、より好ましくは1〜8質量%であり、さらに好ましくは2〜6質量%である。
【0009】
なお、本発明において、黒米を含む米飯とは、黒米と黒米以外の米(玄米、七分搗きなどいずれの精米歩合も含む)との混合品及び、さらに雑穀や麦等を含むいわゆる雑穀ご飯などの米飯類全般を指す。
【実施例】
【0010】
[実験例1]
(黒米の加熱処理)
プロバット(Probat)社ロースター(型番:G12)を用いて黒米10kgを熱風焙煎法によって25分間で110℃まで加熱し、110℃で20分間一定に保った後(加熱した状態における温度と加熱時間の積は約4950℃×分)、排出して冷却した。品温はドラム内に設置された設備付帯の熱伝対式温度計にて測定しており、温度計に焙煎中の黒米が庫内で接触する状態であった。
【0011】
(抽出試験)
黒米1.4gに水100mlを加え、30分常温のまま浸漬したのち、湯煎で加熱した(約90℃)。サンプリング後は、速やかにろ紙ろ過して抽出液を得た。得られた抽出液の色調を分光色差計SE6000(日本電色工業(株))で測定した。また、対照として加熱処理をしていない黒米について同様に抽出液を得て色調を測定した。これらの結果を図1及び図2に示す。図1から明らかなように、加熱処理した黒米では、抽出に要する時間が短くなり、その結果抽出に要するユーティリティが削減できる。また、色素の抽出効率が上昇する為、同じ色の商品を製造するのに要する黒米量を約20%程度削減することができる。さらに、黒米を高温抽出すると色調が黄色くなること(b値が上昇)が知られているが、図2から明らかなように、加熱処理を施した黒米では黄色の色調は増加せず、逆に黄色は弱くなる傾向にある。
【0012】
[実験例2]
(黒米の加熱処理)
プロバット(Probat)社ロースター(型番:L5)を用いて、黒米3kgを熱風焙煎法によって加熱し、各試験水準の温度に達したら当該温度を維持した。加熱しながら黒米を抜き取って、サンプルを得た。
【0013】
(黒米表面調査)
得られたサンプル黒米の果皮・種皮の状況を、オリンパス社製実体顕微鏡(型番:SZX)にて調査した。その結果、処理前の黒米(図3)では果皮・種皮が胚乳に密着して隙間無く胚乳を覆っているのに対し、80℃達温時の黒米(図4)では胚部分などに若干のクラックが発生していた。80℃で60分間処理した黒米(図5)では果皮・種皮が胚乳から明らかに浮き上がっている状況が確認され、一部はがれも認められた。また、110℃で20分間処理した黒米(図6)においても、胚部分のクラックがはっきりと認められ、その他果皮・種皮部分についても胚乳からの浮き上がりや、クラックが認められた。以上の調査により、黒米を本発明の条件で加熱処理することで、果皮や種皮の浮き上がりやクラックの発生などを誘発し、表面積が増加している等の効果により、水と接触したときに吸水促進、抽出効率向上などの効果が発揮されていることは明白である。また、これら果皮・種皮の変化状況から、果皮や種皮の細胞壁についても損傷が発生し、色素成分の抽出効率向上に寄与していることは容易に想像される。
【0014】
(炊飯試験)
無洗米313gと黒米7gに水410mlを加え、30分浸漬した後に、タイガーマイコン炊飯ジャーJAI−B550で炊飯した。
下記表1に示した各評価項目について、対象A、Bの点数を基準として比較評価を行った(N=3)。結果を表2に示す。
【表1】

対象品A:黒米(未加熱)を使用して、試験品と同様に炊飯
対象品B:12時間浸漬した黒米(未加熱)を使用して炊飯
【表2】

【0015】
[実施例]
(黒米の加熱処理)
プロバット(Probat)社ロースター(型番:M1000H)を用いて黒米390kgを熱風焙煎法によって29分間で110℃まで加熱し、110℃で30分間一定に保った後(加熱した状態における温度と加熱時間の積は約6490℃×分)、排出して冷却した。
【0016】
(炊飯試験)
無洗米313gと黒米7gに水410mlを加え、30分浸漬した後に、タイガーマイコン炊飯ジャーJAI−B550で炊飯した。
【0017】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒米を含む米飯の製造方法であって、炊飯前に黒米を予め加熱処理することを特徴とする、黒米を含む米飯の製造方法。
【請求項2】
加熱処理の条件が、加熱した状態における温度と加熱時間の積(℃×分)で480〜11000である、請求項1記載の黒米を含む米飯の製造方法。
【請求項3】
加熱処理の条件が80〜125℃である、請求項1または2記載の黒米を含む米飯の製造方法。
【請求項4】
米飯中の黒米の割合が10質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項記載の黒米を含む米飯の製造方法。
【請求項5】
黒米を含む米飯用の黒米の調製方法であって、黒米を加熱処理することを特徴とする、黒米を含む米飯用の黒米の調製方法。
【請求項6】
加熱処理の条件が、加熱した状態における温度と加熱時間の積(℃×分)で480〜11000である、請求項5記載の黒米を含む米飯の製造方法。
【請求項7】
加熱処理の条件が80〜125℃である、請求項5または6記載の黒米を含む米飯用の黒米の調製方法。
【請求項8】
加熱した状態における温度と加熱時間の積(℃×分)で480〜11000の条件で加熱処理を施した黒米。
【請求項9】
80〜125℃の条件で加熱処理を施した請求項8記載の黒米。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−244768(P2011−244768A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123079(P2010−123079)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000000055)アサヒグループホールディングス株式会社 (535)
【出願人】(597104396)アサヒビールモルト株式会社 (8)
【Fターム(参考)】