説明

1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン1,1−ジオキシド誘導体及び農園芸用植物病害防除剤

本発明は、一般式[I]
【化1】


[式中、RはC−Cアルケニル基、C−Cアルキニル基、C−Cシクロアルキル基、C−C10ハロアルキル基を示し、Xはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基を示し、nは0から4の整数を示す]で表される1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド誘導体又はその塩を有効成分として含有する農園芸用植物病害防除剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド誘導体又はその塩を有効成分とする農園芸用植物病害防除剤に関するものであり、さらに詳細には、特定の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド誘導体又はその塩の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド誘導体に属する化合物については、特許文献1〜3に記載された化合物が知られている。特許文献1は、非線形光学材料に関して、特許文献2は、漂白剤及び洗剤に関して、特許文献3は製造法に関して記載されているが、いずれにも農園芸用植物病害防除活性に関する記載はない。
【特許文献1】特開平4−305629号公報
【特許文献2】米国特許3928223号
【特許文献3】ドイツ国特許公開3040633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
農作物或いは園芸作物の栽培において、植物病原菌によって引き起こされる病害発生は作物の生産効率に重大な影響を与えるため、植物病害防除には、これまで主として植物病原菌に直接作用する様々な化学合成農薬が使用されてきた。しかしながら、これらの化学合成農薬を多用してきた結果、耐性菌の出現による薬剤効力低下等の問題が発生してきている。又、化学物質の安全性、環境に対する影響への要求が高まってきており、より安全な農園芸用植物病害防除剤の開発が望まれている。本発明はこのような問題点に対処するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の目的を達成するために、これまで植物病害防除活性の知られていない1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド誘導体を多数合成し、その植物病害防除活性と有用性について鋭意検討した。その結果、本発明の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド誘導体(以下、本願化合物という)を植物に対して施用しておくことにより、長期間にわたって植物病害を防除し、植物に薬害を与えることなく顕著な植物病害防除効果を示すことを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
(1)一般式[I]
【0005】
【化1】

【0006】
[式中、Yは酸素原子又は硫黄原子を示し、
はYが硫黄原子の場合、C−C16アルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルキニル基、C−Cシクロアルキル基、C−C10ハロアルキル基、C−Cシアノアルキル基、C−CシクロアルキルC−Cアルキル基、C−CアルコキシC−Cアルキル基、C−CアルキルチオC−Cアルキル基、−W−Q基、−Q基又は−W−Q基を示し、
はYが酸素原子の場合、C−C16アルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルキニル基、C−Cシクロアルキル基、C−C10ハロアルキル基、C−Cシアノアルキル基、C−CシクロアルキルC−Cアルキル基、C−CアルコキシC−Cアルキル基、C−CアルキルチオC−Cアルキル基、−W−Q基、−Q基又は−W−Q基を示し、
Wは、C−Cアルキル基を示し、
Qは、フェニル基(該基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基又は−NR基で置換されてもよい)を示し、
は、同一若しくは相異なってよい酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される1個以上のヘテロ原子を有する炭素数3ないし10の複素環基(該基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基又は−NR基で置換されてもよい)を示し、
Xは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基又は−NR基を示し、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基又はフェニル基(該基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基又は−NR基で置換されてもよい)を示し、
及びRはそれぞれ独立に水素原子又はC−Cアルキル基を示し、
nは0から4の整数を示す]
で表される1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド誘導体又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする農園芸用植物病害防除剤。
【0007】
(2)一般式[I’]
【0008】
【化2】

【0009】
[式中、Yは酸素原子又は硫黄原子を示し、
はYが硫黄原子の場合、C−C16アルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルキニル基、C−Cシクロアルキル基、C−C10ハロアルキル基、C−Cシアノアルキル基、C−CシクロアルキルC−Cアルキル基、C−CアルコキシC−Cアルキル基、C−CアルキルチオC−Cアルキル基、−W−Q基、−Q基又は−W−Q基を示し、
はYが酸素原子の場合、C−C16アルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルキニル基、C−Cシクロアルキル基、C−C10ハロアルキル基、C−Cシアノアルキル基、C−CシクロアルキルC−Cアルキル基、C−CアルコキシC−Cアルキル基、C−CアルキルチオC−Cアルキル基、Rより選択される任意の基で置換されたフェニルC−Cアルキル基、−Q基又は−W−Q基を示し、
Wは、C−Cアルキル基を示し、
Qは、フェニル基(該基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基又は−NR基で置換されてもよい)を示し、
は、同一若しくは相異なってよい酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される1個以上のヘテロ原子を有する炭素数3ないし10の複素環基(該基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基又は−NR基で置換されてもよい)を示し、
Xは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基、−NR基を示し、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基又はフェニル基(該基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基又は−NR基で置換されてもよい)を示し、
及びRはそれぞれ独立に水素原子又はC−Cアルキル基を示し、
はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基又は−NR基を示し、
nは0から4の整数を示す]
で表される1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド誘導体又はその塩。
【0010】
(3)前記(2)に記載の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド誘導体又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする農園芸用植物病害防除剤。
【0011】
以下、本明細書に記載された記号及び用語について説明する。
【0012】
ハロゲン原子とはフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
【0013】
−C等の表記は、これに続く置換基の炭素数が、この場合では1〜6であることを示している。
【0014】
−Cアルキル基とは、特に限定しない限り、炭素数が1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示し、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、ネオペンチル、n−へキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル等の基をあげることができる。
【0015】
−C16アルキル基とは、特に限定しない限り、炭素数が6〜16の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示し、例えばn−へキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、ヘプチル、1−メチルヘキシル、5−メチルヘキシル、1,1−ジメチルペンチル、2,2−ジメチルペンチル、4,4−ジメチルペンチル、1−エチルペンチル、2−エチルペンチル、1,1,3−トリメチルブチル、1,2,2−トリメチルブチル、1,3,3−トリメチルブチル、2,2,3−トリメチルブチル、2,3,3−トリメチルブチル、1−プロピルブチル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、オクチル、1−メチルヘプチル、3−メチルヘプチル、6−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、5,5−ジメチルヘキシル、2,4,4−トリメチルペンチル、1−エチル−1−メチルペンチル、ノニル、1−メチルオクチル、2−メチルオクチル、3−メチルオクチル、7−メチルオクチル、1−エチルヘプチル基、1,1−ジメチルヘプチル、6,6−ジメチルヘプチル、デシル、1−メチルノニル、2−メチルノニル、6−メチルノニル、1−エチルオクチル、1−プロピルヘプチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル又はn−ヘキサデシル等の基をあげることができる。
【0016】
−C16アルキル基とは、特に限定しない限り、炭素数が1〜16の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示し、前記C−Cアルキル基及びC−C16アルキル基で例示した基をあげることができる。
【0017】
−Cシクロアルキルとは特に限定しない限り、炭素数が3〜6のシクロアルキル基を示し、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシル等の基をあげることができる。
【0018】
−Cハロアルキル基とは、ハロゲン原子によって置換された、炭素数が1〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示し、例えばフルオロメチル、クロロメチル、ブロモメチル、ジフルオロメチル、ジクロロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、クロロジフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、2−フルオロエチル、1−クロロエチル、2−クロロエチル、1−ブロモエチル、2−ブロモエチル、2,2−ジフルオロエチル、1,2−ジクロロエチル、2,2−ジクロロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、2−ブロモ−2−クロロエチル、2−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエチル、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエチル、1−クロロプロピル、2−クロロプロピル、3−クロロプロピル、2−ブロモプロピル、3−ブロモプロピル、2−ブロモ−1−メチルエチル、3−ヨードプロピル、2,3−ジクロロプロピル、2,3−ジブロモプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、3,3,3−トリクロロプロピル、3−ブロモ−3,3−ジフルオロプロピル、3,3−ジクロロ−3−フルオロプロピル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、1−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロピル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル、ヘプタフルオロプロピル、1,2,2,2−テトラフルオロ−1−トリフルオロメチルエチル、2,3−ジクロロ−1,1,2,3,3−ペンタフルオロプロピル、2−クロロブチル、3−クロロブチル、4−クロロブチル、2−クロロ−1,1−ジメチルエチル、4−ブロモブチル、3−ブロモ−2−メチルプロピル、2−ブロモ−1,1−ジメチルエチル、2,2−ジクロロ−1,1−ジメチルエチル、2−クロロ−1−クロロメチル−2−メチルエチル、4,4,4−トリフルオロブチル、3,3,3−トリフルオロ−1−メチルプロピル、3,3,3−トリフルオロ−2−メチルプロピル、2,3,4−トリクロロブチル、2,2,2−トリクロロ−1,1−ジメチルエチル、4−クロロ−4,4−ジフルオロブチル、4,4−ジクロロ−4−フルオロブチル、4−ブロモ−4,4−ジフルオロブチル、2,4−ジブロモ−4,4−ジフルオロブチル、3,4−ジクロロ−3,4,4−トリフルオロブチル、3,3−ジクロロ−4,4,4−トリフルオロブチル、4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブチル、4−ブロモ−3−クロロ−3,4,4−トリフルオロブチル、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチル、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル、2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−1−トリフルオロメチルエチル、3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピル、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル、2,3,3,3−テトラフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピル、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブチル、ノナフルオロブチル、4−クロロ−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブチル等の基をあげることができる。
【0019】
−C10ハロアルキル基とは、ハロゲン原子によって置換された、炭素数が5〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示し、例えば5−フルオロペンチル、5−クロロペンチル、5,5−ジフルオロペンチル、5,5−ジクロロペンチル、5,5,5−トリフルオロペンチル、6,6,6−トリフルオロヘキシル基又は5,5,6,6,6−ペンタフルオロヘキシル等の基をあげることができる。
【0020】
−Cシアノアルキルとは特に限定しない限り、炭素数が1〜6のシアノアルキル基を示し、例えばシアノメチル、1−シアノエチル、2−シアノエチル、1−シアノプロピル、2−シアノプロピル、3−シアノプロピル、4−シアノブチル、5−シアノペンチル又は6−シアノヘキシル等の基をあげることができる。
【0021】
−Cアルケニル基とは、特に限定しない限り、炭素数が2〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基を示し、例えばビニル、1−プロペニル、i−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、1−メチル−1−プロペニル、2−ブテニル、1−メチル−2−プロペニル、3−ブテニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、1,3−ブタジエニル、1−ペンテニル、1−エチル−2−プロペニル、2−ペンテニル、1−メチル−1−ブテニル、3−ペンテニル、1−メチル−2−ブテニル、4−ペンテニル、1−メチル−3−ブテニル、3−メチル−1−ブテニル、1,2−ジメチル−2−プロペニル、1,1−ジメチル−2−プロペニル、2−メチル−2−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1,2−ジメチル−1−プロペニル、2−メチル−3−ブテニル、3−メチル−3−ブテニル、1,3−ペンタジエニル、1−ビニル−2−プロペニル、1−ヘキセニル、1−プロピル−2−プロペニル、2−へキセニル、1−メチル−1−ペンテニル、1−エチル−2−ブテニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、1−メチル−4−ペンテニル、1−エチル−3−ブテニル、1−(i−ブチル)ビニル、1−エチル−1−メチル−2−プロペニル、1−エチル−2−メチル−2−プロペニル、1−(i−プロピル)−2−プロペニル、2−メチル−2−ペンテニル、3−メチル−3−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1,3−ジメチル−2−ブテニル、1,1−ジメチル−3−ブテニル、3−メチル−4−ペンテニル、4−メチル−4−ペンテニル、1,2−ジメチル−3−ブテニル、1,3−ジメチル−3−ブテニル、1,1,2−トリメチル−2−プロペニル、1,5−ヘキサジエニル、1−ビニル−3−ブテニル又は2,4−ヘキサジエニル等の基をあげることができる。
【0022】
−Cアルキニル基とは、特に限定しない限り、炭素数が2〜6の直鎖又は分岐鎖状のアルキニル基を示し、例えばエチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、1−メチル−2−プロピニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、1−エチル−2−プロピニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、1−メチル−2−ブチニル、4−ペンチニル、1−メチル−3−ブチニル、2−メチル−3−ブチニル、1−ヘキシニル、1−(n−プロピル)−2−プロピニル、2−ヘキシニル、1−エチル−2−ブチニル、3−ヘキシニル、1−メチル−2−ペンチニル、1−メチル−3−ペンチニル、4−メチル−1−ペンチニル、3−メチル−1−ペンチニル、5−ヘキシニル、1−エチル−3−ブチニル、1−エチル−1−メチル−2−プロピニル、1−(i−プロピル)−2−プロピニル、1,1−ジメチル−2−ブチニル又は2,2−ジメチル−3−ブチニル等の基をあげることができる。
【0023】
−Cアルコキシ基とは、アルキル部分が前記の意味を有する炭素数が1〜6の(アルキル)−O−基を示し、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ又はヘキシルオキシ等の基をあげることができる。
【0024】
−Cハロアルコキシ基とは、ハロアルキル部分が前記の意味を有する同一又は相異なるハロゲン原子1〜13で置換されている炭素数が1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基を示し、例えばクロロメトキシ、ジフルオロメトキシ、クロロジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ又は2,2,2−トリフルオロエトキシ等の基をあげることができる。
【0025】
−CアルコキシC1−C6アルキル基とはアルキル部分及びアルコキシ部分が前記の意味を有する炭素数が1〜6のアルコキシにより置換された炭素数が1〜6のアルキル基を示し、例えばメトキシメチル、エトキシメチル、イソプロポキシメチル、ペンチルオキシメチル、メトキシエチル又はブトキシエチル等の基をあげることができる。
【0026】
−CアルキルチオC1−C6アルキル基とは、アルキル部分が前記の意味を有する炭素数が1〜6の(アルキル)−S−基によって置換された炭素数が1〜6のアルキル基を示し、例えばメチルチオメチル、エチルチオメチル、イソプロピルチオメチル、ペンチルチオメチル、メチルチオエチル又はブチルチオエチル等の基をあげることができる。
【0027】
−CシクロアルキルC−Cアルキル基とは、アルキル部分及びシクロアルキル部分が前記の意味を有する炭素数が1〜6のシクロアルキルにより置換された炭素数が1〜6のアルキル基を示し、例えばシクロプロピルメチル、シクロペンチルメチル、2−(シクロプロピル)エチル、4−(シクロペンチル)ブチル、シクロヘキシルメチル、1−シクロヘキシルエチル又は2−シクロヘキシルエチル等の基をあげることができる。
【0028】
同一若しくは相異なってよい酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される1個以上のヘテロ原子を有する炭素数3ないし10の複素環基とは、例えばフラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モリホリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール等をあげることができる。
【0029】
次に、一般式[I]で示される本願化合物の具体例を表1〜表3に記載する。しかしながら、本願化合物はこれらの化合物に限定されるものではない。尚、化合物番号は以後の記載において参照される。
【0030】
前記一般式[I]において、好ましい化合物群としては、
Yが硫黄原子の場合、RがC−C16アルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルキニル基、ハロゲン原子で置換されてもよいフェニルC−Cアルキル基又はハロゲン原子で置換された炭素数5又は6の複素環C−Cアルキル基であり、Xが水素原子、C−Cアルキル基又はハロゲン原子であり、nが0又は1であり、
Yが酸素原子の場合、RがC−C16アルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルキニル基、ハロゲン原子で置換されてもよいフェニルC−Cアルキル基又はハロゲン原子で置換された炭素数4又は5の複素環C−Cアルキル基であり、Xが水素原子、C−Cアルキル基又はハロゲン原子であり、nが0又は1である化合物群があげられる。
【0031】
さらに好ましい化合物群としては、Yが硫黄原子の場合、RがC−Cアルキル基、ベンジル基、ハロゲン原子でモノ置換若しくはジ置換されたベンジル基又はハロゲン原子でモノ置換若しくはジ置換されたピリジルメチル基であり、Xが水素原子、C−Cアルキル基又はハロゲン原子であり、nが0又は1であり、Yが酸素原子の場合、RがC−C10アルキル基、ベンジル基、ハロゲン原子でモノ置換若しくはジ置換されたベンジル基又はハロゲン原子でモノ置換若しくはジ置換されたピリジルメチル基であり、Xが水素原子、C−Cアルキル基又はハロゲン原子であり、nが0又は1である化合物群があげられる。
【0032】
本明細書における表中の次の表記は下記の通りそれぞれ該当する基を表す。
例えばMeとはメチル基を示し、Etとはエチル基を示し、Prとはn−プロピル基を示し、Pr−iとはイソプロピル基を示し、Buとはn−ブチル基を示し、Bu−sとはセカンダリーブチル基を示し、Bu−iとはイソブチル基を示し、Bu−tとはターシャリーブチル基を示し、Pnとはn−ペンチル基を示し、Pn−cとはシクロペンチル基を示し、C13とはn−ヘキシル基を示し、C15とはn−ヘプチル基を示し、C17とはn−オクチル基を示し、C19とはn−ノニル基を示し、C1021とはn−デシル基を示し、C1123とはn−ウンデシル基を示し、C1225とはn−ドデシル基を示し、Phとはフェニル基を示す。又、例えばPh(4−Cl)とは4−クロロフェニル基を示す。
【0033】
【表1】


【0034】
【表2】


【0035】
【表3】

【0036】
【表4】


【0037】
本願化合物である一般式[I]で示される1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド誘導体の代表的な製造方法を以下に例示するが、本願化合物の製造方法はこれらの方法に限定されるものではない。
【0038】
<製造方法>
【0039】
【化3】


【0040】
(式中、X、Y、n及びRはそれぞれ前記と同じ意味を示し、Mは、水素原子、ナトリウム原子又はカリウム原子等のアルカリ金属原子を示す。)
【0041】
(工程1)
一般式[I]で表される化合物は、一般式[II]で表されるサッカリン誘導体と化合物[III]とを、塩基存在下又は非存在下、溶媒中又は溶媒非存在下で反応させることにより製造することができる。
【0042】
本工程で使用する化合物[III]の使用量は、サッカリン誘導体[II]1モルに対して0.5〜10モルの範囲から適宜選択すればよく、好ましくは1.0〜1.2モルである。
【0043】
本工程で使用できる塩基としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム又は炭酸カルシウム等の金属炭酸塩類、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩類、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム又は酢酸マグネシウム等の金属酢酸塩類に代表される金属カルボン酸塩類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムターシャリーブトキシド、カリウムメトキシド又はカリウムターシャリーブトキシド等の金属アルコキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム又は水素化カルシウム等の金属水素化物、トリエチルアミン、ピリジン又はジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基等があげられる。
【0044】
塩基の使用量は化合物[II]1モルに対して0〜10モルの範囲から適宜選択すればよく、好ましくは0〜1.2モルである。
【0045】
本反応で使用できる溶媒としては、本反応の進行を阻害しないものであればよく、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、モノグライム又はジグライム等のエーテル類、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素又はテトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン又はトルエン等の芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン等のイミダゾリノン類、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物類、アセトニトリル等のニトリル類等を使用することができ、さらにこれらの混合溶媒も使用することができる。
【0046】
反応温度は−20℃から使用する不活性溶媒の沸点域の範囲から選択すればよく、好ましくは0℃〜100℃の範囲で行うのがよい。
【0047】
反応時間は反応温度、反応基質、反応量等により異なるが、通常30分〜48時間である。
【0048】
反応の目的物である一般式[I]で表される本願化合物は、反応終了後、常法により反応系から採取される。得られた目的物は、必要に応じてカラムクロマトグラフィー、再結晶等の操作によって精製することもできる。
【0049】
上記の一般式[II]の化合物は、ケミッシェ・ベリヒテ(Chemisch Berichte)、第56巻、第1810頁(1923年);ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンス(Journal of Pharmaceutical Science)第50巻、第672頁(1961年);特開昭49−20779号公報記載の方法及びこれらに準じて製造することができる。
【0050】
本発明の農園芸用植物病害防除剤は、一般式[I]で示される1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド誘導体又はその塩を有効成分として含有してなる。
【0051】
本願化合物を農園芸用植物病害防除剤として使用する場合には、単独で用いてもよいが、その目的に応じて有効成分を適当な剤型で用いることができる。
【0052】
通常は有効成分を不活性な液体又は固体の担体で希釈し、必要に応じて界面活性剤、その他をこれに加え、粉剤、水和剤、乳剤、粒剤等の製剤形態で使用できる。有効成分の配合割合は必要に応じ適宜選ばれるが、粉剤及び粒剤とする場合は0.1〜50%(重量)、又、乳剤及び水和剤とする場合は5〜80%(重量)が適当である。
【0053】
製剤化に際して用いられる担体としては、例えばタルク、ベントナイト、クレー、カオリン、珪藻土、ホワイトカーボン、バーミキュライト、炭酸カルシウム、消石灰、珪砂、硫安、尿素等の固体担体、イソプロピルアルコール、キシレン、シクロヘキサン、メチルナフタレン等の液体担体等があげられる。
【0054】
界面活性剤及び分散剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸金属塩、ジナフチルメタンジスルホン酸金属塩、アルコール硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレート等があげられる。補助剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、アラビアゴム等があげられる。
【0055】
さらに、本発明の農園芸用植物病害防除剤には、上記様々な製剤形態において有効成分である本願化合物以外に必要に応じて他の公知の活性化合物、例えば、殺虫剤、殺ダニ剤、昆虫生育調整剤、殺線虫剤、殺菌剤、植物病害防除剤、除草剤、植物生長調節剤、肥料及び土壌改良剤等と混合してもよい。
【0056】
本発明の農園芸用植物病害防除剤は、これらの製剤をそのまま、あるいは希釈して茎葉散布、種子処理、土壌施用、水面施用又は育苗箱施用等により使用することができる。これらの施用量は、使用される化合物の種類、対象病害、発生傾向、被害の程度、環境条件、使用する剤型などによって変動する。
【0057】
例えば粉剤及び粒剤のようにそのまま使用する場合には、有効成分で10アール当り0.1g〜5kg、好ましくは1g〜1kgの範囲から適宜選ぶのがよい。
【0058】
又、乳剤及び水和剤のように液状で使用する場合には、0.1ppm〜10,000ppm、好ましくは10〜3,000ppmの範囲から適宜選ぶのがよい。
【0059】
又、育苗箱施用によって用いる場合、化合物の溶出性を制御した製剤化を行うことにより、長期にわたる効果を付与することが可能である。
【0060】
本発明の農園芸用植物病害防除剤は上記の施用形態により、糸状菌、細菌及びウィルスに起因する植物の病害を防除できる。
【0061】
次に、具体的な病害を非限定例としてあげる。
【0062】
キュウリべと病(Pseudoperonospora cubensis)、リンゴ黒星病(Venturia inaequalis)、キュウリうどんこ病(Sphaerotheca cucurbitae)、コムギうどんこ病(Erysiphe graminis)、コムギふ枯病菌(Septoria nodorum)、イネいもち病(Pyricularia oryzae)、キュウリ灰色かび病(Botrytis cinerea)、イネ紋枯病(Rhizoctonia solani)、コムギ赤さび病(Puccinia recondita)、キュウリ斑点細菌病(Pseudomonas syringe)、イネ白葉枯病(Xanthomonas oryzae)、イネもみ枯細菌病(Burkholderia glumae)、イネ苗立枯細菌病(Burkholderia plantarii)、イネ褐状病(Acidovorax avenae)、内穎褐変病(Erwinia ananas)
【発明の効果】
【0063】
本発明の農園芸用植物病害防除剤は、イネいもち病、コムギふ枯病、キュウリべと病などに対して高い防除効果を有し、しかも、作物に薬害を生ずることなく、残効性、耐雨性に優れるという特徴をも併せ持っているため、農園芸用植物病害防除剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下、本発明の農園芸用植物病害防除剤で用いる一般式[I]の誘導体の製造法、製剤法並びに用途を下記の実施例で詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。尚、以下の説明において「%」は重量百分率を示す。
【実施例1】
【0065】
2−ヘプチルオキシカルボニル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシドの製造(化合物番号2)
無水サッカリンナトリウム5.0g(24.4ミリモル)をアセトニトリル(50mL)に溶解し、クロロ炭酸ヘプチル4.8g(27.0ミリモル)を加えた。反応溶液を加熱還流下、4時間撹拌した。反応終了確認後、反応溶液を室温に冷却後、水中にあけ、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を水洗し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。無機物を濾別した後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、白色粉末の2−ヘプチルオキシカルボニル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド6.1g(収率:80%)を得た。
【0066】
1H-NMRデータ(CDCl3/TMS δ(ppm)):0.89(3H,t),1.38(8H,m),1.83(2H,quint),4.47(2H,t),7.94(3H,m),8.17(1H,d)
【実施例2】
【0067】
2−(2−ブチニルオキシカルボニル)−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシドの製造(化合物番号17)
無水サッカリンナトリウム1.6g(7.5ミリモル)をアセトニトリル(50mL)に溶解し、クロロ炭酸(2−ブチニル)1.0g(7.5ミリモル)を加えた。反応溶液を加熱還流下、6時間撹拌した。反応終了確認後、反応溶液を室温に冷却後、水中にあけ、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を水洗し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。無機物を濾別した後減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、白色粉末(融点178−180℃)の2−(2−ブチニルオキシカルボニル)−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド0.7g(収率:33%)を得た。
【0068】
1H-NMRデータ(CDCl3/TMS δ(ppm)):1.89(3H,s),5.01(2H,s),7.95(3H,m),
8.17(1H,d)
【実施例3】
【0069】
2−エチルチオカルボニル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシドの製造(化合物番号71)
無水サッカリンナトリウム4.0g(20.0ミリモル)をアセトニトリル(50mL)に溶解し、クロロチオールぎ酸エチル2.7g(22.0ミリモル)を加えた。反応溶液を加熱還流下、5時間撹拌した。反応終了確認後、反応溶液を室温に冷却後、水中にあけ、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を水洗し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。無機物を濾別した後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、白色粉末(融点217−222℃)の2−エチルチオカルボニル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド0.8g(収率:15%)を得た。
【0070】
1H-NMRデータ(CDCl3/TMS δ(ppm)):1.41(3H,t),3.09(2H,q),7.96(3H,m)、8.17(1H,d)
【実施例4】
【0071】
2−(4−クロロベンジルチオカルボニル)−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシドの製造(化合物番号92)
無水サッカリンナトリウム2.0g(9.7ミリモル)をアセトニトリル(50mL)に溶解し、クロロチオールぎ酸(4−クロロベンジル)2.4g(10.7ミリモル)を加えた。反応溶液を加熱還流下、3時間撹拌した。反応終了確認後、反応溶液を室温に冷却後、水中にあけ、酢酸エチルにて抽出した。得られた有機層を水洗し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。無機物を濾別した後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、白色粉末(融点193−194℃)の2−(4−クロロベンジルチオカルボニル)−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド0.95g(収率:27%)を得た。
【0072】
1H-NMRデータ(CDCl3/TMS δ(ppm)):4.26(2H,s),7.32(4H,dd),7.95(3H,m),8.15(1H,d)
【実施例5】
【0073】
2−(2,6−ジクロロ−4−ピリジルメチルオキシカルボニル)−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド(化合物番号109)
サッカリン0.9g(4.9ミリモル)、2,6−ジクロロ−4−ピリジルメチルクロロホルメート0.9g(3.8ミリモル)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶解し、トリエチルアミン0.6g(5.9ミリモル)を室温で滴下した。室温で3時間攪拌後、水中にあけ、析出した固形物を濾取した。得られた固形物を酢酸エチルにて洗浄し、白色粉末(融点263−265℃)の2−(2,6−ジクロロ−4−ピリジルメチルオキシカルボニル)−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド0.7g(収率:37%)を得た。
【0074】
1H-NMRデータ(DMSO-d6 δ(ppm)):5.59(2H,s),7.68(2H,s),8.06(1H,m),8.08(1H,m),8.22(1H,d),8.41(1H,d)
【0075】
上記実施例1〜5で得られた化合物及びこれらの実施例と同様な方法で製造した本発明化合物の物性値を表5に示す。
【0076】
【表5】


【0077】
化合物番号1、2、3、93,95,96及び100については、1H−NMRデータ(CDCl/TMS δ(ppm)値)を以下に示す。
【0078】
化合物番号1:0.92(3H,t),1.41(8H,m),1.81(2H,quin),4.48(2H,t),7.93(3H,m),8.19(1H,d)
化合物番号2:0.89(3H,t),1.38(8H,m),1.83(2H,quin),4.47(2H,t),7.94(3H,m),8.17(1H,d)
化合物番号3:0.88(3H,t),1.37(8H,m),1.81(2H,quin),4.47(2H,t),7.92(3H,m),8.17(1H,d)
化合物番号93:0.88(3H,t),1.39(8H,m),1.82(2H,quin),2.81(3H,s),4.46(2H,t),7.64(1H,m)、7.81(2H,m)
化合物番号95:0.90(3H,t),1.36(8H,m),1.82(2H,quin),2.60(3H,s),4.46(2H,t),7.67(1H,d),7.74(1H,s),8.03(1H,d)
化合物番号96:0.88(3H,t),1.37(8H,m),1.82(2H,quin),2.74(3H,s),4.47(2H,t),7.73(2H,m)、7.97(1H,d)
化合物番号100:0.89(3H,t),1.39(8H,m),1.82(2H,quin),4.48(2H,t),7.85(2H,m),8.06(1H,d)
【実施例6】
【0079】
粉剤
化合物番号5の化合物2%、珪藻土5%及びクレー93%を均一に混合粉砕して粉剤とした。又、化合物番号5に代えて、表1〜4に記載の化合物各々を用いて同様に粉剤を得ることができる。
【実施例7】
【0080】
水和剤
化合物番号13の化合物50%、珪藻土45%、ジナフチルメタンジスルホン酸ナトリウム2%及びリグニンスルホン酸ナトリウム3%を均一に混合粉砕して水和剤とした。又、化合物番号13に代えて、表1〜4に記載の化合物各々を用いて同様に水和剤を得ることができる。
【実施例8】
【0081】
乳剤
化合物番号70の化合物30%、シクロヘキサノン20%、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル11%、アルキルベンゼンスルホン酸カルシウム4%及びメチルナフタリン35%を均一に溶解して乳剤とした。又、化合物番号70に代えて、表1〜4に記載の化合物各々を用いて同様に乳剤を得ることができる。
【実施例9】
【0082】
粒剤
化合物番号92の化合物24%、ラウリルアルコール硫酸エステルのナトリウム塩2%、リグニンスルホン酸ナトリウム5%、カルボキシメチルセルロース2%及びクレー67%を均一に混合粉砕する。この混合物に水20%相当量を加えて練合し、押出式造粒機を用いて14〜32メッシュの粒状に加工したのち、乾燥して粒剤とした。又、化合物番号92に代えて、表1〜4に記載の化合物各々を用いて同様に粒剤を得ることができる。
【0083】
次に、本発明の農園芸用植物病害防除剤の奏する効果について試験例をあげて具体的に説明する。
【0084】
試験例1 イネいもち病水面施用試験
直径9cmの白磁鉢に1.5葉期の水稲(品種:愛知旭)稚苗を3茎ずつ4カ所に移植し、温室内で育成した。2.5葉期に、実施例7に準じて調製した水和剤を有効成分濃度が10アールあたり1000gになるように鉢に水面施用処理をした。処理10日後に、イネいもち病菌(Pyricularia oryzae)の分生胞子懸濁液を噴霧接種し、直ちに25℃の湿室内に24時間入れた。その後、温室内に移し、接種5日後に接種時の最高位葉の病斑数を調査した。数1により防除価を求め、表6の基準により評価した。結果を表7に示した。
【0085】
【数1】


【0086】
【表6】

【0087】
【表7】

【0088】
試験例2 イネいもち病育苗箱施用試験
イネ用の育苗箱(サイズ:縦30cm×横60cm×高さ3cm)に人工培土を詰め、1箱当たりイネ(品種;愛知旭)の種籾180g(乾重量換算)を播種した。播種3週間後に、実施例9に準じて調製した粒剤を有効成分が箱当り12gになるように育苗箱に均一に処理した。処理4時間後に、イネの幼苗5茎を育苗培土ごと分け取り、1/10000アールのワグネルポットに移植した。処理40日後に、イネいもち病菌(Pyricularia oryzae)の分生胞子懸濁液を噴霧接種し、直ちに25℃の湿室内に24時間入れた。その後、温室内に移し、接種6日後に接種時の第2葉の病斑数を調査した。数1により防除価を求め、表6の基準により評価した。結果を表8に示した。
【0089】
【表8】

【0090】
試験例3 キュウリべと病予防効果試験
縦9cm×横9cmの塩化ビニル製鉢にキュウリ種子(品種:相模半白)を10粒ずつ播種し、温室内で7日間育成した。子葉が展開したキュウリ幼苗に実施例7に準じて調製した水和剤を、有効成分濃度が500ppmになるように水で希釈し、各々1鉢当たり15mlを噴霧散布した。風乾後、キュウリべと病菌(Pseudoperonospora cubensis)の分生胞子懸濁液を噴霧接種し、直ちに20℃の湿室内に24時間入れた。その後温室内に移し、7日後にポット全体の子葉の発病面積を調査し、表9の基準により評価した。結果を表10に示した。
【0091】
【表9】

【0092】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[I]
【化1】



[式中、Yは酸素原子又は硫黄原子を示し、
はYが硫黄原子の場合、C−C16アルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルキニル基、C−Cシクロアルキル基、C−C10ハロアルキル基、C−Cシアノアルキル基、C−CシクロアルキルC−Cアルキル基、C−CアルコキシC−Cアルキル基、C−CアルキルチオC−Cアルキル基、−W−Q基、−Q基又は−W−Q基を示し、
はYが酸素原子の場合、C−C16アルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルキニル基、C−Cシクロアルキル基、C−C10ハロアルキル基、C−Cシアノアルキル基、C−CシクロアルキルC−Cアルキル基、C−CアルコキシC−Cアルキル基、C−CアルキルチオC−Cアルキル基、−W−Q基、−Q基又は−W−Q基を示し、
Wは、C−Cアルキル基を示し、
Qは、フェニル基(該基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基又は−NR基で置換されてもよい)を示し、
は、同一若しくは相異なってよい酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される1個以上のヘテロ原子を有する炭素数3ないし10の複素環基(該基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基又は−NR基で置換されてもよい)を示し、
Xは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基又は−NR基を示し、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基又はフェニル基(該基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基又は−NR基で置換されてもよい)を示し、
及びRはそれぞれ独立に水素原子又はC−Cアルキル基を示し、
nは0から4の整数を示す]
で表される1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド誘導体又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする農園芸用植物病害防除剤。
【請求項2】
一般式[I’]
【化2】


[式中、Yは酸素原子又は硫黄原子を示し、
はYが硫黄原子の場合、C−C16アルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルキニル基、C−Cシクロアルキル基、C−C10ハロアルキル基、C−Cシアノアルキル基、C−CシクロアルキルC−Cアルキル基、C−CアルコキシC−Cアルキル基、C−CアルキルチオC−Cアルキル基、−W−Q基、−Q基又は−W−Q基を示し、
はYが酸素原子の場合、C−C16アルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルキニル基、C−Cシクロアルキル基、C−C10ハロアルキル基、C−Cシアノアルキル基、C−CシクロアルキルC−Cアルキル基、C−CアルコキシC−Cアルキル基、C−CアルキルチオC−Cアルキル基、Rより選択される任意の基で置換されたフェニルC−Cアルキル基、−Q基又は−W−Q基を示し、
Wは、C−Cアルキル基を示し、
Qは、フェニル基(該基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基又は−NR基で置換されてもよい)を示し、
は、同一若しくは相異なってよい酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される1個以上のヘテロ原子を有する炭素数3ないし10の複素環基(該基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基又は−NR基で置換されてもよい)を示し、
Xは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基、−NR基を示し、
及びRはそれぞれ独立に水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基又はフェニル基(該基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基又は−NR基で置換されてもよい)を示し、
及びRはそれぞれ独立に水素原子又はC−Cアルキル基を示し、
はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−Cハロアルキル基、C−Cハロアルコキシ基又は−NR基を示し、
nは0から4の整数を示す]
で表される1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド誘導体又はその塩。
【請求項3】
請求項2記載の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1,1−ジオキシド誘導体又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする農園芸用植物病害防除剤。

【国際公開番号】WO2005/079576
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【発行日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510263(P2006−510263)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002710
【国際出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000000169)クミアイ化学工業株式会社 (86)
【出願人】(000102049)イハラケミカル工業株式会社 (48)
【Fターム(参考)】