説明

2ワイヤ溶接トーチ、およびこれを用いた2ワイヤ溶接装置

【課題】2ワイヤ溶接を円滑に行うことが可能な2ワイヤ溶接トーチおよびこれを用いた2ワイヤ溶接装置を提供すること。
【解決手段】溶接方向前方に位置するワイヤWAおよび上記溶接方向後方に位置するワイヤWBを保持するワイヤ保持手段2を備える2ワイヤ溶接トーチA7であって、ワイヤ保持手段2は、ワイヤWAおよびワイヤWBの少なくともいずれか一方を、ワイヤWA,WBが延びる方向廻りに偏心回転動させることにより、ワイヤWAおよびワイヤWBの先端間距離Lを変更可能に構成されている。このような構成により、ワイヤWA,WB間の先端距離Lを溶接母材の板厚や溶接速度に適した大きさに設定することが可能であり、円滑な2ワイヤ溶接を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行ワイヤと後行ワイヤとを用いた溶接を行う2ワイヤ溶接トーチおよびこれを用いた2ワイヤ溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消耗電極ワイヤとフィラーワイヤとを用いた2ワイヤ溶接は、溶接速度を向上させ、かつ溶接ビードの美観を良好とするための一手法として知られている(たとえば、特許文献1)。図16は、従来の2ワイヤ溶接装置の一例を示している。同図に示された2ワイヤ溶接装置には、ノズルチップ91A,91Bを備える2ワイヤ溶接トーチが用いられる。ノズルチップ91Aを通して、ワイヤWAが供給される。また、ワイヤWAに対して溶接方向後方から、ノズルチップ91Bを通してフィラーワイヤWBが供給される。
【0003】
ワイヤWAは、溶接電源(図示略)に接続されている。この溶接電源は、ワイヤWAと溶接母材Pとの間に電圧を印加する。これにより、ワイヤWAから溶接母材Pに向かうアーク92が発生する。ワイヤWAは、アーク92の強さに応じた速度で、供給装置(図示略)から送給される。一方、フィラーワイヤWBは、アーク92によって生じた溶融池Mpに向けて送給装置(図示略)によって送給される。フィラーワイヤWBは、溶融池Mpの熱によって溶解される。この結果、溶融したワイヤWA、フィラーワイヤWB、および溶接母材Pが合金状態で凝固することにより、溶接ビードWpが形成される。
【0004】
しかしながら、たとえば、ワイヤWAとワイヤWBとの距離が大きすぎると、ワイヤWBが溶融池Mpから外れてしまう。このような場合、ワイヤWBは十分に溶融されず、折れ曲がってしまうおそれがある。ワイヤWAとワイヤWBとの距離を小さくすると、ノズルチップ91A,91Bどうしや、上記2ワイヤ溶接トーチのうちノズルチップ91A,91Bを保持する部分どうしが干渉してしまうという問題がある。このように、2ワイヤ溶接においては、溶接母材Pの板厚や溶接速度などの溶接条件に応じて、ワイヤWA,WB間の距離を適切に設定することが極めて重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−175458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、2ワイヤ溶接を円滑に行うことが可能な2ワイヤ溶接トーチおよびこれを用いた2ワイヤ溶接装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によって提供される2ワイヤ溶接トーチは、溶接方向前方に位置する第1ワイヤおよび上記溶接方向後方に位置する第2ワイヤを保持するワイヤ保持手段を備える2ワイヤ溶接トーチであって、上記ワイヤ保持手段は、上記第1および第2ワイヤの少なくともいずれか一方を、上記第1および第2ワイヤが延びる方向廻りに偏心回転動させることにより、上記第1ワイヤおよび上記第2ワイヤの先端間距離を変更可能に構成されていることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、上記先端間距離を溶接条件に合わせて適宜設定することが可能であり、2ワイヤ溶接を円滑に行うことができる。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記ワイヤ保持手段は、上記第1および第2ワイヤを、これらの先端に向かうほど互いの間隔が小となるように相対的に傾いた姿勢で保持する。このような構成によれば、上記第1および第2ワイヤを保持するための部分どうしが干渉することを抑制しつつ、上記先端間距離を縮小するのに有利である。
【0010】
本発明の第2の側面によって提供される2ワイヤ溶接装置は、本発明の第1の側面によって提供される2ワイヤ溶接トーチと、少なくとも上記第1ワイヤと溶接対象物との間に第1アークを生じさせる溶接電源と、を備えることを特徴としている。このような構成によれば、2ワイヤ溶接を円滑に行うことができる。
【0011】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる2ワイヤ溶接装置を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチを示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチを示す断面図である。
【図4】本発明にかかる2ワイヤ溶接装置を示すシステム構成図である。
【図5】本発明の第2実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチに用いられる下アタッチメントおよび絶縁スリーブを示す分解斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチを示す要部側面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチを示す要部側面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチを示す要部断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチを示す要部側面図である。
【図10】図9のX−X線に沿う断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチを示す要部側面図である。
【図12】本発明の第5実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチを示す要部側面図である。
【図13】本発明の第6実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチを示す要部側面図である。
【図14】本発明の第7実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチを示す要部側面図である。
【図15】本発明の第7実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチを示す要部底面図である。
【図16】従来の2ワイヤ溶接トーチの一例を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係る2ワイヤ溶接装置の一例を示している。本実施形態の2ワイヤ溶接装置Bは、2ワイヤ溶接トーチA1、ワイヤ送給装置AWF,BWF、溶接電源PS、ロボットRB、ロボットコントローラRCを備えている。2ワイヤ溶接装置Bは、ワイヤWA,WBを用いた2ワイヤ溶接を行う。
【0015】
2ワイヤ溶接トーチA1は、ロボットRBに装着されており、ワイヤWA,WBを溶接母材Pへと導くためのものである。図2に示すように、2ワイヤ溶接トーチA1は、フード1およびワイヤ支持手段2を備えて構成されている。フード1は、たとえばCuからなる円筒形状であり、ワイヤ支持手段2の一部を囲っている。
【0016】
ワイヤ支持手段2は、2つのワイヤWA、WBを保持するものであり、ガイドパイプ20A,20B、絶縁スリーブ21A,21B、ノズルチップ22A,22B、下アタッチメント23、上アタッチメント24を有している。
【0017】
ガイドパイプ20A,20Bは、上方から送られてきたワイヤWA,WBを溶接母材Pに向かって下方にガイドするものである。ノズルチップ22A,22Bは、ガイドパイプ20A,20Bの先端に取り付けられており、ワイヤWA,WBが挿通している。
【0018】
絶縁スリーブ21A,21Bは、たとえば絶縁性の樹脂からなりガイドパイプ20A,20Bに嵌められている。絶縁スリーブ21A,21Bは、長手方向中央部分に両端寄り部分よりも断面直径が大である部分が形成されている。下アタッチメント23は、たとえばCuなどの金属からなり、紙面奥行き方向において2分割構造とされている。下アタッチメント23には、絶縁スリーブ21A,21Bに嵌合する形状とされた2つの空隙部が形成されている。これらの空隙部はワイヤWA,WBの先端に向かうほど互いに距離が小となるように傾けられている。上述した2分割とされた部分どうしの間に絶縁スリーブ21A,21Bを挟み込んだ状態で、これらの2分割された部分がたとえばボルトなどで結合されている。下アタッチメント23に嵌合した絶縁スリーブ21A,21Bは、ワイヤWA,WBの先端に向かうほど互いの距離が小となるように傾斜している。下アタッチメント23は、フード1に対して上方から差し込まれており、フード1に対して着脱自在とされている。上アタッチメント24は、ガイドパイプ20A,20Bの上側に位置する絶縁材料によって形成された部分を保持しており、たとえば紙面奥行き方向において2分割構造とされている。上アタッチメント24には、ガイドパイプ20A,20Bが嵌合する2つの空隙部が形成されている。
【0019】
下アタッチメント23と上アタッチメント24とは、それぞれ複数種類が用意されている。ある下アタッチメント23が選択されると、ガイドパイプ20A,20Bどうしの傾きおよび距離が決定する。これによって決定されるガイドパイプ20A,20Bの上側部分どうしを適切に保持可能な上アタッチメント24が、この下アタッチメント23に対応して選択される。図示された下アタッチメント23および上アタッチメント24の場合、ワイヤWA,WBの先端間距離Lは、10mm程度である。
【0020】
図3は、図2とは異なる下アタッチメント23および上アタッチメント24が選択された場合の2ワイヤ溶接トーチA1を示している。図示された下アタッチメント23は、図2に示された下アタッチメント23よりも、絶縁スリーブ21A,21Bがなす角度が大きくなる姿勢で絶縁スリーブ21A,21Bを保持する。これに対応して、図3に示された上アタッチメント24は、ガイドパイプ20A,20Bの上側部分どうしを、図2に示された上アタッチメント24よりも離間させた状態で保持する。この結果、先端間距離Lは、5mm程度に設定される。このように、2ワイヤ溶接トーチA1のワイヤ支持手段2は、下アタッチメント23と上アタッチメント24を交換することにより、ワイヤWA,WBが互いになす角度を変更可能に、すなわちワイヤWA,WBを相対的に回転移動させることが可能となっている。
【0021】
ワイヤ送給装置AWF,BWFは、それぞれワイヤWA,WBを送給するためのものであり、たとえばモータ(図示略)などの駆動源を有している。ワイヤ送給装置AWF,BWFは、溶接電源PSからの指令により、溶接条件にあった送給速度AVf、BVfでワイヤWAおよびワイヤWBを送給する。ワイヤ送給装置AWFと2ワイヤ溶接トーチA1との間には通電用端子CpAが設けられている。通電用端子CpAは、ワイヤWAを挿通させつつ、ワイヤWAに導通している。同様に、ワイヤ送給装置BWFと2ワイヤ溶接トーチA1との間には通電用端子CpBが設けられている。
【0022】
ロボットコントローラRCは、ロボットRBの動作を制御する機能と、溶接電源PSに対してアーク電流設定信号Ias,Ibs、アーク電圧設定信号Vas,Vbs、および送給速度設定信号AWf,BWfを出力する機能とを有する。ロボットコントローラRCには、ティーチペンダントTPが設けられている。ティーチペンダントTPは、溶接作業者がティーチング作業によってロボットRBの動作をプログラミング入力するとともに、溶接条件を入力する。これらの入力された動作や溶接条件から、ロボットコントローラRCは、あらかじめ搭載されたプログラムによりアーク電流設定信号Ias,Ibs、アーク電圧設定信号Vas,Vbs、および送給速度設定信号AWf,BWfを生成する。
【0023】
溶接電源PSは、ワイヤWAまたはワイヤWBと溶接母材Pとの間にアークAca,Acbを発生させるための電源であり、溶接電源回路APS,BPSを備えている。溶接電源回路APSは、通電用端子CpAに接続されており、ワイヤWAからアークAcaを発生させるための電圧を印加することによりアーク電流Iawを流す。図1は、ワイヤWAを消耗電極ワイヤとして用いており、ワイヤWAからアークAcaを発生させている。また、ワイヤWBをフィラーワイヤとして用いており、ワイヤWBからはアークを発生させていない。一方、図4は、ワイヤWA,WBの双方からアークAca,Acbを発生させる溶接形態を示している。この場合、溶接電源回路BPSは、通電用端子CpBを介してワイヤWBからアークAcbを発生させるための電圧を印加することによりアーク電流Ibwを流す。図1および図4のいずれの溶接形態で溶接するかは、ティーチペンダントTPに対する入力作業によって作業者が選択可能である。この選択にしたがって、アーク電流設定信号Ias,Ibsが生成される。また、溶接電源PSからワイヤ送給装置AWF,BWFには、送給速度設定信号AWf,BWfが送られる。
【0024】
次に、2ワイヤ溶接トーチA1および2ワイヤ溶接装置Bの作用について説明する。
【0025】
本実施形態によれば、ワイヤWA,WBの先端間距離Lを溶接条件に合わせて適宜変更可能である。特にワイヤWA,WBを傾けた姿勢で回転移動させることにより、先端間距離Lをたとえば5mm程度に設定可能である。先端間距離Lが小さく、ワイヤWA,WBの先端どうしが比較的近接した設定は、図1に示すワイヤWBをフィラーワイヤとして用いる溶接形態において、ワイヤWBを溶融池Mpに確実に投入し溶融させるのに適しており、2ワイヤ溶接を円滑に行うことができる。また、ワイヤWA,WBを先端に向かうほど間隔が小となるように傾けておくことにより、ガイドパイプ20A,20Bなどの2ワイヤ溶接トーチA1の構成部品どうしが干渉することを回避することができる。
【0026】
下アタッチメント23および上アタッチメント24を交換することにより、先端間距離Lを任意に設定可能である。下アタッチメント23および上アタッチメント24を組み込んだ構造は、先端間距離Lを調整可能であるにもかかわらず比較的シンプルである。また、下アタッチメント23と絶縁スリーブ21A,21Bとを嵌合させることにより、ワイヤWA,WBが不当に導通してしまうことを防止することができる。
【0027】
図5〜図15は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。なお、図6〜図9、図11〜14においては、フード1およびガイドパイプ20A,20Bを理解の便宜上省略している。
【0028】
図5〜図7は、本発明の第2実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチと、それに用いられる下アタッチメント23および絶縁スリーブ21A,21Bを示している。図5に示すように、本実施形態の2ワイヤ溶接トーチA2においては、下アタッチメント23は、ブロック23A,23Bからなる。ブロック23Aには、2つの貫通孔23Aaが形成されており、ブロック23Bには、2つの貫通孔23Baが形成されている。絶縁スリーブ21A,21Bには、それぞれの長手方向中央において互いに反対方向に突出する2つずつの突起21Aa,21Baが設けられている。絶縁スリーブ21A,21Bは、突起21Aa,21Baが貫通孔23Aa,23Baに挿入された状態で下アタッチメント23に取り付けられている。これにより、絶縁スリーブ21A,21Bは、下アタッチメント23に対して回転可能とされている。
【0029】
図6および図7に示すように、2ワイヤ溶接トーチA2は、下アタッチメント23に対する絶縁スリーブ21A,21Bの角度を変更することにより、先端間距離Lを調整することができる。上アタッチメント24は、ワイヤWA,WBを保持している。上アタッチメント24としては、ワイヤWA,WBを固定された間隔で保持可能なものを複数種類用意し、先端間距離Lに応じて適宜交換する構成でもよいし、ワイヤWA,WBを任意の間隔で固定可能な構成であってもよい。
【0030】
このような実施形態によっても先端間距離Lを自在に設定可能であり、2ワイヤ溶接を円滑に行うことができる。絶縁スリーブ21A,21Bを下アタッチメント23に対して回転可能とすることにより、先端間距離Lを連続的に変更することができる。
【0031】
図8は、本発明の第3実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチを示している。本実施形態の2ワイヤ溶接トーチA3は、下アタッチメント23に対する絶縁スリーブ21A,21Bの支持構造が上述した実施形態と異なっている。本実施形態においては、絶縁スリーブ21A,21Bに雄ネジ21Ab,21Bbが形成されている。一方、下アタッチメント23には、雄ネジ21Ab,21Bbと螺号する2つの雌ネジ23aが形成されている。絶縁スリーブ21A,21Bには、グリップ21Aa,21Baが設けられており、これらのグリップ21Aa,21Baを把持しながら絶縁スリーブ21A,21Bを回転させることにより、絶縁スリーブ21A,21Bを下アタッチメント23に対して進退動させることができる。このような構成によっても先端間距離Lを連続的に変更可能であり、2ワイヤ溶接を円滑に行うことができる。
【0032】
図9〜図11は、本発明の第4実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチを示している。本実施形態の2ワイヤ溶接トーチA4は、下アタッチメント23および上アタッチメント24をそれぞれ交換することにより、ワイヤWA,WBを互いに並進移動させる構成となっている。図10に示すように、下アタッチメント23は、2つの嵌合部23bとこれらを連結する連結部23cとを有する、スパナに似た形状とされている。嵌合部23bは、C字状であり、絶縁スリーブ21A,21Bに嵌合する。同様に、上アタッチメント24は、2つの嵌合部24bとこれらを連結する連結部24cを有するスパナに似た形状とされている。本実施形態においては、寸法が異なる複数種類の下アタッチメント23および上アタッチメント24から適宜選択することにより、先端間距離Lを任意の大きさに設定することができる。
【0033】
図12は、本発明の第5実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチを示している。本実施形態の2ワイヤ溶接トーチA5は、ワイヤ保持手段2が調整ロッド26および支持ブロック25A,25Bを有する構成とされており、ワイヤWA,WBを互いに並進移動させる構成となっている。支持ブロック25A,25Bは、絶縁スリーブ21A,21Bに取り付けられており、溶接方向を向く雌ねじが形成されている。調整ロッド26は、グリップ26aおよびロッド26bからなる。ロッド26bは、雄ネジが形成されており、支持ブロック25A,25Bの上記雌ネジと螺合している。グリップ26aを回転させることにより、ワイヤWA,WBが互いに並進移動する。このような構成によっても、先端間距離Lを変更自在であり、2ワイヤ溶接を円滑に行うことができる。
【0034】
図13は、本発明の第6実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチを示している。本実施形態の2ワイヤ溶接トーチA6においては、ワイヤ保持手段2は、上述した2ワイヤ溶接トーチA2の下アタッチメント23および絶縁スリーブ21A,21Bと、ワイヤ間距離調整手段としての調整ロッド26および支持ブロック25A,25Bとを備えている。本実施形態においては、調整ロッド26を回転させることにより、ワイヤWA,WBを相対的に回転移動させることができる。このような構成によっても先端間距離Lを調整することができる。
【0035】
図14および図15は、本発明の第7実施形態に基づく2ワイヤ溶接トーチを示している。本実施形態の2ワイヤ溶接トーチA7においては、ワイヤ保持手段2は、支持ブロック25およびスイングロッド27を有している。スイングロッド27は、直角に屈曲した形状とされており、一端が支持ブロック25に回転可能に支持されており、他端に絶縁スリーブ21Bが取り付けられている。支持ブロック25は、ワイヤWAを支持しているが、ワイヤWBは支持していない。図15に示すように、スイングロッド27を支持ブロック25に対してスイングさせると、先端間距離Lを連続的に変更することができる。本実施形態においては、スイングロッド27のスイングによって、ワイヤWA、WBの先端どうしを結ぶ方向が変わる。これの先端どうしを結んだ方向を、溶接方向に合わせて2ワイヤ溶接を行う。
【0036】
本発明に係る2ワイヤ溶接トーチおよびこれを用いた2ワイヤ溶接装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る2ワイヤ溶接トーチおよびこれを用いた2ワイヤ溶接装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0037】
A1,A2,A2,A4,A5,A6,A7 2ワイヤ溶接トーチ
APS,BPS 溶接電源回路
AWF,BWF ワイヤ送給装置
AWf,BWf 送給速度設定信号CpA,CpB 通電用端子
Ias,Ibs アーク電流設定信号
Iaw,Ibw アーク電流
Mp 溶融池
P 溶接母材(溶接対象物)
PS 溶接電源
RB ロボット
RC ロボットコントローラ
TP ティーチペンダント
Vas,Vbs アーク電圧設定信号
WA (第1)ワイヤ
WB (第2)ワイヤ
Wp 溶接ビード
1 フード
2 ワイヤ支持手段
21A (第1)絶縁スリーブ
21B (第2)絶縁スリーブ
21Aa,21Ba 突起
22A,22B ノズルチップ
23 下アタッチメント(第1アタッチメント)
23a 貫通孔
23b 嵌合部
23c 連結部
24 上アタッチメント(第2アタッチメント)
24b 嵌合部
24c 連結部
25 支持ブロック
25A 支持ブロック(第1ブロック)
25B 支持ブロック(第2ブロック)
26 調整ロッド
26a グリップ
26b ロッド
27 スイングロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接方向前方に位置する第1ワイヤおよび上記溶接方向後方に位置する第2ワイヤを保持するワイヤ保持手段を備える2ワイヤ溶接トーチであって、
上記ワイヤ保持手段は、上記第1および第2ワイヤの少なくともいずれか一方を、上記第1および第2ワイヤが延びる方向廻りに偏心回転動させることにより、上記第1ワイヤおよび上記第2ワイヤの先端間距離を変更可能に構成されていることを特徴とする、2ワイヤ溶接トーチ。
【請求項2】
上記ワイヤ保持手段は、上記第1および第2ワイヤを、これらの先端に向かうほど互いの間隔が小となるように相対的に傾いた姿勢で保持する、請求項1に記載の2ワイヤ溶接トーチ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の2ワイヤ溶接トーチと、
少なくとも上記第1ワイヤと溶接対象物との間に第1アークを生じさせる溶接電源と、を備えることを特徴とする、2ワイヤ溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−39624(P2013−39624A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−262514(P2012−262514)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2008−251064(P2008−251064)の分割
【原出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】