説明

2本の柱を連結する梁を含む建物

【課題】水平方向に間隔を置かれた2本の柱と、該柱とを連結する梁とを含む建物において、前記柱の一方と他方との間の間隔を広くしても、前記梁の高さ寸法を大きくすることなく前記梁が曲げモーメントを負担できるようにすること。
【解決手段】建物は、水平方向に間隔を置かれた2本の柱と、該柱を連結する梁と、該梁の両側方に配置された2つの補強部材であってそれぞれの一端部が前記柱の一方に固定され、他端部が前記梁に前記一方の柱から他方の柱に向けて間隔を置かれた位置で固定された2つの補強部材とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に間隔を置かれた2本の柱と、該柱を連結する梁とを含む建物に関する。
【背景技術】
【0002】
建物には、水平方向に間隔を置かれた2本の柱と、該柱を連結する梁とを含むものがある。前記梁は、前記柱の一方に固定された一端部と、前記柱の他方に固定された他端部とを有し、前記一方の柱と前記他方の柱とに支持されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−163630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、前記建物が商業施設、倉庫、工場等に用いられる場合、前記梁のスパンをより長くし、前記一方の柱と前記他方の柱との間の間隔をより広くし、前記一方の柱及び前記他方の柱による制約を受けずに前記建物の内部の空間を有効に利用できるようにすることが求められている。しかし、前記梁のスパンを長くすると、前記梁に作用する鉛直荷重により前記梁に生じる曲げモーメントが大きくなる。このため、前記梁が前記曲げモーメントを負担できるようにするために前記梁の高さ寸法を大きくしなければならず、不経済となる。
【0005】
本発明の目的は、水平方向に間隔を置かれた2本の柱と、該柱とを連結する梁とを含む建物において、前記柱の一方と他方との間の間隔を広くしても、前記梁の高さ寸法を大きくすることなく前記梁が曲げモーメントを負担できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、補強部材の一端部が前記一方の柱に固定されかつ該補強部材の他端部が前記梁に前記一方の柱から前記他方の柱に向けて間隔を置かれた位置で固定されていることにより、前記梁が前記一方の柱から前記他方の柱に向けて間隔を置かれた位置で前記補強部材に支持されるようにし、前記梁のスパンが短くなるようにし、鉛直荷重により前記梁に生じる曲げモーメントが小さくなるようにする。これにより、前記一方の柱と前記他方の柱との間の間隔を広くしても、前記梁の高さ寸法を大きくすることなく前記梁が前記曲げモーメントを負担できるようにする。
【0007】
本発明に係る建物は、水平方向に間隔を置かれた2本の柱と、該柱を連結する梁と、該梁の両側方に配置された2つの補強部材であってそれぞれの一端部が前記柱の一方に固定され、他端部が前記梁に前記一方の柱から他方の柱に向けて間隔を置かれた位置で固定された2つの補強部材とを含む。
【0008】
各補強部材の前記一端部が前記一方の柱に固定されかつ該補強部材の前記他端部が前記梁に前記一方の柱から前記他方の柱に向けて間隔を置かれた位置で固定されているため、前記梁が前記一方の柱から前記他方の柱に向けて間隔を置かれた位置で前記補強部材に支持される。これにより、前記梁が前記一方の柱と前記他方の柱とに支持される従来の場合と比べて前記梁のスパンを短くすることができ、前記梁に作用する鉛直荷重により前記梁に生じる曲げモーメントを小さくすることができる。このため、前記一方の柱と前記他方の柱との間の間隔を広くしても、前記曲げモーメントが大きくならないようにすることができ、前記梁の高さ寸法を大きくすることなく前記梁が前記曲げモーメントを負担できるようにすることができる。
【0009】
前記建物は、前記一方の柱に固定された、該一方の柱を取り巻く管状部材を含むものとすることができる。この場合、前記梁は、前記管状部材を介して前記一方の柱に固定された一端部と、前記他方の柱に固定された他端部とを有し、各補強部材の前記一端部は前記管状部材を介して前記一方の柱に固定されている。前記一方の柱は、鉄筋コンクリートからなるものとすることができる。前記梁は、鉄骨からなるものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前記補強部材の前記一端部が前記一方の柱に固定されかつ該補強部材の前記他端部が前記梁に前記一方の柱から前記他方の柱に向けて間隔を置かれた位置で固定されているため、前記梁が前記一方の柱から前記他方の柱に向けて間隔を置かれた位置で前記補強部材に支持される。これにより、前記梁が前記一方の柱と前記他方の柱とに支持される従来の場合と比べて前記梁のスパンを短くすることができ、鉛直荷重により前記梁に生じる曲げモーメントを小さくすることができる。このため、前記一方の柱と前記他方の柱との間の間隔を広くしても、前記梁の高さ寸法を大きくすることなく前記梁が前記曲げモーメントを負担できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施例に係る建物の縦断面図。
【図2】図1の線2における建物の水平断面図。
【図3】図2の線3における柱の水平断面図。
【図4】図3の線4における梁の側面図。
【図5】図3の線5における柱の縦断面図。
【図6】図3の線6における梁の断面図。
【図7】本発明の第2実施例に係る柱の水平断面図。
【図8】本発明の第3実施例に係る柱の水平断面図。
【図9】本発明の第4実施例に係る柱の縦断面図。
【図10】本発明の第5実施例に係る柱の縦断面図。
【図11】本発明の第6実施例に係る柱の水平断面図。
【図12】本発明の第7実施例に係る柱の水平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、第1水平方向(図1における左右方向)に間隔を置かれた2本の柱10、12と、該柱を連結する梁14とを含む建物16が存在する。
【0013】
図2に示すように、2本の柱10、12のうち一方の柱10は、鉄筋コンクリート製であり、コンクリートからなる本体18と、該本体の内部に配置された複数の主筋20とを有する。本体18は上下方向に伸びている。複数の主筋20は本体18の周方向に互いに間隔を置かれており、各主筋20は本体18の軸線に平行である。
【0014】
梁14は鉄骨からなる。前記鉄骨は、図3ないし6に示すように、間隔を置かれた、相対する上方フランジ22及び下方フランジ24と、上方フランジ22と下方フランジ24との間にあるウェブ26とを有するH形鋼28である。梁14の一端部30は一方の柱10に固定され、梁14の一端部32は他方の柱12に固定されている。
【0015】
建物16は、一方の柱10に固定された、該一方の柱を取り巻く管状部材34を含み、梁14の一端部30は管状部材34を介して一方の柱10に固定されている。管状部材34は鋼製である。
【0016】
梁14の一端部30は結合手段36を介して管状部材34に結合されている。結合手段36は、管状部材34に結合されたプレート38と、相対する2つの添接板40であってそれぞれがプレート38と梁14のウェブ26とに接する2つの添接板40と、それぞれが該添接板とプレート38とを貫く複数のボルト42と、各ボルトに螺合されたナット44と、それぞれが添接板40とウェブ26とを貫く複数のボルト46と、各ボルトに螺合されたナット48とからなる。
【0017】
建物16は、梁14の両側方に配置された2つの補強部材50を含む。各補強部材50の一端部52は管状部材34を介して一方の柱10に固定され、補強部材50の他端部54は梁14に一方の柱10から他方の柱12に向けて間隔を置かれた位置(第1位置)56で固定されている。
【0018】
補強部材50は、トラス構造であり、間隔を置かれた上弦材50a及び下弦材50bと、上弦材50aと下弦材50bとを連結する斜材50cと、上弦材50aと下弦材50bとを連結する垂直材50dとを備える(図4)。補強部材50は鋼製である。斜材50cは図示の向き(左上から右下方向)と逆の向きに設けてもよい。
【0019】
補強部材50の他端部54は固定手段58を介して梁14に固定されている。固定手段58は、補強部材50の他端部54に結合された補強部材側プレート60と、梁14のウェブ26に結合された梁側プレート62と、相対する2つの2つの添接板64であってそれぞれが補強部材側プレート60と梁側プレート62とに接する2つの添接板64と、それぞれが該添接板と補強部材側プレート60とを貫く複数のボルト66と、各ボルトに螺合されたナット68と、それぞれが添接板64と梁側プレート62とを貫く複数のボルト70と、各ボルトに螺合されたナット72とからなる。
【0020】
他方の柱12は、一方の柱10と同様に、鉄筋コンクリート製であり、コンクリートからなる本体18’と、該本体の内部に配置された複数の主筋20’とを有する(図2)。建物16は、他方の柱12に固定された、該他方の柱を取り巻く管状部材34’を含み、梁14の一端部32は管状部材34’を介して他方の柱12に固定されている。
【0021】
建物16は、補強部材(第1補強部材)50に加え、梁14の両側方に配置された2つの第2補強部材50’であってそれぞれの一端部52’が管状部材34’を介して他方の柱12に固定され、他端部54’が梁14に他方の柱12から一方の柱10に向けて間隔を置かれた第2位置56’で固定された2つの第2補強部材50’を含む。
【0022】
第1補強部材50の一端部52が一方の柱10に固定されかつ他端部54が梁14に一方の柱10から他方の柱12に向けて間隔を置かれた第1位置56で固定されているため、梁14は一方の柱10から他方の柱12に向けて間隔を置かれた第1位置56で第1補強部材50に支持される。また、第2補強部材50’の一端部52’が他方の柱12に固定されかつ他端部54’が梁14に他方の柱12から一方の柱10に向けて間隔を置かれた第2位置56’で固定されているため、梁14は他方の柱12から一方の柱10に向けて間隔を置かれた第2位置56’で第2補強部材50’に支持される。このように梁14が第1位置56で第1補強部材50に、第2位置56’で第2補強部材50’にそれぞれ支持されることにより、梁14が一方の柱10と他方の柱12とに支持される従来の場合と比べて梁14のスパンを短くすることができ、鉛直荷重により梁14に生じる曲げモーメントを小さくすることができる。これにより、一方の柱10と他方の柱12との間の間隔を広くしても、前記曲げモーメントが大きくならないようにすることができ、梁14の高さ寸法を大きくすることなく梁14が前記曲げモーメントを負担できるようにすることができる。
【0023】
補強部材50は、トラス構造である図4に示した例に代え、H形鋼、I形鋼、溝形鋼等のような形鋼からなるものとすることができ、鋼管からなるものとすることができ、鋼板を組み合わせて製作されたものとすることができる。梁14の一端部30は、結合手段36を介して管状部材34に結合されている図5に示した例に代え、結合手段36を介さずに直接管状部材34に結合されたものとすることができる。この場合、例えば、梁14の一端部30は管状部材34に溶接されている。梁14は、H形鋼28からなる図5に示した例に代え、I形鋼や溝形鋼のような他の形鋼からなるものとすることができ、鋼管からなるものとすることができ、鋼板を組み合わせて製作されたものとすることができる。梁14は、鉄骨からなる図5に示した例に代え、鉄筋コンクリート製とすることができる。一方の柱10及び他方の柱12のそれぞれは、鉄筋コンクリート製である図5に示した例に代え、鉄骨からなるものとすることができる。建物16は、管状部材34を含む図5に示した例に代え、管状部材34を含まないものとすることができる。この場合、梁14の一端部30及び補強部材50の一端部52は管状部材34を介さずに直接一方の柱10に固定されている。
【0024】
図7に示す例では、建物16は、管状部材34の内面に固定された複数の棒状部材34aを有し、各棒状部材は管状部材34から一方の柱10の内部へ水平に伸びている。棒状部材34aは、スタッド、鉄筋等であり、管状部材34と一方の柱10との固定を強固にする。
【0025】
図8に示す例では、建物16は、管状部材34の内部に前記第1水平方向と直交する第2水平方向(図8における上下方向)に対して垂直に配置された第1板34bと、該第1板と交差する第2板34cであって管状部材34の内部に前記第1水平方向に対して垂直に配置された第2板34cとを含む。第1板34b及び第2板34cのそれぞれは管状部材34に固定されている。第1板34b及び第2板34cは管状部材34と一方の柱10との固定を強固にする。
【0026】
図9に示す例では、一方の柱10は、該一方の柱の外面に形成された突起10aを有し、管状部材34は一方の柱10の突起10aの上に位置する。一方の柱10の突起10aは管状部材34が一方の柱10からずれ落ちることを防ぐ。図10に示す例では、管状部材34は、該管状部材の外面が露出するように一方の柱10の内部に配置されている。管状部材34の前記外面は一方の柱10の外面と同一面上にある。管状部材34が一方の柱10の内部に配置されていることにより、管状部材34が一方の柱10からずれ落ちることを防ぐことができる。
【0027】
建物16は、一方の柱(第1柱)10、他方の柱(第2柱)12及び梁(第1梁)14に加え、第1柱10から第2柱12と反対側へ前記第1水平方向に間隔を置かれた第3柱(図示せず)と、該第3柱と第1柱10とを連結する第2梁74とを含む。第2梁74の一端部は、第1梁14の一端部30と同様に、管状部材34を介して第1柱10に固定されている。第2梁74の他端部は前記第3柱に固定されている。
【0028】
建物16は、図3に示したように、第2梁74の両側方に配置された2つの第3補強部材76を含む。各第3補強部材76の一端部78は管状部材34を介して第1柱10に固定され、第3補強部材76の他端部80は梁14に第1柱10から前記第3柱に向けて間隔を置かれた第3位置82で固定されている。
【0029】
第3補強部材76は、トラス構造であり、間隔を置かれた上弦材76a及び下弦材76bと、上弦材76aと下弦材76bとを連結する斜材76cと、上弦材76aと下弦材76bとを連結する垂直材76dとを備える(図4)。第3補強部材76は第1補強部材50と一体に形成されている。第3補強部材76は、第1補強部材50と一体に形成されている図3に示した例に代え、第1補強部材50と別個の部材でもよい。この場合、第3補強部材76は、第1補強部材50に連結されていてもよいし、第1補強部材50から間隔を置かれていてもよい。斜材76cは図示の向き(右上から左下方向)と逆の向きに設けてもよい。
【0030】
建物16は、第1柱10から前記第2水平方向に間隔を置かれた第4柱(図示せず)と、該第4柱と第1柱10とを連結する第3梁84と、第1柱10から前記第4柱と反対側へ前記第2水平方向に間隔を置かれた第5柱(図示せず)と、該第5柱と第1柱10とを連結する第4梁86とを含む。第3梁84の一端部は管状部材34を介して第1柱10に固定され、第3梁84の他端部は前記第4柱に固定されている。第4梁86の一端部は管状部材34を介して第1柱10に固定され、第4梁86の他端部は前記第5柱に固定されている。
【0031】
建物16は、第3梁84の両側方に配置された2つの第4補強部材88を含む。各第4補強部材88の一端部は管状部材34を介して第1柱10に固定され、第4補強部材88の他端部は梁14に第1柱10から前記第4柱に向けて間隔を置かれた第4位置で固定されている。2つの第4補強部材88のうち一方の第4補強部材88は第1補強部材50と交差し、他方の第4補強部材88は第3補強部材76と交差している。
【0032】
建物16は、第4梁86の両側方に配置された2つの第5補強部材90を含む。各第5補強部材90の一端部は管状部材34を介して第1柱10に固定され、第5補強部材90の他端部は梁14に第1柱10から前記第5柱に向けて間隔を置かれた第5位置で固定されている。2つの第5補強部材90のうち一方の第5補強部材90は第1補強部材50と交差し、他方の第5補強部材90は第3補強部材76と交差している。
【0033】
第5補強部材90は第4補強部材88と一体に形成されている。第5補強部材90は、第4補強部材88と一体に形成されている図3に示した例に代え、第4補強部材88と別個の部材でもよい。この場合、第5補強部材90は、第4補強部材88に連結されていてもよいし、第4補強部材88から間隔を置かれていてもよい。
【0034】
建物16は、第1梁14、第2梁74、第3梁84及び第4梁86の全てを含む図3に示した例に代え、図11に示すように、第4梁86を含まず、第1梁14、第2梁74及び第3梁84のみを含むものとすることができる。この場合、建物16は第5補強部材90を含まない。建物16は、第1梁14、第2梁74及び第3梁84のみを含む図11に示した例に代え、図12に示すように、第2梁74を含まず、第1梁14及び第3梁84のみを含むものとすることができる。この場合、建物16は第3補強部材76を含まない。
【符号の説明】
【0035】
10 一方の柱
12 他方の柱
14 梁
16 建物
34 管状部材
50 補強部材
52 一端部
54 他端部
56 位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に間隔を置かれた2本の柱と、
前記柱を連結する梁と、
前記梁の両側方に配置された2つの補強部材であってそれぞれの一端部が前記柱の一方に固定され、他端部が前記梁に前記一方の柱から他方の柱に向けて間隔を置かれた位置で固定された2つの補強部材とを含む、建物。
【請求項2】
前記一方の柱に固定され、該一方の柱を取り巻く管状部材を含み、
前記梁は、前記管状部材を介して前記一方の柱に固定された一端部と、前記他方の柱に固定された他端部とを有し、
各補強部材の前記一端部は前記管状部材を介して前記一方の柱に固定されている、請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記一方の柱は鉄筋コンクリートからなり、前記梁は鉄骨からなる、請求項1又は2に記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−113026(P2013−113026A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261247(P2011−261247)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】