説明

2軸穴明け機

【構成】 架台1に固定してある固定穴明けユニット3と、送りねじ25およびモータによりX方向に移動可能な可動ベース24上に可動穴明けユニット4とからなる1対の穴明けユニットを備えている。各ユニットには、撮像手段6,36および穴明け手段7,37を備えてある。モータによりY方向に移動可能なスライド台13,43上にX線カメラ9,39が設けてある。固定穴明けユニット3のX線発生器8に垂設してあるX線フード12には、回転クランパ装置28の構成要素である昇降可能かつ回転自在な押圧手段18が設けてある。
【作用】 プリント基板Pの一方の識別マークを、固定穴明けユニットのカメラの視野内に収め、このプリント基板Pを回転クランパ装置28でテーブル2上に保持し、回転クランパ装置28の中心軸を中心にして回転させ、他方の識別マークを可動側のカメラの視野内に入れ、クランパ装置48でテーブル2上に固定した後、両穴明け手段7,37で識別マークの中心に穴を明ける。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、プリント基板に予め形成されている穴明け位置識別用のパターンに基づいて、回路素子の取り付け用あるいは位置決め用の基準穴を明けるための2軸穴明け機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、プリント基板のスルーホールの穴明け等のガイドとして使用する基準穴を明けるための穴明け機として、プリント基板上に設けた穴明け位置識別用のパターンをTVカメラで撮像し、この画像信号によりパターンの中心位置を画像処理装置により算出し、この算出値に従ってXYテーブルに取り付けてあるプリント基板をXY方向に移動させ、穿孔部材によってパターンの中心位置に穴明けするものがある。
【0003】
1枚のプリント基板に2個の基準穴を明けるものとしては、通常振り分け式と呼ばれる、2個の穴明け位置識別用の基準穴マークを設け、その中心の距離を設計上の一定値にし、かつプリント基板のパターンの位置誤差が最小となるようにした完全自動の2軸穴明け機が採用されている。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
上記した完全自動の2軸振り分け式の穴明け機は、任意の穴明け方式を採用可能であり、設計上の任意の位置に2個の穴を容易に明けることができる。しかし、自動化のための構成が複雑化し、それだけに高価となり、これを採用して穴明けしたプリント基板のコスト高の原因になっている。
【0005】
また2軸穴明け機においては、2個の識別マークが1対の穴明けユニットの撮像手段の撮像領域内に入るようにプリント基板をセットすることが必要であり、この作業が面倒である。
【0006】
そこで本考案の目的は、構成を簡略化し、かつ簡単な操作により設計上の任意の位置に2軸振り分け方式により穴明け可能な2軸穴明け機を安価に提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本考案の2軸穴明け機は、少なくとも二つの識別パターンを有するプリント基板が載置されるテーブルと、識別パターンを撮像する撮像手段と撮像結果に基づいてプリント基板に穴明けする穴明け手段とをそれぞれ有する1対の穴明けユニットと、これらの穴明けユニットの少なくとも一方に設けられており、プリント基板をテーブルに対して押圧するとともに回転自在な押圧手段を含む回転クランパ装置とを備えており、回転クランパ装置は、押圧手段によりプリント基板をテーブルに押圧して離脱不能に保持した状態でそのプリント基板の回転を許容し得るものである。
【0008】
回転クランパ装置は、押圧手段と対向的にテーブル上に設けられている回転自在な座を含むものである。
【0009】
撮像手段は、X線発生器およびX線用カメラによって構成され、多種類のプリント基板の穴明けに適用可能であるとともに、X線発生器を構成するX線フードの先端部に押圧手段が装着してある。
【0010】
【実施例】
以下本考案の一実施例について、図面を参照して説明する。 図1〜図3に示すように、箱状の架台1の天井部には、平板状のテーブル2が設けてあり、このテーブル2を挟むようにして、固定穴明けユニット3と可動穴明けユニット4からなる1対の穴明けユニットが並設してある。
【0011】
はじめに、固定穴明けユニット3について説明する。 架台1の内側に形成してある支持部(図示略)上に固定穴明けユニット3を取り付けた固定ベース5が設けてある。固定穴明けユニット3は、撮像手段6および穴明け手段7を基本構成としている。
【0012】
撮像手段6は、X線発生器8とX線用カメラ9とを主たる構成要素としている。X線発生器8は、固定ベース5上に基端部を固定してある取り付けアーム10の上端部手前側に取り付けてある。取り付けアーム10は、角柱状の柱の上端部にテーブル2の手前側にやや被さるような状態に支持部を形成してあり、X線発生器8はこの取り付けアーム10の上端部に片持ち支持されている。
【0013】
X線発生器8は保護カバー8aによって保護されており、内部には外からの操作によってX線を発生するX線源器11を備えており、X線発生器で発生させたX線を、保護カバー8aの下部から下方に向けて照射可能に設けてある。保護カバー8aの下部には、X線の漏洩を防止しかつX線を一定方向に導くX線フード12が垂設してある。一方、X線用カメラ9は、取り付けアーム10の側方に、前後方向(Y方向)に移動自在に設けてあるスライド台13上に取り付け台14を介して設けてある。
【0014】
図2に示すように、スライド台13には、このスライド台を前後方向(Y方向)に移動させるモータ15が取り付けてある。モータ15は、図示しない画像処理装置によってX線用カメラ9で読み取った撮像結果に基づいて、スライド台13を穴明けに適する所定位置に移動可能である。
【0015】
スライド台13上のX線用カメラ9の奥側には、支持部材16(図1参照)を介して穴明け手段を構成する高速スピンドル7が設けてある。スピンドル7の上端部には、ドリル7aが設けてある。支持部材16上には、スピンドル上下用モータ17が設けてある。
【0016】
図1に示すように、X線フード12の下端部には、回転クランパ装置28の構成要素である押圧手段18が昇降可能かつ水平方向に回転自在に設けてある。テーブル2の押圧手段18と対向する位置には、回転クランパ装置28のもう一つの構成要素である回転自在な座19が設けてある。押圧手段18と座19との間に介在させたプリント基板は、押圧手段18を降下させることによって挟持可能であるとともに、挟持された状態で水平方向に回転自在である。
【0017】
図4に示すように、X線フード12は、中心部にX線の通路12aが設けてあり、下端部は外径を細くして段差部12bを設けた段付き筒体に形成してある。
押圧手段18は、キャップ状に形成してあり、X線フード12の段差部12bに、回転自在に嵌合している。押圧手段18の中心部には、X線フード12に設けてあるX線用の通路12aと連通するX線通過用の通路18aが設けてある。また、押圧手段18の上端部近傍の外周に、溝部18bが形成してある。溝部18bには、押圧手段18を上下に往復移動させるための保持アーム20の爪部20a,20aが係合している。
【0018】
保持アーム20の基端部は、X線フード12に揺動自在に支持されており、その中間位置には、ソレノイド(図示略)が設けられて、保持アームの他端部を中心にしてこれを揺動可能である。押圧手段18は、ソレノイドのフットスイッチを操作し、このソレノイドを作動させることにより、X線フード12の先端部で昇降可能となる。
【0019】
座19は、中心部に押圧手段18の通路18aと対向する穴部19aを有し、外周部は筒部19bとフランジ部19cとによって段差を有する形状に形成してある。筒部19bは、テーブル2の所定位置に設けてある貫通孔2bに嵌合しており、フランジ部19cは、テーブル2に設けてある貫通孔2bの上部に形成してある座ぐり孔部2cに嵌め合わせてある。座19の下端部には、筒部19aよりも大きい径に形成してある円板状の止め板21がビス22,22によって取り付けてあり、座19が上方へ浮上しないように固定してある。
【0020】
次に、可動穴明けユニット4について説明する。 図1〜図3に示すように、架台1内に形成してある支持部1b,1b上にレール23,23が右側の壁の内部から固定ベース5の近傍まで架け渡してある。各レール23上には可動ベース24が摺動可能に載置してある。
【0021】
可動ベース24の下方には、架台1の外側からハンドル25aを操作することにより回転可能な送りねじ25を備えている。送りねじ25は、レール23と同程度の長さを有し、可動ベース24の下面に取り付けてある移動用ナット26と螺合している。また、可動ベース24には、これを左右方向に移動させるモータ27(図3参照)が設けてある。したがって、可動ベース24は、送りねじ25のハンドル25aの操作およびモータ27の駆動により左右(X方向)に移動自在である。
【0022】
可動ベース24上には、図3に示す可動穴明けユニット4が設けてある。可動穴明けユニット4は、固定穴明けユニット3と同様の構成をしている。すなわち、撮像手段36,穴明け手段37,X線発生器38,X線用カメラ39,取り付けアーム40,X線用フード42,スライド台43,モータ47,押圧手段48aを含むクランパ装置48その他の構成要素を備えている。
【0023】
可動穴明けユニット4が設けてある側(図1右側)のテーブル2上には、突起2cが設けてある。突起2cは、固定穴明けユニット3側に設けてある座19がテーブル2の上面に突出している高さと同じ高さに形成してあり、図2に示すように、この突起2cの内側には、穴明け手段37のドリル37aが上昇した状態でX方向に移動可能な範囲に、長溝2dが形成してある。
【0024】
次に、本考案の操作法および動作について、図5に示すようなプリント基板Pの2か所に基準穴h1,h2をあける場合を例にとって説明する。 図6に断面図を示すように、プリント基板Pは、絶縁材51,52,53と銅箔54,55,56,57とを交互に積層してなる多層基板であり、内側の銅箔によって、穴明けすべき位置に識別パターン58が設けてある。この識別パターン58は、基板の内部に設けてあるために肉眼では識別不可能であるが、一方の面からX線を照射し、他方の面でX線用カメラによって、透過したX線像の濃淡を撮像することにより識別可能となる。
【0025】
上記した多層基板Pの識別パターン58の中心に穴明けするためには、この位置にスピンドルを移動させる必要がある。本考案によって実際に穴明けする場合には、X線用カメラの視野内に識別パターン58の影像を捕えてから、他方の識別パターンを可動穴明けユニット4のカメラ39の視野内に収めればよい。プリント基板に設けられた識別パターンをカメラの視野に収める作業は、面倒な操作を必要とするが、本考案では、図7に示すような治具板Gを用いることによってさらに容易に操作可能にした。
【0026】
治具板Gは、ゲージ鋼などの板材に、第1の標準穴61を設けておき、この標準穴61から、穴明けするプリント基板Pの識別パターンの中心間の距離と一致する距離Lに第2の標準穴62を設けておく。その他、別のプリント基板にも利用可能とするために、多数の標準穴63…を設けてある。
【0027】
本考案によってプリント基板Pに1つの穴を明け、その穴を基準としてその穴から所定距離の位置に2つめの穴を明ける、いわゆる振分け式による2軸穴明けは、次の要領で行う。
【0028】
(1)治具板Gをテーブル2の上面にわずかに突出している座19上に載置し、図8に示すように、第1の標準穴61の影像61aを、X線用カメラ9の視野9a内に収める。この状態で、回転クランパ装置28用のフットスイッチ(図示せず。)を踏むと、ソレノイドによって押圧手段18が降下し、治具板Gを座19と押圧手段18との間に挟み込んで押圧する。
【0029】
(2)次に、治具板Gを押圧手段18と座19とに設けてある穴の中心軸を中心として、テーブル2の上面に沿って回転させ、他端部を可動穴明けユニット4の領域に移動させる。
【0030】
(3)標準穴62が、可動穴明けユニット4のX線用カメラ39の視野内に入るように、送りねじ25のハンドル25aを回して、可動ベース24を介して可動穴明けユニット4を移動させる。標準穴62の影像がカメラの視野内に入ったときに、可動穴明けユニット4を固定する。2つの標準穴61,62がカメラ9,39の視野中央になくても穴の座標計算時に補正できるので、この操作はきわめて容易である。
【0031】
(4)可動穴明けユニット4の位置が確定したら、治具板Gを取り外し、穴明けすべきプリント基板Pの1つ目の識別パターン58が固定穴明けユニット3のカメラの視野内に入るようにテーブル2上にセットする。セットする要領は、治具板Gをセットするときと同様にして、まずプリント基板Pを押圧手段18と座19との間に挟み込み、テーブル2上に押圧した状態にする。
【0032】
(5)次に、プリント基板Pを、回転クランパ装置28の中心軸を中心として手動で回転させ、他方の識別パターンを、可動穴明けユニット4のX線用カメラ39の視野内にもってくる。カメラ39の位置は、すでに治具板Gを用いて定めてあるので、プリント基板Pを回転クランパ装置28を中心として回すだけでよい。このため、他方の識別パターンをカメラの視野内に入れるのはきわめて容易である。
【0033】
(6)他方の識別パターンを可動穴明けユニット4のX線用カメラ39の視野内に入れたら、フットスイッチを踏んで固定穴あけユニット3のときと同様の方法によりクランパ装置48を作動させる。この結果、押圧手段48aとテーブル2上に形成してある突起2cとによって、プリント基板Pはテーブル2上に押圧した状態に固定される。2つのX線用カメラ9、39によって識別パターンを撮造し、この撮像結果を画像処理装置によって処理することにより、穴明けすべき位置は容易に求められる。
【0034】
(7)穴明け位置が決まると、画像処理装置により初めに固定穴明けユニット3のスライド台13がモータ15によって前後方向に移動し、スピンドル7の先端に取り付けてあるドリル7aの先端を識別パターンの中心に合わせる。次に、モータ17によりスピンドル7が上昇し、ドリル7aが高速回転して識別パターンの中心位置に穴を明ける。
【0035】
(8)同様にして、可動穴明けユニット4の可動ベース24がX方向に移動し、スライド台36がY方向に移動し、穴明け位置にスピンドル37の位置を合わせ、モータ47によってスピンドル37が上昇し、ドリル37aでプリント基板Pの識別パターンの中心位置に穴を明ける。識別パターンがそれぞれのカメラの視野内に入っていれば、穴明けする中心位置は、画像処理装置による画像処理の結果に基づいて、自動的に識別パターンの中心位置に補正されるので、きわめて容易に定められた位置に穴h1,h2を明けることができる。
【0036】
本実施例では、プリント基板として多層基板に基準穴を明ける場合について適用しているが、本考案は、多層基板に限定される趣旨ではなく、通常のプリント基板の表面に識別パターンを施し、これらの識別パターン中心に基準穴を明けるようにしたものなどにも適用可能である。また、多層基板ではなく、通常のプリント基板に穴明けする場合に適用するものについては、撮像手段としてX線発生器やX線用カメラを使用する必要がないので、安全で安価な通常の可視光線と通常のカメラなどによって構成することができる。さらに、本実施例では穴明け手段をスピンドルとドリル等によって構成しているが、これについてもダイスとポンチなど他の手段を採用して穴を明ける構成にすることも可能である。
【0037】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案は、回転クランパ装置を採用したことにより、2軸振分け式の穴を明けるための穴明け位置を容易に定めることができるので、きわめて容易に正確な位置に穴を明けることができる。また、全自動にした場合よりも簡単な構成にすることができるので、2軸穴明け機のコストを引き下げることができる。
【0038】
また、撮像手段としてX線発生器およびX線用カメラを使用すれば、基板の内部に識別パターンを形成してある多層基板に穴明けする際の穴明け位置を容易に決定できる上に、さらにX線フードの先端部に回転クランパ装置の押圧手段を設けることにより構成を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施例を示す正面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】同右側面図である。
【図4】プリント基板を回転クランパ装置によってテーブル上に保持した状態を示す拡大断面図である。
【図5】穴明けしたプリント基板の平面図である。
【図6】多層基板の構成を示す一部切欠拡大断面図である。
【図7】治具板の平面図である。
【図8】カメラの視野内に識別パターンが収められた状態を示す平面図である。
【符号の説明】
2 テーブル
3,4 穴明けユニット
6,36 撮像手段
7,37 穴明け手段
8,38 X線発生器
9,39 X線用カメラ
12,42 X線用フード
18 押圧手段
19 座
48 回転クランパ装置
58 識別マーク
P プリント基板

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも二つの識別パターンを有するプリント基板が載置されるテーブルと、上記識別パターンを撮像する撮像手段と、上記撮像結果に基づいて上記プリント基板に穴明けする穴明け手段とをそれぞれ有する1対の穴明けユニットと、上記穴明けユニットの少なくとも一方に設けられており、上記プリント基板を上記テーブルに対して押圧可能であるとともに回転自在な押圧手段を含む回転クランパ装置とを備えており、上記回転クランパ装置は、上記押圧手段により上記プリント基板を上記テーブルに押圧して離脱不能に保持した状態で、上記プリント基板の回転を許容し得るものであることを特徴とする2軸穴明け機。
【請求項2】 上記回転クランパ装置は、上記押圧手段と対向的に上記テーブル上に設けられている回転自在な座を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の2軸穴明け機。
【請求項3】 上記撮像手段はX線発生器およびX線用カメラによって構成してあり、上記押圧手段は上記X線発生器を構成するX線フードの先端部に装着してあることを特徴とする請求項1または2に記載の2軸穴明け機。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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