説明

3−ヒドロキシキヌレニン(3−OHKYN)の酸化重合生成物を使用する光フィルタ

本発明は、加齢により目の水晶体内に発生する黄褐色の色素を合成したものである3−ヒドロキシキヌレニンの酸化重合生成物を含む透明な媒体に関する。眼のレンズ内のこの色が、網膜を光から保護すると信じられているので、視覚系の精神物理学的および神経生理学的特性に匹敵する光の透過スペクトルを有する理想的なサン・レンズ・フィルタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サングラス・レンズのような紫外線およびエネルギーの高い可視(HEV)光線のフィルタによる目の保護および視力の強化の分野に関する。より詳細に説明すると、本発明は、サングラス・レンズ、および一般的な眼用レンズ、窓、光フィルタ(例えば、写真カバー、包装材料、天蓋など)および高価な製品を放射線の被害から保護するために使用する他の類似の媒体を含む種々の製品でこのように目の保護、視力の強化を行うための濾光構成要素または染料としての3−ヒドロキシキヌレニン(3−OHKyn)の酸化による重合生成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
a)製品「AcrySof Natural IOL」に関連していて、インターネット・ウェブサイト:
http://www.eyeworld.org/aug02/0802p30.html
上に位置する当事者による人間の眼のレンズの黄色の色素にそっくりな光フィルタについてはすでに説明した。
【発明の開示】
【0003】
過去10年間の科学的調査により、眼のレンズへの紫外線および網膜へのHEV(エネルギーの高い可視)光線による脅威がはっきり分かった。そして最近、眼科産業でHEV光線の低減の重要性が次第に認識されてきている。HEV(主として青色および紫色)の光線を低減または除去するレンズを着用すると、通常、コントラストが強くなり、視覚が敏感になる。このようなレンズは、また、光酸化をベースとする疾患に対して網膜の保護を強化する。しかし、このようなレンズは、多くの場合、色彩の歪みを生じ、正しい色の知覚を失わせる。
ヒト水晶体は、年齢と共に白濁を起こすと同時に黄色に変色し、茶褐色に変色する場合さえあることは周知である。白濁を起こすと、過度の光の散乱および蛍光からのキラキラした光のために視力障害を起こすので、老齢の白濁を起こした水晶体は除去され、代わりに透明なレンズを使用することになる。しかし、黄褐色に着色すると、主としてHEV(エネルギーの高い可視)光線が低減する。それ故、黄褐色に着色すると、他のHEV低減サン・レンズで使用する染料と同じ視力強化の利点が得られる。図1は、水晶体のこの保護的機能を示す。(1988年のJ Physiol 395号、577〜587ページ掲載のWeale RAの、「年齢とヒト水晶体の透過率」(Age and the transmittance of the human crystalline lens)参照。)
しかし、白濁と黄褐色の色素は両方とも加齢により発生するので、黄褐色の色素の視力保護および視力強化の利点は、白濁の視力障害により相殺されてしまう。これは不都合なことである。何故なら、水晶体の黄褐色の眼の色素に関連させることができる有意な視力上の利点があるからである。
【0004】
第一に、目の神経生理学は、この色素、特にその透過スペクトルの光学的特性と完全な互換性を有していなければならないこと、それ故それを使用する任意のフィルタから、色の知覚の損失を最小限度にしなければならないことが予想される。この黄褐色フィルタは、HEV光線の輝度を低減することにより、またそのため年齢による黄斑の退化(AMD)のリスクを低減することにより網膜を保護することが予想される。
実際には、このような保護的着色は、網膜がその人の子供の時代および成人の初期の多くの年月の間破壊的な日光に曝された後で起こる。また、白濁した水晶体の除去手術を受けるお年寄りの場合、代わりに透明なプラスチック・レンズが使用される。都合の悪いことに、これは、網膜の抗酸化機能が重大な損傷を起こす年代に発生する。この時点で網膜に達することができるHEV光線の線量が増大し、そのため網膜の損傷(AMD)の危険が増大する。
しかし、試験管内でヒト水晶体の黄色の色素を合成することができ、この色素は、生体内で合成した物質の透過スペクトルと同じ透過スペクトルを有する。サン・レンズのような光フィルタで使用するこのような試験管内で合成した水晶体の色素(以後SLPと呼ぶ)は、それ故、日光による損傷から目を同じように保護し、眼のレンズにより生体内で生成した天然の黄褐色の色素と同じコントラスト強化および色知覚保護機能を提供する。
水晶体を黄褐色に着色する分子は、3−ヒドロキシキヌレニン(3−OHKyn)の酸化重合生成物として識別されている。それ故、人の眼のレンズの黄色の色素の合成したもの、すなわちSLPは、水性媒体内で同じ前駆体、3−OHKynによる自動酸化により、試験管内で作ることができる。
【0005】
水中での(3−OHKyn)の自動酸化は、他の文献(2000年発行の、Biochimica et Biophsica Acta.1476(2)、265〜78ページ掲載のGarner,B.、D C Shaw、R A Lindner、J A Carver、およびR J Truscottの、「キヌレニンによる水晶体の非酸化的変性:老齢および白濁への可能な適切さによる新規な後並進蛋白質の変性」(Non−oxidative modification of lens crystallines by kynurenine: novel post translational protein modification with possible relevance to ageing and cataract))にも記載されている。その要約は下記の通りである。
3−ヒドロキシキヌレニン(3−OHKyn)の自動酸化または重合は、水に3−OHKynを溶解し、次に、pHを約8に上げた後で、撹拌した溶液内に空気を吹き込んで泡立たせることにより進行する。暗さおよび褐色の度合いは、前駆体モノマーの濃度、およびpH、温度および培養時間の高い値のような酸化の程度を助長する重合条件により制御することができる。
特定の例を挙げて説明すると、a)2.5グラムの3−ヒドロキシキヌレニンを1リットルの脱イオン水に溶解し、b)0.07gの塩化第二鉄FeCl.sub.3を250ccの脱イオン水に溶解し、c)6.1gの過硫酸カリウムを250ccの脱イオン水に溶解し、次に、a)、b)およびc)をそれぞれ50℃に加熱し、次に、溶液b)をa)に加えて溶液d)を作り、撹拌し、次に、溶液c)を5分間d)に滴下して加え、最終溶液を24時間の間50℃でコンデンサの下で撹拌した。生成物SLPは、黒い濃縮溶液e)であった。
【0006】
次に、合成生成物を下記のように精製した。200ccの硫酸水溶液の希釈溶液をe)に加え、溶液e)のpHを1.5にして、最終量を1700ccとした。溶液を24時間の間撹拌しないで培養した。これにより黒い重合生成物が凝集し、容器の底に沈殿した。次に、1.3リットルの透明な薄く着色した上澄み液を採取した。この上澄み液は、生成物の水溶性の小さなオリゴマーおよび未反応のモノマーおよび合成試薬および塩を含む。さらに、1.3リットルの新鮮な脱イオンの酸性にした水を加え、残りの0.4リットルの溶液と一緒に撹拌し、再度pH1.5の1.7リットルの溶液を得た。この溶液をさらに24時間撹拌しないで培養し、1.3リットルの薄く着色した上澄み液を採取した。
100ccの水酸化ナトリウム水溶液の希釈溶液を加えて、pHを8に再度調整することにより、水性生成物を再度懸濁し、可溶性にすることができ、以下に説明するように、テトラヒドロフランと混合することにより、その酸性にした形でうまく分散することができた。この溶液の部分標本は、水1ミリリットル当たり3mgの合成眼レンズ色素(SLP)を含んでいることが分かった。以後、この水溶液を「原液」と呼ぶ。
濃度を1mg/mlとするために、1mlの原液を、2mlの水に加えることにより、光学測定用のもっと濃度の薄い溶液を作成した。次に、黄色の色素の薄い溶液を、長さ1cmの経路を有するキュベット内に注入し、記録紫外線可視分光光度計の試料室内に置いた。図2は透過スペクトルを示す。
【特許文献1】米国特許第5,112,883号
【非特許文献1】1988年のJ Physiol 395号、577〜587ページ掲載のWeale RAの、「年齢とヒト水晶体の透過率」(Age and the transmittance of the human crystalline lens)
【非特許文献2】2000年発行の、Biochimica et Biophsica Acta.1476(2)、265〜78ページ掲載のGarner,B.、D C Shaw、R A Lindner、J A Carver、およびR J Truscottの、「キヌレニンによる水晶体の非酸化的変性:老齢および白濁への可能な適切さによる新規な後並進蛋白質の変性」(Non−oxidative modification of lens crystallines by kynurenine: novel post translational protein modification with possible relevance to ageing and cataract)
【0007】
本明細書に記載する本発明は、プラスチックおよびガラスの光学レンズおよび他の光フィルタ内に、ヒト水晶体が含んでいて、水晶体の光の透過スペクトルに関連する同じ物質を合成したもの、すなわち3−OHKynの重合生成物を含む。以後、この物質を「合成レンズ色素」または「SLP」と呼び、その前駆体を3−OHKynと呼ぶことにする。この物質はいつでも水性環境内で発生し、実際その表面の構造は、親水性であると思われるので、最終合成物質を大部分の液体プラスチック樹脂、および通常眼用デバイスで使用するモノマー内によく分散するように、分子構造の表面を疎水性に変換する必要がある。この分散性の強化により、好ましくない光の散乱および最終眼用レンズまたは光フィルタ製品の曇りを低減することができる。精製後に、熱硬化性鋳造プロセス、またはサングラス・レンズおよび他のプラスチック光フィルタを形成するために、黄褐色の色素の粉末または液体がプラスチック内で均一に分散するような熱可塑性射出成形プロセスにより物質を液体プラスチック樹脂と結合することができる。親水性プラスチックの用途の少なくとも1つの例について説明する。
【0008】
本発明の利点:このようなサングラス・レンズは、色の知覚を混乱させないで、網膜および眼のレンズを非常によく保護する。エネルギーの高い可視(HEV)光線が低減すると、網膜の保護が改善するが、このようなサングラス・レンズを使用した場合には、紫色および青色の低減により色の知覚が混乱する恐れがある。SLPで作ったレンズを使用した場合には、色の知覚のこのような喪失が起こる可能性は少ない。何故なら、このようなレンズの光学的透過が、目脳系の神経生理学がうまく適合する実際のヒト水晶体の透過とよく一致するからである。生体内重合合成の際に実際に使用される重合前駆体3−OHKynを使用すると、天然の眼の色素の光の透過スペクトルと最もよく一致する。
人工の染料によりSLPの透過スペクトルをまねすることができるが、そうするといくつかの欠点が生じる。
1.このようなレンズをファーンスワース−マンセル色試験のような試験に使用した場合、SLPの透過スペクトルと人工染料の結合によりシミュレートした透過スペクトルとの間の僅かな違いが色知覚の際の有意な違いになる。透過スペクトルをまねするという行為が、眼鏡技師または検眼士にゆだねられている場合には、これらの違いが認識されない可能性が非常に高い。
2.SLP透過スペクトルをうまくまねするためには、いくつかの人工染料を必要とするので、これらの染料は、後で日光に曝された場合異なる速度で色あせる。そのため、透過スペクトルがさらに異なるものになる。
【0009】
(図面の簡単な説明)
図1は、波長に対する実際の眼のレンズの透過を示すグラフである。
図2は、標準手順によって行った水中でのSLPの透過を示すグラフである。
図3は、テトラヒドロフラン内のSLPの透過を示すグラフである。
図4は、キャストCR39レンズのSLPの透過を示すグラフである。
図5は、アクリル樹脂レンズのSLPの透過を示すグラフである。
図6は、PVAフィルム内のSLPの透過を示すグラフである。
図7は、SLPからの水晶体の合成レンズ色素を含む透明な固体基材を示す図面である。
図8は、SLPを含んでいて、透明な固体基材をカバーしている透明なコーティングを示す図面である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
定義の要約
本特許出願で使用する場合には、「固体の透明な基材」という用語は、透明なガラスまたはポリマーからできていて、通常、光フィルタの形をしている固体対象物である。このような固体の透明な基材の例としては、サングラス・レンズ、眼用レンズ、窓、コンタクト・レンズ、およびコンピュータ・スクリーンのようなプラスチックまたはガラスの平らなまたは湾曲したシート等があるが、これらに限定されない。図7は、透明な固体基材を示す。
「熱硬化性」プロセスという用語は、モノマー性液体上に働く酸化剤またはイニシエータの作用により、プラスチックがモノマーを重合するプロセスである。
「熱可塑性」プロセスという用語は、プラスチックがすでに形成されていて、熱および圧力により流動性を有しているか、または液化しているプロセスを意味する。
「SLP」という用語は、合成レンズ色素を意味する。
「均一に分散している」という用語は、SLPを含む固体の透明な基材を通して対象物を見た場合、光の散乱または曇りが無視できる程度になるように、固体の透明な基材内で合成レンズ色素を十分に混合しなければならないことを意味する。
過去においては、合成SLPは、水性媒体内での自動酸化重合により作られていた。大部分のレンズおよび光フィルタは、透明な光学プラスチックからできている。レンズでSLPを使用する上記利点は、眼用レンズ・システムのみに限定されないこと、およびSLPは、放射線から人間および高価な製品を保護する装置デバイスを作るのに適している任意の媒体で使用することができることはいうまでもない。それ故、SLPは、任意のレンズ・システム、またはプラスチックまたはガラスのサングラス、保護眼鏡(例えば、溶接工またはスキーヤーのマスクまたはゴーグルなど)、およびハード(疎水性)またはソフト(親水性)コンタクトまたは眼内レンズを含む眼用デバイスのような類似のデバイス;ガラスまたはプラスチックの窓(例えば、自動車、ビルまたは航空機の窓など);ガラスまたはプラスチックの包装材料(例えば、飲料および食品容器など);薄いプラスチック・シート;傘;天蓋;および人間または放射線感光物質を放射線から保護するのに適している他の類似のデバイスまたは物質と一緒に使用することができる。眼用レンズの場合、これらのレンズは、視覚欠損を矯正するために、光学的処方によりまたは光学的処方によらないで作ることができることを理解されたい。
【0011】
好ましい実施形態
光を吸収する染料は、一般的に熱可塑性プロセスと呼ばれる配合プロセスによりプラスチック内に混入される。この場合、熱可塑性プラスチックは、加熱され、熱可塑性プラスチックを染料の溶媒としての働きをさせるような方法で流動し、染料は、液化したプラスチック内で均一に混合または分散する。熱可塑性プラスチックが光学的に透明である場合には、染料により、プラスチックを、ある適当な溶媒内で染料とほぼ同じ透過スペクトルを有する透明ではあるが、色つきのフィルタに変換することができる。他の方法の場合には、染料は最初、液体プラスチック・モノマー内で溶解し、次にプラスチックは、いわゆる熱硬化プロセス中に硬化または硬くなる。第3のプロセスの場合には、染料を、染料がプラスチック表面内に拡散できるように、高温で染料を含む水性または水/助溶媒浴内にプラスチック物品を浸漬することにより、すでに固体レンズまたはシートの形をしているプラスチック内に混入する。他のプロセスの場合には、染料を表面コーティングとしてプラスチック内に混入することができる。このプロセスのある例の場合には、染料は、通常「ハード・コート」または「耐スクラッチ」樹脂と呼ばれるプラスチック樹脂内に溶解し、プラスチック物品またはレンズがそのような樹脂内に浸漬される。図8はこのような例の図面である。このように形成され、染料を含む薄いコーティングは、前溶解熱または光作動イニシエータとの組合わせにより、熱または光の作用により硬化または硬くなる。
本発明の好ましい実施形態の場合には、3−ヒドロキシキヌレニンの酸化重合生成物は、熱硬化プロセス中に、リーディング光学樹脂CR39内で誘導体化され、溶解する。この誘導体化プロセス中に、色素が分離されると同時に樹脂内の可溶性が増大する。
3−ヒドロキシキヌレニン・モノマーは、ポリフェノールを形成するために重合するので、それを誘導体化するために使用する技術は、ヒドロキシル基を含むポリマーに適している技術である。米国特許第5,112,883号もこれらの技術を開示している。
誘導体化剤は、クロロギ酸メチル、クロロギ酸メチルアリル、クロロギ酸ビニルまたはクロロギ酸アリル;メタクリル・オキシプロピル・ジメチル・クロロシラン;塩化メタクリル;イソシアネートエチル・メタクリレート、および遊離基重合を受けることができる基、およびポリフェノール上でカルボキシル基またはフェノール性官能基と反応することができる化学的反応基を含む他の誘導体化剤のような2官能剤を含むことができる。
【実施例1】
【0012】
3−ヒドロキシキヌレニンの酸化重合生成物を、酸性にし、THF内に分散させ、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。CR39プラスチック・モノマー内で色素を分散させ溶解するために、合成レンズ色素、SLPをクロロギ酸メチルにより下記のように誘導体化した。5ccのピリジンを4gのSLPを含む30ccの(THF)に加えた。次に、8ccのクロロギ酸メチルを、10分間の間に滴下により加え、5時間撹拌した。生成物を、濾過し、次に同じ量の脱イオン水で3回洗った。生成物を硫酸ナトリウ上で24時間乾燥し、次にヘキサン内に注入し、乾燥して粉末にした。
0.3gの上記粉末を100ccの液体CR39モノマー内に溶かし、溶液を50℃に加熱した。次に、3gの過酸化ベンゾイルを加え、すべての過酸化ベンゾイルが溶解するまで溶液を撹拌した。温度を60℃に上げ、溶液の一部をゴムの「O」リングにより分離した2枚のガラスのシートが形成する型内に注入した。ガラスの型はスプリング・クランプにより一緒に保持され、ユニットを65℃の温度で20時間オーブン内に入れた。その結果、透明で琥珀色のプラスチック・ディスク・レンズができた。
図4は、このディスクの透過スペクトルを示す。このスペクトルは、380nm〜500nmの範囲内の眼の色素だけの透過スペクトルに類似している(図1)。しかし、硬化中、色素が過酸化ベンゾイルに触れたことによる漂白のために、光学密度スペクトルの赤い端部が低減した。この特徴は有意な欠陥ではない。何故なら、波長350nm〜500nmの範囲内の眼の色素による保護は影響を受けなかったからである。
第2の好ましい実施形態の場合には、合成眼レンズ色素(SLP)を、それが流動し、SLP粉末に対して溶媒として機能するまで加熱する熱可塑性プラスチックと混合する。
【実施例2】
【0013】
0.2gのSLP粉末を、120gのアクリル樹脂ペレットと混合し、圧力下の加熱下で配合し、SLPをアクリル樹脂プラスチックと均一に混合した。生成物を、図5に示す透過スペクトルを有する、透明で黄褐色の「レンズ」を形成する平らな試験プレート内に注入した。
SLP生成物を光学レンズ内に混入するための他の方法は、偏光子を形成するために、ポリビニル・アルコール(PVA)内にSLPを分散する方法である。PVAフィルムは、柔軟なPVAフィルムに機械的統合性を与えるために、他のプラスチックの薄い硬質のシートに結合することができる。次に、これらのラミネートを熱可塑性プロセスまたは熱硬化性プロセスにより、平面レンズおよびRxレンズを作るために、レンズ型内に入れることができる。この方法は光学レンズを作るためにあまり使用されないが、水性をベースとするSLPを使用する利点を有する。
【実施例3】
【0014】
100ccの脱イオン水内の0.4gのSLP水溶液に、撹拌しながら2.0gのPVA粉末を加え、95℃に加熱した。SLP/水システム内に全部のPVA粉末が溶けた後で、溶液を約50℃も冷却すると、ほぼ2ccの黒い溶液が、ガラスの薄く平らなシート上に堆積した。水が完全に蒸発した後で、薄い茶色のPVAフィルムがガラス表面上に形成された。
図6は、PVA/SLCフィルムの透過スペクトルを示す。
上記説明から、放射線保護のための媒体内の吸収色素としての、黄色の眼の色素または3−ヒドロキシキヌレニンの重合から作った合成色素を使用する主な利点は下記の通りである。
1.SLPによる光の透過が、光のエネルギーが増大するにつれて、そのため光酸化の可能性が増大するにつれて、次第に低減する。
2.人間視覚システムが、色を知覚し、波長に依存する光の散乱を処理するようにSLPの透過スペクトルに慣れる。
3.消費者が、自分の視覚を保護するためにSLPを含む光フィルタを使用するコンセプトを受け入れる可能性が高くなる。何故なら、それが人体により使用され、それにより消費者の視覚の健康が増進するからである。
ある特定の材料、手順および例を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明は、主として例示のために本明細書で使用するこれらのものに限定されないことを理解されたい。当業者であれば、添付の特許請求の範囲に記載する本発明の範囲内で、このような詳細な点を種々に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】波長に対する実際の眼のレンズの透過を示すグラフである。
【図2】標準手順によって行った水中でのSLPの透過を示すグラフである。
【図3】テトラヒドロフラン内のSLPの透過を示すグラフである。
【図4】キャストCR39レンズのSLPの透過を示すグラフである。
【図5】アクリル樹脂レンズのSLPの透過を示すグラフである。
【図6】PVAフィルム内のSLPの透過を示すグラフである。
【図7】SLPからの水晶体の合成レンズ色素を含む透明な固体基材を示す図面である。
【図8】SLPを含んでいて、透明な固体基材をカバーしている透明なコーティングを示す図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然物または人工物が放射した紫外線、可視光線および近赤外線を吸収するための装置であって、
透明な固体基材と、
3−ヒドロキシキヌレニンの重合による色素とを有する装置。
【請求項2】
前記透明な固体基材がプラスチックである請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記透明な固体基材が、熱硬化性プロセス中のモノマーの重合および前記色素により形成される請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記透明な固体基材が、前記色素を含む熱可塑性プラスチックの配合または押出しにより形成される請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記透明な固体基材が、前記色素を含むコーティングである請求項1または2に記載の装置。
【請求項6】
前記色素が、前記透明な固体基材内で前記色素を分散および溶解するために、誘導体化により化学的に変性される請求項1または2に記載の装置。
【請求項7】
前記装置が眼用デバイスである請求項1または2に記載の装置。
【請求項8】
前記装置がサングラス・レンズである請求項1または2に記載の装置。
【請求項9】
前記装置が硬質または疎水性コンタクト・レンズである請求項1または2に記載の装置。
【請求項10】
前記装置が眼内デバイスである請求項1または2に記載の装置。
【請求項11】
前記装置がパッケージング・デバイスである請求項1または2に記載の装置。
【請求項12】
前記装置がプラスチック・フィルムである請求項1または2に記載の装置。
【請求項13】
前記装置が窓である請求項1または2に記載の装置。
【請求項14】
前記装置が傘である請求項1または2に記載の装置。
【請求項15】
前記装置が天蓋である請求項1または2に記載の装置。
【請求項16】
前記色素が、前記コーティング内で前記色素を分散および溶解するために、誘導体化により化学的に変性される請求項5に記載の装置。
【請求項17】
前記色素が、3ヒドロキシキヌレニンの酸化重合により得られる請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記色素が、ヒト水晶体内に存在する色素である請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記色素が、ヒト水晶体内に存在する色素の透過スペクトルと同じ透過スペクトルを有する請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記色素が、ヒト水晶体内に存在する黄色の色素である請求項1に記載の装置。
【請求項21】
偏光子をさらに含む請求項1に記載の装置。
【請求項22】
前記偏光子が、偏光子フィルムである請求項21に記載の装置。
【請求項23】
フォトクロミック染料をさらに含む請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記色素が、前記固体基材の表面内に拡散する請求項1に記載の装置。
【請求項25】
前記色素が、前記固体基材の表面コーティングである請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−503023(P2007−503023A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524049(P2006−524049)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/026961
【国際公開番号】WO2005/019874
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(506057708)フォトプロテクティブ テクノロジーズ、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】