説明

3次元物体測量装置および測量写真解析装置

【課題】 複数のカメラを備えた3次元物体測量装置において測量精度を向上させる。
【解決手段】 3次元物体測量装置10は、スチルカメラ32R、32L、温度センサ34R、34L、34H、チルトセンサ35、CPU21、およびROM23を有す。測量点を撮像するとき、スチルカメラ32R、32Lは画像信号を生成する。温度センサ34R、34L、34Hは温度信号を生成する。チルトセンサ35は傾斜角信号を生成する。ROM23に外部定位要素および内部定位要素の温度変化特性および傾斜角変化特性を記憶させる。CPU21は、画像信号、温度信号、傾斜角信号に基づいて内部定位要素および外部定位要素の補正を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の測量用カメラによって構成される3次元物体測量装置の座標変換用の係数の補正機能に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の測量において、測量しようとする点(測点)を含む周囲の風景を異なる視点から撮影し、撮影した視点の位置および傾きを用いて、測点の位置を三角測量の原理により求める方法が知られている。複数のカメラを所定の位置に固定したステレオカメラを用いて、このような測量が行われている。
【0003】
ところで、このようなステレオカメラは同一の測点を撮影するカメラの視差を利用して測量を行うため、撮影された画像において視差以外の要因によるズレがないことが望ましい。しかし撮影時にはカメラを固定するときに規定した固定位置から、外乱によりカメラの位置、および傾きにズレが生じる。
【0004】
なお、外乱とは、例えば日光などの影響による温度変化などが考えられる。ステレオカメラは距離を離した複数のカメラの撮影画像より距離を計算するため、太陽の位置や周辺物の陰になることによってカメラ毎の温度変化量に差が発生することがある。
【0005】
カメラ毎の温度変化量の差によって測量誤差に影響が与えられる。また、測定対象物の位置によってカメラの向きを変えた場合、カメラに係る重力方向が変わることによりカメラの傾きが変わってしまうために測量誤差を生じることがある。
【0006】
そのため、あらかじめ位置が既知である調整用パターンを用いて、三角測量に用いるカメラのずれた後の位置と傾きを算出し、測点の画像からこれらのズレを幾何学的に補正することが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
しかし、測量現場における撮影中に更なるズレが発生することがあった。このズレが生じたときに調整用パターンを用いて、補正することは可能である。しかし、測量を行う現場で調整用パターンの位置の測定により、使用者に余計な手間をかけてしまった。このような手間は不便であり、また撮影時間が長くなってしまう問題があった。
【特許文献1】特開平10−307352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明では簡易的な方法により、ズレを補正することが可能な3次元物体測量装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の3次元物体測量装置は、第1、第2のカメラと、第1、第2のカメラを支持する支持体と、第1、第2のカメラまたは支持体の少なくとも一つに設けられ周囲の温度を検出する温度センサと、第1、第2のカメラが撮影する写真に写る測量対象点の写真座標から測量対象点の3次元座標を求めるための変換係数の温度変化特性を記憶する記憶手段と、温度センサが検出する温度と温度変化特性とに基づいて変換係数を補正する補正手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
なお、温度変化特性が記憶される変換係数は、第1、第2のカメラの焦点距離、第1、第2のカメラに設けられる撮像手段の中心の光軸からのズレ、支持体が第1、第2のカメラを支持する所定の姿勢の少なくとも一つであることが好ましい。さらには、所定の姿勢は、第1、第2のカメラの間の距離、第1のカメラの光軸方向の単位ベクトルと第2のカメラの光軸方向の単位ベクトルとの合成ベクトルに平行で第1のカメラと第2のカメラとを結ぶ直線に平行な平面における第1、第2のカメラの光軸の向きの少なくとも一方であることが好ましい。
【0011】
また、温度変化特性は単位温度あたりの変換係数の変化量であることが好ましい。
【0012】
本発明の第2の3次元物体測量装置は、第1、第2のカメラと、第1、第2のカメラを支持する支持体と、支持体に設けられ第1、第2のカメラの光軸の単位ベクトルの合成ベクトルの水平面に対する傾斜角を検出する傾斜角検出センサと、第1、第2のカメラが撮影する写真に写る測量対象点の写真座標から測量対象点の3次元座標を求めるための変換係数の傾斜角の変化に対する傾斜角変化特性を記憶する記憶手段と、傾斜角センサが検出する傾斜角と傾斜角変化特性とに基づいて変換係数を補正する補正手段とを備えることを特徴としている。
【0013】
なお、補正手段に補正される変換係数は、合成ベクトルに平行で第1、第2のカメラを結ぶ直線に平行な平面における第1、第2のカメラの光軸の向きであることが好ましい。
【0014】
また、傾斜角変化特性は、支持体のバネ定数と第1、第2のカメラの重量であることが好ましい。または、傾斜角変化特性は傾斜角に対する変換係数の対応値であることが好ましい。
【0015】
本発明の第1の測量写真解析装置は、第1、第2のカメラと第1、第2のカメラを支持する支持体と第1、第2のカメラまたは支持体の少なくとも一つに設けられ周囲の温度を検出する温度センサとを有するステレオカメラから温度センサが検出する周囲温度を取得する取得手段と、周囲温度と第1、第2のカメラが撮影する写真に写る測量対象点の写真座標から測量対象点の3次元座標に変換するための変換係数の温度変化特性とを記憶する記憶手段と、周囲温度と温度変化特性とに基づいて変換係数を補正する補正手段とを備えることを特徴としている。
【0016】
本発明の第2の測量写真解析装置は、第1、第2のカメラと第1、第2のカメラを支持する支持体と支持体の水平面に対する傾斜角を検出する傾斜角検出センサとを有するステレオカメラから傾斜角検出センサが検出する傾斜角を取得する取得手段と、傾斜角と第1、第2のカメラが撮影する写真に写る測量対象点の写真座標から測量対象点の3次元座標に変換するための変換係数の前記傾斜角の変化に対する変化量を算出するための補正係数とを記憶する記憶手段と、傾斜角と補正係数とに基づいて変換係数を補正する補正手段とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、測点の撮影時の温度や姿勢に応じて自動的に外部定位要素または内部定位要素の補正を行うので、撮影作業時に手間をかけることなく測量精度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態である3次元物体測量装置を構成する画像撮影装置を示す斜視図である。
【0019】
画像撮影装置30は、基線桿31、右スチルカメラ32R、左スチルカメラ32L、および基線桿支持機構33によって構成される。基線桿31の両端に右スチルカメラ32Rと左スチルカメラ32Lとが所定の間隔をもって取付けられる。スチルカメラ32R、32Lは写真測量用のデジタルカメラが用いられる。なお、スチルカメラ32R、32Lはフィルムカメラであってもよい。
【0020】
スチルカメラ32R、32Lの光軸OAR、OALは互いに平行かつ基線桿31に垂直となるように固定され、同一の領域を同時に異なる視点から撮像することが可能である。ただし、スチルカメラ32R、32Lの光軸OAR、OALを完全に平行に固定することは困難であり、実質的には略平行に配置される。
【0021】
スチルカメラ32R、32Lは各々正確に位置決めされており、両者の位置関係は、あらかじめ高い精度で測定される。また、スチルカメラ32R、32Lの内部定位要素などもあらかじめ正確に検定される。
【0022】
基線桿31は、基線桿支持機構33によって支持される。基線桿支持機構33は、基線桿支持部33Hと、可動部33Mによって構成される。基線桿支持部33Hに基線桿31は固定される。基線桿支持部33Hは可動部33Mによって、基線桿31に平行な第1の直線L1、および基線桿31とスチルカメラ32R、32Lの光軸OAR、OALに垂直な第2の直線L2を軸に基線桿支持部33Hを回動自在に支持される。
【0023】
なお、以後の説明において特に断らない限り、左スチルカメラ32Lから右スチルカメラ32Rに向かう基線桿31に平行な方向をx軸、スチルカメラ32R、32Lの光軸方向の単位ベクトルの合成ベクトルとx軸に垂直上向きの方向をy軸、スチルカメラ32R、32Lの光軸方向の単位ベクトルの合成ベクトルに平行でスチルカメラ32R、32Lの前方向をz軸とする。また、z軸の正の方向を基準方向とする。なお、基線桿支持部33Hにおける任意の1点であってスチルカメラ32R、32Lの中心を原点とする。
【0024】
スチルカメラ32R、32Lには、温度センサ34R、34Lが設けられる。また、基線桿支持部33Hにも、温度センサ34Hが設けられる。それぞれの温度センサ34R、34L、34Hによって、撮影時のスチルカメラ32R、32L、基線桿31の温度が検出される。
【0025】
また、基線桿支持部33Hには、チルトセンサ35が設けられる。チルトセンサ35によって、水平面HPに対するz軸周りの傾斜角Aおよび水平面HPに対するx軸周りの傾斜角Bが検出される(図2、図3参照)。
【0026】
図4は本発明の一実施形態を適用した3次元物体測量装置の電気的な構成を示すブロック図である。3次元物体測量装置10は画像撮影装置30と測量写真解析装置20により構成される。画像撮影装置30と測量写真解析装置20は、インターフェースケーブル11によって接続される。
【0027】
画像撮影装置30は、スチルカメラ32R、32L、温度センサ34R、34L、34H、チルトセンサ35、およびマイクロコンピュータ36などによって構成される。
【0028】
スチルカメラ32R、32Lはマイクロコンピュータ36に接続され、制御される。スチルカメラ32R、32Lのレリーズ動作は、マイクロコンピュータ36により実行される。スチルカメラ32R、32Lのレリーズ動作により生成される画像信号は、マイクロコンピュータ36に送られる。
【0029】
温度センサ34R、34L、34Hは、マイクロコンピュータ36に接続される。それぞれスチルカメラ32R、32L、および基線桿31の温度に相当する温度信号が、マイクロコンピュータ36に送られる。
【0030】
チルトセンサ35はマイクロコンピュータ36に接続される。チルトセンサ35より検出される傾斜角A、傾斜角Bに相当する傾斜角信号がマイクロコンピュータ36に送られる。なお、画像信号を生成するときの温度信号および傾斜角信号が、マイクロコンピュータ36によって関連付けられる。
【0031】
さらに、マイクロコンピュータ36には、操作スイッチ群37および表示機38が接続される。操作スイッチ群37への入力により、画像撮影装置30において撮像動作や画像撮影装置30の設定を行うことが可能である。また、表示機38には撮影した画像や画像撮影装置30の各種設定の設定値などを表示可能である。
【0032】
画像信号、温度信号、傾斜角信号は、マイクロコンピュータ36から測量写真解析装置20に転送可能である。一方、画像撮影装置30の撮像動作や各種の設定を測量写真解析装置20によって行うことが可能であり、そのための制御信号が測量写真解析装置20から画像撮影装置30に送られる。なお、画像撮影装置30と測量写真解析装置20との間の各信号の送受信は、インターフェース回路39を介して行なわれる。
【0033】
測量写真解析器20は、CPU21、インターフェース回路22、ROM23、RAM24、モニタ25、入力装置26により構成される。CPU21は、インターフェース回路39、22を介してマイクロコンピュータ36に接続される。
【0034】
画像撮影装置30から転送される画像信号は、インターフェース回路22およびCPU21を介してRAM24に送られ、格納される。なお、撮影動作を実行したときの温度信号と傾斜角信号も、画像信号に関連付けられてRAM24に格納される。
【0035】
モニタ25には、3次元測量を行なうための操作画面、RAM24に格納された画像信号に相当する画像、または画像撮影装置30の各種の設定を行なうための画面を表示可能である。また、測量写真解析装置20の各種操作は、マウス等のポインティングデバイスや、キーボード等により構成される入力装置26への操作によって実行される。
【0036】
スチルカメラ32R、32Lの外部定位要素は、画像撮影装置30の基準点の位置をトータルステーションで測量して、空間後方交会によりあらかじめ算出される。なお、検定された内部定位要素は、外部定位要素とともにROM23に記憶される。
【0037】
なお、外部定位要素とは、画像撮影装置30の基準点を原点としたスチルカメラ32R、32Lの3次元座標とスチルカメラ32R、32Lの光軸OAR、OALの方向である。
【0038】
ところで、測点を撮影するときの温度は撮影場所や撮影状況等によって異なっており、外部定位要素および内部定位要素は撮影時の温度により変化することがある。このように外部定位要素および内部定位要素の中で、温度変化に対して測量の精度に大きな影響を及ぼす要素が、補正対象要素として定められる。
【0039】
補正対象要素は、例えば、スチルカメラ32R、32Lのx座標xr、xl、スチルカメラ32R、32Lの焦点距離FLR、FLL、スチルカメラ32R、32LのCCD面ISR、ISLの座標上のx軸方向の偏心量XcR、XcL、およびスチルカメラ32R、32Lのy軸周りの光軸の傾きβR、βLである。なお、スチルカメラ32R、32LのCCD面ISR、ISLの座標上のx軸方向は、スチルカメラ32R、32LのCCD面ISR、ISLに平行でy軸に垂直な方向である。
【0040】
なお、スチルカメラ32R、32Lのx座標は、基線桿31の長さ2Lが変わることによりズレが発生する(図5参照)。
【0041】
これらの要素の1℃あたりの変化量がROM23に記憶される。すなわち、基線桿31の単位変化量ΔL(mm/℃)、焦点距離の単位変化量ΔFLR、ΔFLL(mm/℃)、偏心量の単位変化量ΔXcR、ΔXcL(mm/℃)、および傾きの単位変化量ΔβR、ΔβL(rad/℃)が記憶される。さらに、外部定位要素を算出するために基準点の位置を測量したときの温度Tsが基準温度としてROM23に記憶される。
【0042】
また、図3に示すようにz軸が水平面HPから傾くことにより、基線桿31にxz平面における撓みBExzが生ずる(図6参照)。撓みBExzにより、外部定位要素の一つであるスチルカメラ32R、32Lの光軸のxz平面上の角度方向にズレが発生する。そこで、撓みBExzによる方向のズレを補正するための所定の測定値がROM23に記憶される。
【0043】
所定の測定値は、後述するように、スチルカメラ32R、32Lの重量WR、WL、基線桿31の断面2次モーメントI、基準温度における基線桿31の長さ2×L、および基線桿31のヤング率Eである。
【0044】
なお、説明を簡単にするために、スチルカメラ32R、32Lの距離|xr|+|xl|は基線桿31と同じ長さ2×Lであり、原点からスチルカメラ32R、32Lまでの距離|xr|、|xl|は互いに等しく、長さLであるとする。
【0045】
以上のような構成の3次元物体測量装置10による測点の測量方法について以下に説明する。
【0046】
まず、画像撮影装置30が測点の近辺に設置される。測点がスチルカメラ32R、32Lの撮影範囲内に入るように、画像撮影装置30を設置する位置および姿勢が定められる。画像撮影装置30の位置および姿勢を固定した状態で、スチルカメラ32R、32Lにより測点が撮影される。
【0047】
測点が撮影されると、スチルカメラ32R、32Lから画像信号が測量写真解析装置20に送られる。また、撮影時のスチルカメラ32R、32L、および基線桿31の温度に相当する温度信号も測量写真解析装置20に送られる。さらに、撮影時の基線桿31の傾斜角A、傾斜角Bに相当する傾斜角信号も測量写真解析装置20に送られる。
【0048】
撮影が終わると、測量写真解析装置20において、測点の3次元座標を算出可能である。測点の3次元座標の算出は、外部定位要素、内部定位要素、および画像情報に基づいて行われる。
【0049】
3次元座標の算出の前に、外部定位要素および内部定位要素の補正が行われる。要素の補正は、温度変化に対する補正と傾きに対する補正が行われる。まず、温度変化に対する補正が行われる。
【0050】
温度変化に対する補正において、撮影時に測定したスチルカメラ32R、32Lおよび基線桿31それぞれの温度TrR、TrL、TrHと基準温度Tsとの差ΔTR、ΔTL、ΔTHが求められる。
【0051】
ROM23に記憶された基線桿31の1℃あたりの変化量ΔL(mm/℃)に温度変化量ΔTHが、焦点距離の1℃あたりの変化量ΔFLR、ΔFLL(mm/℃)、偏心量の1℃あたりの変化量ΔXcR、ΔXcL(mm/℃)、および傾きの1℃あたりの変化量ΔβR、ΔβL(rad/℃)に温度変化量ΔTR、ΔTLが乗じられる。
【0052】
温度変化による基線桿31の長さのズレΔL×ΔTH(mm)によって、スチルカメラ32R、32Lのx座標が補正される。温度変化によるスチルカメラ32R、32Lの焦点距離のズレΔFLR×ΔTR、ΔFLL×ΔTL(mm)によって、スチルカメラ32R、32Lの焦点距離が補正される。
【0053】
温度変化による偏心量のズレΔXcR×ΔTR、ΔXcL×ΔTL(mm)によって、スチルカメラ32R、32LのCCD面ISR、ISLの座標上の偏心量のx軸方向成分が補正される。温度変化による光軸の方向のズレΔβR×ΔTR、ΔβL×ΔTLに基づいて光軸のxz平面における角度方向、すなわちY軸周りの角度方向が補正される。
【0054】
温度変化による補正を終了すると、z軸、x軸周りの水平面HPからの傾斜によって生ずる光軸の方向のズレの補正が行われる。なお、xz平面における光軸のズレはxz平面における撓み角Cに等しい。したがって、xz平面における撓み角Cを求め、撓み角Cを用いて、y軸に平行な直線を軸にした回転角の補正が行われる。
【0055】
この補正では、最初に傾斜角Bの正負の判断が行なわれる。なお、基準方向の下向きの傾斜を正の方向、上向きの傾斜を負の方向とする。
【0056】
傾斜角Bが正である場合は、xz平面における撓み角Cは、C=W×(cosA)×(cosB)×L2/(E×I)にそれぞれの数値を代入することにより計算される。傾斜角Bが負である場合は、xz平面における撓み角Cは、C=−W×(cosA)×(cosB)×L2/(E×I)にそれぞれの数値を代入することにより計算される。傾斜角Bがゼロである場合は、xz平面における光軸にズレは生じない。
【0057】
z軸の水平面HPからの傾斜によって生じる、xz平面における撓み角Cによって、スチルカメラ32R、32Lのy軸に平行な直線を軸にした回転角が補正される。
【0058】
以上のように内部定位要素および外部定位要素の補正が終わると、測点の3次元座標の算出が開始される。3次元座標の算出では、ステレオカメラ32R、32Lによって撮影された2つの画像がモニタ25に表示される。操作者がそれぞれの画像内の同一の測点をマウスなどのポインタによって指定することにより、測点の画像上の座標である写真座標が、測量写真解析装置20に認識される。
【0059】
測点のそれぞれの画像における写真座標、補正された内部定位要素、および補正された外部定位要素に基づいて、CPU21によって測点の3次元座標が算出される。
【0060】
以上のように、本実施形態の3次元座標測量装置によれば、画像撮影装置の個々の構成部品の温度変化による測量精度の低下を防ぐことが可能になる。また、z軸、x軸周り、すなわち基準方向が水平面から傾いた場合に生じる測量精度の低下を防ぐことも可能である。
【0061】
また、本実施形態の3次元測量装置による外部定位要素および内部定位要素の補正により、従来公知の他の補正方法による測量精度を向上させることも可能である。例えば、他の補正方法として、任意の位置においた調整用チャートによる外部定位要素の検出や補正方法が知られている。
【0062】
このような検出や補正方法では、スチルカメラのx座標とスチルカメラの焦点距離を求めることは出来ない。また、スチルカメラのx座標と焦点距離は正確であることを前提として、他の要素が補正される。そのため、スチルカメラのx座標と焦点距離のいずれかに誤差があると、計算により求める他の要素の変位がさらに大きくなってしまっていた。
【0063】
しかし、本実施形態における温度補正方法によりスチルカメラの焦点距離とスチルカメラのx座標を補正することにより、従来公知の調整用チャートを用いた他の要素の補正の精度を高めることが可能になる。
【0064】
なお、本実施形態において、温度の変化に対して、スチルカメラ32R、32Lのx座標の変位、スチルカメラ32R、32Lの焦点距離の変位、スチルカメラ32R、32LのCCD面ISR、ISLの座標上の偏心量のx軸方向成分の変位、y軸に平行な直線を軸とした光軸の方向の変位の補正を行なったが、この中のいずれか一つ以上を補正する構成であってもよい。補正を行なわない場合に比べて測量精度を向上させることが可能である。
【0065】
また、本実施形態では、温度変化に対する補正および水平面に対する傾斜角の補正を行う構成であるが、いずれか一方のみを行なう構成であっても測量精度を向上させることは可能である。
【0066】
また、本実施形態において、測量写真解析装置20に温度変化を補正するための係数および、基準方向が水平面に対して傾く場合の外部定位要素の補正を行なうための係数を記憶するROM23が、測量写真解析装置20に設けられる構成であるが、画像撮影装置30に設けられる構成であってもよい。測量写真解析装置20を様々な画像撮影装置30に接続して使用する場合に、個々の画像撮影装置に固有のこれらの係数を取り違えることがない。
【0067】
また、本実施形態では、画像撮影装置30と測量写真解析装置20を組合わせて3次元物体測量装置を構成しているが、画像撮影装置30から出力される画像信号、温度信号、および傾斜信号をデジタル信号としてメモリに読込ませ、このメモリから測量写真解析装置にこれらの信号を読込ませて、測点の3次元座標を求める構成であってもよい。測量写真解析装置は実体視を利用したものでもよいし、左右画像の同一点をそれぞれ入力する方式でもよい。
【0068】
また、本実施形態では、補正対象要素の単位温度あたりの変化量をROM23に記憶する構成であるが、温度毎の補正対象要素の対応表などをROM23に記憶する構成であってもよい。本実施形態では、変化量と検出した温度に基づいて補正対象要素の補正を行なったが、後者においては検出した温度から直接補正対象要素の値を補正値として用いても本実施形態と同じ効果を発する。
【0069】
また、本実施形態では、スチルカメラ32R、32Lの重量WR、WL、基線桿31の断面2次モーメントI、基準温度における基線桿31の長さ2L、および基線桿31のヤング率EがROM23に記憶させる構成であるが、断面2時モーメントI、基線桿31の長さ2L、ヤング率Eの代わりに基線桿31のバネ定数を記憶させて、光軸のズレを算出させる構成であってもよい。または、傾斜角A、傾斜角Bに対するxz平面における光軸の方向のズレ、すなわち撓み角Cの対応表をROM23に記憶させる構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態である3次元物体測量装置を構成する画像撮影装置の斜視図である。
【図2】傾斜角Aを説明するための画像撮影装置の正面図である。
【図3】傾斜角Bを説明するための画像撮影装置の側面図である。
【図4】3次元物体測量装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図5】画像撮影装置の内部定位要素および外部定位要素の一部を説明するための、画像撮影装置の透視図である。
【図6】xz平面における基線桿の撓みと光軸の方向のズレを説明するための、画像撮影装置の平面図である。
【符号の説明】
【0071】
10 3次元物体測量装置
20 測量写真解析装置
22 インターフェース回路
23 ROM
30 画像撮影装置
31 基線桿
32R 右スチルカメラ
32L 左スチルカメラ
33H 基線桿支持部
33M 可動部
34R、34L、34H 温度センサ
35 チルトセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2のカメラと、
前記第1、第2のカメラを支持する支持体と、
前記第1、第2のカメラまたは前記支持体の少なくとも一つに設けられ、周囲の温度を検出する温度センサと、
前記第1、第2のカメラが撮影する写真に写る測量対象点の写真座標から前記測量対象点の3次元座標を求めるための変換係数の温度変化特性を記憶する記憶手段と、
前記温度センサが検出する温度と前記温度変化特性とに基づいて、前記変換係数を補正する補正手段とを備える
ことを特徴とする3次元物体測量装置。
【請求項2】
前記温度変化特性が記憶される変換係数は、前記第1、第2のカメラの焦点距離、前記第1、第2のカメラに設けられる撮像手段の中心の光軸からのズレ、前記支持体が前記第1、第2のカメラを支持する所定の姿勢の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の3次元物体測量装置。
【請求項3】
前記所定の姿勢は、
前記第1、第2のカメラの間の距離、
前記第1のカメラの光軸方向の単位ベクトルと前記第2のカメラの光軸方向の単位ベクトルとの合成ベクトルに平行で、前記第1のカメラと前記第2のカメラとを結ぶ直線に平行な平面における、前記第1、第2のカメラの光軸の向きの少なくとも一方である
ことを特徴とする請求項2に記載の3次元物体測量装置。
【請求項4】
前記温度変化特性は、単位温度あたりの前記変換係数の変化量であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の3次元物体測量装置。
【請求項5】
第1、第2のカメラと、
前記第1、第2のカメラを支持する支持体と、
前記支持体に設けられ、前記第1、第2のカメラの光軸の単位ベクトルの合成ベクトルの水平面に対する傾斜角を検出する傾斜角検出センサと、
前記第1、第2のカメラが撮影する写真に写る測量対象点の写真座標から前記測量対象点の3次元座標を求めるための変換係数の前記傾斜角の変化に対する傾斜角変化特性を記憶する記憶手段と、
前記傾斜角センサが検出する傾斜角と前記傾斜角変化特性とに基づいて、前記変換係数を補正する補正手段とを備える
ことを特徴とする3次元物体測量装置。
【請求項6】
前記補正手段に補正される前記変換係数は、前記合成ベクトルに平行で、前記第1、第2のカメラを結ぶ直線に平行な平面における、前記第1、第2のカメラの光軸の向きであることを特徴とする請求項5に記載の3次元物体測量装置。
【請求項7】
前記傾斜角変化特性は、前記支持体のバネ定数と前記第1、第2のカメラの重量であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の3次元物体測量装置。
【請求項8】
前記傾斜角変化特性は、傾斜角に対する前記変換係数の対応値であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の3次元物体測量装置。
【請求項9】
第1、第2のカメラと、前記第1、第2のカメラを支持する支持体と、前記第1、第2のカメラまたは前記支持体の少なくとも一つに設けられ周囲の温度を検出する温度センサとを有するステレオカメラから、前記温度センサが検出する周囲温度を取得する取得手段と、
前記周囲温度と、前記第1、第2のカメラが撮影する写真に写る測量対象点の写真座標から前記測量対象点の3次元座標に変換するための変換係数の温度変化特性とを記憶する記憶手段と、
前記周囲温度と前記温度変化特性とに基づいて、前記変換係数を補正する補正手段とを備える
ことを特徴とする測量写真解析装置。
【請求項10】
第1、第2のカメラと、前記第1、第2のカメラを支持する支持体と、前記支持体の水平面に対する傾斜角を検出する傾斜角検出センサとを有するステレオカメラから、前記傾斜角検出センサが検出する傾斜角を取得する取得手段と、
前記傾斜角と、前記第1、第2のカメラが撮影する写真に写る測量対象点の写真座標から前記測量対象点の3次元座標に変換するための変換係数の前記傾斜角の変化に対する変化量を算出するための補正係数とを記憶する記憶手段と、
前記傾斜角と前記補正係数とに基づいて、前記変換係数を補正する補正手段とを備える
ことを特徴とする測量写真解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−33315(P2007−33315A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218864(P2005−218864)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)