説明

3軸調整型の物体検知装置

検知エリアの3軸方向の調整が容易な物体検知装置を提供する。検知波を送受信するアンテナ(AT)を有する3軸調整型の物体検知装置(D)であって、支持台(1)に第1軸心(R1)の回りに回動自在に支持された第1ホルダ(2)と、第1ホルダ(2)に第1軸心(R1)と直交する第2軸心(R2)の回りに回動自在に支持された第2ホルダ(3)と、アンテナ(AT)を保持し、第2ホルダ(3)に第2軸心(R2)と直交する第3軸心(R3)の回りに回動自在に支持されたアンテナモジュール4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、自動ドアや防犯監視用などに用いられるマイクロ波のような検知波を利用した物体検知装置に関し、詳しくは3軸方向の検知エリア調整が容易かつ迅速に行える物体検知装置に関する。
【背景技術】
自動ドア用や防犯監視用の物体検知装置は、例えばマイクロ波よりなる検知波を検知エリアに向けて放射し、前記検知エリアに侵入した人体に当たって反射した検知波を受信してドップラー効果による周波数変化から前記人体を検知するようになっている。このような物体検知装置として、金属箔よりなるパッチアンテナを使用し、このアンテナの前面に、90°回転させることにより凸レンズもしくは凹レンズとなりうる誘導体レンズを回転自在に配設したものがある(特開平7−110375号公報参照)。この装置は、誘導体レンズを90°回転することで検知エリア(ワイドエリアもしくはナローエリア)の調整を行うことができ、その操作も容易である。
【発明の開示】
しかしながら、誘導レンズを回動自在に設けた物体検知装置でも、一つのレンズを回転させるだけであるから、検知エリアの変更幅に限度があり、十分な調整を行えない場合がある。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたもので、検知エリアの左右方向および前後方向の調整と、ワイドエリアまたはナローエリアの回転切替という3軸方向の調整が容易かつ迅速に行える3軸調整型の物体検知装置を提供することを目的とする。
前記した目的を達成するために、本発明の一構成に係る3軸調整型の物体検知装置は、検知波を送受信するアンテナを有する3軸調整型の物体検知装置であって、支持台と、この支持台に第1軸心の回りに回動自在に支持された第1ホルダと、前記第1ホルダに前記第1軸心と直交する第2軸心の回りに回動自在に支持された第2ホルダと、前記アンテナを保持し、前記第2ホルダに前記第2軸心と直交する第3軸心の回りに回動自在に支持されたアンテナモジュールとを備えている。
この3軸調整型の物体検知装置によれば、第1ホルダを第1軸心の回りに回動させることにより、左右方向の検知エリア調整が行える。また、第2ホルダを第2軸心の回りに回動させることにより、前後方向の検知エリア調整が行える。さらに、アンテナモジュールを第3軸心の回りに回動させることにより、アンテナの向きを変えることができて、検知エリアの形状をワイドまたはナローエリアに切替調整できる。このように、3軸方向の検知エリアの調整が容易であるから、装置取付現場での取付施工が容易かつ迅速に行える。また、検知エリアの形状の切替調整が1つのアンテナの向きを変えるだけで行えるから、2種類の専用アンテナを用意する必要がないので、部品点数の増大を抑制できて装置のコストを低く抑えることができる。
本発明の実施形態では、前記第1ホルダおよび第2ホルダを半球形に構成している。このようにしたことにより、前記第1ホルダと第2ホルダとを相対回転自在に支持する構造が簡略化されるとともに、前記支持台に対して第1ホルダを回動したり、第1ホルダに対して第2ホルダを回動する際における回動操作性が向上する。
本発明の実施形態では、前記支持台は、電子部品を組み込んだ基板を収納し、外部に取り付けられるベースと、このベースを覆うインナカバーとを有し、前記第1ホルダの下端外周部が前記ベースとインナカバーとの間で挟持されている。このようにしたことにより、ベースに収納された電子部品を組み込んだ基板は、インナカバーおよび第1ホルダによって保護されるのみならず、別の取付部材を用いなくとも第1ホルダを支持台に支持させることができ、第1ホルダの回動支持機構の簡略化を実現できる。
また、本発明の実施形態では、前記支持台に対する第1ホルダの回動に伴って間欠的に噛み合って第1ホルダの回動操作にクリック感を与える第1間欠係合部を備えている。このことにより、作業者はクリック感を感じながら第1ホルダを回動操作できるので、左右方向における検知エリア調整がより行いやすくなる。
また、本発明の実施形態では、前記第1ホルダに対する第2ホルダの回動に伴って間欠的に噛み合って第2ホルダの回動操作にクリック感を与える第2間欠係合部を備えている。このことにより、前記第1間欠係合部と同様、クリック感を感じながら第2ホルダを回動操作できるので、前後方向における検知エリア調整がより行いやすくなる。
さらに、本発明の実施形態では、前記アンテナモジュールを、アンテナを保持する保持部材と裏板との間で前記第2ホルダの頂部取付部を挟持する構成としている。このように構成したことにより、別の取付部材を必要とせず、アンテナモジュールを第2ホルダに簡単な構成で取り付けることができる。
以上のように、本発明にかかる3軸調整型の物体検知装置によれば、3軸方向の検知エリア調整が装置取付現場で容易かつ迅速に行える。また、ワイドエリアやナローエリアの設定のための専用アンテナが不要で、1つのアンテナの回転操作でワイドもしくはナローエリアの切替調整が行えるので、部品点数の削減が図れ、装置のコストを低く抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、この発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は添付の請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は同等部分を示す。
図1は、本発明の一実施形態にかかる3軸調整型の物体検知装置を示し、図2のI−I線に沿った断面図である。
図2は、同物体検知装置を透視状態で示す正面図である。
図3は、同物体検知装置のベースの正面図である。
図4は、同物体検知装置のインナカバーの正面図である。
図5Aは、同物体検知装置の第1ホルダを示す斜視図、図5Bは、同第1ホルダの底面図、図5Cは、同第1ホルダに取り付けた係合体の拡大斜視図である。
図6は、同物体検知装置の第2ホルダを示す斜視図である。
図7は、同物体検知装置のアンテナモジュールの回転切替を示す正面図である。
図8は、検知エリアの左右方向への移動を示す図である。
図9は、検知エリアの前後方向への移動を示す図である。
図10A〜10Cはワイドエリアの形状を示す図である。
図11A〜11Cはナローエリアの形状を示す図である。
図12は、同物体検知装置の物体検知システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる3軸調整型の物体検知装置Dを示す断面図で、図2の矢印I方向から見た図である、図2は同じく3軸調整型の物体検知装置の正面図である。
図1において、本発明にかかる物体検知装置Dの支持台1は、物体検知回路の一部を構成する電子部品E1を収納した基板13を収納し、自動ドアの上方の無目や天井のような外部の部材に取り付けられるベース11(図3)と、このベース11上を覆うインナカバー12(図4)とを有している。
前記ベース11とインナカバー12との間には、半球形の第1ホルダ2(図5)の下端外周部2aが挟持され、かつ支持台1の底面、つまり、物体検知装置Dを建物や壁のような支持部材に取り付ける取付面となるベース11の底面11aに対して直交する第1軸心R1の回りに回動自在に支持されている。この第1軸心R1は、前記底面11aと直交しない場合もあり、要するに、底面11aと交差する方向に延びる軸心である。前記ベース11とインナカバー12とは、例えば図2に示す5個所のねじ止め6で取り付けられている。
また、この第1ホルダ2内には、半球形の第2ホルダ3(図6)が前記第1軸心R1と直交する第2軸心R2の回りに回動自在に支持されている。なお、前記第1ホルダ2内に第2ホルダ3を支持する手段は、図6の第2ホルダ2の第2軸心R2に相当する位置にある支持突部31,31を、図5Aの第1ホルダ2の第2軸心R2に相当する位置にある支持孔22,22にそれぞれ嵌め込むことにより行う。
図1に示す第2ホルダ3の頂部には、検知波の一例であるマイクロ波を送受信するアンテナモジュール4が前記第2軸心R2と直交する第3軸心R3の回りに回動自在となるように支持されている。このアンテナモジュール4は、アンテナATを保持する保持部材41と第2ホルダ3の裏板42とが、その間で第2ホルダ3の頂部取付部32を挟持した状態で、2カ所のビス止め44によって固定されている。また、前記第2ホルダ3の裏板42の裏面側には、送受信回路を構成する電子部品E2を収納した基板43が装着されており、前記アンテナATは、図2に示すように、ジグザク状の2次元形状のワイヤで構成されている。アンテナモジュール4は、第2ホルダ3の第2軸心R2回りの回動により、前記第1ホルダ2の開口部21内を、図1の実線で示す位置PIから想像線で示す位置P2まで前後動できるようになっている。
前記支持台1は、その上方から合成樹脂製のドーム状の外部カバー5で覆われ、前記第1ホルダ2、第2ホルダ3およびアンテナモジュール4が保護されている。さらに、前記ベース11とインナカバー12の間には、基板13に一端が接続された表示灯(LED)Pが設けられ、前記外部カバー5を透して外部から装置の動作中であることが確認できるようになっている。
前記支持台1と第1ホルダ2の間に、第1ホルダ2の回動に伴って間欠的に噛み合って前記第1ホルダ2の回動操作時にクリック感を与える第1間欠係合部9が設けられている。また、前記第1ホルダ2と第2ホルダ3の間に、第2ホルダ3の回動に伴って間欠的に噛み合って前記第2ホルダ3の回動操作にクリック感を与える第2間欠係合部10(図2)が設けられている。
前記第1間欠係合部9は、図3に示す支持台1のベース11上に設けた金属の板材からなる係合体91と、図5A,5Bに示す第1ホルダ2の端面に設けた歯形の被係合体92との組み合わせで構成され、前記第1ホルダ2の回動操作時に前記被係合体92を図3の係合体91に間欠的に係合させることで、前記クリック感が発揮される。この際、この第1ホルダ2の回動操作は、図4に示すインナカバー12の縁部に付した目盛14を見ながら行えるので、より精度の高い調整が可能となる。
同様に、図2の第2間欠係合部10も、図5A〜5Cに示す第1ホルダ2の内面に装着した金属の板材からなる係合体101と、図6に示す第2ホルダ3の表面に設けた歯形の被係合体102との組み合わせで構成されており、前記第2ホルダ3の回動操作時に前記被係合体102を図5Aの係合体101に間欠的に係合させることで、前記クリック感が発揮される。この際、この第2ホルダ3(図6)の回動操作は、第1ホルダの開口部21の縁部に付した目盛23を見ながら行えるので、前記第1ホルダ2の回動操作の場合と同様、より精度の高い調整が可能となる。
このように構成される物体検知装置Dは、図2の支持台1の取付孔7を利用して、例えば、図10の正面図に示すように、スライド式自動ドア81の上方の無目82に取り付けて設置される。物体検知装置Dの検知エリアの設定は次のようにして行う。まず、左右方向の検知エリア設定は、図1の支持台1に対して第1ホルダ2を第1軸心R1の回りに所定量、図2に示す矢印A方向に往復回動させることで行う。このとき、上から見ると、図8のS1およびS2に示すように、検知エリアはドア81に対して左右方向に移動する。次に、前後方向の検知エリア設定は、図1の第1ホルダ2に対して第2ホルダ3を第2軸心R2の回りに所定量、矢印B方向に回動(前後動)させることで行う。このとき、上から見ると、図9のS3およびS4に示すように、検知エリアはドア81に対して前後に移動する。
つづいて、ワイドエリアまたはナローエリアのエリア形状の設定は、図1の第2ホルダ3に対してアンテナモジュール4を第3軸心R3の回りを所定量、図7に示す矢印C方向に回動させてアンテナATの向きを変えることにより行う。すなわち、アンテナモジュール4を回動させて前記アンテナATの向きを、図7の実線で示す向きにすれば、図10A,10Bに示す装置設置面の前方に幅が広くなったワイドエリアWを設定することができる。このワイドエリアWからなる検知エリアは、正面から見て床83上における幅がW1(図10A)で、上から見たエリア形状は横長の長楕円形状(図10B)となり、側方から見たエリア形状は奥行き長さL1(図10C)と比較的短めになっている。このように検知エリアをワイドエリアWに設定すると、両開きになった自動ドア81に適したセンサとなる。
アンテナモジュール4を回動させて前記アンテナATの向きを、図7の破線で示す向きにすれば、図11A〜11Cに示す装置設置面の前方に幅が狭くなったナローエリアNを設定することができる。このナローエリアNからなる検知エリアは、正面から見て、床83上における幅W2(図11A)がW1(図10A)よりも狭く、上から見たエリア形状が縦長の長楕円形状(図11B)となり、側方から見たエリア形状は奥行き長さL1(図10C)よりも大きいL2(図11C)となっている。このように検知エリアをナローエリアNに設定すると、片引きドアやスウイング式の自動ドア81Aに適したセンサとなる。
この物体検知装置を図12に示す自動ドアシステム50に用いた場合、アンテナモジュール4に設けた送受信回路25の作動により、アンテナモジュール4のアンテナATから、マイクロ波よりなる検知波が検知エリアに向けて放射され、移動する人体などの物体で反射した検知波がアンテナATから送受信回路25に送られる。この送受信回路25で受信した反射波にドップラー効果による周波数の変化があったとき、検出回路26にて検出される。この検出結果は図2の接続端子8に接続された回線を介して外部の図11に示すドア制御回路27に送られて、自動ドアの開閉を制御する。
このとき、前記自動ドアの制御は、装置の設置環境を考慮して、両開きドア81(図10)の場合には、アンテナモジュール4を図1の第3軸心R3の回りに回動してアンテナATを予め図7に実線で示す向きに位置させ、検知エリアをワイドエリア(図10)に設定する。また片引きドア(図11)やスウイング式ドアの場合には、アンテナATを予め図7に破線で示す向きに位置させ、検知エリアをナローエリア(図11)に設定する。
以上のように構成される本発明の3軸調整型の物体検知装置によれば、検知エリアの調整が左右方向および前後方向に加えて、装置Dの設置環境に応じ、図10に示すワイドエリアW、図11に示すナローエリアNの設定が装置取付の施工現場で容易かつ迅速に行える。特に、ワイドエリアWまたはナローエリアNの設定は、アンテナモジュール4の回転によって容易に行えるので、ワイドまたはナローエリア用の2種類の専用アンテナを用意する必要がなくなり、部品点数の増大を抑制することができる。また、これにより、コンパクトで取扱性に優れた物体検知装置を低コストで製造できる。
なお、前記実施形態では、アンテナATはワイヤ状のほか、金属箔からなるパッチアンテナであってもよい。また、本発明の物体検知装置は、前記自動ドア用のセンサとしてのみならず、不法侵入者を検知して警報信号を出力する防犯検知センサにも使用できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【図6】

【図7】

【図8】

【図9】



【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知波を送受信するアンテナを有する3軸調整型の物体検知装置であって、
支持台と、
前記支持台に第1軸心の回りに回動自在に支持された第1ホルダと、
前記第1ホルダに前記第1軸心と直交する第2軸心の回りに回動自在に支持された第2ホルダと、
前記アンテナを保持し、前記第2ホルダに前記第2軸心と直交する第3軸心の回りに回動自在に支持されたアンテナモジュールと、
を備えた3軸調整型の物体検知装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第1ホルダおよび第2ホルダは、半球形である3軸調整型の物体検知装置。
【請求項3】
請求項1において、前記支持台は、電子部品を組み込んだ基板を収納し、外部に取り付けられるベースと、このベースを覆うインナカバーとを有し、前記第1ホルダの下端外周部が前記ベースとインナカバーとの間で挟持されている3軸調整型の物体検知装置。
【請求項4】
請求項1において、前記支持台に対する第1ホルダの回動に伴って間欠的に噛み合って第1ホルダの回動操作にクリック感を与える第1間欠係合部を備えている3軸調整型の物体検知装置。
【請求項5】
請求項1において、前記第1ホルダに対する第2ホルダの回動に伴って間欠的に噛み合って第2ホルダの回動操作にクリック感を与える第2間欠係合部を備えている3軸調整型の物体検知装置。
【請求項6】
請求項1において、前記アンテナモジュールは、アンテナを保持する保持部材と裏板との間で前記第2ホルダの頂部取付部を挟持している3軸調整型の物体検知装置。

【国際公開番号】WO2004/068173
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【発行日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504688(P2005−504688)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000628
【国際出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【出願人】(000103736)オプテックス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】