説明

4−アミノテトラヒドロピラン化合物及びその酸塩の製法、その合成中間体およびその製法

本発明は、ラネーニッケル、貴金属触媒及び金属酸化物から選ばれる少なくとも1種の化合物の存在下、一般式(1)


式中、Rは、水素原子又は炭化水素基を示す、
で示される4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩を分解反応させることを特徴とする、一般式(2)


式中、Rは、前記と同義である、
で示される、4−アミノテトラヒドロピラン化合物及びその酸塩の製法、並びにその合成中間体及びその製法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−アミノテトラヒドロピラン化合物及びその酸塩の新規な製法に関する。4−アミノテトラヒドロピラン化合物及びその酸塩は、医薬・農薬等の合成原料として有用な化合物である。本発明は、また、2−置換テトラヒドロピラニル−4−スルホネート及びその製法に関する。2−置換テトラヒドロピラニル−4−スルホネートは、医薬・農薬等の原料や合成中間体として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来、4−アミノテトラヒドロピラン化合物及びその酸塩を製造する方法としては、従来、テトラヒドロピラン−4−オン、アンモニウムアセテート、モレキュラーシーブ粉末及び水素化シアノホウ素ナトリウムをエタノール中で反応させて、4−アミノテトラヒドロピランを収率12%で得る方法が開示されている(例えば、特表平11−510180号公報(第66〜67頁)参照)。しかしながら、この方法では、大過剰のアンモニア源(例えば、アンモニウムアセテート)を使用しなければならず、又、反応系が複雑であるために反応操作が繁雑となる上、目的物の収率が低いという問題があった。
【0003】
また、上記化合物の合成原料として使用することができる2−置換テトラヒドロピラニル−4−スルホネート及びその製法については全く知られていなかった。
【0004】
本発明の目的は、繁雑な操作を必要とせず、簡便な方法にて、4−アミノテトラヒドロピラン化合物及びその酸塩を製造出来る、工業的に好適な4−アミノテトラヒドロピラン化合物及びその酸塩の製法を提供することである。
【0005】
本発明の他の目的は、上記問題点を解決し、温和な条件下、簡便な方法によって、2−置換テトラヒドロピラニル−4−スルホネートを高収率で製造出来る、工業的に好適な2−置換テトラヒドロピラニル−4−スルホネート及びその製法を提供することである。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、ラネーニッケル、貴金属触媒及び金属酸化物から選ばれる少なくとも1種の化合物の存在下、一般式(2):

式中、Rは、水素原子又は炭化水素基を表す、
で示される4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩を分解反応させることを特徴とする、一般式(1):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される4−アミノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩の製法に関する。
【0007】
本発明は、(A)一般式(3):

式中、Rは、前記と同義であり、Xは、脱離基を表す、
で示される4−置換−テトラヒドロピラン化合物にヒドラジンを反応させて、一般式(2):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩とする第一工程、
(B)次いで、ラネーニッケル、貴金属触媒及び金属酸化物から選ばれる少なくとも1種の化合物の存在下、該反応液中の4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩を分解させて、一般式(1):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される4−アミノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩とする第二工程
を含んでなることを特徴とする、4−アミノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩を製造する方法に関する。
【0008】
本発明は、また、前記一般式(2):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される2−置換−4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩に関する。
【0009】
本発明は、更に、一般式(4):

式中、Rは、炭化水素基を表し、Yは有機スルホン酸基を表す、
で示される2−置換テトラヒドロピラニル−4−スルホネートに関する。
【0010】
本発明は、又、3−ブテン−1−オールに、一般式(5):
CHO (5)
式中、Rは、前記と同義である、
で示されるアルデヒド化合物、その多量体又はアセタール体及び有機スルホン酸を反応させることを特徴とする、前記式(4)で示される2−置換テトラヒドロピラニル−4−スルホネートの製法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の4−アミノテトラヒドロピラン化合物の製法において使用される4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物は、前記の一般式(2)で示される。その一般式(2)において、Rは、水素原子又は炭化水素基であり、炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体も含む。本発明においては、これらの中でも、Rとして水素原子、メチル基、エチル基又はフェニル基が好ましい。
【0012】
上記4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物の酸塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸の塩、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、p−ブロモベンゼンスルホン酸、フタル酸、イソフタル酸、安息香酸等の有機酸の塩等が挙げられる。
このような4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物としては、例えば、4−ヒドラジノテトラヒドロピラン、4−ヒドラジノ−2−メチルテトラヒドロピラン、4−ヒドラジノ−2−エチルテトラヒドロピラン、4−ヒドラジノ−2−n−プロピルテトラヒドロピラン、4−ヒドラジノ−2−フェニルテトラヒドロピラン等が挙げられる。また、これらの塩としては、上記した酸の塩が挙げられ、好ましくは、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0013】
本発明の分解反応に使用するラネーニッケルとは、ニッケルとアルミニウムとを主成分とする合金であり、ニッケルの含有量が好ましくは10〜90質量%、更に好ましくは40〜80質量%が使用される。通常は、展開したラネーニッケルが使用されるが、種々の方法によって、前処理されたラネーニッケルや、安定化されたラネーニッケルも使用出来る。更に、ラネーニッケル中に、コバルト、鉄、鉛、クロム、チタン、モリブデン、バナジウム、マンガン、スズ、タングステン等のような金属が含まれているものも使用することが出来る。
【0014】
前記ラネーニッケルの使用量は、ニッケル原子換算で、4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩1gに対して、好ましくは0.01〜1.0g、更に好ましくは0.1〜0.5gである。
【0015】
本発明の分解反応に使用する貴金属触媒とは、パラジウム及び白金の少なくとも一方を含む触媒であるが,具体的には、例えば、パラジウム/炭素、パラジウム/硫酸バリウム、水酸化パラジウム/炭素、白金/炭素、硫化白金/炭素、パラジウム−白金/炭素等が挙げられるが、好ましくはパラジウム/炭素、白金/炭素が使用される。なお、これらの貴金属触媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0016】
前記貴金属触媒の使用量は、金属原子換算で、4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩1gに対して、好ましくは0.00025〜0.5g、更に好ましくは0.0005〜0.025gである。
【0017】
本発明の分解反応に使用する金属酸化物とは、様々な金属の酸化物が挙げられ、本発明の目的を達成できる限り特に限定されない。このような金属酸化物としては、好ましくは酸化銅(I)又は酸化銅(II)が使用される。なお、金属酸化物は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0018】
前記金属酸化物の使用量は、4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩1gに対して、好ましくは0.00025〜0.5g、更に好ましくは0.0005〜0.025gである。
【0019】
本発明の分解反応は溶媒中で行うのが好ましい。使用する溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されず、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類が挙げられるが、好ましくは水、アルコール類、更に好ましくは水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが使用される。なお、これらの有機溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0020】
前記溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性等により適宜調節するが、4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物1gに対して、好ましくは0.1〜100ml、更に好ましくは1.0〜10mlである。
【0021】
又、本発明の分解反応では、反応速度を高めるためや目的物の反応収率を高めるために、系内に水素ガスを存在させることが望ましい。
【0022】
本発明の分解反応は、例えば、4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩、ラネーニッケル、貴金属触媒及び金属酸化物から選ばれる少なくとも1種の化合物及び溶媒を混合して、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは20〜120℃、更に好ましくは50〜100℃であり、反応圧力は特に制限されないが、好ましくは0.1〜5MPa、更に好ましくは0.1〜2MPaである。また、反応時間は、反応が完結する時間であればよく、特に限定されない。
【0023】
なお、最終生成物である4−アミノテトラヒドロピラン化合物及びその酸塩は、例えば、反応終了後、濾過、濃縮、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な方法によって単離・精製される。なお、反応液中のラネーニッケルは、反応終了後、トリエチルアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のアミン類を用いて取り除くことが望ましい。
【0024】
上記した分解反応により得られる4−アミノテトラヒドロピラン化合物としては、例えば、4−アミノテトラヒドロピラン、4−アミノ−2−メチルテトラヒドロピラン、4−アミノ−2−エチルテトラヒドロピラン、4−アミノ−2−n−プロピルテトラヒドロピラン、4−アミノ−2−フェニルテトラヒドロピラン等が挙げられる。また、これらの塩としては、上記した酸の塩が挙げられ、好ましくは、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0025】
上記分解反応において使用される式(2)で示される4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物は、以下の(A)第一工程により製造することができる。
【0026】
(A)第一工程
本発明の第一工程は、4−置換−テトラヒドロピラン化合物にヒドラジンを反応させて、4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩を主生成物とする反応液を得る工程である。
【0027】
本発明の第一工程において使用する4−置換−テトラヒドロピラン化合物は、前記の一般式(3)で示される。その一般式(3)において、Rは、前記と同義である。
【0028】
又、Xは、脱離基であり、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基、1−プロパンスルホニルオキシ基、2−プロパンスルホニルオキシ基等のアルキルスルホニルオキシ基;ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニルオキシ基、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルオキシ基、1−ナフタレンスルホニルオキシ基、2−ナフタレンスルホニルオキシ基、p−メトキシベンゼンスルホニルオキシ基、p−クロロベンゼンスルホニルオキシ基、o−ニトロベンゼンスルホニルオキシ基等のアリールスルホニルオキシ基が挙げられるが、好ましくはアルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、更に好ましくはメタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基である。
【0029】
本発明の第一工程で使用するヒドラジンの量は、4−置換−テトラヒドロピラン化合物1モルに対して、好ましくは1.0〜20.0モル、更に好ましくは4.0〜15.0モルである。なお、該ヒドラジンは、無水物(遊離のヒドラジン)、水和物や酸塩、又は水溶液(酸塩を塩基で中和したものも含む)等のいずれの形態でも構わない。
【0030】
本発明の第一工程は溶媒中で行うのが好ましい。使用する溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類が挙げられるが、好ましくは水、アルコール類、更に好ましくは水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが使用される。なお、これらの有機溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0031】
前記溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性等により適宜調節するが、4−置換−テトラヒドロピラン化合物1gに対して、好ましくは0.1〜50ml、更に好ましくは0.5〜10mlである。
【0032】
本発明の第一工程は、例えば、不活性ガスの雰囲気にて、4−置換−テトラヒドロピラン化合物、ヒドラジン及び有機溶媒を混合して、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは20〜120℃、更に好ましくは50〜100℃であり、反応圧力は特に制限されない。また、反応時間は、反応が完結する時間であればよく、特に限定されない。
【0033】
なお、第一工程によって、4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩を主生成物とする反応液が得られるが、この反応液は、そのまま又は濃縮等により容量を調節した後に、次の(B)第二工程において使用される。
【0034】
(B)第二工程
第二工程は、前記4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物の4−アミノテトラヒドロピラン化合物への分解反応と同様に行うことができる。
【0035】
上記第一工程の原料として使用される本発明の2−置換テトラヒドロピラン−4−スルホネートは、前記の一般式(4)で示される。その一般式(4)において、Rは、炭化水素基であり、炭化水素基としては、前記式(1)におけるRと同一の炭化水素基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントラニル基等のアリール基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体も含む。本発明においては、これらの中でも、Rとして好ましくは、メチル基、エチル基又はフェニル基が挙げられる。
【0036】
Yは、有機スルホン酸基であり、例えば、メタンスルホン酸基、エタンスルホン酸基、トリフルオロメタンスルホン酸基等のアルキルスルホン酸基;ベンゼンスルホン酸基、p−トルエンスルホン酸基、p−クロロベンゼンスルホン酸基、p−ブロモベンゼンスルホン酸基等のアリールスルホン酸基が挙げられる。
【0037】
このような式(4)で示される2−置換テトラヒドロピラン−4−スルホネートとしては、例えば、2−メチルテトラヒドロピラン−4−メタンスルホネート、2−メチルテトラヒドロピラン−4−エタンスルホネート、2−メチルテトラヒドロピラン−4−トリフルオロメタンスルホネート、2−メチルテトラヒドロピラン−4−ベンゼンスルホネート、2−メチルテトラヒドロピラン−4−p−トルエンスルホネート、2−メチルテトラヒドロピラン−4−p−クロロベンゼンスルホネート、2−メチルテトラヒドロピラン−4−p−ブロモベンゼンスルホネート、2−エチルテトラヒドロピラン−4−メタンスルホネート、2−エチルテトラヒドロピラン−4−エタンスルホネート、2−エチルテトラヒドロピラン−4−トリフルオロメタンスルホネート、2−エチルテトラヒドロピラン−4−ベンゼンスルホネート、2−エチルテトラヒドロピラン−4−p−トルエンスルホネート、2−エチルテトラヒドロピラン−4−p−クロロベンゼンスルホネート、2−エチルテトラヒドロピラン−4−p−ブロモベンゼンスルホネート、2−フェニルテトラヒドロピラン−4−メタンスルホネート、2−フェニルテトラヒドロピラン−4−エタンスルホネート、2−フェニルテトラヒドロピラン−4−トリフルオロメタンスルホネート、2−フェニルテトラヒドロピラン−4−ベンゼンスルホネート、2−フェニルテトラヒドロピラン−4−p−トルエンスルホネート、2−フェニルテトラヒドロピラン−4−p−クロロベンゼンスルホネート、2−フェニルテトラヒドロピラン−4−p−ブロモベンゼンスルホネート等が挙げられる。
【0038】
本発明の反応において使用するアルデヒド化合物、その多量体又はアセタール体は、前記の一般式(5)で示される。その一般式(5)において、Rは、前記と同義である。このようなアルデヒド化合物としては、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド等のアルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、o−トリルアルデヒド、m−トリルアルデヒド、p−トリルアルデヒド等のアリールアルデヒド等が挙げられる。また、前記アルデヒド化合物の多量体としては、例えば、パラアルデヒド、メタアルデヒド、パラプロピオンアルデヒド等が挙げられ、アセタール体としては、例えば、アセトアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドジエチルアセタール等が挙げられる。
【0039】
前記アルデヒド化合物、その多量体又はアセタール体の使用量は、アルデヒド換算で、3−ブテン−1−オール1モルに対して、好ましくは1.0〜5.0モル、更に好ましくは1.1〜2.0モルである。
【0040】
本発明の反応において使用する有機スルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸類;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、p−ブロモベンゼンスルホン酸等のアリールスルホン酸類が挙げられる。
【0041】
前記有機スルホン酸の使用量は、3−ブテン−1−オール1モルに対して、好ましくは1.0〜5.0モル、更に好ましくは1.1〜2.0モルである。
【0042】
本発明の反応は、有機溶媒の存在下にて行うのが望ましい。使用される有機溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のカルボン酸エステル類;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類が挙げられるが、好ましくは芳香族炭化水素類、エーテル類、カルボン酸エステル類、更に好ましくは芳香族炭化水素類が使用される。これらの有機溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0043】
前記有機溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性により適宜調節するが、3−ブテン−1−オール1gに対して、好ましくは0.1〜50ml、更に好ましくは0.1〜10mlである。
【0044】
本発明の反応は、例えば、3−ブテン−1−オール、アルデヒド化合物、有機スルホン酸及び有機溶媒を混合して、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは10〜80℃、更に好ましくは20〜60℃であり、反応圧力は特に制限されない。また、反応時間は、反応が完結する時間であればよく、特に限定されない。
【0045】
なお、最終生成物である2−置換テトラヒドロピラン−4−スルホネートは、例えば、反応終了後、濾過、濃縮、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な方法によって単離・精製される。
【実施例】
【0046】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0047】
実施例1
(1)4−ヒドラジノテトラヒドロピランの合成
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積500mlのガラス製フラスコに、純度95%のテトラヒドロピラニル−4−メタンスルホネート134.7g(710mmol)、ヒドラジン一水和物256ml(5.27mol)及びエタノール256mlを加え、窒素雰囲気下、攪拌しながら70〜80℃で3時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、8mol/l水酸化ナトリウム水溶液98ml(784mmol)を加えた後、減圧下で濃縮した。濃縮物にトルエン500mlを加えた後に濾過し、濾液を再び減圧下で濃縮した。析出した固体を濾別して、黄色液体として、純度93%(ガスクロマトグラフィーによる面積百分率)の4−ヒドラジノテトラヒドロピラン45.0gを得た(単離収率:51%)。
【0048】
4−ヒドラジノテトラヒドロピランの物性値は以下の通りであった。
CI−MS(m/e);117(M+1)
H−NMR(CDCl,δ(ppm));1.28〜1.41(2H,m)、1.84〜1.90(2H,m)、2.69〜2.78(1H,m)、3.40〜3.45(2H,m)、3.92〜3.98(2H,m)、4.80(3H,brs)
【0049】
(2)4−アミノテトラヒドロピランの合成
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積30mlのガラス製フラスコに、上記(1)と同様な方法で合成した、純度93%の4−ヒドラジノテトラヒドロピラン260mg(2.08mmol)、展開ラネーニッケル92mg及びエタノール2.5mlを加え、水素雰囲気下、75℃で6時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、反応液を濾渦して、濾液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、4−アミノテトラヒドロピランが136mg生成していた(反応収率:65%)。
【0050】
実施例2
(1)4−ヒドラジノテトラヒドロピラン塩酸塩の合成
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積200mlのガラス製フラスコに、純度95%のテトラヒドロピラニル−4−メタンスルホネート10.0g(50mmol)、ヒドラジン一水和物26ml(530mmol)及びエタノール26mlを加え、窒素雰囲気下、攪拌しながら75℃で3時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、28重量%ナトリウムメトキシドメタノール溶液14g(72.6mmol)を加えた後、減圧下で濃縮した。濃縮物にトルエン50mlを加えた後に濾過し、濾液を再び減圧下で濃縮した。濃縮物を0℃まで冷却し、メタノール50ml及び12mol/l塩酸6.5ml(78mmol)を加えた後に減圧下で濃縮した。濃縮物をエタノール及びトルエンを用いて再結晶させ、無色結晶として、純度99%(ガスクロマトグラフィーによる面積百分率)の4−ヒドラジノテトラヒドロピラン塩酸塩2.8gを得た(単離収率:34%)。
【0051】
4−ヒドラジノテトラヒドロピラン塩酸塩の物性値は以下の通りであった。
CI−MS(m/e);117(M+1−HCl)
H−NMR(DMSO−d,δ(ppm));1.50(2H,brs)、1.90(2H,d,J=8.1Hz)、3.13(1H,brs)、3.28(2H,dt,J=12.0,2.4Hz)、3.88(2H,d,J=12.0Hz)、4.98(1H,brs)、10.23(3H,brs)
【0052】
(2)4−アミノテトラヒドロピラン塩酸塩の合成
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積500mlのガラス製フラスコに、上記(1)と同様な方法で合成した、純度99%の4−ヒドラジノテトラヒドロピラン塩酸塩60.0g(392mmol)、展開ラネーニッケル12.0g、エタノール120ml及び水120mlを加え、水素雰囲気下、75℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、反応液を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。次いで、濃縮物にn−ブチルアルコール200ml及び12mol/l塩酸50ml(600mmol)を加えた後に減圧下で濃縮して、白色結晶として、純度98%(ガスクロマトグラフィーによる面積百分率)の4−アミノテトラヒドロピラン塩酸塩38.5gを得た(単離収率:70%)。
【0053】
4−アミノテトラヒドロピラン塩酸塩の物性値は以下の通りであった。
CI−MS(m/e);102(M+1−HCl)
H−NMR(DMSO−d,δ(ppm));1.52〜1.66(2H,m)、1.84〜1.90(2H,m)、3.15〜3.45(3H,m)、3.84〜3.89(2H,m)、8.38(3H,brs)
【0054】
実施例3
4−アミノテトラヒドロピラン塩酸塩の合成
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積50mlのガラス製フラスコに、実施例2(2)と同様な方法で合成した、純度99%の4−ヒドラジノテトラヒドロピラン1.0g(6.55mmol)、展開ラネーニッケル200mg及びエタノール5mlを加え、アルゴン雰囲気下、75℃で20時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、反応液を濾過して、濾液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、4−アミノテトラヒドロピランが246mg生成していた(反応収率:37%)。
【0055】
実施例4
(1)4−ヒドラジノ−2−メチルテトラヒドロピラン塩酸塩の合成
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積200mlのガラス製フラスコに、後記実施例16と同様の方法で合成した純度80%の2−メチルテトラヒドロピラニル−4−メタンスルホネート、10.0g(41.2mmol)、ヒドラジン一水和物20ml(412mmol)及びエタノール20mlを加え、窒素雰囲気下、攪拌しながら75℃で3時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、28重量%ナトリウムメトキシドメタノール溶液9.45g(49mmol)を加えた後、減圧下で濃縮した。濃縮物にトルエン200mlを加えた後に濾過し、濾液を再び減圧下で濃縮した。濃縮物を0℃まで冷却し、メタノール50ml及び12mol/l塩酸5.0ml(60mmol)を加えた後に減圧下で濃縮した。濃縮物をエタノール及びトルエンを用いて再結晶させ、無色結晶として、純度99%(ガスクロマトグラフィーによる面積百分率)の4−ヒドラジノ−2−メチルテトラヒドロピラン塩酸塩3.82gを得た(単離収率:61%)。
【0056】
4−ヒドラジノ−2−メチルテトラヒドロピラン塩酸塩の物性値は以下の通りであった。
融点;144〜146℃
CI−MS(m/e);131(M+1−HCl)
H−NMR(DMSO−d,δ(ppm));1.04(3H,d,J=6.3Hz)、1.36〜1.46(1H,m)、1.67〜1.73(2H,m)、1.83(1H,d,J=14.1Hz)、3.33〜3.36(1H,m)、3.54〜3.80(3H,m)、7.70(4H,brs)
【0057】
(2)4−アミノ−2−メチルテトラヒドロピラン塩酸塩の合成
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積500mlのガラス製フラスコに、上記(1)と同様な方法で合成した、純度100%の4−ヒドラジノ−2−メチルテトラヒドロピラン塩酸塩65.3g(392mmol)、展開ラネーニッケル18.0g、エタノール120ml、水120ml及び8mmol/l水酸化ナトリウム水溶液40ml(320mmol)を加え、水素雰囲気下、75℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、反応液を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。次いで、濃縮物にn−ブチルアルコール200ml及び12mol/l塩酸50ml(600mmol)を加えた後に減圧下で濃縮して、白色粉末として、純度98%(ガスクロマトグラフィーによる面積百分率)の4−アミノ−2−メチルテトラヒドロピラン塩酸塩38.2gを得た(単離収率:63%)。
【0058】
4−アミノ−2−メチルテトラヒドロピラン塩酸塩の物性値は以下の通りであった。
CI−MS(m/e);117(M+1−HCl)
H−NMR(DMSO−d,δ(ppm));1.09(3H,d,J=6.0Hz)、1.48〜1.84(4H,m)、3.47〜3.93(4H,m)、8.44(3H,brs)
【0059】
実施例5
4−アミノ−2−メチルテトラヒドロピランの合成
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積100mlのガラス製フラスコに、実施例4(1)と同様な方法で合成した、純度100%の4−ヒドラジノテトラヒドロピラン塩酸塩1.0g(6.02mmol)、展開ラネーニッケル100mg、2mol/l水酸化ナトリウム水溶液3.0ml(6.0mmol)及びエタノール2.5mlを加え、水素雰囲気下、75℃で2時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、反応液を濾過して、濾液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、4−アミノ−2−メチルテトラヒドロピランが559mg生成していた(反応収率:61%)。
【0060】
実施例6
4−アミノテトラヒドロピラン塩酸塩の合成
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積100mlのガラス製フラスコに、実施例2(1)と同様な方法で合成した、純度99%の4−ヒドラジノテトラヒドロピラン塩酸塩30.0g(158.7mmol)、5重量%パラジウム/炭素(50%wet品)3.0g(パラジウム原子として0.70mmol)及びエタノール150mlを加え、水素雰囲気下(0.1MPa)、75℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、反応液を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。濃縮物をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、4−アミノテトラヒドロピランが15.9g生成していた(反応収率:72%)。次いで、濃縮物にn−ブチルアルコール200ml及び12mol/l塩酸17.4g(166.8mmol)を加えた後に減圧下で濃縮して、白色結晶として、純度98%(ガスクロマトグラフィーによる面積百分率)の4−アミノテトラヒドロピラン塩酸塩14.3gを得た(単離収率:65%)。
【0061】
4−アミノテトラヒドロピラン塩酸塩の物性値は実施例2(2)と同一であった。
【0062】
実施例7
4−アミノテトラヒドロピラン臭化水素酸塩の合成
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積100mlのガラス製フラスコに、実施例2(1)と同様な方法で合成した、純度99%の4−ヒドラジノテトラヒドロピラン塩酸塩30.0g(158.7mmol)、10重量%パラジウム/炭素(50%wet品)1.5g(パラジウム原子として0.70mmol)及びエタノール150mlを加え、水素雰囲気下(0.1MPa)、75℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、反応液を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。濃縮物をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、4−アミノテトラヒドロピランが15.9g生成していた(反応収率:72%)。次いで、濃縮物にn−ブチルアルコール200ml及び47重量%臭化水素酸27.6g(160.0mmol)を加えた後に減圧下で濃縮して、白色結晶として、純度99%(ガスクロマトグラフィーによる面積百分率)の4−アミノテトラヒドロピラン臭化水素酸塩17.4gを得た(単離収率:60%)。
【0063】
4−アミノテトラヒドロピラン臭化水素酸塩の物性値は以下の通りであった。
融点;175〜180℃
CI−MS(m/e);102(M+1−HBr)
H−NMR(DMSO−d,δ(ppm));1.50〜1.64(2H,m)、1.83〜1.91(2H,m)、3.20〜3.6(3H,m)、3.84〜3.89(2H,m)、8.14(3H,brs)
【0064】
実施例8
4−アミノテトラヒドロピランの合成
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積100mlのガラス製フラスコに、実施例2(1)と同様な方法で合成した、純度99%の4−ヒドラジノテトラヒドロピラン塩酸塩1.0g(55.6mmol)、5重量%白金/炭素(50%wet品)3.0g(白金原子として0.38mmol)及びエタノール5mlを加え、水素雰囲気下(0.1MPa)、75℃で72時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、反応液を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。濃縮物をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、4−アミノテトラヒドロピランが0.48g生成していた(反応収率:53%)。
【0065】
実施例9
4−アミノテトラヒドロピランの合成
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積100mlのガラス製フラスコに、実施例2(1)と同様な方法で合成した、純度99%の4−ヒドラジノテトラヒドロピラン塩酸塩3.0g(19.6mmol)、5重量%白金/炭素(50%wet品)600mg(白金原子として0.08mmol)、エタノール5ml及び水6mlを加え、水素雰囲気下(1.0MPa)、75℃で3時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、反応液を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。濃縮物をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、4−アミノテトラヒドロピランが1.4g生成していた(反応収率:54%)。
【0066】
実施例10
4−アミノ−2−メチルテトラヒドロピランの合成
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積100mlのガラス製フラスコに、実施例4(1)と同様な方法で合成した、純度99%の4−ヒドラジノ−2−メチルテトラヒドロピラン塩酸塩1.0g(55.6mmol)、5重量%パラジウム/炭素(50%wet品)100mg(パラジウム原子として0.02mmol)、エタノール2.5ml及び水2.5mlを加え、水素雰囲気下(0.1MPa)、75℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、反応液を濾渦して、濾液を減圧下で濃縮した。濃縮物をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、4−アミノ−2−メチルテトラヒドロピランが0.59g生成していた(反応収率:64%)。
【0067】
実施例11
4−アミノテトラヒドロピラン塩酸塩の合成
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積100mlのガラス製フラスコに、実施例2(1)と同様な方法で合成した、純度99%の4−ヒドラジノテトラヒドロピラン塩酸塩1.0g(5.55mmol)、エタノール6.2ml、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液1.2ml(1.20mmol)及び酸化銅(I)1.5g(10mmol)を加え、65℃で1時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、反応液を濾過して、濾液を減圧下で濃縮した。濃縮物をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、4−アミノテトラヒドロピランが0.47g生成していた(反応収率:50%)。次いで、濃縮物にn−ブチルアルコール5ml及び12mol/l塩酸10ml(12.0mmol)を加えた後に減圧下で濃縮して、白色結晶として、純度98%(ガスクロマトグラフィーによる面積百分率)の4−アミノテトラヒドロピラン塩酸塩0.42gを得た(単離収率:45%)。
【0068】
4−アミノテトラヒドロピラン塩酸塩の物性値は実施例2(2)と同一であった。
【0069】
実施例12
4−アミノテトラヒドロピラン塩酸塩の合成
攪拌装置、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた内容積20Lのガラス製フラスコに、98%ヒドラジン水溶液5873g(115mol)及びエタノール2072mlを加え、攪拌しながら75℃まで昇温させた。次いで、純度70%のテトラヒドロピラニル−4−メタンスルホネート2136g(11.5mol)をエタノール2072mlに溶解した液をゆるやかに滴下した後、攪拌しながら同温度で4時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、4−ヒドラジノテトラヒドロピランを主生成物とする反応液を得た。
【0070】
次いで、攪拌装置、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた内容積20Lのガラス製フラスコに、65質量%展開ラネーニッケル414.4g(ニッケル原子として4.6mol)及び水2072mlを加え、攪拌しなが60℃まで昇温させた。次いで、該反応液をゆるやかに滴下した後、攪拌しながら80℃で2時間反応させた。反応終了後、反応液を40℃まで冷却し、ラネーニッケルを濾過した後、濾液を減圧濃縮して、4−アミノテトラヒドロピランを主生成物とする反応液818.0gを得た。
【0071】
攪拌装置、温度計、滴下漏斗、還流冷却器及び減圧蒸留装置を備えた内容積20Lのガラス製フラスコに、該反応液、テトラエチレンペンタミン2072ml(10.9mol)及びn−ブチルアルコール4100mlを加え、減圧下、80℃で2時間攪拌させた。次いで、減圧下で4−アミノテトラヒドロピランとn−ブチルアルコールを共沸留去させた。その後、再び、n−ブチルアルコール4100mlを加え、減圧下で4−アミノテトラヒドロピランとn−ブチルアルコールとを共沸留去させた。この操作を3回繰り返して合わせて15000mlの留出液を得た。この留出液に濃塩酸575ml(6.90mol)を加えた後に減圧下で濃縮した。濃縮物に再びn−ブチルアルコール8200mlを加えて、減圧下で水とn−ブチルアルコールとを共沸させた。次いで、n−ブチルアルコール7460ml及びエタノール3730mlを加え、一旦115℃まで昇温させて攪拌させた後、ゆるやかに−5℃まで冷却して30分間攪拌させた。濾過後、濾物を冷却したトルエンで洗浄した後に乾燥させ、白色小針状結晶として、純度99%(ガスクロマトグラフィーによる内部標準法)の4−アミノテトラヒドロピラン塩酸塩788.9gを得た(テトラヒドロピラニル−4−メタンスルホネート基準の単離収率:50%)。
【0072】
4−アミノテトラヒドロピラン塩酸塩の物性値は実施例2(2)と同一であった。
【0073】
実施例13
4−アミノ−2−メチルテトラヒドロピラン塩酸塩の合成
攪拌装置、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた内容積500mlのガラス製フラスコに、ヒドラジン一水和物97ml(1.99mol)及びエタノール33mlを加え、攪拌しながら75℃まで昇温させた。次いで、純度85%の2−メチルテトラヒドロピラニル−4−メタンスルホネート30.0g(0.124mol)をエタノール33mlに溶解した液をゆるやかに滴下した後、攪拌しながら同温度で8時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、4−ヒドラジノ−2−メチルテトラヒドロピランを主生成物とする反応液を得た。
【0074】
次いで、攪拌装置、温度計、滴下漏斗、還流冷却器及び減圧蒸留装置を備えた内容積500mlのガラス製フラスコに、65質量%展開ラネーニッケル6.0g(ニッケル原子として66.4mmol)、エタノール33ml及び水33mlを加え、攪拌しなが65℃まで昇温させた。次いで、該反応液をゆるやかに滴下した後、攪拌しながら65℃で2時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、ラネーニッケルを濾過した後、濾液を減圧濃縮して、4−アミノ−2−メチルテトラヒドロピランを主生成物とする反応液を得た。
【0075】
該反応液に、ペンタエチレンヘキサミン30ml(158.2mmol)及びn−ブチルアルコール30mlを加え、減圧下、80℃で2時間攪拌させた。次いで、減圧下で4−アミノテトラヒドロピランとn−ブチルアルコールを共沸留去させた。その後、留出液を0℃まで冷却して、12mol/l塩酸15ml(180mmol)を加えた後に、減圧下で濃縮し、無色結晶として、純度99%(ガスクロマトグラフィーによる面積百分率)の4−アミノ−2−メチルテトラヒドロピラン塩酸塩10.2gを得た(2−メチルテトラヒドロピラニル−4−メタンスルホネート基準の単離収率:51%)。
【0076】
4−アミノ−2−メチルテトラヒドロピラン塩酸塩の物性値は実施例4(2)と同一であった。
【0077】
実施例14
4−アミノテトラヒドロピランメタンスルホン酸塩の合成
攪拌装置、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた内容積500mlのガラス製フラスコに、ヒドラジン一水和物97ml(1.99mol)及びエタノール33mlを加え、攪拌しながら75℃まで昇温させた。次いで、純度85%の2−テトラヒドロピラニル−4−メタンスルホネート30.0g(0.124mol)をエタノール33mlに溶解した液をゆるやかに滴下した後、攪拌しながら同温度で8時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、4−ヒドラジノテトラヒドロピランを主生成物とする反応液を得た。
【0078】
次いで、攪拌装置、温度計、滴下漏斗、還流冷却器及び減圧蒸留装置を備えた内容積500mlのガラス製フラスコに、65質量%展開ラネーニッケル6.0g(ニッケル原子として66.4mol)、エタノール33ml及び水33mlを加え、攪拌しなが65℃まで昇温させた。次いで、該反応液をゆるやかに滴下した後、攪拌しながら65℃で2時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、ラネーニッケルを濾過した後、濾液を減圧濃縮して、4−アミノテトラヒドロピランを主生成物とする反応液を得た。
【0079】
該反応液に、トリエチルアミン30ml(215.2mmol)及びn−ブチルアルコール30mlを加え、室温で1時間攪拌した後、析出した結晶を濾過した。次いで、濾液を減圧下で濃縮し、無色結晶として、純度96%(ガスクロマトグラフィーによる内部標準法)の4−アミノテトラヒドロピランメタンスルホン酸塩15.2gを得た(テトラヒドロピラニル−4−メタンスルホネート基準の単離収率:58%)。
【0080】
4−アミノテトラヒドロピランメタンスルホン酸塩の物性値は以下の通りであった。
融点;204〜208℃
CI−MS(m/e);102(M+1)
H−NMR(DMSO−d,δ(ppm));1.45〜1.60(2H,m)、1.80〜1.91(2H,m)、2.38(3H,s)、3.15〜3.36(3H,m)、3.84〜3.89(2H,m)、7.99(3H,brs)
【0081】
実施例15
4−アミノテトラヒドロピランの合成
攪拌装置、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた内容積100mlのガラス製フラスコに、ヒドラジン一水和物19ml(0.39mol)及びエタノール19mlを加え、攪拌しながら75℃まで昇温させた。次いで、純度100%のテトラヒドロピラニル−4−p−トルエンスルホネート10.0g(0.124mol)をエタノール19mlに溶解した液をゆるやかに滴下した後、攪拌しながら同温度で8時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、4−ヒドラジノテトラヒドロピランを主生成物とする反応液を得た。
【0082】
次いで、攪拌装置、温度計、滴下漏斗、還流冷却器及び減圧蒸留装置を備えた内容積100mlのガラス製フラスコに、65質量%展開ラネーニッケル2.6g(ニッケル原子として28.8mmol)、エタノール19ml及び水19mlを加え、攪拌しなが65℃まで昇温させた。次いで、該反応液をゆるやかに滴下した後、攪拌しながら65℃で2時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、ラネーニッケルを濾過した後、濾液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)したところ、4−アミノテトラヒドロピラン1.2gが生成していた(テトラヒドロピラニル−4−p−トルエンスルホネート基準の単離収率:53%)。
【0083】
実施例16
2−メチルテトラヒドロピラン−4−メタンスルホネートの合成
攪拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下漏斗を備えた100mlのガラス製フラスコに、3−ブテン−1−オール5.00g(69.3mmol)、パラアルデヒド(アセトアルデヒド三量体)3.67g(アセトアルデヒド換算で83.4mmol)及びトルエン50mlを加え、窒素雰囲気にて、攪拌しながらメタンスルホン酸7.99g(83.1mmol)をゆるやかに滴下し、55℃で4時間反応させた。反応終了後、得られた反応液に、飽和塩化ナトリウム水溶液50mlを加え、酢酸エチル50mlで抽出した。次いで、抽出液を1mol/l水酸化ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=10:1→3:1)で精製し、薄黄色液体として、2−メチルテトラヒドロピラン−4−メタンスルホネート8.79gを得た(単離収率:65%)。
【0084】
2−メチルテトラヒドロピラン−4−メタンスルホネートは、以下の物性値で示される新規な化合物である。
CI−MS(m/e);195(M+1)
H−NMR(CDCl,δ(ppm));1.23(3H,d,J=6.0Hz)、1.44〜1.56(1H,m)、1.76〜1.81(1H,m)、2.02〜2.16(2H,m)、3.03(3H,s)、3.45〜3.51(2H,m)、4.00〜4.06(1H,m)、4.75〜4.83(1H,m)
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明により、繁雑な操作を必要とせず、簡便な方法にて、4−アミノテトラヒドロピラン化合物及びその酸塩を製造可能な、工業的に好適な4−アミノテトラヒドロピラン化合物及びその酸塩の製法を提供することが出来る。また、本発明によれば、温和な条件下、簡便な方法によって、2−置換テトラヒドロピラニル−4−スルホネートを高収率で製造可能な、工業的に好適な2−置換テトラヒドロピラニル−4−スルホネート及びその製法を提供することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラネーニッケル、貴金属触媒及び金属酸化物から選ばれる少なくとも1種の化合物の存在下、一般式(2):

式中、Rは、水素原子又は炭化水素基を表す、
で示される4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩を分解反応させることを特徴とする、一般式(1):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される、4−アミノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩の製法。
【請求項2】
貴金属触媒が、パラジウム及び白金の少なくとも一方を含む触媒である請求の範囲第1項記載の4−アミノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩の製造法。
【請求項3】
金属酸化物が、酸化銅(I)又は酸化銅(II)である請求の範囲第1項記載の4−アミノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩の製造方法。
【請求項4】
反応を溶媒中で行う請求の範囲第1項記載の4−アミノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩の製法。
【請求項5】
溶媒が水、アルコール類、又はそれらの混合液である請求の範囲第4項記載の4−アミノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩の製法。
【請求項6】
式(2)で示される化合物が、一般式(3):

式中、Rは、前記と同義であり、Xは、脱離基を表す、
で示される4−置換−テトラヒドロピラン化合物にヒドラジンを反応させて得られるものである請求の範囲第1項記載の4−アミノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩の製法。
【請求項7】
(A)一般式(3):

式中、Rは、水素原子又は炭化水素基を表し、Xは、脱離基を表す、
で示される4−置換−テトラヒドロピラン化合物にヒドラジンを反応させて、一般式(2):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩を主生成物とする反応液を得る第一工程、
(B)次いで、ラネーニッケルの存在下、該反応液中の4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩を分解させて、一般式(1):

式中、Rは、前記と同義である、
で示される4−アミノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩とする第二工程を含んでなることを特徴とする、4−アミノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩を製造する方法。
【請求項8】
第一工程を溶媒中で行う請求の範囲第7項記載の4−アミノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩を製造する方法。
【請求項9】
第一工程で用いる溶媒がアルコール類である請求の範囲第8項記載の4−アミノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩を製造する方法。
【請求項10】
第二工程を溶媒中で行う請求の範囲第7項記載の4−アミノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩を製造する方法。
【請求項11】
第二工程で用いる溶媒が水、アルコール類又はそれらの混合液である請求の範囲第10項記載の4−アミノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩を製造する方法。
【請求項12】
第二工程の反応終了後、反応液からラネーニッケルを除去する際に、アミン類を用いる請求の範囲第7項記載の4−アミノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩を製造する方法。
【請求項13】
一般式(2):

式中、Rは、水素原子又は炭化水素基を表す、
で示される2−置換−4−ヒドラジノテトラヒドロピラン化合物又はその酸塩。
【請求項14】
一般式(4):

式中、Rは、炭化水素基を表し、Yは、有機スルホン酸基を表す、
で示される2−置換テトラヒドロピラン−4−スルホネート。
【請求項15】
3−ブテン−1−オールに、一般式(5):
CHO (5)
式中、Rは、前記と同義である、
で示されるアルデヒド化合物、その多量体又はアセタール体及び有機スルホン酸を反応させることを特徴とする、2−置換テトラヒドロピラン−4−スルホネートの製法。
【請求項16】
反応を有機溶媒中で行う請求の範囲第15項記載の2−置換テトラヒドロピラン−4−スルホネートの製法。

【国際公開番号】WO2005/005406
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【発行日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511576(P2005−511576)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010010
【国際出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】