説明

4−シアノテトラヒドロピランの製法

【課題】 本発明の課題は、簡便な方法によって、ビス(2-置換エチル)エーテルから、4-シアノテトラヒドロピランを高収率で製造出来る、工業的に好適な4-シアノテトラヒドロピランの製法を提供することである。
【解決手段】 本発明の課題は、塩基の存在下、一般式(1)
【化1】


(式中、Xは、脱離基を示す。)
で示されるビス(2-置換エチル)エーテルとアセトニトリルとを反応させることを特徴とする、4-シアノテトラヒドロピランの製法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス(2-置換エチル)エーテルから、4-シアノテトラヒドロピランを製造する方法に関する。4-シアノテトラヒドロピラン、医薬・農薬等の原料や合成中間体として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来、ビス(2-置換エチル)エーテルから、4-シアノテトラヒドロピランを製造する方法としては、例えば、ビス(2-クロロエチル)エーテルとシアノ酢酸エチルとを反応させて4-シアノテトラヒドロピラン-4-カルボン酸エチルとした後、これを加水分解して4-シアノテトラヒドロピラン-4-カルボン酸を得、次いで、これを180〜200℃に加熱して4-シアノテトラヒドロピランを総合取得収率2.3%で製造する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、反応工程が多い上に、収率が極めて低く、4-シアノテトラヒドロピランの工業的な製法としては満足出来るものではなかった。
【0003】
【非特許文献1】J.Chem.Soc.,1930,2525
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、即ち、上記問題点を解決し、簡便な方法によって、ビス(2-置換エチル)エーテルから、4-シアノテトラヒドロピランを高収率で製造出来る、工業的に好適な4-シアノテトラヒドロピランの製法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題は、塩基の存在下、一般式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、Xは、脱離基を示す。)
で示されるビス(2-置換エチル)エーテルとアセトニトリルとを反応させることを特徴とする、4-シアノテトラヒドロピランの製法によって解決される。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、簡便な方法によって、ビス(2-置換エチル)エーテルから4-シアノテトラヒドロピランを高収率で製造出来る、工業的に好適な4-シアノテトラヒドロピランの製法を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の反応において使用するビス(2-置換エチル)エーテルは、前記の一般式(1)で示される。その一般式(1)において、Xは脱離基であり、具体的には、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のアルキルスルホニルオキシ基;ベンゼンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、p-ブロモベンゼンスルホニルオキシ基等のアリールスルホニルオキシ基が挙げられる。
【0010】
本発明の反応において使用する塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物;メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等のアルキルアルカリ金属;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムアミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド等のアルカリ金属アミドが挙げられるが、好ましくはアルカリ金属水素化物、更に好ましくは水素化ナトリウム、水素化カリウムが使用される。なお、これらの塩基は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0011】
前記塩基の使用量は、ビス(2-置換エチル)エーテル1モルに対して、好ましくは1.0〜10モル、更に好ましくは2.1〜5.0モルである。
【0012】
本発明の反応において使用するアセトニトリルの使用量は、ビス(2-置換エチル)エーテル1モルに対して、好ましくは1〜100モル、更に好ましくは1〜30モルである。
【0013】
本発明の反応は、溶媒の存在下又は非存在下にて行われる。溶媒を使用する場合、溶媒は、反応を阻害しないものならば特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;N,N'-ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられるが、好ましくはアミド類、スルホキシド類、芳香族炭化水素類が使用される。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0014】
前記溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性により適宜調節するが、ビス(2-置換エチル)エーテル1gに対して、好ましくは0〜100g、更に好ましくは0〜20gである。
【0015】
本発明の反応は、例えば、ビス(2-置換エチル)エーテル、アセトニトリル及び塩基を混合して、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは-70〜200℃、更に好ましくは-20〜150℃であり、反応圧力は特に制限されない。
【0016】
本発明の反応によって得られた4-シアノテトラヒドロピランは、例えば、中和、抽出、濾過、濃縮、蒸留、カラムクロマトグラフィー等による一般的な方法によって単離・精製される。
【実施例】
【0017】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0018】
実施例1(4-シアノテトラヒドロピランの合成)
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積20mlのガラス製フラスコに、ビス(2-クロロエチル)エーテル1.0g(7.0mmol)、アセトニトリル5.0ml(95mmol)及び60%水素化ナトリウム0.61(15.2mmol)を加え、攪拌しながら60℃で8時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)で分析したところ、4-シアノテトラヒドロピランが0.20g生成していた(反応収率:26%)。
【0019】
実施例2(4-シアノテトラヒドロピランの合成)
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積20mlのガラス製フラスコに、ビス(2-クロロエチル)エーテル1.0g(7.0mmol)、アセトニトリル2.5ml(48mmol)、60%水素化ナトリウム0.61(15.2mmol)及びジメチルスルホキシド2.5mlを加え、攪拌しながら60℃で8時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)で分析したところ、4-シアノテトラヒドロピランが0.30g生成していた(反応収率:39%)。
【0020】
実施例3(4-シアノテトラヒドロピランの合成)
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積20mlのガラス製フラスコに、ビス(2-クロロエチル)エーテル1.0g(7.0mmol)、アセトニトリル2.5ml(48mmol)、60%水素化ナトリウム0.61g(15.2mmol)及びトルエン2.5mlを加え、攪拌しながら60℃で8時間反応させた。反応終了後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析(内部標準法)で分析したところ、4-シアノテトラヒドロピランが0.29g生成していた(反応収率:38%)。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、ビス(2-置換エチル)エーテルから、4-シアノテトラヒドロピランを製造する方法に関する。4-シアノテトラヒドロピラン、医薬・農薬等の原料や合成中間体として有用な化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基の存在下、一般式(1)
【化1】

(式中、Xは、脱離基を示す。)
で示されるビス(2-置換エチル)エーテルとアセトニトリルとを反応させることを特徴とする、4-シアノテトラヒドロピランの製法。

【公開番号】特開2006−1880(P2006−1880A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180107(P2004−180107)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】