説明

ACアダプタ

【課題】ACアダプタに外部機器を接続しない状態でACアダプタを動作させたまま放置する場合において、ACアダプタの消費電力を十分に低減する。
【解決手段】ACアダプタに電子機器(外部機器)が接続された状態において、電子機器が待機状態のときは、定格出力電圧と電子機器が許容できる最低出力電圧の間でスイッチング素子Q1はオン/オフ動作を繰り返す。一方、ACアダプタが電子機器に非接続の状態のときは、抵抗R1、R2にそれぞれ並列に抵抗R8、R9が接続されなくなることにより、オペアンプIC1と抵抗R1、R2、R4で検出している電圧が、電子機器が許容できる最低出力電圧から電子機器が許容できる最低出力電圧より低い出力電圧に切り換る。これにより、電子機器が非接続状態のときは、定格出力電圧と電子機器が許容できる最低出力電圧より低い電圧の間でスイッチング素子Q1はオン/オフ動作を繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AC電源に接続してDC電圧を電子機器(外部機器)に出力するACアダプタに関し、特にACアダプタが外部機器に接続されていない状態(待機状態)における消費電力を低減することができるACアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ACアダプタには、例えば特許文献1に示すスイッチング電源が使用されている。図2は、従来のACアダプタに使用されるスイッチング電源の回路構成図である。この回路はフライバックコンバータと呼ばれるものである。
【0003】
ここで、Tは1次側に蓄積されたエネルギーを2次側へ伝達するためのコンバータトランス、Q1はスイッチング素子であるFET、C1は電源入力平滑用コンデンサ、R7はACアダプタ起動用抵抗、C2は2次側出力平滑用コンデンサである。IC4はACアダプタ制御用IC(制御部)、IC3は出力電圧検出用ICであり、PC2は2次側回路に電圧を安定供給するための信号を1次側にフィードバックするフォトカプラ、D1はダイオード、R5、C3はダイオードD1からの電圧を積分するための積分抵抗と積分コンデンサ、R6はC3に充電された電荷を放電する放電抵抗である。IC2は出力電流が増加し、C3の端子間電圧が上昇したことを検出するオペアンプ(第2のオペアンプ)であり、IC1およびR1、R2、R4はACアダプタ1’の出力端子が接続される電子機器が許容できる最低出力電圧を検出するためのオペアンプ(第1のオペアンプ)と抵抗である。D2はIC1とIC2の基準電圧を設定するツェナーダイオード、PC1は電子機器が許容できる最低出力電圧になるまでスイッチング素子Q1を停止させる信号を1次側にフィードバックするフォトカプラ、R3はフォトカプラの電流を制限する制限抵抗である。
【0004】
図2に示すACアダプタ1’において、出力電圧が定格電圧より上昇すると、IC3に接続されたフォトカプラPC2のダイオードに流れる電流が増加して、フォトカプラPC2のトランジスタが接続されている制御部IC4のフィードバック(FB)端子電圧が低下する。そして、フィードバック端子電圧の低下量に応じて一定周波数で動作しているスイッチング素子Q1のオフ時間デューティが大きくなり、出力電圧を下げて定格電圧を安定供給することができる。
【0005】
一方、電子機器が待機状態となり、ACアダプタ1’の出力電流が非常に小さくなると、スイッチング素子Q1のオフ時間デューティが大きくなるため、ダイオードD1で整流されて抵抗R5とコンデンサC3で積分して得られるコンデンサC3の端子間電圧が低下する。そして、オペアンプIC2はコンデンサC3の端子間電圧と基準電圧となるツェナーダイオードD2のツェナー電圧と比較し、コンデンサC3の端子間電圧が低くなると、オペアンプIC2の出力端子はローレベル(Lレベル)に設定される。平滑コンデンサC2の端子間電圧は安定化された出力電圧になっており、オペアンプIC1は抵抗R1、R2、およびR4で分圧し得られた抵抗R2の端子間電圧と基準電圧(ツェナーダイオードD2のツェナー電圧)とを比較し、抵抗R2の端子間電圧が高くなっている間、オペアンプIC1の出力はハイレベル(Hレベル)に設定され、オペアンプIC1の出力端子から電流がフォトカプラPC1のダイオード、抵抗R3、Lレベルに設定されたオペアンプIC2の出力端子に流れ込む。その結果、フォトカプラPC1のトランジスタがオンし(導通状態となり)、制御部IC4のオン/オフ端子がLレベルに設定される。制御部IC4はオン/オフ端子がLレベルに設定されると発振停止となる機能を有しているため、スイッチング素子Q1は停止する。
【0006】
2次側出力平滑コンデンサC2の端子間電圧は、待機時に流れる微小負荷電流とコンデンサC2に接続されているACアダプタ1’内部回路で消費される微小電流によって徐々に減少する。その結果、電子機器が許容できる最低出力電圧に達すると、抵抗R2の端子間電圧が基準電圧より低くなるため、オペアンプIC1の出力端子はLレベルに設定され、フォトカプラPC1のダイオードに電流が流れなくなる。その結果、フォトカプラPC1のトランジスタがオフし、制御部IC4のオン/オフ端子がHレベルに設定されるので、スイッチング素子Q1はスイッチング動作を開始する。
【0007】
こうして、電子機器2が待機状態のときは、定格出力電圧と電子機器が許容できる最低出力電圧の間で、スイッチング素子Q1はオン/オフ動作を繰り返す。電子機器が待機状態のときは定格出力電圧を必ずしも必要とせず、かなり低い電圧でも問題ないことが多い。待機状態では出力平滑コンデンサC2の端子間電圧が、定格出力電圧から電子機器が許容できる最低出力電圧まで自然に放電される時間が長く、その間スイッチング素子Q1は動作停止している。動作停止時はスイッチングロスが零となる。スイッチング素子Q1が動作している時間に対して、動作停止している時間が非常に長いため、ACアダプタ1’の待機電力を低減することができる。ACアダプタ1’の出力電流を待機状態から徐々に増加させると、出力平滑コンデンサC2の端子間電圧が、定格出力電圧から電子機器が許容できる最低出力電圧まで放電される時間が短くなり、スイッチング素子Q1の停止時間が短くなる。
【0008】
さらに、ACアダプタ1’の出力電流を増加させると、スイッチング素子Q1のオフ時間デューティが出力電流の増加量に応じて小さくなり、ダイオードD2で整流されて抵抗R5とコンデンサC3で積分して得られるコンデンサC3の端子間電圧が上昇し、基準電圧より高くなると、オペアンプIC2の出力はHレベルに設定される。これにより、オペアンプIC1の出力端子からフォトカプラPC1のダイオード、抵抗R3、オペアンプIC2の出力端子へ流れていた電流が流れなくなり、スイッチング素子Q1のオフ信号が一次側にフィードバックできなくなるため、ACアダプタ1’の動作状態は本来の一定周波数のスイッチング動作に移行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−33020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、近年さらなる消費電力の低減が求められており、ACアダプタに外部機器を接続しない状態におけるACアダプタの消費電力についても注視されている。しかしながら、従来技術では、ACアダプタに外部機器を接続しない状態でACアダプタを動作させたまま放置した場合に、ACアダプタの消費電力が十分に低減されているとはいえず、改善の余地が残されていた。
【0011】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ACアダプタに外部機器を接続しない状態でACアダプタを動作させたまま放置した場合において、ACアダプタの消費電力を十分に低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、ACアダプタに外部機器が接続されていない状態のときは、定格出力電圧と外部機器が許容できる最低出力電圧との間でスイッチング素子のオン/オフの繰り返しを実行させるのではなく、定格出力電圧と外部機器が許容できる最低出力電圧より低い電圧との間でスイッチング素子のオン/オフの繰り返しを実行させる。これにより、スイッチング素子が動作している時間に対して動作停止している時間を延長し、スイッチングロスをさらに削減することができる。このように、ACアダプタに外部機器が接続されていない状態では、外部機器が許容できる最低出力電圧については考慮する必要がないため、外部機器が許容できる最低出力電圧よりもさらに低い出力電圧を出力させるようにしても支障はない。具体的には、本発明にかかるACアダプタは以下のように構成される。
【0013】
本発明は、入力された交流電圧を整流して得られた入力電圧をトランスの1次側に設けられたスイッチング素子でスイッチングして、前記トランスの2次側に誘起された誘起電圧を2次側整流平滑回路により整流・平滑して一方側出力端子と他方側出力端子との間に接続される外部機器に直流電圧を出力するACアダプタであって、上記目的を達成するため、一方側出力端子と他方側出力端子との間に直列に接続された第1および第2の出力抵抗と、第1の出力抵抗と第2の出力抵抗との接続点にプラス側入力端子が接続され、マイナス側入力端子に基準電圧が入力される第1のオペアンプと、第1のオペアンプの出力端子とプラス側入力端子とを接続する第3の出力抵抗と、スイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御部と、第1のオペアンプの出力端子からの出力結果を制御部にフィードバックして、スイッチング素子によるスイッチング動作を実行/停止させるフィードバック手段とを備え、外部機器は、一方側出力端子および他方側出力端子にそれぞれ接続される一方側機器端子および他方側機器端子と、一方側機器端子と他方側機器端子との間に直列に接続された第1および第2の入力抵抗とを有し、第1のオペアンプのプラス側入力端子には外部機器と接続可能なアダプタ側分圧端子が出力され、一方側機器端子が一方側出力端子に、他方側機器端子が他方側出力端子に接続された状態では、アダプタ側分圧端子が第1の入力抵抗と第2の入力抵抗との接続点に接続され、プラス側入力端子に入力される電圧とマイナス側入力端子に入力される基準電圧とを比較することで第1のオペアンプは外部機器が許容できる最低出力電圧を検出可能とされ、外部機器が非接続の状態では、定格出力電圧と外部機器が許容できる最低出力電圧よりも低い電圧との間でスイッチング素子はオン/オフ動作を繰り返すことを特徴としている。
【0014】
このように構成された発明では、ACアダプタに外部機器が接続されている状態(一方側機器端子が一方側出力端子に、他方側機器端子が他方側出力端子に接続された状態)では、第1のオペアンプのプラス側入力端子が出力されてなるアダプタ側分圧端子が、外部機器の一方側出力端子と他方側出力端子との間に直列に接続された第1の入力抵抗と第2の入力抵抗との接続点に接続され、プラス側入力端子に入力される電圧とマイナス側入力端子に入力される基準電圧とを比較することで第1のオペアンプは外部機器が許容できる最低出力電圧を検出可能とされる。具体的には、第1のオペアンプは、第1の出力抵抗、第1の出力抵抗と並列に接続される第1の入力抵抗、第2の出力抵抗、第2の出力抵抗と並列に接続される第2の入力抵抗および第3の出力抵抗から構成される回路により、外部機器が許容できる最低出力電圧を検出可能とされる。このため、ACアダプタから外部機器への出力電圧が外部機器が許容できる最低出力電圧を下回るのを回避することができる。
【0015】
一方で、外部機器が非接続の状態(ACアダプタと外部機器とが接続されていない状態)では、第1の出力抵抗に並列に第1の入力抵抗が接続されなくなるとともに第2の出力抵抗に並列に第2の入力抵抗が接続されなくなることから、第1〜第3の出力抵抗から構成される回路により第1のオペアンプが検出する電圧は、外部機器が許容できる最低出力電圧より低い電圧に切り換えられる。その結果、外部機器が非接続の状態では、定格出力電圧と外部機器が許容できる最低出力電圧との間でスイッチング素子のオン/オフ動作の繰り返しが行われるのではなく、定格出力電圧と外部機器が許容できる最低出力電圧より低い電圧との間でスイッチング素子のオン/オフ動作の繰り返しが行われる。これにより、スイッチング素子が動作している時間に対して、動作停止している時間を延長することができる。このため、スイッチングロスを削減して、外部機器が非接続の状態におけるACアダプタの消費電力を十分に低減することができる。
【0016】
ここで、制御部は、入力される電圧レベルに応じてスイッチング素子によるスイッチング動作を実行/停止を選択的に実行させるオン/オフ端子を有し、フィードバック手段は、第1のオペアンプの出力に接続された発光素子と、オン/オフ端子に接続され、発光素子からの発光を受光する受光素子とを有し、発光素子は第1のオペアンプの出力端子がハイレベルに設定されると発光し、受光素子は発光素子からの発光を受光することで導通状態となってオン/オフ端子をローレベルに設定し、スイッチング素子のスイッチング動作を停止させることが、アダプタの小形化、動作の安定性の観点から好ましい。
【0017】
また、2次側整流平滑回路が、トランスの2次巻線の一方端にアノードが接続された整流ダイオードと、整流ダイオードのカソードとトランスの2次巻線の他方端との間に接続された平滑コンデンサとを有するACアダプタにおいては、整流ダイオードのアノード側にアノードが接続された第1のダイオードと、第1のダイオードのカソードとトランスの2次巻線の他方端との間に直列に接続された積分抵抗と積分コンデンサと、プラス側入力端子が積分コンデンサのプラス端子に接続され、マイナス側入力端子に基準電圧が入力される第2のオペアンプとをさらに備え、第2のオペアンプの出力端子は制限抵抗を介して発光素子に接続されており、外部機器が待機状態になると、第1のダイオードで整流され積分抵抗および積分コンデンサで積分して得られた積分コンデンサの端子間電圧が基準電圧よりも低くなって、第2のオペアンプの出力端子がローレベルに設定され、第1のオペアンプの出力端子がハイレベルに設定された際に、第1のオペアンプの出力端子からの電流が第2のオペアンプに流れ込むことによって、発光素子が発光するように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、外部機器にACアダプタを接続しない状態でACアダプタを動作させたまま放置する場合において、ACアダプタの消費電力を十分に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかるACアダプタの一実施形態を示す回路図である。
【図2】従来のACアダプタの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明にかかるACアダプタの一実施形態を示す回路図である。このACアダプタ1は、入力された交流電圧を整流して得られた直流電圧をコンバータトランス(以下、単に「トランス」という)Tの1次側に設けられたスイッチング素子(FET)Q1でスイッチングして、トランスTの2次側に誘起された誘起電圧を2次側整流平滑回路により整流・平滑して電子機器(外部機器)2に直流電圧を出力する。すなわち、ACアダプタ1の出力端子(プラス側出力端子P1とマイナス側出力端子P2との間)に電子機器2が接続された際に、ACアダプタ1から電子機器2に直流電圧を出力可能となっている。なお、スイッチング素子Q1のスイッチング動作は制御部IC4(ACアダプタ制御用IC)により制御される。このように、この実施形態では、ACアダプタ1のプラス側出力端子P1が本発明の「一方側出力端子」に、マイナス側出力端子P2が「他方側出力端子」に相当する。なお、以下においては、主に従来技術との相違点を中心に説明し、従来技術との共通点については説明を簡略化する。
【0021】
IC1は出力電圧を検出するためのオペアンプ(本発明の「第1のオペアンプ」に相当)である。ACアダプタ1のプラス側出力端子P1とマイナス側出力端子P2との間には、第1の出力抵抗R1と第2の出力抵抗R2とが直列に接続されている。オペアンプIC1のプラス側入力端子は、抵抗R1(本発明の「第1の出力抵抗」に相当)と抵抗R2(本発明の「第2の出力抵抗」に相当)との接続点に接続されている。オペアンプIC1のプラス側入力端子は抵抗R4(本発明の「第3の出力抵抗」に相当)を介してオペアンプIC1の出力端子に接続されている。また、オペアンプIC1のマイナス側入力端子はツェナーダイオードD2のカソードに接続されている。ツェナーダイオードD2のカソードは抵抗R11を介してプラス側出力端子P1に接続される一方、アノードがマイナス側出力端子P2に接続されている。これにより、ツェナーダイオードD2はオペアンプIC1の基準電圧を設定する。なお、ツェナーダイオードD2のカソードは、後述するオペアンプIC2(本発明の「第2のオペアンプ」に相当)のマイナス側入力端子にも接続され、オペアンプIC1の基準電圧を設定する。
【0022】
2次側整流平滑回路は、トランスTの2次巻線N2の一方端にアノードが接続された整流ダイオードD3と、整流ダイオードD3のカソードとトランスTの2次巻線N2の他方端との間に接続された平滑コンデンサC2とにより構成されている。整流ダイオードD3のアノード側にはダイオードD1(本発明の「第1のダイオード」に相当)のアノードが接続され、ダイオードD1のカソードと、トランスTの2次巻線N2の他方端との間には、抵抗R5(本発明の「積分抵抗」に相当)とコンデンサC3(本発明の「積分コンデンサ」に相当)とが直列に接続されている。コンデンサC3には並列に抵抗R6が接続され、抵抗R6はコンデンサC3に充電された電荷を放電する。コンデンサC3のプラス端子(コンデンサC3と抵抗R5との接続点)には、オペアンプIC2のプラス側入力端子が接続されている。
【0023】
オペアンプIC2のマイナス側入力端子はツェナーダイオードD2のカソードに接続され、オペアンプIC2の基準電圧を設定する。このように、この実施形態では、ツェナーダイオードD2によって、オペアンプIC1とIC2との間で共通の基準電圧が設定される。オペアンプIC2の出力端子は、制限抵抗R3を介してフォトカプラPC1のダイオード(本発明の「発光素子」に相当)のカソードに接続されている。一方、フォトカプラPC1のダイオードのアノードはオペアンプIC1の出力端子に接続されている。オペアンプIC1のプラス側入力端子(抵抗R1と抵抗R2との接続点)は、電子機器2と接続可能なアダプタ側分圧端子P3が出力されている。
【0024】
電子機器2は、ACアダプタのプラス側出力端子P1およびマイナス側出力端子P2にそれぞれ接続されるプラス側機器端子Q1およびマイナス側機器端子Q2を有している。電子機器2のプラス側機器端子Q1とマイナス側機器端子Q2との間には、負荷Lに加えて負荷Lと並列に、第1の入力抵抗R8と第2の入力抵抗R9とが直列に接続されている。抵抗R8と抵抗R9との接続点には、ACアダプタ1のアダプタ側分圧端子P3と接続可能な機器側分圧端子Q3が出力されている。このように、この実施形態では、電子機器2のプラス側機器端子Q1が本発明の「一方側機器端子」に、マイナス側機器端子Q2が「他方側機器端子」に相当する。
【0025】
制御部IC4はオン/オフ端子を有し、オン/オフ端子とトランスTの補助巻線N3のマイナス側ライン(制御部IC4に駆動電圧VCCを供給するためのプラス側供給ラインと反対側のライン)との間には、フォトカプラPC1のトランジスタ(本発明の「受光素子」に相当)が接続されている。フォトカプラPC1のトランジスタは、フォトカプラPC1のダイオードからの発光を受光するとオンし(導通状態になり)、オン/オフ端子はLレベルに設定され、スイッチング素子Q1のスイッチング動作が停止する。このように、この実施形態では、フォトカプラPC1が本発明の「フィードバック手段」として機能する。
【0026】
また、制御部IC4はフィードバック端子(FB端子)を有し、フィードバック端子とトランスTの補助巻線N3のマイナス側ラインとの間には、フォトカプラPC2のトランジスタが接続されている。フォトカプラPC2のダイオードは、整流ダイオードD3のカソード側と出力電圧検出用IC(IC3)との間に接続されており、フォトカプラPC2のダイオードに流れる電流が増加すると、フィードバック端子の端子電圧が低下し、それに応じてスイッチング素子Q1のオフ時間デューティが大きくなる。
【0027】
次に、上記のように構成されたACアダプタ1の動作について説明する。ACアダプタ1の出力端子が電子機器に接続された状態において、ACアダプタ1からの出力電圧が定格電圧より上昇すると、IC3に接続されたフォトカプラPC2のダイオードに流れる電流が増加して、フォトカプラPC2のトランジスタが接続されている制御部IC4のフィードバック端子電圧が低下する。フィードバック端子電圧の低下量に応じて一定の周波数で動作しているスイッチング素子Q1のオフ時間デューティが大きくなり、出力電圧を下げて電子機器に定格電圧を安定供給することができる。
【0028】
一方、電子機器2が待機状態となり、ACアダプタ1の出力電流が非常に小さくなると、スイッチング素子Q1のオフ時間デューティが大きくなるため、ダイオードD1で整流されて抵抗R5とコンデンサC3とによって積分して得られるコンデンサC3の端子間電圧(両端電圧)が下がる。オペアンプIC2は、コンデンサC3の端子間電圧と基準電圧(ツェナーダイオードD2のツェナー電圧)とを比較し、コンデンサC3の端子間電圧が低くなると、オペアンプIC2の出力端子はLレベルに設定される。平滑コンデンサC2の端子間電圧は安定化された出力電圧になっており、オペアンプIC1は、抵抗R1、R2、R4、およびR8、R9で分圧して得られた抵抗R2の端子間電圧と基準電圧とを比較し、抵抗R2の端子間電圧が高くなっている間、オペアンプIC1の出力端子はHレベルに設定される。これにより、オペアンプIC1の出力端子から電流がフォトカプラPC1のダイオード、抵抗3、Lレベルに設定されたオペアンプIC2の出力端子に流れ込み、フォトカプラPC1のトランジスタがオンする(導通状態になる)。その結果、制御部IC4のオン/オフ端子がLレベルに設定され、制御部IC4は発振停止し、スイッチング素子Q1のスイッチング動作が停止する。
【0029】
平滑コンデンサC2の端子間電圧は、電子機器2の待機時における負荷電流と平滑コンデンサC2に接続されているACアダプタ1の内部回路で消費される微小電流によって徐々に放電される。そして、電子機器2が許容できる最低出力電圧に達すると、抵抗R2の端子間電圧が基準電圧より低くなるため、オペアンプIC1の出力端子はLレベルに設定され、フォトカプラPC1のダイオードに電流が流れなくなる。その結果、フォトカプラPC1のトランジスタがオフし、制御部IC4のオン/オフ端子がHレベルに設定され、スイッチング素子Q1はスイッチング動作を開始する。
【0030】
電子機器2が待機状態のときは、定格出力電圧と電子機器2が許容できる最低出力電圧の間で、スイッチング素子Q1はオン/オフ動作を繰り返す。待機状態では、平滑コンデンサC2の端子間電圧が定格出力電圧から電子機器2が許容できる最低出力電圧にまで放電される時間が長く、その間スイッチング素子Q1は動作停止している。スイッチング素子Q1が動作している時間に対して、動作停止している時間が非常に長く、動作停止時はスイッチングロスが零となり、ACアダプタ1の待機電力を低減することができる。
【0031】
ACアダプタ1の出力電流が待機状態から徐々に増加すると、平滑コンデンサC2の端子間電圧が定格出力電圧から電子機器2が許容できる最低出力電圧にまで放電される時間が短くなり、スイッチング素子Q1の停止時間が短くなる。さらに、ACアダプタ1の出力電流が増加すると、スイッチング素子Q1のオフ時間デューティが出力電流の増加量に応じて小さくなり、ダイオードD2で整流され抵抗R5とコンデンサC3によって積分して得られるコンデンサC3の端子間電圧が上昇する。そして、コンデンサC3の端子間電圧が基準電圧の電圧より高くなると、オペアンプIC2の出力はHレベルに設定される。その結果、オペアンプIC1の出力端子からフォトカプラPC1のダイオード、抵抗R3、オペアンプIC2の出力端子へ流れていた電流が流れなくなり、スイッチング素子Q1のオフ信号が一次側にフィードバックできなくなる。これにより、ACアダプタ1の動作状態は本来の一定周波数の動作に移行する。
【0032】
一方、ACアダプタ1の出力端子が電子機器2に接続されない状態(非接続の状態)のときは、抵抗R1に並列に抵抗R8が接続されなくなることと、抵抗R2に並列に抵抗R9が接続されなくことにより、オペアンプIC1と抵抗R1、R2、R4で検出している電圧が、電子機器2が許容できる最低出力電圧から電子機器2が許容できる最低出力電圧より低い出力電圧に切り換えられる。よって、電子機器2が非接続状態のときは、定格出力電圧と電子機器2が許容できる最低出力電圧との間でスイッチング素子Q1はオン/オフ動作を繰り返すのではなく、定格出力電圧と電子機器2が許容できる最低出力電圧より低い電圧の間でスイッチング素子Q1はオン/オフ動作を繰り返す。このため、スイッチング素子Q1がスイッチング動作している時間に対して、動作停止している時間をさらに長くすることができる。これにより、スイッチングロスをさらに削減することができ、ACアダプタの消費電力を十分に低減することができる。
【0033】
以上のように、この実施形態によれば、ACアダプタ1に電子機器2が接続されている状態では、オペアンプIC1は、抵抗R1、抵抗R1と並列に接続される抵抗R8、抵抗R2、抵抗R2と並列に接続される抵抗R9および抵抗R4から構成される回路により、電子機器2が許容できる最低出力電圧を検出可能とされる。このため、電子機器2が待機状態となった場合に、スイッチング素子Q1は定格出力電圧と電子機器2が許容できる最低出力電圧との間でオン/オフ動作を繰り返し、ACアダプタ1から電子機器2への出力電圧が電子機器2が許容できる最低出力電圧を下回るのを回避することができる。一方で、電子機器2が非接続の状態では、抵抗R1に並列に抵抗R8が接続されなくなるとともに抵抗R2に並列に抵抗R9が接続されなくなることから、抵抗R1、R2およびR4から構成される回路によりオペアンプIC1が検出する電圧は、電子機器2が許容できる最低出力電圧より低い電圧に切り換えられる。その結果、電子機器2が非接続の状態では、定格出力電圧と電子機器2が許容できる最低出力電圧より低い電圧との間でスイッチング素子Q1のオン/オフ動作の繰り返しが行われる。これにより、スイッチング素子Q1が動作している時間に対して、動作停止している時間を延長することができる。このため、スイッチングロスを削減して、ACアダプタ1の消費電力を十分に低減することができる。
【0034】
<評価結果>
表1に、実施例(図1)と従来例(図2)との間でACアダプタの消費電力を比較した結果を示す。評価条件は以下のとおりである。
入力電圧:AC100V
定格出力電圧:+16V
電子機器が許容できる最低出力電圧:+9V
電子機器が非接続状態における最低出力電圧:+5V
電子機器の待機負荷電流:2mA
発振周波数:70kHz
【0035】
ここで、定格出力電圧(16V)は、電子機器が待機状態ではなく通常動作しているときに必要とする電圧である。電子機器が待機状態の場合、電子機器のうち、この定格出力電圧を直接に使用して動作する部分は停止しており、動作している部分は制御回路部だけであり、電圧としては5Vで動作している部分のみとなる。この5Vの電圧を発生させるため、電子機器には16Vを5Vに変換するDC/DCコンバータが内蔵されているが、このDC/DCコンバータの入力電圧は必ずしも16Vを必要としない。実施例の場合、DC−DCコンバータは9Vの電圧があれば動作するものとなっており、この9Vの電圧が電子機器が許容できる最低出力電圧に相当する。つまり、実施例の場合、電子機器に内蔵されたDC−DCコンバータの動作に必要な最低入力電圧が、電子機器が許容できる最低出力電圧に相当する。なお、待機状態では定格出力電圧を直接に使用して動作する部分は停止しているので、ACアダプタの出力電圧が16Vと9Vの間で充放電(オン/オフ動作)しても、電子機器の動作に何ら支障がないことになる。
【0036】
【表1】

【0037】
表1から明らかなように、電子機器が非接続の状態でACアダプタが動作したまま放置された場合において、実施例は従来例に比較してACアダプタの消費電力が大幅に低減されていることが分かる。
【符号の説明】
【0038】
Q1…スイッチング素子
IC1…第1のオペアンプ
IC2…第2のオペアンプ
IC3…出力電圧検出用IC
IC4…制御用IC(制御部)
PC1…第1のフォトカプラ(フィードバック手段)
PC2…第2のフォトカプラ
C1…(1次側)平滑コンデンサ
C2…(2次側)平滑コンデンサ
C3…積分コンデンサ
R1…第1の出力抵抗(最低出力電圧検出用)
R2…第2の出力抵抗(最低出力電圧検出用)
R3…制限抵抗
R4…第3の出力抵抗(最低出力電圧検出用)
R5…積分抵抗
R6…放電抵抗
R7…起動用抵抗
R8…第1の入力抵抗(最低出力電圧検出用)
R9…第2の入力抵抗(最低出力電圧検出用)
T…トランス
N1…1次巻線
N2…2次巻線
N3…補助巻線
D1…ダイオード
D2…ツェナーダイオード(基準電圧設定用)
D3…(2次側)整流ダイオード
P1…プラス側出力端子(一方側出力端子)
P2…マイナス側出力端子(他方側出力端子)
P3…アダプタ側分圧端子
Q1…プラス側入力端子(一方側機器端子)
Q2…マイナス側入力端子(他方側機器端子)
Q3…機器側分圧端子
L…負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された交流電圧を整流して得られた入力電圧をトランスの1次側に設けられたスイッチング素子でスイッチングして、前記トランスの2次側に誘起された誘起電圧を2次側整流平滑回路により整流・平滑して一方側出力端子と他方側出力端子との間に接続される外部機器に直流電圧を出力するACアダプタにおいて、
前記一方側出力端子と前記他方側出力端子との間に直列に接続された第1および第2の出力抵抗と、
前記第1の出力抵抗と前記第2の出力抵抗との接続点にプラス側入力端子が接続され、マイナス側入力端子に基準電圧が入力される第1のオペアンプと、
前記第1のオペアンプの出力端子と前記プラス側入力端子とを接続する第3の出力抵抗と、
前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御部と、
前記第1のオペアンプの出力端子からの出力結果を前記制御部にフィードバックして、前記スイッチング素子によるスイッチング動作を実行/停止させるフィードバック手段と
を備え、
前記外部機器は、前記一方側出力端子および他方側出力端子にそれぞれ接続される一方側機器端子および他方側機器端子と、前記一方側機器端子と前記他方側機器端子との間に直列に接続された第1および第2の入力抵抗とを有し、
前記第1のオペアンプのプラス側入力端子には前記外部機器と接続可能なアダプタ側分圧端子が出力され、
前記一方側機器端子が前記一方側出力端子に、前記他方側機器端子が前記他方側出力端子に接続された状態では、前記アダプタ側分圧端子が前記第1の入力抵抗と前記第2の入力抵抗との接続点に接続され、前記プラス側入力端子に入力される電圧と前記マイナス側入力端子に入力される基準電圧とを比較することで前記第1のオペアンプは前記外部機器が許容できる最低出力電圧を検出可能とされ、
前記外部機器が非接続の状態では、定格出力電圧と前記外部機器が許容できる最低出力電圧よりも低い電圧との間で前記スイッチング素子はオン/オフ動作を繰り返すことを特徴とするACアダプタ。
【請求項2】
前記制御部は、入力される電圧レベルに応じて前記スイッチング素子によるスイッチング動作を実行/停止を選択的に実行させるオン/オフ端子を有し、
前記フィードバック手段は、前記第1のオペアンプの出力に接続された発光素子と、前記オン/オフ端子に接続され、前記発光素子からの発光を受光する受光素子とを有し、
前記発光素子は前記第1のオペアンプの出力端子がハイレベルに設定されると発光し、前記受光素子は前記発光素子からの発光を受光することで導通状態となって前記オン/オフ端子をローレベルに設定し、前記スイッチング素子のスイッチング動作を停止させることを特徴とする請求項1記載のACアダプタ。
【請求項3】
前記2次側整流平滑回路は、前記トランスの2次巻線の一方端にアノードが接続された整流ダイオードと、前記整流ダイオードのカソードと前記トランスの2次巻線の他方端との間に接続された平滑コンデンサとを有する請求項2記載のACアダプタであって、
前記整流ダイオードのアノード側にアノードが接続された第1のダイオードと、
前記第1のダイオードのカソードと前記トランスの2次巻線の他方端との間に直列に接続された積分抵抗と積分コンデンサと、
プラス側入力端子が前記積分コンデンサのプラス端子に接続され、マイナス側入力端子に前記基準電圧が入力される第2のオペアンプと
をさらに備え、
前記第2のオペアンプの出力端子は制限抵抗を介して前記発光素子に接続されており、前記外部機器が待機状態になると、前記第1のダイオードで整流され前記積分抵抗および前記積分コンデンサで積分して得られた前記積分コンデンサの端子間電圧が前記基準電圧よりも低くなって、前記第2のオペアンプの出力端子がローレベルに設定され、前記第1のオペアンプの出力端子がハイレベルに設定された際に、前記第1のオペアンプの出力端子からの電流が前記第2のオペアンプに流れ込むことによって、前記発光素子が発光することを特徴とする請求項2記載のACアダプタ。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−139564(P2011−139564A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297152(P2009−297152)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】