説明

AC/DC電源装置

【課題】
比較的安価で小型の部品のみでAC/DC電源装置の電力損失を極力減らし、かつ出力電圧の安定化を保つAC/DC電源装置を提供する。
【解決手段】
AC/DC電源装置において、AC電圧を整流して得られたDC電圧を入力電圧とし、主スイッチング素子であるPNPトランジスタQ43に並列に接続された、電位差検出回路7を有して、前記主スイッチング素子であるトランジスタQ43の入出力電位差と、前記電位差検出回路7の電位差比較値とを比較し、その比較結果に応じて、前記トランジスタQ43がオン又はオフする。即ち、電力損失が多い入力電圧の上限付近では、トランジスタQ43をオフして、電力損失を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AC電圧から整流回路、シリーズレギュレータを介してDC電圧を得るAC/DC電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流(AC)電圧から直流(DC)電圧を得るAC/DC電源装置において、AC電圧を整流、平滑した後、シリーズレギュレータを介することで安定した出力電圧を得ている。
ここで、シリーズレギュレータは、安定的な直流電圧を得るための電力変換方式の一つであり、シリーズレギュレータの入出力間電圧降下を制御して出力電圧を一定に維持する機能を有し、電源リプルやノイズが少なく、安定性が高く、回路面積も小さく、低価格である等メリットが多い。
【0003】
図6は、従来のシリーズレギュレータを備えたAC/DC電源装置の回路図である。
図6に示すように、AC/DC電源装置100は、入力電源となるAC電源1と、AC電源1を整流するダイオードブリッジ2と、ダイオードブリッジ2で整流された電圧を平滑するコンデンサ3と、シリーズレギュレータ4と、出力平滑用コンデンサ5と、AC/DC電源装置100の負荷となる等価抵抗6(以下、負荷6)からなっている。
【0004】
シリーズレギュレータ4は、図6に示すように、主スイッチング素子であるPNPトランジスタQ43のエミッタには直流入力電圧Vinが印加され、そのコレクタには逆流防止用ダイオードD4を介してコンデンサ5の正極が、また、そのベースには抵抗R43を介してNPNトランジスタQ42のコレクタがそれぞれ接続されている。また、コンデンサ5の正極は、抵抗R41、R42を介してトランジスタQ42のベースが接続されている。抵抗R42の一端はベースにツェナーダイオードZD4を接続したNPNトランジスタQ41が接続されており、他端は、トランジスタQ42のベース及びトランジスタQ41のコレクタに接続されている。トランジスタQ41、Q42のエミッタは共にコンデンサ5の負極に接続されている。また、主スイッチング素子であるトランジスタQ43のエミッタとコレクタに抵抗R44が接続されている。
【0005】
次に、以上のように構成された、AC/DC電源装置100の基本動作を説明する。
AC/DC電源装置100は、AC電源1から交流電圧Vacが印加されると、交流電圧Vacはまず、ダイオードブリッジ2により整流されて、平滑用コンデンサ3がピーク充電される。また、電源投入直後は主スイッチング素子であるトランジスタQ43がオフ状態になるため、ピーク充電されたコンデンサ3からの電流により、抵抗R44のみを介して出力平滑用コンデンサ5が充電される。
【0006】
即ち、ツェナーダイオードZD4のツェナー電圧をV4とすると、コンデンサ5の両端の電圧V5が所定の電圧V0(V0=V4×(1+R41/R42))に満たない場合には、電圧V5により、R41、R42を介してNPNトランジスタQ42にベース電流が流れてNPNトランジスタQ42がオンし、トランジスタQ42がオンするとPNPトランジスタQ43がオンするため、ピーク充電されたコンデンサ3から電流が、PNPトランジスタQ43のエミッタからコレクタに流れ、コンデンサ5は急速に充電されてV5=V0となる。
【0007】
コンデンサ5の両端の電圧V5が所定の電圧V0以上になると、ツェナーダイオードZD4の両端の電位差がツェナー電圧V4以上になり、ツェナーダイオードZD4に電流が流れ、NPNトランジスタQ41がオンし、したがってNPNトランジスタQ42がオフするため、主スイッチング素子であるPNPトランジスタQ43はオフし、コンデンサ3からコンデンサ5への電力の供給が遮断される。
なお、上述の説明では、動作が明確になるよう、各トランジスタの動作をオン、オフで表したが、実際には完全なオン、オフではなく、V5=V0となるような平衡点でも各トランジスタは動作を完全に停止しているわけではない。
【0008】
この従来例によると、コンデンサ5の両端の電圧V5=所定の電圧V0の状態では、PNPトランジスタQ43の入出力間電圧がVin=V0となるようトランジスタQ43のベース電流が制御され、負荷6に安定的な直流電圧を供給することができる。
なお、ダイオードD4はAC入力電圧が低下したときなどに、コンデンサ5の電荷がコンデンサ3に逆流することを防止するためのものであるが、負荷6の特性によっては逆流の問題ない場合もあり、その場合D4は必ずしも必要ではない。
【0009】
このように、シリーズレギュレータは、変動する交流電圧から安定した直流電圧を取り出すことができる。しかし、シリーズレギュレータは原理上、入出力間の電位差を必要とするため、この入出力間の電圧差により損失が発生する。この損失は、PNPトランジスタQ43を流れる電流と、トランジスタQ43の入出力間の電圧との積を時間積分にしたものなので、入力電圧が高くなるほど、電力損失は大きくなる。この電力損失は全て熱になるため素子が過熱して破損する恐れがあるという問題もある。
【0010】
シリーズレギュレータの上記の熱の発生に対しては、例えば、ヒートシンクにより発生損失を効率よく逃がしたり、シリーズレギュレータ4のトランジスタQ43に直列抵抗を挿入して損失の分散を図ったり、シリーズレギュレータ4のトランジスタQ43の機能を並列化又は直列化して主スイッチング素子一個当たりの損失を減らしたりしている。
【0011】
しかし、上述の対策は、熱を分散し、機器の保護が目的であって、発生電力損失自体が減少するわけではなく、熱対策を講じると装置が大型化し、価格面における影響も少なくない。
また、入力電圧の変動が小さい場合でも、高いAC電圧から相対的に低いDC電圧を作る場合、その電圧差が大きい場合には、シリーズレギュレータの電力損失を抑えるためにトランスを用いて適正な電圧まで下げることが考えられるが、これもまた結局装置の大型化をもたらし、コストも掛かるなどの問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、AC/DC電源装置における上記従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、AC/DC電源装置において、比較的安価で小型の部品のみを用いてAC/DC電源装置の電力損失を極力減らし、かつ出力電圧を安定化することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明は、AC電圧を整流してDC電圧を作る電圧整流装置と、主スイッチング素子を制御することで安定した出力電圧を出力するシリーズレギュレータと、を備えたAC/DC電源装置であって、前記主スイッチング素子に並列に接続された電位差検出回路を有し、前記電圧整流装置により整流されたDC電圧を入力電圧とし、前記主スイッチング素子の入出力電位差が前記電位差検出回路の電位差比較値よりも高いとき、前記主スイッチング素子をオフすることを特徴とするAC/DC電源装置である。
(2)本発明は、上記(1)に記載されたAC/DC電源装置において、前記電位差検出回路は、それぞれ直列に接続されたフォトカプラと、抵抗と、ツェナーダイオードで構成されていることを特徴とするAC/DC電源装置である。
(3)本発明は、上記(1)に記載されたAC/DC電源装置において、前記電位差検出回路は、それぞれ直列に接続されたフォトカプラと、抵抗と、ダイオードで構成されることを特徴とするAC/DC電源装置である。
(4)本発明は、上記(1)に記載されたAC/DC電源装置において、前記電位差検出回路は、直列に接続されたフォトカプラと、抵抗とで構成されることを特徴とするAC/DC電源装置である。
(5)本発明は、上記(1)ないし(4)のいずれかに記載されたAC/DC電源装置において、前記シリーズレギュレータと負荷の間に、他のシリーズレギュレータを接続したことを特徴とするAC/DC電源装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に記載のAC/DC装置によれば、比較的安価で小型の部品のみでAC/DC電源装置の電力損失を極力減らし、かつ同時に出力電圧を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態のAC/DC電源装置の構成回路図である。
【図2】DC入力電圧Vinと、出力電圧V5と、トランジスタQ43の電位差Vrとの関係を示す図である。
【図3】ダイオードを用いた場合のシリーズレギュレータ制御回路の構成図である。
【図4】ツェナーダイオード又はダイオードを省いたシリーズレギュレータ制御回路の構成図である。
【図5】第一実施形態のAC/DC電源装置と従来のAC/DC電源装置を組み合わせたAC/DC電源装置の回路図である。
【図6】従来のシリーズレギュレータを備えたAC/DC電源装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態のAC/DC電源装置の構成回路図であり、図6に示す従来のAC/DC電源装置のコンデンサ3を除去し、代わりに電位差検出回路7を追加した構成である。
電位差検出回路7は、図1に示すように、互いに直列に接続されたダイオード特性を有する素子、ここではフォトカプラPC7と、ツェナーダイオードZD7と、抵抗R7とで構成されている。ツェナーダイオードZD7のツェナー電圧をVZ7(一般的に10〜20V)、フォトカプラPC7の入力ダイオードの順電圧降下をVFとすると、Vr=VZ7+VFにより与えられる所定の電位差Vrと、シリーズレギュレータ4の入力電圧Vin、コンデンサ5の電圧V5の関係がVin−V5≧Vrとなったときに、フォトカプラPC7の入力ダイオードに電流が流れ、フォトカプラPC7の出力ダイオードがオンし、トランジスタQ42のベース電流が遮断されてトランジスタQ42がオフするため、トランジスタQ43がオフする。
また、Vin−V5<Vrでは、フォトカプラPC7の出力ダイオードがオフであるため、トランジスタQ42のベース電流が流れてトランジスタQ42がオンするため、トランジスタQ43がオンする。
【0017】
このように、主スイッチング素子であるトランジスタQ43の入出力間の電位差が所定値より小さい、つまりVin−V5<Vr(与えられる所定の電位差)の時だけトランジスタQ43に電流が流れ、トランジスタQ43の入出力間の電位差が所定値より大きい、つまりVin−V5≧Vrの区間では電流がオフする。つまり、電力損失が増大する入力電圧の高い領域では、トランジスタQ43をオフするため、その電力損失は大幅に抑えられる。
【0018】
図2は、AC入力電圧を全波整流(もしくは半波整流)して得られたDC入力電圧Vinと、出力電圧V5と、トランジスタQ43の電位差Vrとの関係を示す図である。
図2に示すように、ΔT1、ΔT2は、Vin>V5(入出力の電位差が必要)とVin−V5<Vrとの間の区間であり、このΔT1、ΔT2の区間のみトランジスタQ43はオンし、その以外の区間ではトランジスタQ43はオフする。これによりAC入力電圧Vacが高くなった場合でもトランジスタQ43の損失は増加しなくなる。
【0019】
ここで、本実施形態においては、従来例にあるコンデンサ3は削除されている。その理由は、コンデンサ3は整流された入力電圧を平滑するため、トランジスタQ43の入出力間の電位差と所定の電圧Vrの過渡的な比較が困難になるためである。
【0020】
(第2の実施形態)
図1のAC/DC電源装置において、負荷6が軽い場合には、シリーズレギュレータ制御回路7のツェナーダイオードZD7の代わりにダイオードD7を使用してもよい。
図3は、ダイオードD7を用いた場合のシリーズレギュレータ制御回路7の構成図である。この実施形態においては、トランジスタQ43をオフさせる所定の電位差Vrは、ダイオードD7の順電圧降下VD7と、フォトカプラPC7の入力ダイオードの順電圧降下VFとの合計である。即ち、Vr=VD7+VFとなる。この場合、ΔT1においては、トランジスタQ43が動作している場合、コンデンサ5の両端の電圧V5が所定の電圧V0まで上昇していくため、ツェナーダイオードZD7でも、ダイオードD7でも電圧の制御性には大差はない。しかし、ダイオードD7の順電圧降下VD7は一般的に0.5〜1Vであり、第1の実施形態で用いたツェナーダイオードZD7のツェナー電圧VZ7比べて低いことから、図2においてシリーズレギュレータ4を機能させる時間ΔT2は、ツェナーダイオードZD7を使用する場合より短くなる。そのため、出力電圧V5は第1の実施形態に比べてやや安定性は低くなり、出力電圧リプルが大きくなるが、主スイッチング素子であるトランジスタQ43の損失は、第1の実施形態のものよりも少なくなる利点がある。
【0021】
(第3の実施形態)
さらに、出力側の負荷6が軽負荷の場合は、フォトカプラPC7の入力ダイオードの順電圧降下のみを利用することができる。
図4は、ツェナーダイオードZD7又はダイオードD7を省いた電位差検出回路7の構成図である。この場合、主スイッチング素子であるトランジスタQ43をオフさせる所定の電位差Vrは、フォトカプラPC7の入力ダイオードの順電圧降下VFのみ、つまりVr=VFである。
本実施形態では、このように部品を極力省くことでAC/DC電源装置の簡素化、低コスト化を実現している。一方、シリーズレギュレータ4を機能させる時間ΔT2は、さらに短くなり、トランジスタQ43の損失は第2の実施形態のものよりもさらに少なくなる利点がある。ただ、負荷が大きい場合には出力電圧リプルが更に大きくなるため、軽負荷又は電圧の安定性をあまり必要としない負荷に用いることができる。
【0022】
(第4の実施形態)
第1〜3の実施形態によれば、出力電圧は直流入力電圧Vinが出力電圧を超え、かつ所定の電圧以下である場合にしか制御されず、出力電圧の非制御区間が存在する。そのため、従来と同じ容量の平滑コンデンサ5の場合、出力電圧の安定性は従来に比べ若干悪くなる。
そこで、第4の実施形態は、この問題を解決するため、シリーズレギュレータと負荷の間に、もう一つのシリーズレギュレータと平滑用コンデンサを追加することにより出力電圧の安定化を保つようにしている。
【0023】
図5は、第1の実施形態のAC/DC電源装置に、更にシリーズレギュレータを付加したAC/DC電源装置の回路図である。図6に示すように、平滑用コンデンサ5と負荷6の間に、従来例で示したシリーズレギュレータ4aと、平滑用コンデンサ5aが接続されている。この場合、シリーズレギュレータ4とコンデンサ5で、所望の出力電圧より高めの電圧を作ることにより、シリーズレギュレータ4aの入出力間電位差が小さくなり、シリーズレギュレータ4aの電力発生損失を低減させることができる。
【0024】
このように、シリーズレギュレータ4aを付加することによって、第1の実施形態における電力損失を更に低減することができ、かつ同時に安定して直流電圧を取り出すことができるAC/DC電源装置を得ることができる。
なお、シリーズレギュレータ4aを付加する対象となるAC/DC電源装置は、上記第1の実施形態のAC/DC電源装置に限らず、それよりも効果の点では落ちるものの第2及び第3の実施形態のAC/DC電源装置でもよい。
【符号の説明】
【0025】
1・・・AC電源、2・・・ダイオードブリッジ、3・・・コンデンサ、4・・・シリーズレギュレータ、5・・・出力平滑用コンデンサ、6・・・負荷、7・・・電位差検出回路、100・・・AC/DC電源装置、D4、D7・・・ダイオード、R7、R41〜R44・・・抵抗、PC7・・・フォトカプラ、Q41、Q42・・・NPNトランジスタ、Q43・・・PNPトランジスタ、ZD4、ZD7・・・ツェナーダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AC電圧を電圧整流装置により整流してDC電圧を作る電圧整流装置と、主スイッチング素子を制御することで安定した出力電圧を出力するシリーズレギュレータと、を備えたAC/DC電源装置であって、
前記主スイッチング素子に並列に接続された電位差検出回路を有し、
前記電圧整流装置により整流されたDC電圧を入力電圧とし、
前記主スイッチング素子の入出力電位差が前記電位差検出回路の電位差比較値よりも高いとき、前記主スイッチング素子をオフすることを特徴とするAC/DC電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたAC/DC電源装置において、
前記電位差検出回路は、それぞれ直列に接続されたフォトカプラと、抵抗と、ツェナーダイオードで構成されていることを特徴とするAC/DC電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載されたAC/DC電源装置において、
前記電位差検出回路は、それぞれ直列に接続されたフォトカプラと、抵抗と、ダイオードで構成されることを特徴とするAC/DC電源装置。
【請求項4】
請求項1に記載されたAC/DC電源装置において、
前記電位差検出回路は、直列に接続されたフォトカプラと、抵抗とで構成されることを特徴とするAC/DC電源装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載されたAC/DC電源装置において、
前記シリーズレギュレータと負荷の間に、他のシリーズレギュレータを接続したことを特徴とするAC/DC電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−34411(P2011−34411A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181068(P2009−181068)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【出願人】(000105660)サクサプレシジョン株式会社 (8)
【Fターム(参考)】