説明

AMステレオ同期放送用STL装置

【課題】 AMステレオ同期放送用STL装置において、L信号をベースバンド、R信号を搬送波抑圧単測波変調(SSB変調)で伝送するためスペクトル配列が広がり伝送効率が悪く、また、L信号とPs信号を分離するフィルタ時や、R信号のSSB変調時に位相,振幅周波数特性が劣化し、信号に歪を生じる問題を解決する。
【解決手段】 L,R信号を直交変調することでSSBのようなフィルタを不要とし、また、この直交変調信号のサブキャリヤを所定の周波数、例えば、24kHzに選ぶことにより、Ps信号に隣接してT1信号を配列することで、周波数間隔が広くなるため急しゅんなフィルタを不要とする。さらにT1信号の隣接にT2信号を配列することで、同じ帯域で打合信号を1つ多く伝送することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無線伝送用の装置、特に、AMラジオ番組内容をスタジオから送信所に伝送するSTL装置(スタジオ・トランスミッタ・リンク装置)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4は従来のAMステレオ同期放送用STL装置の送信ブロック図、図5はその受信ブロック図を示す。まず図4について説明する。ここで加算器6には、ステレオ・パイロット信号(Ps信号)、ローパスフィルタ(LPF)101で帯域制限されたステレオ左信号(L信号)、搬送波抑圧単測波変調器(SSB)102で、発振器5からの12kHzのサブキャリヤで変調されたステレオ右信号(R信号)、同様にSSB103にて12kHzの2倍の24kHzで変調された打合信号(T1信号)、およびSSB104で12kHzの3倍の36kHzで変調された打合信号(T2信号)が入力される。また12kHz信号も搬送波パイロット信号(P信号)として入力される。
【0003】加算器6で上記信号が加算された結果得られるコンポジット信号のスペクトル配列図を図6に示す。このコンポジット信号は図4の周波数変換器7により、高周波帯にて周波数変調されたのち、高周波増幅器8で所定レベルまで増幅され、図示していない送信アンテナから送信される。
【0004】次に、図5に示す受信装置では、受信された信号が高周波受信部9にて所定のレベルまで増幅され、周波数検波器10で復調され、図6に示す元のコンポジット信号が得られる。これを複数のフィルタにより分離する。ここでキャリヤ再生器18は搬送波パイロット信号(P信号)を再生し、これを出力するとともに、受信されフィルタされた各信号に対し、各検波器112,113,114へそれぞれ1倍,2倍,3倍のサブキャリヤ信号を注入する。フィルタされた各信号は検波器112,113,114にてベースバンドに復調され、LPF115〜118にて帯域制限したのち出力している。
【0005】またEQ(イコライザ)110は、受信装置にて25Hzのステレオ・パイロット信号(Ps信号)を分離するために設けたBPF(バンドパスフィルタ)106で生じる、位相および振幅周波数特性の歪を補償する等化回路である。同様にEQ111は、送信装置のSSB102で生じる位相および振幅周波数特性の歪を補償する等化回路である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前述の従来技術では、LおよびR信号が、フィルタあるいはSSBにより位相および振幅周波数特性歪を受ける為、補償回路が必要となる。またその補償を経年変化、環境変化等に合わせて完全に調整することは不可能である。
【0007】本発明の第1の目的は、これらの欠点を除去する為、フィルタによる歪を受けないSTL装置を提供することにある。また、第2の目的は、打合せ信号が増やせるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記第1の目的を達成するため、音声のステレオ左信号及び右信号(L、R信号)を搬送波抑圧直交変調することにより、また、Ps信号をベースバンドのまま伝送することにより、伝送帯域を節約し、各信号を適切に配列することにより、フィルタによる歪を受けないようにし、これにより各補償回路を不要にしたものである。
【0009】また、第2の目的を達成する為、打合信号の1つをベースバンドにて、また、他の1つを搬送波パイロット信号(P信号)の2分周で得られる6kHzにて搬送波抑圧単測波変調(SSB変調)することにより、効率良く、しかも適当な周波数間隔を保って信号を配列することで、フィルタの歪を受けないで、打合信号を1チャネル増やすようにしたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、この発明の一実施例を送信装置を示す図1と、受信装置を示す図2とを用いて説明する。
【0011】図1において、1はLPFで、打合信号であるT1信号の帯域制限を行なう。2,3はSSB回路で、打合信号のT2,T3信号を搬送波抑圧単測波変調する。4は直交変調器で、ステレオ左信号(L信号)およびステレオ右信号(R信号)を直交変調する。5は発振器で、搬送波パイロット信号であるP信号を発生するとともに、そのP信号をSSB2,3および直交変調器4へサブキャリヤ信号として注入している。
【0012】加算器(Σ)6は上記信号を合成し、図3で示すコンポジット信号を作る。7は周波数変換器で、コンポジット信号により高周波搬送波を周波数変調する。
【0013】8は高周波増幅器で、周波数変調された高周波信号を増幅し、送信アンテナへ出力する。
【0014】次に図2に示す受信装置では、高周波受信部9に受信アンテナで受信された高周波信号が入力される。10は周波数検波器で、周波数変調された信号を復調する。11〜14はBPFで、復調により得られたコンポジット信号から各信号を帯域ごとに分離する。19はLPFで、ステレオ・パイロット信号(Ps信号)を分離する。20はBPFで、打合信号(T1信号)を分離する。15,16は検波器で、分離されたコンポジット信号を復調し、復調された信号はLPF21,22のそれぞれで帯域制限されて出力される。17は直交同期検波器で、L,R信号が直交変調されたコンポジット信号から、ベースバンドのL,R信号を復調する。
【0015】18はキャリヤ再生器で、搬送波パイロット信号であるP信号を再生し出力するとともに、そのP信号を各検波器にサブキャリヤとして注入している。23,24はLPFで、L,R信号を帯域制限している。
【0016】以下、この動作について説明する。発振器5にて12kHzの搬送波パイロット信号(P信号)が出力され、加算器6に入力される。ステレオ・パイロット信号(Ps信号)は25Hzのベースバンドのまま加算器6で加算される。また、打合信号のT1信号は、ベースバンドのままLPF1で帯域制限されたのち加算される。打合信号のT2信号はSSB2にて、また、打合信号のT3信号はSSB3にて、それぞれパイロット信号12kHzを2分周、3で倍した6kHz,36kHzのサプキャリヤで搬送波抑圧単測波変調されてから加算される。音声ステレオのL,R信号は、直交変調器4において、パイロット信号12kHzの2逓倍の24kHzにて、直交変調してから加算される。加算されたコンポジット信号スペクトル配列は図3となる。このコンポジット信号で周波数変換器7で周波数変調し、高周波信号を得る。これを高周波増幅器8にて所定レベルへ増幅し出力する。一方、受信側では、この高周波信号を受け、高周波受信部9で所定レベルまで増幅し、周波数検波器10にて復調し、図3に示すコンポジット信号を得る。Ps信号はLPF19にて25Hz信号として取り出される。T1信号はBPF20にて、Ps信号および他の信号から分離され出力される。T2,T3信号はBPF11,12によりそれぞれ分離されてから検波器15,16にて復調され、ベースバンドとなってからLPF21,22でそれぞれ帯域制限されて出力される。
【0017】L,R信号はBPF13にて14〜34kHz成分のみが分離されてから直交同期検波器により復調され、ベースバンドのL,R信号となる。これらがLPF23,24でそれぞれ帯域制限されて出力される。
【0018】搬送波パイロット信号(P信号)はBPF14にて本信号のみ分離され、キャリヤ再生器18にて12kHz信号を再生し、出力する。一方、このP信号を検波器15,16および直交同期検波器17に注入し、ここでそれぞれ2分周、3てい倍、2てい倍して6kHz,36kHz,24kHzを得る。このサブキャリヤで同期検波して、前記のT2,T3,L,R信号を得ることが出来る。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば、25HzのPs信号と、300HzであるT1信号の下限とでは、周波数が離れている為に、それらを分離するためには従来技術で用いたような急しゅんなフィルタが不要であるので、位相,振幅周波数特性も歪を受けず、したがってイコライザ(EQ)が不要となる。
【0020】R信号は、L信号と同時に直交変調される為、位相,振幅ともL信号と同じものが得られる。また、単測波変調でない為、位相,振幅周波数特性の歪を受けない。したがって、イコライザが不要となる。
【0021】L信号も、従来方式ではPs 信号を分離する為に、急しゅんなBPFが必要であったが、本発明によれば、位相,振幅周波数特性の歪を受けることがないので、イコライザが不要である。
【0022】このように本発明では、全ての信号についてイコライザが不要となり、安定した高品質の信号が得られる。
【0023】また、直交変調方式によりスペクトルに余裕ができるので、従来技術より帯域を効率良く用いて、第3番目の打合信号であるT3信号を増やして伝送できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の送信装置の一実施例のブロック構成を示す図。
【図2】本発明の受信装置の一実施例のブロック構成を示す図。
【図3】本発明により得られるコンポジット信号のスペクトル配列の例を表す図。
【図4】従来のAMステレオ同期放送用STL装置の送信装置のブロック構成例を示す図。
【図5】従来のAMステレオ同期放送用STL装置の受信装置のブロック構成例を示す図。
【図6】従来のAMステレオ同期放送用STL装置の受信装置のコンポジット信号のスペクトル配列の一例を表す図。
【符号の説明】
1:LPF、2,3:SSB、4:直交変調器、5:発振器、6:加算器、7:周波数変換器、8:高周波増幅器、9:高周波受信部、10:周波数検波器、11〜14:BPF、15,16:検波器、17:直交同期検波器、18:キャリヤ再生器、19,21〜24:LPF、20:BPF。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 同期放送用の搬送波パイロット信号(P信号)およびステレオ・パイロット信号(Ps信号)を含むAMステレオ用の信号を伝送するSTL装置において、Ps信号をベースバンドのまま伝送する手段と、P信号を伝送する手段と、音声ステレオL,R信号を搬送波抑圧直交変調する直交変調器と、打合せ信号を搬送波抑圧単測波変調(SSB変調)により伝送する手段とを備えたことを特徴とするAMステレオ同期放送用STL装置。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平9−238114
【公開日】平成9年(1997)9月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−44717
【出願日】平成8年(1996)3月1日
【出願人】(000005429)日立電子株式会社 (11)